(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003529
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240105BHJP
A01K 15/04 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
E04H1/02
A01K15/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102732
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】植村 敏正
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA01
2E025AA14
(57)【要約】
【課題】ペットと同じ居室に滞在しつつ、ペットが自由に移動できる領域を限定する。
【解決手段】建築物100は、界壁11によって区画された複数の部屋10を有する。部屋10のうち少なくとも一部は、居室17を備える。居室17は、床面より高く天井より低い高さの仕切部材によって区画された第1領域41オおよび第2領域42を有する。第1領域41の床材は非吸水性の部材である。第2領域の床材は吸水性の部材である。仕切部材27は第1領域に開口するケージ39を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界壁によって区画された複数の部屋を有する建築物であって、
上記部屋のうち少なくとも一部の部屋は、
居室を備えており、
上記居室は床面より高く天井より低い高さの仕切部材によって区画された第1領域および第2領域を有しており、
上記第1領域の床材は非吸水性の部材であり、
上記第2領域の床材は吸収性の部材であり、
上記仕切部材は上記第1領域に開口するケージを有する建築物。
【請求項2】
上記部屋は上記部屋の外に開口する出入口と、屋外に開口する窓とを有しており、
上記窓は、上記第1領域に位置しており、
上記第2領域は、上記第1領域よりも上記出入口に近い位置にある請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
界壁によって区画された複数の部屋を有する建築物であって、
上記部屋のうち少なくとも一部の部屋は、
上記部屋の外に開口する出入口と、
上記出入口に連なる通路と、
上記通路への開口を有する洗面室と、
居室と、を備えており、
上記通路および上記洗面室の床材は、非吸水性の部材であり、
上記居室は、床面より高く天井より低い高さの仕切部材によって区画された第1領域及び第2領域を有しており、
上記第1領域の床材は非吸水性の部材であり、
上記第2領域の床材は吸水性の部材であり、
上記第2領域は、上記通路に開口する建築物。
【請求項4】
上記部屋は、屋外に開口する窓を有しており、
上記窓は、上記第1領域に位置しており、
上記第2領域は、上記第1領域よりも上記出入口に近い位置にある請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
上記洗面室は、
第1シンクと、
上記第1シンクより低い位置にある第2シンクと、を有する請求項3または4に記載の建築物。
【請求項6】
上記出入口と上記洗面室とは、上記通路を介して対向している請求項3または4に記載の建築物。
【請求項7】
上記通路に、第3シンクおよび調理台を有するキッチン設備が位置する請求項3または4に記載の建築物。
【請求項8】
上記仕切部材は、上記第1領域と上記第2領域とを繋ぐ開口を有する請求項1または3に記載の建築物。
【請求項9】
上記第2領域の床面は、上記第1領域の床面よりも高い請求項1または3に記載の建築物。
【請求項10】
上記第1領域は、上記窓に面する土間を有する請求項2または4に記載の建築物。
【請求項11】
上記建築物は、宿泊施設であり、
上記第2領域に、ベッドが位置する請求項1または3に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペット用の部屋と宿泊者の部屋とを分けた宿泊施設の例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される宿泊施設では、ペット用の部屋に複数のペット用のケージが配置される。そして、ペット用ケージに入れられたペットは、カメラを用いて撮影される。宿泊者は撮影された映像を見ることにより、宿泊者のペットの様子を観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、宿泊者の滞在する部屋において、ペットに起因する意図しない室内の清掃は発生しない。そのため、ペット同伴でない宿泊者であっても、ペットに起因して汚された過去のある設備を用いずに宿泊できる点で利点である。しかしながら、ペット同伴の宿泊者は、ペットと同じ空間を共有しながら滞在することはできない。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、ペットと同じ居室に滞在しつつ、ペットが自由に移動する領域を限定できる建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1に係る建築物は、界壁によって区画された複数の部屋を有する建築物であって、上記部屋のうち少なくとも一部の部屋は、居室を備えており、上記居室は床面より高く天井より低い高さの仕切部材によって区画された第1領域および第2領域を有しており、上記第1領域の床材は非吸水性の部材であり、上記第2領域の床材は吸収性の部材であり、上記仕切部材は上記第1領域に開口するケージを有する。
【0007】
上記構成によれば、滞在者とペットとが同じ居室に滞在しつつ、仕切部材により、第1領域にいるペットが第2領域に移動することを抑制できる。ペットに起因する汚れが第1領域に生じても、第1領域の床材は非吸水性の部材なので清掃が容易である。第2領域の床材は吸水性の部材なので、滞在者に優しい居心地を与える。仕切部材は天井より低いので、滞在者は、第2領域から仕切部材の上方の空間を通じて第1領域にいるペットを容易に目視できる。第2領域において滞在者が就寝するときに、ペットをケージに入れることにより、意図しないペットの移動を抑制できる。ケージは第1領域に開口するので、第1領域からペットをケージに入れることができる。
【0008】
(2)請求項2は、上記部屋は上記部屋の外に開口する出入口と、屋外に開口する窓とを有しており、上記窓は、上記第1領域に位置しており、上記第2領域は、上記第1領域よりも上記出入口に近い位置にある請求項1の建築物である。
【0009】
上記構成によれば、滞在者は、第1領域において、窓からの採光による明るい環境下でペットとともに過ごすことができる。また、第2領域が出入口の近くに位置することにより、第1領域に滞在するペットの意図しない出入口からの出入りを抑制できる。
【0010】
(3)請求項3に係る建築物は、界壁によって区画された複数の部屋を有する建築物であって、上記部屋のうち少なくとも一部の部屋は、上記部屋の外に開口する出入口と、上記出入口に連なる通路と、上記通路への開口を有する洗面室と、居室と、を備えており、上記通路および上記洗面室の床材は、非吸水性の部材であり、上記居室は、床面より高く天井より低い高さの仕切部材によって区画された第1領域及び第2領域を有しており、上記第1領域の床材は非吸水性の部材であり、上記第2領域の床材は吸水性の部材であり、上記第2領域は、上記洗面室に開口する。
【0011】
上記構成によれば、滞在者とペットとが同じ居室に滞在しつつ、仕切部材により第1領域にいるペットが第2領域に移動することを抑制できる。ペットに起因する汚れが第1領域に生じても、第1領域の床材は非吸水性の部材なので清掃が容易である。第2領域の床材は吸水性の部材なので、滞在者に優しい居心地を与える。滞在者は、第2領域から仕切部材の上方の空間を通じて第1領域にいるペットを容易に目視できる。
【0012】
また、滞在者がペットと共に部屋へ戻ってきたときには、出入口から通路および洗面室の開口を通ってペットが洗面室に入ることができる。通路および洗面室の床材は非吸水性の部材なので、清掃が容易である。また、出入口から洗面室までの動線に居室がないので、外出により脚が汚れたペットが居室に侵入することを抑制できる。
【0013】
(4)請求項4に係る上記部屋は、屋外に開口する窓を有しており、上記窓は、上記第1領域に位置しており、上記第2領域は、上記第1領域よりも上記出入口に近い位置にある請求項3に記載の建築物である。
【0014】
上記構成によれば、滞在者は、第1領域において、窓からの採光による明るい環境下でペットとともに過ごすことができる。また、第2領域が出入口の近くに位置することにより、第1領域に滞在するペットの意図しない出入口からの出入りを抑制できる。
【0015】
(5)請求項5に係る建築物は、上記洗面室は、第1シンクと、上記第1シンクより低い位置にある第2シンクと、を有する請求項3または4に記載の建築物である。
【0016】
上記構成によれば、滞在者用のシンクと、ペット用のシンクとを分けることができる。これにより、滞在者用のシンクの衛生状態を良好に保つことができる。また、第1シンクよりも低い位置にある第2シンクを用いて、ペットの脚などの汚れ落としを容易にすることができる。
【0017】
(6)請求項6に係る建築物は、上記出入口と上記洗面室とは、上記通路を介して対向している請求項3から5のいずれかに記載の建築物である。
【0018】
上記構成によれば、出入口から部屋に入るペットは、進入方向に対して曲がることなく洗面室の開口を介して洗面室に入ることができる。これにより、部屋に入ってきたペットを容易に洗面室へ誘導できる。
【0019】
(7)請求項7に係る建築物は、上記通路に、第3シンクおよび調理台を有するキッチン設備が位置する請求項3から6のいずれかに記載の建築物である。
【0020】
上記構成によれば、非吸水性の通路にキッチン設備を設けることにより、通路のスペースを有効活用することができる。
【0021】
(8)請求項8に係る建築物は、上記仕切部材は、上記第1領域と上記第2領域とを繋ぐ開口を有する請求項1から7のいずれかに記載の建築物である。
【0022】
上記構成によれば、滞在者は、仕切部材の開口を用いて第1領域と第2領域との間を行き来することができる。これにより、居室の利便性を向上することができる。
【0023】
(9)請求項9に係る建築物は、上記第2領域の床面は、上記第1領域の床面よりも高い請求項1から8のいずれかに記載の建築物である。
【0024】
上記構成によれば、滞在者は、第2領域から第1領域を見渡すことができる。これにより、滞在者は、第2領域に滞在する間であっても、ペットの動向を容易に把握することができる。
【0025】
(10)請求項10に係る建築物は、上記第1領域は、上記窓に面する土間を有する請求項2または4から9のいずれかに記載の建築物である。
【0026】
上記構成によれば、ペットに対して、夏場に涼しい環境を提供できるとともに、冬場に暖かい環境を提供することができる。
【0027】
(11)請求項11に係る建築物は、上記建築物は、宿泊施設であり、上記第2領域に、ベッドが位置する請求項1から10のいずれかに記載の建築物である。
【0028】
上記構成によれば、ペットの進入を想定していない第2領域にベッドを配置することにより、第2領域においてペットに起因する意図しないベッドの汚れを抑制することができる。したがって、施設側は部屋の掃除を容易にすることができる。また、宿泊者側は、他の宿泊者のペットによって汚されたベッドを使わずに済むという心理的な安心感を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る建築物は、ペットと同じ居室に滞在しつつ、ペットが自由に移動できる領域を限定できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、建築物に備えられる部屋の平面間取図である。
【
図3】
図3は、変形例に係る洗面室に開口を有する第1領域を備える居室の平面間取図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る界壁11によって区画された複数の部屋10を有する建築物100が説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更できることは言うまでもない。
【0032】
以下では、
図1に示すように、部屋10の出入口12から洗面室14に向かう方向を前方とする。洗面室14から部屋10の出入口12に向かう方向を後方とする。前方と後方とを合わせて前後方向1とする。また、居室17から通路13に向かう方向を左方とする。通路13から居室17に向かう方向を右方とする。左方と右方とを合わせた方向を左右方向2とする。
図2に示すように、鉛直方向であって、前後方向1および左右方向2に直交する方向を上下方向3とする。
【0033】
本実施形態において説明する建築物100は、界壁11によって区画された複数の部屋10を有する。建築物100は、例えば、宿泊施設または住宅などであり、ペット同伴で部屋10に滞在することを想定された建物である。本実施形態において、建築物100は、ペットの一例である犬と同伴して部屋10に滞在することを想定された建物である。建築物100は、例えば、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、或いは鉄骨鉄筋コンクリート造の構造形式によって建築される建物である。以下の実施形態では、宿泊施設である建築物100を例として説明される。
【0034】
部屋10のうち少なくとも一部の部屋10は、
図1に示すように、キッチンが付随した1Kタイプの部屋である。本実施形態において、部屋10は、界壁11によって平面視矩形形状の領域を有している。そして、部屋10は、出入口12と、通路13と、洗面室14と、浴室15と、窓16と、居室17と、を備えている。本実施形態において、出入口12、通路13、洗面室14、および浴室15は、一例として、部屋10の左方側に配置されている。また、本実施形態において、居室17は、部屋10の右方側に配置されている。また、本実施形態において、窓16は、部屋10の前方側に配置されている。そして、通路13と居室17との間にトイレ18が配置されている。
【0035】
出入口12は、部屋10の後方側の界壁11に配置されている。出入口12は、部屋10の外に開口する。出入口12は、例えば、部屋10の内側に向けて開く片開き扉20を有する。
【0036】
通路13は、出入口12に連なって配置されている。本実施形態において、通路13は、前後方向1に長く、左右方向2に短い平面視矩形領域として区画される。また、通路13は、部屋10の左方側の界壁11に沿って配置される。通路13は、非吸収性部材を床材として構成されている。通路13は、例えば、非吸収性の部材として、クッションフロア、石材、またはシートなどを床材として構成される。通路13は、その右方側において、前後方向1および上下方向3に拡がり床面より高く天井に届く高さの仕切壁21を介して居室17に隣接する。また、通路13は、その右方側において、仕切壁21の前方側に連接され、通路13側に開く片開き扉22を有するトイレ18に隣接して配置される。そして、通路13の左方側の領域には、第3シンク23および調理台24を有するキッチン設備が位置する。第3シンク23および調理台24は、通路13の左方側に位置する界壁11に沿って配置される。
【0037】
洗面室14は、通路13に隣接して配置されている。より詳しくは、洗面室14は、通路13の前方側に隣接して配置される。これにより、洗面室14は、通路13を介して出入口12と対向する。そして、洗面室14は、前後方向1に長く、左右方向2において通路13と同じ幅を有する平面視矩形領域として区画される。洗面室14は、非吸収性部材を床材として構成されている。洗面室14は、例えば、非吸収性の部材として、クッションフロア、石材、またはシートなどを床材として構成される。洗面室14の後方側の境には、左右方向2に延び、上下方向3に拡がって床面より高く天井に届く仕切壁25が配置される。また、洗面室14は、通路13への開口26を有する。すなわち、洗面室14は、仕切壁25に開口26を有する。洗面室14は、例えば、通路13の開口26の位置に、左右方向2に沿って移動可能な引き戸57を有する。
【0038】
開口26は、通路13と洗面室14との出入口である。本実施形態において、開口142は、出入口12の位置から前後方向1に沿う方向において、洗面室14と通路13との間の仕切壁25に重なる位置に配置される。すなわち、開口26は、前後方向1に沿う方向において、出入口12に対向配置される。これにより、開口26は、出入口12から進入する滞在者およびペットの進入方向Mに重なる位置に配置される。
【0039】
洗面室14は、その右方側において、例えば、前後方向1に延び、上下方向3に拡がって床面より高く天井に届き、はめ込み式の窓28を有する仕切壁29を介して居室17に隣接する。また、洗面室14は、第1シンク30と、第2シンク31とを備えている。第1シンク30は、例えば、一般的な滞在者の腰の高さの位置(腰高の位置)に床面からの高さを合わせて配置される。第1シンク30は、例えば、洗面室14において、左方側の界壁11に沿って配置される。
【0040】
第2シンク31は、第1シンク30に隣接して配置される。また、第2シンク31は、第1シンク30よりも床面に近い位置に配置される。第2シンク31は、例えば、ペットである犬の全身を入れることが可能な大きさの領域を有して構成される。本実施形態において、第2シンク31は、前後方向において、第1シンク30に隣接して配置される。具体的には、第2シンク31は、第1シンク30の後方に隣接して配置される。
【0041】
浴室15は、バスユニット32の配置される空間である。浴室15は、洗面室14の前方に隣接して配置される。また、浴室15は、右方側および前方側を部屋10の界壁11に面して配置される。そして、浴室15は、右方側且つ洗面室14に隣接する側(後方側)から前方向に向かう一部において、例えば、上下方向3において床面より高く天井に届き、窓28を有する仕切壁29を介して居室17に隣接する。また、浴室15は、仕切壁29の前方側端縁から前方側の界壁11に至る位置に、上下方向3に拡がり床面より高く天井に届く仕切壁33を介して居室17に隣接する。また、浴室15には、その後方側の境界に、左右方向2に延び、上下方向3に拡がり床面より高く天井より低い仕切壁34が配置される。そして、浴室15は、出入口12および通路13の開口を結ぶ方向(例えば、前後方向1)に重なる仕切壁34の位置に、開口35を有する。開口35は、例えば、浴室15側に開く片開き扉36を有する。
【0042】
窓16は、部屋10の前方側の界壁11に配置される、窓16は、屋外に開口する。窓16は、例えば、後述する居室17の第1領域に位置する。窓16は、例えば、屋外に向けて開く片開き扉37を有する。本実施形態において、窓16は、左右方向2に沿って並べて、複数配置される。
【0043】
居室17は、部屋10の右方側に配置されている。居室17は、平面視略矩形の領域として構成される。居室17は、その左方側において、通路13、洗面室14、および浴室15に隣接して配置される。また、居室17は、後方側、右方側、および前方側を部屋10の界壁11によって区画される。そして、居室17は、
図2に示すように、上下方向3において、床面より高く天井より低い高さの仕切部材27が配置される。仕切部材27は、例えば、居室17の前後方向1の中央位置において左右方向2に延び、居室17を横断する。仕切部材27は、例えば、フェンス扉38、ペットのケージ39、および造作テーブル40などである。本実施形態において、仕切部材27として、左方にフェンス扉38が配置される。また、仕切部材27として、フェンス扉38の右方にケージ39および造作テーブル40が配置される。フェンス扉38は、居室17の左方端縁に接して配置される。造作テーブル40は、居室17の右方端縁に接して配置される。そして、居室17は、仕切部材27によって区画される第1領域41および第2領域42を有している。
【0044】
第1領域41は、例えば、ペットと触れ合えるリビングとして構成される。第1領域41には、非吸水性部材によって構成されるソファー43および机44などが配置される。第1領域41は、仕切部材27によって居室17の前方側に区画される。第1領域41は、非吸水性の部材を床材とする領域として構成される。第1領域41は、左方側において、窓28を有する仕切壁29を介して洗面室14に隣接する。また、第1領域41は、左方側において、窓28を有する仕切壁29と仕切壁33とを介して浴室15に隣接する。第1領域41は、浴室15から、窓28を介して内部を視認可能に構成される。これにより、第1領域41に滞在するペットの様子を浴室15から視認可能に構成される。なお、第1領域41には、
図2に示すように、窓16の上方に通気口45が配置される。
【0045】
また、第1領域41は、窓16に面して配置される土間46を有する。換言すると、土間46は、第1領域41のうち、窓16に面する前方側の領域に配置される。土間46は、他の第1領域41の床面(第1領域41のうち後方側の床面)よりも低い床面を有する。土間46は、例えば、第1領域41の床面から20cm低い床面を有する。本実施形態において、土間46は、左右方向2に延び、前後方向1に幅を有する平面視矩形形状に構成される。そして、土間46は、例えば、ペットの横臥する領域の広さよりも広い領域で構成される。
【0046】
第2領域42は、例えば、ペットの滞在を抑制して、滞在者の就寝する寝室として構成される。第2領域42には、例えば、吸水性部材で構成されるベッド58が配置される。第2領域42は、仕切部材27によって居室17の後方側に区画される。また、第2領域42は、吸水性の部材を床材とする領域として構成される。第2領域42は、左方側において、トイレ18および仕切壁21を介して通路13に隣接する。すなわち、第2領域42は、第1領域41よりも出入口12に近い位置に区画される。また、第2領域42は、第1領域41の床面よりも高い床面を有する。第2領域42は、例えば、第1領域41の床面よりも20cm高い床面を有する。そして、第2領域42は、通路13に開口する。本実施形態において、第2領域42は、前方側であり、仕切部材27に隣接する位置において通路13に開口する。また、第2領域42は、通路13への開口47において、第2領域42側に開く片開き扉48を有する。
【0047】
ここで、仕切部材27は、例えば、第1領域41の床面の高さから、人間の腰の高さ以上の高さを有する。また、仕切部材27は、第2領域42の床面からの高さについて、第2領域42から第1領域41を臨む立位の人間の前後方向1を向く目線を遮らない高さを有する。これにより、仕切部材27は、第1領域41から第2領域42へのペットの移動を抑制しつつ、滞在者によりペットの動向を観察できるようにする。そして、仕切部材27は、第1領域41と第2領域42とを繋ぐ開口49を有する。開口49は、居室17を左右方向2に横断する仕切部材27の一部を開閉可能にすることにより実現される。本実施形態において、開口49は、開閉可能なフェンス扉38を用いて実現される。すなわち、開口49は、フェンス扉38を左右方向2に沿って開く(折り畳む)ことによって開放される。また、開口49は、フェンス扉38を左右方向2に沿って閉じる(展開する)ことによって閉鎖される。本実施形態において、フェンス扉38は、例えば、第2領域42と同じ高さの床面の位置に配置される。
【0048】
また、仕切部材27を構成するケージ39は、左右方向2に延びる造作テーブル40の下方に配置される。すなわち、ケージ39は、造作テーブル40と居室17の床面との間に配置される。本実施形態において、ケージ39は、例えば、造作テーブル40の下面と、第1領域41の床面と同じ高さの床面との間に配置される。ケージ39は、第1領域41に開口する。ケージ39の開口50には、例えば、第1領域41に向けて開く両開き扉51が配置される。両開き扉51が開かれることにより、ケージ39は、第1領域41に滞在するペットの内部への進入を可能にする。ケージ39には、例えば、ペットのベッドなどが配置される。また、仕切部材27を構成する造作テーブル40のケージ39の配置される以外の下方部分には、左右方向2に延びてペットの進入を遮る構造物が配置される。本実施形態において、造作テーブル40のケージ39の配置される以外の下方部分には、左右方向2に延びる下部収納52が配置される。また、下部収納52の後方側には、第1領域41の同じ高さの床面と、第2領域42と同じ高さの床面との間の段差によって区画される空間53が配置される。また、空間53の後方側には、空間53に脚を入れて座る滞在者の座具56が配置される。
【0049】
次に、本実施形態に係る建築物100の使用方法について説明する。
建築物100に宿泊する滞在者およびペットは、出入口12から部屋10に入室する。出入口12から入室した滞在者およびペットは、入室した方向にそのまま直線に沿って進む(進入方向Mに沿って進む)ことにより、通路13および洗面室14の開口26を通り、洗面室14に到達する。洗面室14において、滞在者は、第1シンク30を用いて手洗いをすることができる。また、洗面室14において、滞在者は、第2シンク31を用いてペットの脚を洗うことができる。
【0050】
洗面室14で手足を洗い終えた滞在者およびペットは、通路13、第2領域42から通路13への開口47、および仕切部材27の開口49を通って第1領域41に移動する。滞在者およびペットは、第1領域41において、ペットと触れ合いながら滞在することができる。ペットは、第1領域41において、土間46に移動することができる。また、ペットは、ケージ39の開口50からケージ39の内部に移動することができる。
【0051】
就寝する滞在者は、仕切部材27の開口49を通って第1領域41から第2領域42に移動する。滞在者は、第2領域42においてベッド58を用いて就寝する。また、第2領域42に滞在する滞在者は、第2領域42に着座して、造作テーブル40の下方の空間53に脚を入れた状態で第1領域41に滞在するペットを観察することができる。
【0052】
また、入浴する滞在者は、第2領域42から通路13への開口47、通路13、洗面室14の通路13への開口26、洗面室14、浴室15の通路13への開口35を通って浴室15に入室する。入浴中の滞在者は、浴室15から仕切壁29の窓28を介して、第1領域41に滞在するペットの様子を視認する。
【0053】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、滞在者とペットとが同じ居室17に滞在しつつ、仕切部材27により第1領域41にいるペットが第2領域42に移動することを抑制できる。ペットに起因する汚れが第1領域41に生じても、第1領域41の床材は非吸水性の部材なので清掃が容易である。第2領域42の床材は吸水性の部材なので、滞在者に優しい居心地を与える。仕切部材27は天井より低いので滞在者は、第2領域42から仕切部材27の上方の空間を通じて第1領域41にいるペットを容易に目視できる。第2領域42において滞在者が就寝するときに、ペットをケージ39に入れることにより、意図しないペットの移動を抑制できる。ケージ39は第1領域41に開口するので、第1領域41からペットをケージ39に入れることができる。
【0054】
また、滞在者は、第1領域41において、窓16からの採光による明るい環境下でペットとともに過ごすことができる。また、第2領域42が出入口12の近くに位置することにより、第1領域41に滞在するペットの意図しない出入口12からの出入りを抑制できる。
【0055】
また、滞在者がペットと共に部屋10に戻ってきたときには、出入口12から通路13および洗面室14の開口26を通ってペットが洗面室14に入ることができる。通路13および洗面室14の床材は非吸水性の部材なので、清掃が容易である。また、出入口12から洗面室14までの動線に居室17がないので、外出により脚が汚れたペットが居室17に進入することを抑制できる。
【0056】
また、滞在者用のシンクと、ペット用のシンクとを分けることができる。これにより、滞在者用のシンクの衛生状態を良好に保つことができる。また、第1シンク30よりも低い位置にある第2シンク31を用いて、ペットの脚などの汚れ落としを容易にすることができる。
【0057】
また、出入口12から部屋10に入るペットは、進入方向Mに対して曲がることなく洗面室14の開口26を介して洗面室14に入ることができる。これにより、部屋10に入ってきたペットを容易に洗面室14へ誘導できる。
【0058】
また、非吸水性の通路13にキッチン設備を設けることにより、通路13のスペースを有効活用することができる。
【0059】
また、滞在者は、仕切部材27の開口49を用いて第1領域41と第2領域42との間を行き来することができる。これにより、居室17の利便性を向上することができる。
【0060】
また、滞在者は、第2領域42から第1領域41を見渡すことができる。これにより、滞在者は、第2領域42に滞在する間であっても、ペットの動向を容易に把握することができる。
【0061】
また、ペットに対して、夏場に涼しい環境を提供できるとともに、冬場に暖かい環境を提供することができる。
【0062】
また、ペットの進入を想定していない第2領域42にベッド58を配置することにより、第2領域42においてペットに起因する意図してないベッド58の汚れを抑制することができる。したがって、施設側は部屋10の掃除を容易にすることができる。また、宿泊者側は、他の宿泊者のペットによって汚されたベッド58を使わずに済むという心理的な安心感を得ることができる。
【0063】
[変形例]
上記実施形態では、建築物100を宿泊施設として説明したが、これに限定されない。建築物100は、アパートなどの集合住宅であってもよい。
【0064】
[その他の変形例]
また、上記の実施形態では、第2領域42が通路13に開口するとしたが、これに限定されない。
図3に示すように、これに変えてまたは加えて第1領域41が洗面室14に開口してもよい。第1領域41の開口54は、例えば、引き戸55を有してもよい。これにより。洗面室14で脚を洗ったペットを直接第1領域41に入れることができる。したがって、出入口12から部屋10に入るペットを第1領域41まで導く動線が確保されるので、部屋10の使い勝手を向上することができる。
【0065】
また、ケージ39は、ペット(例えば犬)によって飛び越えることができない高さを有することが好ましい。また、造作テーブル40は、ケージ39の右方端と部屋10の右方の界壁11との間に配置されればよく、これを満たす長さであってもよい。また、ケージ39と造作テーブル40との配置関係は、左右逆の関係であってもよい。
【0066】
また、ケージ39は、仕切部材27として配置されなくてもよい。ケージ39は、例えば、仕切部材27とは別に、第1領域41に配置されてもよく、配置を省略されてもよい。この場合、造作テーブル40の下方の前方側には、造作テーブル40の左右方向2の長さに合わせて下部収納52が配置される。
【0067】
また、仕切部材27は、例えば、造作テーブル40の前方を向く面に配置される可動式の前面パネル(図示せず)を備えてもよい。前面パネルは、例えば、造作テーブル40と一体的に構成されてよい。前面パネルは、例えば、透過性部材によって板状に構成される。前面パネルは、例えば、左右方向2に延び、造作テーブル40の前面の左右方向2の長さに同じまたは略同じ長さを有する。前面パネルの左右方向2の両端のそれぞれは、例えば、造作テーブル40の前面において、左右方向2の端部に配置され、上下方向3に延びて設けられるスライダ(図示せず)に摺動可能に保持される。前面パネルは、例えば、その前面側の面に設けられる把手(図示しない)を用いて、上方向に向けて引き上げられることにより、造作テーブル40の天板を超えて引き出される。また、前面パネルは、引き出された状態でスライダに保持される。これにより、前面パネルは、ペットの種類に応じて仕切部材27の高さを変更することができる。
【0068】
[請求項1]
界壁によって区画された複数の部屋を有する建築物であって、
上記部屋のうち少なくとも一部の部屋は、
居室を備えており、
上記居室は床面より高く天井より低い高さの仕切部材によって区画された第1領域および第2領域を有しており、
上記第1領域の床材は非吸水性の部材であり、
上記第2領域の床材は吸収性の部材であり、
上記仕切部材は上記第1領域に開口するケージを有する建築物。
【0069】
[請求項2]
上記部屋は上記部屋の外に開口する出入口と、屋外に開口する窓とを有しており、
上記窓は、上記第1領域に位置しており、
上記第2領域は、上記第1領域よりも上記出入口に近い位置にある請求項1に記載の建築物。
【0070】
[請求項3]
界壁によって区画された複数の部屋を有する建築物であって、
上記部屋のうち少なくとも一部の部屋は、
上記部屋の外に開口する出入口と、
上記出入口に連なる通路と、
上記通路への開口を有する洗面室と、
居室と、を備えており、
上記通路および上記洗面室の床材は、非吸水性の部材であり、
上記居室は、床面より高く天井より低い高さの仕切部材によって区画された第1領域及び第2領域を有しており、
上記第1領域の床材は非吸水性の部材であり、
上記第2領域の床材は吸水性の部材であり、
上記第2領域は、上記通路に開口する建築物。
【0071】
[請求項4]
上記部屋は、屋外に開口する窓を有しており、
上記窓は、上記第1領域に位置しており、
上記第2領域は、上記第1領域よりも上記出入口に近い位置にある請求項3に記載の建築物。
【0072】
[請求項5]
上記洗面室は、
第1シンクと、
上記第1シンクより低い位置にある第2シンクと、を有する請求項3または4に記載の建築物。
【0073】
[請求項6]
上記出入口と上記洗面室とは、上記通路を介して対向している請求項3または4に記載の建築物。
【0074】
[請求項7]
上記通路に、第3シンクおよび調理台を有するキッチン設備が位置する請求項3または4に記載の建築物。
【0075】
[請求項8]
上記仕切部材は、上記第1領域と上記第2領域とを繋ぐ開口を有する請求項1または3に記載の建築物。
【0076】
[請求項9]
上記第2領域の床面は、上記第1領域の床面よりも高い請求項1または3に記載の建築物。
【0077】
[請求項10]
上記第1領域は、上記窓に面する土間を有する請求項2または4に記載の建築物。
【0078】
[請求項11]
上記建築物は、宿泊施設であり、
上記第2領域に、ベッドが位置する請求項1または3に記載の建築物。
【符号の説明】
【0079】
10・・・部屋
11・・・界壁
12・・・出入口
13・・・通路
14・・・洗面室
15・・・浴室
16・・・窓
17・・・居室
23・・・第3シンク
24・・・調理台
27・・・仕切部材
30・・・第1シンク
31・・・第2シンク
38・・・フェンス扉
39・・・ケージ
40・・・造作テーブル
41・・・第1領域
42・・・第2領域
46・・・土間
100・・・建築物