(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035294
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】液圧ポンプの性能低下検知システム
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20240307BHJP
F04B 51/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F15B20/00 D
F04B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139664
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】片岡 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】梅川 淳
【テーマコード(参考)】
3H082
3H145
【Fターム(参考)】
3H082AA02
3H082BB26
3H082CC02
3H082DA18
3H082DA46
3H082DE05
3H145AA04
3H145AA24
3H145AA33
3H145DA11
3H145EA13
3H145FA18
3H145FA23
(57)【要約】
【課題】流量計を用いることなく液圧ポンプの性能低下を検知することができる液圧ポンプの性能低下検知システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る液圧ポンプの性能低下検知システム1Aは、液圧アクチュエータ5へ作動液を供給して液圧アクチュエータ5を作動させる、原動機2により駆動される液圧ポンプ3と、液圧ポンプ3から吐出された作動液が流れる流路64に設けられた、開位置と閉位置との間で切り換え可能な切換弁65と、原動機2の回転数を変更可能な制御装置7を備える。制御装置7は、液圧アクチュエータ5の非作動時に、切換弁65が閉位置に切り換えられた状態で、原動機2の回転数および圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧に基づいて液圧ポンプ3の性能が低下したか否かを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧アクチュエータへ作動液を供給して前記液圧アクチュエータを作動させる、原動機により駆動される液圧ポンプと、
前記液圧ポンプから吐出された作動液が流れる流路に設けられた、前記流路を開放する開位置と、前記流路を閉塞する閉位置との間で切り換え可能な切換弁と、
前記原動機の回転数を変更可能な制御装置と、
前記切換弁よりも上流側で前記液圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサと、を備え、
前記制御装置は、前記液圧アクチュエータの非作動時に、前記切換弁が前記閉位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数および前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧に基づいて前記液圧ポンプの性能が低下したか否かを判定する、液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項2】
液圧アクチュエータへ作動液を供給して前記液圧アクチュエータを作動させる、原動機により駆動される液圧ポンプと、
前記液圧ポンプから吐出された作動液が流れる流路に設けられた、前記流路を開放する開位置と、開度が1~70%の範囲内の特定絞り位置との間で切り換え可能な切換弁と、
前記原動機の回転数を変更可能な制御装置と、
前記切換弁よりも上流側で前記液圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサと、を備え、
前記制御装置は、前記液圧アクチュエータの非作動時に、前記切換弁が前記特定絞り位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数および前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧に基づいて前記液圧ポンプの性能が低下したか否かを判定する、液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記切換弁が前記閉位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数を変化させ、前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧が閾値となったときの回転数を判定用回転数として記憶し、記憶した前記判定用回転数を予め記憶された基準回転数と比較し、前記判定用回転数が前記基準回転数よりも設定値以上大きい場合は、前記液圧ポンプの性能が低下したと判定する、請求項1に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記切換弁が前記特定絞り位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数を変化させ、前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧が閾値となったときの回転数を判定用回転数として記憶し、記憶した前記判定用回転数を予め記憶された基準回転数と比較し、前記判定用回転数が前記基準回転数よりも設定値以上大きい場合は、前記液圧ポンプの性能が低下したと判定する、請求項2に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧が前記閾値となったときの回転数を前記判定用回転数として記憶する際に、前記原動機の回転数を所定値から増加させる、請求項3または4に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項6】
前記液圧ポンプは、最小容量がゼロよりも大きく設定された可変容量型のポンプであり、
前記液圧ポンプの容量を変更するレギュレータをさらに備え、
前記制御装置は、前記液圧ポンプの性能が低下したか否かの判定を、前記液圧ポンプの容量が最小となるように前記レギュレータを制御した状態で行う、請求項3または4に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項7】
前記液圧ポンプは、制御弁を介して前記液圧アクチュエータへ作動液を供給し、
前記流路は、前記液圧ポンプと前記制御弁とを接続する供給流路から分岐するアンロード流路であり、
前記切換弁は、前記開位置と前記閉位置との間で開度が任意に変更可能なアンロード弁である、請求項1または3に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項8】
前記液圧ポンプは、制御弁を介して前記液圧アクチュエータへ作動液を供給し、
前記流路は、前記液圧ポンプと前記制御弁とを接続する供給流路から分岐するアンロード流路であり、
前記切換弁は、前記開位置と前記アンロード流路を閉塞する閉位置との間で開度が任意に変更可能なアンロード弁である、
請求項2または4に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項9】
前記アンロード弁はスプールを内蔵するスプール弁であり、前記開位置および前記閉位置の一方ならびに前記特定絞り位置は前記スプールのストロークエンドである、請求項8に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項10】
前記液圧ポンプは、閉回路を形成するように一対の給排流路により前記液圧アクチュエータと接続された両方向ポンプであり、
前記流路は、前記一対の給排流路の少なくとも一方である、請求項1または3に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【請求項11】
前記液圧ポンプは、アキシャルピストンポンプである、請求項1~4の何れか一項に記載の液圧ポンプの性能低下検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液圧ポンプの性能低下を検知するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液圧ポンプから液圧アクチュエータへ作動液を供給する液圧回路が知られている。このような液圧回路では、液圧ポンプの性能低下を検知することが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、液圧ポンプからのドレン流量を流量計で計測し、そのドレン流量に基づいて液圧ポンプが摩耗したか否かを判定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドレン流量は僅かであるため、流量計の計測値は計測精度の影響を受け易い。故に、流量計で計測されるドレン流量に基づいて、液圧ポンプの摺動部分の摩耗による吐出流量の微量低下などの液圧ポンプの性能低下を検知することは困難である。
【0006】
そこで、本開示は、流量計を用いることなく液圧ポンプの性能低下を検知することができる液圧ポンプの性能低下検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一つの側面から、液圧アクチュエータへ作動液を供給して前記液圧アクチュエータを作動させる、原動機により駆動される液圧ポンプと、前記液圧ポンプから吐出された作動液が流れる流路に設けられた、前記流路を開放する開位置と、前記流路を閉塞する閉位置との間で切り換え可能な切換弁と、前記原動機の回転数を変更可能な制御装置と、前記切換弁よりも上流側で前記液圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサと、を備え、前記制御装置は、前記液圧アクチュエータの非作動時に、前記切換弁が前記閉位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数および前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧に基づいて前記液圧ポンプの性能が低下したか否かを判定する、液圧ポンプの性能低下検知システムを提供する。
【0008】
本開示は、別の側面から、液圧アクチュエータへ作動液を供給して前記液圧アクチュエータを作動させる、原動機により駆動される液圧ポンプと、前記液圧ポンプから吐出された作動液が流れる流路に設けられた、前記流路を開放する開位置と、開度が1~70%の範囲内の特定絞り位置との間で切り換え可能な切換弁と、前記原動機の回転数を変更可能な制御装置と、前記切換弁よりも上流側で前記液圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサと、を備え、前記制御装置は、前記液圧アクチュエータの非作動時に、前記切換弁が前記特定絞り位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数および前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧に基づいて前記液圧ポンプの性能が低下したか否かを判定する、液圧ポンプの性能低下検知システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、流量計を用いることなく液圧ポンプの性能低下を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る液圧ポンプの性能低下検知システムの概略構成図である。
【
図2】原動機の回転数と液圧ポンプの吐出圧との関係を示すグラフである。
【
図3】第1実施形態の変形例を示す概略構成図である。
【
図4】第1実施形態の別の変形例を示す概略構成図である。
【
図5】第2実施形態に係る液圧ポンプの性能低下検知システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態に係る液圧ポンプの性能低下検知システム1Aを示す。本実施形態は、液圧ポンプ3の性能低下の検知を、例えば建設機械の液圧回路で行うことができるように構成したものである。建設機械としては、油圧ショベルや油圧クレーンなどが挙げられる。
【0012】
液圧ポンプ3は、原動機2により駆動される。本実施形態では、原動機2がエンジンである。ただし、原動機2は電動モータであってもよい。また、本実施形態では、液圧ポンプ3がアキシャルピストンポンプ(斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)である。ただし、液圧ポンプ3は、ベーンポンプ、ギヤポンプ、スクリューポンプなどの他の形式のポンプであってもよい。
【0013】
さらに、本実施形態では、液圧ポンプ3が可変容量型のポンプである。液圧ポンプ3の容量(一回転あたりの吐出量)はレギュレータ31により変更される。液圧ポンプ3の容量は最小容量と最大容量との間で任意に変更可能である。本実施形態では、液圧ポンプ3の最小容量がゼロよりも大きく設定されている。ただし、液圧ポンプ3の最小容量はゼロであってもよい。レギュレータ31は、電気信号により作動する。
【0014】
例えば、液圧ポンプ3が斜板ポンプである場合、レギュレータ31は、液圧ポンプ3の斜板と連結されたサーボピストンに作用する液圧を電気的に変更するものであってもよいし、液圧ポンプ3の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0015】
液圧ポンプ3は、複数の液圧アクチュエータ5へ複数の制御弁4を介して作動液を供給してそれらの液圧アクチュエータ5を作動させる。図例では液圧アクチュエータ5の数が2つであるが、液圧アクチュエータ5の数は1つであってもよいし(この場合、制御弁4の数も1つである)、3つ以上であってもよい。
【0016】
液圧ポンプ3は、供給流路61により制御弁4と接続されている。つまり、供給流路61は、液圧ポンプ3から延びる共通路と、共通路から分岐して制御弁4にそれぞれつながる複数の分岐路を含む。また、制御弁4は、タンク流路62によりタンクと接続されている。供給流路61の共通路からはリリーフ流路が分岐し、このリリーフ流路にリリーフ弁が設けられる。
【0017】
本実施形態では、液圧アクチュエータ5が双方向に作動する複動シリンダまたは液圧モータである。このため、各制御弁4が、一対の給排流路63により対応する液圧アクチュエータ5と接続されている。
【0018】
各制御弁4は、例えば、スプールを内蔵するスプール弁である。各制御弁4は、中立位置と第1作動位置と第2作動位置との間で切り換え可能である。各制御弁4は、中立位置では、供給流路61、タンク流路62、一対の給排流路63の全てを閉塞する。第1作動位置または第2作動位置では、各制御弁4は、供給流路61を一方の給排流路63と連通させるとともに、他方の給排流路63をタンク流路62と連通させる。
【0019】
各制御弁4は、対応する液圧アクチュエータ5を作動させるための操作装置の操作量に応じて作動する。本実施形態では、各制御弁4が一対のパイロットポートを有する。操作装置が電気ジョイスティックである場合、各制御弁4の一対のパイロットポートには一対の電磁比例弁がそれぞれ接続される。各制御弁4は、それらの電磁比例弁を介して制御装置7により制御される。
【0020】
制御装置7は、操作装置の操作量が大きくなるほど、対応する制御弁4の作動量(すなわち、開口面積)を大きくする。また、制御装置7は、操作装置の操作量が大きくなるほど、液圧ポンプ3の容量が増大するようにレギュレータ31を制御する。
【0021】
なお、操作装置が操作量に応じたパイロット圧を出力するパイロット操作弁である場合、各制御弁4の一対のパイロットポートはそのパイロット操作弁と接続される。あるいは、各制御弁4は、制御装置7によって直接的に制御される電磁弁であってもよい。
【0022】
制御装置7に関し、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0023】
供給流路61の共通路からはアンロード流路64が分岐しており、このアンロード流路64はタンクまで延びている。本実施形態では、アンロード流路64が全ての制御弁4を通過するセンターバイパス流路を兼ねている。
【0024】
各制御弁4は、中立位置ではアンロード流路64を開放し(開度100%)、中立位置からの作動量が大きくなるにつれてアンロード流路64に対する開度が小さくなり、少なくとも作動量が最大となるときにアンロード流路64を閉塞する(開度0%)。すなわち、いずれかの制御弁4がアンロード流路64を閉塞するか後述するアンロード弁65がアンロード流路64を閉塞しない限り、アンロード流路64には、液圧ポンプ3から吐出された作動液が流れる。
【0025】
アンロード流路64には、全ての制御弁4の下流側にアンロード弁65が設けられている。アンロード弁65は、アンロード流路64を開放する開位置(開度100%)と、アンロード流路を閉塞する閉位置(開度0%)との間で切り換え可能である。アンロード弁65の開度は、開位置と閉位置との間で任意に変更可能である。本実施形態では開位置が中立位置であるが、閉位置が中立位置であってもよい。
【0026】
本実施形態では、アンロード弁65がスプールを内蔵するスプール弁である。すなわち、中立位置である開位置がスプールの一方のストロークエンドであり、閉位置がスプールの他方のストロークエンドである。換言すれば、中立位置ではスプリングによってスプールがストッパーに押し付けられ、閉位置ではスプールがそのストッパーから最も遠ざかる(フルストローク)。
【0027】
アンロード弁65は、本実施形態ではソレノイドを含む電磁弁であり、制御装置7により制御される。つまり、上述した中立位置がソレノイドの非励磁状態である。制御装置7は、上述した操作装置の操作量が大きくなるほど、アンロード弁65の開度を小さくする。なお、アンロード弁65がソレノイドではなくパイロットポートを含み、そのパイロットポートが、アンロード弁とは別に設けられた電磁弁と接続されてもよい。この場合、アンロード弁65が電磁弁を介して制御装置7により制御される。
【0028】
また、制御装置7は、原動機2の回転数を変更可能なものである。本実施形態では、原動機2がエンジンであるので、制御装置7は燃料噴射量を制御する。制御装置7は、燃料噴射量を制御するエンジン制御装置と、レギュレータ31を制御するポンプ制御装置とに分かれてもよい。
【0029】
制御装置7は、原動機2に設けられた回転数計71、および供給流路61の共通路に設けられた圧力センサ72と電気的に接続されている。回転数計71は原動機2の回転数を計測し、圧力センサ72は液圧ポンプ3の吐出圧を計測する。上述したように、アンロード流路64は供給流路61の共通路から分岐しているので、圧力センサ72は、アンロード弁65よりも上流側で液圧ポンプ3の吐出圧を計測する。
【0030】
制御装置7は、液圧アクチュエータ5の非作動時、すなわち液圧ポンプ3が液圧アクチュエータ5へ作動液を供給していないときに、液圧ポンプ3に対する性能確認を行う。
【0031】
より詳しくは、制御装置7は、まず、液圧ポンプ3の容量が最小となるようにレギュレータ31を制御する。なお、通常は、液圧アクチュエータ5の非作動時は液圧ポンプ3の容量は最小に維持されるため、制御装置7がレギュレータ31に新たな動作を指示することはない。
【0032】
ついで、制御装置7は、原動機2の回転数を、ある程度低い所定値Nsとする。例えば、通常時の原動機2の回転数が1000~2500rpmの範囲内で一定に保たれる場合、所定値Nsは通常時の原動機2の回転数よりも低い値(例えば、900~1800rpm)であってもよい。
【0033】
その後、制御装置7は、アンロード弁65を閉位置に切り換える。これにより、液圧ポンプ3の吐出圧がリリーフ弁の設定圧(リリーフ圧)を超えない限り、液圧ポンプ3からの作動液の吐出が遮断されることになる。
【0034】
液圧ポンプ3からの作動液の吐出が遮断された状態では、原動機2の回転数が所定値Nsのようにある程度低いときは、液圧ポンプ3の内部リークなど(本実施形態では、制御弁4のリークもある)により液圧ポンプ3の吐出圧はそれほど高くならない。
【0035】
その状態で、制御装置7は、回転数計71で計測される原動機2の回転数、および圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧に基づいて、液圧ポンプ3の性能が低下したか否かを判定する。この判定は、上述したように液圧ポンプ3の容量が最小となるようにレギュレータ31が制御された状態で行われる。
【0036】
より詳しくは、制御装置7は、
図2に示すように、原動機2の回転数を所定値Nsから増加させ、圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったとき、換言すれば液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptまで上昇したときの回転数を判定用回転数N1として記憶する。
【0037】
制御装置7には、基準回転数N0が予め記憶されている。基準回転数N0は、液圧ポンプ3に異常が無い場合(例えば、液圧ポンプ3を含む液圧駆動装置が機械に取り付けられた後の短時間の運転後の工場出荷前、または機械完成後の工場出荷直後の運転時間の短い時期で)の、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったときの回転数である。基準回転数N0としては、より簡易的にポンプ単体での性能確認で得られた、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったときの回転数を用いてもよい。
【0038】
制御装置7は、記憶した判定用回転数N1を基準回転数N0と比較し、判定用回転数N1が基準回転数N0よりも設定値V以上大きい場合(N1-N0≧V)は、液圧ポンプ3の低能が低下したと判定する。一方、判定用回転数N1が基準回転数N0よりも設定値V以上大きくない場合(N1-N0<V)、制御装置7は、液圧ポンプ3の低能が低下していないと判定する。
【0039】
原動機2の回転数をある程度低い所定値Nsから増加させると、液圧ポンプ3の異常(例えば、液圧ポンプ3が斜板ポンプである場合、ピストンの先端に設けられる、斜板と摺動するシューの摩耗や、バルブプレートとシリンダブロックとの間の摺動面の摩耗)の度合いによって、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなるときの回転数が変化する。従って、本実施形態のように原動機2の回転数および液圧ポンプ3の吐出圧を使用することにより、流量計を用いることなく液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。しかも、ドレン流量を計測するよりも高精度に液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。
【0040】
さらには、建設機械用の液圧回路は、アンロード弁65が設けられたアンロード流路64、および液圧ポンプ3の吐出圧を計測する圧力センサ72を含むものが多いので、このような液圧回路では、機器を追加することなく液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。また、油圧駆動装置に含まれるポンプ以外の僅かな漏れについても含めて計測することになり、即ち、ポンプ単体でのポンプ内部のリークだけに注目するのではなく液圧回路における制御弁4等の影響を含めてはかることができるので、機械個別のばらつきの影響を受けずに、ポンプ性能劣化を精密に判定することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、液圧ポンプ3の容量が最小とされた後に原動機2の回転数が所定値Nsから増加されるので、液圧ポンプ3の性能が低下したときの判定用回転数N1と基準回転数N0との差が大きくなる。このため、液圧ポンプ3の性能低下の検知精度を向上させることができる。
【0042】
<変形例>
前記実施形態では、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったときの回転数を判定用回転数N1として記憶する際、制御装置7は、原動機2の回転数をある程度低い所定値Nsから増加させた。これとは逆に、制御装置7は、原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させ、圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptまで低下したときの回転数を判定用回転数N1として記憶してもよい。原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させる場合でも、液圧ポンプ3の異常の度合いによって、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなるときの回転数が変化する。従って、この場合でも原動機2の回転数および液圧ポンプ3の吐出圧を使用することにより、流量計を用いることなく液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。また、原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させる場合でも、液圧ポンプ3の容量が最小とされた後に原動機2の回転数が所定値から減少されれば、液圧ポンプ3の性能が低下したときの判定用回転数N1と基準回転数N0との差が大きくなり、液圧ポンプ3の性能低下の検知精度を向上させることができる。
【0043】
また、
図3に示す変形例の性能低下検知システム1Bのように、アンロード弁65は、開位置と閉位置と特定絞り位置との間で切り換え可能であってもよい。特定絞り位置は、開度が1~70%の範囲内の所定値に設定された位置である。アンロード弁65の開度は開位置とこれに隣接する閉位置の間では任意に変更可能である。
【0044】
図3では、特定絞り位置が中立位置であり、開位置が閉位置を挟んで特定絞り位置と反対側に位置する。すなわち、中立位置である特定絞り位置がスプールの一方のストロークエンドであり、開位置がスプールの他方のストロークエンドである。ただし、開位置が特定絞り位置と閉位置の間にあり、特定絞り位置および閉位置がストロークエンドであってもよい。あるいは、アンロード弁65の開位置と閉位置のどちらかが一方のストロークエンドである中立位置であり、特定絞り位置が他方のストロークエンドであってもよい。このように特定絞り位置がストロークエンドであれば、特定絞り位置での開度の再現性を保証することができる。
【0045】
図3に示すようにアンロード弁65が特定絞り位置に切り換え可能である場合も、原動機2はエンジンであってもよいし、電動モータであってもよい。
【0046】
性能低下検知システム1Bでは、制御装置7が、液圧ポンプ3に対する性能確認の際に、原動機2の回転数を所定値Nsとした後に、アンロード弁65を特定絞り位置に切り換える。これにより、液圧ポンプ3からの作動液の吐出が制限される。この状態で、制御装置7が原動機2の回転数を所定値Nsから増加させる。その後の制御装置7が行う処理は前記実施形態と同様である。
【0047】
液圧ポンプ3からの作動液の吐出が制限された状態でも、前記実施形態と同様に、原動機2の回転数が所定値Nsのようにある程度低いときは、液圧ポンプ3の内部リークなどにより液圧ポンプ3の吐出圧はそれほど高くならない。一方、原動機2の回転数をある程度低い所定値Nsから増加させると、液圧ポンプ3の異常の度合いによって、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなるときの回転数が変化する。従って、性能低下検知システム1Bでも、原動機2の回転数および液圧ポンプ3の吐出圧を使用することにより、流量計を用いることなく液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。しかも、ドレン流量を計測するよりも高精度に液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。
【0048】
図3に示す変形例では、液圧ポンプ3の性能確認を高精度に再現するために、アンロード弁65の開口面積が特定絞り位置で一定となるような対策が望まれる。これに対し、前記実施形態のように液圧ポンプ3に対する性能確認の際にアンロード弁65が閉位置に切り換えられれば、そのような対策を行うことなく、液圧ポンプ3の性能確認を高精度に再現することができる。
【0049】
なお、
図3に示す変形例でも、制御装置7は、原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させ、圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptまで低下したときの回転数を判定用回転数N1として記憶してもよい。原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させる場合でも、液圧ポンプ3の異常の度合いによって、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなるときの回転数が変化する。
【0050】
図3に示す変形例では、アンロード弁65は開位置と特定絞り位置との間でのみ切り替え可能であってもよく、アンロード流路64はアンロード弁65によって閉塞されなくてもよい。この場合、制御弁4もセンターバイパス流路を兼ねるアンロード流路64を閉塞せず、アンロード流路64は常に閉塞されなくてもよい。
【0051】
また、
図4に示す別の変形例の性能低下検知システム1Cのように、アンロード流路64が全ての制御弁4を通過するセンターバイパス流路を兼ねず、制御弁4を経由せずにタンクまで延びてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
図5に、第2実施形態に係る液圧ポンプの性能低下検知システム1Dを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0053】
本実施形態は、液圧ポンプ3の性能低下の検知を、例えば産業機械の液圧回路で行うことができるように構成したものである。産業機械としては、プレス機械などが挙げられる。
【0054】
液圧ポンプ3は、液圧アクチュエータ5へ作動液を供給して液圧アクチュエータ5を作動させる。本実施形態では、液圧ポンプ3を駆動する原動機2が電動モータ(例えば、サーボモータ)である。第1実施形態と同様に、原動機2の回転数は回転数計71で計測されて制御装置7へ入力される。
【0055】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、制御装置7が原動機2の回転数を変更可能なものである。原動機2がサーボモータである場合、制御装置7はサーボアンプを介して原動機2の回転数を変更する。
【0056】
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、液圧ポンプ3が、最小容量がゼロよりも大きく設定された可変容量型のアキシャルピストンポンプである。液圧ポンプ3の容量は、第1実施形態と同様にレギュレータ31により最小容量と最大容量の間で任意に変更される。ただし、液圧ポンプ3は、第1容量と第2容量との間で容量が選択的に切り換え可能な二位置切換式の可変容量ポンプであってもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、液圧ポンプ3が、両方向に回転可能な両方向ポンプである。すなわち、液圧ポンプ3は第1ポートおよび第2ポートを有し、一方向に回転するときに第1ポートが吸入ポート、第2ポートが吐出ポートとなり、逆方向に回転するときに、第2ポートが吸入ポート、第1ポートが吐出ポートとなる。
【0058】
ただし、両方向ポンプは、回転方向が一方向であって、斜板がセンターから両側に傾倒可能な斜板ポンプであってもよい。この場合、原動機2はエンジンであってもよい。
【0059】
両方向ポンプである液圧ポンプ3は、閉回路を形成するように一対の給排流路81,82により液圧アクチュエータ5と接続されている。本実施形態では、液圧アクチュエータ5が鉛直下向きに伸長するとともに鉛直上向きに短縮する複動シリンダである。つまり、給排流路81はヘッド側の流路、給排流路82はロッド側の流路であり、液圧アクチュエータ5の伸長時には給排流路81に液圧ポンプ3から吐出された作動液が流れ、液圧アクチュエータ5の短縮時には給排流路82に液圧ポンプ3から吐出された作動液が流れる。
【0060】
給排流路81は補給流路91によりタンクと接続されており、補給流路91には逆止弁が設けられている。同様に、給排流路82は補給流路92によりタンクと接続されており、補給流路92には逆止弁が設けられている。また、給排流路81,82のそれぞれには、リリーフ弁94が設けられたリリーフ流路93が接続されている。
【0061】
ロッド側の給排流路82には、速度切換弁84が設けられているとともに、速度切換弁84をバイパスするようにバイパス流路85が接続されている。バイパス流路85には、リリーフ弁86が設けられている。
【0062】
速度切換弁84は、ロッドの上昇時および低速下降時に中立位置に位置する。中立位置では、速度切換弁84は、液圧ポンプ3から液圧アクチュエータ5へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する逆止弁として機能する。すなわち、ロッドの低速下降時は、液圧アクチュエータ5のロッド側圧力がリリーフ弁の設定圧(リリーフ圧)に保たれながらロッドが下降する。ロッドの高速下降時、速度切換弁84は制御装置7によって双方向の流れを許容する開位置に切り換えられる。なお、
図5では、図面の簡略化のために一部の信号線の作図を省略する。
【0063】
ヘッド側の給排流路81には、切換弁83が設けられている。切換弁83は、給排流路81を開放する開位置と、給排流路81を閉塞する閉位置との間で切り換えられる。本実施形態では開位置が中立位置であるが、閉位置が中立位置であってもよい。
【0064】
さらに、給排流路81には、切換弁83と液圧ポンプ3との間に圧力センサ73が設けられている。つまり、液圧アクチュエータ5の伸長時、圧力センサ73は切換弁83よりも上流側で液圧ポンプ3の吐出圧を計測する。
【0065】
制御装置7には、液圧アクチュエータ5の伸張指令である第1操作信号および液圧アクチュエータの短縮指令である第2操作信号が入力される。制御装置7は、第1操作信号および第2操作信号に基づいて液圧ポンプ3を駆動する原動機2である電動モータおよびレギュレータ31を制御する。
【0066】
第1実施形態と同様に、制御装置7は、液圧アクチュエータ5の非作動時、すなわち液圧ポンプ3が液圧アクチュエータ5へ作動液を供給していないときに、液圧ポンプ3に対する性能確認を行う。
【0067】
より詳しくは、制御装置7は、まず、液圧ポンプ3の容量が最小となるようにレギュレータ31を制御する。ついで、制御装置7は、切換弁83を閉位置に切り換える。これにより、液圧ポンプ3が給排流路81へ作動液を吐出する方向に回転するときは、液圧ポンプ3の吐出圧がリリーフ弁94の設定圧(リリーフ圧)を超えない限り、液圧ポンプ3からの作動液の吐出が遮断されることになる。
【0068】
その後、制御装置7は、原動機2の回転数を、ある程度低い所定値Nsとする。所定値Nsは、0rpmであってもよいし、0rpmよりも大きな値(例えば、1~200rpmの範囲内の値)であってもよい。所定値Nsが0rpmよりも大きい場合、制御装置7は、液圧ポンプ3が給排流路81へ作動液を吐出する方向に原動機2を回転させる。
【0069】
液圧ポンプ3からの作動液の吐出が遮断された状態では、原動機2の回転数が所定値Nsのようにある程度低いときは、液圧ポンプ3の内部リークなどにより液圧ポンプ3の吐出圧はそれほど高くならない。
【0070】
その状態で、制御装置7は、回転数計71で計測される原動機2の回転数、および圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧に基づいて、液圧ポンプ3の性能が低下したか否かを判定する。この判定は、上述したように液圧ポンプ3の容量が最小となるようにレギュレータ31が制御された状態で行われる。
【0071】
より詳しくは、制御装置7は、
図2に示すように、原動機2の回転数を所定値Nsから増加させ、圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったとき、換言すれば液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptまで上昇したときの回転数を判定用回転数N1として記憶する。
【0072】
制御装置7には、基準回転数N0が予め記憶されている。基準回転数N0は、液圧ポンプ3に異常が無い場合(例えば、液圧ポンプ3が含まれる液圧駆動装置が機械に取り付けられた後の短時間の運転後の工場出荷前、または機械完成後の工場出荷直後の運転時間の短い時期で)の、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったときの回転数である。基準回転数N0としては、より簡易的にポンプ単体での性能確認で得られた、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったときの回転数を用いてもよい。
【0073】
制御装置7は、記憶した判定用回転数N1を基準回転数N0と比較し、判定用回転数N1が基準回転数N0よりも設定値V以上大きい場合(N1-N0≧V)は、液圧ポンプ3の低能が低下したと判定する。一方、判定用回転数N1が基準回転数N0よりも設定値V以上大きくない場合(N1-N0<V)、制御装置7は、液圧ポンプ3の低能が低下していないと判定する。
【0074】
原動機2の回転数をある程度低い所定値Nsから増加させると、液圧ポンプ3の異常(例えば、液圧ポンプ3が斜板ポンプである場合、ピストンの先端に設けられる、斜板と摺動するシューの摩耗や、バルブプレートとシリンダブロックとの間の摺動面の摩耗)の度合いによって、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなるときの回転数が変化する。従って、本実施形態のように原動機2の回転数および液圧ポンプ3の吐出圧を使用することにより、流量計を用いることなく液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。しかも、ドレン流量を計測するよりも高精度に液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。
【0075】
また、本実施形態では、液圧ポンプ3の容量が最小とされた後に原動機2の回転数が所定値Nsから増加されるので、液圧ポンプ3の性能が低下したときの判定用回転数N1と基準回転数N0との差が大きくなる。このため、液圧ポンプ3の性能低下の検知精度を向上させることができる。
【0076】
<変形例>
前記実施形態では、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなったときの回転数を判定用回転数N1として記憶する際、制御装置7は、原動機2の回転数をある程度低い所定値Nsから増加させた。これとは逆に、制御装置7は、原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させ、圧力センサ72で計測される液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptまで低下したときの回転数を判定用回転数N1として記憶してもよい。原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させる場合でも、液圧ポンプ3の異常の度合いによって、液圧ポンプ3の吐出圧が閾値Ptとなるときの回転数が変化する。従って、この場合でも原動機2の回転数および液圧ポンプ3の吐出圧を使用することにより、流量計を用いることなく液圧ポンプ3の性能低下を検知することができる。また、原動機2の回転数をある程度高い所定値から減少させる場合でも、液圧ポンプ3の容量が最小とされた後に原動機2の回転数が所定値から減少されれば、液圧ポンプ3の性能が低下したときの判定用回転数N1と基準回転数N0との差が大きくなり、液圧ポンプ3の性能低下の検知精度を向上させることができる。
【0077】
また、切換弁83は、ヘッド側の給排流路81ではなく、ロッド側の給排流路82に設けられ、制御装置7が、液圧ポンプ3に対する性能確認の際に、液圧ポンプ3が給排流路82へ作動液を吐出する方向に原動機2を回転させてもよい。あるいは、切換弁83は、給排流路81,82の双方に設けられてもよい。
【0078】
(その他の実施形態)
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0079】
例えば、液圧回路によっては、液圧ポンプ3は固定容量型のポンプであってもよい。
【0080】
(まとめ)
第1の態様として、本開示は、1つの側面から、液圧アクチュエータの作動時に前記液圧アクチュエータへ作動液を供給する、原動機により駆動される液圧ポンプと、前記液圧ポンプから吐出された作動液が流れる流路に設けられた、前記流路を開放する開位置と、前記流路を閉塞する閉位置との間で切り換え可能な切換弁と、前記原動機の回転数を変更可能な制御装置と、前記切換弁よりも上流側で前記液圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサと、を備え、前記制御装置は、前記液圧アクチュエータの非作動時に、前記切換弁が前記閉位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数および前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧に基づいて前記液圧ポンプの性能が低下したか否かを判定する、液圧ポンプの性能低下検知システムを提供する。
【0081】
上記の構成によれば、切換弁が閉位置に切り換えられることで液圧ポンプからの作動液の吐出が遮断された状態では、原動機の回転数がある程度低いときは、液圧ポンプの内部リークなどにより液圧ポンプの吐出圧はそれほど高くならない。一方、原動機の回転数をある程度低い回転数から増加させるかある程度高い回転数から減少させると、液圧ポンプの異常の度合いによって、液圧ポンプの吐出圧が閾値となるときの回転数が変化する。従って、原動機の回転数および液圧ポンプの吐出圧を使用することにより、流量計を用いることなく液圧ポンプの性能低下を検知することができる。しかも、ドレン流量を計測するよりも高精度に液圧ポンプの性能低下を検知することができる。
【0082】
第2の態様として、本開示は、別の側面から、液圧アクチュエータの作動時に前記液圧アクチュエータへ作動液を供給する、原動機により駆動される液圧ポンプと、前記液圧ポンプから吐出された作動液が流れる流路に設けられた、前記流路を開放する開位置と、開度が1~70%の範囲内の特定絞り位置との間で切り換え可能な切換弁と、前記原動機の回転数を変更可能な制御装置と、前記切換弁よりも上流側で前記液圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサと、を備え、前記制御装置は、前記液圧アクチュエータの非作動時に、前記切換弁が前記特定絞り位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数および前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧に基づいて前記液圧ポンプの性能が低下したか否かを判定する、液圧ポンプの性能低下検知システムを提供する。
【0083】
上記の構成によれば、切換弁が特定絞り位置に切り換えられることで液圧ポンプからの作動液の吐出が制限された状態では、原動機の回転数がある程度低いときは、液圧ポンプの内部リークなどにより液圧ポンプの吐出圧はそれほど高くならない。一方、原動機の回転数をある程度低い回転数から増加させるかある程度高い回転数から減少させると、液圧ポンプの異常の度合いによって、液圧ポンプの吐出圧が閾値となるときの回転数が変化する。従って、原動機の回転数および液圧ポンプの吐出圧を使用することにより、流量計を用いることなく液圧ポンプの性能低下を検知することができる。しかも、ドレン流量を計測するよりも高精度に液圧ポンプの性能低下を検知することができる。
【0084】
第3の態様として、第1の態様において、例えば、前記制御装置は、前記切換弁が前記閉位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数を変化させ、前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧が閾値となったときの回転数を判定用回転数として記憶し、記憶した前記判定用回転数を予め記憶された基準回転数と比較し、前記判定用回転数が前記基準回転数よりも設定値以上大きい場合は、前記液圧ポンプの性能が低下したと判定してもよい。
【0085】
第4の態様として、第2の態様において、例えば、前記制御装置は、前記切換弁が前記特定絞り位置に切り換えられた状態で、前記原動機の回転数を変化させ、前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧が閾値となったときの回転数を判定用回転数として記憶し、記憶した前記判定用回転数を予め記憶された基準回転数と比較し、前記判定用回転数が前記基準回転数よりも設定値以上大きい場合は、前記液圧ポンプの性能が低下したと判定してもよい。
【0086】
第5の態様として、第3または第4の態様において、例えば、前記制御装置は、前記圧力センサで計測される前記液圧ポンプの吐出圧が前記閾値となったときの回転数を前記判定用回転数として記憶する際に、前記原動機の回転数を所定値から増加させてもよい。
【0087】
第6の態様として、第3~第5の態様の何れかにおいて、前記液圧ポンプは、最小容量がゼロよりも大きく設定された可変容量型のポンプであり、上記の性能低下検知システムは、前記液圧ポンプの容量を変更するレギュレータをさらに備え、前記制御装置は、前記液圧ポンプの性能が低下したか否かの判定を、前記液圧ポンプの容量が最小となるように前記レギュレータを制御した状態で行ってもよい。この構成によれば、液圧ポンプの性能が低下したときの判定用回転数と基準回転数との差が大きくなる。このため、液圧ポンプの性能低下の検知精度を向上させることができる。
【0088】
第7の態様として、第1、第3、第5および第6の態様の何れかにおいて、前記液圧ポンプは、制御弁を介して前記液圧アクチュエータへ作動液を供給し、前記流路は、前記液圧ポンプと前記制御弁とを接続する供給流路から分岐するアンロード流路であり、前記切換弁は、前記開位置と前記閉位置との間で開度が任意に変更可能なアンロード弁であってもよい。この構成によれば、液圧ポンプの性能低下の検知を、例えば建設機械の液圧回路で行うことができる。しかも、建設機械用の液圧回路は、アンロード弁が設けられたアンロード流路、および液圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサを含むものが多いので、このような液圧回路では、機器を追加することなく液圧ポンプの性能低下を検知することができる。
【0089】
第8の態様として、第2、第4~第6の態様の何れかにおいて、前記液圧ポンプは、制御弁を介して前記液圧アクチュエータへ作動液を供給し、前記流路は、前記液圧ポンプと前記制御弁とを接続する供給流路から分岐するアンロード流路であり、前記切換弁は、前記開位置と前記アンロード流路を閉塞する閉位置との間で開度が任意に変更可能なアンロード弁であってもよい。この構成によれば、第6の態様と同様の効果を得ることができる。
【0090】
第9の態様として、第8の態様において、前記アンロード弁はスプールを内蔵するスプール弁であり、前記開位置および前記閉位置の一方ならびに前記特定絞り位置は前記スプールのストロークエンドであってもよい。この構成によれば、特定絞り位置での開度の再現性を保証することができる。
【0091】
第10の態様として、第1、第3~第7の態様の何れかにおいて、前記液圧ポンプは、前記液圧ポンプは、閉回路を形成するように一対の給排流路により前記液圧アクチュエータと接続された両方向ポンプであり、前記流路は、前記一対の給排流路の少なくとも一方であってもよい。この構成によれば、液圧ポンプの性能低下の検知を、例えば産業機械の液圧回路で行うことができる。
【0092】
第11の態様として、第1~第10の態様の何れかにおいて、例えば、前記液圧ポンプは、アキシャルピストンポンプであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1A~1D 液圧ポンプの性能低下検知システム
2 原動機
3 液圧ポンプ
31 レギュレータ
4 制御弁
5 液圧アクチュエータ
61 供給流路
64 アンロード流路
65 アンロード弁(切換弁)
7 制御装置
71,72 圧力センサ
81,82 給排流路
83 切換弁