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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035320
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20240307BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240307BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240307BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60W40/06
G08G1/00 J
G08G1/16 C
G01B11/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139708
(22)【出願日】2022-09-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】松倉 由幸
【テーマコード(参考)】
2F065
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA04
2F065AA54
2F065BB01
2F065BB22
2F065BB25
2F065CC11
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF11
2F065FF49
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065LL32
2F065LL34
2F065LL47
2F065QQ13
2F065SS09
2F065SS13
3D241BA49
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE06
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC46Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181EE11
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】路面上の水溜まり等の特徴的な領域の有無及び当該領域の位置の検出精度を向上させる。
【解決手段】車両制御装置10は、車両の前方に入射する入射光を第1の入射光と第2の入射光に分光する分光部11と、第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を通過させる第1偏光部12と、第2の入射光のうち、第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を通過させる第2偏光部13と、第1偏光部12を通過した光を撮像する第1撮像部14と、第2偏光部13を通過した光を撮像する第2撮像部15と、第1撮像部14が撮像した第1撮像画像と、第2撮像部15が撮像した第2撮像画像との差分に基づいて、車両の前方の路面上の特徴領域を特定し、当該特徴領域の位置を特定する特定部171と、特定部171が特定した特徴領域の位置に基づいて車両の走行を制御する走行制御部172と、を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方から入射する入射光を第1の入射光と第2の入射光に分光する分光部と、
前記第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を通過させる第1偏光部と、
前記第2の入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を通過させる第2偏光部と、
前記第1偏光部を通過した光を撮像する第1撮像部と、
前記第2偏光部を通過した光を撮像する第2撮像部と、
前記第1撮像部が撮像した第1撮像画像と、前記第2撮像部が撮像した第2撮像画像との差分に基づいて、前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定し、当該特徴領域の位置を特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記特徴領域の位置に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とで差が所定以上ある領域を特定し、特定した領域の形状に基づいて前記特徴領域を特定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記差が所定以上ある領域の形状が所定の形状とは異なる場合に、当該領域を前記特徴領域として特定する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記差分の状態に基づいて前記特徴領域における路面の状態の種別を特定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記走行制御部は、前記特定部が特定した前記路面の状態の種別に基づいて前記車両の走行を制御する、
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記走行制御部は、前記車両が前記特徴領域を避けるように前記車両の走行を制御する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記第1撮像部及び前記第2撮像部は、同じ露光時間で通過光を撮像する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項8】
車両の前方から入射した入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して、第1撮像画像を取得する第1撮像部と、
前記入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して、第2撮像画像を取得する第2撮像部と、
前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とに基づいて前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記特徴領域に基づく通知を行う通知部と、
を有する車両制御装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する、
車両の前方に入射する入射光から分光させた第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像した第1撮像画像を取得するステップと、
前記入射光から分光させた第2の入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像した第2撮像画像を取得するステップと、
取得した前記第1撮像画像と、前記第2撮像画像との差分に基づいて、前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定し、当該特徴領域の位置を特定するステップと、
特定した前記特徴領域の位置に基づいて前記車両の走行を制御するステップと、
を有する車両制御方法。
【請求項10】
コンピュータが実行する、
車両の前方から入射した入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して、第1撮像画像を取得するステップと、
前記入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して、第2撮像画像を取得するステップと、
前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とに基づいて前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定するステップと、
特定した前記特徴領域に基づく通知を行うステップと、
を有する車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の進行方向の路面に存在する水溜まり等の路面状態が変化する領域及び位置を特定し、当該領域を回避するように車両の走行を制御することが行われている。例えば、特許文献1には、偏光フィルタを介して撮像した画像と、偏光フィルタを介さずに撮像した画像と比較することにより水溜まり等を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-151121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術を用いて水溜まり等を検出する場合、偏光フィルタの偏向角によっては、偏光フィルタを介して撮像した画像と、偏光フィルタを介さずに撮像した画像との差分が十分に検出されず、水溜まり等の検出精度が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、路面上の水溜まり等の特徴的な領域の有無及び当該領域の位置の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る車両制御装置は、車両の前方から入射する入射光を第1の入射光と第2の入射光に分光する分光部と、前記第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を通過させる第1偏光部と、前記第2の入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を通過させる第2偏光部と、前記第1偏光部を通過した光を撮像する第1撮像部と、前記第2偏光部を通過した光を撮像する第2撮像部と、前記第1撮像部が撮像した第1撮像画像と、前記第2撮像部が撮像した第2撮像画像との差分に基づいて、前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定し、当該特徴領域の位置を特定する特定部と、前記特定部が特定した前記特徴領域の位置に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御部と、を有する。
【0007】
前記特定部は、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とで差が所定以上ある領域を特定し、特定した領域の形状に基づいて前記特徴領域を特定してもよい。
前記特定部は、前記差が所定以上ある領域の形状が所定の形状とは異なる場合に、当該領域を前記特徴領域として特定してもよい。
前記特定部は、前記差分の状態に基づいて前記特徴領域における路面の状態の種別を特定してもよい。
【0008】
前記走行制御部は、前記特定部が特定した前記路面の状態の種別に基づいて前記車両の走行を制御してもよい。
前記走行制御部は、前記車両が前記特徴領域を避けるように前記車両の走行を制御してもよい。
前記第1撮像部及び前記第2撮像部は、同じ露光時間で通過光を撮像してもよい。
【0009】
本発明の第2の態様に係る車両制御装置は、車両の前方から入射した入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して、第1撮像画像を取得する第1撮像部と、前記入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して、第2撮像画像を取得する第2撮像部と、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とに基づいて前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定する特定部と、前記特定部が特定した前記特徴領域に基づく通知を行う通知部と、を有する。
【0010】
本発明の第3の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが実行する、車両の前方に入射する入射光から分光させた第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像した第1撮像画像を取得するステップと、前記入射光から分光させた第2の入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像した第2撮像画像を取得するステップと、取得した前記第1撮像画像と、前記第2撮像画像との差分に基づいて、前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定し、当該特徴領域の位置を特定するステップと、特定した前記特徴領域の位置に基づいて前記車両の走行を制御するステップと、を有する。
【0011】
本発明の第4の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが実行する、車両の前方から入射した入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して、第1撮像画像を取得するステップと、前記入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して、第2撮像画像を取得するステップと、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とに基づいて前記車両の前方の路面上の特徴領域を特定するステップと、特定した前記特徴領域に基づく通知を行うステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、路面上の水溜まり等の特徴的な領域の有無及び当該領域の位置の検出精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両制御装置の概要を説明するための図である。
図2】車両制御装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[車両制御装置10の概要]
図1は、車両制御装置10の概要を説明するための図である。車両制御装置10は、例えば、バスやトラック等の車両がオートクルーズモードで走行している場合に、車両の走行制御を行うコンピュータである。車両制御装置10は、車両が走行する路面において特定の条件を満たす特徴領域を特定し、当該特徴領域の位置に基づいて車両の走行を制御する。なお、特徴領域は、路面状態が他の領域に対して異なる(変化する)領域であり、特徴領域は、状態変化領域と表現することもできる。
【0015】
図1に示すように、車両制御装置10は、車両の前方から当該車両に入射する入射光を第1の入射光と第2の入射光とに分光する。車両制御装置10は、第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して第1撮像画像を生成するとともに、第2の入射光のうち、第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して第2撮像画像を生成する。
【0016】
車両制御装置10は、生成した第1撮像画像と第2撮像画像との差分に基づいて、車両の前方の路面上において路面状態が変化する領域である状態変化領域を特定し、当該状態変化領域の位置に基づいて車両の走行を制御する。
【0017】
道路上に形成された水溜まり、アイスバーン、油等は、光を乱反射する。車両制御装置10は、第1の方向に偏光した光を撮像して生成した第1撮像画像と、第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して生成した第2撮像画像とに基づいて光の乱反射が起こっている領域を、状態変化領域(特徴領域)として特定する。互いに垂直な方向に交わる方向に偏光された光を撮像した画像を用いることにより、乱反射が起こっている領域をより正確に特定することが可能となる。これにより車両制御装置10は、状態変化領域の有無の検出精度及び状態変化領域の位置の検出精度を向上させることができる。
【0018】
[車両制御装置10の構成]
続いて、車両制御装置10の構成について説明する。車両制御装置10は、図1に示すように、センサ1と、ECU2とに接続されている。
【0019】
センサ1は、車両に関する情報を測定するセンサである。センサ1は、複数のセンサから構成されていてもよい。センサ1は、例えば、速度センサ、加速度センサ、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、ステアリングセンサ等が含まれる。また、センサ1には、運転者が操舵を行っていることを検出するために用いる操舵角センサが含まれる。また、センサ1には、LiDAR(Light Detection and Ranging)やSRR(Short Range Radar)が含まれる。
【0020】
ECU2は、車両の制御を行うプロセッサである。ECU2は、1もしくは2以上のECUから構成されていてもよい。ECU2は、例えば、車両に設けられているECUであり、エンジン制御ECU、ブレーキ制御ECU、トランスミッション制御ECU、パワーステアリングECU等が含まれる。ECU2は、車両がオートクルーズモードで走行している場合に、車両制御装置10の制御に応じてエンジン、ブレーキ、トランスミッション、パワーステアリングを制御する。
【0021】
車両制御装置10は、図1に示すように、分光部11と、第1偏光部12と、第2偏光部13と、第1撮像部14と、第2撮像部15と、記憶部16と、制御部17とを有する。制御部17は、特定部171と、走行制御部172とを有する。
【0022】
分光部11は、例えばハーフミラーであり、車両の前方に設けられている。分光部11は、車両の前方に入射する入射光を第1の入射光と第2の入射光に分光する。
第1偏光部12及び第2偏光部13は、例えば偏光板である。第1偏光部12は、第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を通過させる。第2偏光部13の偏光軸は、第1偏光部12の偏光軸と直交しており、第2の入射光のうち、第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を通過させる。
【0023】
第1撮像部14及び第2撮像部15は、例えば撮像装置である。第1撮像部14は、第1偏光部12を通過した光である第1の通過光を撮像する。第1撮像部14は、露光時間を数ミリ秒~十ミリ秒とし、所定のフレームレートで通過光を撮像し、所定の時間間隔で第1撮像画像を生成する。第1撮像部14は、生成した第1撮像画像を制御部17に出力する。
【0024】
第2撮像部15は、第2偏光部13を通過した光である第2の通過光を撮像する。第2撮像部15は、第1撮像部14と同じ露光時間で第2の通過光を撮像する。第2撮像部15は、第1撮像部14と同様に、露光時間を数ミリ秒~十ミリ秒とし、第1撮像部14のフレームレートと同じフレームレートで第2の通過光を撮像する。第2撮像部15は、第1撮像部14が第1撮像画像を生成する時間間隔と同じ時間間隔で第2撮像画像を生成し、生成した第2撮像画像を制御部17に出力する。第2撮像部15は、第1撮像部14と同じ撮像タイミングで第2の通過光を撮像するようにしてもよい。
【0025】
このように、第1撮像部14と第2撮像部15とが、同じ露光時間で通過光を撮像することにより、第1撮像画像と第2撮像画像とにおいて、乱反射しない領域に差分が生じないようにすることができる。これにより、車両制御装置10は、乱反射しない領域が状態変化領域として誤検出されてしまうことを抑制することができる。さらに、第1撮像部14と第2撮像部15とが、同じタイミングで第1撮像画像及び第2撮像画像を生成する場合、同一の状態の被写体が撮像されるので、誤検出の確率をさらに下げることができる。
【0026】
記憶部16は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)である。記憶部16は、制御部17を機能させるための各種のプログラムを記憶する。記憶部16は、制御部17を、特定部171及び走行制御部172として機能させるプログラムを記憶する。
【0027】
制御部17は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部17は、記憶部16に記憶されているプログラムを実行することにより、特定部171及び走行制御部172として機能する。
【0028】
特定部171は、第1撮像部14が撮像した第1撮像画像と、第2撮像部15が撮像した第2撮像画像との差分に基づいて、車両の前方の路面上において路面状態が変化する領域である状態変化領域を特定し、当該状態変化領域の位置を特定する。
【0029】
具体的には、まず、特定部171は、第1撮像部14が生成した第1撮像画像を所定の時間間隔で取得するとともに、第2撮像部15が生成した第2撮像画像を所定の時間間隔で取得する。続いて、特定部171は、取得した第1撮像画像と、第2撮像画像との同じ座標における画素値の差分を算出することにより差分画像を生成する。なお、差分画像の生成に用いる第1撮像画像と第2撮像画像は、所定の時間間隔で取得された撮像画像のうち、同じタイミング又は互いに時間的に近接するタイミングで撮像されたものであるとする。また、特定部171は、取得した第1撮像画像、第2撮像画像、又はセンサ1に含まれるLiDAR、又はSRRにより検出された三次元空間情報に基づいて、車両の前方の路面の領域を特定する。
【0030】
続いて、特定部171は、差分画像において所定の条件を満たす領域を、状態変化領域として特定する。特定部171は、差分画像に基づいて、第1撮像画像と第2撮像画像とで差がある領域を特定し、特定した領域の形状に基づいて、状態変化領域を特定する。例えば、特定部171は、差分画像における車両の前方の路面に対応する領域のうち、画素値の値が所定の閾値を超える領域を特定する。そして、特定部171は、特定した領域の形状を特定し、特定した形状が予め定められた形状とは異なる場合に、当該領域を状態変化領域として特定する。また、特定部171は、特定した状態変化領域の路面上の位置を特定する。例えば、特定部171は、状態変化領域の路面上の位置として、状態変化領域の範囲と、車線中央からの横位置と、車両からの距離とを特定する。予め定められた形状は、例えば、交差点等において車両の運転者に注意を促すために乱反射物質が塗布された路面上の領域を車両から撮像した場合に撮像画像に映る当該領域の形状である。予め定められた形状は、例えば、台形、矩形、又はこれらを組み合わせた形状である。
【0031】
走行制御部172は、例えば、車両がオートクルーズモードで走行している場合、車両が走行する車線内を所定の速度で走行するように各種ECU2を制御する。走行制御部172は、特定部171が状態変化領域の位置を特定すると、特定した状態変化領域の位置に基づいて車両の走行を制御する。例えば、走行制御部172は、当該状態変化領域の位置に基づいて各種ECU2に含まれるパワーステアリングECUを制御することにより、車両が状態変化領域を避けて走行するように、車両の操舵を制御する。
【0032】
また、走行制御部172は、特定部171が特定した状態変化領域の位置に基づいて、各種ECU2に含まれるエンジン制御ECU、ブレーキ制御ECU、トランスミッション制御ECUを制御することにより、特定部171が特定した状態変化領域の位置において車両が所定速度未満で走行するように、車両の速度を制御してもよい。
【0033】
なお、走行制御部172は、路面の状態の種別に基づいて車両の走行を制御してもよい。この場合、まず、特定部171は、第1撮像画像と第2撮像画像との差分の状態に基づいて、状態変化領域における路面の状態の種別を特定してもよい。例えば、予め、複数の種別それぞれに対応する路面の状態を撮像し、第1撮像画像と第2撮像画像との差分画像に含まれる状態変化領域の特徴を示す特徴情報を抽出しておく。そして、複数の種別それぞれと、対応する特徴情報とを関連付けて記憶部16に記憶しておく。複数の種別は、例えば、水溜まり、アイスバーン、油である。
【0034】
特定部171は、第1撮像画像と第2撮像画像との差分の状態に基づいて特定した状態変化領域の特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報と一致又は類似する特徴情報に関連付けられている種別を、特定した状態変化領域における路面の状態の種別として特定する。
【0035】
そして、走行制御部172は、特定部171が特定した路面の状態の種別に基づいて、車両の走行を制御してもよい。例えば、走行制御部172は、状態変化領域の路面の状態の種別が油、アイスバーンである場合、速度を低下して走行しても車両の挙動が不安定になる可能性があることから、状態変化領域の位置を避けるとともに、当該状態変化領域を通過するタイミングで車両が所定速度未満で走行するように、車両の速度、車両の操舵角を制御してもよい。また、走行制御部172は、状態変化領域の路面の状態の種別が水溜まりである場合、速度を低下して走行することにより、車両が安定して走行できるとともに、水しぶきが発生することを抑制することができることから、状態変化領域を通過するタイミングで車両が所定速度未満で走行するように、車両の速度を制御してもよい。このようにすることで、車両制御装置10は、特定した種別に対して適切な走行制御を行うことができる。
【0036】
[車両制御装置10における処理の流れ]
続いて、車両制御装置10における処理の流れについて説明する。図2は、車両制御装置10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、車両がオートクルーズモードで走行している場合における処理の流れを示している。
【0037】
まず、第1撮像部14が、分光部11により分光した第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して第1撮像画像を生成するとともに、第2撮像部15が、分光部11により分光した第2の入射光のうち、当該第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して第2撮像画像を生成する(S1)。
続いて、特定部171は、S1で生成された第1撮像画像と第2撮像画像との差分画像を生成する(S2)。
【0038】
続いて、特定部171は、差分画像に基づいて状態変化領域が路面に存在するか否かを判定する(S3)。特定部171は、状態変化領域が路面に存在しないと判定すると(S3のNO)、S4に処理を移す。S4において、走行制御部172は、車両が走行する車線内を所定の速度で走行するように各種ECU2を制御する。
【0039】
特定部171は、状態変化領域が路面に存在すると判定すると(S3のYES)、S5に処理を移し、路面における状態変化領域の位置を特定する。続いて、走行制御部172は、状態変化領域の位置に基づいて各種ECU2を制御することにより、車両の走行を制御する(S6)。
【0040】
走行制御部172は、オートクルーズモードによる走行が終了したか否かを判定する(S7)。走行制御部172は、オートクルーズモードによる走行が終了したと判定すると(S7のYES)、本フローチャートに係る処理を終了し、オートクルーズモードによる走行が終了していないと判定すると(S7のNO)、S1に処理を移す。
【0041】
[変形例]
なお、上述の実施の形態では、車両制御装置10は、状態変化領域の位置を特定すると、特定した状態変化領域の位置に基づいて車両の走行を制御することとしたが、これに限らない。車両制御装置10は、特定部171が特定した状態変化領域に関する情報を車両の運転者に通知する通知部をさらに有していてもよい。この場合、通知部は、車両の前方に対し、状態変化領域が存在し、運転に注意を促す警告情報を、車両に設けられている表示部(非表示)に表示させる。このようにすることで、運転者は、状態変化領域が存在することを認識し、注意して運転を行うことができる。また、運転者の車両前方の視界の一部に重なるヘッドアップディスプレイを備える車両において、通知部は、特定部171が特定した状態変化領域の位置に基づいて、ヘッドアップディスプレイに状態変化領域の位置を示す表示を行い、状態変化領域の位置を運転者に通知してもよい。
【0042】
[本実施の形態の効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る車両制御装置10は、車両の前方に入射する入射光から分光させた第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像した第1撮像画像と、当該入射光から分光させた第2の入射光のうち、第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像した第2撮像画像とを取得する。車両制御装置10は、取得した第1撮像画像と、第2撮像画像との差分に基づいて、車両の前方の路面において路面状態が変化する領域である状態変化領域と、当該領域の位置とを特定し、特定した状態変化領域の位置に基づいて車両の走行を制御する。このようにすることで、車両制御装置10は、状態変化領域の有無の検出精度及び状態変化領域の位置の検出精度を向上させることができる。
【0043】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0044】
1 センサ
2 ECU
10 車両制御装置
11 分光部
12 第1偏光部
13 第2偏光部
14 第1撮像部
15 第2撮像部
16 記憶部
17 制御部
171 特定部
172 走行制御部
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方から入射する入射光を第1の入射光と第2の入射光に分光する分光部と、
前記第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を通過させる第1偏光部と、
前記第2の入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を通過させる第2偏光部と、
前記第1偏光部を通過した光を撮像する第1撮像部と、
前記第2偏光部を通過した光を撮像する第2撮像部と、
前記第1撮像部が撮像した第1撮像画像と、前記第2撮像部が撮像した第2撮像画像との差分に基づいて、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とで差が所定量以上ある領域を特定し、特定した領域の形状が所定の形状とは異なる場合に、当該領域を前記車両の前方の路面上の特徴領域として特定し、当該特徴領域の位置を特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記特徴領域の位置に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記差分の状態に基づいて前記特徴領域における路面の状態の種別を特定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行制御部は、前記特定部が特定した前記路面の状態の種別に基づいて前記車両の走行を制御する、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記走行制御部は、前記車両が前記特徴領域を避けるように前記車両の走行を制御する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第1撮像部及び前記第2撮像部は、同じ露光時間で通過光を撮像する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
車両の前方から入射した入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して、第1撮像画像を取得する第1撮像部と、
前記入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して、第2撮像画像を取得する第2撮像部と、
前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とに基づいて、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とで差が所定量以上ある領域を特定し、特定した領域の形状が所定の形状とは異なる場合に、当該領域を前記車両の前方の路面上の特徴領域として特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記特徴領域に基づく通知を前記車両の運転者に行う通知部と、
を有する車両制御装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
車両の前方に入射する入射光から分光させた第1の入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像した第1撮像画像を取得するステップと、
前記入射光から分光させた第2の入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像した第2撮像画像を取得するステップと、
取得した前記第1撮像画像と、前記第2撮像画像との差分に基づいて、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とで差が所定量以上ある領域を特定し、特定した領域の形状が所定の形状とは異なる場合に、当該領域を前記車両の前方の路面上の特徴領域として特定し、当該特徴領域の位置を特定するステップと、
特定した前記特徴領域の位置に基づいて前記車両の走行を制御するステップと、
を有する車両制御方法。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
車両の前方から入射した入射光のうち、第1の方向に偏光した光を撮像して、第1撮像画像を取得するステップと、
前記入射光のうち、前記第1の方向と直交する第2の方向に偏光した光を撮像して、第2撮像画像を取得するステップと、
前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とに基づいて、前記第1撮像画像と前記第2撮像画像とで差が所定量以上ある領域を特定し、特定した領域の形状が所定の形状とは異なる場合に、当該領域を前記車両の前方の路面上の特徴領域として特定するステップと、
特定した前記特徴領域に基づく通知を前記車両の運転者に行うステップと、
を有する車両制御方法。