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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035332
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】石膏ボードの搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
B25J15/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139726
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】505355162
【氏名又は名称】有限会社アイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】津村 雅彦
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707FS01
3C707FT06
3C707FT08
(57)【要約】
【課題】石膏ボードを確実に吸着して上昇させ、搬送することができ、出荷作業等の負荷を軽減できる搬送装置を提供する。
【解決手段】昇降自在に吊り下げられて吸引ホース15が連結されたエアーボックス14と、エアーボックス14に下方へ向けて取り付けられた吸着パッド1とを備えた石膏ボードBの搬送装置において、吸着パッド1は、通気性のない剛体の保持部材2と、独立気泡構造のスポンジ製の吸着部材3とから成り、保持部材2は、平板状の基盤部2aから上方に延びる通気管2bを有し、通気管2bがエアーボックス14に接続され、通気管2bを介してエアーボックス14と基盤部2aの下方とが連通し、吸着部材3は、保持部材2の基盤部2aより大きく、基盤部2aの周縁から外周寄りの部分が全周にわたって張り出すように、基盤部2aの上面に固定されることなく載置されているものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降自在に吊り下げられて吸引ホース(15)が連結されたエアーボックス(14)と、前記エアーボックス(14)に下方へ向けて取り付けられた吸着パッド(1)とを備え、
石膏ボードを前記吸着パッド(1)で吸着して上昇させ、所定の場所へ移動した後、下降させて吸着を解除する石膏ボードの搬送装置において、
前記吸着パッド(1)は、通気性のない剛体の保持部材(2)と、独立気泡構造のスポンジ製の吸着部材(3)とから成り、
前記保持部材(2)は、平板状の基盤部(2a)から上方に延びる通気管(2b)を有するものであり、前記通気管(2b)が前記エアーボックス(14)に接続され、前記通気管(2b)を介して前記エアーボックス(14)と前記基盤部(2a)の下方とが連通し、
前記吸着部材(3)は、前記保持部材(2)の基盤部(2a)より大きく、前記基盤部(2a)の周縁から外周寄りの部分が全周にわたって張り出すように、前記基盤部(2a)の上面に固定されることなく載置されていることを特徴とする石膏ボードの搬送装置。
【請求項2】
前記エアーボックス(14)には、両側へ突出して前記吸着パッド(1)を石膏ボードに押し付けるためのハンドル(4)と、昇降操作を行う昇降レバー(5)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の石膏ボードの搬送装置。
【請求項3】
前記吸着パッド(1)には、前記吸着部材(3)が前記保持部材(2)の基盤部(2a)から張り出した部分に、前記吸着部材(3)を捲り上げて吸着を解除するための開放用レバー(6)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の石膏ボードの搬送装置。
【請求項4】
建屋内の天井付近に固定された固定レー(10a)ルと、前記固定レール(10a)に対し直交方向へ延設され、前記固定レール(10a)に沿って移動する移動レール(10b)と、前記移動レール(10b)に沿って移動する昇降用モーター(11)及び吸着用ファン(12)とを備え、
前記吸着パッド(1)が取り付けられるエアーボックス(14)は、前記昇降用モーター(11)の出力側から吊り下げられ、前記吸着用ファン(12)と前記エアーボックス(14)とが前記吸引ホース(15)を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の石膏ボードの搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石膏ボードの出荷作業等に使用される吸着パッドを備えた搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、ボード状の搬送物を吸着して搬送する搬送装置として、外側が硬質ゴム状部材から成り、内側が軟質ゴム状部材から成る椀状の吸着パッドを備えたものが記載されている。この吸着パッドは、ボード状の搬送物に内側の軟質ゴム状部材を押し付けると、外側の硬質ゴム状部材が軟質ゴム状部材の変形を抑制するように保持して、軟質ゴム状部材の搬送物への密着力が増大するものとされている。
【0003】
また、下記特許文献2には、表面に凹凸が存在し、又は粉粒体が付着しているボード状の搬送物を吸着して搬送する吸着パッドとして、独立気泡構造のスポンジ製の吸着部材と蛇腹式の吸着部材とを同心円状に設け、蛇腹式の吸着部材及びスポンジ製の吸着部材を搬送物に順次押し付けるものが記載されている。
【0004】
ところで、建物の壁や天井の内装材として広く使用されている石膏ボードは、不規則な斑模様を呈する凹凸を表面と裏面に有し、表裏に透過する通気性を有するため、特許文献1,2に記載されたような吸着パッドでは吸着されず、製造工場からの出荷等に際し、人力でパレットへの積み上げ等の作業を行わざるを得なかった。
【0005】
このため、本出願人は、図5に示すような吸着パッドを試作した。この吸着パッド60は、金属製の保持部材61と、独立気泡構造のスポンジ製の吸着部材62とから成り、保持部材61は、円板状の基盤部61aから上方に延びる通気管61bを有し、吸着部材62は、基盤部61aよりも大径の円板状とされ、保持部材61の基盤部61aの下面に接着されている。そして、保持部材61の通気管61bが吸着部材62の中心部の吸気穴62aに連通している。
【0006】
このような吸着パッド60の通気管61bの上端部を吸引ポンプ等に接続し、吸着部材62を石膏ボードの表面に押し当てて、石膏ボードを持ち上げようとしたところ、石膏ボードは吸着パッド60に吸着されず、持ち上げることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-176580号公報
【特許文献2】特開2004-34195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような吸着パッドで石膏ボードを持ち上げることができない原因は、吸着パッドと石膏ボードとの接触面や石膏ボードの裏面側から吸着パッドの内部に多くの空気が入り込み、一定時間に吸着パッドの内部に入り込む空気量が吸引される空気量を上回っているため、吸着パッドの内部が負圧にならないことによると考えられる。
【0009】
そこで、この発明は、吸着パッドの内部に入り込む空気量を抑制して、石膏ボードを確実に吸着して上昇させ、搬送することができ、石膏ボードの出荷作業等の負荷を軽減できる搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、この発明は、昇降自在に吊り下げられて吸引ホースが連結されたエアーボックスと、前記エアーボックスに下方へ向けて取り付けられた吸着パッドとを備え、
石膏ボードを前記吸着パッドで吸着して上昇させ、所定の場所へ移動した後、下降させて吸着を解除する石膏ボードの搬送装置において、
前記吸着パッドは、通気性のない剛体の保持部材と、独立気泡構造のスポンジ製の吸着部材とから成り、
前記保持部材は、平板状の基盤部から上方に延びる通気管を有するものであり、前記通気管が前記エアーボックスに接続され、前記通気管を介して前記エアーボックスと前記基盤部の下方とが連通し、
前記吸着部材は、前記保持部材の基盤部より大きく、前記基盤部の周縁から外周寄りの部分が全周にわたって張り出すように、前記基盤部の上面に固定されることなく載置されているものとしたのである。
【0011】
また、前記エアーボックスには、両側へ突出して前記吸着パッドを石膏ボードに押し付けるためのハンドルと、昇降操作を行う昇降レバーとを備えているものとしたのである。
【0012】
また、前記吸着パッドには、前記吸着部材が前記保持部材の基盤部から張り出した部分に、前記吸着部材を捲り上げて吸着を解除するための開放用レバーが設けられているものとしたのである。
【0013】
そして、建屋内の天井付近に固定された固定レールと、前記固定レールに対し直交方向へ延設され、前記固定レールに沿って移動する移動レールと、前記移動レールに沿って移動する昇降用モーター及び吸着用ファンとを備え、
前記吸着パッドが取り付けられるエアーボックスは、前記昇降用モーターの出力側から吊り下げられ、前記吸着用ファンと前記エアーボックスとが前記吸引ホースを介して接続されているものとしたのである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る石膏ボードの搬送装置では、吸着パッドを石膏ボードの表面に押し付けて、保持部材の通気管を介し吸着パッドの内部の空気を吸引すると、保持部材の基盤部が吸着部材の外周部で囲まれた状態で、互いに固定されていない吸着部材と保持部材の基盤部との間の空気も吸引され、吸着部材が保持部材の基盤部を石膏ボードの表面に強く押し付けるので、吸着パッドの内部に入り込む空気量が抑制され、石膏ボードを上昇させて落下させることなく搬送することができ、出荷作業等の負荷を軽減できる。
【0015】
また、エアーボックスに吸着パッドを石膏ボードに押し付けるためのハンドルと、昇降操作を行う昇降レバーとを備えたので、吸着パッドを石膏ボードの表面に確実に密着させて、昇降及び移動操作を容易に行うことができる。
【0016】
また、吸着パッドの吸着部材が保持部材から張り出した部分に、吸着部材を捲り上げる開放用レバーを設けたので、石膏ボードの搬送後、吸着パッドの内部の負圧を迅速に解消し、吸着パッドを石膏ボードから分離することができる。
【0017】
そして、吸着パッドの内部の空気の吸引に際して、重量があり吸込能力の高い吸引ポンプを使用せず、軽量で比較的吸込能力の低い吸着用ファンを使用しても、吸着パッドが石膏ボードに対して十分強く吸着するので、吸着用ファンを昇降用モーターと共に天井付近の移動レールに備えることができ、吸引ホースを短いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施形態に係る石膏ボードの搬送装置の全体構成を示す正面図
図2】同上の吸着パッドを示す(a)平面図、(b)縦方向断面図
図3】同上の吸着パッドによる石膏ボードの吸着状態を示す斜視図
図4】同上の吸着パッドによる石膏ボードの吸着状態を示す正面図
図5】試作に係る吸着パッドを示す(a)平面図、(b)縦方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示す石膏ボードBの搬送装置は、建屋内の天井付近に固定された固定レール10aと、固定レール10aに対し直交方向へ延設され、固定レール10aに沿って移動する移動レール10bと、移動レール10bに沿って一体に移動する昇降用モーター11及び吸着用ファン12とを備えている。そして、昇降用モーター11の出力側からベルト13を介しエアーボックス14が昇降自在に吊り下げられ、吸着用ファン12とエアーボックス14とは吸引ホース15を介して接続されている。エアーボックス14には、下方へ向けて吸着パッド1が取り付けられている。
【0021】
図2に示すように、吸着パッド1は、通気性のない剛体である金属製の保持部材2と、独立気泡構造のスポンジ製の吸着部材3とから成る。
【0022】
保持部材2は、円形平板状の基盤部2aから上方に延びる通気管2bを有し、通気管2bは、基盤部2aの中心部の下面で開口している。
【0023】
吸着部材3は、保持部材2の基盤部2aより大径の円形平板状であり、中心部に穿設された貫穴3aに通気管2bが挿通され、基盤部2aの周縁から外周寄りの部分が全周にわたって張り出すように、基盤部2aの上面に固定されることなく載置されている。
【0024】
そして、保持部材2の通気管2bがエアーボックス14に接続されることにより、通気管2bを介してエアーボックス14と基盤部2aの下方とが連通している。
【0025】
図3及び図4に示すように、エアーボックス14は、両側へ突出して吸着パッド1を石膏ボードBに押し付けるためのハンドル4と、昇降操作を行う昇降レバー5とを備えている。昇降レバー5の操作指示は、エアーボックス14に付設された送信機16から昇降用モーター11に付設された受信機17へ無線送信される。
【0026】
吸着パッド1には、吸着部材3が保持部材2の基盤部2aから張り出した部分に、吸着部材3を捲り上げて吸着を解除するための開放用レバー6が設けられている。
【0027】
上記のような搬送装置を使用して、石膏ボードBをパレットへの積み上げ等のため搬送する際には、図1に示す吸着用ファン12を作動させ、ハンドル4を握って吸着パッド1を石膏ボードBの表面に押し付ける。
【0028】
これにより、保持部材2の通気管2bを介し吸着パッド1の内部の空気が吸引され、石膏ボードBが吸着パッド1により確実に吸着される。
【0029】
この作用は、保持部材2の通気管2bを介した空気の吸引に伴い、柔軟で通気性に乏しい吸着部材3が外周寄りの部分で石膏ボードBに密着し、保持部材2の基盤部2aが吸着部材3の外周部で囲まれた状態で、互いに固定されていない吸着部材3と保持部材2の基盤部2aとの間の空気も吸引され、吸着部材3が保持部材2の基盤部2aを石膏ボードBの表面に強く押し付けるので、保持部材2の基盤部2aが石膏ボードBの表面の凹凸を平滑化するように圧縮して、吸着パッド1の内部に入り込む空気量が抑制され、石膏ボードBを強力に吸着することによると考えられる。
【0030】
そして、昇降レバー5を上昇方向へ操作して、石膏ボードBを上昇させた状態で、図1に示す移動レール10b及び固定レール10aに沿って昇降用モーター11及び吸着用ファン12と共に移動させ、石膏ボードBが所定のパレット等の上方に達したとき、昇降レバー5を下降方向へ操作して、石膏ボードBをパレット等の上面に降ろす。
【0031】
その後、開放用レバー6を引き上げて、吸着部材3を捲り上げると、吸着パッド1の内部の負圧が迅速に解消され、吸着パッド1を石膏ボードBから分離して、昇降用モーター11及び吸着用ファン12と共に初期位置へ戻すことができる。
【0032】
上記のような石膏ボードBの搬送装置では、吸着パッド1の内部の空気の吸引に際して、重量があり吸込能力の高い吸引ポンプを使用せず、軽量で比較的吸込能力の低い吸着用ファン12を使用しても、吸着パッド1が石膏ボードBに対して十分強く吸着するので、吸着用ファン12を昇降用モーター11と共に天井付近の移動レール10bに備えることができ、吸引ホース15を短いものとすることができる。
【0033】
また、昇降レバー5の操作指示を無線で行うための送信機16及び受信機17を備えているので、ケーブルを介して操作指示を行う場合のように、石膏ボードBの搬送作業を行う作業者にケーブルが絡まったり、パレット等にケーブルが引っ掛かったりする危険性がなく、安全に効率よく搬送作業を行うことができる。
【0034】
なお、上記実施形態では、吸着パッド1による吸着を解除するため、吸着部材3及び保持部材2の基盤部2aを捲り上げる開放用レバー6を設けたものを例示したが、エアーボックス14にその内部の負圧を解消する開放弁を設けても、吸着パッド1による吸着を解除することができる。
【0035】
また、吸着パッド1の保持部材2が金属製のものを例示したが、吸着パッド1の保持部材2は、通気性のない剛体であれば、プラスチック製であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 吸着パッド
2 保持部材
2a 基盤部
2b 通気管
3 吸着部材
3a 貫穴
4 ハンドル
5 昇降レバー
6 開放用レバー
10a 固定レール
10b 移動レール
11 昇降用モーター
12 吸着用ファン
13 ベルト
14 エアーボックス
15 吸引ホース
16 送信機
17 受信機
石膏ボード
図1
図2
図3
図4
図5