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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035337
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】工具駆動装置及び孔加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 47/02 20060101AFI20240307BHJP
   B23B 45/00 20060101ALI20240307BHJP
   B23B 47/18 20060101ALI20240307BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B23B47/02 A
B23B45/00 Z
B23B47/18 B
B23Q17/09 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139738
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 遼平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政雄
(72)【発明者】
【氏名】中畑 達雄
(72)【発明者】
【氏名】松尾 晋哉
【テーマコード(参考)】
3C029
3C036
【Fターム(参考)】
3C029CC05
3C036CC09
3C036DD10
3C036DD19
3C036EE20
(57)【要約】
【課題】ユーザが工具駆動装置を持ち運んでワークにセットして孔加工を行う場合において、工具の回転速度と送り速度をより適切かつ容易に設定できるようにすることである。
【解決手段】工具駆動装置は、ユーザが手で持ち運んでワークにセットして使用する孔加工用の装置であって、工具を保持するためのホルダを先端部に設けたスピンドルと、スピンドルを回転させるための電動モータと、工具駆動装置をワークに位置決めするための位置決め部材を設けたガイドと、ガイドに対して相対的にスピンドルをスピンドルの回転軸方向に前進及び後退させる電動アクチュエータと、工具からスピンドルに伝達される切削抵抗を測定するセンサと、スピンドルの回転速度及び送り速度がセンサで測定された切削抵抗に応じた回転速度及び送り速度となるように、切削抵抗に基づいて電動モータ及び電動アクチュエータを制御するコントローラとを備えるものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが手で持ち運んでワークにセットして使用する孔加工用の工具駆動装置であって、
孔加工用の工具を保持するためのホルダを先端部に設けたスピンドルと、
前記スピンドルを回転させるための電動モータと、
前記工具駆動装置を前記ワークに位置決めするための位置決め部材を設けたガイドと、
前記ガイドに対して相対的に前記スピンドルを前記スピンドルの回転軸方向に前進及び後退させる電動アクチュエータと、
前記工具から前記スピンドルに伝達される切削抵抗を測定するセンサと、
前記スピンドルの回転速度及び送り速度が前記センサで測定された前記切削抵抗に応じた回転速度及び送り速度となるように、前記切削抵抗に基づいて前記電動モータ及び前記電動アクチュエータを制御するコントローラと、
を備える工具駆動装置。
【請求項2】
前記スピンドルから伝達される前記スピンドルの回転軸方向における前記切削抵抗を測定するロードセルを前記センサとして前記スピンドルの後端部に連結した請求項1記載の工具駆動装置。
【請求項3】
前記電動アクチュエータは、前記スピンドルの回転軸方向に前進及び後退するプッシャを有し、
前記プッシャと前記ロードセルとの間における間隔を前記スピンドルの回転軸方向に変化させるスライド機構を挟んで前記プッシャを前記ロードセル及び前記スピンドルと連結し、
前記プッシャが退避位置から前進して前記ロードセルと接触し、前記プッシャから前記ロードセル及び前記スピンドルに前記スピンドルの前進方向に向かう力が作用している間は前記ロードセルで負荷が検出される一方、前記プッシャが後退すると前記プッシャが前記ロードセルから離れた状態で前記ロードセル及び前記スピンドルが後退し、前記ロードセルで負荷が検出されないようにした請求項2記載の工具駆動装置。
【請求項4】
前記プッシャが後退して前記退避位置において停止した後、前記ロードセルが前記プッシャと接触しないように前記ロードセルの後退を止めるストッパを前記ガイドに設けた請求項3記載の工具駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工具駆動装置を用いてワークの孔加工を行うことによって孔加工品を製造する孔加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、工具駆動装置及び孔加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルやリーマ等の工具で孔加工を行うための手持ち式の工具駆動装置には、工具の送り出し機能を備えたものがある(例えば特許文献1乃至4参照)。また、2つのモータを備え、工具の回転速度と送り速度を別々に制御できる手持ち式の工具駆動装置も提案されている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-188856号公報
【特許文献2】特開2014-008586号公報
【特許文献3】特開2014-039992号公報
【特許文献4】特開2014-050943号公報
【特許文献5】特開2020-151818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工具の回転と連動して工具の送り出しを行う従来の手持ち式の工具駆動装置で孔加工する場合には、ユーザが工具径や被削材に応じて工具の回転速度を決定すると、送り速度が回転速度に応じた速度になる。一方、工具の送り速度を回転速度と独立して設定できる工具駆動装置の場合には、工具径、回転速度及び被削材に応じてユーザが事前に工具の送り速度を決定する必要がある。
【0005】
このため、ユーザが適切な孔加工の条件を熟知していなければ工具の回転速度と送り速度を適切に決定することができない。加えて、異なる複数の材料を重ね合わせた重ね合せ材の孔加工を行う場合には、ユーザが材料ごとの厚さに合わせて適切な工具の回転速度と送り速度を事前に決定し、かつ材料が変わるタイミングで加工中に工具の回転速度と送り速度を変更することが必要となる。このため、材料ごとに適切な回転速度と送り速度で孔加工を行うことが容易ではないという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、ユーザが工具駆動装置を持ち運んでワークにセットして孔加工を行う場合において、工具の回転速度と送り速度をより適切かつ容易に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る工具駆動装置は、ユーザが手で持ち運んでワークにセットして使用する孔加工用の工具駆動装置であって、孔加工用の工具を保持するためのホルダを先端部に設けたスピンドルと、前記スピンドルを回転させるための電動モータと、前記工具駆動装置を前記ワークに位置決めするための位置決め部材を設けたガイドと、前記ガイドに対して相対的に前記スピンドルを前記スピンドルの回転軸方向に前進及び後退させる電動アクチュエータと、前記工具から前記スピンドルに伝達される切削抵抗を測定するセンサと、前記スピンドルの回転速度及び送り速度が前記センサで測定された前記切削抵抗に応じた回転速度及び送り速度となるように、前記切削抵抗に基づいて前記電動モータ及び前記電動アクチュエータを制御するコントローラとを備えるものである。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る孔加工品の製造方法は、上述した工具駆動装置を用いてワークの孔加工を行うことによって孔加工品を製造するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る工具駆動装置の正面図。
図2図1に示す工具駆動装置の上面図。
図3図1に示す第1の電動モータの内部構造の一例を説明する概略的な部分縦断面図。
図4図1に示す第1の電動モータとスピンドルの連結方法を示す分解図。
図5図1に示す第1の電動モータとスピンドルの連結方法を示す拡大部分縦断面図。
図6図5に示すアダプタと第1の電動モータの連結方法を示す拡大部分断面図。
図7図4に示す台座の左側面図。
図8図1に示す位置決めブッシュで工具駆動装置をワークに位置決めした例を示す図。
図9図1に示す移動プレート及び補強フレームの拡大左側面図。
図10図2に示すプッシャ、ロードセル及びスライド機構の拡大図。
図11図1に示すコントローラの詳細構成例を示す図。
図12図11に示すコントローラのディスプレイに表示される操作画面の一例を示す図。
図13図12に示す操作画面を通じて設定可能な工具のアプローチ動作の開始位置と、後退動作の開始位置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る工具駆動装置及び孔加工品の製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0011】
(工具駆動装置の構成及び機能)
図1は本発明の実施形態に係る工具駆動装置の正面図であり、図2図1に示す工具駆動装置の上面図である。
【0012】
工具駆動装置1は、ユーザが手で持ち運んでワークWにセットして使用する孔加工用の装置である。従って、工具駆動装置1の重量が20kg以下となるように工具駆動装置1の小型化と部品数の低減が図られる。工具駆動装置1は、ドリルやリーマ等の孔加工用の工具Tの回転と工具軸AX方向への送り出しを行う機能を備えている。
【0013】
そのために、工具駆動装置1は、孔加工用の工具Tを保持するためのホルダ2、スピンドル3、スピンドル3を回転させるための第1の電動モータ4、位置決め部材5、工具Tの送り出し用のガイド6、工具Tの送り出しを行う電動アクチュエータ7及びコントローラ8を備えている。
【0014】
ホルダ2には、コレットチャック等の工具Tを直接保持するためのアダプタを着脱して使用するものや、アダプタが一体化されているものがある。ドリルを保持するためのアダプタを備えたホルダ2は、ドリルチャックとも呼ばれる。ホルダ2は、工具Tの回転軸方向となる工具軸AX方向とスピンドル3の回転軸方向が同一直線上となるようにスピンドル3の先端部に固定される。スピンドル3は、第1の電動モータ4で発生させたトルクをホルダ2に伝達するシャフトである。
【0015】
図3は、図1に示す第1の電動モータ4の内部構造の一例を説明する概略的な部分縦断面図である。
【0016】
スピンドル3にトルクを与える第1の電動モータ4には回転速度とトルクを調整するためのギア9を連結することが現実的である。すなわち、第1の電動モータ4にギア9で構成される減速機を連結し、回転数を減少させる一方、トルクを増加させることが現実的である。
【0017】
そこで、図示された例のように、第1の電動モータ4として、第1の電動モータの筐体12の内部にギア9を配置したコアレスモータ(無鉄心電動機)10を用いることができる。換言すれば、第1の電動モータ4には、第1の電動モータ4の出力シャフト11の半径方向にギア9を連結することができる。
【0018】
コアレスモータ10にはコア(鉄心)が無く、例えば、図3に例示されるように、筒状の筐体12の内部に円筒状のマグネットで構成されるロータ13、円筒状のコイルで構成されるステータ14及び回転シャフト15を同軸状に配置した構成を有する。ロータ13は回転シャフト15に固定される。回転シャフト15は、ピニオンギア、太陽ギア、遊星ギア及び/又は内歯車等の複数のギア9で構成される減速機を介して出力シャフト11と連結され、出力シャフト11の一部が筐体12から突出する。
【0019】
このため、ロータ13とともに回転シャフト15が回転すると複数のギア9を介して調整されたトルクが出力シャフト11から出力される。尚、コイルをロータ13とし、マグネットをステータ14としても良い。また、複数のギア9で構成される減速機をロータ13の内側に配置することにより、減速機をコアレスモータ10に内蔵することができる。
【0020】
一般にコアレスモータにはコアが無いことからコアを有する典型的な電動モータと比較して出力トルクが小さい。このため、従来は、工具Tを回転させるための電動モータとしてコアレスモータは不向きと考えられていた。すなわち、ワークWの切削加工に必要なトルクを発生させるためには、コアを有する電動モータにギアを連結することが現実的であると考えられていた。
【0021】
これに対して、ユーザが手で持ち運んで使用する孔加工用の工具駆動装置1に要求されるトルクは、マシニングセンタやフライス盤等の工作機械と比較すると桁違いに小さく、1Nmから20Nm程度である。このため、筐体12の内部にギア9を配置したコアレスモータ10であれば、切削加工に利用できる程度のトルクを発生できることが判明した。具体例として、筐体12の内部に遊星ギアを直列に2段配置することによって、10Nmから15Nm程度の定格トルクを出力できるようにしたコアレスモータ10が市販されている。
【0022】
このため、コアを有する典型的な電動モータと比較すると依然としてコアレスモータ10の出力トルクは小さいものの、コアレスモータ10の場合には、ギア9を内蔵できるので、ギアを収納するギアヘッドを連結せずにスピンドル3と連結することが可能となる。その結果、工具駆動装置1の小型化及び軽量化を図り、持ち運びを容易にすることができる。
【0023】
もちろん、第1の電動モータ4としてコアを有するモータを使用し、第1の電動モータ4の外部にギア9を連結するようにしても良い。第1の電動モータ4の外部にギア9を連結する場合には、第1の電動モータ4の出力シャフト11の回転軸と、スピンドル3の回転軸を平行に配置したり、傘歯車等を使用することによって垂直など非平行となるように配置したりしても良い。
【0024】
一方、図示されるように第1の電動モータ4としてギア9を内蔵したコアレスモータ10を用い、第1の電動モータ4の出力シャフト11の回転軸と、スピンドル3の回転軸を同一直線上に配置すれば、上述したように工具駆動装置1の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0025】
但し、スピンドル3には工具Tからスピンドル3の回転方向における切削抵抗に加えてスピンドル3の回転軸方向における切削抵抗が伝達される。孔加工用の工具Tからスピンドル3にかかるスピンドル3の回転方向における切削抵抗は切削トルクと呼ばれる。これに対して、孔加工用の工具Tからスピンドル3にかかるスピンドル3の回転軸方向における切削抵抗は、スラスト抵抗と呼ばれる。
【0026】
スピンドル3は、第1の電動モータ4の出力シャフト11と連結する必要があるが、仮にスピンドル3の後端側における端面を出力シャフト11の端面に固定すると工具Tからの切削トルクとスラスト抵抗がスピンドル3から第1の電動モータ4の出力シャフト11に伝達されることになる。
【0027】
しかしながら、第1の電動モータ4がコアレスモータ10である場合はもちろんコアを有するモータである場合であっても、第1の電動モータ4は出力シャフト11をラジアルボール軸受(玉軸受)やギアで出力シャフト11の半径方向のみから支持する構造を有している。従って、第1の電動モータ4の出力シャフト11は、スピンドル3から伝達される20Nm未満の切削トルクには十分に対抗できるが、スラスト抵抗に対しては十分に対抗できない場合がある。具体的には、出力シャフト11に負荷されるスラスト抵抗が第1の電動モータ4の許容範囲を超えて過大になると、出力シャフト11の中心軸が偏心し、孔加工の品質が劣化する場合がある。
【0028】
そこで、第1の電動モータ4の出力シャフト11とスピンドル3との間でトルクが伝達される一方、スピンドル3から第1の電動モータ4の出力シャフト11にスラスト抵抗が伝達されないように、出力シャフト11とスピンドル3を連結することができる。
【0029】
図4図1に示す第1の電動モータ4とスピンドル3の連結方法を示す分解図であり、図5図1に示す第1の電動モータ4とスピンドル3の連結方法を示す拡大部分縦断面図である。
【0030】
図4及び図5に例示されるように、第1の電動モータ4の筐体12にスラスト軸受16を取付け、工具Tからスピンドル3に伝達されるスラスト抵抗がスラスト軸受16にかかるように、スラスト軸受16にスピンドル3を接触させることができる。スラスト軸受16は、筐体12及びスピンドル3のいずれにも固定する必要は無く、スピンドル3からのスラスト抵抗がスラスト軸受16に伝達されるようにスラスト軸受16を適切な位置に配置するのみで良い。
【0031】
スラスト軸受16は環状であるのに対して典型的なスピンドル3の後端部は棒状である。そこで、スラスト軸受16の直径及び形状に応じた環状の鍔17A付きのアダプタ17をスピンドル3の第1の電動モータ4側における端部に連結し、アダプタ17を介してスピンドル3をスラスト軸受16と接触させることができる。これにより、スラスト抵抗を第1の電動モータ4の出力シャフト11で受けずに、第1の電動モータ4の筐体12で受けることができる。アダプタ17は、スピンドル3の後端と、ネジ、溶接或いは圧入等によってトルク及び切削抵抗が伝達されるように接合することができる。
【0032】
尚、第1の電動モータ4がギア9を内蔵したコアレスモータ10である場合には、図示されるように、第1の電動モータ4の筐体12にギアヘッドを連結せずにスラスト軸受16を挟んでスピンドル3が連結されるが、第1の電動モータ4がギア9を外部に連結したモータである場合には、ギア9を収納するギアヘッドにスラスト軸受16を挟んでスピンドル3を連結することができる。
【0033】
スラスト軸受16はアキシャル荷重を受けることが可能な軸受であり、ボール軸受とローラ軸受(ころ軸受)がある。ボール軸受は2枚のスラストワッシャ16A間に複数のボールを転動可能に配置した構成を有し、ローラ軸受は図5に例示されるように2枚のスラストワッシャ16A間に複数のローラ(ころ)16Bを転動可能に配置した構成を有する。
【0034】
ボール軸受の場合には、ボールの摩耗の進行がローラ16Bの摩耗の進行と比較して遅いことから高速回転に適している。一方、スラストワッシャ16Aと曲線又は点で接触するボールと比較して直線で接触するローラ16Bの方が安定性において優れているため、低速回転の場合にはローラ軸受を用いることが孔加工の品質の向上に繋がる。ギア9を内蔵したコアレスモータ10の定格回転数は概ね500rpm未満となる。このため、図5に例示されるようにスラスト軸受16として複数のローラ16Bが転動するローラ軸受を用いるようにしても良い。
【0035】
図6図5に示すアダプタ17と第1の電動モータ4の連結方法を示す拡大部分断面図であり、図7図4に示す台座18の左側面図である。
【0036】
第1の電動モータ4の出力シャフト11から出力されるトルクをスピンドル3に伝達する一方、スピンドル3からのスラスト抵抗を出力シャフト11で受けずにスラスト軸受16で受けるようにするためには、単にスラスト軸受16を配置するだけでなく、スピンドル3の後端部に取付けたアダプタ17に形成される、スピンドル3の回転軸方向を法線方向とする鍔17Aの環状の支持面をスラスト軸受16のみと接触させ、出力シャフト11の回転軸方向を法線方向とする出力シャフト11の面をアダプタ17と接触させないようにすることも必要となる。
【0037】
スラスト軸受16の回転軸方向における厚さが出力シャフト11の筐体12からの突出長さよりも厚い場合には、スラスト軸受16の一方のスラストワッシャ16Aを筐体12に直接接触させて配置すれば、スラスト軸受16の他方のスラストワッシャ16Aが出力シャフト11の端面よりも突出する。このため、スピンドル3の後端側におけるアダプタ17の鍔17Aを出力シャフト11の端面と接触させずにスラストワッシャ16Aのみと接触させることができる。
【0038】
しかしながら、スラスト軸受16の回転軸方向における厚さは、出力シャフト11の筐体12からの突出長さよりも薄い場合が多い。そこで、図4乃至図6に例示されるように、電動モータ4の筐体12から突出する出力シャフト11の外側に、スピンドル3の回転軸方向に環状の台座18を挟んでスラスト軸受16を配置し、スラスト軸受16の厚さと台座18の厚さの合計を、出力シャフト11の筐体12からの突出長さよりも厚くすることができる。
【0039】
つまり、スラスト軸受16と筐体12との間にシムとして環状の台座18を挟むことができる。出力シャフト11を通すための貫通孔を中心に形成した環状の台座18には、図5乃至7に示すようにボルトで固定するための複数の段付きの貫通孔を形成し、ボルトで台座18を筐体12に固定することができる。
【0040】
これにより、スラスト軸受16のスピンドル3側におけるスラストワッシャ16Aの少なくとも一部を、出力シャフト11のスピンドル3側における端面よりもスピンドル3側に突出させることができる。そして、スラスト軸受16と接触させるためのアダプタ17の鍔17Aをスピンドル3側におけるスラストワッシャ16Aと接触させ、鍔17Aと出力シャフト11の端面との間に隙間19Aが生じた状態で鍔17Aをボルトで出力シャフト11に固定することができる。
【0041】
そうすると、出力シャフト11のトルクについてはアダプタ17を介してスピンドル3に伝達する一方、スラスト抵抗についてはスピンドル3からアダプタ17、スラスト軸受16及び台座18を介して第1の電動モータ4の筐体12に伝達することが可能となる。
【0042】
尚、図示された例では第1の電動モータ4の出力シャフト11の端部が円筒状となっており、出力シャフト11の端面が環状となっている。このため、アダプタ17の後端側には、アダプタ17の回転軸方向と出力シャフト11の回転軸方向が同一直線上となるように同軸度を維持しつつ円筒状の出力シャフト11の内側に差し込むための段差を有する円柱状の突起が形成されている。すなわち、アダプタ17の円形の後端面は、鍔17Aの後端側に形成される環状の支持面よりも後方となっている。
【0043】
このような場合においても、スラスト抵抗がアダプタ17から出力シャフト11に伝達されないように、アダプタ17の回転軸方向を法線方向とするアダプタ17の後端面と、出力シャフト11の回転軸方向を法線方向とする出力シャフト11の表面との間には隙間19Bが設けられる。他方、アダプタ17と出力シャフト11の同軸度を確保するために、アダプタ17の円柱状の後端部における側面と円筒状の出力シャフト11の内面は回転半径方向に接触し、Oリングを挟んでも良い。
【0044】
尚、出力シャフト11の端部が円柱状である場合には、アダプタ17の後端部を円筒状とし、アダプタ17の内側に出力シャフト11の先端を回転半径方向にのみ接触させて挿入すれば良い。
【0045】
スラスト抵抗はスピンドル3からアダプタ17、スラスト軸受16及び台座18を介して第1の電動モータ4の筐体12に伝達されるが、第1の電動モータ4の筐体12の強度は、スピンドル3の横断面における面積と同じ面積でスラスト抵抗に耐えられるようには設計されていない。従って、できるだけ大きい面積でスラスト抵抗を筐体12に伝達することが好ましい。換言すれば、圧力をできるだけ小さくしてスラスト抵抗を筐体12に伝達することが好ましい。
【0046】
そのためには、できるだけスラストワッシャ16Aの面積が大きいスラスト軸受16を用いることが重要である。すなわち、外径が大きく、内径が小さいスラストワッシャ16Aを有するスラスト軸受16を用いることが望ましい。実際に外径が70mmであり、内径が50mmであるスラストローラ軸受を直径が50mmの出力シャフト11の外側に台座18を挟んで配置した結果、スラストローラ軸受を配置せずに出力シャフト11でスラスト抵抗を受ける場合に比べて約10倍のスラスト抵抗に耐えられるようになることが確認された。
【0047】
尚、直列に連結した複数のラジアル軸受で第1の電動モータ4の出力シャフト11又はスピンドル3を支持することによってもラジアル軸受の数が十分であればスラスト抵抗を受けることができる。しかしながら、ラジアル軸受はアキシャル方向の荷重に耐えられる構造を有していないことから多数のラジアル軸受を連結することが必要となり、スラスト軸受16を配置する場合に比べて軸方向における長さが著しく長くなる。このため、工具駆動装置1の小型化及び軽量化を図る観点からは、スラスト軸受16の内側に第1の電動モータ4の出力シャフト11を通し、スラスト軸受16でスラスト抵抗を受ける方が好ましい。
【0048】
工具T及びスピンドル3をワークWの孔加工位置に向けて送り出すためには、工具駆動装置1をワークWに位置決めすることが必要となる。位置決め部材5は、工具駆動装置1をワークWに位置決めするための部材である。図1及び図2に示す例では、後端に鍔状部を有する位置決めブッシュ20が位置決め部材5としてガイド6の先端部に設けられているが、特開2014-008586号公報に開示されている固定器具やコンセントリックコレット等の他の位置決め部材5を設けても良い。
【0049】
尚、コンセントリックコレットは、複数のスリットを有し、内側にコレットブッシュを挿入すると直径が拡大する心出し機能付きの位置決め部材5である。また、工具駆動装置1の先端に設けられる部材はノーズピースとも呼ばれ、ノーズピースの一部として設けられる位置決めブッシュ20はブッシングチップとも呼ばれる。
【0050】
ガイド6は、例えば、先端側プレート6Aと後端側プレート6Bを2本のシャフト6Cで連結した構造とすることができる。2本のシャフト6Cは長さ方向が工具T及びスピンドル3の送り出し方向となるように互いに平行に配置される。そして、位置決めブッシュ20の貫通孔の中心軸が工具T及びスピンドル3の送り出し方向並びに工具軸AX及びスピンドル3の回転軸と同一直線上となるように、スピンドル3の前進方向に向かって先端側プレート6Aの前方に位置決めブッシュ20を固定することができる。
【0051】
他方、後端側プレート6Bを電動アクチュエータ7の筐体にボルト等で固定することができる。これにより、位置決めブッシュ20、先端側プレート6A、2本のシャフト6C及び後端側プレート6Bが電動アクチュエータ7の筐体に非駆動部として固定される。このため、工具駆動装置1の非駆動部を位置決めブッシュ20でワークWに位置決めした状態で工具駆動装置1の非駆動部をワークWに固定することが可能となる。
【0052】
図8図1に示す位置決めブッシュ20で工具駆動装置1をワークWに位置決めした例を示す図である。
【0053】
工具駆動装置1は穿孔治具Jを用いて間接的にワークWに位置決め及び固定することができる。典型的な具体例として、位置決め孔J1を設けた穿孔板J2をワークWの基準孔を利用して位置決めピンJ3やピンボルト等で位置決めした状態でワークWに固定することができる。そして、穿孔板J2の位置決め孔J1に位置決めブッシュ20を挿入した状態で位置決めブッシュ20の鍔状部を止めネジJ4で穿孔板J2に固定することができる。もちろんワークWに形成された下孔に位置決めブッシュ20を挿入し、工具駆動装置1を直接ワークWに位置決め及び固定することもできる。
【0054】
位置決めブッシュ20等の位置決め部材5をワークWに直接又は間接的に固定すると、位置決め部材5を先端に固定したガイド6もワークWに固定されることになる。ガイド6は、ワークW及び位置決め部材5に対して工具T及びスピンドル3を回転軸方向に相対移動させるために設けられる動力の無い部材である。
【0055】
図1及び図2に例示されるように、ガイド6の構造を、先端側プレート6Aと後端側プレート6Bを2本のシャフト6Cで連結した構造とする場合には、2本のシャフト6Cとそれぞれ滑合してシャフト6Cの長さ方向にスライドする円筒状の2つのスライダ21で移動プレート22を2本のシャフト6Cに連結することができる。そして、移動プレート22を第1の電動モータ4の筐体12に固定することができる。
【0056】
そうすると、第1の電動モータ4、第1の電動モータ4の出力シャフト11にアダプタ17を介して固定されるスピンドル3、スピンドル3に固定されるホルダ2並びにホルダ2で保持される工具Tを、シャフト6Cの長さ方向、すなわち工具T及びスピンドル3の送り出し方向に直線的にスライドさせることが可能となる。すなわち、第1の電動モータ4、スピンドル3、ホルダ2及び工具Tを、位置決めブッシュ20等の位置決め部材5でワークWに固定されたガイド6に対して相対的に送り出し方向に移動させることができる。
【0057】
電動アクチュエータ7は、ガイド6に対して相対的にスピンドル3の送り出し方向及び回転軸方向にスピンドル3及びホルダ2とともに工具Tを前進及び後退させる動力付きの装置である。電動アクチュエータ7は、スピンドル3及びホルダ2を直線的に往復移動させるための機械要素と、機械要素に動力を与える第2の電動モータ23で構成される。すなわち、工具駆動装置1には工具T及びスピンドル3を回転させるための第1の電動モータ4に加えて、工具T及びスピンドル3を送り出し方向に移動させるための第2の電動モータ23が設けられる。
【0058】
電動アクチュエータ7は、第2の電動モータ23の他、例えば、図1及び図2に例示されるように、ボールねじ24、プッシャ25、ロータ26、第1のプーリ27、第2のプーリ28及び動力伝達ベルト29で構成することができる。第1のプーリ27は第2の電動モータ23の出力シャフトに固定される。第2のプーリ28はロータ26に固定される。動力伝達ベルト29は第1のプーリ27と第2のプーリ28で支持される。
【0059】
ロータ26は円筒状の構造を有しており、内面の少なくとも一部に雌ねじが形成されている。ボールねじ24の一端は電動アクチュエータ7の筐体から突出し、突出した先端にはプッシャ25が固定される。ボールねじ24の他端は中空のロータ26内に挿入され、ボールねじ24の雄ねじがロータ26の雌ねじに締付けられる。
【0060】
このように構成された電動アクチュエータ7において第2の電動モータ23を作動させると第1のプーリ27が回転し、第1のプーリ27のトルクが動力伝達ベルト29で第2のプーリ28に伝達される。これにより、第2の電動モータ23の出力シャフトの回転速度の減速とトルクの調整が行われる。第2のプーリ28が回転するとロータ26が回転し、ロータ26の雌ねじに締付けられたボールねじ24が長さ方向に移動する。
【0061】
このため、ボールねじ24の長さ方向を工具T及びスピンドル3の送り出し方向とすれば、ボールねじ24の先端に固定したプッシャ25を、ボールねじ24の回転方向に応じて工具T及びスピンドル3の送り出し方向に前進及び後退させることができる。従って、プッシャ25を第1の電動モータ4の筐体12と連結すれば、第1の電動モータ4とともに工具T及びスピンドル3を送り出し方向に往復移動させることができる。
【0062】
尚、第1のプーリ27、第2のプーリ28及び動力伝達ベルト29で構成される減速機をギアで構成しても良い。また、第2の電動モータ23でボールねじを回転させ、ボールねじに締付けられる雌ねじを形成した部材にプッシャ25を固定して工具T及びスピンドル3の送り出し方向に往復移動させるようにしても良い。すなわち、第2の電動モータ23で回転するロータをボールねじとし、直線移動させる部材に雌ねじを形成しても良い。
【0063】
具体例として、内面に雌ねじを形成した円筒状のロッドの内部にボールねじを締付け、ボールねじの回転によって工具T及びスピンドル3の送り出し方向に往復移動する中空のロッドの先端にプッシャ25を取付けても良い。或いは、雌ねじを形成したブラケットをボールねじに締付け、ボールねじの回転によって工具T及びスピンドル3の送り出し方向に往復移動するブラケットにプッシャ25を取付けても良い。
【0064】
プッシャ25で第1の電動モータ4を送り出し方向に押し出すと、プッシャ25にはスラスト抵抗が負荷されることになる。従って、無用なモーメントの発生を防止する観点から、プッシャ25の往復経路とスピンドル3の回転軸が同一直線上となるようにプッシャ25を配置することが望ましい。また、スラスト抵抗に対抗してプッシャ25を押し出す力を電動アクチュエータ7で十分に確保する観点からは、プッシャ25の往復経路がボールねじの長さ方向と同一直線上となるようにプッシャ25を配置することが望ましい。
【0065】
このため、電動アクチュエータ7の安定性を重視する場合には、ボールねじ24からなるロッド又はボールねじに締付けられる雌ねじを内面に形成した円筒状のロッドがスピンドル3の回転軸方向に往復移動するように電動アクチュエータ7を構成し、往復移動するロッドの先端にプッシャ25を取付けることが好ましい。
【0066】
一方、ボールねじの回転によってスピンドル3の回転軸方向に往復移動するブラケットにプッシャ25を取付ければ、ボールねじ24の長さ方向と、スピンドル3の回転軸方向が平行となるように電動アクチュエータ7を配置することができる。このため、スピンドル3の回転軸に垂直な方向に電動アクチュエータ7と第1の電動モータ4を隣接配置することによって、工具駆動装置1の全長を短くすることができる。
【0067】
尚、第2の電動モータ23で発生させる回転運動を直線移動に変える機械要素としては、上述したボールねじの他、ギアの一種であるラック・アンド・ピニオン、プーリで移動する動力伝達ベルトやスプロケットで移動するチェーン等の無限軌道が挙げられる。従って、これらの機械要素と第2の電動モータ23を組合わせて電動アクチュエータ7を構成し、プッシャ25を往復移動させるようにしても良い。
【0068】
上述したように第1の電動モータ4の筐体12の強度は、通常局所的にかかるスラスト抵抗に耐えられるようには設計されていない。従って、プッシャ25を第1の電動モータ4の筐体12に直接押し当てることは好ましくない。そこで、第1の電動モータ4の筐体12に補強フレーム30を固定し、プッシャ25で補強フレーム30を押し出すようにすることができる。
【0069】
図1及び図2に示す例では、上述したように、第1の電動モータ4の筐体12にガイド6のシャフト6Cに沿ってスライドする移動プレート22も固定される。移動プレート22の強度はスラスト抵抗に耐えられるように設計することができる。このため、プッシャ25で押し出す補強フレーム30は、移動プレート22に固定することができる。すなわち、補強フレーム30は第1の電動モータ4の筐体12に直接固定せずに移動プレート22を介して間接的に固定することができる。
【0070】
図9図1に示す移動プレート22及び補強フレーム30の拡大左側面図である。
【0071】
図1図2及び図9等に例示されるように、第1の電動モータ4の出力シャフト11を通し、かつスラスト軸受16を配置するための貫通孔を中央に形成した移動プレート22を、第1の電動モータ4の筐体12の前方にボルトで固定することができる。そのために、移動プレート22には、移動プレート22を筐体12にボルトで固定するための貫通孔が設けられる。また、移動プレート22にはガイド6のシャフト6Cと滑合するスライダ21が取付けられる。
【0072】
更に移動プレート22の背面には筐体12の長さよりも長い2つの矩形のプレートを補強フレーム30の一部としてボルトや溶接等によって固定することができる。図9に示す例では、2つの矩形のプレートを補強フレーム30にボルトで固定できるように段付きの貫通孔が補強フレーム30に形成されている。そして2つの矩形のプレートの端部を別のプレートで連結することによって筐体12と接触せずに筐体12を囲う補強フレーム30を形成することができる。また、移動プレート22と補強フレーム30を一体化することができる。
【0073】
そうすると、プッシャ25から補強フレーム30に力を作用させることによって第1の電動モータ4を送り出し方向に押し出すことが可能となる。すなわち、電動アクチュエータ7で補強フレーム30をガイド6に対して相対的に移動させることができる。また、スラスト軸受16から筐体12に伝達されるスラスト抵抗は、筐体12から移動プレート22に伝達された後、移動プレート22から補強フレーム30に伝達されることになる。
【0074】
そこで、補強フレーム30に切削抵抗を測定するためのセンサ31としてロードセル32を取付け、ロードセル32にプッシャ25から力を作用させることができる。すなわち、スピンドル3から伝達されるスラスト抵抗を測定するためのロードセル32を、スピンドル3の後端部に、アダプタ17、スラスト軸受16、台座18、第1の電動モータ4の筐体12、移動プレート22及び補強フレーム30を介して連結することができる。
【0075】
従って、ロードセル32では、スピンドル3からスラスト軸受16及び台座18を介して筐体12に伝達され、更に筐体12から移動プレート22と一体化された補強フレーム30に伝達されるスラスト抵抗が測定されることになる。尚、ロードセル32でスラスト抵抗をより正確に測定できるようにする観点から、ロードセル32の中心位置と、スピンドル3の回転軸が同一直線上となるようにロードセル32の取付位置を決定することが適切である。加えて、補強フレーム30の形状を、スピンドル3の回転軸を含む断面上においてスピンドル3の回転軸を中心に線対称となる形状にすることが適切である。
【0076】
ロードセル32でスラスト抵抗を測定すると、スラスト抵抗に応じた工具駆動装置1の制御が可能となる。上述したように工具駆動装置1は、工具T及びスピンドル3を回転させるための第1の電動モータ4に加えて、工具T及びスピンドル3を送り出し方向に移動させるための第2の電動モータ23を備えており、工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度を互いに独立して設定することができる。このため、ロードセル32で測定されたスラスト抵抗に基づいて工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度を自動制御することができる。
【0077】
従って、ロードセル32で測定されたスラスト抵抗は、コントローラ8に出力される。コントローラ8は、第1の電動モータ4及び第2の電動モータ23に電気信号を出力して制御するコンピュータ等の電気回路である。
【0078】
ロードセル32でスラスト抵抗を測定するためには、プッシャ25をロードセル32と接触させ、プッシャ25にスラスト抵抗がかかるようにすることが必要である。しかしながら、プッシャ25をロードセル32に常時接触させると、孔加工を行っておらずスラスト抵抗が生じていない場合においてもロードセル32で負荷が検出されてしまう。
【0079】
例えば、ロードセル32を補強フレーム30とプッシャ25で挟み込んで固定すると、ロードセル32にはプッシャ25から常時負荷がかかるため、ロードセル32で検出される負荷が常時ゼロとはならない。また、孔加工の完了後に工具T及びスピンドル3を後退させている場合にロードセル32がプッシャ25に接触すると、工具T及びスピンドル3を後退させるために電動アクチュエータ7からスピンドル3にかかる負荷がロードセル32で検出されてしまう。
【0080】
その場合、コントローラ8において、ロードセル32で検出された負荷をスラスト抵抗とその他の負荷に峻別するデータ処理を行うことが必要となってしまう。加えて、ロードセル32で検出される負荷が常時ゼロとはならないことからスラスト抵抗の測定精度を良好に確保するためにキャリブレーションが必要となる可能性がある。
【0081】
そこで、図1及び図2に例示されるように、プッシャ25が退避位置まで後退した場合にプッシャ25とロードセル32との間に隙間があくようにプッシャ25とロードセル32の相対位置を決定し、かつプッシャ25と、ロードセル32を取付けた補強フレーム30とを、スライド機構33を介して連結することができる。より具体的には、プッシャ25とロードセル32との間における間隔をスピンドル3の回転軸方向に変化させるスライド機構33を挟んでプッシャ25をロードセル32及びスピンドル3と連結することができる。
【0082】
図10図2に示すプッシャ25、ロードセル32及びスライド機構33の拡大図である。
【0083】
図1図2及び図10に例示されるように、スライド機構33は、例えば、一端に円盤状のストッパ33Aを固定した2本のシャフト33Bと、2本のシャフト33Bにそれぞれ滑合する2つの円筒状のスライダ33Cで構成することができる。2本のシャフト33Bは、それぞれ長さ方向がスピンドル3の回転軸方向に平行なスライド方向となるように、互いに平行配置される。
【0084】
図示された例では、補強フレーム30のロードセル32を挟む位置に2つのスライダ33Cが固定されており、プッシャ25を取付けたボールねじ24の先端付近に固定プレート34を介して2本のシャフト33Bのストッパ33Aが取付けられない側の他端が固定されている。このため、スライド機構33によって、プッシャ25とロードセル32との間における間隔を動力無しで自在に変化させることができる。
【0085】
尚、ボールねじ24の先端付近に取付けられた固定プレート34にスライダ33Cを固定し、ストッパ33Aが設けられない側のシャフト33Bの端部を補強フレーム30に固定しても良い。すなわち、ストッパ33A、シャフト33B及びスライダ33Cからなるスライド機構33を、スライド機構33のスライド方向に反転しても良い。
【0086】
図示される向きのスライド機構33を介してプッシャ25とロードセル32を連結すると、電動アクチュエータ7でプッシャ25を退避位置から前進させた場合にプッシャ25とともに固定プレート34、シャフト33B及びストッパ33Aがロードセル32を取付けた補強フレーム30に対してプッシャ25の前進方向にスライドし、プッシャ25がロードセル32と接触する。
【0087】
このため、電動アクチュエータ7でプッシャ25を更に前進させるとプッシャ25からロードセル32及び補強フレーム30を介してスピンドル3にスピンドル3の前進方向に向かう力が作用する。これによりスピンドル3とともに工具Tを前進方向に送り出すことができる。
【0088】
プッシャ25がロードセル32と接触し、プッシャ25からロードセル32に力が作用している間はロードセル32で負荷が測定される。このため、孔加工が開始される前であってもスピンドル3を前進させればロードセル32で負荷が検出される。そして、孔加工が開始され、スラスト抵抗が生じるとスラスト抵抗とみなせる負荷がロードセル32で検出される。
【0089】
一方、孔加工が完了し、工具T及びスピンドル3を後退させるために電動アクチュエータ7でプッシャ25を後退させると、プッシャ25とともに固定プレート34、シャフト33B及びストッパ33Aがロードセル32を取付けた補強フレーム30に対してプッシャ25の後退方向にスライドする。このため、プッシャ25がロードセル32から引離される。その結果、ロードセル32で検出される負荷はゼロとなる。
【0090】
電動アクチュエータ7でプッシャ25を更に後退させると、スライド機構33の円盤状のストッパ33Aが補強フレーム30に固定されたスライダ33Cと接触し、補強フレーム30にはストッパ33Aからプッシャ25の後退方向に向かう力が作用する。その結果、プッシャ25がロードセル32から離れた状態でロードセル32を取付けた補強フレーム30とともにスピンドル3が後退する。
【0091】
このように、スピンドル3が前進している間にはロードセル32で負荷が検出される一方、スピンドル3が後退している間にはロードセル32で負荷が検出されないようにすることができる。これにより、ロードセル32のゼロ点を設定し、キャリブレーション等を行うことなくスラスト抵抗を正確に測定することが可能となる。
【0092】
尚、電動アクチュエータ7で前進及び後退させるプッシャ25は、プッシャ25を最も後退させた位置であるプッシャ25の退避位置からプッシャ25の前進を開始させる時、プッシャ25の後退を開始する時、後退中のプッシャ25の進行方向を切換えて前進させる時などにロードセル32に対して相対的にスライドするため、電動アクチュエータ7の前進動作及び後退動作と、スピンドル3の前進動作及び後退動作との間にそれぞれタイムラグが生じる。このため、このタイムラグが孔加工に悪影響となる程長くなり過ぎないように、スライド機構33のスライド範囲(ストローク)、すなわちロードセル32とプッシャ25との間に形成される隙間の最大値を1mmから3mm程度に決定することが妥当である。
【0093】
また、スライダ33Cを設けた補強フレーム30はシャフト33Bに沿って自由にスライドできるため、プッシャ25が後退して退避位置において停止した後、慣性力によってロードセル32がプッシャ25と接触しないようにロードセル32の後退を止めるストッパ35を設けることが適切である。換言すれば、ロードセル32を取付けた補強フレーム30とスピンドル3を後退させた場合に退避位置で停止するようにストッパ35を設けることが適切である。
【0094】
ロードセル32及びスピンドル3の後退を退避位置で止めるためのストッパ35は、例えば、図1及び図2に例示されるように、補強フレーム30と一体化される移動プレート22をスライドさせるためのガイド6のシャフト6Cに、スライダ21と接触する円盤状の部材として固定することができる。もちろん、補強フレーム30と接触させるバーをガイド6のシャフト6Cにストッパ35として固定しても良い。尚、スライド機構33の構成がスライド方向に反転している場合においても同様にロードセル32及びスピンドル3の後退を停止させるためのストッパ35を設けることが適切である。
【0095】
ロードセル32は、補強フレーム30ではなく、電動アクチュエータ7のボールねじ24等の駆動部に固定しても良い。その場合には、プッシャ25に代えてロードセル32が電動アクチュエータ7で往復移動することになる。但し、電動アクチュエータ7の駆動部分の撓みによるスラスト抵抗の測定精度への悪影響を回避する観点からは、剛性が高い補強フレーム30にロードセル32を固定することが望ましい。
【0096】
ロードセル32でスラスト抵抗を測定すると、工具T及びスピンドル3の回転速度及び送り速度がロードセル32で測定されたスラスト抵抗に応じた回転速度及び送り速度となるように、スラスト抵抗に基づいて第1の電動モータ4及び電動アクチュエータ7をコントローラ8で制御することが可能となる。
【0097】
図11図1に示すコントローラ8の詳細構成例を示す図である。
【0098】
コントローラ8は、入力装置40、記憶装置41、ディスプレイ42及び演算装置43を備えたコンピュータ等の電子回路にA/D(analog-to-digital)変換器等の必要な電気機器を接続した電気回路で構成することができる。演算装置43には、工具駆動装置1の制御プログラムを読込ませ、演算装置43を加工条件設定部44、回転/送り速度制御部45、スラスト抵抗記録/出力部46、異常検知部47及びタイマー48として機能させる一方、記憶装置41を加工条件データベース49として機能させることができる。
【0099】
加工条件設定部44は、マウスやキーボード等の入力装置40から入力された情報に基づいて孔加工の対象となり得る素材ごとの適切な孔加工条件を設定し、設定した孔加工条件を加工条件データベース49に保存する機能を有する。そのために、ディスプレイ42に孔加工条件の設定画面を表示させることができる。孔加工条件の設定画面は、コントローラ8の操作画面の一部とすることができる。
【0100】
図12図11に示すコントローラ8のディスプレイ20に表示される操作画面の一例を示す図であり、図13図12に示す操作画面を通じて設定可能な工具Tのアプローチ動作の開始位置と、後退動作の開始位置を説明する図である。
【0101】
孔加工条件は、工具T及びスピンドル3の回転速度(rpm)と、送り速度(mm/分)で表すことができる。工具T及びスピンドル3の送り速度は、1回転当たりの送り量(mm/回転)として表しても良い。
【0102】
適切な孔加工条件は、アルミニウムやチタン等の金属、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など、材料ごとに異なる。
【0103】
そこで、図12に例示されるように、材料ごとに適切な孔加工条件を設定することができる。尚、孔加工には下孔が無いワークWを対象とするドリルによる穿孔、ワークWの下孔を利用したドリルによる仕上げ加工又は拡径加工、リーマによる孔の最終仕上げ加工など様々な加工があり、工具Tの材質、直径、刃数及びシャンクの太さや長さを含む構造等の工具Tの特徴の他、下孔の有無など孔加工の種類によっても適切な孔加工条件は異なる。そこで、工具Tの特徴及び孔加工の種類ごとに適切な孔加工条件を設定することが適切である。
【0104】
孔加工条件と同様に孔加工を行った場合に生じるスラスト抵抗も工具Tの特徴、孔加工の種類及び材料ごとに異なる。そこで、加工条件設定部44において孔加工条件をスラスト抵抗と関連付けて設定し、加工条件データベース49に保存することができる。そうすると、ロードセル32で測定されたスラスト抵抗に基づいて孔加工の対象となる材料を特定し、特定した材料に適切な孔加工条件を自動設定することが可能となる。
【0105】
尚、スラスト抵抗の検出による材料の特定と同時かつ瞬時に工具Tの回転速度と送り速度を特定した材料に応じた回転速度と送り速度に変化させることは困難であり、孔の品質を維持する観点からも不適切でもある。そこで、材料に関連付けられたスラスト抵抗を最初に検出してから、工具Tの回転速度と送り速度を特定した材料に応じた回転速度と送り速度に変化させるまでの遅延時間、すなわちタイムラグを孔加工条件の一部として設定しておくことができる。
【0106】
ロードセル32で測定されたスラスト抵抗に応じて工具Tの回転速度と送り速度を変化させると、変更後における工具Tの回転速度と送り速度に応じてスラスト抵抗も変化することになる。従って、材料を特定するために孔加工条件と関連付けられるスラスト抵抗は、材料ごとにとり得る値の範囲として設定することが適切である。
【0107】
また、工具Tの回転速度と送り速度を材料に合わせて変化させると、スラスト抵抗が大きく変化する場合や、スラスト抵抗が変化する結果、異なる材料間でとり得るスラスト抵抗の範囲がオーバーラップする可能性もある。そのような場合には、材料を特定するためのスラスト抵抗の値の範囲と、工具Tの回転速度と送り速度を材料に合わせて変更した後のスラスト抵抗の値の範囲を別々に設定するようにしても良い。
【0108】
工具Tの回転速度と送り速度が材料に最適な回転速度と送り速度になれば、スラスト抵抗値も最適な値となる。従って、ロードセル32で測定されたスラスト抵抗に応じて工具Tの回転速度と送り速度を最適化する制御は、ロードセル32で測定されたスラスト抵抗を最適化するフィードバック制御であると言うこともできる。
【0109】
工具Tの回転速度と送り速度の他、加工条件設定部44では、図13に示すように工具TがワークWに接近してから接触するまでのアプローチ動作の開始位置と、孔加工後における工具Tの後退動作の開始位置を設定することもできる。すなわち、不十分な回転速度で工具TがワークWに衝突しないようにアプローチ動作を行うことができる。その場合には、工具T及びスピンドル3のアプローチ動作用の安全な回転速度と送り速度が設定される。また、工具T及びスピンドル3を最大ストロークまで前進させずに後退させる場合には、工具Tの後退動作の開始位置を設定することができる。
【0110】
アプローチ動作の開始位置は、退避位置における工具Tの先端の位置からアプローチ動作の開始位置までの距離として特定することができる。このため、ホルダ2からの工具Tの突き出し長さの他、ホルダ2を交換できる場合にはホルダ2の長さに応じて、退避位置における工具Tの先端の位置からアプローチ動作の開始位置までの距離を設定することができる。
【0111】
アプローチ動作の開始位置を設定すると、ロードセル32で検出される負荷とは無関係にアプローチ動作の開始位置までは工具T及びスピンドル3を早送りで送り出すことが可能となる。また、工具Tの早送り中は工具Tの回転を停止させるか、或いは早送り中に工具Tの回転速度を目的とする回転速度まで徐々に上げていくことが可能となる。
【0112】
一方、工具Tの後退動作の開始位置は、ワークWに貫通しない孔を加工する場合であれば、退避位置における工具Tの先端の位置から孔の最大深さまでの距離として、ワークWに貫通孔を加工する場合であれば、工具Tの切れ刃がワークWを完全に通り過ぎるようにワークWの板厚に応じた距離として、それぞれ設定することができる。工具Tの後退動作の開始位置の設定は、工具T及びスピンドル3のストロークを最大ストローク未満に設定することに相当する。
【0113】
また、ワークWに貫通孔を加工する場合、工具Tの先端がワークWを貫通するとスラスト抵抗が徐々に減少してゼロとなるが、工具Tの最大径位置がワークWを完全に通過するまでは、工具Tの回転速度と送り速度を減少させるべきではない。そこで、ロードセル32で検出された負荷が、材料と関連付けられたスラスト抵抗値の範囲外まで減少した場合には、工具Tが後退動作の開始位置或いは最大ストローク位置に到達するまで工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度を変更しないように制御条件を設定することが適切である。
【0114】
このように工具Tの後退動作の開始位置を設定すると、所望の深さを有する非貫通孔の加工が容易となるのみならず、工具T及びスピンドル3を許容範囲まで前進させずに貫通孔を加工する場合において、ロードセル32で検出される負荷に基づいて孔加工が完了した時刻を検出する処理や工具Tの最大径位置がワークWを完全に通過したことを検出する処理が不要となる。また、材料間に隙間を有する重ね合せ材の孔加工も容易となる。
【0115】
尚、工具Tの後退動作についても、工具Tの退避位置からアプローチ動作の開始位置までの前進移動と同様に、早送りとすることができる。すなわち、工具Tの後退動作の開始位置から工具Tの退避位置まで早送りで後退させることができる。
【0116】
回転/送り速度制御部45は、加工条件データベース49を参照し、ロードセル32で検出された負荷に基づいて工具駆動装置1を制御する機能を有する。具体的には、回転/送り速度制御部45は、ロードセル32で検出された負荷を取得し、ロードセル32で検出された負荷が孔加工条件と関連付けられたスラスト抵抗値の範囲内となった場合には、スラスト抵抗値の範囲に関連付けられた工具Tの回転速度と送り速度で孔加工が行われるように第1の電動モータ4及び電動アクチュエータ7の第2の電動モータ23に制御信号を出力する機能を有する。
【0117】
上述したようにロードセル32に押し当てられるプッシャ25が退避位置にある場合には、ロードセル32とプッシャ25との間に隙間が生じるためロードセル32で検出される負荷はゼロとなる。このため、ロードセル32からの検出信号にノイズ低減処理等の信号処理を行っても良いが、ロードセル32で検出された負荷からスラスト抵抗の成分を抽出する処理は不要であり、ロードセル32で検出された負荷をスラスト抵抗とみなすことができる。
【0118】
また、回転/送り速度制御部45では、必ずしも加工中の材料の同定と出力を行うための処理を実行する必要は無いが、上述したようにスラスト抵抗値の範囲が材料と関連付けられるため、回転/送り速度制御部45では、実質的にスラスト抵抗の測定値に基づく材料の特定が行われ、特定した材料に適切な孔加工条件の自動設定が行われることになる。この孔加工条件の自動設定によって、工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度を、ロードセル32でリアルタイムに測定されたスラスト抵抗に対応する回転速度と送り速度に、予め指定した遅延時間を伴って自動的に切換えることができる。
【0119】
遅延時間は、タイマー48を用いて発生させることができる。具体的には、タイマー48で設定した遅延時間後に、回転/送り速度制御部45が第1の電動モータ4及び第2の電動モータ23に工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度を変更する制御信号を出力する。
【0120】
異なる材料を重ね合わせた重ね合せ材の孔加工を行う場合には、工具Tが材料間の境界に到達するとスラスト抵抗が変化し、切削対象が異なる材料に変わったことを回転/送り速度制御部45において実質的に検出できる。このため、工具T及びスピンドル3のストロークの設定と異なり、材料ごとの厚さを孔加工条件として事前に設定しておく必要は無い。
【0121】
また、回転/送り速度制御部45は、入力装置40から数値等として入力された指示情報に従って工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度を直接設定する手動モードにおける工具駆動装置1の制御の他、加工条件データベース49に保存された条件で工具TのワークWへのアプローチ動作が行われ、かつ加工条件データベース49に保存された工具Tの後退動作の開始位置において工具Tの後退動作が開始されるように、第1の電動モータ4及び電動アクチュエータ7の第2の電動モータ23に制御信号を出力する機能も有している。
【0122】
このため、工具駆動装置1をワークWにセットした後、例えば、操作画面に電子キーとして表示させたスタートボタンを押下するなど、入力装置40から回転/送り速度制御部45に自動モードでの孔加工の開始指示を与えれば、全自動でワークWの孔加工を完了させることができる。
【0123】
スラスト抵抗記録/出力部46は、ロードセル32で測定された負荷をリアルタイムにディスプレイ42の操作画面等に表示させる機能と、ロードセル32で測定したスラスト抵抗を記録して加工条件データベース49に保存する機能を有する。
【0124】
ロードセル32で測定された負荷を表示させれば、ユーザは孔加工中の材料を確認することができる。また、工具Tの摩耗が進行したり、工具Tの切れ刃にチッピングが生じたりすることによってスラスト抵抗が異常に増加した場合には、ユーザが速やかに発見し、必要に応じて操作画面に表示させたストップボタンを入力装置40の操作によって押下するなどして、孔加工を中断することができる。
【0125】
一方、ロードセル32で測定したスラスト抵抗を記録し、材料と関連付けて加工条件データベース49に保存すれば、未登録の材料についてのスラスト抵抗と関連付けた孔加工条件の設定が可能となる。これは、材料に限らず、工具Tの特徴や別の孔加工の条件が変わった場合においても同様である。また、加工条件データベース49に登録済みの孔加工条件であっても、スラスト抵抗の測定値を蓄積すれば機械学習等によって、より適切な孔加工条件を設定することが可能となる。
【0126】
異常検知部47は、ロードセル32で測定された負荷に基づいて工具Tの摩耗やチッピング等の異常を検知する機能と、工具Tの異常を検知した場合には検知した異常を、ディスプレイ42を通じてユーザに通知する機能を有する。もちろん、ディスプレイ42に限らず、スピーカやライト等の出力装置を通じて音声や光によってユーザに異常を通知するようにしても良い。
【0127】
工具Tの異常の検知は、スラスト抵抗値に許容範囲を定めるための閾値を設定し、ロードセル32で測定されたスラスト抵抗値が許容範囲内であるか否かを判定する閾値処理によって行うことができる。尚、許容範囲外のスラスト抵抗値が連続的にロードセル32で測定された期間に対して更に許容範囲を定めるための閾値を設定し、例えば数秒間連続的に許容範囲外のスラスト抵抗値がロードセル32で測定された場合に、異常検知部47が工具Tに異常が発生したと判定するようにしても良い。。
【0128】
(孔加工品の製造方法)
次に、工具駆動装置1を用いてワークWの孔加工を行うことによって孔加工品を製造する方法について説明する。
【0129】
工具駆動装置1を用いてワークWの孔加工を行う場合には、事前にワークWを構成し得る材料ごとに適切な回転速度と送り速度で孔加工を行った場合に生じるスラスト抵抗が測定される。スラスト抵抗は、工具駆動装置1でテストピースの孔加工を行い、工具Tの回転速度と送り速度をマニュアルで適切な値に調整した時にロードセル32で測定される負荷として取得することができる。
【0130】
ロードセル32で測定されたスラスト抵抗はコントローラ8に出力され、スラスト抵抗記録/出力部46がディスプレイ42にスラスト抵抗を表示させながら加工条件データベース49に時系列の測定値データとして保存する。このため、工具Tの回転速度と送り速度が適切な値になった時のスラスト抵抗を決定することができる。
【0131】
適切なスラスト抵抗が決定されると、工具Tの特徴と関連付けられた工具Tの識別情報、材料の識別情報、適切な工具Tの回転速度と送り速度、工具Tが材料に接触してから適切な工具Tの回転速度と送り速度に変更するまでの数秒程度の遅延時間、下孔の有無等のその他のスラスト抵抗に影響を与える加工条件が、スラスト抵抗と関連付けられて孔加工条件として加工条件データベース49に保存される。
【0132】
孔加工条件の設定と保存は、加工条件設定部44がディスプレイ42に表示させた図12に例示されるような操作画面を通じた入力装置40の操作によって行うことができる。すなわち、加工条件設定部44が入力装置40から入力された情報に基づいて孔加工条件を設定し、設定した孔加工条件を加工条件データベース49に保存する。孔加工条件の設定と保存が完了すると、保存した孔加工条件でワークWの孔加工を行うことが可能となる。
【0133】
ワークWの孔加工を開始する場合には、工具駆動装置1のワークWへの位置決めと据付が行われる。具体的には、図8に例示されるように、ワークWに固定した穿孔板J2の位置決め孔J1に工具駆動装置1の位置決めブッシュ20を挿入し、位置決めブッシュ20の鍔状部を止めネジJ4で穿孔板J2に固定することができる。
【0134】
一方、ディスプレイ42に表示された操作画面を通じて図13に示す工具Tのアプローチ動作の開始位置と、後退動作の開始位置が、工具Tのアプローチ動作時における回転速度と送り速度と併せて設定される。すなわち、加工条件設定部44が入力装置40から入力された情報に基づいて工具Tのアプローチ動作の開始位置、後退動作の開始位置、工具Tのアプローチ動作時における回転速度と送り速度を、ワークWごとの孔加工条件として設定し、設定した孔加工条件を加工条件データベース49に保存する。
【0135】
尚、工具Tの初期位置からワークWまでの距離が短い場合には、アプローチ動作の開始位置を設定せずに工具Tの初期位置からアプローチ動作を行うようにしても良い。その場合には、工具Tの回転速度と送り速度の初期値としてアプローチ動作時における回転速度と送り速度が設定される。また、工具Tを工具駆動装置1の最大ストロークまで前進させた後、後退させる場合には、後退動作の開始位置の設定を省略することができる。
【0136】
そして、ユーザが操作画面のスタートボタンを押下するなど入力装置40から回転/送り速度制御部45に孔加工の開始を指示する情報を入力すると、回転/送り速度制御部45は、加工条件データベース49に保存された孔加工条件に従って工具駆動装置1を制御する。これにより、工具駆動装置1の駆動が開始される。
【0137】
具体的には、回転/送り速度制御部45は、工具T及びスピンドル3が退避位置からアプローチ動作の開始位置まで早送りで前進するように、電動アクチュエータ7の第2の電動モータ23に制御信号を出力する。このため、第2の電動モータ23が回転し、電動アクチュエータ7のボールねじ24が早送りに対応する速度で前進する。
【0138】
そうすると、ボールねじ24に連結されたスライド機構33がスライドし、ボールねじ24の先端に固定されたプッシャ25がロードセル32に押し当てられる。これにより、ロードセル32を取付けた補強フレーム30とともに移動プレート22がガイド6のシャフト6Cに沿って前進する。その結果、移動プレート22に筐体12が固定された第1の電動モータ4、第1の電動モータ4に連結されたスピンドル3、ホルダ2及び工具Tが早送りで前進する。
【0139】
続いて、回転/送り速度制御部45は、工具T及びスピンドル3がアプローチ動作の開始位置から指定した回転速度と送り速度でワークWに接近するように第1の電動モータ4と電動アクチュエータ7の第2の電動モータ23に制御信号を出力する。このため、第1の電動モータ4の出力シャフト11が回転し、出力シャフト11にアダプタ17を介して連結されたスピンドル3とともにホルダ2及び工具Tが指定された回転速度で回転する。他方、第2の電動モータ23が減速し、プッシャ25を取付けたボールねじ24の前進速度が指定された送り速度となる。その結果、第1の電動モータ4、スピンドル3、ホルダ2及び工具Tの前進速度も指定された送り速度となる。
【0140】
工具Tが前進してワークWに接触すると、切削加工が開始される一方、ワークWから工具Tに切削抵抗が負荷される。切削抵抗は、工具Tからホルダ2を介してスピンドル3に伝達される。スピンドル3に伝達された切削抵抗のうち切削トルクはスピンドル3からアダプタ17を介して第1の電動モータ4の出力シャフト11に伝達される。
【0141】
これに対して、スピンドル3に伝達された切削抵抗のうちスラスト抵抗は出力シャフト11には伝達されず、スラスト軸受16に伝達される。これは、アダプタ17の鍔17Aに形成されるスラスト方向に垂直な支持面と、出力シャフト11の端面との間には、図6に示すように、スラスト抵抗の伝達を抑止するための隙間19Aが設けられており、アダプタ17の鍔17Aに形成されるスラスト方向に垂直な支持面はスラスト軸受16のみと接触しているためである。これにより、第1の電動モータ4の出力シャフト11に過剰なスラスト抵抗がかかり、出力シャフト11が偏心して孔の品質や精度が低下する不具合を回避することができる。
【0142】
スラスト軸受16に伝達されたスラスト抵抗は第1の電動モータ4の筐体12に伝達されるが、筐体12にスラスト抵抗がかかっても耐えられるようにスラスト軸受16のスラスト方向に垂直な面の面積が決定されているため、筐体12が変形したり破損したりすることは無い。
【0143】
筐体12に伝達されたスラスト抵抗は、移動プレート22及び補強フレーム30を介して、スラスト抵抗に対抗するプッシャ25からの力で押し出されているロードセル32に伝達される。これにより、スラスト抵抗をロードセル32で測定することができる。
【0144】
尚、テストピースを用いて事前にスラスト抵抗を測定する際も同様な経路で伝達されたスラスト抵抗をロードセル32で測定することができる。また、プッシャ25が前進する前はプッシャ25からロードセル32に力が作用しておらず、ロードセル32では負荷が検出されていなかったことから、ロードセル32で測定された負荷をそのままスラスト抵抗として扱うことができる。
【0145】
ロードセル32で測定されたスラスト抵抗はコントローラ8に出力される。コントローラ8では、回転/送り速度制御部45がロードセル32で測定される負荷を常時モニタリングしており、回転/送り速度制御部45は、加工条件データベース49を参照してロードセル32から出力されたスラスト抵抗に関連付けられた材料を実質的に特定する。そして、スラスト抵抗に関連付けられた孔加工条件でワークWの孔加工が行われるように第1の電動モータ4及び第2の電動モータ23が回転/送り速度制御部45によって制御される。
【0146】
具体的には、材料の特定に至ったスラスト抵抗の最初の検出時刻から、孔加工条件として指定された数秒程度の遅延時間後に、孔加工条件として設定された回転速度と送り速度で工具T及びスピンドル3が回転及び前進するように、回転/送り速度制御部45から第1の電動モータ4及び第2の電動モータ23に制御信号が出力される。
【0147】
このため、工具TがワークWに接触し、スラスト抵抗が検出されてから数秒間かけて安全に回転速度と送り速度の加減速が行われる。その結果、工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度は、孔加工条件として設定された材料ごとの適切な回転速度と送り速度になる。そうすると、スラスト抵抗値も適切な回転速度と送り速度に対応する値となる。これにより、良好な切削条件でワークWの孔加工を行うことができる。
【0148】
ワークWが異なる材料の重ね合せ材である場合には、孔の深さ方向に隣接する材料に工具Tが接触した際にスラスト抵抗が変化する。変化したスラスト抵抗がロードセル32で検出され、コントローラ8に出力されると、回転/送り速度制御部45は、加工条件データベース49を参照して変化したスラスト抵抗に関連付けられた材料を実質的に特定する。そして、特定した材料に関連付けられた孔加工条件に従って第1の電動モータ4及び第2の電動モータ23が回転/送り速度制御部45によって制御される。これにより、隣接する材料についても適切な回転速度と送り速度で孔加工を行うことができる。
【0149】
ロードセル32で測定されたスラスト抵抗は、スラスト抵抗記録/出力部46がディスプレイ42にリアルタイム表示させる一方、加工条件データベース49に保存する。このため、ユーザはスラスト抵抗の時間変化を確認し、どの材料の切削加工が行われているのかを把握することができる。加えて、異常が無いか確認したり、事後的に不具合が発見された場合には、加工条件データベース49に保存されたスラスト抵抗の時間変化を確認し、切削条件が適切であったかを確認したりすることができる。
【0150】
ロードセル32で測定されたスラスト抵抗は、異常検知部47においても異常値となっていないか監視される。すなわち、異常検知部47がスラスト抵抗の異常を検知した場合には、ディスプレイ42等を通じてユーザに異常を通知する。このため、ディスプレイ42に表示されたスラスト抵抗の異常をユーザが看過した場合であっても、工具Tの摩耗やチッピング等の異常を検知することができる。
【0151】
工具TがワークWを貫通するとスラスト抵抗が生じなくなり、ロードセル32では工具T及びスピンドル3を前進させるためのプッシャ25からの負荷のみが検出されることになるが、孔加工条件としてロードセル32で測定された負荷が無視できる程度まで減少した場合には工具T及びスピンドル3の回転速度と送り速度を変化させない設定を行っておくことにより、回転速度と送り速度を変化させずに後退動作の開始位置まで工具Tを前進させることができる。
【0152】
回転/送り速度制御部45が電動アクチュエータ7及び第2の電動モータ23の制御量に基づいて工具Tが後退動作の開始位置に到達したことを検知すると、工具Tが後退動作の開始位置から退避位置まで早送りで後退するように、第1の電動モータ4及び第2の電動モータ23を制御する。このため、ボールねじ24とともにプッシャ25が後退し、ボールねじ24に連結されたスライド機構33がスライドする。その結果、プッシャ25はロードセル32から引離され、ロードセル32で検出される負荷はゼロとなる。
【0153】
更にボールねじ24を後退させるとスライド機構33が最大ストローク位置までスライドし、スライド機構33と連結された補強フレーム30とともに移動プレート22がガイド6のシャフト6Cに沿って後退する。その結果、移動プレート22に筐体12が固定された第1の電動モータ4、第1の電動モータ4に連結されたスピンドル3、ホルダ2及び工具Tが早送りで後退する。
【0154】
ボールねじ24が退避位置まで後退すると第2の電動モータ23の電子制御によってボールねじ24が停止する。一方、移動プレート22に筐体12が固定された第1の電動モータ4、第1の電動モータ4に連結されたスピンドル3、ホルダ2及び工具Tは、移動プレート22に取付けたスライダ21がストッパ35に接触することによって物理的に停止する。これにより、移動プレート22に補強フレーム30を介して取付けられたロードセル32とプッシャ25との間に隙間が生じ、前進前のロードセル32で負荷が検出されることが回避される。
【0155】
ワークWの孔加工が完了すると製品又は半製品として孔加工品が得られる。孔加工品は、スラスト軸受16を設けることによって中心軸の偏心が抑制された第1の電動モータ4の出力シャフト11から付与されるトルクによって回転する工具Tで加工されており、かつロードセル32で測定されたスラスト抵抗に基づく適切な回転速度と送り速度で回転及び送り出された工具Tで加工されているので、高品質となる。
【0156】
(効果)
以上のような工具駆動装置1及び孔加工品の製造方法は、スピンドル3の回転を第1の電動モータ4で行う一方、スピンドル3の送り動作を第2の電動モータ23で駆動する電動アクチュエータ7で行うようにし、ロードセル32で測定したスラスト抵抗に基づいて適切なスピンドル3の回転速度と送り速度を自動設定できるようにしたものである。
【0157】
このため、工具駆動装置1及び孔加工品の製造方法によれば、コントローラ8の加工条件データベース49に事前に適切な孔加工条件を保存しておけば、工具Tの回転速度と送り速度をユーザが孔加工の度に設定する必要が無く、ユーザが孔加工条件に熟知していなくても適切な孔加工条件で孔加工を行うことが可能となる。加えて、異なる材料を重ね合わせた重ね合せ材の孔加工を行う場合であっても、スラスト抵抗の変化に追従してスピンドル3の回転速度と送り速度が材料ごとに適切に自動更新されるため、ユーザが材料ごとの厚さや材料ごとの孔加工条件を考慮することなく孔加工を完了させることができる。
【0158】
また、スピンドル3の回転速度と送り速度は、コントローラ8においてスラスト抵抗という単一のパラメータのみに基づいて予測等の複雑な処理を行うことなく自動設定することができる。このため、極めて簡易なデータ処理でスピンドル3の回転速度と送り速度を自動制御することができる。
【0159】
逆に、センサ31としてロードセル32のみを工具駆動装置1に取付ければ、スピンドル3の回転速度と送り速度を自動制御することができる。このため、非常に多数のセンサを取付けてフィードフォワード制御等の複雑な制御を行うマシニングセンタ等の工作機械と異なり、センサの故障や測定誤差の累積による不具合が発生する可能性が低い。
【0160】
特に、ロードセル32をスライド機構33でスライドできるようにすれば、ロードセル32のゼロ点設定を、コントローラ8におけるデータ処理によらずに機械的に行うことができる。このため、ロードセル32のキャリブレーション等の作業も不要となる。
【0161】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0162】
例えば、工具駆動装置1に潤滑油やクーラント等の切削液を供給する機能を設けたり、吸塵又は空冷用のエアを流す機能を設けたりすることもできる。切削液はミスト状として噴霧するようにしても良い。その場合には、切削液やエアの流路を形成するホースを連結するためのアダプタをホルダ2に取付けるようにしても良い。
【0163】
また、スラスト軸受16を設けてスラスト抵抗に耐えられるようにしたコアレスモータ10やコアを有する第1の電動モータ4は、孔加工以外の加工にも使用することができる。このため上述した例では、工具駆動装置1が孔加工用の装置である場合を例に説明したが、工具駆動装置を、ユーザが手で持ち運んで使用するフライス加工等の切削加工用の装置としても良い。
【0164】
その場合には、スピンドル3の回転軸方向に加えてスピンドル3の回転軸方向に垂直な方向、例えば直交3軸方向にガイド6に対して相対的にスピンドル3及び第1の電動モータ4を移動できるように電動アクチュエータ7に必要な駆動軸を追加すれば良い。もちろん、電動アクチュエータ7に回転軸を追加し、スピンドル3の回転軸方向及び送り出し方向をチルトできるようにしても良い。
【0165】
そして、エンドミル等の切削加工用の工具Tをホルダ2で保持し、ワークWの切削加工を行うことによって切削加工品を製造することができる。このようにして製造された切削加工品は、スラスト軸受16を設けることによって中心軸の偏心が抑制された第1の電動モータ4の出力シャフト11から付与されるトルクによって回転する工具Tで切削加工されているので、高品質となる。
【0166】
また、上述した実施形態では、切削抵抗を測定するためのセンサ31としてスラスト抵抗を測定するロードセル32を用いる場合について説明したが、ロードセル32に代えて、或いはロードセル32に加えて切削トルクを測定するトルクセンサを用いるようにしても良い。トルクセンサは、スピンドル3と一体化される回転部分の所望の位置に連結することができる。
【0167】
ロードセル32に代えてトルクセンサのみを用いる場合には、スラスト抵抗のみに基づいてスピンドル3の回転速度と送り速度を自動設定する場合と同様に、単一のパラメータである切削トルクのみに基づいてスピンドル3の回転速度と送り速度を簡易なデータ処理で自動設定することができる。但し、ロードセル32でスラスト抵抗を測定することにすれば、上述したようにスライド機構33を用いてスピンドル3の後退時に機械的にロードセル32に負荷がかからないようにできるため、コントローラ8におけるデータ処理を一層簡易にすることができる。
【符号の説明】
【0168】
1…工具駆動装置、2…ホルダ、3…スピンドル、4…第1の電動モータ、5…位置決め部材、6…ガイド、6A…先端側プレート、6B…後端側プレート、6C…シャフト、7…電動アクチュエータ、8…コントローラ、9…ギア、10…コアレスモータ、11…出力シャフト、12…筐体、13…ロータ、14…ステータ、15…回転シャフト、16…スラスト軸受、16A…スラストワッシャ、16B…ローラ、17…アダプタ、17A…鍔、18…台座、19A…隙間、19B…隙間、20…位置決めブッシュ、21…スライダ、22…移動プレート、23…第2の電動モータ、24…ボールねじ、25…プッシャ、26…ロータ、27…第1のプーリ、28…第2のプーリ、29…動力伝達ベルト、30…補強フレーム、31…センサ、32…ロードセル、33…スライド機構、33A…ストッパ、33B…シャフト、33C…スライダ、34…固定プレート、35…ストッパ、40…入力装置、41…記憶装置、42…ディスプレイ、43…演算装置、44…加工条件設定部、45…回転/送り速度制御部、46…スラスト抵抗記録/出力部、47…異常検知部、48…タイマー、49…加工条件データベース、AX…工具軸、J…穿孔治具、J1…位置決め孔、J2…穿孔板、J3…位置決めピン、J4…止めネジ、T…工具、W…ワーク。
図1
図2
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図6
図7
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図10
図11
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図13