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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035340
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】燃料電池車
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20240307BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20240307BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20240307BHJP
【FI】
B60L1/00 L
B60L58/30
B60L50/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139743
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】飯嶌 孝也
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125CD02
5H125DD01
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】例えば長期保管中に計画充電が実行されるときなどにおいて、人が誤って車内又は車両装備へアクセスしてしまうことが抑制可能な燃料電池車を提供する。
【解決手段】本開示のある観点によれば、燃料電池と、車両に搭載される補機へ必要な電力を供給する補機用バッテリと、前記燃料電池および前記補機用バッテリを制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、保管モードの可否を提示し、前記保管モードが選択された場合には、駐車中に車内へのアクセス停止処理を実行しつつ前記燃料電池を起動させて前記補機用バッテリへの充電処理を行う燃料電池車が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
車両に搭載される補機へ必要な電力を供給する補機用バッテリと、
前記燃料電池および前記補機用バッテリを制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、
保管モードの可否を提示し、
前記保管モードが選択された場合には、駐車中に車内へのアクセス停止処理を実行しつつ前記燃料電池を起動させて前記補機用バッテリへの充電処理を行う、
燃料電池車。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記車両が保管中に実行可能な複数種類の仕様が異なる発電モードを提示する処理を実行する、請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項3】
前記アクセス停止処理は、前記車両のドアロック及びフードロックの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記車両が屋内保管であるか屋外保管であるかを検出し、
前記屋内保管と前記屋外保管とで前記アクセス停止処理を異ならせる、請求項1に記載の燃料電池車。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記車両の位置情報に基づいて前記燃料電池を起動させる時期を調整する、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料電池車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池を搭載する燃料電池車に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において移動手段は不可欠であり、日常において自動車などの様々な車両が路上を移動している。近年では、環境負荷が相対的に小さい燃料電池を搭載する燃料電池車が注目されている。
【0003】
かような燃料電池車においては、車両に搭載される補機に電力を供給するための補機用バッテリが搭載される。補機用バッテリの電力枯渇は走行不能に直結するため、例えば特許文献1では、高電圧バッテリを用いて駐車中に補機用バッテリを充電することによって補機用バッテリの電力枯渇を抑制する手法が提案されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、車両の長期間に及ぶ駐車中において補機用バッテリを自動的に充電することで、再始動時における補機用バッテリの電力枯渇を抑制する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-110028号公報
【特許文献2】特開2014-141209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した各特許文献に限らず現在の技術では未だ市場のニーズを満たしているとは言えず以下に述べる課題が存在する。
すなわち、たしかに車両の保管時に補機用バッテリの残量に応じて計画的な充電を行う(以下、この充電態様を「計画充電」とも称する)ことで、再始動時における補機用バッテリの電力枯渇は回避できる。
【0007】
しかしながら、例えば保管中に計画充電が実行されるときに誤って人が車内へアクセスしたり、フードなどの車両装備を動作したりする恐れがあり、特に車内に人が居ない状態で実行される計画充電が必ずしも好適な状態で行われていない。
【0008】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、例えば保管中に計画充電が実行されるときなどにおいて、人が誤って車内又は車両装備へアクセスしてしまうことが抑制可能な燃料電池車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本開示のある観点によれば、燃料電池と、車両に搭載される補機へ必要な電力を供給する補機用バッテリと、前記燃料電池および前記補機用バッテリを制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、保管モードの可否を提示し、前記保管モードが選択された場合には、駐車中に車内へのアクセス停止処理を実行しつつ前記燃料電池を起動させて前記補機用バッテリへの充電処理を行う、燃料電池車が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、例えば保管中に計画充電が実行されるときなどにおいて、人が誤って燃料電池車の車内又は車両装備へアクセスしてしまうことが抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る制御装置を備えた燃料電池車の機能ブロックを示す模式図である。
図2】実施形態に係る制御装置による電力供給を示す模式図である。
図3】実施形態に係る制御装置まわりの構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る燃料電池車の保管方法を示すフローチャートである。
図5図4のフローチャートのうち補機用バッテリの保管時充電処理を示すサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本開示の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下で詳述する以外の構成については、上記した特許文献を含む公知の燃料電池システムや燃料電池車に関する要素技術や構成を適宜補完しながら実施してもよい。
【0013】
<燃料電池車100>
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係る燃料電池車100の構成を説明する。
図1に示すように、燃料電池車100は、燃料電池10、補機用バッテリ20、制御装置30を含んで構成されている。また本実施形態の燃料電池車100は、後述する水素タンク11、高電圧バッテリ40及びDC/DCコンバータ41など燃料電池車に搭載される公知の車載装備をさらに有して構成されている。
【0014】
燃料電池10は、それぞれ公知の単セルが複数積層されたスタック構造を有している。一例として、本実施形態の燃料電池10は、固体高分子形燃料電池(PEFC)が例示できる。なお燃料電池10を構成する単セルは、公知の電解質膜を介してアノード側に水素が流れるアノード流路が形成されるとともにカソード側に酸素が流れるカソード流路が形成されている。
【0015】
図1に示すように、上記した燃料電池10には公知の水素タンク11が接続されている。また同図に例示されるように、燃料電池10は、後述する制御装置30による制御の下で、公知の高電圧バッテリ40に電力供給が可能なように構成されている。これにより燃料電池10で発電された電力は高電圧バッテリ40で充電可能とされている。
【0016】
補機用バッテリ20は、燃料電池車100に搭載される公知の補機に対して必要な電力を供給する。かような補機用バッテリ20としては、例えば12Vの鉛バッテリなど公知の蓄電池が例示できる。本実施形態では、図1及び図2に示すように、制御装置30による制御の下で、高電圧バッテリ40からDC/DCコンバータ41を介して補機用バッテリ20に給電することが可能となっている。
【0017】
制御装置30は、それぞれ前記した燃料電池10および補機用バッテリ20を制御する機能を有して構成されている。より具体的に本実施形態の制御装置30は、一つ又は複数のプロセッサ(CPU(Central Processing Unit))と、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えて構成されている。かような制御装置30は、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)の1つとして構成されていてもよい。なお制御装置30に含まれるメモリは、制御装置30に内蔵されていてもよいし、制御装置30とは別体として後述する記憶装置MDの1つとして設けられる形態であってもよい。
【0018】
また図2に示すように、制御装置30は、公知のテレマティクスユニット42を介して外部ネットワークNETと電気的に接続されていてもよい。このとき制御装置30は、外部ネットワークNETを介して、車外の情報通信装置(例えば公知のスマートフォンや外部サーバあるいはPCなど)と通信可能に構成されていてもよい。
【0019】
これにより、例えば燃料電池車100の所有者等のユーザーがスマートフォンを介して制御装置30にアクセスして後述する保管モードの選択などを実行することが可能となる。なお上記した保管モードの選択は、ユーザーが遠隔地から制御装置30にアクセスして実行する形態の他にも、例えば燃料電池車100が停車してシステム電源がOFFとなるときに運転者(ユーザー)に対して提示する形態などであってもよい。
【0020】
また、後に詳述する態様では燃料電池車100のシステムがOFFされるときに乗員に対して長期保管の可否を伺っているが、本実施形態はこの態様に限られない。すなわち、いったんは燃料電池車100を駐車して所定時間が経過した後に、スマートフォンなどの公知の通信端末を介して制御装置30にアクセスすることで、ユーザーが燃料電池車100の保管モードの選択を改めて実行する態様であってもよい。
【0021】
このように制御装置30は、ユーザーが所有するスマートフォンを介して操作可能に構成されていてもよい。さらにユーザーが例えば半年を超える長期出張などの長期スケジュールをスマートフォンに入力されたことを受けて、この長期間のスケジュールの入力に応じて自動的にスマートフォンが制御装置30にアクセスして燃料電池車100の保管モードを選択してもよい。
【0022】
このように本実施形態の制御装置30は、燃料電池車100における保管モードの可否を提示するように構成されている。そして保管モードが選択された場合、制御装置30は、駐車中に車内へのアクセス停止処理を実行しつつ燃料電池10を起動させて補機用バッテリ20への充電処理を行う制御を実行する。
【0023】
なお本実施形態において「保管モード」とは、長期間に渡ってシステム電源をONせずに燃料電池車100を保管場所で保管する形態を言う。ここで本実施形態における「長期間」とは、補機用バッテリ20の1回の満充電から始動限界SOC(充電率)に達するまでの日数を超える程の長期間(一例として半年(180日)を超える長い日数)であると定義される。従って上記した特許文献のように補機用バッテリ20の1回の満充電から始動限界SOC(充電率)に達するまでの日数を超えない保管態様は、本実施形態では長期間に及ぶ保管であるとは到底言えない。
【0024】
高電圧バッテリ40は、上記した制御装置30による制御の下で、上記した燃料電池10で発電された電力の供給を受ける機能および補機用バッテリ20に必要な電力を供給する機能を有して構成されている。かような高電圧バッテリ40としては、例えば公知のリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池など公知の種々の二次電池で構成してもよい。
【0025】
DC/DCコンバータ41は、直流電流の電圧を所望の電圧に調整する機能を有して構成されている。本実施形態のDC/DCコンバータ41としては、特に制限はなく公知のDC/DCコンバータを適用できる。一例として、本実施形態のDC/DCコンバータ41は、制御装置30の制御信号を受けて、補機用バッテリ20の定格電圧まで降圧して高電圧バッテリ40からの電力を補機用バッテリ20に供給する。またDC/DCコンバータ41は、高電圧バッテリ40から負荷(電動モータ)に供給される電圧を所望の値に昇圧する機能なども有している。
【0026】
<制御装置30>
続いて図3も参照しつつ、本実施形態に係る制御装置30の機能と燃料電池車100における各要素との接続関係を具体的に説明する。
同図から理解されるとおり、本実施形態の制御装置30には、直接的に又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、それぞれ上記した燃料電池10、補機用バッテリ20、高電圧バッテリ40およびDC/DCコンバータ41などが電気的に接続されている。これにより制御装置30は、燃料電池10や各バッテリなどを制御することが可能となっている。
【0027】
図3に示すように、制御装置30は、電圧計測部31、電流計測部32、バッテリ状態測定部33、残留水素ガス判定部34、保管モード決定部35、ロック処理部36および提示制御部37を含んで構成されている。これらの各部は、CPU等のプロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能であってよい。
【0028】
電圧計測部31は、少なくとも補機用バッテリ20の電圧値を計測する機能を有して構成されている。より具体的に電圧計測部31は、後述する電圧センサー51を介して補機用バッテリ20の電圧値を計測する。なお電圧計測部31は、高電圧バッテリ40の電圧値をさらに計測可能に構成されていてもよい。
【0029】
電流計測部32は、少なくとも補機用バッテリ20の電流値を計測する機能を有して構成されている。より具体的に電流計測部32は、後述する電流センサー52を介して補機用バッテリ20の電流値を計測する。なお電流計測部32は、高電圧バッテリ40の電流値をさらに計測可能に構成されていてもよい。
【0030】
バッテリ状態測定部33は、少なくとも補機用バッテリ20の状態を判定する機能を有して構成されている。本実施形態では、補機用バッテリ20の状態として、補機用バッテリ20の充電率(SOC)を算出してもよい。より具体的にバッテリ状態測定部33は、例えば補機用バッテリ20の電圧値と電流値に基づいて、公知の手法によって補機用バッテリ20の充電率(SOC)を算出することができる。
【0031】
残留水素ガス判定部34は、上記した水素タンク11に充填されている水素ガスの残量を検出する機能を有して構成されている。なお具体的な水素ガスの残量の検出方法については、特に制限はなく公知の手法が適用でき、例えば水素タンク11内の圧力を検出する公知の圧力センサーの検出値に基づいて検出することができる。
【0032】
保管モード決定部35は、燃料電池車100に関する1又は複数種類の仕様が異なる発電モードを提示することで、いずれの発電モードを保管モードとして燃料電池車100の保管を行うか決定する機能を有して構成されている。
【0033】
ここで、「複数種類の仕様が異なる発電モード」としては、例えば(a)補機用バッテリ20のバッテリ上がりを防ぐことを最優先に燃料電池10の発電処理を行うベーシックな長期保管モード、(b)例えば山奥など給電設備が無い行楽施設で車両を保管する際に好適な、夜間就寝時などに必要電力を低出力で燃料電池10によって発電処理を行う行楽地モード、あるいは(c)早朝および夜間の燃料電池10による発電処理を禁止して比較的気温が安定した昼間に燃料電池車100による発電を行う昼間モード、などが例示できる。
【0034】
ロック処理部36は、燃料電池車100が保管モードで保管されている場合であって、少なくとも燃料電池10で発電処理が行われるときに車外から車両装備を操作又は変更できないよう保護する機能を有して構成されている。より具体的に本実施形態のロック処理部36は、燃料電池車100におけるフードFDとドアDRの少なくとも一方をロックして燃料電池10の発電中は操作不可としてもよい。
【0035】
なお、従来においても車両が駐車している際にドアDRは施錠され得るが、本実施形態における「ロック」は従来の施錠とは異なる状態を言う。すなわちロック処理部36によるロックが開始された後は、たとえ開錠キーで操作しても保管モードが継続される限りにおいては開錠が不可となっている点で従来の施錠とは異なる状態と言える。
【0036】
提示制御部37は、後述する提示装置DDを介して、必要な情報を乗員に対して提示する機能を有して構成されている。一例として、提示制御部37は、乗員に対して、複数種類の仕様が異なる発電モードを提示し、水素ガスの残量を提示し、又は、保管モードの要否を提示してもよい。また、提示制御部37は、例えば補機用バッテリ20の状態や燃料電池10の状態などを含む燃料電池車100における他の種々のステータスをさらに提示してもよい。
【0037】
制御装置30には、上記したテレマティクスユニット42の他にも、センサー類50、記憶装置MDおよび提示装置DDが電気的に接続されていてもよい。
このうち本実施形態のセンサー類50は、補機用バッテリ20の電圧値を少なくとも計測可能な公知の電圧センサー51、補機用バッテリ20の電流値を少なくとも計測可能な公知の電流センサー52、車両の位置情報を計測可能なGPS等の公知の測位センサー53を含んで構成されている。
【0038】
なお本実施形態の電圧センサー51は、複数の電圧センサーから構成されて、上記した高電圧バッテリ40の電圧値をさらに計測可能に構成されていてもよい。同様に本実施形態の電流センサー52は、複数の電流センサーから構成されて、上記した高電圧バッテリ40の電流値をさらに計測可能に構成されていてもよい。
またセンサー類50としては、上記した各センサーに限られず、例えば加速度センサーや外気温センサーなど車載される公知の種々のセンサーをさらに含んで構成されていてもよい。
【0039】
記憶装置MDは、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の公知のメモリMRと、ハードディスク等の公知のハードディスクHDDで構成されていてもよい。ただし、記憶装置MDの構成は、上記の構成に限定されず、ハードディスクHDDが省略されていてもよいし、本実施形態の制御装置30(ECU)の一部として組み込みれていてもよい。
また記憶装置MDには、制御装置30により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメータ、センサー類50などからの検出データ、演算結果等の情報が記憶されてもよい。
【0040】
提示装置DDは、例えば車載される公知のスピーカーSPと、例えば液晶ディスプレイなどの公知のディスプレイDPと、を含んで構成されている。制御装置30は、この提示装置DDを介して、例えば乗員や燃料電池車100のユーザーに対して保管モードの可否を提示してもよい。かような保管モードの可否を提示態様としては、例えばスピーカーSPを介して音声によって提示してもよいし、ディスプレイDPを介して画像によって提示してもよい。
【0041】
<燃料電池車の保管方法>
次に図4及び図5も参照しつつ、本実施形態の制御装置30によって実行可能な燃料電池車100の保管方法について説明する。なお以下で説明する保管方法は、例えば燃料電池車100が所望の目的地(一例として自宅の車庫や他の駐車スペースなど)に到着した後で実行される。
【0042】
まずステップ10において、制御装置30は、燃料電池車100のシステムがOFFとなったか否かを判定する。そして燃料電池車100が依然として走行状態にあるなど上記システムがONの場合、制御装置30は、再びステップ10の処理を繰り返して燃料電池車100のシステムがOFFとなるかを判定し続ける。
【0043】
そして目的地に到着して燃料電池車100のシステムがOFFとなった場合、制御装置30は、続くステップ11において、燃料電池車100の乗員に対して保管モードの要否を判定する。このとき制御装置30の提示制御部37は、例えば提示装置DDを介して、乗員に対して保管モードを実行するか問い合わせすることができる。
【0044】
また、制御装置30の提示制御部37は、提示装置DDを介して、乗員に対して保管に要する日数の入力を合わせて問い合わせすることができる。上述したとおり、本実施形態の保管モードは長期間に及ぶ保管であることから、乗員が入力する日数も長期間となる。なお乗員が提示装置DDを介して入力する日数は、例えば上記長期間に相当する任意の数値であってもよいし、予め定められた固定期間であってもよい。
【0045】
また、制御装置30は、上記した水素タンク11の残量を検出するとともに、この検出した水素ガスの残量に基づいて燃料電池10による発電可能量を計算して補機用バッテリ20を維持可能な最大保管日数を提示してもよい。このとき乗員は、提示された最大保管日数の中から任意の日数を選択してもよいし、最大保管日数を最大値として予め区分けされた複数の候補日数の中から選択する態様であってもよい。
【0046】
そしてステップ11において乗員が保管モードを選択しない場合、制御装置30は、今回の停車は通常の駐車態様であると判断して本実施形態の処理を終了する。この場合には、例えば公知の態様のとおり、乗員は燃料電池車100の車外からドアロック(施錠)などを行って燃料電池車100を駐車してもよい。
【0047】
一方でステップ11において乗員が保管モードを選択する場合、続くステップ12において、制御装置30の保管モード決定部35は、燃料電池車100に関する保管モードの提示とその決定の処理を行う。より具体的に、制御装置30の提示制御部37は、提示装置DDを介して、車両が保管中に実行可能な複数種類の仕様が異なる発電モードを提示する処理を実行することができる。
【0048】
そしてステップ12では、燃料電池車100に関する保管モードの提示とその決定処理が実行される。より具体的に制御装置30の保管モード決定部35は、上述のとおり燃料電池車100の乗員に対して提示装置DDを介して複数の発電モードを提示する。そして乗員がこの提示された複数の発電モードのうちから任意のモードを選択することで、制御装置30は、この選択されたモードを保管モードとして決定する処理を行う。
【0049】
このとき制御装置30は、センサー類50やテレマティクスユニット42を介して得られた情報に基づいて、提示装置DDを介して提示する発電モードの種類を異ならせてもよい。一例として、制御装置30は、例えば測位センサー53からの位置情報に基づいて、燃料電池車100が明らかに都市部に存在している場合には、上記した行楽地モードは省略してベーシックな長期保管モードと昼間モードを提示してもよい。他の一例として、制御装置30は、例えばテレマティクスユニット42を介して外部サーバなどから月日などの暦情報を受信し、この歴情報に基づいて長期保管が冬期に及ぶ場合には上記した昼間モードを推奨する形で発電モードを提示してもよい。
【0050】
なお本実施形態においてステップ12は必須ではなく、このステップ12は適宜省略することができる。ステップ12を省略する場合、制御装置30は、ステップ11で保管モードが要と判定されたときに例えば上記した長期保管モードを実行してもよい。
【0051】
また、制御装置30は、上記した発電モードのいずれが選択された場合でも、車両の位置情報に基づいて燃料電池10を起動させる時期を調整してもよい。より具体的に、制御装置30は、燃料電池車100に搭載された測位センサー53による測位情報とナビゲーションシステムなどの地図情報とに基づいて、例えば保管モードにおいても燃料電池車100が宅地に位置する場合には早朝および深夜における燃料電池10の発電処理を停止することができる。このように制御装置30は、車両の位置情報から得られる周辺環境に応じて、燃料電池10を起動させる時期を調整してもよい。
【0052】
そしてステップ12において燃料電池車100で実行すべき保管モードが決定された場合、次いでステップ13で、制御装置30のバッテリ状態測定部33は、補機用バッテリ20の状態を検出する。より具体的にバッテリ状態測定部33は、補機用バッテリ20の状態として、補機用バッテリ20で計測された電流値と電圧値に基づいて補機用バッテリ20の充電率を算出する。
【0053】
ステップ13で補機用バッテリ20の状態(充電率)が検出された後で、続くステップ14で、制御装置30は、保管モードが終了した後の次回起動時に燃料電池車100のシステムがONできるか否かを判定する。より具体的に制御装置30は、保管モードで保管される日数と、補機用バッテリ20の状態と、の情報に基づいて、この日数経過後で補機用バッテリ20の電圧値がシステムを起動できる電圧となっているかを検出する。
【0054】
そしてステップ14において次回起動時に燃料電池車100のシステムがONできると判定されたとき(ステップ14でYes)、ステップ16に移行して保管モードの期限が到達したか否かが判定される。一方でステップ14において次回起動時に燃料電池車100のシステムがONできないと判定されたとき(ステップ14でNo)、ステップ15に移行して補機用バッテリの充電処理が実行される。
【0055】
以下に、ステップ15で実行される補機用バッテリの充電処理に関するサブルーチンについて図5を参照して説明する。
補機用バッテリの充電処理においては、まずステップ15Aで制御装置30は、燃料電池車100の車内に人が存在するか否かを判定する。制御装置30は、一例として、例えば車載された公知のカメラ(不図示)から得られる車内の画像に基づいて人の存在を判定してもよいし、シートに装備された公知の着座センサーに基づいて人の存在を判定してもよい。
【0056】
そしてステップ15Aで車内に人が存在すると判定されたとき(ステップ15でYes)、制御装置30は、提示装置DDを介して、この燃料電池車100の乗員に対して燃料電池10が発電のため起動される旨の注意喚起を行う。一方でステップ15Aにおいて車内に人が存在しないと判定されたとき(ステップ15でNo)、ステップ15Bに移行してアクセス停止処理が実行される。
【0057】
すなわち制御装置30のロック処理部36は、ステップ15Bにおいて、燃料電池10で発電処理が行われるときに燃料電池車100の車外から車両装備を操作又は変更できないよう保護する制御を実行する。具体的に本実施形態では、ロック処理部36は、燃料電池車100におけるフードFDとドアDRの少なくとも一方をロックして燃料電池10の発電中は操作不可としてもよい。
このように本実施形態における燃料電池車100へのアクセス停止処理は、車両のドアロック及びフードロックの少なくとも1つを含む。
【0058】
また、制御装置のロック処理部36は、車両が屋内保管であるか屋外保管であるかを検出してもよい。さらにロック処理部36は、燃料電池車100が屋内に保管されるか屋外に保管されるかで、上記したアクセス停止処理を異ならせてもよい。より具体的に、ロック処理部36は、燃料電池車100が屋内に保管される場合には自宅の車庫や駐車施設など相対的に安全な場所であると想定できることから、例えばドアロックについては開錠キーによる開錠を許容する制御を実行してもよい。これにより、防犯性を確保しつつ燃料電池車100を長期保管することが可能となる。
【0059】
なお車両が屋内にあるか屋外にあるかの判定手法としては、公知の種々の手法が適用できる。一例として、車載される測位センサー53による位置情報や時刻情報や、公知の照度センサーによる照度情報などに基づいて、燃料電池車100が閉鎖空間に位置するか否かを検出することで屋内と屋外の峻別を行ってもよい。あるいは、屋内と屋外のいずれで燃料電池車100を保管するかについて、提示装置DDを介して制御装置30が乗員に対して問い合わせをすることで予めその入力を促す態様としてもよい。
【0060】
続くステップ15Dでは、保管モード下において、補機用バッテリ20の充電処理が実行される。より具体的に制御装置30は、ステップ12で決定された発電モードに沿って、予め設定された時期に補機用バッテリ20を計画充電することができる。この計画充電が実行されるとき、制御装置30は、高電圧バッテリ40からDC/DCコンバータ41を介して電力を供給すると共に、必要に応じて燃料電池10を起動して発電処理を行うことができる。
【0061】
ステップ15Dで補機用バッテリ20の計画充電が実行された後、制御装置30は、続くステップ15Eにおいて、補機用バッテリ20が計画された充電量に到達したか否かを判定する。そして計画された充電量に未だ到達していない場合には、制御装置30は、ステップ15Dに戻って計画充電を繰り返す処理を実行する。一方で補機用バッテリ20が計画された充電量に到達した場合には、ステップ16に移行して燃料電池車100の保管モードが継続される。
【0062】
すなわち、ステップ16において、制御装置30は、燃料電池車100における保管モードの期限が到達したか否かを判定する。一例として、制御装置30は、ステップ11で入力又は選択された日数が経過したかを判定し、この日数が経過したときに保管モードの期限到達を判定してもよい。
【0063】
そしてステップ16において保管モードの期限が到達したと判定されたとき、制御装置30は、ステップ17において保管モードを解除する処理を実行する。より具体的に制御装置30は、例えばロック処理部36によるロック処理を解除するとともに、補機用バッテリ20への計画充電を完了する処理を行うことができる。一方でステップ16において保管モードの期限がいまだ到達していないと判定されるときは、ステップ14に戻って上述した処理を繰り返す。
【0064】
以上説明した本実施形態における燃料電池車およびその保管方法によれば、例えば保管中に計画充電が実行されるときなどにおいて、人が誤って燃料電池車の車内又は車両装備へアクセスしてしまうことが抑制可能となる。
【0065】
上記した実施形態は本開示の好適な一例であって、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて実施形態の各要素を適宜組み合わせて新たな構造や制御を実現してもよい。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、上記実施形態では、燃料電池車100のドアDRやフードFDなどはロック処理部36によって保管モードが実行中はロック状態になっていた。しかしながら制御装置30がロック処理部36を具備しない場合には、燃料電池車100のドアDRが開錠されたときには燃料電池10による発電処理を停止する態様としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 燃料電池
20 補機用バッテリ
30 制御装置
40 高電圧バッテリ
50 センサー類
図1
図2
図3
図4
図5