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特開2024-35343情報提供システム、情報提供方法、および、情報提供プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035343
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】情報提供システム、情報提供方法、および、情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H04S7/00 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139750
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】518236513
【氏名又は名称】connectome.design株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 弥来
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA06
5D162CA01
5D162CA11
5D162CA21
5D162CC19
5D162CD25
5D162DA04
5D162EG05
(57)【要約】
【課題】ユーザの頭の向きに基づいて立体音響処理を施した音を再生する。
【解決手段】音により情報を提供する情報提供システムは、ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、ユーザの頭の向きを示す頭方向情報を取得する頭方向取得部と、1以上の音群情報を記憶する第1記憶部と、1以上の音群情報のそれぞれは、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、範囲情報と対応づけられている音と、音の発生源である音源の位置を示す音源情報と、を含み、位置取得部が取得した位置情報を用いて、音群情報を参照し、位置情報が表す位置を含む範囲を表す範囲情報と対応づけられた1以上の音を選択し、ユーザの頭部に装着される音声再生装置で選択した音を再生する音再生部と、を備える。音再生部は、ユーザの位置とユーザの頭の向きと音源の位置とに応じて立体音響処理を施された音を音声再生装置で再生する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音により情報を提供する情報提供システムであって、
ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、
前記ユーザの頭の向きを示す頭方向情報を取得する頭方向取得部と、
1以上の音群情報を記憶する第1記憶部と、前記1以上の音群情報のそれぞれは、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられている音と、前記音の発生源である音源の位置を示す音源情報と、を含み、
前記位置取得部が取得した前記位置情報を用いて、前記音群情報を参照し、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音を選択し、前記ユーザの頭部に装着される音声再生装置で選択した前記音を再生する音再生部と、を備え、
前記音再生部は、前記ユーザの位置と前記ユーザの頭の向きと前記音源の位置とに応じて立体音響処理を施された前記音を前記音声再生装置で再生する情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提供システムであって、更に、
前記位置情報と、前記位置情報に対応づけられている前記ユーザの移動方向を示す移動情報と、前記移動情報に対応づけられている前記音声再生装置が有するセンサを介して前記頭方向取得部が取得した前記頭方向情報と、を含む蓄積情報を記憶する第2記憶部を備える、情報提供システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報提供システムであって、
前記頭方向取得部は、前記音声再生装置が前記センサを有さない場合に、前記位置取得部が取得した前記位置情報および前記移動情報を用いて、前記蓄積情報を参照して、前記位置情報と前記移動情報に対応づけられた前記頭方向情報を取得する、情報提供システム。
【請求項4】
請求項3に記載の情報提供システムであって、
前記頭方向取得部は、前記音声再生装置が前記センサを有さない場合であって、かつ、前記蓄積情報が予め定められた判定条件を満たさない場合に、前記移動情報が示す前記移動方向を前記ユーザの頭の向きに決定し、
前記判定条件は、
前記位置情報と前記移動情報に対応づけられた前記頭方向情報の数が予め定められた閾値以上であることと、
前記位置情報と前記移動情報に対応づけられた複数の前記頭方向情報が示す前記ユーザの頭の向きのうち、最も頻度が高い前記ユーザの頭の向きの頻度が予め定められた度合い以上であること、の少なくともいずれか一方を含む、情報提供システム。
【請求項5】
ユーザにより携帯されるコンピュータが、音により情報を提供する情報提供方法であって、
前記ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得工程と、
前記ユーザの頭の向きを示す頭方向情報を取得する頭方向取得工程と、
地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられている音と、前記音の発生源である音源の位置を示す音源情報と、を含む、音群情報を準備する情報準備工程と、
前記位置取得工程で取得した前記位置情報を用いて、前記音群情報を参照し、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音を選択し、選択した前記音を再生する音再生工程と、を含み、
前記音再生工程は、前記ユーザの位置と前記ユーザの頭の向きと前記音源の位置とに応じて立体音響処理を施された音を前記ユーザの頭部に装着される音声再生装置で再生する、再生処理を実行する工程である、情報提供方法。
【請求項6】
音により情報を提供する情報提供プログラムであって、
ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得機能と、
前記ユーザの頭の向きを示す頭方向情報を取得する頭方向取得機能と、
地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられている音と、前記音の発生源である音源の位置を示す音源情報と、を含む、音群情報を取得する情報取得機能と、
取得した前記位置情報を用いて、前記音群情報を参照して、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音を選択し、選択した前記音を再生する音再生機能と、をコンピュータに実現させ、
前記音再生機能は、前記ユーザの位置と前記ユーザの頭の向きと前記音源の位置とに応じて立体音響処理を施された音を前記ユーザの頭部に装着される音声再生装置で再生する、再生処理を実行する機能である、情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報提供システム、情報提供方法、および、情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
街中や店内において、スピーカ等を用いて、音声での情報を提供する技術が知られている。特許文献1には、ユーザの位置情報に基づいて、ユーザの位置情報に対応する音声を再生する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-103598号公報
【特許文献2】特表2017-539159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの頭の向きに基づいて、再生する音に立体音響処理を施したいという要望があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の形態によれば音による情報を提供する情報提供システムが提供される。この情報提供システムは、ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部と、前記ユーザの頭の向きを示す頭方向情報を取得する頭方向取得部と、1以上の音群情報を記憶する第1記憶部と、前記1以上の音群情報のそれぞれは、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、前記範囲情報と対応づけられている音と、前記音の発生源である音源の位置を示す音源情報と、を含み前記位置取得部が取得した前記位置情報を用いて、前記音群情報を参照し、前記位置情報が表す位置を含む前記範囲を表す前記範囲情報と対応づけられた1以上の前記音を選択し、前記ユーザの頭部に装着される音声再生装置で選択した前記音を再生する音再生部と、を備える。前記音再生部は、前記ユーザの位置と前記ユーザの頭の向きと前記音源の位置とに応じて立体音響処理を施された前記音を前記音声再生装置で再生する。
この情報供給システムによれば、ユーザの位置とユーザの頭の向きと音源の位置とに応じて立体音響処理を施した音を再生できる。
(2)上記形態の情報提供システムにおいて、前記位置情報と、前記位置情報に対応づけられている前記ユーザの移動方向を示す移動情報と、前記移動情報に対応づけられている前記音声再生装置が有するセンサを介して前記頭方向取得部が取得した前記頭方向情報と、を含む蓄積情報を記憶する第2記憶部を備えてもよい。
このような形態によれば、各位置における移動方向とユーザの頭の向きとを関連付けて記憶できる。
(3)上記形態の情報提供システムにおいて、前記頭方向取得部は、前記音声再生装置が前記センサを有さない場合に、前記位置取得部が取得した前記位置情報および前記移動情報を用いて、前記蓄積情報を参照して、前記位置情報と前記移動情報に対応づけられた前記頭方向情報を取得してもよい。
このような形態によれば、音声再生装置がセンサを有さない場合であっても、音再生部は、立体音響処理を施された音をユーザに提供できる。
(4)上記形態の情報提供システムにおいて、記頭方向取得部は、前記音声再生装置が前記センサを有さない場合であって、かつ、前記蓄積情報が予め定められた判定条件を満たさない場合に、前記移動情報が示す前記移動方向を前記ユーザの頭の向きに決定し、前記判定条件は、前記位置情報と前記移動情報に対応づけられた前記頭方向情報の数が予め定められた閾値以上であることと、前記位置情報と前記移動情報に対応づけられた複数の前記頭方向情報が示す前記ユーザの頭の向きのうち、最も頻度が高い前記ユーザの頭の向きの頻度が予め定められた度合い以上であること、の少なくともいずれか一方を含んでもよい。
このような形態によれば、例えば、蓄積情報が十分に収拾されていない場合や、蓄積されたユーザの頭の向きにばらつきがある場合であっても、音再生部は、立体音響処理を施された音をユーザに提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】情報提供システムの構成を示す図である。
図2】ユーザの頭部の動作を検出する方法を説明するための図である。
図3】情報提供処理の一例を示したフローチャートである。
図4】音再生処理の一例を示したフローチャートである。
図5】音群情報の一例を示した図である。
図6】ユーザと音源との位置関係を表した図である。
図7】第2実施形態における情報提供システムの構成を示す図である。
図8】蓄積情報の一例を示した図である。
図9】頭方向情報の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態に係る情報提供システム100の構成を示す図である。情報提供システム100は、ユーザの位置に応じて、案内や説明を行う情報を音声によりユーザに提供する。本実施形態において、情報提供システム100が、観光地を回るユーザに、観光スポットに関する情報を提供する例を説明する。情報提供システム100は、処理装置110と、サーバ120と、音声再生装置130とを含む。
【0009】
処理装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータである。処理装置110は、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、位置取得部10と頭方向取得部30と音再生部40との、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウエア回路で実現してもよい。本実施形態においては、処理装置110は、ユーザが保有するスマートフォンである。処理装置110には、ユーザに音により観光地に関する情報を提供するためのプログラムがインストールされている。ユーザは、プログラムを実行することにより、情報提供システム100から観光地に関する情報の提供を受けることができる。処理装置110は、ユーザが持ち歩くことで観光地を移動する。
【0010】
位置取得部10は、現在のユーザの位置であるユーザ位置を示す位置情報を取得する。位置情報は、例えばユーザ位置を示す経緯度を含む。位置取得部10は、例えば、GPS(Global Positioning System)などの汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))が検出した位置情報を取得する。本実施形態において、位置取得部10は、処理装置110が備えるGPSアンテナ(図示せず)から位置情報を取得する。
【0011】
頭方向取得部30は、ユーザの頭の向きを示す頭方向情報を取得する。「ユーザの頭の向き」は、ロール角とピッチ角とヨー角とにより表すことができる。本実施形態において、頭方向取得部30は、音声再生装置130が有するセンサ131を介して頭方向情報を取得する。より具体的には、頭方向取得部30は、センサ131により測定された加速度の測定値と角速度の測定値とから、ロール角、ピッチ角、および、ヨー角を検出し、ユーザの頭の向きを取得する。
【0012】
図2は、ユーザの頭部の動作を検出する方法を説明するための図である。本実施形態においては、ユーザの頭部の動作が回転角で表される。ユーザの前後方向に沿った回転軸をロール軸、ユーザの左右方向に沿った回転軸をピッチ軸、重力方向に沿った回転軸をヨー軸と定義する。ユーザが首を傾げる動作をロール軸回りの回転として表すことができる。ユーザが頷く動作をピッチ軸回りの回転として表すことができる。ユーザが振り向く動作をヨー軸回りの回転として表すことができる。
【0013】
ロール軸回りの回転角の変位量をロール角、ピッチ軸回りの角度の変位量をピッチ角、ヨー軸回りの角度の変位量をヨー角ともいう。ロール角の範囲は、ユーザが正面を向いて立っているときを0度とすると、+30度から-30度までである。ピッチ角の範囲は、ユーザが正面を向いて立っているときを0度とすると、+45度から-45度までである。ヨー角の範囲は、真北を0度として初期設定し、0度から360度までの全ての値を取り得る。
【0014】
音再生部40(図1参照)は、ユーザ位置に対応づけられた音を選択して、再生する。より具体的には、音再生部40は、後述する音群情報を参照して、ユーザ位置を含む範囲を表す範囲情報を選択し、その範囲情報に対応付けられている音情報の音を音声再生装置130で再生する。音再生部40は、ユーザ位置とユーザの頭の向きと音源の位置とに応じて音情報に立体音響処理を施した音を再生する。一般的に、立体音響処理とは、音声再生装置130により右耳および左耳から再生される音声に、音量差、時間差、周波数特性の変化、位相の変化、残響の変化、の少なくとも一つ以上の処理を取り入れることにより音環境を立体的に再現させる処理である。立体音響処理の詳細については後述する。本実施形態において、音再生部40は、位置取得部10が取得した位置情報が表すユーザ位置を含む範囲を表す範囲情報が1以上存在する場合に、いずれか1つの範囲情報に対応する音を再生する。音再生部40は、例えば、複数の範囲情報のうち、範囲の面積が最も広い範囲情報に対応する音を選択する。
【0015】
サーバ120は、第1記憶部20を有する。第1記憶部20は、例えば、RAM、ROM、ハードディスクドライブ(HDD)である。第1記憶部20は、複数の音群情報を記憶している。音群情報は、地図上の予め定められた範囲を表す範囲情報と、範囲情報と対応づけられている音を表す音情報と、音の発生源である音源の位置を示す音源情報とを含む情報である。範囲情報は、範囲の境界の位置を示す座標を含む情報である。範囲情報は、表す範囲が円形形状である場合、中心を示す座標と半径の長さとを含む情報でもよい。音情報は、例えば、対応づけられた範囲内に存在する建築物や歴史の解説音声や、環境音を表す。音源情報は、例えば、音源の位置を示す経緯度を含む。
【0016】
音声再生装置130は、処理装置110から受信した信号が表す音を出力する携帯型の装置である。音声再生装置130は、ユーザの頭部に装着される装置であり、例えば、両耳に装着されるイヤホンである。ユーザは、音声再生装置130を頭部に装着して、観光地を移動する。本実施形態において、音声再生装置130は、音声再生装置130を装着しているユーザの頭部の動作を検出するセンサ131を有する。センサ131は、加速度と角速度を検出する。
【0017】
図3は、情報提供処理の一例を示したフローチャートである。情報提供処理は、情報提供システム100が音によりユーザに情報を提供する処理である。この処理は情報提供システム100の動作中、繰り返し実行される処理である。例えば、情報提供システム100は、2秒毎に情報提供処理を繰り返す。位置取得部10は、ステップS100において位置情報を取得する。この工程を「位置取得工程」ともいう。本実施形態において、位置取得部10は、GPSアンテナからユーザ位置の座標を示す位置情報を取得する。
【0018】
ステップS110において、音再生部40は、ステップS100で取得したユーザ位置が、第1記憶部20に記憶された音群情報のいずれかの音群情報が含む範囲情報が表す範囲に含まれるか否かを判定する。音再生部40は、ユーザ位置がいずれかの範囲に含まれる場合、ステップS120の処理に進む。一方、音再生部40は、ユーザ位置がいずれの範囲にも含まれない場合、情報提供処理を終了する。
【0019】
音再生部40は、ステップS120において、ステップS100で取得した位置情報に基づいて、第1記憶部20に記憶された複数の音群情報を参照して、立体音響処理された音を再生する。より具体的には、音再生部40は、ステップS110においてユーザ位置を含むと判定した範囲に、対応づけられた音を選択し、再生する。この工程を「音再生工程」ともいう。なお、処理装置110は、ユーザ位置周辺の位置を含む範囲を表す範囲情報を含む音群情報を予め第1記憶部20から取得して、処理装置110の記憶領域に記憶してもよい。この工程を「情報準備工程」ともいう。
【0020】
図4は、音再生処理の一例を示したフローチャートである。音再生処理は、図3に示すステップS120において、音再生部40が音を再生する一連の処理である。ステップS200において、音再生部40は、ユーザ位置を含む1個の範囲情報に対応付けられている音情報を選択する。より具体的には、音再生部40は、ステップS110(図3参照)においてユーザ位置を含むと判定した範囲に、対応づけられた音を選択する。
【0021】
ステップS210(図4参照)において、頭方向取得部30は、頭方向情報を取得する。この工程を「頭方向取得工程」ともいう。なお、ステップS200とステップS210とは、この順に限らず、任意の順序で行うことができ、並行して行ってもよい。本実施形態において、頭方向取得部30は、ステップS210を実行するタイミングにおいて、センサ131を介してロール角、ピッチ角、およびヨー角を検出し、ユーザの頭の向きを取得する。
【0022】
ステップS220において、音再生部40は、ステップS200で選択した音情報の音にステップS210で取得した頭方向情報を用いて立体音響処理を施す。より具体的には、音再生部40は、音源位置とユーザ位置とユーザの頭の向きを用いて、立体音響処理を行う。立体音響処理には、例えば、既存の立体音響の生成のためのアルゴリズムが使用される。音再生部40は、例えば、処理装置110の記憶領域に記憶された立体音響処理プログラムを実行して、立体音響処理を施す。音情報に立体音響処理を施すことにより、右耳に再生される音のタイミングおよび音圧と、左耳に再生される音のタイミング及び音圧とに差異を生じさせることができる。例えば、音源に近い側の耳に再生される音のタイミングを、音源に遠い側の耳に再生される音のタイミングより早くし、音源に近い側の耳に再生される音の音圧を、音源に遠い側の耳に再生される音の音圧より大きくする。
【0023】
ステップS230において、音再生部40は、ステップS220で立体音響処理を施された音を再生する。なお、音再生部40は、再生していた音情報に対応づけられている範囲情報が表す範囲にユーザ位置が含まれなくなった場合、その音情報の再生を停止してもよい。また、処理装置110は、音の再生中にステップS210~S230の処理を繰り返し実行してもよい。すなわち、ステップS200で選択した音の再生が終わるまで、立体音響処理を随時行い、その立体音響処理を施した音を再生してもよい。
【0024】
図5は、音群情報の一例を示した図である。第1音群情報Di1が含む範囲情報は範囲A1を表し、音S1を表す音情報と、音S1の音源の位置P1を表す音源情報とを含む。音S1は寺の解説音声である。位置P1は、音S1で解説される寺の地図上の位置である。第2音群情報Di2が含む範囲情報は範囲A2を表し、音S2を表す音情報と、音S2の音源の位置P2を表す音源情報とを含む。音S2は梵鐘の音である。位置P2は、音S2の梵鐘の地図上の位置である。
【0025】
図6は、ユーザPと位置P1に配置された音源SSとの位置関係を表した図である。以下では、音再生部40が、音S1に立体音響処理を施す場合を例として説明する。図6においては、ユーザPと音源SSとを上から見た様子を表している。まず、音再生部40が、選択された音S1の音源の位置P1の情報を第1記憶部20から読み出す。
【0026】
続いて、音再生部40は、ユーザPの頭の向きDに対する、ユーザPからみた音源SSが位置する方向の相対的な角度を求める。水平面内において、頭の向きDが基準方位Nに対してなす角の大きさは角度r1である。基準方位Nは、例えば、真北を向く方向である。ユーザPからみた音源SSが位置する方向が、基準方位Nに対してなす角の大きさは角度r2である。頭方向取得部30は、頭の向きDと基準方位Nとから、角度r1を求める。頭方向取得部30は、音源SSの位置とユーザPの位置と基準方位Nとから、角度r2を求める。頭方向取得部30は、角度r1と角度r2との差である角度r3を、ユーザPの頭の向きDに対する音源SSが位置する方向の相対的な角度として求める。音再生部40は、角度r3と、音波が頭部や身体、耳介などでの反射や回折を経てユーザPの外耳道入口に到来するまでの伝達特性を記述した関数である頭部伝達関数とを用いて、音S1に立体音響処理を施す。
【0027】
図6に示すように、ユーザPと音源SSとの位置関係は、右耳Erの方が左耳Elよりも音源SSに近くに位置するようになっている。そのため、立体音響処理を施された音S1は、右耳Erに再生される音のタイミングが、左耳Elに再生される音のタイミングより早い。また、右耳Erに再生される音の音圧は、左耳Elに再生される音の音圧より大きい。これにより、ユーザPは、立体音響処理を施された音S1が、音源SSから再生されているように感じる。音S1において解説されている対象である寺の地図上の位置が、音源の位置P1として設定されているため、立体音響処理が施された音S1を聞いているユーザPは、寺から解説音声が出力されているように感じることができる。このように本実施形態においては、ユーザPに臨場感を感じさせながら、解説している対象の位置を聴覚的にユーザに提供することができる。
【0028】
以上で説明した本実施形態の情報供給システムによれば、音再生部40は、ユーザの位置とユーザの頭の向きと音源の位置とに応じて立体音響処理を施した音を再生できる。
【0029】
B.第2実施形態:
図7に示す第2実施形態の情報提供システム100Bは、サーバ120Bが第2記憶部50を備えている点と音声再生装置130Bがセンサ131を備えていない点が、第1実施形態と異なり、他の構成は同一である。
【0030】
第2記憶部50は、例えば、RAM、ROM、HDDである。第2記憶部50は、位置情報と、位置情報に対応づけられるユーザの移動方向を示す移動方向情報と、移動方向情報に対応づけられる頭方向情報と、を含む蓄積情報を記憶する。移動方向情報は、例えば、真北を0度とした場合のユーザの移動方向を表す角度を含む情報である。ユーザの移動方向は、例えば、ユーザ位置の移動履歴から決定される。本実施形態において、第2記憶部50は、第1実施形態に示す情報提供システム100(図1参照)の構成に含まれる音声再生装置130が有するセンサ131を介して頭方向取得部30が取得した頭方向情報を取得し、位置情報と移動方向情報と対応づけて記憶する。蓄積情報は、例えば、予め音声再生装置130を装着した人間を模擬的に動かすことで取得されてもよく、実際に情報提供システム100を利用するユーザの動作から取得されてもよい。
【0031】
図8は、蓄積情報の一例を示した図である。本実施形態において、蓄積情報は、真北を0度として、移動方向を時計回り方向に15度毎に区切った移動方向情報毎にそれぞれ頭方向情報HD1~HD24が関連付けられている。例えば、移動方向を示す角度θが0度より大きく15度以下の範囲内にある場合には、頭方向情報HD1が対応づけられている。また、移動方向を示す角度θが255度より大きく270度以下の範囲内にある場合には、頭方向情報HD18が対応づけられている。
【0032】
図9は頭方向情報HD18の一例を示した図である。図9に示すグラフは、横軸が頭の向きであるヨー軸回りの角度を表している。この角度は、真北を0度として時計回り方向に回転する。本実施形態において、頭方向情報HD18は、ロール角およびピッチ角に関する情報を含まない。縦軸は頻度を表している。頻度は、ユーザの頭の向きである各ヨー軸回りの角度毎の頭方向情報の数である。最も頻度が高いヨー角は角度dxである。すなわち、頭方向情報HD18において、最も頻度が高い頭の向きは、移動方向に対して少し左方向に顔を向ける方向である。
【0033】
本実施形態において、頭方向取得部30は、位置取得部10が取得した位置情報および移動情報を用いて、蓄積情報を参照して、位置情報と移動情報に対応づけられた頭方向情報を取得する。より具体的には、頭方向取得部30は、頭方向情報HD18として最も頻度が高い方向である角度dxを頭の向きの方向に決定する。
【0034】
以上で説明した第2実施形態の情報供給システムによれば、第2記憶部50は、各位置における移動方向とユーザの頭の向きとを関連付けて記憶できる。
【0035】
また、頭方向取得部30は、音声再生装置130がセンサ131を有さない場合に、蓄積情報を参照して、頭方向情報を取得する。そのため、音声再生装置130がセンサ131を有さない場合であっても、音再生部40は、ユーザに立体音響処理を施した音を提供できる。すなわち、センサ131を有さない安価な音声再生装置130であっても、臨場感を感じさせながら、ユーザに音声による情報提供ができる。
【0036】
C.第3実施形態:
第3実施形態は、頭方向取得部30が、蓄積情報が予め定められた判定条件を満たさない場合に、移動方向をユーザの頭の向きに決定する点が、第2実施形態と異なる。第3実施形態の情報提供システム100Bの構成は、第2実施形態の情報提供システム100Bの構成と同一であるため、情報提供システム100Bの構成の説明は省略する。
【0037】
頭方向取得部30は、音声再生装置130がセンサ131を有さない場合において、蓄積情報が判定条件を満たす場合には、位置情報および移動情報に対応づけられた頭方向情報を取得し、一方、蓄積情報が判定条件を満たさない場合には、移動情報が示す移動方向をユーザの頭の向きに決定する。判定条件として、例えば、以下のような条件のいずれか1つ以上を採用することが可能である。
【0038】
<条件1>
頭方向情報の数が予め定められた閾値以上であること。
<条件2>
最も頻度が高いユーザの頭の向きの頻度が予め定められた度合い以上であること。
<条件3>
最も頻度が高いユーザの頭の向きの頻度と、2番目に頻度が高いユーザの頭の向きの頻度との差が、予め定められた値以上であること。
【0039】
上記条件1は、例えば、ステップS100(図3参照)で位置取得部10が取得した位置情報に対応づけられた頭方向情報の数が、予め定められた閾値距離以上である場合に、成立していると判断される。
【0040】
上記条件2は、例えば、ステップS100で位置取得部10が取得した位置情報に対応づけられた頭方向情報のうち、最も頻度が高い頭の向きの頻度が、予め定められた度合い以上である場合に、成立していると判断される。
【0041】
上記条件3は、例えば、ステップS100で位置取得部10が取得した位置情報に対応づけられた頭方向情報の内、最も頻度が高い頭の向きの頻度と、2番目に頻度が高い頭の向きの頻度との差が、予め定められた値以上である場合に、成立していると判断される。
【0042】
また、上記の条件1~3やその他の条件を適宜組み合わせて判定条件とすることもできる。本実施形態では、頭方向取得部30は、上述した条件1および条件2を採用し、これらの条件1または条件2のいずれかが成立したときに判定条件が成立したものと判定される。
【0043】
以上で説明した第3実施形態の情報供給システムによれば、頭方向取得部30は、音声再生装置130がセンサ131を有さない場合であって、かつ、蓄積情報が判定条件を満たさない場合に、移動方向をユーザの頭の向きとして取得する。そのため、例えば、蓄積情報が十分に収拾されていない場合や、蓄積されたユーザの頭の向きにばらつきがある場合であっても、音再生部40は、ユーザに立体音響処理を施した音を提供できる。
【0044】
D.他の実施形態:
(D1)上述した実施形態において、音群情報は、サーバ120に記憶されている。これに限らず、音群情報は処理装置110に記憶されていてもよい。すなわち、処理装置110が第1記憶部20を備えていてもよい。
【0045】
(D2)上述した実施形態において、音声再生装置130が音再生部40を備えていてもよい。また、音声再生装置130が位置取得部10を備えていてもよい。
【0046】
(D3)上述した実施形態において、範囲情報は、高さ方向の情報を持っていてもよい。この場合、位置取得部10は、位置情報として、例えば、高度センサからユーザの位置を取得する。
【0047】
(D4)上述した実施形態において、音再生部40は、立体音響処理を施している。これに限らず、情報提供システム100が備える他の構成が立体音響処理を施してもよい。
【0048】
(D5)上述した実施形態において、音再生部40は、ユーザの頭の向きに対する音源の位置する方向の相対的な角度を用いて、音に立体音響処理を施している。これに限らず、音再生部40は、更に、ユーザと音源との距離も考慮して、立体音響処理を施してもよい。音再生部40は、例えば、ユーザ位置が音源から離れることによって、すなわちユーザ位置と音源位置との距離が大きくなるにつれて、音量を小さくするように立体音響処理を施す。この場合、音群情報は、ユーザ位置の音源からの距離と音量との関係を示す減衰情報を含んでいてもよい。なお、解説音声の減衰情報は、ユーザ位置の音源からの距離にかかわらず音量が一定であることを示すことが好ましい。
【0049】
(D6)上述した実施形態において、音再生部40は、再生処理が実行されている範囲情報が表す範囲からユーザが出た時点から予め定められた時間内に、再度その範囲情報が表す範囲内に進入した場合は、その範囲情報について再生処理を実行しないようにしてもよい。このような態様とすれば、例えば、ある範囲の境界周辺を移動している場合に、何度もその範囲を表す範囲情報に対応づけられた音情報の音が再生されることを抑制できる。
【0050】
(D7)上述した実施形態において、音再生部40は、再生処理が実行されている範囲情報が表す範囲からユーザが出た時点から予め定められた時間内は、その範囲情報について再生処理を継続してもよい。このような態様とすれば、例えば、ある範囲の境界周辺を移動している場合であっても、その範囲を表す範囲情報に対応づけられた音情報の音の再生が途切れずに、継続的に聞くことができる。
【0051】
(D8)上述した実施形態において、音源情報が示す音源の位置は、絶対座標系によって表される位置でもよく、ユーザに対する相対座標系によって表される位置でもよい。また、音源の位置は音の開始から終了までの間一定の位置でなくてもよい。例えば、音が複数の建造物の解説音声である場合に、音源の位置は、各建造物の解説時にその建造物の位置へと遷移してもよい。
【0052】
(D9)上述した第2実施形態において、頭方向取得部30は、位置情報と移動方向情報と頭方向情報との関係を機械学習によって学習したモデルを用いて、頭方向情報を取得してもよい。
【0053】
(D10)上述した第2実施形態において、蓄積情報は、ユーザの移動速度を含んでいてもよい。この場合、頭方向取得部30は、位置情報と移動情報とユーザの移動速度とを用いて、蓄積情報を参照し、位置情報と移動情報に対応づけられた頭方向情報を取得する。この場合、頭方向取得部30は、例えば、位置取得部10の取得したユーザの移動履歴からユーザの移動速度を算出し、予め定められた移動速度の範囲毎に蓄積された蓄積情報を参照し、頭方向情報を取得する。また、蓄積情報は、季節や時間帯、天候等の状況を示す情報を含んでいてもよく、ユーザの身長、年齢、性別等のユーザの身体情報を含んでいてもよい。また、ユーザの国籍や使用言語、嗜好等のユーザ情報を含んでいてもよい。
【0054】
(D11)上述した第2実施形態において、蓄積情報は、移動方向を15度毎に区切り、頭方向情報が対応づけられている。これに限らず、任意の角度で移動方向を区切り、頭方向情報が対応づけられてもよい。また、位置情報に応じて、角度の範囲を決定してもよい。例えば、位置情報が示す位置が、道幅が予め定められた閾値以上の位置の場合は、道幅が閾値未満の位置や行き止まりの位置の場合よりも、範囲を大きくしてもよい。
【0055】
(D12)上述した第2実施形態において、頭方向取得部30は、頭方向情報として最も頻度が高い方向を頭の向きの方向に決定している。これに限らず、頭方向情報の各頭の向きの方向の平均値や中央値等の統計的手法によって求められる値を、頭の向きの方向に決定しても良い。また、定められた関数やテーブルを用いて、頭の向きの方向を決定してもよい。
【0056】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…位置取得部、20…第1記憶部、30…頭方向取得部、40…音再生部、50…第2記憶部、100、100B…情報提供システム、110…処理装置、120、120B…サーバ、130、130B…音声再生装置、131…センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9