(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035345
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】施工管理システムおよび施工管理方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240307BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
E04G21/02 103B
E04G21/02 ESW
E02D17/20 104B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139754
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 翼
【テーマコード(参考)】
2D044
2E172
【Fターム(参考)】
2D044DC03
2E172AA05
2E172AA06
2E172DC00
(57)【要約】
【課題】施工の妨げにならず、視認性に優れた施工を補助する目安を、任意の箇所に設けることができる施工管理システムおよび施工管理方法を提供する。
【解決手段】撮像機器により撮影した施工箇所の実際の画像である現実画像を取得する画像取得部と、現実画像とバーチャルリアリティ(VR)画像Aとを合わせて複合現実(MR)画像を生成するMR画像生成部と、MR画像を表示機器に表示する表示部と、を備え、MR画像生成部は、施工箇所の変化に応じてVR画像Aを変化させる施工管理システム。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像機器により撮影した施工箇所の実際の画像である現実画像を取得する画像取得部と、
前記現実画像とバーチャルリアリティ(VR)画像とを合わせて複合現実(MR)画像を生成するMR画像生成部と、
前記MR画像を表示機器に表示する表示部と、
を備え、
前記MR画像生成部は、前記施工箇所の変化に応じて前記VR画像を変化させる施工管理システム。
【請求項2】
前記施工箇所は被覆物を対象物に吹き付ける吹付工事現場であり、
前記MR画像生成部は、前記被覆物の厚さの増加に従い前記VR画像の下端側から前記VR画像を消し、前記VR画像が前記被覆物に埋もれていくように前記MR画像を表示する請求項1に記載の施工管理システム。
【請求項3】
前記VR画像は前記被覆物の被覆厚を示す複数の目安部を有する請求項2に記載の施工管理システム。
【請求項4】
撮像機器により撮影した施工箇所の実際の画像である現実画像を取得する取得工程と、
前記現実画像とバーチャルリアリティ(VR)画像とを合わせて複合現実(MR)画像を生成するMR画像生成工程と、
前記MR画像を表示機器に表示する表示工程と、を備え、
前記MR画像生成工程において、前記施工箇所の変化に応じて前記VR画像を変化させる施工管理方法。
【請求項5】
前記施工箇所は被覆物を対象物に吹き付ける吹付工事現場であり、
前記MR画像生成工程において、前記被覆物の厚さの増加に従い前記VR画像の下端側から前記VR画像を消し、前記VR画像が前記被覆物に埋もれていくように前記MR画像を表示する請求項4に記載の施工管理方法。
【請求項6】
前記VR画像は前記被覆物の被覆厚を示す複数の目安部を有する請求項5に記載の施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工管理システムおよび施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な工事現場において、施工が適切に行えるよう、施工を補助する種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば、法面保護のために法面にモルタルやコンクリート等の被覆物を吹き付ける工事現場においては、吹き付けられる被覆物の厚さを適切なものにするため、ラス網と法面との間隔を確保するべく使用されるスペーサーが、被覆厚の目安としても用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した吹付工事現場においてスペーサーを被覆厚の目安として用いる場合には、スペーサーは吹付工事の妨げにならないよう、細径で肉薄に形成されているため、視認性が悪かった。また、施工に用いられるスペーサーの数には制限があるため、施工範囲全体にわたり目安とすることが難しく、それぞれのスペーサー間の区間については、適切な被覆厚とすることは難しかった。このような問題は吹付工事現場に限らず、他の工事現場においても生じていて、施工の妨げにならず、視認性に優れ、かつ施工範囲全体に亘り施工を補助する目安を設置する技術が求められていた。
【0006】
本発明はこのような問題を解決することを課題とするものであって、施工の妨げにならず、視認性に優れた施工を補助する目安を、任意の箇所に設けることができる施工管理システムおよび施工管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、撮像機器により撮影した施工箇所の実際の画像である現実画像を取得する画像取得部と、前記現実画像とバーチャルリアリティ(VR)画像とを合わせて複合現実(MR)画像を生成するMR画像生成部と、前記MR画像を表示機器に表示する表示部と、を備え、前記MR画像生成部は、前記施工箇所の変化に応じて前記VR画像を変化させる施工管理システムであることを特徴とする。
【0008】
上記発明において、前記施工箇所は被覆物を対象物に吹き付ける吹付工事現場であり、前記MR画像生成部は、前記被覆物の厚さの増加に従い前記VR画像の下端側から前記VR画像を消し、前記VR画像が前記被覆物に埋もれていくように前記MR画像を表示することが好ましい。
【0009】
上記発明において、前記VR画像は前記被覆物の被覆厚を示す複数の目安部を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、撮像機器により撮影した施工箇所の実際の画像である現実画像を取得する取得工程と、前記現実画像とバーチャルリアリティ(VR)画像とを合わせて複合現実(MR)画像を生成するMR画像生成工程と、前記MR画像を表示機器に表示する表示工程と、を備え、前記MR画像生成工程において、前記施工箇所の変化に応じて前記VR画像を変化させる施工管理方法であることを特徴とする。
【0011】
上記発明において、前記施工箇所は被覆物を対象物に吹き付ける吹付工事現場であり、
前記MR画像生成工程において、前記被覆物の厚さの増加に従い前記VR画像の下端側から前記VR画像を消し、前記VR画像が前記被覆物に埋もれていくように前記MR画像を表示することが好ましい。
【0012】
上記発明において、前記VR画像は前記被覆物の被覆厚を示す複数の目安部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の施工管理システムおよび施工管理方法によれば、MR技術を用いることで、施工の妨げにならず、視認性に優れた施工を補助する目安を、任意の箇所に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末を示す背面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末の構成ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末の機能ブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る施工管理システムを用いた施工管理方法の概要を示す模式図であり、(a)は実際の吹付工事現場の現実画像を示す模式図、(b)は(a)の現実画像と合わせて表示されるVR画像を示す模式図である。
【
図6】
図5(a)の現実画像と
図5(b)のVR画像を合わせて表示したMR画像を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る施工管理システムに用いられるVR画像の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に従う施工管理システムおよびこれを用いた施工管理方法の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末1を示す背面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末1を示す正面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末の構成ブロック図である。
【0017】
図1~
図3に示すように、本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末1は、背面に撮像機器としてのカメラ2を備えるとともに、表面に表示機器および操作機器としてのタッチパネル3を備えていて、更にタブレット型端末1の内部にカメラ2やタッチパネル3を含めた装置全体の制御を行う制御部4を備えている。
【0018】
カメラ2は、動画を撮影可能な撮像機器であり、撮影した動画のデータを制御部4へと送信する。
【0019】
タッチパネル3は、カメラ2が撮影した現実の画像(現実画像)と、制御部4により作られるバーチャルリアリティ(VR)画像が合わせられた複合現実(MR)画像を表示する表示装置であるとともに、タッチパネル3に表示可能なユーザーインターフェースを介してタブレット型端末1に関する各種入力操作を可能にする操作機器でもある。
【0020】
制御部4は、タブレット型端末1全体の制御を行う。
図3に示すように、制御部4は、制御部4全体を制御するCPU41と、CPU41上で動作する制御プラグラム等を格納したROM42と、各種データを一時的に格納するためのRAM43と、VR画像等の制御部4で用いられる各種情報を記憶する記憶部44を備えている。
【0021】
次に、タブレット型端末1の情報処理に供する機能構成について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る施工管理システムが実装される機器の例としてのタブレット型端末1の機能ブロック図である。
【0022】
図4に示すように、CPU41がROM42に格納されている制御プログラムをRAM43に展開して実行することにより、CPU41が画像取得部411、MR画像生成部412および表示部413として機能する。
【0023】
画像取得部411は、カメラ2により撮影した実際の画像である現実画像を取得する。取得した現実画像のデータはMR画像生成部412や表示部413へと送信される。
【0024】
MR画像生成部412は、現実画像とVR画像とを合わせてMR画像を生成する。VR画像は予め記憶部44に記憶されていて、記憶部44から読み出すことで用いられる。VR画像の形状や高さ、配置の仕方(配置する数や配置する位置、配置する際のVR画像の姿勢等)については、あらかじめ使用者がタッチパネル3を介して設定しておく。例えば、MR画像生成部412は、LiDAR(light detection and ranging)技術を用いて現実画像から施工箇所の地面を認識し、現実画像中の地面の中央に基準となるVR画像(基準VR像)を配置するとともに、この基準VR画像を中心に、あらかじめ設定された配置間隔に従い他のVR画像を配置する。このVR画像の配置の仕方は任意かつ複数のものを設定することが可能であり、また、設定されたそれぞれの配置は記憶部44に読み出し可能に記憶することができる。そして、MR画像生成部412は、現実画像とVR画像を合わせる際には、現実画像に基づき現実画像内の物体とVR画像との前後関係を含む位置情報を把握して、現実の物体の後方にVR画像がある場合にはVR画像が現実の物体に隠れ、VR画像の後方に現実の物体がある場合には現実の物体が隠れるように表示する、所謂オクルージョン技術を用いてMR画像を生成する。また、MR画像生成部412は、カメラ2により取得される現実画像に基づき現実画像に含まれる施工の進捗状況(例えば後述するように法面に対するモルタルの吹き付け工事現場においては、モルタルの厚さ)等、施工箇所の変化の有無を検出し、施工箇所に変化が生じた場合には、現実の物体とMR画像とが重なる部分について、必要に応じてMR画像中のVR画像を変化させる。
【0025】
表示部413は、タブレット型端末1の各種操作に必要なユーザーインターフェースとしての各種アイコン等を表示する他、画像取得部411が取得した現実画像や、MR画像生成部412が生成したMR画像を表示機器としてのタッチパネル3に送信してこれに表示させる。具体的には、タブレット型端末1が単なる撮像モードである場合には、表示部413は画像取得部411が取得した現実画像をタッチパネル3に送信して表示する。一方、タブレット型端末1がMR画像生成モードである場合には、表示部413はMR画像生成部412が生成したMR画像をタッチパネル3に送信してこれに表示させる。
【0026】
このタブレット型端末1のモードの切り替えは、例えば単なる撮像モードとMR画像生成モードとで使用するアプリケーションの種類を変えることで行われる。撮像用アプリケーションが使用される場合には、画像取得部411が取得した現実画像がMR画像生成部412を介さずに表示部413に送信され、タッチパネル3に表示される。一方、MR画像生成用アプリケーションが使用される場合には、画像取得部411が取得した現実画像がMR画像生成部412へと送信され、MR画像生成部が現実画像とVR画像を組み合わせてMR画像を生成し、生成されたMR画像がMR画像生成部412から表示部413を介してタッチパネル3に表示される。こうしたタブレット型端末1のモードの切り替え操作は、タッチパネル3にそれぞれのモードのアイコンを表示し、使用者がタッチパネル3にタッチしてそれぞれのアイコンを選択することで行われる。
【0027】
次に、上述した施工管理システムが実装されたタブレット型端末1を使用した施工管理方法の具体例について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る施工管理システムを用いた施工管理方法の概要を示す模式図であり、(a)は実際の吹付工事現場の現実画像を示す模式図、(b)は(a)の現実画像と合わせて表示されるVR画像Aを示す模式図である。
図6は、
図5(a)の現実画像と
図5(b)のVR画像Aを合わせて表示したMR画像を示す模式図である。
【0028】
図5(a)、(b)および
図6に示す例では、法面SにモルタルM(M1、M2、M3)を吹き付ける吹付工事現場において、本発明に係る施工管理システムが実装されたタブレット型端末1を用いた施工管理方法が実施される。なお、実際の施工現場においては法面Sの広範囲にわたり連続的にモルタルMが吹き付けられるが、ここでは説明しやすくするため、それぞれ非連続な3ヶ所のモルタルM1、M2、M3の吹き付けを行う場合を例に説明を行う。
【0029】
図5(a)に示すように、法面SにモルタルMを吹き付ける作業が行われている。モルタルM1からM3に至るに従いモルタルの被覆厚がT1、T2と厚くなっていき、モルタルM3が目的の厚さT3であるとする。この実際の作業の様子が現実画像としてタブレット型端末1のカメラ2により撮影されて、画像取得部411へと送られる。撮影された現実画像は、MR画像生成モードを用いていない段階では、そのまま表示部413を経てタッチパネル3に表示される。
【0030】
そして、本発明に係る施工管理方法においては、MR画像生成部412が、
図5(a)に示す現実画像に、
図5(b)に示す、円盤状のVR画像Aを合わせる処理を行い、現実画像中の施工箇所である法面Sの傾斜に合わせて斜めにVR画像Aを配置してMR画像を生成し、表示部413がタッチパネル3にMR画像データを送信しタッチパネル3に表示させる。このとき、VR画像Aの厚さ(高さ)Hは、MR画像中において目標となるモルタルMの厚さ、すなわちモルタルM3の厚さT3と同等の厚さになるよう設定されている。なお、このVR画像Aの厚さや画面中に表示される個数、そして表示位置はタッチパネル3の操作により、施工の種類や施工現場の状況等に応じて任意に設定することができるとともに、その場の状況等に応じて変更することができる。VR画像Aの設定データは記憶部44に保存され、MR画像生成部412により記憶部44から読み出されることにより使用される。記憶部44にはVR画像Aの設定データを複数保存することができ、使用者は施工に応じて任意のデータを選択し使用することができる。
【0031】
図6に示すように、MR画像生成モードが選択され、現実画像とVR画像Aとを重ね合わせて表示する際には、オクルージョン技術が用いられて、モルタルM1、M2、M3の厚さがT1~T3と増加していくに従いVR画像Aの下端側からVR画像Aを消し、VR画像AがモルタルMに埋もれていく視覚効果を生じるようにMR画像を表示する。なお、モルタルM1~M3は、いずれもVR画像Aが隠れるくらいに十分な範囲にわたり吹き付けられている。
【0032】
そして、
図6のMR画像では、モルタルM1やモルタルM2の場合は、適切なモルタルの厚さを示すVR画像AがモルタルM1、M2の上部から露出していることから、モルタルM1、M2では被覆厚が不足していることが分かる。一方、モルタルM3の場合にはVR画像Aが完全に見えなくなり、モルタルM3に埋もれたように認識される状態になっているため、目標となるモルタルMの厚さT3に到達したことが分かる。
【0033】
モルタルMの吹付工事現場において、モルタルMは吹付開始後モルタルM1の状態を経てモルタルM3の状態に至るまで次第に厚さが増していくが、MR画像生成部412は、このモルタルMの厚さの変化にリアルタイムに対応して、上述したようにVR画像Aを変化させていく。これにより施工の状態をリアルタイムで把握することができ、適切な被覆厚を実現することができる。
【0034】
上述した施工管理システムおよび施工管理方法によれば、MR技術を用いることにより、施工の目安となるVR画像Aを現実画像と共に表示することができるとともに、視認性に優れた形状やサイズのMR画像を、任意の箇所に、任意の個数設けることができる。
【0035】
なお、本発明に係る施工管理システムおよび施工管理方法は上述した実施形態に限定されず、種々の変形を採用することができる。
【0036】
例えば、上述した実施形態においては円盤状のVR画像Aが用いられていたが、本発明においてはこうした態様に限らず、他の任意の形状のVR画像を用いることが可能である。
【0037】
図7は、本発明の実施形態に係る施工管理システムに用いられるVR画像の他の例を示す模式図である。
【0038】
図7に示すVR画像Bは、円盤状の下段部B1と、下段部B1の上に位置する下段部B1よりも径が小さい円盤状の中段部B2と、中段部B2の上に位置する円柱状の上段部B3により構成されている。下段部B1、中段部B2および上段部B3はそれぞれ異なる色で表示されている。
【0039】
このVR画像Bでは、下段部B1、中段部B2および上段部B3は被覆物の被覆厚を示す目安部になっていて、下段部B1が埋まり、中段部B2内にモルタルMの表面が位置する状態が適切なモルタルMの厚さになるよう設定されている。そのため、モルタルMの表面が下段部B1内に位置する状態だと被覆厚が足りず、上段部B3内に位置する状態だと被覆厚が過剰であることを示している。このように、VR画像Bに複数の目安部を設けることにより、モルタルM等の被覆工事において、より適切な被覆厚管理を行うことができる。また、所定の厚さのモルタルを吹き付けても上段部B3が視認されることで、VR画像Bが消えたことはシステムの異常に起因するものではなく、あくまで吹き付けられたモルタルMによるものであることを確認することが可能になる。
【0040】
また、上述した実施形態においては複数のVR画像A、Bを施工現場である法面Sに配置する態様を例に説明したが、本発明においてはこれに限らず、例えば施工対象となる法面Sの領域全体を覆うVR画像を生成して使用してもよい。これによりモルタルMの被覆厚をより高精度で管理することができる。
【0041】
また、上述した実施形態においては施工管理システムが実装される機器としてタブレット型端末1を例に説明をしたが、本発明においてはこれに限らず、スマートフォンを用いてもよく、また、本発明に係る施工管理システムを実装し使用するための専用端末機を用いてもよいが、何れの機器についても、撮像機器と表示機器を一体的に備えていてもよく、あるいは撮像機器と表示機器を別個の端末に搭載し、複数の端末により本発明に係る施工管理システムを実現してもよい。一体型である場合には作業者による取り扱いが容易であるという利点がある。一方、別体である場合には、例えば重機の操縦席の外側に撮像機器を設置し、操縦席の内側に表示機器を設置することにより、操縦席からでは見えづらい施工箇所の様子を操縦席から安全に確認しつつ、施工を行うことができるという利点がある。
【0042】
また、上述した実施形態においては施工管理システムおよび施工管理方法の使用例として法面SへのモルタルMの吹付工事現場への使用について説明したが、本発明はこれに限らず、他の施工現場にも使用することができる。
【0043】
例えば、本発明に係る施工管理システムおよび施工管理方法は、施工現場に被覆され老朽化したモルタルやコンクリート等のはつり工事を行う際にも使用することができる。この場合、所望のはつり深度に到達したことを視認できるように目安部を設けたVR画像が使用され、例えば当初はVR画像が表示されず、はつり工事が進むに従いVR画像が表れていき、所定の目安部に到達したところではつり工事を終了するという使用方法が考えられる。
【0044】
また、本発明に係る施工管理システムおよび施工管理方法は、例えば海洋土木工事の現場において、波の高さを測定する際にも使用することができる。この場合、VR画像に波高の基準となる所定の目安部を設けることで、施工海域の波高が工事を行うのに適切であるか否かを判断することができる。
【0045】
また、河川工事の現場においても、河川の水深を測り適切な工事を行えるか否かを判断するために本発明に係る施工管理システムおよび施工管理方法を使用してもよい。この場合、VR画像に水深の基準となる所定の目安部を設けることで、施工現場の水深が工事を行うのに適切であるか否かを判断することができる。
【0046】
また、遺跡等の発掘現場や災害救助の現場においても、砂礫を所望の深度に至るまで除去する作業を行うような場合でも、本発明に係る施工管理システムおよび施工管理方法を使用することができる。この場合は、所望の除去深度に到達したことを視認できるように目安部を設けたVR画像が使用され、当該目安部が見えるまで砂礫の除去を行うことにより、適切な作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1:タブレット型端末
2:カメラ
3:タッチパネル
4:制御部
41:CPU
42:ROM
43:RAM
44:記憶部
411:画像取得部
412:複合現実(MR)画像生成部
413:表示部
A、B:バーチャルリアリティ(VR)画像
B1:下段部
B2:中段部
B3:上段部
M1、M2、M3:モルタル
S:法面