IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社の特許一覧 ▶ 積水化成品工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-融雪パネル 図1
  • 特開-融雪パネル 図2
  • 特開-融雪パネル 図3
  • 特開-融雪パネル 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035356
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】融雪パネル
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20240307BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20240307BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H05B3/14 A
H05B3/20 339
E04H9/16 H
E04H9/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139772
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松井 徳純
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲生
(72)【発明者】
【氏名】石坂 勇樹
【テーマコード(参考)】
2E139
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
2E139AA03
2E139AC19
2E139DA04
2E139DA54
2E139DB04
2E139DB09
2E139DB16
2E139DB21
3K034AA12
3K034AA16
3K034BB14
3K034BC16
3K034HA09
3K034JA10
3K092PP20
3K092QA05
3K092QB43
3K092QB54
3K092RF03
3K092RF26
3K092VV33
(57)【要約】
【課題】雪が容易に除去可能な融雪パネルを提供すること。
【解決手段】パネル本体と、該パネル本体を加熱する加熱装置とを備えた融雪パネルであって、前記パネル本体の前記表面に親水化処理が施されている融雪パネルを提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体と、該パネル本体を加熱する加熱装置とを備えた融雪パネルであって、
前記加熱装置は、前記パネル本体の裏面側で発熱する発熱体を有し、
該発熱体が、PTCヒーターであり、
前記パネル本体の表面に親水化処理が施されている融雪パネル。
【請求項2】
前記親水化処理剤がシリケート化合物の加水分解物を含む親水化処理剤である請求項1記載の融雪パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冬場の寒冷地では建物や道路に積もる雪の除去に多大な手間が掛かっている。このような除雪の手段としては、融雪パネルが知られている。このような融雪パネルではパネル本体を加熱するための加熱装置に下記特許文献1、2に示すようなPTCヒーターが用いられたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-094729号公報
【特許文献2】特開2017-082491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
融雪パネルには雪を除去することが容易であることが求められている。そこで、本発明は、雪の除去が容易な融雪パネルの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために鋭意検討したところ、本発明者は、パネル本体の表面に親水化処理を施すことでパネル本体の表面上を滑らせるようにして雪が容易に除去されることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、パネル本体と、該パネル本体を加熱する加熱装置とを備えた融雪パネルであって、前記パネル本体の前記表面に親水化処理が施されている融雪パネル、を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、雪を容易に除去可能な融雪パネルが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の融雪パネルの平面視における様子を示した概略図。
図2】一実施形態の融雪パネルの断面(図1のII-II線矢視断面)の様子を示した概略断面図。
図3】一実施形態の融雪パネルのヒーター線の構造を示した概略図。
図4】融雪パネルでの融雪状況を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施の形態について説明する。
図に示すように、本実施形態における融雪パネル1は、パネル本体10と、該パネル本体10を加熱する加熱装置20とを備えている。
【0010】
本実施形態の融雪パネル1は、パネル本体10の表面に着雪が生じる環境下で用いられ、例えば、建物の屋上部や廂の上などに配される。本実施形態の融雪パネル1は、建物の外壁の一部や路面の一部を構成するように配されてもよい。本実施形態の融雪パネル1は、屋内人工スキー場のような施設の屋内に配されてもよい。
【0011】
本実施形態では、融雪パネル1として、図1に示すような平面視矩形状の融雪パネル1を例示しているが、本実施形態の融雪パネル1は円形や矩形以外の多角形であってもよい。また、本実施形態では、融雪パネル1として、図2に示すように直板状の融雪パネル1を例示しているが、本実施形態の融雪パネル1は凸面鏡や凹面鏡のような曲板状であってもよい。即ち、本実施形態の融雪パネル1は特にその形状が限定されるわけではない。
【0012】
本実施形態の融雪パネル1は、上記の通り矩形である。本実施形態の融雪パネル1は、角部で直角に交わる2辺の内の一方に平行する第1方向D1と、他方に平行する第2方向D2と、第1方向D1及び第2方向D2に直交する当該融雪パネル1の厚さ方向である第3方向D3とを有している。以下においては、正面視における融雪パネル1の輪郭線を画定する4辺の内、第1方向D1において対向している2辺の内の一方を第1辺1aと称し、他方を第2辺1bと称することがある。また、以下においては、第2方向D2において対向している2辺の内の一方を第3辺1cと称し、他方を第4辺1dと称することがある。
【0013】
本実施形態での前記パネル本体10は、平面視矩形の天板部11を備えている。該天板部11の表面11sは、融雪パネル1を平置きした際に上面となる面であり、着雪面であって主たる融雪面として利用される面である。尚、本実施形態での融雪パネル1は、平置き状態でのみ用いられるものではなく、種々の姿勢で配置され得る。即ち、融雪パネル1は、天板部11の表面11sの向きが、上向き、斜め上向き、横向き、斜め下向き、下向きなどとなるような各種の姿勢で使用され得る。
【0014】
本実施形態での前記パネル本体10は、前記天板部11と、該天板部11の外周縁から略直角に曲がって下方に延びる側壁部12と、該側壁部12の下端縁から内向きに延びる鍔部13とを有し、該鍔部13の先端縁により画定された開口部10aを背面側に有している。本実施形態での前記パネル本体10は、後段において述べるように着雪面となる箇所に親水化処理が施されている。
【0015】
本実施形態の融雪パネル1では、加熱装置20がパネル本体10の天板部11を加熱して雪を解かすように構成されている。本実施形態の融雪パネル1は、パネル本体10の開口部10aを閉塞するための裏板30と、該裏板30とパネル本体10との間をシールするシール材40とをさらに備えている。本実施形態の融雪パネル1は、裏板30と天板部11との間に配された断熱材50を更に備えている。
【0016】
前記パネル本体は、例えば、金属製、セラミックス製、プラスチック製、及び、これらの複合材料製とすることができる。本実施形態では、良好な熱伝導性を発揮する点から前記パネル本体を金属製とすることができる。前記パネル本体10を金属製とする場合、当該パネル本体10を構成する部材は、アルミニウム板、鋼板、銅板などとすることができる。アルミニウム板は、軽量性と耐候性とに優れる。アルミニウム板は、耐候性を向上させるべく着雪面にアルマイト処理が施されていてもよい。アルミニウム板は、アンカー効果の抑制などの目的で封孔処理が施されていてもよい。一方で鋼板は、強度に優れ、比較的安価である。また、銅板は熱伝導性や抗菌性などにおいて優れている。
【0017】
本実施形態の加熱装置20は、前記パネル本体10に装着された発熱体を有する形態のものであってもよい。加熱装置20に備えられる発熱体は、電気ヒーターとすることができる。
【0018】
本実施形態の加熱装置20は、パネル本体10に装着された発熱体を有する場合、パネル本体10の広範囲に亘って配された発熱体を有するものであっても、一部に装着された発熱体からヒートパイプなどによってパネル本体10の広範囲に亘って熱を伝達させるような方式のものであってもよい。本実施形態での加熱装置20は、前記発熱体としてPTCヒーターを備える。PTCヒーターは、パネル本体10の天板部11よりも一回り小さな面状ヒーターであっても、小型の素子状(ブロック状)のものであってもよい。
【0019】
本実施形態で例示の融雪パネルで1は、加熱装置20としてヒーター線21を備えている。本実施形態でのヒーター線21は、幅方向での寸法よりも厚さ方向での寸法が小さなフラットケーブル状である。本実施形態でのヒーター線21は、例えば、幅が10mm以上30mm以下で、厚さが5mm以上15mm以下であり、且つ、厚さ(t)に対する幅(W)の比率(W/t)が1.5以上4以下とすることができる。本実施形態のヒーター線21は、厚さ方向と直交する面が前記パネル本体10の天板部11の背面に接するように配されている。
【0020】
本実施形態のヒーター線21は、その長さ方向に沿って延在する2本のリーダー線211を備える。2本のリーダー線211は、前記ヒーター線21の幅方向に距離を隔ててヒーター線21の長さ方向に並行するように配されている。前記ヒーター線21は、この2本のリーダー線211の間に配され、且つ、それぞれのリーダー線211に電気的に接続されたPTC素子212(PTCヒーター)を備えている。本実施形態のヒーター線21では、PTC素子212は、長さ方向全域に設けられていなくてもよい。本実施形態のヒーター線21は、複数のPTC素子212が長さ方向に間隔を設けて備えられているものであってもよい。
【0021】
複数のPTC素子212が長さ方向に間隔を設けて備えられているヒーター線21では、PTC素子212によって発せられる熱は、PTC素子212が設けられていない領域に対してリーダー線211などを介して伝達される。そのため、前記リーダー線211は、ある程度の太さを有するものであってもよい。前記リーダー線211は、例えば、0.15mm2以上の公称断面積を有するものであってもよい。リーダー線211の公称断面積は、0.2mm2以上であってもよく、0.5mm2以上であってもよい。リーダー線211の公称断面積は、例えば、8mm2以下とすることができる。リーダー線211の公称断面積は、4mm2以下であってもよい。
【0022】
前記リーダー線211は、銅線、アルミニウム線、及び、鋼線の内の何れかによって構成され得る。前記リーダー線211は、単線であっても撚り線であってもよい。前記リーダー線211は、撚り線であることが好ましい。前記リーダー線211は、撚りピッチが10mm以上50mm以下の撚り線であってもよい。
【0023】
前記PTC素子212は、温度が上昇すると体積抵抗率が上昇するためヒーター線21に通電するだけでパネル本体10の温度が自動的にコントロールされることになり、本実施形態での発熱体に設けられる発熱素子として好適である。前記PTC素子212は、例えば、カーボン系の素子やチタン酸バリウム系の素子とすることができる。前記ヒーター線21の長さ方向におけるPTC素子212の寸法は、例えば、3mm以上15mm以下とすることができる。ヒーター線21の単位長さ当りのPTC素子212の設置個数は、例えば、10個/m以上30個/m以下とすることができる。
【0024】
本実施形態のヒーター線21は、該リーダー線211やPTC素子212と外部空間とを電気的に絶縁するための被覆材213とを備えている。本実施形態のヒーター線21は、リーダー線211やPTC素子212を直接覆う内部被覆と213a、該内部被覆213aを外側からさらに覆う外部被覆213bとを備えている。本実施形態のヒーター線21には、内部被覆213aと外部被覆213bとの間に金属線で構成された編組214がさらに備えられている。
【0025】
前記被覆材213は、エチレンプロピレンゴム製、エチレンプロピレンジエンゴム製、クロロプレンゴム製、天然ゴム製、熱可塑性エラストマー製、ポリ塩化ビニル樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、架橋ポリエチレン樹脂製などとすることができる。前記編組214を構成する金属線は、スズめっき軟銅線などの銅線とすることができる。
【0026】
本実施形態のヒーター線21は、該被覆材213をパネル本体10の背面に当接させるように配されている。即ち、本実施形態のヒーター線21は、2本のリーダー線211の間に電位差を設けてPTC素子212に電流を流してジュール熱による発熱を生じさせ、発生した熱を被覆材213を通じてパネル本体10の天板部11に伝達し得るように配されている。
【0027】
本実施形態の前記ヒーター線21は、融雪パネル1の裏板30を外してパネル本体10を背面側から見た状態においてS字状となるように配されている。より詳しくは、前記ヒーター線21は、融雪パネル1の対角線の方向に沿って延びる1つの線状部21aと、融雪パネル1の第1方向D1において対向する第1辺1aと第2辺1bとのそれぞれの内側において各辺(第1辺1a,第2辺1b)に沿って延びる2つの線状部21aと、これら3つの線状部21aの端部どうしを接続する2つのターン部21bとを備え、全体形状がS字状となるようにパネル本体10の背面側に装着されている。
【0028】
本実施形態の融雪パネル1では、第1辺1aよりも内寄りに該第1辺1aに沿った形で前記線状部21aが配されている。そのため、前記第1辺1aが上端、前記第2辺1bが下端となって前記第1方向D1が垂直方向となるように融雪パネル1を配置したり、前記第1辺1aが上端、前記第2辺1bが下端となって前記パネル本体10の表面が前記第2辺1bから前記第1辺1aに向けて先上り傾斜となるように融雪パネル1を配置したりした際に、ヒーター線21の熱で雪が溶けて生じた水をパネル本体10の表面を伝って下方に流下させることができる。そして、この水の流下により、この水の通り道に位置する雪(パネル本体10の中央部や下部に付着している雪)が除去され易くなる。本実施形態の融雪パネル1では、ヒーター線21が融雪パネル1の上端の第1辺1aと下端の第2辺1bに沿って配置され、パネル1の上端から下端の間を対角線状にヒーター線21が配置されているので、短いヒーター線21でパネル1を効率的に温めることができ省エネ効果が発揮される。
【0029】
本実施形態の融雪パネル1では、対角線に沿って配された線状部21aを有するため、パネル本体10の表面全体に着雪が生じた場合でも当該線状部21aが発する熱で雪を溶かして着雪している領域を分断することができる。本実施形態の融雪パネル1では、何等かの要因で強固に雪が付着している箇所がパネル本体10の一部の領域に形成されたとしても、当該箇所とは別の着雪箇所とが分断されることになるため、強固に雪が付着している箇所に影響されて他の雪が除去され難くなることを防止することができる。しかも、本実施形態ではパネル本体10に親水化処理が施されているため、ヒーター線21で雪が溶けて生じた水が広範囲に広がって流下し易いため水の流下による除雪効果が広範囲に及ぶ。
【0030】
前記パネル本体10に施される親水化処理は、パネル本体を構成するプラスチックシート、セラミックシート、金属シートの表面に親水化処理剤をコーティングすることで行われ得る。前記パネル本体10がセラミックス製やプラスチック製である場合、親水化処理は、親水化処理剤によるものでなくてもコロナ放電処理やプラズマ処理などのような電気的な処理によって実施されてもよい。
【0031】
本実施形態ではパネル本体10の親水化処理に親水化処理剤を用いることが好ましい。親水化処理剤は、無機系親水化処理剤であっても有機系親水化処理剤であってもよい。無機系親水化処理剤としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。有機系親水化処理剤は、高分子量タイプのものであっても低分子量タイプのものであってもよい。高分子量タイプのものとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリウレタン、セルロースなどが挙げられる。低分子量タイプのものとしては、例えば、界面活性剤や有機シリケート化合物が挙げられる。
【0032】
パネル本体10は、親水化処理が施される前の状態(以下「未処理パネル」ともいう)に対し、前述のように電気的な処理が施されたり、親水化処理剤がコーティングされたりすることで、水酸基などの親水性官能基の表面における数が未処理パネルに比べて増大し、優れた親水性を発揮する。親水化処理剤を用いる方法では、親水化処理剤に含まれている親水性官能基を有する化合物が未処理パネルの表面に物理的又は化学的に結合される。
【0033】
本実施形態での親水化処理剤は、下記式(1)で表わされるシリケート化合物の加水分解物を含むことが好ましい。
【0034】
【化1】
【0035】
尚、式中の「n」は、1~30の整数を表している。また、「R1」は、それぞれ共通していても異なっていてもよい置換又は非置換の炭素数1~8のアルキル基を表している。
【0036】
上記の加水分解物としては、例えば、下記式(2)で表わされるシラノール化合物であってもよい。
【0037】
【化2】
【0038】
尚、式中の「m」は、1~30の整数で「n」以下の正数を表している。
【0039】
本実施形態での好ましい親水化処理剤は、ノニオン系界面活性剤、水、親水性有機溶剤、及び、触媒をさらに含む。
【0040】
上記式(1)において、「n」は、1~30の整数を表す。シリケート化合物の加水分解物を適度な粘度とする観点から、「n」は、1~25が好ましく、5~25がより好ましい。
【0041】
上記式(1)において、「R1」は、上記の通り、置換基を有しているか、又は、置換基を有していない炭素数1~8のアルキル基である。「R1」は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が更に好ましい。「R1」は、メチル基であることが最も好ましい。
【0042】
炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-アミル基、イソアミル基、ネオアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基が挙げられる。アルキル基は、シクロアルキル基であってもよい。これらの中でも、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基であることが好ましい。アルキル基は、メチル基及びエチル基であることがより好ましくは、メチル基であることが特に好ましい。
【0043】
前記アルキル基の置換基としては、限定されず、例えば、クロロ、ブロモ等のハロゲン;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、シアノ基、ジメチルアミノ基等を挙げることができる。上記置換基を有する場合であっても、アルキル基の炭素数は1~8であることが好ましい。
【0044】
「R1」が置換基を有するか若しくは置換基を有しない炭素数1~8のアルキル基であるシリケート化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラ-n-ペントキシシラン、テトラ-iso-ペントキシシラン、テトラネオペントキシシラン等;それらの1種又は2種以上の縮合物等が挙げられる。シリケート化合物は、好ましくは、メチルシリケート及び/若しくはその縮合物、又は、エチルシリケート及び/又はその縮合物である。シリケート化合物として最も好ましいのは、メチルシリケートの縮合物である。
【0045】
前記加水分解物は、上記シリケート化合物が有するアルコキシシリル基と当量以上の水と前記シリケート化合物とを反応させることにより得られる。反応は室温で進行するが、必要に応じて加熱することができる。好ましくは、触媒の存在する大過剰量の水中にシリケート化合物を添加して放置しておくことにより、前記シリケート化合物の加水分解物を得ることができる。
【0046】
触媒としては、一般的に加水分解反応に用いられるものが使用できる。例えば、塩酸、酢酸、硝酸、ギ酸、硫酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸などの有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等のアルカリ触媒;有機金属;金属アルコキシド、例えばジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)及びジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の金属キレート化合物、ホウ素ブトキシド、ホウ酸等のホウ素化合物等を挙げることができる。親水化処理剤での該触媒の量は、特に限定されないが、通常、前記シリケート化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下とすることができる。
【0047】
前記シリケート化合物は、水に対する溶解性が充分でないため、効率的に加水分解反応を進行させるためには前記親水性有機溶剤を加えて、系を均一化することが好ましい。このような親水性有機溶剤としては、水に自由に混和するものが好ましく、例えば、アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等;またグリコール誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-ブロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できる。親水化処理剤での親水性有機溶剤の添加量は、前記シリケート化合物が溶解する量以上であれば特に限定されない。
【0048】
前記加水分解物は、IRスペクトルを測定することにより、アルコキシシリル基に基づくピークが消失していることを確認することができる。すなわち、前記シリケート化合物の加水分解物は、先の式(1)におけるアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解された構造を有していると考えられる。このシラノール基を有していることで、塗布直後から親水性が発現するものと考えられる。ただし、加水分解物は、アルコキシシリル基が全てシラノール基に加水分解されていなくてもよい。通常、触媒を含む均一な系では、室温で12時間以上放置することで、目的とする加水分解物を得ることができる。加水分解物が縮合反応することにより生成する加水分解縮合物も前記加水分解物に包含される。
【0049】
シリケート化合物の加水分解物の親水化処理剤中における含有量は、加水分解前のシリケート化合物として、0.05質量%以上10質量%以下に相当する量が好ましい。更に好ましくは、0.1質量%以上5質量%以下に相当する量であり、特に好ましくは0.1以上3質量%以下に相当する量である。
【0050】
前記親水化処理剤に含まれるノニオン系界面活性剤は、水の表面張力を低下させることにより、塗布手段に依らずに未処理パネルへの親水化処理剤の均一な塗布を可能にする。
【0051】
ノニオン系界面活性剤としては、親水性基としてアルキレンオキサイドユニットを有しているものが用いられる。このようなものとしてはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。ノニオン系界面活性剤の親水性と疎水性とのバランスの指標であるHLBは、10以上15以下である。これらの範囲外では均一に塗布することができないおそれがある。なお、HLBは、アルキレンオキサイドユニット部の分子量をノニオン系界面活性剤全体の分子量で割った値を20倍して得られる値である。
【0052】
アルキレンオキサイドユニットの種類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイドが挙げられ、この中でエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが好ましい。また、アルキレンオキサイドユニットの繰返し数は7~10であることが好ましい。また、アルキルエーテルのアルキル基の炭素数は12~18であることが好ましい。
【0053】
ノニオン系界面活性剤の親水化処理剤中における含有量は、親水化処理剤中に含まれる水100質量部に対して、0.02質量部以上10質量部以下である。より好ましくは、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0054】
本実施形態での好ましい親水化処理剤は、溶剤として、水および親水性有機溶剤を含む。親水性有機溶剤としては、先に挙げたものが使用できるが、揮発性や溶解性を考慮すると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。水と親水性有機溶剤との質量比は、特に限定されないが、例えば、5/95~95/5とすることができる。
【0055】
親水化処理剤は、先の各成分を混合することにより得られるが、シリケート化合物の加水分解を行って得られる溶液、又は加水分解を行う前の溶液に、所定量のノニオン系界面活性剤を加える方法によっても得ることができる。これらの場合、各成分が所定の濃度になるように配合することが好ましいが、シリケート化合物の加水分解を行って得られる溶液に対して、水及び/又は親水性有機溶剤で希釈することにより、所定の濃度に調整することもできる。なお、この方法で得られる親水化処理剤は、加水分解に用いられた触媒を含んでいる。
【0056】
前記未処理パネル表面の親水化処理は前記未処理パネル表面に親水化処理剤を塗布して行うことができる。前記未処理パネル表面への親水化処理剤の塗布の方法としては特に限定されず、例えば、スプレー塗装、ロールコーター法、刷毛塗り、浸漬塗装、ワイプ塗装等を挙げることができる。上記塗布した後の乾燥方法としては、室温で乾燥するまで放置してもよく、40~100℃で1~30分程度加熱することにより行ってもよい。親水化処理剤の乾燥膜厚としては、0.01μm以上10μm以下が好ましい。より好ましくは、0.01μm以上5μm以下である。
【0057】
親水化処理は、処理面の接触角が15°以下となるように実施されることが好ましく、10°以下となるように実施されることがより好ましい。接触角は、例えば、固液界面解析装置 DropMaster300(協和界面科学(株)製)を使って液滴法により測定することができる。滴下液は水で液量は0.5μLとし、滴下直後の接触角を測定することにより求めることができる。接触角の計算は装置付属のソフト「FAMAS」を用い、θ/2法により算出することができる。試験数は10回とし、その平均値を接触角として求めることができる。試料の状態調節及び試験環境は、温度20±2℃、湿度65±5%とすることができる。
【0058】
本実施形態での前記裏板30は、前記開口部10aよりも大きな矩形板である。該裏板30は、パネル本体10と同様に金属製、セラミックス製、プラスチック製、及び、これらの複合材料製とすることができる。裏板30とパネル本体10とは材質が共通であっても異なっていてもよい。該該裏板30は、螺子止めなどの手段によりパネル本体10に止着され得る。
【0059】
本実施形態での前記シール材40は、前記開口部10aの周りを周回するように配されており、前記鍔部13の形状に対応した矩形環状である。該シール材40は、エラストマー製やプラスチック製とすることができる。該シール材40は、グラファイトシート製などであってもよい。
【0060】
本実施形態での前記断熱材50は、発泡樹脂シート、グラスファイバーシート、真空断熱材とすることができる。
【0061】
本実施形態の融雪パネル1は、上記のような構成に限らず各種の変更が可能である。本実施形態の融雪パネル1は、断熱材50とヒーター線との間に均熱板となる金属シートが介装されていたり、潜熱蓄熱材などが介装されていたりしてもよい。即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例0062】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図4に示すように、#1~#4の4つの融雪パネルを用意し、寒冷地の建物の屋上に配置した。4つの融雪パネルは、何れも同じ姿勢で配置し、建物の内側より外周に向けて先下がりとなるような傾斜姿勢で配置した。#1、#2の2つの融雪パネルではパネル本体の天板部の背面側に装着したヒーター線(PTCヒーター)によってパネル本体を加熱するようにし、#3、#4の2つの融雪パネルではヒーター線による加熱を行わなかった。また、#1、#3の2つの融雪パネルにはパネル本体に親水化処理が施されていないものを用い、#2、#4の2つの融雪パネルにはパネル本体に親水化処理が施されているものを用いた。尚、この、#2、#4の2つの融雪パネルの親水化処理には、シリケート化合物の加水分解物を含む親水化処理剤を用いた。
【0063】
図4のa~dは、一日の内で午前中の融雪パネルの様子を時系列的に並べたもので、融雪状況の経時変化を示すものである。図4のbはaから約40分経過後の様子を示した写真で、cはbから約35分経過後の様子を示した写真である。そして、図4のdはcから約1時間経過後の様子を示した写真である。
【0064】
図4のaを見ると、最初の着雪量はヒーター線による加熱が行われている#1、#2の方が加熱がされていない#3、#4よりも少ないことがわかる。
【0065】
図4のaからbの変化を見ると、最初の着雪量(aの写真)はパネル本体に親水化処理が施されていない#1の方がパネル本体に親水化処理が施されている#2に比べて少ないようにも見受けられたものの除雪はパネル本体に親水化処理が施されている#2の方が速やかに進行したことが把握される。
【0066】
図4のcからdへの変化からは、昼に近付いて気温が上昇することで、ヒーター線による加熱が行われていない融雪パネルでも親水化処理が施されている#4では、親水化処理が施されていない#3よりも速やかに除雪が行われることが把握される。
【0067】
以上の結果からは、仮に融雪パネルが平置きにされていて雪の自重による滑落が期待できないような場合でも、側方から弱い力を加えるだけで融雪パネル上から雪を排除できることがわかる。即ち、以上の結果からは、雪を容易に除去できる融雪パネルが本発明によって提供されると理解できる。
【符号の説明】
【0068】
1:融雪パネル
10:パネル本体、
10a:開口部
11:天板部
11s:表面
12:側壁部
13:鍔部
20:加熱装置
21:ヒーター線
21a:線状部
21b:ターン部
30:裏板
40:シール材
50:断熱材
211:リーダー線
212:PTC素子
213:被覆材
213a:内部被覆
213b:外部被覆
214:編組
図1
図2
図3
図4