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▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035357
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240307BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652D
H01L29/78 652Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139774
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綾野 智貴
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 雄哉
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体基板SUBにトレンチTR1を形成する。トレンチTR1の内部および半導体基板SUBの上面(TS)上に、絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1に対してイオン注入を行う。絶縁膜IF1に対してエッチング処理を行うことで、絶縁膜IF1の厚さを薄くする。絶縁膜IF1を介してトレンチTR1の内部に導電性膜(CF1)を形成する。トレンチTR1は、平面視においてY方向に延在している。上記イオン注入は、半導体基板SUBの上面(TS)に対する法線10の延在方向から所定の角度へ傾斜した方向から行われる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)前記半導体基板の前記上面に第1トレンチを形成する工程、
(c)前記第1トレンチの内部および前記半導体基板の前記上面上に、第1絶縁膜を形成する工程、
(d)前記第1絶縁膜に対して第1イオン注入を行う工程、
(e)前記(d)工程後、前記第1絶縁膜に対してエッチング処理を行うことで、前記第1絶縁膜の厚さを薄くする工程、
(f)前記(e)工程後、前記第1絶縁膜を介して前記第1トレンチの前記内部に第1導電性膜を形成する工程、
を備え、
前記第1トレンチは、平面視において、第1方向に延在し、
前記(d)工程では、前記第1イオン注入は、断面視において、前記半導体基板の前記上面に対する法線方向から第1の角度へ傾斜した方向から行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1トレンチは、断面視において、
底面と、
側面と、
を有し、
前記第1絶縁膜は、断面視において、
前記第1トレンチの前記側面上に形成され、かつ、前記第1トレンチの開口部に位置する第1部分と、
前記第1トレンチの前記側面上に形成され、かつ、前記第1トレンチの前記開口部よりも前記第1トレンチの前記底面の近くに位置する第2部分と、
を有し、
前記(e)工程後、前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さよりも薄く、
前記第1部分および前記第2部分のそれぞれの前記厚さとは、前記第1トレンチの前記底面ではなく、前記第1トレンチの前記側面を基準とした厚さである、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記第1イオン注入後に第2イオン注入を行い、
前記第2イオン注入は、断面視において、前記法線方向から、前記第1の角度とは異なる第2の角度へ傾斜した方向から行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記第1イオン注入後に第2イオン注入を行い、
前記第1イオン注入は、平面視において、前記第1方向から前記第3の角度へ傾斜した方向から行われ、
前記第2イオン注入は、平面視において、前記第1方向から、前記第3の角度とは異なる第4の角度へ傾斜した方向から行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置は、複数のMOSFETが形成されるセル領域と、平面視において前記セル領域を囲む外周領域とを有し、
前記複数のMOSFETのそれぞれは、
前記第1トレンチと、
前記第1絶縁膜と、
前記第1導電性膜から成るフィールドプレート電極と、
を含み、
前記(b)工程では、前記外周領域に位置する前記半導体基板の前記上面に第2トレンチが形成され、
前記第2トレンチは、平面視において前記セル領域を囲むように、前記第1方向、および、平面視で前記第1方向と直交する第2方向に延在し、
前記第1イオン注入および前記第2イオン注入のそれぞれは、平面視において、前記第1方向以外の方向、および、前記第1方向から90度の倍数の角度へ傾斜した方向以外の方向から行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2トレンチは、前記第1方向に延在する箇所と、前記第2方向に延在する箇所とを繋ぐコーナー部を有し、
前記コーナー部は、平面視で前記第1方向または前記第2方向から45度の角度へ傾斜した方向に延在し、
前記第1イオン注入および前記第2イオン注入のそれぞれは、平面視において、前記第1方向以外の方向、および、前記第1方向から45度の倍数の角度へ傾斜した方向以外の方向から行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程は、
(f1)前記(e)工程後、前記第1絶縁膜上に、前記第1導電性膜を形成する工程、
(f2)前記(f1)工程後、前記第1導電性膜に対してエッチング処理を行うことで、前記第1導電性膜の厚さを薄くする工程、
(f3)前記(f2)工程後、前記第1トレンチの前記内部を埋め込むように、前記第1絶縁膜および前記第1導電性膜を介して前記第1トレンチの前記内部に第2導電性膜を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程は、
(f4)前記(f1)工程と前記(f2)工程との間で、前記第1導電性膜に対して、前記半導体基板の前記上面に対する法線方向から第5の角度へ傾斜した方向から、イオン注入を行う工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程は、
(f5)前記(f4)工程と前記(f2)工程との間で、熱酸化処理によって、前記第1導電性膜の表面に酸化膜を形成する工程、
(f6)前記(f5)工程と前記(f2)工程との間で、エッチング処理によって、前記酸化膜を除去する工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
(g)前記(f)工程後、前記(f3)工程後に前記第1トレンチの前記内部に形成されている前記第1導電性膜および前記第2導電性膜から成るフィールドプレート電極の一部がコンタクト部として残されるように、前記フィールドプレート電極の他部を選択的に後退させる工程、
(h)前記(g)工程後、前記第1トレンチの前記内部において、前記第1絶縁膜の上面の位置が前記フィールドプレート電極の上面の位置よりも低くなるように、前記第1絶縁膜を後退させる工程、
(i)前記(h)工程後、前記第1絶縁膜上の前記第1トレンチの前記内部に、ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第1絶縁膜から露出している前記フィールドプレート電極の前記上面上および側面上に、第2絶縁膜を形成する工程、
(j)前記(i)工程後に、前記(g)工程で後退した前記フィールドプレート電極上において、前記第1トレンチの前記内部を埋め込むように、ゲート電極を形成する工程、
を更に備える、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(g)工程後、断面視において、前記半導体基板の前記上面の位置における前記コンタクト部の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記第1トレンチの最深部までの深さの半分の位置における前記コンタクト部の幅よりも広い、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
(k)前記(j)工程後、断面視において前記第1トレンチよりも浅くなるように、前記第1導電型と反対の第2導電型であるボディ領域を前記半導体基板に形成する工程、
(l)前記(k)工程後、前記ボディ領域に、前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(m)前記(l)工程後に、前記第1トレンチを覆うように、前記半導体基板の前記上面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(n)前記(m)工程後、前記層間絶縁膜中に、前記ソース領域中および前記ボディ領域中に達する第1孔と、前記ゲート電極に達する第2孔と、前記コンタクト部に達する第3孔とを形成する工程、
(o)前記(n)工程後に、前記層間絶縁膜上に、ソース電極と、平面視において前記ソース電極を囲むゲート配線とを形成する工程、
(p)前記(o)工程後に、前記半導体基板の前記下面下に、ドレイン電極を形成する工程、
を更に備え、
前記ゲート配線は、前記第2孔内に埋め込まれ、且つ、前記ゲート電極に電気的に接続され、
前記ソース電極は、前記第1孔内および前記第3孔内に埋め込まれ、且つ、前記ソース領域中、前記ボディ領域および前記フィールドプレート電極に電気的に接続されている、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)前記第1トレンチの前記内部および前記半導体基板の前記上面上に、熱酸化法によって、第1酸化シリコン膜を形成する工程、
(c2)前記第1酸化シリコン膜上に、CVD法によって、第2酸化シリコン膜を形成する工程、
を有し、
前記第1絶縁膜は、前記第1酸化シリコン膜および前記第2酸化シリコン膜を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c1)工程では、前記第1酸化シリコン膜の厚さが前記第2酸化シリコン膜の厚さよりも薄くなるように、前記第1酸化シリコン膜を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
上面および下面を有する半導体基板と、
平面視において第1方向に延在するように、前記半導体基板の前記上面に形成された第1トレンチと、
前記第1トレンチの内部において、前記第1トレンチの下部に形成されたフィールドプレート電極と、
前記第1トレンチの前記内部において、前記第1トレンチの上部に形成され、且つ、前記フィールドプレート電極から電気的に絶縁されたゲート電極と、
を備え、
前記フィールドプレート電極の一部は、前記第1トレンチの前記下部だけでなく、前記第1トレンチの前記上部にも形成され、且つ、前記フィールドプレート電極のコンタクト部を成し、
断面視において、前記半導体基板の前記上面の位置における前記コンタクト部の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記第1トレンチの最深部までの深さの半分の位置における前記コンタクト部の幅よりも広い、半導体装置。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置において、
前記第1トレンチの前記内部において、前記半導体基板と前記フィールドプレート電極との間には、第1絶縁膜が形成され、
前記第1トレンチの前記内部において、前記ゲート電極と前記フィールドプレート電極との間には、前記第1絶縁膜よりも薄い厚さを有する第2絶縁膜が形成され、
前記第1トレンチの前記内部において、前記半導体基板と前記ゲート電極との間には、前記第1絶縁膜よりも薄い厚さを有するゲート絶縁膜が形成され、
前記コンタクト部に接している前記第1絶縁膜の厚さは、前記第1絶縁膜のうち前記コンタクト部の上面に最も近い箇所で最も薄くなっている、半導体装置。
【請求項17】
請求項15に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極には、ゲート電位が供給され、
前記フィールドプレート電極には、ソース電位が供給される、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、トレンチの内部にゲート電極およびフィールドプレート電極を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のような半導体素子を備えた半導体装置では、トレンチの内部にゲート電極が埋め込まれたトレンチゲート構造が適用されている。トレンチゲート構造の一種として、トレンチの下部にフィールドプレート電極を形成し、トレンチの上部にゲート電極を形成したスプリットゲート構造がある。フィールドプレート電極は、ソース電極に電気的に接続されている。このフィールドプレート電極によって、ドリフト領域に空乏層を広げることで、ドリフト領域を高濃度化することが可能となり、ドリフト領域の低抵抗化が可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゲート電極およびフィールドプレート電極を有するスプリットゲート構造を適用した半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-199109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者らの検討によれば、フィールドプレート電極の基となる導電性膜を堆積する際に、導電性膜中にシームと呼ばれる空隙が発生し易く、この空隙が原因で、種々の問題が生じる場合があることが判った。図25図27は、本願発明者らが検討を行った検討例の半導体装置を示しており、フィールドプレート電極の形成前後の製造工程の様子を示している。以下に図25図27を用いて、検討例で発生する問題点について説明する。なお、検討例およびその問題点は、従来から知られていた知見ではなく、本願発明者らが新たに発見した知見である。
【0006】
図25に示されるように、スプリットゲート構造では、まず、半導体基板SUBにトレンチTR1を形成する。次に、トレンチTR1の内部に、半導体基板SUBとフィールドプレート電極とを絶縁させるための絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成された酸化シリコン膜である。
【0007】
絶縁膜IF1をCVD法によって形成すると、トレンチTR1の最上部(開口部)で絶縁膜IF1の厚さが厚くなり易い傾向があり、絶縁膜IF1がオーバーハング状になり易い。例えば、半導体基板SUBの上面の位置における絶縁膜IF1の厚さT4は、半導体基板SUBの上面からトレンチTR1の最深部までの深さの半分の位置における絶縁膜IF1の厚さT3よりも厚くなっている。なお、ここで言う「厚さ」とは、トレンチTR1の底面ではなく、トレンチTR1の側面(内壁面)を基準とした厚さである。
【0008】
図26に示されるように、トレンチTR1の内部に、CVD法によって、フィールドプレート電極用の導電性膜CF1を堆積する。導電性膜CF1は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。ここで、絶縁膜IF1がオーバーハング状になっていると、導電性膜CF1の埋め込み不良が発生し易くなる。すなわち、導電性膜CF1中に空隙20が発生し易くなる。
【0009】
図27は、空隙20が発生している状態で、導電性膜CF1を加工し、フィールドプレート電極FPを形成した様子を示している。まず、トレンチTR1の外部に形成されている導電性膜CF1を除去した後、エッチング処理によって導電性膜CF1を後退させることで、フィールドプレート電極FPを形成する。次に、ウェットエッチング処理によって、トレンチTR1の外部に形成されている絶縁膜IF1を除去すると共に、トレンチTR1の内部の絶縁膜IF1を後退させる。次に、熱酸化法によって、絶縁膜IF1上のトレンチTR1の内部にゲート絶縁膜GIを形成し、絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPの表面上に絶縁膜IF2を形成する。
【0010】
ここで、空隙20が発生している状態で、導電性膜CF1に対してエッチング処理を行っているので、フィールドプレート電極FPの上部が異常な形状になり易い。また、絶縁膜IF2は、空隙20に沿って形成されていく。そうすると、フィールドプレート電極FPの内部で体積が膨張し、絶縁膜IF2からトレンチTR1の外部へ応力が働く。特に、トレンチTR1の角部付近において、応力が働きやすい。それ故、トレンチTR1の角部付近に位置する半導体基板SUBに、結晶欠陥30が発生し易くなる。この結晶欠陥30が多数発生すると、それらが、リークパスとなり、MOSFETの耐圧が低下する要因となる。
【0011】
また、図27の製造工程の後、フィールドプレート電極FP上には、絶縁膜IF2を介してゲート電極が形成される。空隙20が発生していると、フィールドプレート電極FPの上部が突起部のように加工され易いが、そのような突起部では電界が集中し易くなるので、フィールドプレート電極FPとゲート電極との間の絶縁耐性が劣化し易くなる。
【0012】
本願の主な目的は、空隙20の発生を抑制することで、検討例の問題点を解消し、半導体装置の信頼性を向上させることにある。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、(b)前記半導体基板の前記上面に第1トレンチを形成する工程、(c)前記第1トレンチの内部および前記半導体基板の前記上面上に、第1絶縁膜を形成する工程、(d)前記第1絶縁膜に対して第1イオン注入を行う工程、(e)前記(d)工程後、前記第1絶縁膜に対してエッチング処理を行うことで、前記第1絶縁膜の厚さを薄くする工程、(f)前記(e)工程後、前記第1絶縁膜を介して前記第1トレンチの前記内部に第1導電性膜を形成する工程、を備える。ここで、前記第1トレンチは、平面視において、第1方向に延在し、前記(d)工程では、前記第1イオン注入は、断面視において、前記半導体基板の前記上面に対する法線方向から第1の角度へ傾斜した方向から行われる。
【0015】
一実施の形態に係る半導体装置は、上面および下面を有する半導体基板と、平面視において第1方向に延在するように、前記半導体基板の前記上面に形成された第1トレンチと、前記第1トレンチの内部において、前記第1トレンチの下部に形成されたフィールドプレート電極と、前記第1トレンチの前記内部において、前記第1トレンチの上部に形成され、且つ、前記フィールドプレート電極から電気的に絶縁されたゲート電極と、を備える。ここで、前記フィールドプレート電極の一部は、前記第1トレンチの前記下部だけでなく、前記第1トレンチの前記上部にも形成され、且つ、前記フィールドプレート電極のコンタクト部を成し、断面視において、前記半導体基板の前記上面の位置における前記コンタクト部の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記第1トレンチの最深部までの深さの半分の位置における前記コンタクト部の幅よりも広い。
【発明の効果】
【0016】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
図3】実施の形態1における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
図4】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図5】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6図5に続く製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く製造工程を示す断面図である。
図9図8に続く製造工程を示す断面図である。
図10図9に続く製造工程を示す断面図である。
図11図10に続く製造工程を示す断面図である。
図12図11に続く製造工程を示す断面図である。
図13図12に続く製造工程を示す断面図である。
図14図13に続く製造工程を示す断面図である。
図15図14に続く製造工程を示す断面図である。
図16図15に続く製造工程を示す断面図である。
図17図16に続く製造工程を示す断面図である。
図18図17に続く製造工程を示す断面図である。
図19図18に続く製造工程を示す断面図である。
図20図19に続く製造工程を示す断面図である。
図21】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す拡大平面図である。
図22】実施の形態3における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図23】変形例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図24図23に続く製造工程を示す断面図である。
図25】検討例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図26図25に続く製造工程を示す断面図である。
図27図26に続く製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0019】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。
【0020】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に図1図4を用いて、実施の形態1における半導体装置100について説明する。半導体装置100は、半導体素子としてトレンチゲート構造のMOSFETを含む。また、実施の形態1のMOSFETは、ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極(固定電位電極)FPを備えたスプリットゲート構造を成している。
【0021】
図1は、半導体装置100である半導体チップの平面図である。図1は、主に半導体基板SUBの上方に形成される配線パターンを示している。図2は、図1に示される領域1Aを拡大した要部平面図である。図3は、図2の下方の構造体を示し、半導体基板SUBに形成されたトレンチゲートの構造を示している。
【0022】
図1に示されるように、半導体装置100の大部分はソース電極(固定電位供給配線)SEで覆われている。ゲート配線GWは、半導体装置100の外周に沿って設けられ、平面視においてソース電極SEを囲んでいる。ここでは図示していないが、ソース電極SEおよびゲート配線GWは、ポリイミド膜などの保護膜で覆われている。保護膜の一部には開口部が設けられ、その開口部で露出しているソース電極SEおよびゲート配線GWが、ソースパッドSPおよびゲートパッドGPになる。ソースパッドSP上およびゲートパッドGP上に、ワイヤまたはクリップ(銅板)などの外部接続用部材が接続されることで、半導体装置100が、他の半導体チップまたは配線基板などに電気的に接続される。
【0023】
また、半導体装置100は、セル領域CRと、平面視においてセル領域CRを囲む外周領域ORとを含んでいる。セル領域CRには、複数のMOSFETのような主要な半導体素子が形成される。外周領域ORは、ゲート電極GEにゲート配線GWを接続させるため、および、ターミネーション領域として機能するトレンチTR2を形成するため等に用いられる。
【0024】
図3に示される孔CH1~CH4の位置は、図2に示される孔CH1~CH4の位置と一致している。図3に示されるように、セル領域CRにおいて、複数のトレンチTR1は、Y方向に延在し、X方向において互いに隣接している。各トレンチTR1のX方向における幅は、例えば1.5μm以上且つ1.8μm以下である。また、各トレンチTR1は、X方向において、互いに0.7μm以上且つ1.0μm以下の間隔で離れている。
【0025】
トレンチTR1の内部において、トレンチTR1の下方(下部)にはフィールドプレート電極FPが形成され、トレンチTR1の上方(上部)にはゲート電極GEが形成されている。フィールドプレート電極FPおよびゲート電極GEは、トレンチTR1に沿って、Y方向に延在している。
【0026】
フィールドプレート電極FPの一部は、コンタクト部FPaを成している。コンタクト部FPaを構成するフィールドプレート電極FPは、セル領域CRのトレンチTR1の内部において、トレンチTR1の下方だけでなく、トレンチTR1の上方にも形成されている。
【0027】
外周領域ORには、トレンチ(ターミネーショントレンチ)TR2が形成されている。トレンチTR2は、セル領域CRを囲むように、Y方向およびX方向に延在している。トレンチTR2の幅は、トレンチTR1と同様である。トレンチTR2の内部には、フィールドプレート電極FPが形成されている。
【0028】
図3に示されるように、ゲート電極GE、コンタクト部FPaおよびトレンチTR2の内部のフィールドプレート電極FPは、露出している。外周領域ORにおいて、ゲート電極GE上には、孔CH2が形成され、ゲート電極GEは、孔CH2を介してゲート配線GWに電気的に接続される。セル領域CRにおいて、コンタクト部FPa上には、孔CH3が形成され、コンタクト部FPaは、孔CH3を介してソース電極SEに電気的に接続される。外周領域ORにおいて、フィールドプレート電極FPの一部上には、孔CH4が形成され、フィールドプレート電極FPは、孔CH4を介してソース電極SEに電気的に接続される。
【0029】
以下に図4を用いて、半導体装置100の断面構造について説明する。図4は、図2および図3に示されるA-A線およびB-B線に沿った断面図である。
【0030】
まず、図4のA-A断面を用いて、MOSFETの基本的な構造について説明する。半導体装置100は、上面TSおよび下面BSを有する半導体基板SUBを備える。半導体基板SUBは、低濃度のn型のドリフト領域NVを有する。ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板上に、エピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型の半導体層であってもよい。本願では、そのようなn型のシリコン基板およびn型の半導体層からなる積層体も半導体基板SUBであるとして説明する。
【0031】
半導体基板SUBの上面TSには、半導体基板SUBの上面TSから所定の深さに達する複数のトレンチTR1が形成されている。各トレンチTR1の深さは、例えば5μm以上且つ7μm以下である。また、図3に示されるトレンチTR2の深さもトレンチTR1と同様である。トレンチTR1の内部において、トレンチTR1の下部には、絶縁膜IF1を介してフィールドプレート電極FPが形成され、トレンチTR1の上方には、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEが形成されている。
【0032】
絶縁膜IF1の上面の位置は、フィールドプレート電極FPの上面の位置よりも低くなっている。ゲート絶縁膜GIは、絶縁膜IF1上のトレンチTR1の内部に形成されている。絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPの上面および側面には、絶縁膜IF2が形成されている。また、ゲート電極GEは、絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPと半導体基板SUBとの間にも、ゲート絶縁膜GIおよび絶縁膜IF2を介して形成されている。
【0033】
絶縁膜IF1は、半導体基板SUBとフィールドプレート電極FPとの間に形成されている。絶縁膜IF2は、ゲート電極GEとフィールドプレート電極FPとの間に形成されている。ゲート絶縁膜GIは、半導体基板SUBとゲート電極GEとの間に形成されている。これらの絶縁膜によって、半導体基板SUB、ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FPは、互いに電気的に絶縁されている。
【0034】
ゲート電極GEの上面は、半導体基板SUBの上面TSよりも若干後退している。ゲート電極GEの一部の上面上には、ゲート絶縁膜GIに接するように、絶縁膜IF3が形成されている。
【0035】
ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FPは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜からなる。絶縁膜IF1、絶縁膜IF2、絶縁膜IF3およびゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜からなる。
【0036】
絶縁膜IF1の厚さは、絶縁膜IF2、絶縁膜IF3およびゲート絶縁膜GIの各々の厚さよりも厚くなっている。絶縁膜IF1の厚さは、例えば400nm以上且つ600nm以下である。絶縁膜IF2およびゲート絶縁膜の各々の厚さは、例えば50nm以上且つ80nm以下である。絶縁膜IF3の厚さは、例えば30nm以上且つ80nm以下である。
【0037】
半導体基板SUB(具体的には、半導体基板SUBの下面BSよりも上面に近い位置)には、トレンチTR1よりも浅くなるように、p型のボディ領域PBが形成されている。ボディ領域PBには、n型のソース領域NSが形成されている。ソース領域NSは、ドリフト領域NVよりも高い不純物濃度を有している。
【0038】
半導体基板SUBの下面BS側において、半導体基板SUBには、n型のドレイン領域NDが形成されている。ドレイン領域NDは、ドリフト領域NVよりも高い不純物濃度を有している。半導体基板SUBの下面BS下には、ドレイン電極DEが形成されている。ドレイン電極DEは、例えばアルミニウム膜、チタン膜、ニッケル膜、金膜若しくは銀膜のような単層の金属膜、または、これらの金属膜を適宜積層させた積層膜からなる。
【0039】
半導体基板SUBの上面TS上には、トレンチTR1を覆うように、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜からなる。層間絶縁膜ILの厚さは、例えば700nm以上且つ900nm以下である。なお、層間絶縁膜ILは、薄い酸化シリコン膜と、リンを含む厚い酸化シリコン膜(PSG:Phospho Silicate Glass膜)との積層膜であってもよい。
【0040】
層間絶縁膜IL中には、ソース領域NSおよびボディ領域PBに達する孔CH1が形成されている。孔CH1の底部において、ボディ領域PBには、高濃度拡散領域PRが形成されている。高濃度拡散領域PRは、ボディ領域PBよりも高い不純物濃度を有する。
【0041】
層間絶縁膜IL上には、ソース電極SEが形成されている。ソース電極SEは、孔CH1の内部に埋め込まれている。また、ソース電極SEは、ソース領域NS、ボディ領域PBおよび高濃度拡散領域PRに電気的に接続され、これらにソース電位(固定電位)を供給する。
【0042】
また、ここでは図示していないが、層間絶縁膜IL中には、図2および図3に示される孔CH2が形成され、層間絶縁膜IL上には、ゲート配線GWが形成されている。孔CH2は、ゲート電極GEに達し、ゲート配線GWは、孔CH2の内部に埋め込まれている。ゲート配線GWは、ゲート電極GEに電気的に接続され、ゲート電極GEにゲート電位を供給する。
【0043】
図4のB-B断面に示されるように、フィールドプレート電極FPの一部は、フィールドプレート電極FPのコンタクト部FPaを成している。コンタクト部FPa以外のフィールドプレート電極FPに接している絶縁膜IF1の上面の位置は、コンタクト部FPaに接している絶縁膜IF1の上面の位置よりも低くなっている。すなわち、A-A断面の絶縁膜IF1の上面の位置は、半導体基板SUBの上面TSから1.2μm以上且つ1.5μm以下の深さに位置する。B-B断面の絶縁膜IF1の上面の位置は、半導体基板SUBの上面TSから50nm以上且つ500nm以下の深さに位置する。
【0044】
また、コンタクト部FPaの上面の位置は、半導体基板SUBの上面TSの位置よりも高くなっており、半導体基板SUBの上面TSから200nm以上且つ400nm以下の高さに位置する。
【0045】
層間絶縁膜IL中には、コンタクト部FPaに達する孔CH3が形成されている。ソース電極SEは、孔CH3の内部に埋め込まれている。ソース電極SEは、フィールドプレート電極FPに電気的に接続され、フィールドプレート電極FPにソース電位を供給する。
【0046】
また、ここでは図示しないが、図3に示されるトレンチTR2の内部にも、絶縁膜IF1を介してフィールドプレート電極FPが形成されている。層間絶縁膜IL中には、トレンチTR2の内部のフィールドプレート電極FPの一部に達する孔CH4が形成されている。ソース電極SEは、孔CH4の内部に埋め込まれている。ソース電極SEは、トレンチTR2の内部のフィールドプレート電極FPに電気的に接続され、トレンチTR2の内部のフィールドプレート電極FPにソース電位を供給する。すなわち、図3の孔CH4が位置している箇所の断面図は、図4のB-B断面の構造と同じになる。
【0047】
また、ソース電極SEおよびゲート配線GWは、例えば、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とからなる。上記バリアメタル膜は、例えば窒化チタン膜であり、上記導電性膜は、例えばアルミニウム膜である。
【0048】
なお、ソース電極SEおよびゲート配線GWは、孔CH1~CH4の内部を埋め込むプラグ層と、層間絶縁膜IL上に形成された配線層とから構成されていてもよい。その場合、配線層は、上記バリアメタル膜および上記導電性膜によって構成される。プラグ層は、例えば、窒化チタン膜のようなバリアメタル膜と、タングステン膜のような導電性膜との積層膜によって構成される。
【0049】
<半導体装置の製造方法>
以下に図5図20を用いて、半導体装置100の製造方法に含まれる各製造工程について説明する。以下の説明では、図4のA-A断面およびB-B断面を用いる。なお、外周領域ORのトレンチTR2、孔CH4およびそれらの周辺の断面構造は、上述のように図4のB-B断面の構造とほぼ同じである。そして、これらの断面構造の製造工程についての説明も、B-B断面の製造工程の説明とほぼ同じであるので、これらの詳細な説明を省略する。
【0050】
また、実施の形態1における半導体装置100の製造方法の主な特徴は、絶縁膜IF1およびフィールドプレート電極FPを形成するための製造工程にある。そのような特徴については、上述の検討例と比較しながら適宜説明する。
【0051】
まず、図5に示されるように、上面TSおよび下面BSを有するn型の半導体基板SUBを用意する。上述のように、ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成しているが、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板上に、エピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型の半導体層であってもよい。
【0052】
次に、半導体基板SUBの上面TSに、トレンチTR1を形成する。トレンチTR1を形成するためには、まず、半導体基板SUB上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜を形成する。次に、上記酸化シリコン膜上に、フォトリソグラフィ技術によって、開口部を有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとしてエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行うことで、上記酸化シリコン膜をパターニングし、ハードマスクHMを形成する。次に、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。次に、ハードマスクHMをマスクとしてエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行うことで、半導体基板SUB中にトレンチTR1を形成する。その後、例えばフッ酸を含む溶液を用いたエッチング処理(例えば、ウェットエッチング処理)によって、ハードマスクHMを除去する。
【0053】
なお、外周領域ORでは、トレンチTR1を形成する工程と同じ工程によって、トレンチTR2が形成される。
【0054】
次に、図6に示されるように、トレンチTR1の内部および半導体基板SUB上に、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF1を形成する。まず、トレンチTR1の内部および半導体基板SUB上に、熱酸化法によって、第1酸化シリコン膜IF1aを形成する。次に、第1酸化シリコン膜IF1a上に、CVD法によって、第2酸化シリコン膜IF1bを形成する。絶縁膜IF1は、第1酸化シリコン膜IF1aおよび第2酸化シリコン膜IF1bを含んで構成される。第1酸化シリコン膜IF1aの厚さは、例えば100nm以上且つ200nm以下である。第2酸化シリコン膜IF1bの厚さは、例えば300nm以上且つ400nm以下である。
【0055】
絶縁膜IF1全体を熱酸化法によって形成することも可能であるが、その場合、絶縁膜IF1からの応力によって、ウェハ状態の半導体基板SUBが反り易くなり、その後の製造工程に支障が出る虞がある。一方で、絶縁膜IF1と半導体基板SUBとの界面準位の改善という点を考慮すると、半導体基板SUBに接する酸化シリコン膜は、熱酸化法によって形成されていることが好ましい。従って、実施の形態1では、熱酸化法により形成され、且つ、相対的に薄い第1酸化シリコン膜IF1aと、CVD法により形成され、且つ、相対的に厚い第2酸化シリコン膜IF1bとの積層膜によって、絶縁膜IF1を構成している。
【0056】
ここで、絶縁膜IF1の形成にCVD法を適用すると、検討例の図25で説明したように、トレンチTR1の最上部(開口部)で絶縁膜IF1の厚さが厚くなり易い傾向があり、絶縁膜IF1がオーバーハング状になり易い。そうすると、検討例の図26で説明したように、導電性膜CF1の形成時に、導電性膜CF1中に空隙20が発生し易くなってしまう。
【0057】
<<絶縁膜IF1へのイオン注入工程>>
そこで、本願発明者らは、上記の課題を解消するために、トレンチTR1の上部の絶縁膜IF1に対してイオン注入を行い、エッチング処理のエッチングレートを部分的に変化させ、オーバーハング状を抑制する手法を考案した。
【0058】
具体的には、まず、図6に示されるように、絶縁膜IF1に対してイオン注入を行う。このイオン注入は、半導体基板SUBの上面TSに対する法線10の延在方向(以下、「法線方向」とする)から所定の角度へ傾斜した方向から行われる。ここでは、2回のイオン注入を行う場合を例示する。1回目のイオン注入は、法線方向から角度θ1へ傾斜した方向から行われ、2回目のイオン注入は、法線方向から角度θ2へ傾斜した方向から行われる。角度θ1および角度θ2は、互いに異なる角度である。
【0059】
注入角度が大きい程に、トレンチTR1の最上部(開口部)に近い絶縁膜IF1へイオンを注入し易い。注入角度を小さくすることで、トレンチTR1の最上部付近だけでなく、トレンチTR1の最上部から離れた位置の絶縁膜IF1へもイオンを注入できる。
【0060】
イオン注入のイオン種としては、例えば砒素(As)、燐(P)または二フッ化ボロン(BF)を適用できる。イオン注入の総注入量は、1×1013/cm以上であることが好ましい。また、イオン注入の注入角度(角度θ1および角度θ2)は、20度以上且つ60度以下の範囲内で設定されていることが好ましい。
【0061】
なお、ここでは2回のイオン注入を行う場合を例示したが、イオン注入は、互いに異なる角度から3回以上行われてもよい。また、イオン注入は、必ずしも複数回でなくともよく、少なくとも1回行われていればよい。
【0062】
イオンが注入された箇所と、イオンが注入されていない箇所とでは、エッチング処理のエッチングレートが異なっている。イオンが注入された箇所では、イオンが注入されていない箇所と比較して、エッチング処理のエッチングレートが早くなる。より多くのイオンが注入された箇所ほど、エッチングレートが早くなる。
【0063】
絶縁膜IF1に対して上述のイオン注入を行った後、絶縁膜IF1に対してエッチング処理を行うことで、絶縁膜IF1の厚さを薄くする。なお、イオン注入を行った後に絶縁膜IF1に対して行うエッチング処理には、異方性成分よりも等方性成分の多いエッチング処理が用いられる。具体的には、例えば、フッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理が用いられる。これにより、半導体基板SUBの厚さ方向(図7に示すZ方向)だけでなく、半導体基板SUBの上面TS(または下面BS)に沿った方向(図7に示すX方向、水平方向)においても、絶縁膜IFに対するエッチング作用が働く。
【0064】
図7は、エッチング処理後の絶縁膜IF1の状態を示している。絶縁膜IF1は全体的に薄くなっているが、イオンが注入されたトレンチTR1の最上部(開口部)TOP付近では、絶縁膜IF1の厚さがより薄くなっている。例えば、図7に示すX方向において、半導体基板SUBの上面TSの位置における絶縁膜IF1の厚さT2は、半導体基板SUBの上面TSからトレンチTR1の最深部までの深さの半分の位置における絶縁膜IF1の厚さT1よりも薄くなっている。従って、絶縁膜IF1のオーバーハングが解消され、アスペクト比が改善されているので、次工程の導電性膜CF1の形成時に、導電性膜CF1中に空隙20が発生し難くなっている。
【0065】
絶縁膜IF1の厚さT1および厚さT2に関する特徴を言い換えれば、例えば以下のようになる。トレンチTRは、断面視において、底面TR1bと、側面(内壁面)TR1sとを有する。なお、底面TR1bの一部に、トレンチTR1の最深部が存在している。すなわち、底面TR1bと側面TR1sとは、互いに直角に交わっているのではなく、厳密には、図7に示されるように、丸みを帯びている。絶縁膜IF1は、断面視において、側面TR1s上に形成され、かつ、トレンチTR1の最上部(開口部)TOPに位置する第1部分と、側面TR1s上に形成され、かつ、トレンチTR1の最上部TOPよりも底面TR1bの近くに位置する第2部分とを有する。上記第1部分の厚さは、上記第2部分の厚さよりも薄い。なお、ここで言う「厚さ」とは、底面TR1b(最深部)ではなく、側面TR1sを基準とした厚さ(図7に示すX方向における厚さ)である。
【0066】
例えば、上記第1部分の厚さは、絶縁膜IF1の厚さT2に相当する。また、上記第2部分は、上記第2部分の厚さには、絶縁膜IF1の厚さT1が含まれる。
【0067】
<<フィールドプレート電極FPの形成工程>>
イオン注入後の絶縁膜IF1に対するエッチング処理後、図8図11に示されるように、絶縁膜IF1を介してトレンチTR1の内部を埋め込むように、フィールドプレート電極FPを形成する。
【0068】
まず、図8に示されるように、まず、絶縁膜IF1上に、例えばCVD法によって、導電性膜CF1を形成する。導電性膜CF1は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。この際、トレンチTR1の内部は、導電性膜CF1によって完全に埋め込まれていない。導電性膜CF1の厚さは、例えば200nm以上且つ300nm以下である。
【0069】
次に、図9に示されるように、導電性膜CF1に対してエッチング処理を行うことで、導電性膜CF1の厚さを薄くする。なお、導電性膜CF1に対して行うエッチング処理には、等方性成分よりも異方性成分の多いエッチング処理が用いられる。導電性膜CF1は、トレンチTR1の内部においてサイドウォール状に加工されるので、トレンチTR1の最上部に近づくに連れて、導電性膜CF1の厚さが薄くなる。
【0070】
次に、図10に示されるように、絶縁膜IF1および導電性膜CF1を介してトレンチTR1の内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、導電性膜CF2を形成する。導電性膜CF2は、トレンチTR1の外部において絶縁膜IF1上にも形成される。導電性膜CF2は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。導電性膜CF2の厚さは、例えば800nm以上且つ1200nm以下である。図9の製造工程で、トレンチTR1の最上部に近づくに連れて、導電性膜CF1の厚さが薄くなっているので、導電性膜CF2の形成時には、導電性膜CF2中に空隙20が発生し難くなっている。
【0071】
次に、図11に示されるように、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いた研磨処理、または、エッチング処理を行うことで、トレンチTR1の外部に形成されている導電性膜CF2を除去する。このようにして、トレンチTR1の内部に形成されている導電性膜CF1および導電性膜CF2を含むフィールドプレート電極FPが形成される。この時点で、フィールドプレート電極FPの上面の位置は、半導体基板SUBの上面TSの位置よりも高くなっている。
【0072】
このようにして、空隙20の発生が抑制されたフィールドプレート電極FPを形成できる。なお、仮に、図6のイオン注入およびエッチング処理のそれぞれが行われておらず、絶縁膜IF1の厚さが図7の関係(「T2<T1」)を満たしていなかったとしても、図8図11で説明したフィールドプレート電極FPの形成方法は、空隙20の発生を抑制するための手法として効果的である。
【0073】
次に、図12に示されるように、フィールドプレート電極FPの一部がコンタクト部FPaとして残されるように(B-B断面)、フィールドプレート電極FPの他部を選択的に後退させる(A-A断面)。まず、コンタクト部FPaとなる領域を選択的に覆うレジストパターンRP1を形成する。次に、レジストパターンRP1をマスクとしてエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行う。これにより、コンタクト部FPa以外のフィールドプレート電極FPを選択的に後退させる。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP1を除去する。
【0074】
次に、図13に示されるように、エッチング処理(例えば、ウェットエッチング処理)によって、絶縁膜IF1の一部を除去する。これにより、半導体基板SUB上の絶縁膜IF1が除去され、さらに、トレンチTR1の内部において、絶縁膜IF1の上面の位置が、フィールドプレート電極FPの上面の位置よりも低くなる。すなわち、絶縁膜IF1が後退する。また、フィールドプレート電極FPが後退している領域(A-A断面)では、絶縁膜IF1の一部がトレンチTR1の内部で露出しているので、この絶縁膜IF1に対するエッチングが早く進行する。
【0075】
この時点で、コンタクト部FPa以外のフィールドプレート電極FPに接している絶縁膜IF1の上面の位置は、コンタクト部FPaに接している絶縁膜IF1の上面の位置よりも低くなっている。また、半導体基板SUB上の絶縁膜IF1を除去したことで、コンタクト部FPaの上面の位置は、半導体基板SUBの上面TSの位置よりも高くなっている。
【0076】
また、フィールドプレート電極FPは、絶縁膜IF1の形状に沿って形成されていたので、B-B断面に示されるように、コンタクト部FPaの上部の幅W2は、コンタクト部FPaの下部の幅W1よりも広くなっている。例えば、X方向において、半導体基板SUBの上面TSの位置におけるコンタクト部FPaの幅W2は、半導体基板SUBの上面TSからトレンチTR1の最深部までの深さの半分の位置におけるコンタクト部FPaの幅W1よりも広い。
【0077】
次に、図14に示されるように、絶縁膜IF1上のトレンチTR1の内部および半導体基板SUB上に、熱酸化法によって、例えば酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GIを形成する。同時に、絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPの上面および側面には、絶縁膜IF2が形成される。
【0078】
次に、図12の製造工程で後退したフィールドプレート電極FP上において、トレンチTR1の内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、トレンチTR1の内部および半導体基板SUB上に、導電性膜CF3を形成する(A-A断面)。ここで、コンタクト部FPaが形成されているトレンチTR1の内部にも、導電性膜CF3が形成される(B-B断面)。導電性膜CF3は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。導電性膜CF3の厚さは、例えば800nm以上且つ1200nm以下である。
【0079】
次に、図15に示されるように、導電性膜CF3に対してエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行うことで、トレンチTR1の外部に形成されていた導電性膜CF2を除去すると共に、トレンチTR1の内部にゲート電極GEを形成する(A-A断面)。このエッチング処理によって、コンタクト部FPaが形成されているトレンチTR1の内部では、導電性膜CF3が除去される(B-B断面)。
【0080】
なお、コンタクト部FPaが形成されているトレンチTR1の内部の導電性膜CF3と、トレンチTR1の外部の導電性膜CF3とを完全に除去するために、本エッチング処理では、導電性膜CF3に対してオーバーエッチングを施す。そのため、ゲート電極GEの上面の位置は、図15のA-A断面に示されるように、半導体基板SUBの上面TSの位置よりも若干低くなる。
【0081】
次に、図16に示されるように、トレンチTR1を覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの上面TS上に、絶縁膜IF3を形成する。絶縁膜IF3は、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜からなる。
【0082】
次に、図17に示されるように、まず、絶縁膜IF3に対してエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行う。これにより、ゲート電極GEの一部の上面上には、ゲート絶縁膜GIに接するように、絶縁膜IF3が残される(A-A断面)。また、コンタクト部FPaの側面上に、絶縁膜IF2を介して絶縁膜IF3が残される(B-B断面)。
【0083】
次に、図17に示されるように、半導体基板SUBの下面BSよりも半導体基板SUBの上面TSに近い位置において、イオン注入法によって、例えばホウ素(B)を導入することで、半導体基板SUBに、p型のボディ領域PBを形成する。ボディ領域PBは、トレンチTR1よりも浅くなるように形成される。次に、コンタクト部FPaの周辺をレジストパターンで覆った後に、イオン注入法によって、例えば砒素(As)を導入することで、ボディ領域PBに、n型のソース領域NSを形成する。次に、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。その後、半導体基板SUBに対して熱処理を施すことで、ソース領域NSおよびボディ領域PBに含まれる不純物を拡散させる。
【0084】
なお、ソース領域NSおよびボディ領域PBのイオン注入前に、半導体基板SUB上に、スルー膜として薄い酸化シリコン膜を形成しておいてもよい。このスルー膜は、イオン注入後に除去されてもよいし、層間絶縁膜ILの一部として残されていてもよい。
【0085】
次に、図18に示されるように、トレンチTR1を覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの上面TS上に、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜からなる。なお、層間絶縁膜ILは、CVD法によって形成された薄い酸化シリコン膜と、塗布法によって形成されたPSG膜との積層膜であってもよい。
【0086】
次に、図19に示されるように、層間絶縁膜ILに、孔CH1~CH4を形成する。なお、ここでは孔CH2および孔CH4が図示されていないが、孔CH2および孔CH4は、孔CH3を形成する工程と同じ工程で形成される。
【0087】
まず、層間絶縁膜IL上に、ソース領域NSが形成されている半導体基板SUBを開口するパターンを有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとしてエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行うことで、層間絶縁膜IL中に、ソース領域NS中およびボディ領域PB中に達する孔CH1を形成する。孔CH1の底部は、ボディ領域PB内に位置している。次に、イオン注入法によって、孔CH1の底部におけるボディ領域PBに、例えばホウ素(B)を導入することで、p型の高濃度拡散領域PRを形成する。その後、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。
【0088】
次に、層間絶縁膜IL上に、外周領域ORのゲート電極GE上、セル領域CRのコンタクト部FPa上、および、外周領域ORのフィールドプレート電極FP上を開口するパターンを有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとしてエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行うことで、層間絶縁膜ILに、ゲート電極GEに達する孔CH2と、コンタクト部FPaに達する孔CH3と、外周領域ORのフィールドプレート電極FPに達する孔CH4とを形成する。その後、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。
【0089】
なお、孔CH1を形成する工程と、孔CH2~CH4を形成する工程とは、どちらが先であってもよい。
【0090】
次に、図20に示されるように、層間絶縁膜IL上に、ソース電極SEと、平面視においてソース電極SEを囲むゲート配線GWとを形成する。まず、層間絶縁膜IL上に、スパッタリング法またはCVD法によって、例えば窒化チタン膜からなるバリアメタル膜と、例えばアルミニウム膜からなる導電性膜との積層膜を形成する。次に、上記積層膜をパターニングすることで、ソース電極SEおよびゲート配線GWを形成する。
【0091】
ゲート配線GWは、孔CH2内に埋め込まれ、ゲート電極GEに電気的に接続される。ソース電極SEは、孔CH1内、孔CH3および孔CH4に埋め込まれ、ソース領域NS、ボディ領域PB、高濃度拡散領域PRおよびフィールドプレート電極FPに電気的に接続される。
【0092】
次に、ここでは図示はしないが、ソース電極SE上およびゲート配線GW上に、例えば塗布法によって、例えばポリイミド膜からなる保護膜を形成する。上記保護膜の一部を開口することで、ソース電極SEおよびゲート配線GWのうち、ソースパッドSPおよびゲートパッドGPになる領域を露出させる。
【0093】
その後、以下の製造工程を経て、図4に示される半導体装置100が製造される。まず、必要に応じて半導体基板SUBの下面BSを研磨する。次に、半導体基板SUBの下面BSに、イオン注入法によって、例えば砒素(As)などを導入することで、n型のドレイン領域NDを形成する。次に、半導体基板SUBの下面BS下に、スパッタリング法によって、ドレイン電極DEを形成する。
【0094】
<半導体装置の構造的な特徴>
図8図11で説明したように、実施の形態1では、フィールドプレート電極FP中に空隙20が形成されていない。そのため、絶縁膜IF2を形成していても、検討例のように、フィールドプレート電極FPの内部で体積膨張が発生することで、トレンチTR1の角部付近に位置する半導体基板SUBに、結晶欠陥30が発生するという問題が生じ難い。
【0095】
また、空隙20が発生していると、フィールドプレート電極FPの上部が突起部のように加工され易くなり、そのような突起部で電界集中が生じ、フィールドプレート電極FPとゲート電極GEとの間の絶縁耐性が劣化し易くなるという問題があった。実施の形態1では、そのような問題も抑制される。従って、実施の形態1によれば、MOSFETの耐圧が低下する問題を抑制でき、半導体装置100の信頼性を向上できる。
【0096】
また、図13で説明したように、コンタクト部FPaの上部の幅W2は、コンタクト部FPaの下部の幅W1よりも広くなっている。この関係は、最終的な構造である図4においても同様である。
【0097】
また、絶縁膜IF1については、図7の段階で、半導体基板SUBの上面TSの位置における絶縁膜IF1の厚さT2は、半導体基板SUBの上面TSからトレンチTR1の最深部までの深さの半分の位置における絶縁膜IF1の厚さT1よりも薄くなっていた。図4においては、絶縁膜IF1は後退しているが、一部の絶縁膜IF1は、そのような関係を受け継いで残されている。例えば、図4のB-B断面に示されるように、コンタクト部FPaに接している絶縁膜IF1の厚さは、絶縁膜IF1のうちのコンタクト部FPaの上面に最も近い箇所で最も薄くなっている。
【0098】
実施の形態1では、コンタクト部FPaの上部の幅W2が広くなっているので、孔CH3を形成する際の合わせずれに対するマージンが増加する。すなわち、孔CH3をコンタクト部FPa上に位置させ易くなっている。
【0099】
(実施の形態2)
以下に図21を用いて、実施の形態2における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0100】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に、図6のイオン注入工程において、法線方向から所定の角度へ傾斜した方向からイオンが絶縁膜IF1に注入される。更に、実施の形態2では、図21に示されるように、平面視において、複数回のイオン注入は、それぞれ、トレンチTR1の延在方向(Y方向)から互いに異なる角度へ傾斜した方向から行われる。図21では、平面視において、12回のイオン注入IMP1~IMP12が、それぞれ、互いに異なる角度へ傾斜した方向から行われている場合を示している。
【0101】
平面視において、トレンチTR1の延在方向と(Y方向)同じ方向からイオン注入が行われると、トレンチTR1の底部に位置する絶縁膜IF1にもイオンが注入されることになる。そうすると、次工程のエッチング処理(例えば、ウェットエッチング処理)によって、トレンチTR1の底部に位置する絶縁膜IF1のエッチングレートが早くなり、絶縁膜IF1の厚さが局所的に薄くなる箇所が形成されてしまう。それ故、絶縁耐圧の劣化などの問題が発生する虞がある。
【0102】
また、半導体装置100が外周領域ORにターミネーション領域としてトレンチTR2を備えている場合、そのような問題は、トレンチTR2でも起こり得る。図3に示されるように、トレンチTR2は、平面視においてセル領域CRを囲むように形成され、Y方向に延在する箇所と、X方向に延在する箇所とを含む。
【0103】
従って、図21の複数回のイオン注入IMP1~IMP12は、それぞれ、Y方向以外の方向およびX方向以外の方向から行われる必要がある。言い換えれば、複数回のイオン注入IMP1~IMP12は、それぞれ、トレンチTR1の延在方向以外の方向、および、トレンチTR1の延在方向から90度の倍数の角度へ傾斜した方向以外の方向から行われる。
【0104】
また、図3に示されるように、トレンチTR2には、Y方向に延在する箇所と、X方向に延在する箇所とを繋ぐコーナー部TR2aが設けれている場合がある。コーナー部TR2aは、平面視において、Y方向またはX方向から45度の角度へ傾斜した方向に延在している。コーナー部TR2aを設けることは必須ではないが、このようなコーナー部TR2aが設けられていない場合、Y方向に延在する箇所と、X方向に延在する箇所とが直角に繋がることになる。そうすると、直角箇所において、絶縁膜IF1の厚さにバラつきが発生し易くなったり、導電性膜CF1の埋め込み不良が発生し易くなる。従って、そのような不具合を発生し難くするために、トレンチTR2には、コーナー部TR2aが設けられている方が好ましい。
【0105】
トレンチTR2にコーナー部TR2aが設けられている場合、コーナー部TR2aの底部に位置する絶縁膜IF1にもイオンが注入されないようにする必要がある。従って、図21の複数回のイオン注入IMP1~IMP12は、それぞれ、Y方向以外の方向と、X方向以外の方向と、Y方向またはX方向から45度の角度へ傾斜した方向以外の方向とから行われる必要がある。言い換えれば、複数回のイオン注入IMP1~IMP12は、それぞれ、トレンチTR1の延在方向以外の方向、および、トレンチTR1の延在方向から45度の倍数の角度へ傾斜した方向以外の方向から行われる。
【0106】
実施の形態2の複数回のイオン注入IMP1~IMP12を断面視として見た場合において、イオン注入IMP1~IMP12の深さについて説明する。例えば、イオン注入IMP1~IMP12の断面視における注入角度が、それぞれ、図6の注入角度θ1のように同じ角度であったとする。この場合、イオン注入IMP2およびイオン注入IMP8のように、互いに180度傾斜した角度のイオン注入では、絶縁膜IF1に注入されるイオンの深さは、同じ深さになる。
【0107】
また、例えば、イオン注入IMP1、イオン注入IMP2およびイオン注入IMP3は、平面視で互いに異なる角度であるので、これらのイオン注入の深さは、互いに異なる深さになる。トレンチTR1の延在方向からの傾斜角度が小さいイオン注入IMP1では、絶縁膜IF1に注入されるイオンの深さが最も深くなる。トレンチTR1の延在方向からの傾斜角度が90度に近いイオン注入IMP3では、絶縁膜IF1に注入されるイオンの深さが最も浅くなる。イオン注入IMP2では、絶縁膜IF1に注入されるイオンの深さは、イオン注入IMP1とイオン注入IMP3との間の深さになる。
【0108】
このように、断面視で同じ注入角度θ1であっても、平面視での注入角度を互いに異ならせることで、絶縁膜IF1に注入されるイオンの深さ分布を制御できる。なお、図6の注入角度θ1について複数回のイオン注入IMP1~IMP12を行うだけでなく、図6の注入角度θ2など、他の様々な注入角度についても複数回のイオン注入IMP1~IMP12を行ってもよい。それにより、イオンの深さ分布を更に詳細に制御できる。
【0109】
なお、実施の形態2では、12回のイオン注入IMP1~IMP12を行う場合を例示したが、実施の形態2のイオン注入の回数は、12回に限られず、適宜必要な回数に設定できる。
【0110】
(実施の形態3)
以下に図22を用いて、実施の形態3における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0111】
実施の形態1では、絶縁膜IF1に対してイオン注入を行ったが、実施の形態3では、導電性膜CF1に対してイオン注入を行う。
【0112】
図22は、図8の導電性膜CF1の形成後であって、図9のエッチング処理を行う前に、導電性膜CF1に対してイオン注入を行う様子を示している。このイオン注入のイオン種は、n型の導電型を示す不純物が好ましく、例えば砒素(As)または燐(P)である。すなわち、このイオン注入のイオン種は、フィールドプレート電極FP(導電性膜CF1、導電性膜CF2)の導電型と同じ導電型の不純物であることが好ましい。
【0113】
導電性膜CF1に対するイオン注入は、絶縁膜IF1に対するイオン注入と同様の手法で行われる。すなわち、図22に示されるように、絶縁膜IF1に対するイオン注入と同様に、導電性膜CF1に対するイオン注入も、半導体基板SUBの上面TSに対する法線方向から所定の角度(角度θ1、角度θ2など)へ傾斜した方向から行われる。注入角度が大きい程に、トレンチTR1の最上部に近い導電性膜CF1へイオンを注入し易い。注入角度を小さくすることで、トレンチTR1の最上部付近だけでなく、トレンチTR1の最上部から離れた位置の導電性膜CF1へもイオンを注入できる。
【0114】
イオンが注入された箇所と、イオンが注入されていない箇所とでは、図9のエッチング処理のエッチングレートが異なっている。イオンが注入された箇所では、イオンが注入されていない箇所と比較して、エッチング処理のエッチングレートが早くなる。より多くのイオンが注入された箇所ほど、エッチングレートが早くなる。
【0115】
従って、実施の形態3では、図9のエッチング処理後に、トレンチTR1の最上部に位置する導電性膜CF1が、実施の形態1よりも薄くなる。この状態で図10の導電性膜CF2の形成を行うことで、導電性膜CF2がトレンチTR1の内部に良好に埋め込まれ易くなり、空隙20の発生を更に抑制することができる。
【0116】
また、実施の形態3でも、実施の形態2と同様の技術思想を用いて、複数回のイオン注入を、それぞれ、平面視においてトレンチTR1の延在方向(Y方向)から互いに異なる角度へ傾斜した方向から行うこともできる。
【0117】
また、実施の形態1で説明したように、絶縁膜IF1に対して図6のイオン注入およびエッチング処理のそれぞれが行われていなかったとしても、図8図11で説明したフィールドプレート電極FPの形成方法は、空隙20の発生を抑制するための手法として効果的である。この点については、実施の形態3でも同様である。
【0118】
(変形例)
以下に図23および図24を用いて、実施の形態3の変形例における半導体装置について説明する。図23および図24は、図22のイオン注入後であって、図9のエッチング処理を行う前に、導電性膜CF1の表面に酸化膜を形成し、この酸化膜を除去する様子を示している。
【0119】
図23に示されるように、導電性膜CF1に対して熱酸化処理を行う。この熱酸化処理によって、導電性膜CF1の表面に酸化膜OX1を形成する。この際、導電性膜CF1の上部には、図22のイオン注入が行われている。すなわち、導電性膜CF1の上部には、導電性膜CF1の下部よりも、n型の不純物が多く含まれている。この状態で熱酸化処理を行うと、増速酸化の影響で、不純物が多く含まれている箇所ほど、酸化の進行が早くなる。従って、酸化膜OX1は、導電性膜CF1の下部よりも、導電性膜CF1の上部において厚く形成される。
【0120】
その後、図24に示されるように、エッチング処理によって、酸化膜OX1を除去する。残された導電性膜CF1の厚さは、トレンチTR1の下方よりも、トレンチTR1の上方において薄くなっている。なお、本エッチング処理には、例えば、フッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチングが用いられる。
【0121】
この状態で導電性膜CF1に対してエッチング処理(例えば、ドライエッチング処理)を行うことで、トレンチTR1の上部付近に位置する導電性膜CF1の厚さを、図9よりも更に薄くすることができる。従って、導電性膜CF2がトレンチTR1の内部に更に良好に埋め込まれ易くなり、空隙20の発生を更に抑制することができる。
【0122】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0123】
100 半導体装置
10 法線
20 空隙
30 結晶欠陥
1A 領域
BS 下面
CF1~CF3 導電性膜
CH1~CH4 孔
CR セル領域
DE ドレイン電極
FP フィールドプレート電極
FPa コンタクト部
GE ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GP ゲートパッド
GW ゲート配線
HM ハードマスク
IF1~IF3 絶縁膜
IF1a 第1酸化シリコン膜
IF1b 第2酸化シリコン膜
IL 層間絶縁膜
ND ドレイン領域
NS ソース領域
NV ドリフト領域
OR 外周領域
OX1 酸化膜
PB ボディ領域
PR 高濃度拡散領域
SP ソースパッド
SUB 半導体基板
SE ソース電極
TOP 最上部(開口部)
TR1 トレンチ(セル領域のトレンチ)
TR2 トレンチ(ターミネーショントレンチ)
TR2a コーナー部
TS 上面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図22
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