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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035397
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】クローラ式走行車
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/125 20060101AFI20240307BHJP
   B62D 55/12 20060101ALI20240307BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B62D55/125
B62D55/12 A
F16H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139832
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】592259060
【氏名又は名称】サンリツオートメイシヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋靖
【テーマコード(参考)】
3J009
【Fターム(参考)】
3J009DA17
3J009DA20
3J009EA21
3J009EA32
3J009EA44
3J009EB04
3J009FA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クローラの駆動機構を小型化でき、砂や粉塵が駆動機構に侵入した場合でもクローラの動作に影響が生じにくいクローラ式走行車を提供する。
【解決手段】クローラ式走行車は、車体本体と、車体本体を移動させるためのクローラアセンブリとを備え、クローラアセンブリ、クローラベルトと、クローラベルトを回転させるための駆動機構42とを有し、駆動機構は、モータMと、モータの出力軸からの出力を伝達する歯車群33と、歯車群を収容する防塵ケース42と、歯車群によって伝達された力によって回転する回転軸34に取り付けられた溝車35と、溝車と噛み合って回転するピン歯車36と、ピン歯車と一緒に回転するように構成され、クローラベルトが掛けられる駆動プーリ37Aと、を含み、溝車及びピン歯車が防塵ケースの外に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体本体と、前記車体本体を移動させるためのクローラアセンブリと、
を備えるクローラ式走行車であって、
前記クローラアセンブリは、
クローラベルトと、
前記クローラベルトを回転させるための駆動機構と、
を有し、
前記駆動機構は、
モータと、
前記モータの出力軸からの出力を伝達する歯車群と、
前記歯車群を収容する防塵ケースと、
前記歯車群によって伝達された力によって回転する回転軸に取り付けられた溝車と、
前記溝車と噛み合って回転するピン歯車と、
前前記ピン歯車と一緒に回転するように構成され、前記クローラベルトが掛けられる駆動プーリと、
を含み、前記溝車及び前記ピン歯車が前記防塵ケースの外に配置されている、
クローラ式走行車。
【請求項2】
前記ピン歯車は、前記駆動プーリと一体的に構成されている、
請求項1に記載のクローラ式走行車。
【請求項3】
前記駆動プーリは、
前記クローラベルトと係合する歯付きプレートを有し、
前記歯付きプレートの一方の面に前記ピン歯車の第1のピンの列が配置されるととともに、他方の面に前記ピン歯車の第2のピンの列が配置されており、
前記回転軸には、
前記第1のピンの列と噛み合う第1の前記溝車と、
前記第2のピンの列と噛み合う第2の前記溝車と
が固定されている、
請求項1又は2に記載のクローラ式走行車。
【請求項4】
前記第1のピンの列と、前記第2のピンの列とは、円周方向に互いに位相をずらして配置されている、
請求項3に記載のクローラ式走行車。
【請求項5】
前記ピン歯車のピンの表面に、前記溝車と噛み合うゴム部材が設けられている、
請求項1又は2に記載のクローラ式走行車。
【請求項6】
前記溝車は、前記モータと前記駆動プーリとの間の位置に配置されている、
請求項1又は2に記載のクローラ式走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ式走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、段差や障害物が存在する不整地を走行できるように、車両の左右に設けられた一対のクローラと、各クローラの前後に設けられたフリッパとを備えるクローラ式走行車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
例えば配水管の内部や泥地などを走行することが想定されるクローラ式走行車では、クローラを駆動させる駆動機構における伝達機構が防塵ケース内に収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-143354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように駆動機構の伝達機構が防塵ケース内に配置される構成では、駆動機構のサイズが比較的大きくなり、装置全体が大型化するという問題があった。一方で、平歯車などの伝達機構が防塵ケースの外に配置される場合、歯車どうしの噛み合い部に砂や粉塵が侵入し、部品が損傷したりクローラが正常に回転しなくなったりするおそれがある。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、クローラの駆動機構を小型化でき、砂や粉塵が駆動機構に侵入した場合でもクローラの動作に影響が生じにくいクローラ式走行車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態のクローラ式走行車は、車体本体と、前記車体本体を移動させるためのクローラアセンブリと、を備えるクローラ式走行車であって、前記クローラアセンブリは、クローラベルトと、前記クローラベルトを回転させるための駆動機構と、を有し、前記駆動機構は、モータと、前記モータの出力軸からの出力を伝達する歯車群と、前記歯車群を収容する防塵ケースと、前記歯車群によって伝達された力によって回転する回転軸に取り付けられた溝車と、前記溝車と噛み合って回転するピン歯車と、前前記ピン歯車と一緒に回転するように構成され、前記クローラベルトが掛けられる駆動プーリと、を含み、前記溝車及び前記ピン歯車が前記防塵ケースの外に配置されている。
【0008】
前記ピン歯車は、前記駆動プーリと一体的に構成されていてもよい。
【0009】
前記駆動プーリは、前記クローラベルトと係合する歯付きプレートを有し、前記歯付きプレートの一方の面に前記ピン歯車の第1のピンの列が配置されるととともに、他方の面に前記ピン歯車の第2のピンの列が配置されており、前記回転軸には、前記第1のピンの列と噛み合う第1の前記溝車と、前記第2のピンの列と噛み合う第2の前記溝車とが固定されていてもよい。
【0010】
前記第1のピンの列と、前記第2のピンの列とは、円周方向に互いに位相をずらして配置されていてもよい。
【0011】
前記ピン歯車のピンの表面に、前記溝車と噛み合うゴム部材が設けられていてもよい。
【0012】
前記溝車は、前記モータと前記駆動プーリとの間の位置に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クローラの駆動機構を小型化でき、砂や粉塵が駆動機構に侵入した場合でもクローラの動作に影響が生じにくいクローラ式走行車を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一形態のクローラ式走行車の斜視図である。
図2図1のクローラ式走行車のクローラ周辺の構造を示す側面図である。
図3】クローラ周辺の構造を上面側から見た図である。
図4】モータ、溝車及びピン歯車の配置を示す斜視図である。
図5】溝車とピン歯車とを示す図である。
図6】本発明の変形例に係るクローラ式走行車が有するピン歯車を示す斜視図である。
図7】本発明の他の変形例に係るクローラ式走行車が有するピン歯車の周辺構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一形態のクローラ式走行車の斜視図である。図2は、図1のクローラ式走行車のクローラ周辺の構造を示す側面図である。図3は、クローラ周辺の構造を上面側から見た図である。図3では、構造の一部が断面図として描かれている。図4は、モータ、溝車及びピン歯車の配置を示す斜視図である。図5は、溝車とピン歯車とを示す図である。
【0016】
以下の説明において、図面に示されている対象物の向きに対応して上、下、左、右といった方向を示す用語を用いるが、これらの用語は本発明を限定する意図で用いられるものではない。本実施形態のクローラ式走行車は、前後いずれの向きにも進行可能であるが、図1では矢印で示されるように右下側が前方として示されている。
【0017】
(クローラ式走行車S100の基本的構成)
本実施形態のクローラ式走行車S100は、図1に示すように、車体本体10と、クローラアセンブリ20とを備えている。クローラ式走行車S100は、例えば、オペレータによって遠隔操作される監視点検用のクローラロボットである。
【0018】
クローラ式走行車S100の主たる特徴は、クローラアセンブリ20において、モータMからの回転力が防塵ケース42(図3)の外に配置された溝車35及びピン歯車36によって伝達され、駆動プーリ37Aを回転させるように構成されている点にある。平歯車の場合、平歯車どうしの噛み合い部に砂や粉塵が侵入すると、歯車が破損したり歯車が回転しなくなったりするが、溝車35とピン歯車36とによる伝達機構によれば、砂や粉塵が外部に排出されやすく、砂や粉塵による影響を低減できる。
【0019】
車体本体10は、クローラ式走行車S100が所定の作業を行うための種々の機器を搭載している。図示は省略するが、車体本体10は、例えば、クローラ式走行車S100の各種機器の動作を制御するための制御ユニットと、外部の機器と通信するための通信ユニットと、所定の対象物を撮影する撮像手段とを有している。
【0020】
クローラアセンブリ20は、車体本体10を移動させるための構造部であり、車体本体10の左右方向の両側に1つずつ設けられている。クローラアセンブリ20は、図1に示すように本実施形態では、メインクローラ30と、フリッパ50とを有している。
【0021】
フリッパ50は、メインクローラ30に取り付けられたサブクローラであり、本実施形態では、第1フリッパ50-1及び第2フリッパ50-2が設けられている。第1フリッパ50-1及び第2フリッパ50-2は、この種のクローラ式走行車S100において従来公知の構成であるため、ここでは詳細な説明は省略し簡単に説明する。また、第1フリッパ50-1及び第2フリッパ50-2は同様の構造を有するため、第1フリッパ50-1を例として説明する。
【0022】
第1フリッパ50-1は、原動側ローラ52と、従動側ローラ53と、それらのローラ間に掛け渡されたベルト54とを有している。原動側ローラ52は、メインクローラ30の動作に連動して回転する。これにより、第1フリッパ50-1のベルト54は、メインクローラ30のクローラベルト31とともに回転するようになっている。
【0023】
第1フリッパ50-1は、原動側ローラ52の中心軸を中心として従動側ローラ53側が上下方向に移動するように、回動可能に構成されている。第1フリッパ50-1がこのように構成されていることで、クローラ式走行車S100の走行中、例えば前方に段差が存在するような場合であっても、第1フリッパ50-1が段差に乗り上がり、クローラ式走行車S100は前方に進むことができる。
【0024】
(メインクローラ30の構成)
メインクローラ30は、図2に示すように、クローラベルト31と、駆動機構32と、を有する。駆動機構32は、クローラベルト31を回転させるための機構である。
【0025】
駆動機構32は、第1機構32-1及び第2機構32-2を有している。第1機構32-1はクローラ式走行車S100の前方側に配置され、第2機構32-2は後方側に配置されている。第1機構32-1は、モータMが配置された駆動側の機構であり、第2機構32-2はモータを備えていない従動側の機構である。なお、本実施形態では、一方が駆動側の機構であり他方が従動側の機構である構成を例示するが、本発明の一形態のクローラ式走行車においては、駆動側の機構が前と後ろの両方に配置されていてもよい。
【0026】
メインクローラ30においては、第1機構32-1の駆動プーリ37Aと、第2機構32-2の従動プーリ37Bとの間にクローラベルト31が掛け渡され、駆動プーリ37Aが回転することによってクローラベルト31が回転する。
【0027】
第1機構32-1は、図3に示すように、モータMと、歯車群33と、防塵ケース42と、溝車35と、ピン歯車36と、駆動プーリ37Aとを有する。
【0028】
モータMは、一例で、その出力軸が中心軸A1に沿って延在するように配置されている。中心軸A1は、この例では、クローラ式走行車S100の幅方向に延在する軸である。モータMは、具体的には、支持体41に対して固定されている。支持体41は、クローラ式走行車S100の前後方向に延在する板状の部材である。支持体41は、また、鉛直方向に延在するように配置されている。
【0029】
歯車群33は、モータMの出力軸からの出力を伝達する歯車列である。本実施形態では、一例として、歯車群33は、モータMの出力軸に固定された第1平歯車33aと、第1平歯車と噛み合うように配置された第2平歯車33bとを含む。第2平歯車33bは、回転軸34周りに回転する。回転軸34の中心軸A2は中心軸A1と平行である。
【0030】
防塵ケース42は、歯車群33を収容する。防塵ケース42は、本実施形態では、支持体41のうちモータMが配置された側とは反対の面に設けられている。防塵ケース42は、一例として、外部から水が浸入しないように密閉された内部空間を有するように形成されている。
【0031】
防塵ケース42の大きさは、内部に配置される歯車群33の構成に依存する。本実施形態では、図3に示すように、第1平歯車33aと第2平歯車33bとが前後方向に並ぶように両歯車が配置されているため、防塵ケース42の内部空間の厚みd1(図3)を、第1平歯車33a又は第2平歯車33bの厚みとほぼ同様の厚みとすることができる。そのため、防塵ケース42がコンパクトに形成される。
【0032】
防塵ケース42は、どのような部材によって構成されてもよいが、本実施形態では一例として、支持体41と、カバー部材43とによって構成されている。カバー部材43は、具体的には、例えば、支持体41に対向するカバー面43aと、カバー面43aの周縁部から立ち上がるように形成された周壁面43bとを有する。
【0033】
カバー部材43は、カバー面43aと周壁面43bとが一体的に形成された部材であってもよい。カバー部材43は、一例として、ネジ等によって支持体41に対して取り外し可能に固定される。カバー部材43と支持体41の間には、パッキン等のシール部材が配置されてもよい。カバー部材43は、樹脂材料であってもよいし、金属材料であってもよい。
【0034】
溝車35は、回転軸34に固定された歯車である。溝車35は、防塵ケース42の外に配置されており、具体的には、支持体41における防塵ケース42とは反対の面側に配置されている。図5に示すように、溝車35は、円盤状であり、周縁部に円弧状の凹部35gが複数形成されている。本実施形態では、溝車35の凹部35gの数はピン歯車36のピン36aの数よりも少なく、これにより、溝車35とピン歯車36は減速機構として機能する。
【0035】
ピン歯車36は、図3に示すように、中心軸A2と平行な中心軸A3を中心として溝車35と噛み合って回転する。ピン歯車36は、本実施形態では、モータMから見て溝車35よりも遠い側に配置されている。換言すれば、本実施形態においては、溝車35は、モータMとピン歯車36との間の位置に配置されている。
【0036】
ピン歯車36は、図4及び図5に示すように、複数のピン36aが中心軸A3を中心とする円周C上に配置された歯車である。ピン歯車36は、具体的には、複数のピン36aと、一対の側板36bと、駆動プーリ37Aとが一体的に構成された部品である。
【0037】
ピン36aは、一例として丸棒状の部材であり、中心軸A3と平行な方向に延在している。複数のピン36aは、周方向に互いにに等間隔に配置されている。本実施形態では、駆動プーリ37Aの一方の面(図の「左」側の面)に第1のピン36a-1の列が配置され、他方の面(図の「右」側の面)に第2のピン36a-2の列が配置されている。
【0038】
なお、図4では、第1のピン36a-1と第2のピン36a-2とに異なる符号を付しているが、第1のピン36a-1と第2のピン36a-2とは、別々の異なる部材で構成されてもよいし、単一の部材で構成されてもよい。単一の部材の場合、具体的には、ピンを構成する丸棒が、駆動プーリ37Aを貫通して延在するように配置されてもよい。本発明の一形態においては、ピン36aは、丸棒状ではなく、任意の断面形状を有する。もっとも、ピン36aのうち、溝車35の凹部35gに入り込む部分については円弧状の断面形状であることが好ましい。
【0039】
一対の側板36bは、互いに平行に配置された円盤状の部材であり、複数のピン36aの一方側の端部と他方側の端部とを支持する。なお、側板36bは、円盤状ではなく他の任意の輪郭形状に形成されていてもよい。
【0040】
駆動プーリ37Aは、クローラベルト31と係合してクローラベルト31を回転させるための歯付きプレートであり、外周部にクローラベルト31の内周の凹凸と噛み合う凹凸部が形成されている。駆動プーリ37Aは、本実施形態では、一対の側板36bの間に配置されている。本実施形態では、また、歯付きプレート(駆動プーリ37A)は、一例として土砂の付着を防止するため、外周の複数の歯のうちの一部分が省略された構造となっている。なお、本実施形態において図面に示されている駆動プーリ37Aの形状はあくまで一例であり、駆動プーリは、クローラベルトを回転させる機能を有するものであれば、どのような形状であってもよい。
【0041】
溝車35の回転に応じて駆動プーリ37Aを回転させるための構成としては、例えば、ピン歯車36を支持する回転軸(不図示)における任意の位置に、ピン歯車から所定の距離だけ離れた位置に駆動プーリ37Aが固定される構成も考えられる。しかしながら、図4のように、一対の側板36bの間に駆動プーリ37Aが配置される構成によれば、構成をコンパクト化することができる。
【0042】
なお、上記では図面に表されているピン歯車36の具体的な形状について説明したが、溝車35が1つの場合、第1のピン36a-1の列と第2のピン36a-2の列との両方が設けられていることは必須ではなく、一方が省略されてもよい。溝車35が複数設けられる構成については、他の図面を参照して後述する。また、ピン36aにゴム部材が設けられる構成についても他の図面を参照して後述する。
【0043】
(動作)
以上のように構成されたクローラ式走行車S100の動作について説明する。クローラ式走行車S100のモータMが回転すると、モータMの出力軸からの出力は、歯車群33によって伝達され、これにより回転軸34が回転し、回転軸34に固定されている溝車35が回転する。
【0044】
溝車35は、ピン歯車36の第1のピン36a-1と噛み合い、溝車35が回転することによってピン歯車36が回転する。これにより、駆動プーリ37Aが中心軸A3周りに回転し、駆動プーリ37Aに掛けられているクローラベルト31が回転することによって、クローラ式走行車S100が所定の方向に進行する。
【0045】
(クローラ式走行車S100の効果)
以上のように構成されたクローラ式走行車S100では、溝車35及びピン歯車36は防塵ケース42内に収容されていない。モータMにより駆動プーリ37Aを回転させる構成として、例えば、第2平歯車33bとは別の第3の平歯車(不図示)が中心軸A2周りに回転するように配置され、かつ、その歯車と噛み合う第4の平歯車(不図示)が中心軸A3周りに回転するように配置される構成が想定される。しかしながら、この構成の場合、砂や粉塵の侵入の観点から、第3及び第4の平歯車は防塵ケース42内に配置される必要があり、防塵ケース42が大型化する。
【0046】
これに対して、本実施形態の構成によれば、溝車35及びピン歯車36は防塵ケース42の外に配置されているので、防塵ケース42を小型化することができる。一方、溝車35及びピン歯車36は、仮に砂や粉塵が溝車35とピン歯車36との間に入り込んだとしても、平歯車と異なり砂や粉塵が外部に排出されやすい。したがって、クローラベルト31を安定的に回転させることが可能となる。
【0047】
クローラ式走行車S100の使用後、溝車35及びピン歯車36に泥などが付着した場合には、ユーザは、例えば高圧洗浄機などを用いて付着物を除去することができる。ピン歯車36は、平歯車に比べて、ピン36aどうしの間に泥などが残りにくいため、洗浄を行い易い。また、溝車35も、凹部35gが円弧状であるため平歯車に比べて泥などが残りにくいため、洗浄を行い易い。
【0048】
<変形例1>
本発明のクローラ式走行車は上述した構成に限定されるものではなく、次のようなものであってもよい。図6は、本発明の変形例に係るクローラ式走行車が有するピン歯車を示す斜視図である。
【0049】
図6のピン歯車36-1は、一対の側板36b、駆動プーリ37A、複数のピン36aを有している点では上記実施形態と同様であるが、ピン36aの表面に、溝車35(図5)と噛み合うゴム部材38が設けられている。ゴム部材38は、例えば、弾性を有する材質で形成された円筒状の部材である。
【0050】
ゴム部材38は、一例として、一方の端面が駆動プーリ37Aに当接し、反対側の端面が側板36bに当接するように配置されている。ゴム部材38は、具体的には、単体の状態での長さが駆動プーリ37Aと側板36bとの間の距離より僅かに長く、駆動プーリ37Aと側板36bとの間にやや圧縮された状態で配置されてもよい。これにより、ゴム部材38の各端面が駆動プーリ37A及び側板36bに密着することとなり、砂や粉塵が侵入しにくくなる。
【0051】
図6のように、ピン36aの表面に、ゴム部材38が設けられている場合、溝車35はゴム部材38と噛み合うこととなり、仮に溝車35とゴム部材38との砂や粉塵が侵入したとしても、ゴム部材38が弾性的に変形するため、部品の損傷や回転が阻害されることが生じにくい。
【0052】
なお、図6のような構成において、ゴム部材38は、ピン36aに対して取り外し可能に取り付けられていてもよい。また、複数のゴム部材38が互いに連結されていてもよい。一例として、複数のピン36aがそれぞれ挿入される複数の孔を有するシート状の基部と、そのシート状の基部から突出するように形成された複数のゴム部材38とを有する一体成形品が用いられてもよい。このような構成の場合、ゴム部材38をピン36aに対して着脱する作業が容易となる。
【0053】
<変形例2>
図7は、本発明の他の変形例に係るクローラ式走行車が有するピン歯車36の周辺構造を示す斜視図である。図7の構成では、第1の溝車35-1と第2の溝車35-2とが設けられている。第1の溝車35-1及び第2の溝車35-2は、回転軸34に固定されている。第1の溝車35-1は、第1のピン36a-1と噛み合い、第2の溝車35-2は、第2のピン36a-2と噛み合う。
【0054】
このように複数の溝車が設けられている構成によれば、1つの溝車35のみ場合と比較して、より高トルクの伝達が可能となる。
【0055】
<変形例3>
本発明においては、第1のピン36a-1の列と、第2のピン36a-2の列とが、同じ位相(図5のような断面視において第1のピン36a-1と第2のピン36a-2とが同じ位置に位置する状態)であってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0056】
具体的には、第1のピン36a-1の列と、第2のピン36a-2の列とが、円周方向に互いに位相をずらして配置されていてもよい。具体的には、例えば、一方のピンの列の位相が他方に対して1/2ピッチ分だけずれていてもよく、これにより、同位相の場合と比較してより滑らかなトルク伝達が可能になる。
【0057】
なお、第1の実施形態ではフリッパ50が設けられた具体的なクローラ式走行車S100を例示したが、本発明のクローラ式走行車は、フリッパが設けられていないものであってもよい。また、クローラ式走行車は、前輪駆動、後輪駆動、又はそれらの組合せのうちいずれであってもよい。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0059】
10 車体本体
20 クローラアセンブリ
30 メインクローラ
31 クローラベルト
32 駆動機構
32-1 第1機構
32-2 第2機構
33 歯車群
33a 第1平歯車
33b 第2平歯車
34 回転軸
35 溝車
35-1 第1の溝車
35-2 第2の溝車
35g 凹部
36 ピン歯車
36a ピン
36a-1 第1のピン
36a-2 第2のピン
36b 側板
36g 凹部
37A 駆動プーリ
37B 従動プーリ
38 ゴム部材
41 支持体
42 防塵ケース
43 カバー部材
43a カバー面
43b 周壁面
50 フリッパ
50-1 第1フリッパ
50-2 第2フリッパ
52 原動側ローラ
53 従動側ローラ
54 ベルト
A1 中心軸
A2 中心軸
A3 中心軸
C 円周
M モータ
S100 クローラ式走行車


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7