(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035400
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】クリップ、表皮材取付具およびクリップ連結体
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20240307BHJP
B68G 7/052 20060101ALI20240307BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20240307BHJP
F16B 2/22 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A47C31/02 B
B68G7/052 A
F16B19/00 M
F16B2/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139835
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 武文
(72)【発明者】
【氏名】中川 勇佑
【テーマコード(参考)】
3J022
3J036
【Fターム(参考)】
3J022EA02
3J022EB02
3J022EC02
3J022ED06
3J022FA05
3J022HA03
3J036AA01
3J036BA01
3J036CA01
3J036EA01
(57)【要約】
【課題】異物感を低減できるクリップを提供する。
【解決手段】クリップ5は、サスペンダー4の係止部44を互いの間の隙間Gに案内すると共に、少なくとも一方が隙間Gを挿通した係止部44に係合可能である第1ガイド部51および第2ガイド部52と、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間を連結する連結部53と、を備え、第1ガイド部51および第2ガイド部52のそれぞれは、クッション材2の溝21の底面213に設置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション材(2)の溝(21)内に設置されるクリップ(5,5A,5B)であって、
表皮材(3)に取り付けられるサスペンダー(4,4A)を互いの間の隙間(G)に案内すると共に、少なくとも一方が前記隙間(G)を挿通した前記サスペンダー(4,4A)の係止部(44,44A)に係合可能である第1ガイド部(51)および第2ガイド部(52)と、
前記第1ガイド部(51)と前記第2ガイド部(52)との間を連結する連結部(53)と、を備え、
前記第1ガイド部(51)および前記第2ガイド部(52)のそれぞれは、前記溝(21)の底面(213)に設置される、クリップ。
【請求項2】
前記第1ガイド部(51)と前記第2ガイド部(52)との間の前記隙間(G)は、前記前記溝(21)の底面(213)を露出させる、請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記第1ガイド部(51)は、前記溝(21)の前記底面(213)側に弾性変形可能な舌部(513)を有し、
前記舌部(513)は、前記隙間(G)を介して前記第2ガイド部(52)の縁部(522)に対向する先端面(513F)を形成している、請求項1に記載のクリップ。
【請求項4】
前記溝(21)の深さ方向における前記舌部(513)の前記先端面(513F)の寸法(T1)は、前記溝(21)の深さ方向における前記第2ガイド部(52)の前記縁部(522)の寸法(T2)よりも大きい、請求項3に記載のクリップ。
【請求項5】
前記連結部(53)は、前記第1ガイド部(51)と前記第2ガイド部(52)との間の前記隙間(G)を横断する一対のブリッジ部(531A,531B)として構成され、
前記第1ガイド部(51)、前記第2ガイド部(52)および前記一対のブリッジ部(531A,531B)は、前記溝(21)の深さ方向の貫通孔(501)を画定する、請求項1に記載のクリップ。
【請求項6】
前記第1ガイド部(51)に接続され、前記溝(21)の開口側に延伸する第1脚部(552A)と、
前記第2ガイド部(52)に接続され、前記溝(21)の開口側に延伸する第2脚部(552B)と、
前記第1脚部(552A)の先端から前記第2脚部(552B)側に突出する第1爪部(553A)と、
前記第2脚部(552B)の先端から前記第1脚部(552A)側に突出する第2爪部(553B)と、をさらに備える、請求項1に記載のクリップ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のクリップ(5,5A,5B)と、
前記表皮材(3)に取り付けられる前記サスペンダー(4,4A)と、を備え、
前記サスペンダー(4,4A)は、
前記第1ガイド部(51)と前記第2ガイド部(52)との間の前記隙間(G)を挿通可能な本体部(43)と、
前記本体部(43)から前記溝(21)の幅方向に突出し、前記第1ガイド部(51)および前記第2ガイド部(52)の少なくとも一方に係合可能な前記係止部(44,44A)と、を備える、表皮材取付具。
【請求項8】
前記係止部(44)は、前記本体部(43)から前記溝(21)の幅方向の一方側に突出し、前記第2ガイド部(52)と前記溝(21)の前記底面(213)との間に差し込まれる、請求項7に記載の表皮材取付具。
【請求項9】
前記サスペンダー(4,4A)は、前記本体部(43)から突出し、かつ、前記クリップ(5,5A,5B)に対して前記溝(21)の開口側がら当接可能である突出部(45)をさらに有する、請求項7に記載の表皮材取付具。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載され、かつ、任意の方向に沿って並べられた複数のクリップ(5,5A,5B)と、
前記複数のクリップ(5,5A,5B)を互いに連結するクリップ連結部(56)と、を備える、クリップ連結体。
【請求項11】
請求項10に記載のクリップ連結体(500)と、
前記表皮材(3)に取り付けられるサスペンダー連結体(400,400A)と、を備え、
前記サスペンダー連結体(400,400A)は、前記複数のクリップ(5,5A,5B)のそれぞれに対応する複数の前記サスペンダー(4)を備える、表皮材取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材をクッション材に取り付けるクリップ、表皮材取付具およびクリップ連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座席や椅子などでは、座面や背当てなど人体に触れる部分にクッション材を設置し、その表面を表皮材で被覆したものが多用されており、表皮材をクッション材に取り付ける手段としての表皮材取付具が知られている。
例えば、特許文献1の表皮材取付具は、クッション材の溝に設置されたクリップと、表皮材に取り付けられたサスペンダーとを備えており、サスペンダーをクリップに係止させることで、表皮材をクッション材に取り付けることができる。このクリップは、溝の底面に設置された基部と、基部から立設する一対の脚部と、一対の脚部から互いに近接する側に突出する一対のガイド部とを有している。サスペンダーは、一対のガイド部により案内され、一対の脚部の間の空間に収容されることで、クリップに係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の表皮材取付具のクリップは、サスペンダーの収容空間を内包するように構成されるため、クッション材の溝の深さ方向におけるクリップの寸法を小さくすることが難しい。このため、クッション材の溝が浅い場合など、クリップや当該クリップに係止されるサスペンダーを溝の開口から十分に離して配置することが難しく、クッション材に異物感が生じることがある。
【0005】
本発明は、異物感を低減できるクリップ、表皮材取付具およびクリップ連結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1態様)
本発明の第1態様は、クッション材の溝内に設置されるクリップであって、表皮材に取り付けられるサスペンダーを互いの間の隙間に案内すると共に、少なくとも一方が前記隙間を挿通した前記サスペンダーの係止部に係合可能である第1ガイド部および第2ガイド部と、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間を連結する連結部と、を備え、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部のそれぞれは、前記溝の底面に設置される。
このような構成では、クリップの内側にサスペンダーの収容空間を形成する必要がなく、クッション材の溝の深さ方向におけるクリップの寸法を抑制できる。このため、クッション材の溝が浅い場合であっても、クリップや当該クリップに係止されるサスペンダーを溝の開口から十分に離して配置することができる。その結果、クッション材におけるクリップやサスペンダーの異物感を低減させることができる。
【0007】
(第2態様)
本発明の第1態様において、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間の前記隙間は、前記溝の底面を露出させることが好ましい。
このような構成では、クッション材の溝の深さ方向におけるクリップの寸法を好適に抑制できる。
【0008】
(第3態様)
本発明の第1態様または第2態様において、前記第1ガイド部は、前記溝の前記底面側に弾性変形可能な舌部を有し、前記舌部は、前記隙間を介して前記第2ガイド部の縁部に対向する先端面を形成していることが好ましい。
このような構成では、サスペンダーの係止部が第1ガイド部と第2ガイド部との間の隙間を挿通する際、舌部がサスペンダーに押されて弾性可能することで当該隙間が広がり、係止部の挿通が容易である。また、係止部が第1ガイド部と第2ガイド部との間の隙間を通過した後、舌部が元の形状に戻ることでサスペンダーを第2ガイド部側に押圧するため、係止部と第2ガイド部とを係合させることが容易である。
【0009】
(第4態様)
本発明の第3態様において、前記溝の深さ方向における前記舌部の前記先端面の寸法は、前記溝の深さ方向における前記第2ガイド部の前記縁部の寸法よりも大きいことが好ましい。
このような構成では、サスペンダーの係止部が第1ガイド部と第2ガイド部との間の隙間を通過した後、舌部の先端面がサスペンダーを第2ガイド部側に好適に押圧することができる。
【0010】
(第5態様)
本発明の第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記連結部は、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間の前記隙間を横断する一対のブリッジ部を有し、前記第1ガイド部、前記第2ガイド部および前記一対のブリッジ部は、前記溝の深さ方向の貫通孔を画定することが好ましい。
このような構成では、第1ガイド部と第2ガイド部との間の隙間が貫通孔として形成されるため、当該隙間が意図せずに広がることを抑制でき、クリップに対するサスペンダーの係合状態を好適に維持できる。
【0011】
(第6態様)
本発明の第1態様から第5態様のいずれかに係る表皮材止着用クリップは、前記第1ガイド部に接続され、前記溝の開口側に延伸する第1脚部と、前記第2ガイド部に接続され、前記溝の開口側に延伸する第2脚部と、前記第1脚部の先端から前記第2脚部側に突出する第1爪部と、前記第2脚部の先端から前記第1脚部側に突出する第2爪部と、をさらに備えることが好ましい。
このような構成では、クッション材の成形時、第1爪部および第2爪部が溝に対応するトレンチを把持することができる。これにより、トレンチへのクリップの組み付けを容易にできる。すなわち、クッション材に対するクリップの設置を容易にできる。
【0012】
(第7態様)
本発明の第7態様に係る表皮材取付具は、第1態様から第6態様のいずれかのクリップと、前記表皮材に取り付けられる前記サスペンダーと、を備え、前記サスペンダーは、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間の前記隙間を挿通可能な本体部と、前記本体部から前記溝の幅方向に突出し、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部の少なくとも一方に係合可能な前記係止部と、を備える。
このような構成では、上述したように、クッション材におけるクリップやサスペンダーの異物感を低減させることができる。
【0013】
(第8態様)
本発明の第7態様において、前記係止部は、前記本体部から前記溝の幅方向の一方側に突出し、前記第2ガイド部と前記溝の前記底面との間に差し込まれることが好ましい。
このような構成では、サスペンダーを傾けてクリップから引き抜く操作により、第2ガイド部に対する係止部の係合を解除することができる。これにより、表皮材のリペアが容易になる。
【0014】
(第9態様)
本発明の第7態様または第8態様において、前記サスペンダーは、前記本体部から突出し、かつ、前記クリップに対して前記溝の開口側がら当接可能である突出部をさらに有することが好ましい。
このような構成では、サスペンダーがクリップに過度に挿入されることを抑制することで、クッション材の破損を抑制できる。
【0015】
(第10態様)
本発明の第10態様に係るクリップ連結体は、第1形態から第6形態のいずれかに記載され、かつ、任意の方向に沿って並べられた複数のクリップと、前記複数のクリップを互いに連結するクリップ連結部と、を備える。
このような構成によっても、第1態様と同様の効果を得られる。
【0016】
(第11態様)
本発明の第11態様に係る表皮材取付具は、第10態様のクリップ連結体と、前記表皮材に取り付けられるサスペンダー連結体と、を備え、前記サスペンダー連結体は、前記複数のクリップのそれぞれに対応する複数の前記サスペンダーを備える。
このような構成によっても、第1態様と同様の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る表皮材取付具をクッション材に設置した状態を示す断面図。
【
図2】前記第1実施形態の表皮材取付具を示す分解斜視図。
【
図4】前記第1実施形態の表皮材取付具を示す側面図。
【
図6】クッション材の成形時、前記第1実施形態のクリップが組み付けられるトレンチを示す斜視図。
【
図7】前記第1実施形態のクリップがトレンチに組み付けられた状態を示す斜視図。
【
図8】前記第1実施形態のクリップが金型内のトレンチに組み付けられた状態を模式的に示す断面図。
【
図9】前記第1実施形態の表皮材取付具を用いた表皮材取付方法を説明する図であって、サスペンダーをクリップに挿入する前の状態を示す図。
【
図10】前記第1実施形態の表皮材取付具を用いた表皮材取付方法を説明する図であって、サスペンダーをクリップに挿入する途中の状態を示す図。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る表皮材取付具を示す分解斜視図。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る表皮材取付具のクリップを示す斜視図。
【
図13】前記第3実施形態の表皮材取付具を示す図であって、
図5に対応する断面図。
【
図14】前記第3実施形態の変形例に係るサスペンダーを示す斜視図。
【
図15】前記第1実施形態の変形例に係る表皮材取付具を示す図であって、当該表皮材取付具をクッション材に設置した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1~
図10に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る表皮材取付具1は、車両用座席などのクッション材2に対して表皮材3を取り付けるものである。この表皮材取付具1は、表皮材3に取り付けられるサスペンダー4と、クッション材2の溝21に設置されるクリップ5とを備えており、サスペンダー4をクリップ5に係止させることにより、表皮材3をクッション材2に取り付けることができる。
【0019】
クッション材2は、座席の形状に成形された発泡ポリウレタン等の合成樹脂ウレタンフォーム材である。クッション材2には、クリップ5が設置される溝21が形成されている。溝21は、クッション材2の表面に開口を形成しつつ、クッション材2の表面の任意の方向に沿って延びている。また、クッション材2には、溝21により、互いに対向する第1側壁面211および第2側壁面212と、底面213とが形成されている。
表皮材3は、クッション材2の表面を覆うシートであり、例えば合成樹脂織物シートである。表皮材3の端縁部31は、サスペンダー4に対して縫製等により取り付けられる。
【0020】
表皮材取付具1の構成について、
図1~
図5を参照して説明する。
以下、表皮材取付具1の構成の説明では、サスペンダー4がクリップ5に係止された状態を基準としてXYZの3軸方向を用いる(
図1参照)。例えば、表皮材取付具1の長さ方向をX方向とし、表皮材取付具1の左右方向をY方向とし、表皮材取付具1の上下方向をZ方向とする。なお、表皮材取付具1により表皮材3がクッション材2に取り付けられた状態(
図1参照)では、X方向がクッション材2の溝21の長さ方向に対応し、Y方向が溝21の幅方向に対応し、Z方向が溝21の深さ方向に対応する。また、説明の便宜上、Z方向の一方側(上方)に向かう方向を+Z方向とし、Z方向の他方側(下方)に向かう方向を-Z方向とし、溝21は、クッション材2において+Z方向に開口するものとする。
【0021】
サスペンダー4は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による成形品であり、表皮材3の端縁部31に吊り下げられる。具体的には、
図1および
図2に示すように、サスペンダー4は、表皮材3の端縁部31が取り付けられる取付部41と、取付部41の+Z側の端部に接続される傾斜部42と、取付部41の-Z側の端部に接続される本体部43と、本体部43からY方向の一方側(例えば-Y側)に突出する係止部44および突出部45と、本体部43からY方向の他方側(例えば+Y側)に突出する治具用フック部46と、を備える。
【0022】
取付部41は、XZ面に沿って配置されるプレート形状を有する。取付部41の+Y側の面には、2枚の表皮材3の端縁部31が重ねられ、取付部41および表皮材3の端縁部31が共に縫製される。
傾斜部42は、取付部41からZ方向に対して傾斜した方向に延びており、+Y側および+Z側に面する傾斜面421を有する。この傾斜部42は、クッション材2の表面に加わる押圧を傾斜面421で受けることにより、弾性変形可能である。
【0023】
本体部43は、XZ面に沿って配置されるプレート形状を有する。本体部43のY方向寸法は、取付部41のY方向寸法よりも大きい。このため、取付部41は、本体部43よりも+Y側において、治具用フック部46と共に、+Z方向に面する押圧面431を形成している。
【0024】
係止部44は、本体部43の-Z側の先端部から-Y側に突出している。この係止部44は、+Z側に面する係合面441と、-Z側に面する被ガイド面442とを形成している。被ガイド面442は、-Y側に向かうほど+Z側に向かうように、Y方向に対して傾斜している。
突出部45は、本体部43における係止部44よりも+Z側の位置から-Y側に突出している。Z方向における係止部44と突出部45との間には、後述するクリップ5の第2ガイド部52(または第1ガイド部51)のZ方向寸法以上の間隔が空けられる。
【0025】
治具用フック部46は、本体部43の+Z側の基端部から+Y側に突出するアーム片461と、アーム片461から-Z側に湾曲しながら延びるフック片462とを有する。フック片462と本体部43との間に形成される空間には、サスペンダー4をクリップ5から外すための治具が挿入可能である。
【0026】
クリップ5は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による成形品である。具体的には、
図1~
図5に示すように、クリップ5は、クッション材2の溝21の底面213に設置される本体部50と、本体部50のY方向一方側(+Y側)に接続され、溝21の第1側壁面211に差し込まれた状態で固定される第1固定部55Aと、本体部50のY方向他方側(-Y側)に接続され、溝21の第2側壁面212に差し込まれた状態で固定される第2固定部55Bと、を備える。
【0027】
本体部50は、-Z側に凹んだ凹形状がX方向に沿って形成されたプレート形状を有し、クッション材2の溝21の底面213に設置され、当該底面213に当接する。具体的には、本体部50は、互いの間にY方向の隙間Gを挟んで配置される第1ガイド部51および第2ガイド部52と、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間を連結する連結部53と、を備える。
【0028】
第1ガイド部51は、例えば
図3に示すように、第1固定部55Aに接続された基部510と、基部510から隙間G側に突出している舌部513と、を有する。換言すると、第1ガイド部51には、X方向において互いに異なる位置に一対のスリット512が形成されており、第1ガイド部51のうちの一対のスリット512の間の部位が舌部513を形成し、それ以外の部位は基部510を形成している。
また、第1ガイド部51は、基部510から舌部513の一部にかけて広がるガイド面511を有する。このガイド面511は、+Z側および-Y側に面するように、Z方向およびY方向に対して傾斜している。
【0029】
舌部513は、Z方向の押圧を受けることによりZ方向に弾性変形可能である。また、舌部513には、隙間Gに対してY方向に面する先端面513Fが形成されている。この先端面513Fは、第2ガイド部52の隙間G側の縁部522に対向している。なお、先端面513FのZ方向寸法T1は、第2ガイド部52の縁部522のZ方向寸法T2よりも-Z側に大きいことが好ましい(
図9参照)。
【0030】
第2ガイド部52は、例えば
図2に示すように、第2固定部55Bに接続されたプレート形状を有する。この第2ガイド部52は、隙間Gに対してY方向内に面する縁部522を有しており、この縁部522は、舌部513の先端面513Fに隙間Gを介して対向している。
また、第2ガイド部52は、+Z側および+Y側に面するように、Z方向およびY方向に対して傾斜しているガイド面521を有する。
ここで、第1ガイド部51のガイド面511と、第2ガイド部52のガイド面521とは、互いにY方向に対向しており、-Z側に向かうほど互いに近づくテーパ形状を成している。これらガイド面511,521は、クリップ5に近接するサスペンダー4を隙間G内に案内可能である。
【0031】
また、第1ガイド部51および第2ガイド部52が溝21の底面213に設置された際、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gは、当該溝21の底面213を露出させる。
なお、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gは、正確には、ガイド面511,521が対向する範囲を含めて第1ガイド部51および第2ガイド部52が互いに対向する範囲に広がっている。ただし、本実施形態の隙間Gは、第1ガイド部51のY方向内側の端部と第2ガイド部52のY方向内側の端部との間の隙間であって、クリップ5を上下方向に貫通する空間を指すものとする。
【0032】
連結部53は、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを横断する一対のブリッジ部531A,531Bを有する。具体的には、一対のブリッジ部531A,531Bは、互いの間にX方向の間隔をあけて配置され、第1ガイド部51の基部510と第2ガイド部52との間をそれぞれ連結する。
【0033】
なお、本実施形態では、例えば
図4に示すように、第1ガイド部51、第2ガイド部52および一対のブリッジ部531A,531Bは、本体部50をZ方向に貫通する貫通孔501を画定している。換言すると、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gと、第1ガイド部51における一対のスリット512とは、共に貫通孔501を成している。
【0034】
第1固定部55Aは、例えば
図1に示すように、第1基部551Aと、第1基部551Aから+Z側に延伸している第1脚部552Aと、第1脚部552Aの先端から-Y側に突出している第1爪部553Aと、を備える。ここで、第1ガイド部51は、第1脚部552Aの中間部から-Y側に向かって延びている。
【0035】
第2固定部55Bは、第2基部551Bと、第2基部551Bから+Z側に延伸している第2脚部552Bと、第2脚部552Bの先端から+Y側に突出している第2爪部553Bと、を備える。ここで、第2ガイド部52は、第2脚部552Bの中間部から+Y側に向かって延びている。
【0036】
第1固定部55Aおよび第2固定部55Bのそれぞれは、クッション材2にほぼ埋設されており、クリップ5をクッション材2に固定する機能を有する。具体的には、第1固定部55Aにおいて、第1基部551A、第1脚部552Aの+Y側、および、第1爪部553Aの+Z側は、クッション材2に覆われている。同様に、第2固定部55Bにおいて、第2基部551B、第2脚部552Bの-Y側、および、第2爪部553Bの+Z側は、クッション材2に覆われている。
【0037】
以上説明した表皮材取付具1において、サスペンダー4の本体部43は、クリップ5の隙間Gを挿通可能(すなわち貫通孔501を貫通可能)に構成されている。具体的には、
図5に示すように、本体部43のY方向寸法W1は、クリップ5における隙間Gの最小のY方向寸法W2(具体的には舌部513と第2ガイド部52との間の隙間GのY方向寸法W2)と等しいことが好ましい。また、本体部43のX方向寸法D1は、舌部513のX方向寸法D2よりも大きく、かつ、貫通孔501のX方向寸法D3よりも小さいことが好ましい。
【0038】
また、表皮材取付具1において、サスペンダー4は、本体部43がクリップ5の貫通孔501を挿通した状態で、係止部44が第2ガイド部52に係合可能に構成されている。具体的には、サスペンダー4の本体部43および係止部44による最大のY方向寸法W3は、クリップ5における隙間Gの最小のY方向寸法W2よりも大きいことが好ましい。
【0039】
(クリップ5の設置)
本実施形態のクリップ5をクッション材2に設置する方法の一例について、
図6~
図8を参照して簡単に説明する。なお、
図6,
図7は、図の簡略化のため、クッション材2の型7内に設置されるトレンチ6のうち、1つのクリップ5に対応するトレンチ6の部位を示している。また、
図8は、クッション材2の型7およびトレンチ6の各断面を模式的に示している。
【0040】
まず、
図6に示すようなトレンチ6を準備する。ここで、トレンチ6は、クッション材2の溝21を成す型であり、当該溝21に対応する位置に配置されている。また、トレンチ6は、本体部61と、当該本体部61に形成された一対の凹部62と、一対の凹部62の間から溝21の深さ方向に突出する凸部63とを有する。
なお、一対の凹部62内には、溝21の長さ方向に延びつつ、溝21の深さ方向に段差を形成する段差部621が形成される。また、凸部63は、クリップ5の貫通孔501の形状に対応する形状を有している。具体的には、凸部63は、クリップ5の一対のスリット512に対応する一対の第1突部631と、クリップ5の貫通孔501の一対のスリット512以外の範囲に対応する第2凸部632と、を有する。
【0041】
次に、クッション材2の型7に設置されたトレンチ6に対してクリップ5をセットする。このとき、
図7,
図8に示すように、クリップ5の第1脚部552Aおよび第2脚部552Bがトレンチ6の一対の凹部62のそれぞれに嵌め込まれ、クリップ5の第1爪部553Aおよび第2爪部553Bがトレンチ6の本体部61を把持しつつ、各凹部62内の段差部621に係合する。これにより、クリップ5がトレンチ6に保持される。
また、クリップ5のセット時、トレンチ6の凸部63がクリップ5の貫通孔501を挿通する。ここで、トレンチ6の凸部63は、クリップ5の貫通孔501を挿通しつつ、当該貫通孔501を閉塞する。
【0042】
次に、クッション材2の型7内にクッション材2の材料を注入し、発泡固化させることで、クッション材2が成形される。これにより、クリップ5の第1固定部55Aおよび第2固定部55Bのそれぞれがクッション材2に埋設され、クッション材2に固定される。なお、クリップ5の貫通孔501には、トレンチ6の凸部63が存在するため、クッション材2の材料が侵入しない。
【0043】
その後、クッション材2からトレンチ6および型7を取り外す。このとき、クッション材2の型7内でトレンチ6が存在していた範囲が溝21として現れ、クリップ5が溝21内に設置された状態となる。また、トレンチ6の凸部63が存在していたクリップ5の貫通孔501は、クッション材2が存在しない空間として形成される。
【0044】
(表皮材取付方法)
本実施形態の表皮材取付具1を用いた表皮材取付方法について、
図1、
図9および
図10をさらに参照して説明する。なお、
図9,
図10では、図の簡略化のため、表皮材3の図示を省略し、クッション材2の溝21の基本的な輪郭を2点鎖線で示している。
【0045】
まず、作業者は、表皮材3が装着されたサスペンダー4と、溝21内にクリップ5が設置されたクッション材2とを準備し、クッション材2を覆うように表皮材3を配置する。そして、任意の押圧手段(作業者または自動機など)が、サスペンダー4をクッション材2の溝21に挿入し、サスペンダー4の押圧面431に対して-Z方向の押圧を加える。
【0046】
サスペンダー4が溝21に挿入される際、
図9に示すように、サスペンダー4の姿勢がZ方向に対して傾いたり、サスペンダー4の位置がクリップ5のY方向中心から位置ずれしたりすることがある。このような場合、サスペンダー4の挿入先端部4P(係止部44または本体部43の先端部)が、クリップ5のガイド面511またはガイド面521に押し当ることで、クリップ5のY方向中心に向かって、すなわち第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間G内に案内される。
【0047】
そして、サスペンダー4の押圧面431に対して押圧が継続して加えられると、
図10に示すように、サスペンダー4の挿入先端部4Pは、クリップ5の舌部513を-Z方向に弾性変形させながら隙間Gを挿通する。このとき、クッション材2が舌部513と共に弾性変形してもよい。
【0048】
サスペンダー4の係止部44が隙間Gを通過すると、クリップ5の舌部513が元の形状に戻る。このとき、舌部513の先端面513Fは、本体部43を-Y方向に押圧する。これにより、サスペンダー4の係止部44は、クッション材2を弾性変形させながら第2ガイド部52の縁部522の-Z側に入り込む。これにより、係止部44は、第2ガイド部52に対してZ方向に係合する。また、係止部44が隙間Gを通過する際には、舌部513の押圧により、クリップ5にクリック感が生じる。
以上により、
図1に示すように、サスペンダー4がクリップ5に係止される。これにより、表皮材3をクッション材2に取り付けることができる。
【0049】
なお、任意の押圧手段がサスペンダー4を押圧する際、サスペンダー4の突出部45が第2ガイド部52に対して+Z側から当接してもよい。これにより、サスペンダー4がクリップ5に過剰に押し込れることを防止できる。
また、上述の説明では、サスペンダー4の係止部44が第2ガイド部52に係合する場合を説明したが、サスペンダー4がY方向に反転して配置される場合、サスペンダー4の係止部44が第1ガイド部51の舌部513に係合してもよい。
【0050】
(取り外し方法)
本実施形態の表皮材取付具1では、任意の治具を用いることにより、サスペンダー4をクリップ5から取り外すことができる。例えば、治具をサスペンダー4の治具用フック部46に引掛け、サスペンダー4を-Y側に倒すように傾けることで、係止部44が隙間Gを挿通可能になり、サスペンダー4をクリップ5から引き抜くことができる。
【0051】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、上述したように、クリップ5の第1ガイド部51および第2ガイド部52のそれぞれがクッション材2の溝21の底面213に設置され、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを挿通したサスペンダー4の係止部44が第2ガイド部52に係合する。
このような構成では、クリップ5の内側にサスペンダー4の収容空間を形成する必要がなく、クッション材2の溝21の深さ方向(Z方向)におけるクリップ5の寸法を抑制できる。このため、クッション材2の溝21が浅い場合であっても、クリップ5や当該クリップ5に係止されるサスペンダー4を溝21の開口から十分に離して配置することができる。その結果、クッション材2におけるクリップ5やサスペンダー4の異物感を低減させることができる。
また、本実施形態では、クリップ5や当該クリップ5に係止されるサスペンダー4を溝21の開口から十分に離して配置できることから、表皮材3を取り付けられたクッション材2の外観上の見栄えを向上させることができる。
【0052】
本実施形態において、第1ガイド部51と第2ガイド部52と間の隙間Gは、クッション材2の溝21の底面213を露出させる。
このような構成では、クッション材2の溝21の深さ方向(Z方向)におけるクリップ5の寸法を好適に抑制できる。
【0053】
本実施形態の第1ガイド部51は、クッション材2の溝21の底面213側(-Z側)に弾性変形可能な舌部513を有し、舌部513は、隙間Gを介して第2ガイド部52の縁部522に対向する先端面513Fを形成している。
このような構成では、サスペンダー4の係止部44が第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを挿通する際、舌部513がサスペンダー4に押されて弾性可能することで隙間Gが広がり、係止部44の挿通が容易である。また、係止部44が隙間Gを通過した後、舌部513が元の形状に戻ることでサスペンダー4を第2ガイド部52側に押圧するため、係止部44と第2ガイド部52とを係合させることが容易である。また、クリップ5にクリック感が生じることにより、挿入感を向上できる。
【0054】
本実施形態において、舌部513の先端面513FのZ方向寸法T1は、第2ガイド部52の縁部522のZ方向寸法T2よりも大きい。
このような構成では、サスペンダー4の係止部44が第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを通過した後、舌部513の先端面513Fがサスペンダー4を第2ガイド部52側に好適に押圧することができる。
【0055】
本実施形態の連結部53は、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを横断する一対のブリッジ部531A,531Bを有し、第1ガイド部51、第2ガイド部52および一対のブリッジ部531A,531Bは、クリップ5をZ方向に貫通する貫通孔501を画定する。
このような構成では、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gが貫通孔501として形成されるため、当該隙間Gが意図せずに広がることを抑制でき、クリップ5に対するサスペンダー4の係合状態を好適に維持できる。
【0056】
本実施形態のクリップ5は、第1ガイド部51に接続され、クッション材2の溝21の開口側に延伸する第1脚部552Aと、第2ガイド部52に接続され、クッション材2の溝21の開口側に延伸する第2脚部552Bと、第1脚部552Aの先端から第2脚部552B側に突出する第1爪部553Aと、第2脚部552Bの先端から第1脚部552A側に突出する第2爪部553Bと、をさらに備える。
このような構成では、クッション材2の成形時、第1爪部553Aおよび第2爪部553Bが溝21に対応するトレンチ6を把持することができる。これにより、トレンチ6へのクリップ5の組み付けを容易にできる。すなわち、クッション材2に対するクリップ5の設置を容易にできる。
【0057】
本実施形態の表皮材取付具1は、上述のクリップ5と、表皮材3に取り付けられるサスペンダー4と、を備え、サスペンダー4は、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを挿通可能な本体部43と、本体部43から溝21の幅方向の一方側に突出し、第2ガイド部52に係合可能な係止部44と、を備える。この係止部44は、第2ガイド部52と溝21の底面213との間に差し込まれる。
このような構成では、上述したように、クッション材2におけるクリップ5やサスペンダー4の異物感を低減させることができる。
また、サスペンダー4を傾けてクリップ5から引き抜く操作により、第2ガイド部52に対する係止部44の係合を解除することができる。これにより、表皮材3のリペアが容易になる。
【0058】
本実施形態において、サスペンダー4は、本体部43から突出し、かつ、クリップ5に対して溝21の開口側から当接可能である突出部45をさらに有する。
このような構成では、サスペンダー4がクリップ5に過度に挿入されることを抑制することで、クッション材2の破損を抑制できる。
【0059】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、
図11に基づいて説明する。なお、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様の構成には同様の符号を付しており、その説明を省略または簡略化する。
【0060】
第2実施形態に係る表皮材取付具1Aは、
図11に示すように、複数のサスペンダー4が一体化されたサスペンダー連結体400と、複数のクリップ5が一体化されたクリップ連結体500と、備える。
サスペンダー連結体400は、X方向に沿って並んだ複数のサスペンダー4を備える。本実施形態において、第1実施形態で説明したサスペンダー4の取付部41および傾斜部42は、複数のサスペンダー4間で一体化された取付部41Aおよび傾斜部42Aを成している。すなわち、サスペンダー連結体400は、X方向に沿って連続的に形成された取付部41Aおよび傾斜部42Aと、取付部41Aに対して接続された複数の本体部43と、各本体部43に設けられた係止部44、突出部45および治具用フック部46と、を備える。
クリップ連結体500は、X方向に沿って並んだ複数のクリップ5と、隣り合うクリップ5同士を連結するクリップ連結部56と、を備える。クリップ連結部56は、バー形状を有しており、隣り合うクリップ5の連結部53同士、すなわち、あるクリップ5のブリッジ部531Aと当該クリップ5の隣のクリップ5のブリッジ部531Bとを連結している。
このような本実施形態において、サスペンダー4の取付部41および傾斜部42、ならびに、クリップ5のクリップ連結部56は、XY平面内における柔軟性を有している。このため、カーブ形状を有する溝21に対して表皮材取付具1Aを好適に設置できる。
なお、本実施形態のサスペンダー連結体400およびクリップ連結体500のそれぞれは、例えば押し出し成形の後、間欠カットを行うことにより製造可能である。
【0061】
本実施形態における表皮材取付方法は、上述した第1実施形態の表皮材取付方法と略同様である。例えば、サスペンダー連結体400をクッション材2の溝21に挿入し、各サスペンダー4に-Z方向の押圧を加えることで、各サスペンダー4を、当該サスペンダー4に対応するクリップ5に係止させることができる。
以上の第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について、
図12および
図13に基づいて説明する。なお、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様の構成には同様の符号を付しており、その説明を省略または簡略化する。
【0063】
本実施形態に係る表皮材取付具1Bは、第1実施形態と同様のサスペンダー4と、第1実施形態とは異なる形態のクリップ5Aとを備える。
本実施形態のクリップ5Aは、第1実施形態と略同様に、本体部50A、第1固定部55A、および、第2固定部55Bを備える。
ここで、本体部50Aでは、第1ガイド部51に一対のスリット512が形成されるだけでなく、第2ガイド部52に一対のスリット524が形成されている。これら一対のスリット524は、隙間Gから-Y側に切り込まれた形状を有しており、互いの間にX方向の間隔を空けて配置されている。これにより、第2ガイド部52は、一対のスリット524の間の部位として、Z方向に弾性変形可能な舌部523を有する。
すなわち、本実施形態のクリップ5Aでは、第1ガイド部51が舌部513を有すると共に、第2ガイド部52が舌部523を有する。
【0064】
本実施形態における表皮材取付方法は、上述した第1実施形態の表皮材取付方法と略同様である。
例えば、サスペンダー4をクッション材2の溝21に挿入し、サスペンダー4に-Z方向の押圧を加える。このとき、サスペンダー4は、クリップ5の舌部513,523の両方(またはいずれか一方)を-Z方向に弾性変形させながら隙間Gを挿通することができる。また、サスペンダー4の係止部44が隙間Gを通過すると、サスペンダー4の係止部44は、第2ガイド部52の-Z側に入り込み、第2ガイド部52の舌部523に対してZ方向に係合する。これにより、サスペンダー4はクリップ5Aに係止される。
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様、サスペンダー4がY方向に反転して配置される場合には、サスペンダー4の係止部44が第1ガイド部51の舌部513に係合してもよい。
【0065】
以上の第3実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態のクリップ5Aによれば、サスペンダー4が舌部513,523間の隙間Gを通過することが容易である。
【0066】
[変形例]
前記各実施形態は様々な変形が可能であり、以下に説明する変形例は、前記各実施形態の任意の形態に対して適用可能である。
例えば、
図14は、前記第2実施形態の変形例に係るサスペンダー連結体400Aを示す図である。
図14の変形例において、サスペンダー連結体400Aは、取付部41Aおよび傾斜部42Aの替わりに、不織布などの取付部41Bを有する。また、
図14の変形例において、サスペンダー連結体400Aは、互いに隣り合う本体部43の間に配置され、かつ、各本体部43と一体的に形成された中間部47をさらに備える。ここで、取付部41Bは、本体部43および中間部47に対してインサート成形されており、縫製等により表皮材3に取り付けられる。
【0067】
図15は、前記第1実施形態の変形例に係る表皮材取付具1Cを示す図である。
図15の変形例において、サスペンダー4Aは、本体部43のY方向の両側に突出する一対の係止部44Aを有する。また、クリップ5Bにおいて、第1ガイド部51および第2ガイド部52のそれぞれのZ方向寸法は、略等しく設定されている。このような構成において、一対の係止部44Aは、第1ガイド部51の舌部513および第2ガイド部52の縁部522のそれぞれに係合可能である。この場合、サスペンダー4Aは、クリップ5Bからの取り外しを想定されずともよい。
また、
図15の変形例において、サスペンダー4Aは、本体部43に一体形成された取付部41および傾斜部42の替わりに、本体部43に対してインサート成形された不織布等の取付部41Bを有しており、この取付部41Bは、-Y側に折り曲げられた折り曲げ分部を有する。表皮材3は、取付部41Bの-Y側において、取付部41Bの折り曲げ分部に対して縫製されている。これにより、サスペンダー4Aにおける押圧面431が広く確保される。
【0068】
前記各実施形態において、第1ガイド部51および第2ガイド部52のそれぞれは、舌部513,523を有さずともよい。この場合、サスペンダー4の係止部44は、貫通孔501を広げるように、クリップ5の全体を弾性変形させることで、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを挿通してもよい。
【0069】
前記各実施形態において、連結部53は、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間の隙間Gを横断する一対のブリッジ部531A,531Bを有するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、連結部53は、第1ガイド部51と第2ガイド部52との間を直接または間接的に連結する構成であれば、特に限定されない。
【0070】
前記各実施形態において、サスペンダー4は、突出部45を有するが、本発明はこれに限定されない。例えば、突出部45ではなく、治具用フック部46が第1ガイド部51に対して当接することで、サスペンダー4がクリップ5に過剰に押し込まれることを防止してもよい。あるいは、押圧手段を制御することで、クリップ5に対するサスペンダー4の押込み量を調整してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1B,1C…表皮材取付具、2…クッション材、21…溝、211…第1側壁面、212…第2側壁面、213…底面、3…表皮材、31…端縁部、4,4A…サスペンダー、41,41A,41B…取付部、42,42A…傾斜部、421…傾斜面、43…本体部、431…押圧面、44,44A…係止部、441…係合面、442…被ガイド面、45…突出部、46…治具用フック部、461…アーム片、462…フック片、4P…挿入先端部、400,400A…サスペンダー連結体、5,5A,5B…クリップ、50,50A…本体部、501…貫通孔、51…第1ガイド部、510…基部、511…ガイド面、512…スリット、513…舌部、513F…先端面、52…第2ガイド部、521…ガイド面、522…縁部、523…舌部、524…スリット、53…連結部、531A,531B…ブリッジ部、55A…第1固定部、551A…第1基部、552A…第1脚部、553A…第1爪部、55B…第2固定部、551B…第2基部、552B…第2脚部、553B…第2爪部、56…クリップ連結部、500…クリップ連結体、6…トレンチ、61…本体部、62…凹部、621…段差部、63…凸部。