(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035412
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】はんだ組成物および電子基板
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20240307BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20240307BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240307BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
B23K35/363 E
B23K35/363 C
C22C13/00
H05K3/34 512C
B23K35/26 310A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139849
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】下石 龍太朗
(72)【発明者】
【氏名】石垣 幸一
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA01
5E319BB05
5E319BB08
5E319CC22
5E319CD21
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】十分に微細なはんだ粉末を用いる場合でも、経時安定性が優れるはんだ組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、前記(C)成分は、(C1)示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、130℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物を含有し、前記(E)成分は、IPC-J-STD-005Aのタイプ5、タイプ6、タイプ7、およびタイプ8以上のうちのいずれかに相当する粒子径分布である、はんだ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、
前記(C)成分は、(C1)示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、130℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物を含有し、
前記(E)成分は、IPC-J-STD-005Aのタイプ5、タイプ6、タイプ7、およびタイプ8以上のうちのいずれかに相当する粒子径分布である、
はんだ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のはんだ組成物において、
前記(C1)成分は、(C11)DSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、210℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物と、(C12)DSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、140℃以上160℃以下の範囲にあるアミド化合物とを含有する、
はんだ組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のはんだ組成物において、
前記(B)成分は、(B1)有機酸および(B2)アミン系活性剤を含有し、
前記(B2)成分は、(B21)ベンゾトリアゾール類、および(B22)イミダゾリン類からなる群から選択される少なくとも1つである、
はんだ組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のはんだ組成物において、
前記(B1)成分が、(B11)炭素数5以上9以下のジカルボン酸を含有する、
はんだ組成物。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のはんだ組成物を用いたはんだ付け部を備える、
電子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ組成物および電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ組成物は、はんだ粉末にフラックス組成物(ロジン系樹脂、活性剤および溶剤など)を混練してペースト状にした混合物である(特許文献1参照)。このはんだ組成物では、印刷性およびはんだ付性などとともに、粘度安定性(経時安定性とも称する)が求められる。
このように、印刷性と加熱時のダレ性を両立させることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、はんだ粉末を微細化すると、はんだ粉末の表面積が増大し、酸化が促進される。そのため、はんだ溶融時の挙動が悪くなり、不ぬれやはんだボールを発生させてしまう。これらの改善のためには、フラックス組成物中の活性剤の一つである有機酸やハロゲン系活性剤を多く添加し、はんだ粉表面の酸化膜除去反応を促進させなければならない。しかしながら、フラックス組成物中の活性剤が増えるということは、活性剤とはんだ粉との反応によって起こる酸化膜除去反応が進行し、はんだ組成物の経時安定性が悪化し、増粘の原因となってしまう。このように、はんだ粉末の微細化と、経時安定性とを両立させることは困難である。
【0005】
本発明は、十分に微細なはんだ粉末を用いる場合でも、経時安定性が優れるはんだ組成物、並びに、これを用いた電子基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示すはんだ組成物および電子基板が提供される。
[1] (A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、
前記(C)成分は、(C1)示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、130℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物を含有し、
前記(E)成分は、IPC-J-STD-005Aのタイプ5、タイプ6、タイプ7、およびタイプ8以上のうちのいずれかに相当する粒子径分布である、
はんだ組成物。
[2] [1]に記載のはんだ組成物において、
前記(C1)成分は、(C11)DSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、210℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物と、(C12)DSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、140℃以上160℃以下の範囲にあるアミド化合物とを含有する、
はんだ組成物。
[3] [1]または[2]に記載のはんだ組成物において、
前記(B)成分は、(B1)有機酸および(B2)アミン系活性剤を含有し、
前記(B2)成分は、(B21)ベンゾトリアゾール類、および(B22)イミダゾリン類からなる群から選択される少なくとも1つである、
はんだ組成物。
[4] [3]に記載のはんだ組成物において、
前記(B1)成分が、(B11)炭素数5以上9以下のジカルボン酸を含有する、
はんだ組成物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載のはんだ組成物を用いたはんだ付け部を備える、
電子基板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分に微細なはんだ粉末を用いる場合でも、経時安定性が優れるはんだ組成物、並びに、これを用いた電子基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】調製例1で得られたアミド化合物のDSC曲線を示すグラフである。
【
図2】調製例2で得られたアミド化合物のDSC曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るはんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有するものである。(C)チクソ剤は、(C1)示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、130℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物を含有する。また、(E)はんだ粉末は、IPC-J-STD-005Aのタイプ5、タイプ6、タイプ7、およびタイプ8以上のうちのいずれかに相当する粒子径分布である。
【0010】
本実施形態によれば、(E)成分のような十分に微細なはんだ粉末を用いる場合でも、経時安定性が優れるはんだ組成物が得られる。この理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、(C1)示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、130℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物によれば、印刷性などを維持しつつ、加熱時のダレ性を向上でき、また、この(C1)成分が経時安定性に悪影響を与えることはない。
さらに、(D)成分により、Snイオン生成量が減少させることができ、(A)成分や(B)成分と(E)成分との反応を抑制できる。そのため、はんだ組成物の経時安定性を向上できる。なお、この効果は、(B)成分として、有機酸やアミン系活性剤などのように、経時安定性に悪影響を与えやすい活性剤で、特に有効であることが分かった。以上のようにして、上記本発明の効果が達成されるものと本発明者らは推察する。
【0011】
[フラックス組成物]
まず、本実施形態に用いるフラックス組成物について説明する。本実施形態に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物におけるはんだ粉末以外の成分であり、以下説明する(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するものである。
【0012】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。水素添加ロジンとしては、完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β-不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸など)の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう)などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。また、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さ量を十分に抑制できる。
【0014】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤(ハロゲン系活性剤)、およびアミン系活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの中でも、(B1)有機酸を含有することが好ましい。また、(B)成分は、(B2)アミン系活性剤をさらに含有することが好ましい。
(B1)成分としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、およびグリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、およびジグリコール酸などが挙げられる。これらの中でも、活性作用の観点から、炭素数5以上9以下のジカルボン酸が好ましい。
その他の有機酸としては、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ダイマー酸、トリマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、およびピコリン酸などが挙げられる。
【0015】
(B1)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上7.5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがさらにより好ましい。(B1)成分の配合量が前記下限以上であれば、活性作用を向上できる傾向にあり、他方、前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を維持できる傾向にある。
【0016】
(B2)成分としては、(B21)ベンゾトリアゾール類(ベンゾトリアゾール、および2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)など)、(B22)イミダゾリン類(2-フェニルイミダゾリン、および2-ベンジルイミダゾリンなど)、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミンなどのアミンやアミノアルコールなどの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。これらの中でも、活性作用の観点から、(B21)ベンゾトリアゾール類、または(B22)イミダゾリン類が好ましく、(B21)成分および(B22)成分を併用することが特に好ましい。
また、(B1)成分と(B2)成分とを併用することが好ましく、(B1)成分と、(B21)成分と、(B22)成分とを併用することが特に好ましい。
【0017】
(B2)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。(B2)成分の配合量が前記下限以上であれば、活性作用を向上できる傾向にあり、他方、前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を維持できる傾向にある。
(B21)成分および(B22)成分を併用する場合、(B21)成分と(B22)成分との質量比((B21)成分/(B22)成分)は、1/20以上1/5以下であることが好ましく、1/15以上1/8以下であることがより好ましい。
【0018】
(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上7質量%以下であることが特に好ましい。(B)成分の配合量が前記下限以上であれば、活性作用を向上できる傾向にあり、他方、前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を維持できる傾向にある。
【0019】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)チクソ剤は、(C1)示差走査熱量測定(DSC)によるDSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、130℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物を含有することが必要である。このような(C1)成分であれば、印刷性を維持しつつ、加熱時のダレ性を向上でき、また、この(C1)成分が経時安定性に悪影響を与えることはない。ここで、DSC曲線は、適宜公知の示差走査熱量計を用いて測定でき、例えば、セイコーインスツル社製の示差走査熱量計「DSC6200」を用いて測定できる。
【0020】
DSC曲線が、複数の吸熱ピークを有さない場合、印刷性と加熱時のダレ性との両立はできない。
DSC曲線は、同様の観点から、3つ以上の吸熱ピークを有することが好ましく、印刷時のダレ性と加熱時のダレ性とのバランスの観点から、3つの吸熱ピークを有することが特に好ましい。
吸熱ピークの少なくとも1つが、130℃以上220℃以下の範囲にない場合には、加熱時のダレを抑制できない。
【0021】
(C1)成分は、同様の観点から、(C11)DSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、210℃以上220℃以下の範囲にあるアミド化合物と、(C12)DSC曲線が、複数の吸熱ピークを有し、かつ、前記吸熱ピークの少なくとも1つが、140℃以上160℃以下の範囲にあるアミド化合物とを含有することが好ましい。
(C11)成分および(C12)成分を併用する場合、(C11)成分と(C12)成分との質量比((C11)成分/(C12)成分)は、1/10以上10以下であることが好ましく、1/2以上2以下であることがより好ましい。
【0022】
(C11)成分において、吸熱ピークのうち、最も低い温度にある吸熱ピークは、印刷時のダレをより確実に抑制するという観点から、120℃以上150℃以下の範囲にあることが好ましく、125℃以上140℃以下の範囲にあることがより好ましく、125℃以上135℃以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0023】
(C11)成分において、DSC曲線が、複数の吸熱ピークを3つ有する場合、低温側から2つ目の吸熱ピークは、150℃以上190℃以下の範囲にあることが好ましい。このような吸熱ピークを有することにより、印刷時のダレ性と加熱時のダレ性とのバランスをとることができる。また、同様の観点から、低温側から2つ目の吸熱ピークは、160℃以上180℃以下の範囲にあることが好ましく、165℃以上175℃以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0024】
(C11)成分において、印刷性を維持しつつ、加熱時のダレ性を向上するという観点で特に好適なDSC曲線は、次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、DSC曲線が、3つの吸熱ピークを有し、かつ、低温側から1つ目の吸熱ピークは、125℃以上135℃以下の範囲にあり、低温側から2つ目の吸熱ピークは、165℃以上175℃以下の範囲にあり、低温側から3つ目の吸熱ピークは、210℃以上220℃以下の範囲にあることが好ましい。
【0025】
この(C1)成分は、例えば、ヒドロキシ脂肪族モノカルボン酸を含んでもよい炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸、炭素数2から12の脂肪族ジカルボン酸、および、炭素数2から16のジアミンを縮合させることで作製できる。
炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸の中でも、炭素数の少ないものを用いるほど、(C1)成分のDSC曲線における吸熱ピークの温度が低くなる傾向にある。
炭素数2から12の脂肪族ジカルボン酸の中でも、炭素数の少ないものを用いるほど、(C1)成分のDSC曲線における吸熱ピークの温度が低くなる傾向にある。
炭素数2から16のジアミンの中でも、炭素数の少ないものを用いるほど、(C1)成分のDSC曲線における吸熱ピークの温度が低くなる傾向にある。
【0026】
炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸に対する炭素数2から12の脂肪族ジカルボン酸の配合量が多いほど、(C1)成分のDSC曲線における最も低い温度にある吸熱ピークの温度範囲が高くなる傾向にある。
炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸と、炭素数2から12の脂肪族ジカルボン酸の合計のカルボキシル基の量と、炭素数2から16のジアミンのアミノ基の量は、等しいことが好ましい。これらの量が等しいときには、縮合反応が進行しやすい。
【0027】
縮合反応時の温度は、100℃以上250℃以下であることが好ましく、120℃以上210℃以下であることがより好ましく、150℃以上190℃以下であることが特に好ましい。この温度が高いほど、(C1)成分のDSC曲線における最も低い温度にある吸熱ピークの温度範囲が高くなる傾向にある。
縮合反応にかける時間は、1時間以上15時間以下であることが好ましく、3時間以上11時間以下であることがより好ましく、5時間以上8時間以下であることが特に好ましい。この時間が長いほど、(C1)成分のDSC曲線における最も低い温度にある吸熱ピークの温度範囲が高くなる傾向にある。
すなわち、(C1)成分のDSC曲線における吸熱ピークの数、最も高い温度にある吸熱ピークの温度範囲、並びに、最も低い温度にある吸熱ピークの温度範囲は、(i)(C1)成分の原料の種類および配合量を調整すること、(ii)縮合反応時の温度を調整すること、並びに、(iii)縮合反応にかける時間を調整することなどにより、適宜調整することができる。
【0028】
(C1)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上16質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。(C1)成分の配合量が前記下限以上であれば、印刷時のダレおよび加熱時のダレを抑制できる。(C1)成分の配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎることはなく、印刷不良を抑制できる。
【0029】
(C)成分は、(C1)成分以外のチクソ剤(以下、(C2)成分)を含有していてもよい。(C2)成分としては、硬化ひまし油、(C1)成分以外のアミド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、およびガラスフリットなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ただし、経時安定性に悪影響を与えないという観点から、(C)成分は、(C1)成分のみからなることが特に好ましい。また、同様の観点から、(C1)成分の配合量は、(C)成分100質量%に対して、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0030】
(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上16質量%以下であることがさらに好ましく、6質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。(C)成分の配合量が前記下限以上であれば、チクソ性が得られ、印刷時のダレを抑制できる。(C)成分の配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎることはなく、印刷不良を抑制できる。
【0031】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール化合物であり、酸化防止剤として作用するものである。この(D)成分より、はんだ組成物の経時安定性を向上できる。なお、ヒンダードフェノール系以外の酸化防止剤では、はんだ組成物の経時安定性を向上できない。
(D)成分としては、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、N,N’-ビス[2-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ]エチル]オキサミド、N,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、および、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0032】
(D)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上9質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以上6質量%以下であることが特に好ましい。(D)成分の配合量が前記下限以上であれば、十分な経時安定性を確保できる。(C)成分の配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎることはなく、印刷不良を抑制できる。
【0033】
[溶剤]
本実施形態のフラックス組成物においては、印刷性などの観点から、さらに溶剤を含有することが好ましい。ここで用いる溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。このような溶剤としては、沸点170℃以上の溶剤を用いることが好ましい。また、グリコール系溶剤が好ましい。
このような溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5-ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2-エチルヘキシルジグリコール(EHDG)、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびジブチルマレイン酸などが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
溶剤を用いる場合、その配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。溶剤の配合量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。
【0035】
[他の成分]
本実施形態に用いるフラックス組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、および溶剤の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、消泡剤、改質剤、つや消し剤、および発泡剤などが挙げられる。これらの添加剤の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0036】
[はんだ組成物]
次に、本実施形態に係るはんだ組成物について説明する。本実施形態に係るはんだ組成物は、前述の本実施形態に用いるフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。フラックス組成物の配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックス組成物の配合量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0037】
[(E)成分]
本実施形態に用いる(E)はんだ粉末は、IPC-J-STD-005Aのタイプ5、タイプ6、タイプ7、およびタイプ8以上のうちのいずれかに相当する粒子径分布であるはんだ粉末である。この(E)成分を用いる場合には、安定性が低下する傾向にあるが、前述のフラックス組成物を用いることで、経時安定性が優れるはんだ組成物が得られる。
はんだ粉末は、鉛フリーはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。また、このはんだ粉末におけるはんだ合金は、スズ(Sn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズを主成分とする合金が好ましい。また、このはんだ合金は、スズ、銀および銅を含有することがより好ましい。さらに、このはんだ合金は、添加元素として、アンチモン、ビスマスおよびニッケルのうちの少なくとも1つを含有してもよい。本実施形態のフラックス組成物によれば、アンチモン、ビスマスおよびニッケルなどの酸化しやすい添加元素を含むはんだ合金を用いた場合でも、ボイドの発生を抑制できる。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、300質量ppm以下であることが好ましい。
【0038】
鉛フリーのはんだ粉末の合金系としては、具体的には、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Sn-Ag系、Sn-Bi系、Sn-Ag-Bi系、Sn-Ag-Cu-Bi系、Sn-Ag-Cu-Ni系、Sn-Ag-Cu-Bi-Sb系、Sn-Ag-Bi-In系、Sn-Ag-Cu-Bi-In-Sb系などが挙げられる。
【0039】
(E)成分の平均粒子径は、はんだ付けパッドのピッチが狭い電子基板にも対応するという観点から、1μm以上20μm以下であることがより好ましく、2μm以上15μm以下であることがさらにより好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0040】
[はんだ組成物の製造方法]
本実施形態に係るはんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【0041】
[電子基板]
次に、本実施形態に係る電子基板について説明する。本実施形態に係る電子基板は、以上説明したはんだ組成物を用いたはんだ付け部を備えることを特徴とするものである。本発明の電子基板は、前記はんだ組成物を用いて電子部品を電子基板(プリント配線基板など)に実装することで製造できる。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、およびジェットディスペンサーなどが挙げられる。
また、前記塗布装置にて塗布したはんだ組成物上に電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品をプリント配線基板に実装するリフロー工程により、電子部品を電子基板に実装できる。
【0042】
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品およびプリント配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、前記電子部品を前記プリント配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、プリヒート温度は、140℃以上200℃以下であることが好ましく、150℃以上160℃以下であることがより好ましい。プリヒート時間は、60秒間以上120秒間以下であることが好ましい。ピーク温度は、230℃以上270℃以下であることが好ましく、240℃以上255℃以下であることがより好ましい。また、220℃以上の温度の保持時間は、20秒間以上60秒間以下であることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態のはんだ組成物および電子基板は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記電子基板では、リフロー工程により、プリント配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、プリント配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、およびInGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、並びに、気体レーザー(He-Ne、Ar、CO2、およびエキシマーなど)が挙げられる。
【実施例0044】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(軟化点:124~134℃、酸価:230~245mgKOH/g)、商品名「パインクリスタルKE-604」、荒川化学工業社製
ロジン系樹脂B:完全水添ロジン(軟化点:79~88℃、酸価:158~173mgKOH/g)、商品名「フォーラルAX」、理化ファインテク社製
((B1)成分)
有機酸A:グルタル酸
有機酸B:スベリン酸
有機酸C:アゼライン酸
((B21)成分)
ベンゾトリアゾール類:ベンゾトリアゾール
((B22)成分)
イミダゾリン類:2-フェニルイミダゾリン
((C11)成分)
アミド化合物A:下記調製例1で得られたアミド化合物(ヒドロキシ基を有する、DSC曲線において、低温側から1つ目の吸熱ピーク温度が128℃であり、2つ目の吸熱ピーク温度が170℃であり、3つ目の吸熱ピーク温度が216℃である)
((C12)成分)
アミド化合物B:下記調製例2で得られたアミド化合物(ヒドロキシ基を有さない、DSC曲線における低温側から1つ目の吸熱ピーク温度が86℃であり、2つ目の吸熱ピーク温度が123℃であり、3つ目の吸熱ピーク温度が147℃である)
((D)成分)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤A:ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、商品名「イルガノックス245」、BASF社製
ヒンダードフェノール系酸化防止剤B:N,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン、商品名「イルガノックスMD1024」、BASF社製
ヒンダードフェノール系酸化防止剤C:ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、商品名「ANOX20」、白石カルシウム社製
ヒンダードフェノール系酸化防止剤D:N,N’-ビス[2-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ]エチル]オキサミド、商品名「ナウガードXL-1」、白石カルシウム社製
(他の成分)
溶剤:ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(2-エチルヘキシルジグリコール(EHDG)、沸点:272℃)、日本乳化剤社製
((E)成分)
はんだ粉末A:合金組成はSn-3.0Ag-0.5Cu、粒子径分布は15~25μm(IPC-J-STD-005Aのタイプ5に相当)、はんだ融点は217~220℃
はんだ粉末B:合金組成はSn-3.0Ag-0.5Cu、粒子径分布は5~20μm(IPC-J-STD-005Aのタイプ6に相当)、はんだ融点は217~220℃
(他の成分)
はんだ粉末C:合金組成はSn-3.0Ag-0.5Cu、粒子径分布は20~38μm(IPC-J-STD-005Aのタイプ4に相当)、はんだ融点は217~220℃
【0045】
[調製例1]
攪拌器、温度計、および分水器を備えた反応装置に、水素添加ひまし油脂肪酸由来の12-ヒドロキシステアリン酸、および炭素数2から12の脂肪族ジカルボン酸を、それぞれ所定量ずつ加え、80~100℃に加温して溶融させた。その後、所定量のヘキサメチレンジアミンを加え、温度150℃~190℃で、窒素雰囲気下にて、5~8時間、脱水しながら縮合反応を行いアミド化させ、酸価5mgKOH/g以下のアミド化合物Aを得た。
【0046】
[調製例2]
使用する脂肪族モノカルボン酸の種類および配合量、並びに、使用する炭素数2から12の脂肪族ジカルボン酸の種類および配合量を変更するとともに、縮合反応時の温度および時間を変更した以外は、調製例1と同様にして、酸価5mgKOH/g以下のアミド化合物Bを得た。
【0047】
[アミド化合物の示差走査熱量測定(DSC)]
調製例1および2で得られたアミド化合物のDSC曲線を、示差走査熱量計により、測定した。なお、測定時の条件については下記のとおりである。得られた結果を
図1および
図2にそれぞれに示す。
・示差走査熱量計:DSC6200(セイコーインスツル社製)
・試料:10mg・測定雰囲気:窒素雰囲気・測定温度:30℃から250℃・昇温速度:20℃/min
【0048】
[実施例1]
ロジン系樹脂A35質量%、ロジン系樹脂B10質量%、有機酸A2.4質量%、溶剤39.6質量%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤A3質量%、アミド化合物A4質量%、およびアミド化合物B6質量%を容器に投入し、プラネタリーミキサーを用いて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物11質量%、およびはんだ粉末89質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、プラネタリーミキサーにて混合することではんだ組成物を調製した。
【0049】
[実施例2~12]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
[比較例1~5]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
【0050】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(保存時の粘度変化、使用時の粘度変化)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)保存時の粘度変化
まず、はんだ組成物を試料として、粘度を測定する。その後、試料を密封容器に入れ、温度30℃の恒温槽に投入し、30日間保管し、保管した試料の粘度を測定する。そして、初期の粘度値(η1)に対する、温度30℃にて30日間保管後の粘度値(η2)との差(η2-η1)を求め、増粘率[{(η2-η1)/η1}×100](単位:%)を算出する。なお、粘度測定は、スパイラル方式の粘度測定(マルコム社製、PCU-II型、測定温度:25℃、回転速度:10rpm)によりを行う。
(2)使用時の粘度変化
まず、はんだ組成物を試料として、粘度を測定する。その後、試料を、粘度計にセットして、回転数を10rpm、温度を25℃にして、24時間ローターを回転させ、この試料の粘度を測定する。そして、初期の粘度値(η1)に対する、24時間経過後の粘度値(η3)との差(η3-η1)を求め、増粘率[{(η3-η1)/η1}×100](単位:%)を算出する。なお、粘度測定は、スパイラル方式の粘度測定(マルコム社製、PCU-II型、測定温度:25℃、回転速度:10rpm)によりを行う。また、粘度値(η3)を測定できなかった場合には、「不能」とした。
【0051】
【0052】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例1~12)は、保存時の粘度変化、および使用時の粘度変化の全ての結果が良好であることが確認された。
従って、本発明のはんだ組成物によれば、十分に微細なはんだ粉末を用いる場合でも、経時安定性が優れることが確認された。