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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035423
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/359 20140101AFI20240307BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20240307BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20240307BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20240307BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01N21/359
A61B5/1455
A61B5/026 120
G01N21/49 Z
G01N21/85 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139865
(22)【出願日】2022-09-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 発行日(公開日) 令和4年6月24日 刊行物 第61回日本生体医工学会大会 抄録・予稿集 *参加者専用アドレスより公開(参加者のみ閲覧可) (2) 開催日(公開日) 令和4年6月28日 集会名、開催場所 第61回日本生体医工学会大会 朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)(新潟県新潟市中央区万代島6-1) <資 料> 第61回日本生体医工学会大会 開催概要/抄録・予稿集公開告知 <資 料> 第61回日本生体医工学会大会 プログラム <資 料> 第61回日本生体医工学会大会 口頭研究発表資料 (3) 発行日(公開日) 令和4年6月24日 刊行物 第61回日本生体医工学会大会 抄録・予稿集 *参加者専用アドレスより公開(参加者のみ閲覧可) (4) 開催日(公開日) 令和4年6月28日 集会名、開催場所 第61回日本生体医工学会大会 朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)(新潟県新潟市中央区万代島6-1) <資 料> 第61回日本生体医工学会大会 ポスター研究発表資料
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】小野 弓絵
(72)【発明者】
【氏名】中林 実輝絵
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
2G051AA48
2G051AB20
2G051BA01
2G051BA06
2G051BC01
2G051CA07
2G051CB02
2G051CB05
2G059AA01
2G059AA03
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059GG01
2G059GG03
2G059HH01
2G059KK03
2G059MM01
4C017AA11
4C017AA12
4C017AA20
4C017AB01
4C017AC26
4C017BC11
4C017FF02
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX02
4C038KY02
(57)【要約】
【課題】近赤外分光法によって酸素飽和度と拡散相関分光法によって血流量とを計測できる計測装置、計測方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】計測装置は、第1光源が発生する第1光と第2光源が発生する第2光とが切り替えて入力され、第1光と第2光とを生体に照射する送光プローブと、送光プローブから離間して設置され生体に照射された第1光に対して生体からの第1受光第1光を受光し、生体に照射された第2光に対して生体からの第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、送光プローブ及び第1受光プローブから離間して設置され、生体に照射された第1光に対して生体からの第2受光第1光を受光し、生体に照射された第2光に対して生体からの第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、第1受光第1光、第1受光第2光、第2受光第1光及び第1受光第2光の各々に基づいて光量を検出する第2検出部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長を有する第1光を発生する第1光源と、
第1波長とは異なる第2波長を有する第2光を発生する第2光源と、
前記第1光源が発生する前記第1光と前記第2光源が発生する前記第2光とが切り替えて入力され、前記第1光と前記第2光とを生体に照射する送光プローブと、
前記送光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、
前記送光プローブ及び前記第1受光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、
前記第1受光プローブが受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する第1検出部と、
前記第2受光プローブが受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する第2検出部と
を備える、計測装置。
【請求項2】
前記第1検出部が検出した前記第1受光第1光量及び前記第1受光第2光量と、前記第2検出部が検出した前記第2受光第1光量及び前記第2受光第2光量とに基づいて酸素飽和度と血流速度とを導出し、導出した前記酸素飽和度と前記血流速度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する導出部
をさらに備える、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記導出部は、前記第1受光第1光量及び前記第2受光第1光量の時間変化からそれぞれ第1受光第1光自己相関関数及び第2受光第1光自己相関関数を導出し、導出した前記第1受光第1光自己相関関数及び前記第2受光第1光自己相関関数に基づいてそれぞれ第1受光第1光血流速度及び第2受光第1光血流速度を導出し、前記第1受光第2光量及び前記第2受光第2光量の時間変化からそれぞれ第1受光第2光自己相関関数及び第2受光第2光自己相関関数を導出し、導出した前記第1受光第2光自己相関関数及び前記第2受光第2光自己相関関数に基づいてそれぞれ第1受光第2光血流速度及び第2受光第2光血流速度を導出する、請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記導出部は、拡散相関方程式において、前記第1波長を使用して前記第1受光第1光血流速度及び前記第2受光第1光血流速度を導出し、前記第2波長を使用して前記第1受光第2光血流速度及び前記第2受光第2光血流速度を導出する、請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記導出部は、前記第1受光第1光量、前記第2受光第1光量、前記第1受光第2光量及び前記第2受光第2光量に基づいて前記第1波長及び前記第2波長での相対吸収係数を導出し、導出した相対吸収係数に基づいて酸素飽和度を導出する、請求項2に記載の計測装置。
【請求項6】
前記導出部は、前記送光プローブと前記第1受光プローブとの間の距離と、前記送光プローブと前記第2受光プローブとの間の距離に基づいて前記酸素飽和度を導出する、請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記導出部は、前記酸素飽和度に基づいて組織酸素飽和度を導出し、前記血流速度と前記組織酸素飽和度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する、請求項2に記載の計測装置。
【請求項8】
前記生体が筋収縮または筋弛緩した場合に発生する信号を検出する信号検出部
を更に備え、
前記第1検出部は、前記信号検出部が検出した前記信号に基づいて前記第1受光第1光量と前記第1受光第2光量とを検出し、
前記第2検出部は、前記信号検出部が検出した前記信号に基づいて前記第2受光第1光量と前記第2受光第2光量とを検出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項9】
前記送光プローブに前記第1光源が発生する前記第1光と前記第2光源が発生する前記第2光とを切り替えて入力する制御部
を更に備える、請求項1に記載の計測装置。
【請求項10】
第1波長を有する第1光を発生する第1光源と、第1波長とは異なる第2波長を有する第2光を発生する第2光源と、前記第1光源が発生する前記第1光と前記第2光源が発生する前記第2光とが切り替えて入力され、前記第1光と前記第2光とを生体に照射する送光プローブと、前記送光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、前記送光プローブ及び前記第1受光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、前記第1受光プローブが受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する第1検出部と、前記第2受光プローブが受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する第2検出部とを備える、計測装置が実行する計測方法であって、
前記第1検出部が検出した前記第1受光第1光量及び前記第1受光第2光量と、前記第2検出部が検出した前記第2受光第1光量及び前記第2受光第2光量とに基づいて酸素飽和度と血流速度とを導出し、
導出した前記酸素飽和度と前記血流速度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する、計測方法。
【請求項11】
第1波長を有する第1光を発生する第1光源と、第1波長とは異なる第2波長を有する第2光を発生する第2光源と、前記第1光源が発生する前記第1光と前記第2光源が発生する前記第2光とが切り替えて入力され、前記第1光と前記第2光とを生体に照射する送光プローブと、
前記送光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、
前記送光プローブ及び前記第1受光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、
前記第1受光プローブが受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する第1検出部と、
前記第2受光プローブが受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する第2検出部と
を備える、計測装置のコンピュータに、
前記第1検出部が検出した前記第1受光第1光量及び前記第1受光第2光量と、前記第2検出部が検出した前記第2受光第1光量及び前記第2受光第2光量とに基づいて酸素飽和度と血流速度とを導出させ、
導出させた前記酸素飽和度と前記血流速度とに基づいて組織酸素代謝率を導出させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体の非侵襲的な光計測技術として、近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy: NIRS)と、拡散相関分光法(diffuse correlation spectroscopy: DCS)とが知られている。
近赤外分光法は、近赤外線の吸収される程度がヘモグロビンの酸素化状態によって変化することを利用して、酸素飽和度の測定に用いられる。
拡散相関分光法は、赤血球の移動に伴う近赤外線の拡散現象を利用して、血流速度の測定に用いられる。
【0003】
近赤外分光法で計測される酸素飽和度と拡散相関分光法で計測される血流量とを同時に計測し、情報を組み合わせると、局所組織における酸素代謝率が分かる。
浅層組織の影響などを補正して人体や果物等の深層組織の光の吸収度合いを正確に測定可能な技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、光学的測定装置は、1つの発光ダイオードと2つのフォトダイオードを備えたプローブを有する。発光ダイオードからの光のうち組織の浅層及び深層を通過した光が一方のフォトダイオードで受光され、組織の浅層及び深層を通過した光であり一方のフォトダイオードでの検出光とは深層の通過距離の異なる光が他方のフォトダイオードで受光される。制御部が、各フォトダイオードで受光した光の光強度に基づいて光が伝搬する媒体中の伝搬定数を算出する。入力された組織の脂肪厚に対応する演算式を選択して、脂肪厚及び空間的傾きに基づき演算式により筋組織の光の吸収係数を求める。求めた光の吸収係数に基づいて、ヘモグロビン濃度や酸素飽和度を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5062698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の深部組織の血流量、酸素飽和度、酸素代謝率を測定する技術では、近赤外分光法による計測装置と拡散相関分光法による計測装置とを別々に用意する必要があるため、装置は巨大かつ高額になり、被験者が運動中に計測する動的計測には向いていなかった。
本発明は、前述した問題を解決すべくなされたもので、近赤外分光法で計測される酸素飽和度と拡散相関分光法で計測される血流量とを計測できる計測装置、計測方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、第1波長を有する第1光を発生する第1光源と、第1波長とは異なる第2波長を有する第2光を発生する第2光源と、前記第1光源101が発生する前記第1光と前記第2光源102が発生する前記第2光とが切り替えて入力され、前記第1光と前記第2光とを生体に照射する送光プローブと、前記送光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、前記送光プローブ及び前記第1受光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、前記第1受光プローブが受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する第1検出部と、前記第2受光プローブが受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する第2検出部とを備える、計測装置である。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記第1検出部が検出した前記第1受光第1光量及び前記第1受光第2光量と、前記第2検出部が検出した前記第2受光第1光量及び前記第2受光第2光量とに基づいて酸素飽和度と血流速度とを導出し、導出した前記酸素飽和度と前記血流速度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する導出部をさらに備える。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記導出部は、前記第1受光第1光量及び前記第2受光第1光量の時間変化からそれぞれ第1受光第1光自己相関関数及び第2受光第1光自己相関関数を導出し、導出した前記第1受光第1光自己相関関数及び前記第2受光第1光自己相関関数に基づいてそれぞれ第1受光第1光血流速度及び第2受光第1光血流速度を導出し、前記第1受光第2光量及び前記第2受光第2光量の時間変化からそれぞれ第1受光第2光自己相関関数及び第2受光第2光自己相関関数を導出し、導出した前記第1受光第2光自己相関関数及び前記第2受光第2光自己相関関数に基づいてそれぞれ第1受光第2光血流速度及び第2受光第2光血流速度を導出する。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記導出部は、拡散相関方程式において、前記第1波長を使用して前記第1受光第1光血流速度及び前記第2受光第1光血流速度を導出し、前記第2波長を使用して前記第1受光第2光血流速度及び前記第2受光第2光血流速度を導出する。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記導出部は、前記第1受光第1光量、前記第2受光第1光量、前記第1受光第2光量及び前記第2受光第2光量に基づいて前記第1波長及び前記第2波長での相対吸収係数を導出し、導出した相対吸収係数に基づいて酸素飽和度を導出する。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記導出部は、前記送光プローブと前記第1受光プローブとの間の距離と、前記送光プローブと前記第2受光プローブとの間の距離に基づいて前記酸素飽和度を導出する。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記導出部は、前記酸素飽和度に基づいて組織酸素飽和度を導出し、前記血流速度と前記組織酸素飽和度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記生体が筋収縮または筋弛緩した場合に発生する信号を検出する信号検出部を更に備え、前記第1検出部は、前記信号検出部が検出した前記信号に基づいて前記第1受光第1光量と前記第1受光第2光量とを検出し、前記第2検出部は、前記信号検出部が検出した前記信号に基づいて前記第2受光第1光量と前記第2受光第2光量とを検出する。
本発明の一実施形態は、前述の計測装置において、前記送光プローブに前記第1光源101が発生する前記第1光と前記第2光源102が発生する前記第2光とを切り替えて入力する制御部を更に備える。
【0007】
本発明の一実施形態は、第1波長を有する第1光を発生する第1光源と、第1波長とは異なる第2波長を有する第2光を発生する第2光源と、前記第1光源101が発生する前記第1光と前記第2光源102が発生する前記第2光とが切り替えて入力され、前記第1光と前記第2光とを生体に照射する送光プローブと、前記送光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、前記送光プローブ及び前記第1受光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、前記第1受光プローブが受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する第1検出部と、前記第2受光プローブが受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する第2検出部とを備える、計測装置が実行する計測方法であって、前記第1検出部が検出した前記第1受光第1光量及び前記第1受光第2光量と、前記第2検出部が検出した前記第2受光第1光量及び前記第2受光第2光量とに基づいて酸素飽和度と血流速度とを導出し、導出した前記酸素飽和度と前記血流速度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する、計測方法である。
【0008】
本発明の一実施形態は、第1波長を有する第1光を発生する第1光源と、第1波長とは異なる第2波長を有する第2光を発生する第2光源と、前記第1光源101が発生する前記第1光と前記第2光源102が発生する前記第2光とが切り替えて入力され、前記第1光と前記第2光とを生体に照射する送光プローブと、前記送光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、前記送光プローブ及び前記第1受光プローブから離間して設置され、前記生体に前記第1光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第1光を受光し、前記生体に前記第2光が照射された場合に前記生体からの光である第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、前記第1受光プローブが受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する第1検出部と、前記第2受光プローブが受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する第2検出部とを備える、計測装置のコンピュータに、前記第1検出部が検出した前記第1受光第1光量及び前記第1受光第2光量と、前記第2検出部が検出した前記第2受光第1光量及び前記第2受光第2光量とに基づいて酸素飽和度と血流速度とを導出させ、導出させた前記酸素飽和度と前記血流速度とに基づいて組織酸素代謝率を導出させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、近赤外分光法で計測される酸素飽和度と拡散相関分光法で計測される血流量とを計測できる計測装置、計測方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る計測装置100の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る計測装置100の動作の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る計測装置100の動作の一例を示すフロー図である。
図4】実施形態の変形例に係る計測装置100aの一例を示す図である。
図5A】実施形態の変形例に係る計測装置100aの動作の一例を説明するための図である。
図5B】実施形態の変形例に係る計測装置100aの動作の一例を説明するための図である。
図6】空間分解分光法を説明するための図である。
図7】波長と吸収係数との関係の一例を示す図である。
図8】実施形態の変形例に係る計測装置100aの動作の一例を示すフロー図である。
図9】実施形態の変形例に係る計測装置100aの解析タイミングの一例を示す図である。
図10】筋の収縮と弛緩とを説明するための図である。
図11】実施形態の変形例に係る計測装置100aの解析タイミングの一例を示す図である。
図12】実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の比較の一例を示す図である。
図13A】実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の一例を示す図である。
図13B】実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の一例を示す図である。
図13C】実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の一例を示す図である。
図13D】実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の一例を示す図である。
図14】実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態に係る計測装置、計測方法及びプログラムを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0012】
(実施形態)
(計測装置)
以下、本発明の実施形態に係る計測装置を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る計測装置100の一例を示す図である。
計測装置100は、第1光源101と、第2光源102と、送光プローブ103と、第1受光プローブ104と、第2受光プローブ105と、第1検出部106と、第2検出部107と、制御部108と、プローブホルダーPHとを備える。図1に示される例では、送光プローブ103、第1受光プローブ104及び第2受光プローブ105は前腕FAなどの生体表面(体表面)に取り付けられる。以下、体表面の一例として前腕FAを適用した場合について説明を続ける。送光プローブ103、第1受光プローブ104及び第2受光プローブ105は、プローブホルダーPHによって前腕FAに固定される。
【0013】
第1光源101は、第1光を発生する。第1光源101の一例は、近赤外光レーザーである。近赤外光レーザーは、波長800~2500nm、波数12500~4000cm^-1の領域の電磁波(コヒーレント光)を発生する。本実施形態では、第1光源101は、第1波長λの電磁波を発生する。第1波長λは、775nmから795nmである。
第2光源102は、第2光を発生する。第2光源102の一例は、近赤外光レーザーである。本実施形態では、第2光源102は、第2波長λの電磁波を発生する。第2波長λは、820nmから840nmである。
制御部108は、第1光源101と第2光源102とを、第1光源101がオンの時に第2光源102がオフになり、第2光源102がオンの時に第1光源101がオフになるよう切り替える。
【0014】
送光プローブ103は、第1光源101及び第2光源102と接続される。送光プローブ103は、第1光源101が発生する第1光と第2光源102が発生する第2光とが切り替えて入力され、第1光と第2光とを前腕FAに照射(入力)する。
第1受光プローブ104は、送光プローブ103から前腕FAに入力され、赤血球によって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光(以下「第1受光第1光」という)を受光する。第1受光プローブ104は、送光プローブ103から前腕FAに入力され、赤血球によって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光(以下「第1受光第2光」という)を受光する。第1受光プローブ104は、送光プローブ103から離間して前腕FAに取り付けられる。例えば、第1受光プローブ104は、送光プローブ103から2cmから4cm離間して前腕FAに取り付けられる。
【0015】
第2受光プローブ105は、送光プローブ103から前腕FAに入力され、赤血球によって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光(以下「第2受光第1光」という)を受光する。第2受光プローブ105は、送光プローブ103から前腕FAに入力され、赤血球によって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光「第2受光第2光」を受光する。第2受光プローブ105は、送光プローブ103及び第1受光プローブ104から離間して設置される。例えば、第1受光プローブ104は、送光プローブ103から1cmから2cm程度、第1受光プローブ104から1cmから2cm程度離間して前腕FAに取り付けられる。図1に示される例では、送光プローブ103、第1受光プローブ104及び第2受光プローブ105の前腕FA上の位置は、一直線に並ぶように取り付けられている。
【0016】
第1検出部106は、例えばフォトンカウンタによって構成され、第1受光プローブ104と接続される。第1検出部106は、第1受光プローブ104が受光した第1受光第1光に基づいて光量(以下「第1受光第1光量」という)を検出し、第1受光第2光に基づいて光量(以下「第1受光第2光量」という)を検出する。
第2検出部107は、例えばフォトンカウンタによって構成され、第2受光プローブ105と接続される。第2検出部107は、第2受光プローブ105が受光した第2受光第1光に基づいて光量(以下「第2受光第1光量」という)を検出し、第2受光第2光に基づいて光量(以下「第2受光第2光量」という)を検出する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る計測装置100の動作の一例を示す図である。図2には、送光プローブ103に入力される第1光源101が発生する第1光と第2光源102が発生する第2光とのオンオフの切り替えの一例が示される。第1光源101と第2光源102とが、短時間でオンオフが切り替えられる。第1光源101がオンの場合に第2光源102はオフにされ、第2光源102はオンの場合に第1光源101がオフにされる。例えば、第1光源101が495msの間オンにされ、その後オフにされる。第1光源101がオフにされてから5ms後に第2光源が495msの間オンにされ、その後オフにされる。第2光源102がオフにされてから5ms後に第1光源が495msの間オンにされ、その後オフにされる。以降は同様である。以降、照射時間が495msで、休止時間が5msである場合について説明するが、これは本実施形態の一例であって、照射時間と休止時間との各々の時間幅は適宜変更可能である。
【0018】
送光プローブ103は、第1光源101が発生した第1光又は第2光源102が発生した第2光を前腕FAに照射(入力)する。第1光又は第2光が照射される前腕FA上の位置は同じである。
送光プローブ103から前腕FAに入力された第1光は、表皮・真皮EDを伝搬し、皮下組織ST及び筋肉MUに到達する。皮下組織STに到達した第1光は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受ける。筋肉MUに到達した第1光は、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受ける。図2では、赤血球RBCで拡散される第1光の進路を矢印の向きで示す。図2では、第1光が赤血球RBCにあたる度に吸収されていくことを線が細くなることで表す。
【0019】
図2に示される例では、第1受光プローブ104は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光とのうち少なくとも一方を含む第1受光第1光を受光する。
第2受光プローブ105は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光とのうち少なくとも一方を含む第2受光第1光を受光する。
送光プローブ103から前腕FAに入力された第2光は、表皮・真皮EDを伝搬し、皮下組織ST及び筋肉MUに到達する。皮下組織STに到達した第2光は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受ける。筋肉MUに到達した第2光は、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受ける。図2では、赤血球RBCで拡散される第2光の進路を矢印の向きで示す。図2では、第2光が赤血球RBCにあたる度に吸収されていくことを線が細くなることで表す。
【0020】
図2に示される例では、第1受光プローブ104は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光とのうち少なくとも一方を含む第1受光第2光を受光する。
第2受光プローブ105は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光とのうち少なくとも一方を含む第2受光第2光を受光する。
【0021】
(計測装置の動作)
図3は、本実施形態に係る計測装置100の動作の一例を示す図である。
(ステップS1-1)
制御部108の制御によって第1光源101は、第1光を発生する。
(ステップS2-1)
第1光源101が発生した第1光は、送光プローブ103に入力される。
(ステップS3-1)
送光プローブ103は、第1光源101から入力された第1光を前腕FAに送光する。
(ステップS4-1)
第2受光プローブ105は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光とのうち少なくとも一方を含む第2受光第1光を受光する。
【0022】
(ステップS5-1)
第2受光プローブ105が受光した第2受光第1光は、第2検出部107に入力される。
(ステップS6-1)
第2検出部107は、第2受光プローブ105から入力された第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出する。
(ステップS7-1)
第1受光プローブ104は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光とのうち少なくとも一方を含む第1受光第1光を受光する。
(ステップS8-1)
第1受光プローブ104が受光した第1受光第1光は、第1検出部106に入力される。
(ステップS9-1)
第1検出部106は、第1受光プローブ104から入力された第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出する。
【0023】
(ステップS10-1)
制御部108の制御によって第2光源102は、第2光を発生する。
(ステップS11-1)
第2光源102が発生した第2光は、送光プローブ103に入力される。
(ステップS12-1)
送光プローブ103は、第2光源102から入力された第2光を前腕FAに送光する。
(ステップS13-1)
第2受光プローブ105は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光とのうち少なくとも一方を含む第2受光第2光受光する。
【0024】
(ステップS14-1)
第2受光プローブ105が受光した第2受光第2光は、第2検出部107に入力される。
(ステップS15-1)
第2検出部107は、第2受光プローブ105から入力された第2受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する。
(ステップS16-1)
第1受光プローブ104は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光とのうち少なくとも一方を含む第1受光第2光を受光する。
(ステップS17-1)
第1受光プローブ104が受光した第1受光第2光は、第1検出部106に入力される。
(ステップS18-1)
第1検出部106は、第1受光プローブ104から入力された第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する。
以降ステップS1-1に戻り、同様の処理が繰り返される。
【0025】
前述した実施形態では、一例として、第1光及び第2光が前腕FAに入力される場合について説明したがこの例に限られない。例えば、第1光及び第1光が太腿などの生体の任意の筋組織に入力されてもよい。
前述した実施形態では、一例として、計測装置100が、第1受光プローブ104と、第2受光プローブ105とを備える場合について説明したがこの例に限られない。例えば、計測装置100が、3個以上の受光プローブを備えるようにしてもよい。
本実施形態に係る計測装置100によれば、第1光源101が発生した第1光及び第2光源102が発生した第2光を切り替えながら送光プローブ103へ入力(照射)し、送光プローブ103は、第1光又は第2光を筋組織の同一位置(範囲)へ入力する。
第1受光プローブ104は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光との少なくとも一方を含む第1受光第1光を受光できる。
第1受光プローブ104は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光との少なくとも一方を含む第1受光第2光を受光できる。
第1検出部106は、第1受光プローブ104が受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出でき、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出できる。
【0026】
第2受光プローブ105は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第1光との少なくとも一方を含む第2受光第1光を受光できる。
第2受光プローブ105は、皮下組織STに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光と、筋肉MUに含まれる赤血球RBCによって吸収及び拡散の少なくとも一方の影響を受けた第2光との少なくとも一方を含む第2受光第2光を受光できる。
第2検出部107は、第2受光プローブ105が受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出でき、第2受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出できる。
【0027】
このように構成することによって、第1光源101からの第1光及び第2光源102からの第2光を筋組織に入力するための送光プローブ103を共用できるため、第1光源101からの第1光を筋組織に入力するための送光プローブ及び第2光源102からの第2光を筋組織に入力するための送光プローブを別々の設けた場合と比較して、小型化できるとともに低価格化が可能になる。さらに、被験者の筋組織の同一範囲に第1光及び第2光を入力できる。このため、被験者の筋組織の同一範囲に第1光及び第2光を入力した場合の第1光量及び第2光量を検出できる。
【0028】
(実施形態の変形例)
図4は、実施形態の変形例に係る計測装置の一例を示す図である。実施形態の変形例に係る計測装置100aは、計測装置100に血流速度と、酸素飽和度と、組織酸素代謝率とを導出する機能を備えたものである。
計測装置100aは、第1光源101と、第2光源102と、送光プローブ103と、第1受光プローブ104と、第2受光プローブ105と、第1検出部106と、第2検出部107と、制御部108と、プローブホルダーPHと、情報処理装置110とを備える。情報処理装置110は、血流速度と、相対濃度・酸素飽和度と、組織酸素代謝率とを導出する
【0029】
情報処理装置110は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。情報処理装置110は、データ収集部112と、導出部114と、出力部116と、信号検出部117、記憶部118とを備える。
データ収集部112は、データを収集する。一例として、データ収集部112は、第1検出部106によって検出された第1受光第1光量を示す情報及び第1受光第2光量を示す情報と、第2検出部107によって検出された第2受光第1光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報とを収集する。
他の例として、データ収集部112は、キーボード及びマウスなどの操作部を有してもよい。この場合、データ収集部112は、ユーザによって当該操作部に対して行われる操作に応じた情報を入力する。他の例として、データ収集部112は、外部の装置から情報を入力してもよい。当該外部の装置は、例えば、可搬な記憶媒体であってもよい。この場合、データ収集部112には、第1受光第1光量を示す情報及び第1受光第2光量を示す情報と、第2受光第1光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報とを示す情報とが入力される。
【0030】
導出部114は、データ収集部112から第1受光第1光量を示す情報及び第2受光第1光量を示す情報を取得する。導出部114は、取得した第1受光第1光量を示す情報及び第2受光第1光量を示す情報の各々に基づいて血流速度を導出する。
例えば、導出部114は、拡散相関分光法によって血流速度を導出する。拡散相関分光法は、近赤外光の散乱を利用して組織末梢血流動態を計測する方法である。つまり、拡散相関分光法では、赤血球の移動に伴う近赤外線の拡散現象を利用して、血流速度を導出する。拡散相関分光法は、プローブ間距離の変更により皮膚から深部まで計測深度を調節可能、非侵襲性、測定が容易、体動の制限が少ない、時間分解能が高い、任意の組織末梢血流の計測が可能などの特徴がある。
例えば、導出部114は、第1受光第1光量の時間変化から自己相関関数(以下「第1受光第1光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第1受光第1光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第1受光第1光血流速度」という)を導出する。
導出部114は、第2受光第1光量の時間変化から自己相関関数(以下「第2受光第1光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第2受光第1光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第2受光第1光血流速度」という)を導出する。
【0031】
また、導出部114は、データ収集部112から第1受光第2光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報を取得する。導出部114は、取得した第1受光第2光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報の各々に基づいて血流速度を導出する。例えば、導出部114は、拡散相関分光法によって血流速度を導出する。
例えば、導出部114は、第1受光第2光量の時間変化から自己相関関数(以下「第1受光第2光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第1受光第2光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第2受光第2光血流速度」という)を導出する。
導出部114は、第2受光第2光量の時間変化から自己相関関数(以下「第2受光第2光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第2受光第2光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第2受光第2光血流速度」という)を導出する。
具体的には、導出部114は、光量を示す情報(第1受光第1光量を示す情報、第2受光第1光量を示す情報、第1受光第2光量を示す情報、第2受光第2光量を示す情報)から、光強度I(t)を導出する。導出部114は、導出した光強度I(t)から自己相関関数g(τ)を求め、求めた自己相関関数g(τ)の傾きから血流速度を導出する。
【0032】
また、導出部114は、第1受光第1光量の時間変化から光強度I(t)を導出し、導出した光強度I(t)から自己相関関数(以下「第1受光第1光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第1受光第1光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第1受光第1光血流速度」という)を導出する。
導出部114は、第2受光第1光量の時間変化から光強度I(t)を導出し、導出した光強度I(t)から自己相関関数(以下「第2受光第1光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第2受光第1光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第2受光第1光血流速度」という)を導出する。
【0033】
導出部114は、第1受光第2光量の時間変化から光強度I(t)を導出し、導出した光強度I(t)から自己相関関数(以下「第1受光第2光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第1受光第2光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第1受光第2光血流速度」という)を導出する。
導出部114は、第2受光第2光量の時間変化から光強度I(t)を導出し、導出した光強度I(t)から自己相関関数(以下「第2受光第2光自己相関関数」という)を導出する。導出部114は、導出した第2受光第2光自己相関関数に基づいて血流速度(以下「第2受光第2光血流速度」という)を導出する。
【0034】
図5A図5Bは、実施形態の変形例に係る計測装置の動作の一例を説明するための図である。ここでは、一例として光量を示す情報から光強度I(t)が導出された後について説明する。流速がゼロの場合、光子数は変化しないため、光強度I(t)も変化しない。このため、自己相関関数g(τ)は高い値で一定となる。
図5Aは、流速が遅い場合を示す。この場合、光子数の変化が小さいため、光強度I(t)も変化が小さい。このため、自己相関関数g(τ)の傾きは滑らかになり、血流速度は遅くなる。
図5Bは、流速が速い場合を示す。この場合、光子数の変化が大きいため、光強度I(t)も変化が大きい。このため、自己相関関数g(τ)の傾きは急になり、血流速度は速くなる。
【0035】
また、導出部114が導出する自己相関関数をG(τ)とすると、自己相関関数G(τ)は、式(1)のように表される。
【数1】
一方、拡散方程式は、式(2)のように表される。
【数2】
式(2)から式(3)が導かれる。
【数3】
【0036】
式(3)に含まれるkは式(4)のように表される。
【数4】
式(1)と式(3)との誤差が最小となる場合の式(4)に含まれるαDが求める血流量である。
式(1)から式(4)において、μ´は減衰散乱係数であり、μaは吸収係数であり、r、rはプローブ間距離である。また、kは波長の逆数であり、αは光子の散乱の割合を示す係数であり、Dは(ブラウン)拡散係数である。
【0037】
導出部114は、データ収集部112から第1受光第1光量を示す情報及び第2受光第1光量を示す情報を取得した場合には、第1光の波長λを式(4)に入力し、αDを導出することによって、それぞれ第1受光第1光血流速度及び第2受光第1光血流速度を導出する。
導出部114は、データ収集部112から第1受光第2光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報を取得した場合には、第2光の波長λを式(4)に入力し、αDを導出することによって、それぞれ第1受光第2光血流速度及び第2受光第2光血流速度を導出する。
【0038】
また、導出部114は、近赤外分光法によって組織酸素動態(ヘモグロビン濃度)を計測する。近赤外分光法は、近赤外の吸収を利用して、組織酸素動態を計測する方法である。実施形態の変形例では、組織酸素動態の一例として、相対濃度・酸素飽和度を適用した場合について説明を続ける。
導出部114は、取得した第1受光第1光量を示す情報、第1受光第2光量を示す情報、第2受光第1光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報に基づいて相対濃度・酸素飽和度を導出する。
ここで、近赤外光の吸収を利用した組織酸素動態の計測手法について説明する。組織酸素動態の計測手法には、MBL(Modified Beer-Lambert)法と、時間分解分光法(Time resolved spectroscopy: TRS)法と、空間分解分光法(Spatial resolved spectroscopy: SRS)とが知られている。
【0039】
MBL法は、光源は連続光を使用し、検出光強度から濃度変化を算出する方法である。MBL法は、定量化のために光路長の情報が必要である。
時間分解分光法は、光源は1ns以下の短パルス光を使用し、受光点での時間的広がりから濃度絶対値・酸素飽和度を算出する方法である。
空間分解分光法は、光源は連続光を使用し、2つの受光点での検出光量の差から相対濃度・酸素飽和度を算出する方法である。
図6は、空間分解分光法を説明するための図である。送光プローブ103と第1受光プローブ104との間のプローブ間距離をρ1とし、送光プローブ103と第2受光プローブ105との間のプローブ間距離をρ2とする。空間分解分光法では、第1受光プローブ104における検出光量と第2受光プローブ105における検出光量との差から相対濃度・酸素飽和度を算出する。
実施形態の変形例では、一例として、空間分解分光法によって、相対濃度・酸素飽和度を算出する場合について説明を続ける。この場合、導出部114は、第1受光第1光量、第2受光第1光量、第1受光第2光量及び前記第2受光第2光量に基づいて第1波長及び第2波長での相対吸収係数を導出し、導出した相対吸収係数に基づいて酸素飽和度を導出する。
【0040】
検出光強度A(ρ)は、式(5)のように表される。
【数5】
検出光子量R(ρ、t)は、式(6)のように表される。
【数6】
ここで、
【数7】
である。左側の式は散乱係数を示し、右側の式は減衰散乱係数と吸収係数をかけたものが右辺のように近似できることを示したものである。
【0041】
相対吸収係数は、式(7)のように表される。
【数8】
相対吸収係数は、式(8)のように表される。
【数9】
ここで、
【数10】
である。
【0042】
図7は、波長と吸収係数との関係の一例を示す図である。図7において、横軸は波長[nm]であり、縦軸は吸収係数[cm-1mM-1]である。図7は、ヘモグロビン(Hb)と酸化ヘモグロビン(HbO)とについて波長と吸収係数との関係を示す。
図7によれば、波長が800nmの近傍でヘモグロビン(Hb)の吸収係数と酸化ヘモグロビン(HbO)の吸収係数とは等しいことが分かる。また、波長が約800nmよりも短波長側でヘモグロビン(Hb)の吸収係数の方が酸化ヘモグロビン(HbO)の吸収係数よりも大きいことが分かる。また、波長が約800nmよりも長波長側で酸化ヘモグロビン(HbO)の吸収係数の方がヘモグロビン(Hb)の吸収係数よりも大きいことが分かる。
【0043】
組織酸素飽和度StOは、式(9)のように表される。
【数11】
式(5)から式(9)において、ρはプローブ間距離であり、μ´は減衰散乱係数であり、μaは吸収係数であり、kは比例定数であり、hは減衰散乱係数の線形回帰の勾配であり、λは波長であり、Coxyは相対酸素化ヘモグロビン濃度であり、Cdeoxyは相対脱酸素化ヘモグロビン濃度であり、εはヘモグロビンの分子吸光係数である。
【0044】
導出部114は、データ収集部112から第1受光第1光量を示す情報、第2受光第1光量を示す情報、第1受光第2光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報を取得する。導出部114は、取得した第1受光第1光量を示す情報、第2受光第1光量を示す情報、第1受光第2光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報に基づいて、プローブ間距離ρ1、ρ2を使用して、第1光の波長λ及び第2光の波長λの各々について相対吸収係数を導出する。導出部114は、導出した2つの相対吸収係数の連立方程式を解くことで式(9)の相対濃度を導出し、その解を用いて式(10)で表される酸素飽和度を導出する。
【0045】
導出部114は、導出した血流速度指標及び相対濃度・酸素飽和度に基づいて、組織酸素代謝率rMRO(relative Metabolic Rate of Oxygen)を導出する。例えば、導出部114は、式(10)から組織酸素代謝率rMROを導出する。
【数12】
式(10)において、rBFIは血流速度指標(relative Blood flow index)であり、rOEFは酸素摂取率(relative Oxygen Extraction Fraction)である。
信号検出部117は、生体が筋収縮または筋弛緩した場合に発生するアナログ信号を検出する。第1検出部106は、信号検出部117が検出したアナログ信号に基づいて第1受光第1光量と第1受光第2光量とを検出する。つまり、第1検出部106は、信号検出部117が検出したアナログ信号のアーチファクトをトリガとしてアーチファクトを検出してから所定の時間が経過した後に第1受光第1光量と第1受光第2光量とを検出する。第2検出部107は、信号検出部117が検出したアナログ信号に基づいて第2受光第1光量と第2受光第2光量とを検出する。つまり、第2検出部107は、信号検出部117が検出したアナログ信号のアーチファクトをトリガとしてアーチファクトを検出してから所定の時間が経過した後に第2受光第1光量と第2受光第2光量とを検出する。
【0046】
出力部116は、導出部114から、組織酸素代謝率rMROを取得し、取得した組織酸素代謝率rMROを出力する。例えば、出力部116は、音声によって出力してもよいし、表示部(図示なし)に表示することによって出力してもよい。出力部116は、組織酸素代謝率rMROに加え、または組織酸素代謝率rMROの代わりに血流速度指標(BFI)及び相対濃度・酸素飽和度のいずれか一方又は両方を出力してもよい。
【0047】
データ収集部112、導出部114、出力部116及び信号検出部117の全部または一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部118に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。
なお、データ収集部112、導出部114、出力部116及び信号検出部117の全部または一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0048】
(計測装置の動作)
図8は、実施形態の変形例に係る計測装置100aの動作の一例を示す図である。第2検出部107が第2受光第1光量と第2受光第2光量を検出し、第1検出部106が第1受光第1光量と第1受光第2光量を検出するまでの動作については、図3と同様である。ただし、第1検出部106は、信号検出部117が検出したアナログ信号のアーチファクトをトリガとしてアーチファクトを検出してから所定の時間が経過した後に第1受光第1光量と第1受光第2光量とを検出する。第2検出部107は、信号検出部117が検出したアナログ信号のアーチファクトをトリガとしてアーチファクトを検出してから所定の時間が経過したのとに第2受光第1光量と第2受光第2光量とを検出する。
ここでは、第2検出部107が第2受光第1光量と第2受光第2光量を検出し、第1検出部106が第1受光第1光量と第1受光第2光量を検出した後の動作について説明する。
(ステップS1-2)
第2検出部107は、第2受光プローブ105からの第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出する。
(ステップS2-2)
第1検出部106は、第1受光プローブ104からの第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出する。
(ステップS3-2)
データ収集部112は、第2検出部107によって検出された第2受光第1光量を示す情報を収集する。
【0049】
(ステップS4-2)
データ収集部112は、第1検出部106によって検出された第1受光第1光量を示す情報を収集する。
(ステップS5-2)
導出部114は、データ収集部112から第2受光第1光量を示す情報を取得する。
(ステップS6-2)
導出部114は、データ収集部112から第1受光第1光量を示す情報を取得する。
(ステップS7-2)
第2検出部107は、第2受光プローブ105からの第2受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する。
【0050】
(ステップS8-2)
第1検出部106は、第1受光プローブ104からの第1受光第2光に基づいて第1受光第21光量を検出する。
(ステップS9-2)
データ収集部112は、第2検出部107によって検出された第2受光第2光量を示す情報を収集する。
(ステップS10-2)
データ収集部112は、第1検出部106によって検出された第1受光第2光量を示す情報を収集する。
(ステップS11-2)
導出部114は、データ収集部112から第2受光第2光量を示す情報を取得する。
(ステップS12-2)
導出部114は、データ収集部112から第1受光第2光量を示す情報を取得する。
【0051】
(ステップS13-2)
導出部114は、取得した第1受光第1光量を示す情報に基づいて、第1光の波長λを式(4)に入力し、αDを導出することによって、第1受光第1光血流速度指標を導出する。導出部114は、取得した第2受光第1光量を示す情報に基づいて、第1光の波長λを式(4)に入力し、αDを導出することによって、第2受光第1光血流速度指標を導出する。
導出部114は、取得した第1受光第2光量を示す情報に基づいて、第2光の波長λを式(4)に入力し、αDを導出することによって、第1受光第2光血流速度指標を導出する。導出部114は、取得した第2受光第2光量を示す情報に基づいて、第2光の波長λを式(4)に入力し、αDを導出することによって、第2受光第2光血流速度指標を導出する。
(ステップS14-2)
導出部114は、データ収集部112から第1受光第1光量を示す情報、第2受光第1光量を示す情報、第1受光第2光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報を取得する。導出部114は、取得した第1受光第1光量を示す情報、第2受光第1光量を示す情報、第1受光第2光量を示す情報及び第2受光第2光量を示す情報に基づいて、酸素飽和度を導出する。
【0052】
(ステップS15-2)
導出部114は、導出した第1受光第1光血流速度指標、第2受光第1光血流速度指標、第1受光第2光血流速度指標及び第2受光第2光血流速度指標のいずれかと、酸素飽和度に基づいて、組織酸素代謝率rMROを導出する。
(ステップS16-2)
出力部116は、導出部114から、血流速度指標、相対濃度、酸素飽和度及び組織酸素代謝率rMROを取得する。
(ステップS17-2)
出力部116は、取得した血流速度指標、相対濃度、酸素飽和度及び組織酸素代謝率rMROを出力する。
以降ステップS1-2に戻り、同様の処理が繰り返される。
【0053】
計測装置100aの適用例について説明する。一例として、運動時の前腕FAの組織酸素代謝率rMROを計測する場合について説明する。
図9は、実施形態の変形例に係る計測装置の解析タイミングの一例を示す図である。図9には、第1光源101及び第2光源102のオンオフのタイミングと、アナログ信号によって信号検出部117によって検出される前腕FAの筋収縮及び筋弛緩のタイミングと、血流速度とが示されている。血流速度に示されるMAは、筋の物理的な動きにより血管が変形することで生じる血流変化(モーションアーチファクト)であり、生理学的な血流量変化ではない。解析範囲の一例は、第1光源101がオンになってからオフになり、その後再びオンになるまでの期間である。換言すれば、第2光源102がオンからオフになってからオンになり、その後再びオフになるまでの期間である。
【0054】
図10は、筋の収縮と弛緩とを説明するための図である。図10において、左図は筋収縮を示し、右図は筋弛緩を示す。前腕FAが筋収縮及び筋弛緩することで血流が変化する。この血流変化は、生理学的なものではない。
筋収縮することで毛細血管が圧迫されるため血流速度は、収縮開始時に血管内の血液が押し出されることにより増加するが、その後は血液の流入が阻害されるため低下する。逆に、筋弛緩すると毛細血管の圧迫が除去され、滞留していた血液が弛緩開始と共に血管内へ流入して血流速度が増加し、その後は血管への神経支配・液性因子による支配を受けて生理学的な速度増加・減少を示す。図9に戻り説明を続ける。
計測装置100aは、安静時には解析時間範囲(1)から解析時間範囲(6)に示されるように、連続した第1光源10及び第2光源102のオンの後のタイミングで、1秒分の解析を行う。計測装置100aは、運動時に、運動量(握力や圧力、張力)の変化をアナログ信号で記録する。計測装置100aは、アナログ信号と、第1光源101及び第2光源102のオンオフのタイミングとに基づいて解析を行うタイミングを決定する。
具体的には、血流速度はタイミングが切り替えられる場合には体動ノイズがのり、筋収縮時は震えなども発生して生理学的な応答が見にくい。このため、体動ノイズが少ない弛緩後の自然な血管拡張・収縮状態で、かつ連続した第1光源101及び第2光源102のオンの後のタイミングで1秒分の測定(解析)を行う。図9では、解析時間範囲(4)から解析時間範囲(6)が該当する。
【0055】
図11は、実施形態の変形例に係る計測装置100aの解析タイミングの一例を示す図である。図11において、横軸は時間[s]であり、縦軸は血流速度指標(BFI)である。トリガなしの場合、収縮時をトリガとした場合、弛緩時をトリガとした場合について示す。
図11は、一例として腓腹(ふくらはぎの)筋の血流動態と酸素動態とを同時に計測した場合を示す。計測は、最大随意収縮力で踵の上げ/下げ運動を2分間実施した後に行った。計測後、圧力センサからのアナログ信号を基に筋弛緩時/弛緩時でのBFIを算出した。
図11によれば、トリガなしの場合には、収縮時をトリガとした場合及び弛緩時をトリガとした場合と比較して、BFIのばらつきが大きくなることが分かる。
収縮時をトリガとした場合及び弛緩時をトリガとした場合には、トリガなしの場合と比較して、筋組織などの移動に伴って発生したモーションアーチファクトが軽減できることが分かる。収縮時及び弛緩時をトリガとすることによって、目的筋の活動が弛緩/収縮の位相に分離可能な計測ではより正確な血流速度が算出可能であることが分かる。つまり、握力や圧力などのアナログ信号をトリガタイミングとして筋運動の特定の位相での血流速度を検出可能であることが分かる。
【0056】
図12は、実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の比較の一例を示す図である。計測装置100aによって導出した酸素代謝率rMRO2と、NIRS法によって導出した酸素代謝率rVO2とを比較した。
被験者は、前腕FAに筋損傷のない成人男性2名、女性3名(年齢22.3±0.37歳)である。計測部位は、非利き手の浅指屈筋とした。最大握力(MVC)は、男性について38.0±4.0kg、女性について19.3±3.3kgであった。計測指標は、血流速度指標BFI、酸素化ヘモグロビン濃度OxyHb、酸素飽和度StO、酸素摂取率rOEF、酸素代謝率rMROとした。
【0057】
図12は、計測プロトコルの一例を示す。方法(1)と方法(2)との試験を行った。
方法(1)は、6分間の安静時駆血試験(Rest試験)である。方法(1)では、駆血時の酸素化ヘモグロビン濃度OxyHbの最低値を0とし、安静時の酸素化ヘモグロビン濃度OxyHbの平均値を1と定義した。方法(1)では、駆血開始直後から360秒間の傾きを直線近似し、傾きをS1とした。方法(1)では、駆血にはDelfi PTSiiタニケットシステム(Zimmer Biomet)を使用した。
方法(2)は、5分間の掌握運動後、1分間の安静時駆血試験(HG試験)である。方法(2)では、運動強度として、0%最大握力MVC、20%最大握力MVC、35%最大握力MVC、50%最大握力MVCの掌握運動を0.25Hzで5分間実施した。方法(2)では、方法(1)で求めた最低値と平均値とを用いて酸素化ヘモグロビン濃度OxyHbを正規化した。方法(2)では、運動直後の駆血中の20秒間の傾きを直線近似し、傾きをS2とした。
【0058】
図13Aから図13Dは、実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の一例を示す図である。血流速度指標BFI、酸素化ヘモグロビン濃度OxyHb、酸素摂取率rOEF、酸素代謝率rMROの4種類の計測指標に対して局所中央絶対偏差の3倍以上を外れ値として除去し、1Hzにリサンプリングを実施した。
図13Aは血流速度指標BFIについての全条件の時系列平均波形であり、図13Bは酸素化ヘモグロビン濃度rOxyHbについての全条件の時系列平均波形であり、図13Cは酸素摂取率rOEFについての全条件の時系列平均波形であり、図13Dは酸素代謝率rMROについての全条件の時系列平均波形である。
【0059】
図13Aから図13Dによれば、運動強度の増加に伴って、運動中の血流速度指標BFI、酸素摂取率rOEF、酸素代謝率rMRO、駆血直後の酸素化ヘモグロビン濃度rOxyHbの傾き(S2)が増加した。
方法(1)、方法(2)で計測された酸素化ヘモグロビン濃度OxyHbの傾きから酸素代謝率rVO(=S2/S1)を推定した。運動終了直前20秒間の酸素代謝率rMROの平均値を算出した。rVOと酸素代謝率rMROの各運動強度に対する応答を比較し、相関を検討した。
図14は、実施形態の変形例に係る計測装置100aの計測結果の一例を示す図である。図14は、酸素代謝率rVOと酸素代謝率rMROとの関係を示す。図14によれば、酸素代謝率rVOと酸素代謝率rMROとの間に相関があることが分かる。相関値rは0.73、P値は0.0004であった。これによって、計測装置100aにより虚血を必要とせず筋の酸素代謝を非侵襲的に計測可能であることが確認できた。
【0060】
実施形態の変形例に係る計測装置100aによれば、計測装置100aは、拡散相関分光法によって血流速度を導出することと、近赤外分光法によって組織酸素動態を導出することとを同時に行うことができる。つまり、同一の装置で、同時に血流速度と組織酸素動態とを計測できる。従来法では、血流速度と組織酸素動態とは、別々の装置で測定され、交互に時間差を入れて計測することしかできなかった。このため、計測装置100aは、導出した血流速度と組織酸素動態とを組み合わせることによって、局所組織における酸素代謝量を導出できる。つまり、生体組織の血流動態、酸素動態、酸素摂取率、酸素代謝率の同時計測が可能となる。また、被験者が運動中に計測する動的計測を行うことができる。
従来、酸素代謝率は呼気ガス分析などで全身の酸素摂取を調べることが一般的であった。計測装置100aでは、筋の酸素代謝率の情報を取得できるため、局所筋組織の機能評価ができる。運動生理学の基礎研究の他、加齢・循環器疾患による運動機能低下・筋萎縮(フレイル)の評価など臨床的応用も可能である。
【0061】
また、計測装置100aでは、送光プローブ103への入力が、第1光と第2光との間で切り替えられた後、運動(筋収縮と筋弛緩)のタイミングに基づいて測定のタイミングを決定できる。このように構成することによって、運動によるノイズを減少させることができるため、測定精度を向上させることができる。
【0062】
<構成例>
一構成例として、第1波長を有する第1光を発生する第1光源と、第1波長とは異なる第2波長を有する第2光を発生する第2光源と、第1光源が発生する第1光と第2光源が発生する第2光とが切り替えて入力され、第1光と第2光とを生体に照射する送光プローブと、送光プローブから離間して設置され、生体に第1光が照射された場合に生体からの光である第1受光第1光を受光し、生体に第2光が照射された場合に生体からの光である第1受光第2光を受光する第1受光プローブと、送光プローブ及び第1受光プローブから離間して設置され、生体に第1光が照射された場合に生体からの光である第2受光第1光を受光し、生体に第2光が照射された場合に生体からの光である第2受光第2光を受光する第2受光プローブと、第1受光プローブが受光した第1受光第1光に基づいて第1受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第1受光第2光量を検出する第1検出部と、第2受光プローブが受光した第2受光第1光に基づいて第2受光第1光量を検出し、第1受光第2光に基づいて第2受光第2光量を検出する第2検出部とを備える、計測装置である。
一構成例として、第1検出部が検出した第1受光第1光量及び第1受光第2光量と、第2検出部が検出した第2受光第1光量及び第2受光第2光量とに基づいて酸素飽和度と血流速度とを導出し、導出した酸素飽和度と血流速度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する導出部をさらに備える。
一構成例として、導出部は、第1受光第1光量及び第2受光第1光量の時間変化からそれぞれ第1受光第1光自己相関関数及び第2受光第1光自己相関関数を導出し、導出した第1受光第1光自己相関関数及び第2受光第1光自己相関関数に基づいてそれぞれ第1受光第1光血流速度及び第2受光第1光血流速度を導出し、第1受光第2光量及び第2受光第2光量の時間変化からそれぞれ第1受光第2光自己相関関数及び第2受光第2光自己相関関数を導出し、導出した第1受光第2光自己相関関数及び第2受光第2光自己相関関数に基づいてそれぞれ第1受光第2光血流速度及び第2受光第2光血流速度を導出する。
一構成例として、導出部は、拡散相関方程式において、第1波長を使用して第1受光第1光血流速度及び第2受光第1光血流速度を導出し、第2波長を使用して第1受光第2光血流速度及び第2受光第2光血流速度を導出する。
一構成例として、導出部は、第1受光第1光量、第2受光第1光量、第1受光第2光量及び第2受光第2光量に基づいて前記第1波長及び前記第2波長での相対吸収係数を導出し、導出した相対吸収係数に基づいて酸素飽和度を導出する。
一構成例として、導出部は、送光プローブと第1受光プローブとの間の距離と、送光プローブと第2受光プローブとの間の距離に基づいて酸素飽和度を導出する。
一構成例として、導出部は、酸素飽和度に基づいて組織酸素飽和度を導出し、前記血流速度と前記組織酸素飽和度とに基づいて組織酸素代謝率を導出する。
一構成例として、生体が筋収縮または筋弛緩した場合に発生する信号を検出する信号検出部を更に備え、第1検出部は、信号検出部が検出した信号に基づいて第1受光第1光量と第1受光第2光量とを検出し、第2検出部は、信号検出部が検出した信号に基づいて第2受光第1光量と第2受光第2光量とを検出する。
一構成例として、送光プローブに第1光源101が発生する第1光と第2光源102が発生する第2光とを切り替えて入力する制御部を更に備える。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合わせを行うことができる。これら実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
なお、前述の計測装置100、計測装置100aは内部にコンピュータを有している。そして、前述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
100、100a…計測装置、 101…第1光源、 102…第2光源、 103…送光プローブ、 104…第1受光プローブ、 105…第2受光プローブ、 106…第1検出部、 107…第2検出部、 110…情報処理装置、 112…データ収集部、 114…導出部、 116…出力部、 118…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14