(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035425
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】粘着シート及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240307BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240307BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240307BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240307BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240307BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240307BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/06
C09J11/08
C09J11/04
C09J133/00
C09J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139867
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】織野 稔久
(72)【発明者】
【氏名】北岡 典征
(72)【発明者】
【氏名】川端 大暉
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB02
4J004DB03
4J004FA01
4J004FA08
4J040DF001
4J040EF282
4J040HB44
4J040HD43
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4J040JB09
4J040KA05
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4J040KA37
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA20
4J040PA00
4J040PA20
4J040PA30
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】樹脂製の基材を容易にリサイクル可能な粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着シート10は、シート状の基材1と、発泡剤5を含み、基材1の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層3とを備えている。発泡剤5は熱膨張性のマイクロカプセルであり、粘着剤層3は、キレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤のうち少なくとも一方を含んでおり、粘着剤層3を被着体に貼り付けた後の加熱処理により、粘着剤層3の全体が被着体9及び基材1から剥離可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、
発泡剤を含み、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
前記発泡剤は熱膨張性のマイクロカプセルであり、
前記粘着剤層は、キレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤のうち少なくとも一方を含んでおり、
前記粘着剤層を被着体に貼り付けた後の加熱処理により、前記粘着剤層の全体が前記被着体及び前記基材から剥離可能となる粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層は、エポキシ系硬化剤を含んでいる、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層に含まれる前記エポキシ系硬化剤の含有率は、0.01質量%以上1.0質量%以下である、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後24時間時点での対ガラス粘着力は0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層中に含まれる前記発泡剤の含有率は、前記粘着剤層全体の5質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項6】
23℃、相対湿度50%、周波数1Hzの条件での前記粘着剤層の貯蔵弾性率は、2.0×104Pa以上1.0×106Pa以下であり、
80℃、相対湿度50%、周波数1Hzの条件での前記粘着剤層の貯蔵弾性率は、1.0×103Pa以上5.0×105Pa以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層には、前記キレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤の合計添加量の20質量%以下のイソシアネート系硬化剤が含まれている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤層には、イソシアネート系硬化剤が含まれない、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層は、溶剤型のアクリル系粘着剤の硬化物により形成されている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項10】
ラベルとして使用される、請求項1~9のうちいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項11】
シート状の基材と、熱膨張性のマイクロカプセルである発泡剤を含み、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とを備えた粘着シートの使用方法であって、
前記粘着剤層は、キレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤のうち少なくとも一方を含んでおり、
前記粘着シートの粘着剤層を被着体に貼り付ける工程と、
前記粘着シートを加熱して前記粘着剤層を被着体から剥離させると共に、前記基材からも剥離させる工程とを備えている粘着シートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、加熱により被着体と粘着剤層との間だけでなく、基材と粘着剤層との間も剥離可能となる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材と、熱膨張性微小球が添加された粘着剤層とを有する物品の仮固定用粘着シートは、従来から知られている。この粘着シートは、被着体に貼り付けた後、加熱により粘着剤層を膨張させて粘着剤層を被着体から剥離させることができる。このため、この粘着シートは半導体ウェハのダイシング工程や裏面研磨工程等で用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラスチック製の基材と、粘着剤層と、基材と粘着剤層との間に設けられたゴム状有機弾性層とを有する粘着シートの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境意識が高まり、生分解性の無いプラスチック廃棄物の削減や、材料のリサイクルが世界的に進められている。プラスチック製の基材を用いた粘着シートについては、コストや性能の面から生分解性を持つ材料への切り替えが困難な場合が多いため、基材を回収してリサイクルする等の対策が取られつつある。
【0006】
ここで、特許文献1に記載された粘着シートは、使用後に被着体から剥離する際に、基材と粘着剤とが一体となって剥離する。このため、基材を回収した後に、基材と粘着剤層とを分離する作業が別途必要となり、低コストでリサイクルを進めにくい場合がある。
【0007】
本発明の目的は、基材を容易にリサイクル可能にする粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された粘着シートの一例は、シート状の基材と、発泡剤を含み、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とを備えた粘着シートである。前記発泡剤は熱膨張性のマイクロカプセルであり、前記粘着剤層は、キレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤のうち少なくとも一方を含んでおり、前記粘着剤層を被着体に貼り付けた後の加熱処理により、前記粘着剤層の全体が前記被着体及び前記基材から剥離可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示された粘着シートによれば、加熱処理によって粘着剤層の全体が被着体だけでなく基材から剥離可能な状態となるので、被着体のリサイクルだけでなく基材のリサイクルもしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る粘着シートを示す断面図である。
【
図2】
図2(a)は、被着体に貼り付けられた状態の実施形態に係る粘着シートを示す断面図であり、(b)は、加熱後に被着体から剥離した状態の粘着シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本明細書に開示された実施形態の一例である、粘着シートを示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の粘着シート10は、シート状の基材1と、発泡剤5を含み、基材1の少なくとも一方の面に形成された粘着剤層3とを備えている。粘着剤層3の面のうち、基材1と反対側の面には、粘着剤層3を保護する剥離ライナー7が設けられていてもよい。発泡剤5は、例えば熱膨張性のマイクロカプセルであり、所定の温度以上に加熱すると膨張する。
【0013】
図2(a)は、被着体に貼り付けられた状態の粘着シート10を示す断面図であり、(b)は、加熱後に被着体から剥離した状態の粘着シート10を示す図である。
【0014】
図2(a)、(b)に示すように、本実施形態の粘着シート10は、剥離ライナー7を剥がして粘着剤層3を被着体9に貼り付けた後、加熱することにより、発泡剤5が膨張する。このため、粘着剤層3は厚みが増加するとともに、平面サイズも増加し、結果として基材1及び被着体9の両方から剥離可能となっている。ここで、「剥離可能」とは、加熱処理により自然剥離する場合と、自然剥離はしなくても粘着シート10に軽く触れるだけで容易に剥離する場合とを含むものとする。
【0015】
本実施形態の粘着シート10では、加熱により粘着剤層3の全体が被着体9だけでなく基材1からも剥離可能となるので、基材1を回収してリサイクルする場合、粘着剤層3の除去工程が不要になる。また、被着体9が回収可能なものである場合には、当該被着体9を再使用又はリサイクルすることが容易となっている。
【0016】
被着体9は特に限定されないが、例えば壁、建装材、ガラス瓶、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製ボトル、半導体ウェハ又はセラミックグリーンシート積層体等であってもよい。
【0017】
[粘着力と基材との密着力との関係]
通常、粘着シートでは、被着体から剥がす際に必要な力(粘着力)に比べて粘着剤層と基材との間の密着力が非常に大きくなっており、このため、粘着シートを被着体から剥がしても粘着剤層が被着体側に残らないようになっている。
【0018】
しかしながら、本願発明者らは、粘着剤層と基材との間の密着力が強すぎると、加熱しても粘着剤層が基材から剥離できないことに気付いた。そして、独自の検討を重ね、被着体に対する粘着力を基材と粘着剤層との密着力に比べてできるだけ大きくしながらも、基材と粘着剤層との間の密着力をできるだけ小さくすることにより、加熱時に基材と粘着剤層とを剥離させられることに想到した。
【0019】
[粘着シートの構成]
本実施形態の粘着シート10において、基材1はシート状の支持体であり、構成材料は特に限定されない。構成材料としては、分別回収されてリサイクル可能な材料であれば好ましく、例えば各種の紙や樹脂材料等を使用できる。粘着シート10を飲料用のラベル等として使用する場合は、樹脂材料や耐水性を有する紙等が基材1の材料として好ましく用いられる。
【0020】
基材1用の紙は、上質紙、アート紙、コート紙、グロス紙又はキャストコート紙等であってもよい。基材1用の樹脂材料としては、PET等のポリエステル樹脂や、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等であってもよい。基材1は合成紙により形成されていてもよい。
【0021】
基材1の一方又は両方の面には公知の易接着層や帯電防止層等が設けられていてもよい。基材1の粘着剤層3側に易接着層が形成されていることにより、加熱により粘着剤層3を剥離できる範囲内で基材1と粘着剤層3との間の密着力を強くすることができる。また、粘着シートをラベルとして使用する場合には、易接着層上に印刷層を形成することができる。印刷層を形成しない場合や、粘着剤層3との密着力を小さくしたい場合には、基材1の粘着剤層3側の面に易接着層を設けなくてもよい。
【0022】
基材1は剥離後にリサイクルされることを考慮して、なるべく特殊な材料を使用せず、簡易な構成を有していることが好ましい。例えば、基材1が単層のPETフィルムにより形成されていれば、本実施形態の粘着シートがPETボトルにラベルとして貼付される場合、熱水処理により剥離後にボトル由来のPETと共に容易に回収可能となる。また、基材1が合成紙やポリオレフィンフィルムのように比重1未満の樹脂材料により形成されている場合、熱水処理により剥離後の基材1は比重の違いによりボトル由来のPETや粘着剤層から容易に分別回収可能となる。
【0023】
基材1の厚みは特に限定されないが、例えば1μm以上300μm以下であってもよく、5μm以上200μm以下であれば好ましく、10μm以上150μm以下であればより好ましい。基材1の厚みが1μm以上であれば一般的な塗工機で使用しやすく、5μm以上であれば取り扱いがしやすくなる。基材1の厚みが300μm以下であれば、製造コストの増加を抑えられる。
【0024】
粘着剤層3は、粘着剤の硬化物により形成され、発泡剤5を含んでいる。粘着剤層3の形成に使用される粘着剤は特に限定されず、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤から選ばれた1種、又は2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
アクリル系粘着剤を使用する場合、硬化剤としてエポキシ系硬化剤又はキレート系硬化剤、あるいは両硬化剤の混合物を使用することが好ましい。イソシアネート系硬化剤のみを使用して硬化させた場合、粘着剤層の基材との密着力が強くなり過ぎて加熱しても粘着剤層と基材とが剥離しにくくなる。このため、粘着剤の硬化にはキレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤の少なくとも一方を用いてイソシアネート系硬化剤を使用しないか、イソシアネート系硬化剤を使用する場合でもキレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤の合計添加量の20質量%以下に抑えることが好ましい。
【0026】
以上のことから、硬化後の粘着剤層3は、キレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤のうち少なくとも一方を含んでいる。本明細書中で「粘着剤層が硬化剤を含んでいる」とは、未反応の硬化剤分子を含むことだけではなく、架橋反応により粘着剤と結合された状態で硬化剤由来の分子が含まれていることも意味するものとする。
【0027】
粘着剤に添加される硬化剤は、粘着剤に含まれる架橋点の1/2当量以上であってもよい。粘着剤層3中の硬化剤の含有率は、エポキシ系硬化剤又は金属キレート系硬化剤を使用する場合、例えば0.01質量%以上1.0質量%以下であってもよい。粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して硬化剤の添加量が0.01質量部未満の場合は、硬化が不十分になったり、硬化しても基材1と粘着剤層3の密着力が強くなり過ぎる場合がある。粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して硬化剤の添加量が1.0質量部を超えると、被着体に対する粘着力が小さくなり過ぎる可能性がある。エポキシ系硬化剤を使用する場合、粘着剤の樹脂固形分100質量部に対する添加量を0.1質量%未満とすることで、被着体及び基材に対する粘着剤層の密着力を比較的高く維持することができ、粘着剤層の被着体側への転着を生じにくくさせることができる。
【0028】
エポキシ系硬化剤は粘着剤分子中の酸基と架橋反応するので、エポキシ系硬化剤を使用する場合、分子中に酸基を有する粘着剤を選択する。この場合、粘着剤の酸価は1.0以上であることが好ましい。ここで、酸価とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシ基を含有するポリマー1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数として表される。
【0029】
なお、一旦被着体9に貼り付けた粘着シート10の貼り直しをしない場合は、常温での剥離時に粘着剤層3が被着体9側に転着する程度まで粘着剤層3と基材1との密着力を下げてもよい。
【0030】
粘着剤層3を形成するための粘着剤としては、熱水に不溶な溶剤型粘着剤を使用することができる。この場合、粘着剤層3が熱水処理時に溶け出さないので、熱水に可溶な粘着剤を使用する場合に比べて排水処理にかかる費用を低減することができる。
【0031】
粘着剤層3には、発泡剤5以外に本発明の目的が損なわれない範囲で、公知の各種添加剤、例えば粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、充填剤、カップリング剤などが適宜添加されていてもよい。
【0032】
粘着シート10のガラス板に対する粘着力は、例えば、23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後24時間時点で0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下であってもよく、0.4N/25mm以上10.0N/25mm以下であってもよい。対ガラス粘着力が0.1N/25mm以上であれば、ラベルとしてガラス瓶に貼付された場合に、常温において当該ガラス瓶から容易に剥がれず、0.4N/25mm以上であればガラス瓶からより脱落しにくくなる。粘着力が15.0N/25mm以下であれば、加熱により発泡剤5が発泡した後に粘着剤層3が被着体9から剥離しやすくなり、粘着力が10.0N/25mm以下であれば、被着体9から粘着剤層3をより容易に剥離できるようになる。粘着シート10の粘着力が強過ぎないことにより、基材1と粘着剤層3との密着力を比較的小さくすることができ、結果として加熱時の基材1と粘着剤層3との剥離を容易にすることができる。
【0033】
粘着シート10のPET板に対する粘着力は、例えば、23℃、相対湿度50%、剥離速度を300mm/min、剥離角度を180°とした場合の貼付け後24時間時点で、例えば0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下であってもよく、0.5N/25mm以上12.0N/25mm以下であってもよい。PET板に対する粘着力が0.1N/25mm以上15.0N/25mm以下の範囲内にあることにより、粘着シート10がPET製容器にラベルとして貼付された場合に、常温において容器から容易に剥がれにくく、且つ加熱により被着体9から容易に剥離できるようになる。
【0034】
粘着剤層3の貯蔵弾性率は特に限定されないが、例えば、23℃、相対湿度50%、周波数1Hzの条件において、2.0×104Pa以上1.0×106Pa以下であってもよく、4.0×104Pa以上6.0×105Pa以下であればより好ましい。80℃、相対湿度50%、周波数1Hzの条件において、粘着剤層3の貯蔵弾性率は例えば1×103Pa以上5×105Pa以下であってもよい。23℃及び発泡剤の発泡開始温度付近(ここでは80℃)での貯蔵弾性率が低過ぎると加熱剥離時に粘着剤層3内部で破断しやすくなるので、粘着剤が被着体9上に残りやすくなる。また、貯蔵弾性率が高過ぎると乾燥条件下で加熱する際に粘着剤層3が基材1から剥離しにくくなる。なお、発泡剤5が含まれていても、23℃における粘着剤層3の貯蔵弾性率は発泡剤5が含まれない場合に近い値となっている。
【0035】
粘着剤層3の厚みは、使用する粘着剤の種類によっても異なるが、例えば2μm以上300μm以下であってもよく、10μm以上200μm以下であれば好ましく、20μm以上100μm以下であればより好ましい。粘着剤層3の厚みが2μm以上であれば、常温で被着体9から脱落しにくくすることができる。粘着剤層3の厚みが300μm以下であれば、加熱処理後の剥離時に凝集破壊を生じにくくさせることができ、被着体9の汚染を低減しやすくなる。また、発泡剤5の含有率が同じ場合は、粘着剤層3の厚みが厚い方が加熱後に大きく膨張するため、基材1と被着体9の両方から粘着剤層3が剥離しやすくなるが、製造コストを低減する観点から粘着剤層3の厚みは小さい方が好ましい。
【0036】
粘着剤層3に含まれる発泡剤5は、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等、加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させたマイクロカプセルであってもよい。殻は、熱溶融性物質や熱膨張により伸長又は破壊される物質により構成される。殻の構成材料としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0037】
マイクロカプセルは、公知の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法等により製造できる。
【0038】
発泡剤5の発泡開始温度は特に限定されないが、省エネルギーの観点から、粘着剤層3を基材1や被着体9から剥離させる際に必要なエネルギーを小さくできる方が好ましい。例えば、発泡剤5の発泡開始温度は50℃以上100℃以下であってもよい。発泡開始温度が50℃以上であることで、夏季等に粘着シート10の意図しない剥離が生じるのを抑えることができる。発泡開始温度が100℃以下であることで、100℃以下の熱水や130℃以下での乾燥状態での処理など、比較的低い温度での処理で基材1及び被着体9から粘着剤層3を剥離させることができる。
【0039】
発泡剤5が膨張して最大粒径となる際の温度は、100℃以上140℃以下程度であってもよい。当該温度も発泡開始温度と同様に、比較的低い温度であれば、加熱時の消費エネルギーを小さくできるので、好ましい。
【0040】
発泡剤5として、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー」(グレード:F-30、F-30D、F-36D、F-36LV、F-50、F-50D、F-65、F-65D、HF-36D、HF-48D、FN-100SS、FN-100SSD、FN-180SS、FN-180SSD、F-190D、F-260D、F-2800D)、日本フィライト社製の商品名「エクスパンセル」(グレード:053-40、031-40、007-40)、呉羽化学工業社製「ダイフォーム」(グレード:M330、M430)、積水化学工業社製「アドバンセル」(グレード:EML101、EMH204、EHM301、EHM302、EHM303、EM304、EHM401、EM403、EM501)等が挙げられる。
【0041】
発泡剤5の平均粒径は、例えば1μm以上50μm以下であってもよく、5μm以上30μm以下であってもよい。平均粒径が1μm以上であれば加熱による膨張後に粘着剤層3の両面の凹凸を大きくしやすくなり、粘着剤層3を基材1及び被着体9から剥離しやすくできる。粘着剤層3の厚みにもよるが、発泡剤5の平均粒径が50μm以下であれば、加熱前の粘着剤層3の表面の凹凸を小さくでき、被着体9からの意図しない剥離を低減しやすくできる。発泡剤5の平均粒径は、粘着剤層3の厚みの5倍以下程度であってもよく、3倍以下であれば好ましく、1倍以下であればより好ましい。
【0042】
発泡剤5が加熱前と比べて最も膨張した場合の体積変化率は、例えば5倍以上70倍以下程度であってもよく、7倍以上40倍以下であってもよい。ここでいう体積変化率とは、特開平11-002615号公報の明細書に記載されたシリンダー及びピストンを用いた方法により測定される値を意味する。
【0043】
粘着剤層3における発泡剤5の含有率は、使用する粘着剤にもよるが、粘着剤層3全体の質量に対して5質量%以上70質量%以下であってもよく、10質量%以上60質量%以下であれば好ましく、20質量%以上50質量%以下であればより好ましい。発泡剤5の含有率が低過ぎると加熱しても基材1及び被着体9から粘着剤層3が剥離し難く、発泡剤5の含有率が高過ぎると加熱前に被着体9に対する粘着力が不十分になりやすい。
【0044】
粘着剤層3中の発泡剤5の平均粒径や含有率、体積変化率等を適宜調整することにより、加熱処理後の粘着剤層3の膜厚増加率を、例えば4倍以上30倍以下にすることができ、加熱処理後に基材1及び被着体9の両方から粘着剤層3を剥離させやすくできる。粘着剤層3の膜厚増加率は、6倍以上25倍以下であってもよい。ここで、加熱処理後の粘着剤層3での膜厚増加率は、式1により算出された値である。
【0045】
(加熱処理後の粘着剤層の厚み)/(加熱処理前の粘着剤層の厚み)・・・式1
加熱処理前の粘着剤層3の厚みは、23℃、相対湿度50%で測定するものとする。粘着剤層3の厚みは、市販のマイクロメーターを用いて測定することができる。
【0046】
なお、特許文献1には、粘着剤層3と基材1との間に、ゴム弾性を有する中間層を設けることにより、加熱後の粘着シートを被着体から剥離しやすくすることが記載されている。しかし、本実施形態の粘着シート10においては、敢えて中間層を設けず、基材1の一方の面に粘着剤層3が直接接している。この構成により、基材1と粘着剤層3との間の密着力を低減させ、加熱後に粘着剤層3が基材1から剥離しやすくすることが可能となっている。ここでの基材1とは、印刷層や易接着層が設けられる場合、これらの層を含むものとする。仮に、基材1と粘着剤層3との間に別の層が設けられる場合でも、基材1と粘着剤層3との距離を1μm以下程度にすることが好ましい。
【0047】
[粘着シートの製造方法]
本実施形態の粘着シート10を作製する際には、まず粘着剤に架橋剤と所定量の発泡剤5とを加えて混合することにより、塗液を作製する。次いで、紙製又は樹脂フィルム製の剥離ライナー7の剥離面に、乾燥後に所望の厚さになるようにコンマ型コーター等により塗液を塗工し、発泡剤5の発泡開始温度以下の低温で乾燥させ、粘着剤層3を形成する。次いで、剥離ライナー7の塗工面を基材1と貼り合わせて粘着シート10を作製した後、例えば40℃で72時間程度エージングを行う。
【0048】
ここで、ラベルとして使用する粘着シートを作製する場合は、粘着剤層3の形成前に公知の印刷機を用いて基材1の少なくとも一方の面に所定デザインの印刷層を形成しておけばよい。この印刷層には、基材1及び粘着剤層3の剥離条件や、基材1がリサイクル可能であること等を示すリサイクル情報提示領域が形成されていてもよい。これにより、消費者や処理業者が被着体9や基材1を適切にリサイクルできるようになる。
【0049】
また、この方法に代えて、剥離ライナー7の剥離面に上述の塗液を塗工した後、剥離ライナー7の塗工面に第2の剥離ライナーを貼り合わせ、次いで上述のエージングを行うことにより、いわゆる基材レス状態の粘着剤層3を作製してもよい。この場合、先に形成した粘着剤層3から第2の剥離ライナーを剥がしてから基材1と貼り合わせた後、粘着剤層3を基材1と貼り合わせることで、粘着シート10を作製できる。この方法によれば、粘着剤層3を十分に硬化させた後で基材1と貼り合わせることができるため、基材1と粘着剤層3との密着力が強くなるのを抑えることができる。その結果、粘着シート10を加熱処理する際に粘着剤層3を基材1から剥離しやすくすることができる。
【0050】
本実施形態の粘着シート10では、キレート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤のうち少なくとも一方により粘着剤層3が硬化されているので、基材1と粘着剤層3との間の密着力が強くなり過ぎないよう調節されている。このため、一旦基材レス状態の粘着剤層3を形成しなくても加熱により基材1と粘着剤層3とを容易に剥離させることができる。
【0051】
[粘着シートの解体方法]
本実施形態の粘着シート10を被着体9に貼り付けた後、粘着剤層3と基材1とに解体するためには、粘着剤層3が十分に膨張する温度まで加熱すればよい。例えば、発泡剤5(マイクロカプセル)の膨張開始温度が50℃以上100℃以下である場合、当該膨張開始温度以上100℃以下の熱水中での浸漬、又は膨張開始温度より10℃以上高く、130℃以下の乾燥状態での加熱により、粘着剤層3を基材1と被着体9の両方から剥離させることができる。ただし、粘着シート10は上記条件の範囲すべてで解体される必要はなく、少なくとも1つの条件で解体することができればよい。また、被着体9の材質等によって粘着シート10からの剥離のしやすさは変わるが、加熱後の粘着剤層3は全ての種類の被着体から剥離できる必要はなく、少なくとも1種類の被着体から剥離できればよい。実際の使用を考慮すると、PET及びガラスの少なくとも1つから剥離できることが好ましい。
【0052】
被着体9がガラス瓶やペットボトルのように浸漬可能な場合や、100℃を超える熱により変性する場合には熱水処理を行ってもよく、被着体9が加熱に耐えられる場合等では、乾燥状態での加熱を行ってもよい。
【0053】
本実施形態の粘着シート10は、例えば家庭内でも容易に被着体9から基材1及び粘着剤層3とをそれぞれ分離できるので、基材1及び被着体9を容易に分別してリサイクルに回すことができる。また、基材1の比重が1未満であれば、ペットボトル等の容器ラベルとして使用される場合に、熱水処理により剥離した基材1を、比重の違いを利用して粘着剤層3及びペットボトル材料(比重約1.38)から水中で容易に分離し、回収することができる。熱によって発泡した後の粘着剤層3の比重は発泡剤5の含有率が増えるに従って小さくなり、少なくとも1未満であってもよい。粘着剤層3の比重が1未満であれば、熱水処理により基材1及び被着体9から分離された粘着剤層3の回収が容易になる。基材1の比重が粘着剤層3の比重と例えば0.1以上異なっていれば、比重の違いを利用して解体後の粘着シート10を材料ごとに容易に分別することができる。
【0054】
また、ペットボトル等に貼り付けられた粘着シート10がリサイクル工場で処理される場合、回収されたボトルを洗浄及び破砕した後、加熱処理することによって破砕された小片全体において被着体9(ペットボトル片)、粘着剤層3、基材1に解体できるので、一部の小片のみしか解体できない場合に比べてリサイクル効率を大幅に向上させることができる。
【0055】
[その他の構成]
以上で説明した粘着シート10の構成は実施形態の一例であり、構成材料や各層の厚さ、物性等は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【実施例0056】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
[粘着シートの作製]
<実施例1>
液状の市販の強粘着タイプの溶剤型アクリル系粘着剤A(樹脂固形分50wt%)100質量部に対して市販の液状の金属キレート系硬化剤(硬化剤成分3wt%含有)5.0質量部を添加してなる粘着剤組成物に、発泡剤A(松本油脂製薬(株)製、商品名「マツモトマイクロスフェアー(登録商標)HF-36D」)を、粘着剤の樹脂固形分に対して40質量%添加し、混合することにより塗液を作製した。次いで、公知のコンマ型コーターを用いて市販の剥離ライナーの剥離面に、乾燥後の厚みが20μmになるように上述の塗液を塗布し、60℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、市販のPETフィルム(基材)の一方の面と貼り合わせて粘着シートを作製した。基材として、厚みが50μmの東洋紡(株)製PETフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4360」;比重約1.4)を使用した。次いで、40℃、72時間の条件で粘着シートのエージングを行った。
【0058】
<実施例2>
粘着剤層の厚みが30μmになるように塗工したこと以外は実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0059】
<実施例3>
粘着剤層の厚みが50μmになるように塗工したこと以外は実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0060】
<実施例4>
液状の市販の強粘着タイプのアクリル系粘着剤A(樹脂固形分50wt%)100質量部に対して市販の液状のエポキシ系硬化剤(硬化剤成分5wt%含有)0.5質量部を添加してなる粘着剤組成物に、上述の発泡剤Aを、粘着剤の樹脂固形分に対して30質量%添加し、混合することにより塗液を作製した。次いで、剥離ライナーの剥離面に、乾燥後の厚みが30μmになるように上述の塗液を塗布し、60℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、市販のPETフィルム(基材)の一方の面と貼り合わせて粘着シートを作製した。次いで、40℃、72時間の条件で粘着シートのエージングを行った。形成された粘着剤層に含まれるエポキシ系硬化剤の含有率は、約0.05質量%であった。
【0061】
<実施例5>
粘着剤層の厚みが50μmになるように塗工したこと以外は実施例4と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0062】
<実施例6>
粘着剤A100質量部に対するエポキシ系硬化剤の添加量を0.7質量部に変更し、発泡剤Aの添加量を粘着剤Aの樹脂固形分に対して40質量%にしたこと以外は実施例5と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0063】
<実施例7>
粘着剤A100質量部に対するエポキシ系硬化剤の添加量を0.8質量部に変更したこと以外は実施例6と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0064】
<実施例8>
粘着剤A100質量部に対するエポキシ系硬化剤の添加量を0.9質量部に変更したこと以外は実施例6と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0065】
<実施例9>
粘着剤A100質量部に対するエポキシ系硬化剤の添加量を1.0質量部にし、粘着剤層の厚みが20μmになるように塗工したこと以外は実施例4と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0066】
<実施例10>
発泡剤の添加量を粘着剤Aの樹脂固形分に対して40質量%に変更したこと以外は実施例9と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0067】
<実施例11>
粘着剤層の厚みが30μmになるように塗工したこと以外は実施例9と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0068】
<実施例12>
発泡剤の添加量を粘着剤Aの樹脂固形分に対して40質量%に変更したこと以外は実施例11と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0069】
<実施例13>
粘着剤層の厚みが50μmになるように塗工したこと以外は実施例9と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0070】
<実施例14>
発泡剤の添加量を粘着剤Aの樹脂固形分に対して40質量%に変更したこと以外は実施例13と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0071】
<実施例15>
粘着剤A100質量部に対するエポキシ系硬化剤の添加量を3.0質量部にし、発泡剤Aの添加量を粘着剤Aの樹脂固形分に対して40質量%にしたこと以外は実施例9と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0072】
<実施例16>
粘着剤層の厚みが30μmになるように塗工したこと以外は実施例15と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0073】
<実施例17>
粘着剤層の厚みが50μmになるように塗工したこと以外は実施例15と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0074】
<実施例18>
粘着剤A100質量部に対するエポキシ系硬化剤の添加量を5.0質量部にしたこと以外は実施例15と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0075】
<実施例19>
粘着剤層の厚みが30μmになるように塗工したこと以外は実施例18と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0076】
<実施例20>
粘着剤層の厚みが50μmになるように塗工したこと以外は実施例18と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0077】
<実施例21>
粘着剤として、金属キレート系硬化剤を含む市販の溶剤型1液タイプアクリル系粘着剤Bを使用すること及びエポキシ系硬化剤を添加しないこと以外は実施例18と同様の方法により、粘着シートを作製した。粘着剤Bには、金属キレート系硬化剤が10質量%以下の濃度で含まれている。
【0078】
<実施例22>
発泡剤の添加量を粘着剤Bの樹脂固形分に対して50質量%に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0079】
<実施例23>
粘着剤層の厚みが30μmになるように塗工したこと以外は実施例22と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0080】
<実施例24>
液状の市販の溶剤型アクリル系粘着剤C(樹脂固形分30wt%)100質量部に対して市販の液状のエポキシ系硬化剤(硬化剤成分5wt%含有)0.6質量部と市販の金属キレート系硬化剤(硬化剤成分3wt%含有)0.6質量部とを添加してなる粘着剤組成物に、発泡剤B(松本油脂製薬(株)製、商品名「マツモトマイクロスフェアー(登録商標)HF-48D」)を、粘着剤の樹脂固形分に対して30質量%添加し、混合することにより塗液を作製した。次いで、剥離ライナーの剥離面に、乾燥後の厚みが30μmになるように上述の塗液を塗布し、60℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、市販のPETフィルム(基材)の一方の面と貼り合わせて粘着シートを作製した。次いで、40℃、72時間の条件で粘着シートのエージングを行った。
【0081】
<実施例25>
粘着剤層の厚みが50μmになるように塗工したこと以外は実施例24と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0082】
<比較例1>
実施例5で使用したアクリル系粘着剤A100質量部に対して市販のイソシアネート系硬化剤(硬化剤成分45wt%含有)を3.0質量部添加してなる粘着剤組成物に、発泡剤Bを粘着剤の樹脂固形分に対して30質量%添加したこと以外、実施例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0083】
<比較例2>
アクリル系粘着剤A100質量部に対して上述のイソシアネート系硬化剤を4.0質量部添加したこと以外、比較例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0084】
<比較例3>
アクリル系粘着剤A100質量部に対して上述のイソシアネート系硬化剤を5.0質量部添加したこと以外、比較例1と同様の方法により、粘着シートを作製した。
【0085】
以上の実施例及び比較例で使用した発泡剤A、Bの特徴を表1に示す。
【0086】
【0087】
[粘着シートの評価]
<易剥離性の評価試験>
各実施例及び比較例で作製した粘着シートを2cm×7cmのサイズに切り出すことで試料片を作製し、当該試料片の粘着面を、表面処理が施されていないガラス板又はPET板に貼り合わせた。熱水処理については、試料片が貼り付けられたガラス板又はPET板をビーカー中で100℃の熱水に投入し、5分後に自然剥離の有無を目視で確認した。また、試料片が貼り付けられたガラス板又はPET板を120℃に設定した乾燥炉内に投入し、5分後に自然剥離の有無を目視で確認した。両条件において、粘着剤層が自然剥離していない場合は、手で剥離可能かどうかを判断した。自然剥離する場合は◎(優)、自然剥離しないが、手で容易に剥離できる場合は〇(良)、容易に剥離しないが、慎重に剥がせば剥離可能である場合は△(可)、剥離できないか、剥離できても粘着剤成分が被着体に残る場合は×(不可)と判断した。
【0088】
<粘着力の測定>
粘着シートの剥離ライナーを剥がして被着体に貼り付けた後、JIS Z 0237に準拠する方法により貼り付けてから1分後及び24時間後の粘着力を測定した。具体的には、幅25mmに裁断した粘着シートの試験片を被着体であるガラス板又はPET板に貼り付けてから23℃、相対湿度50%で1分又は24時間静置した。これらの試験片を剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で万能材料試験機を用いて剥離するのに要する力を粘着力(N/25mm)として測定した。
【0089】
<粘着剤層の貯蔵弾性率の測定>
液状の粘着剤A100質量部にイソシアネート系硬化剤を5.0部添加した粘着剤組成物と同硬化剤を8.0質量部添加した粘着剤組成物とをそれぞれ準備し、これらの粘着剤組成物を用いて厚み50μmの粘着剤層を有する基材レステープを作製した。次いで、この基材レステープを40℃、72時間の条件でエージングした。次いで、粘着剤層のみを総厚さが1mmになるまで積層した後、直径8mmの大きさに打ち抜いてタブレットを作製した。このタブレットをレオメーター(製品名:AR2000ex)のプレート間に挟み、周波数1Hz、相対湿度50%、ひずみ量0.05%の条件で貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定し、tanδを算出した。温度は23℃と80℃の両方で測定した。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の測定値は、硬化剤を5.0部添加した場合の測定値と硬化剤を8.0部を添加した場合の測定値の平均値を採用した。
【0090】
また、粘着剤Bについても厚み50μmの基材レステープを作製した後、上述の方法で直径8mm、厚さ1mmのタブレットを作製した。このタブレットについて、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定し、tanδを算出した。粘着剤Cについて、粘着剤溶液100質量部に対してエポキシ系硬化剤0.6質量部及び金属キレート系硬化剤0.6質量部を添加して作製した粘着剤組成物を用いて粘着剤A、Bと同様の方法で貯蔵弾性率G’等の測定を行った。
【0091】
[測定結果]
各試験片の粘着力の測定結果を表2~表4に示す。各試験片の易剥離性試験の結果を表5~表9に示す。23℃と80℃における粘着剤A~Cの貯蔵弾性率とtanδの測定値を表10に示す。表2~4中の「PT」は、粘着シートを被着体から剥がす際に粘着剤層が被着体側に部分的に転着したことを意味し、「AT」は、粘着剤層が被着体側に完全に転着したことを意味する。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【表10】
実施例1~3、4~20と比較例1との比較から、同じ粘着剤を使用した場合でも、エポキシ系硬化剤又は金属キレート系硬化剤を使用した場合は、イソシアネート系硬化剤を使用した場合に比べて被着体に対する粘着力が小さくなる傾向にあることが分かった。イソシアネート系硬化剤を使用した比較例1の粘着シートでは基材と粘着剤層との剥離ができなかったのに対し、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤又は両硬化剤を混合した場合(実施例24、25)の粘着シートでは、粘着剤層を被着体と基材の両方から剥離させることができた。
【0101】
また、金属キレート系硬化剤を使用した実施例1~3、21~23の粘着シートでは粘着剤層を基材から剥離できる条件が限定的であるのに対し、所定量のエポキシ系硬化剤を使用した場合(例えば実施例6~20)では、100℃沸騰水と乾燥状態120℃の両方で粘着剤層と基材とを剥離できる例が多いことが確認できた。
【0102】
また、実施例9~14の易剥離性評価の結果から、発泡剤の添加量が同じ場合には粘着剤層の厚みが大きい方が粘着剤層と基材との剥離が良好になることが分かった。