(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035437
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】積層コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/514 20060101AFI20240307BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H01R13/514
H01R13/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139886
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087EE14
5E087FF02
5E087GG14
5E087GG31
5E087JJ08
5E087MM05
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】端子収容室内における端子金具の移動ストロークを短くする。
【解決手段】積層コネクタは、偏平な形状をなし、積層状態で組み付けられる複数のサブハウジング31,41と、サブハウジング31,41の内部に形成され、前後方向に細長い空間であって、幅方向に沿って並列するように配置された複数の端子収容室12と、複数の端子収容室12に個別に収容される複数の端子金具15と、端子収容室12に形成され、端子金具15を抜止めするランス13と、サブハウジング31,41の下壁部46に形成され、ランス13よりも後方の領域を端子収容室12に沿って切り欠いた形態であり、端子収容室12をサブハウジング31,41の下壁面47に開口させる端子収容口45とを備えている
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平な形状をなし、積層状態で組み付けられる複数のサブハウジングと、
前記サブハウジングの内部に形成され、前後方向に細長い空間であって、幅方向に沿って並列するように配置された複数の端子収容室と、
前記複数の端子収容室に個別に収容される複数の端子金具と、
前記端子収容室に形成され、前記端子金具を抜止めするランスと、
前記サブハウジングの外壁部に形成され、前記ランスよりも後方の領域を前記端子収容室に沿って切り欠いた形態であり、前記端子収容室を前記サブハウジングの外壁面に開口させる端子収容口とを備えている積層コネクタ。
【請求項2】
前記積層状態において重なり合う2つの前記サブハウジングのうち、一方の前記サブハウジングには、他方の前記サブハウジングの前記端子収容口を貫通可能な突起状の抜止部が形成され、
前記積層状態では、前記他方の前記サブハウジングに取り付けた前記端子金具が、前記抜止部によって抜止めされる請求項1に記載の積層コネクタ。
【請求項3】
前記積層状態では、前記一方のサブハウジングの前記抜止部が、前記他方のサブハウジングの前記端子収容口の前端縁に対して後方から対向する位置に配置される請求項2に記載の積層コネクタ。
【請求項4】
前記積層状態において重なり合う2つの前記サブハウジングに形成され、前記他方の前記サブハウジングが前記一方のサブハウジングに対して前方へ相対変位することを規制する前進規制部を備えている請求項3に記載の積層コネクタ。
【請求項5】
重なり合う2つの前記サブハウジングに形成され、前記2つのサブハウジングが上下方向に離隔することを規制可能なロック部を備えている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層される複数のハウジングと、各ハウジング内に取り付けられる端子とを有する積層コネクタが開示されている。端子は、ハウジング内の端子収容室内に収容され、可撓係止ランスによって、抜止め状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の積層コネクタは、ハウジングに端子を取り付ける際に、端子を、ハウジングの前端面の開口から端子収容室内に挿入して、端子収容室内で後方へ移動させるため、端子収容室内における端子の移動ストロークが長い。そのため、自動機で端子を挿入する工程におけるタクトタイムが長く、製造コストが高くつく。
【0005】
本開示の積層コネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子収容室内における端子金具の移動ストロークを短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の積層コネクタは、
偏平な形状をなし、積層状態で組み付けられる複数のサブハウジングと、
前記サブハウジングの内部に形成され、前後方向に細長い空間であって、幅方向に沿って並列するように配置された複数の端子収容室と、
前記複数の端子収容室に個別に収容される複数の端子金具と、
前記端子収容室に形成され、前記端子金具を抜止めするランスと、
前記サブハウジングの外壁部に形成され、前記ランスよりも後方の領域を前記端子収容室に沿って切り欠いた形態であり、前記端子収容室を前記サブハウジングの外壁面に開口させる端子収容口とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、端子収容室内における端子金具の移動ストロークを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の積層コネクタを斜め上前方から視た斜視図である。
【
図2】
図2は、積層コネクタの分解状態を斜め上後方から視た斜視図である。
【
図3】
図3は、第3サブハウジングを斜め上後方から視た斜視図である。
【
図4】
図4は、第3サブハウジングを斜め下後方から視た斜視図である。
【
図5】
図5は、積層コネクタの組付け工程をあらわす側面図である。
【
図6】
図6は、積層コネクタの組付け工程をあらわす側断面図である。
【
図10】
図10は、第3サブハウジングに端子金具を取り付ける工程をあらわす側断面図である。
【
図11】
図11は、第3サブハウジングに端子金具を取り付けた状態をあらわす側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の積層コネクタは、
(1)偏平な形状をなし、積層状態で組み付けられる複数のサブハウジングと、前記サブハウジングの内部に形成され、前後方向に細長い空間であって、幅方向に沿って並列するように配置された複数の端子収容室と、前記複数の端子収容室に個別に収容される複数の端子金具と、前記端子収容室に形成され、前記端子金具を抜止めするランスと、前記サブハウジングの外壁部に形成され、前記ランスよりも後方の領域を前記端子収容室に沿って切り欠いた形態であり、前記端子収容室を前記サブハウジングの外壁面に開口させる端子収容口とを備えている。
【0010】
本開示の構成によれば、端子金具を端子収容室内に取り付ける際には、端子金具を端子収容口から端子収容室内に収容した後、端子金具を端子収容室内で前方へ移動させてランスにより抜止め状態にすればよい。端子金具を端子収容室に取り付ける工程において、端子金具をサブハウジングの後端面から端子収容室に挿入する場合に比べると、端子収容室内における端子金具の移動ストロークが短い。したがって、本開示によれば、端子金具を端子収容室に取り付ける際のタクトタイムが短くなり、製造コストを低減することができる。
【0011】
(2)前記積層状態において重なり合う2つの前記サブハウジングのうち、一方の前記サブハウジングには、他方の前記サブハウジングの前記端子収容口を貫通可能な突起状の抜止部が形成され、前記積層状態では、前記他方の前記サブハウジングに取り付けた前記端子金具が、前記抜止部によって抜止めされることが好ましい。この構成によれば、端子収容口を利用して端子金具を確実に抜止することができる。
【0012】
(3)(2)において、前記積層状態では、前記一方のサブハウジングの前記抜止部が、前記他方のサブハウジングの前記端子収容口の前端縁に対して後方から対向する位置に配置されることが好ましい。この構成によれば、積層状態において、他方のサブハウジングが一方のサブハウジングに対して後方へ相対変位することを規制できる。
【0013】
(4)(3)において、前記積層状態において重なり合う2つの前記サブハウジングに形成され、前記他方の前記サブハウジングが前記一方のサブハウジングに対して前方へ相対変位することを規制する前進規制部を備えていることが好ましい。この構成によれば、抜止部と前進規制部とによって、積層状態において重なり合う2つのサブハウジングを前後両方向に関して位置決めすることができる。
【0014】
(5)(2)又は(3)において、前記積層状態において重なり合う2つの前記サブハウジングに形成され、前記2つのサブハウジングが上下方向に離隔することを規制可能なロック部を備えていることが好ましい。この構成によれば、サブハウジングを積層状態に保持することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1の積層コネクタを、
図1~
図11を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、
図1~7,10,11におけるF方向を前方と定義する。左右の方向については、
図1~4,8,9におけるR方向を右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。上下の方向については、
図1~11におけるH方向を上方と定義する。上下方向と高さ方向と積層方向を同義で用いる。
【0016】
<積層コネクタの概要>
本実施例1の積層コネクタは、複数種類(本実施例1では、第1~第4の4種類)のサブハウジング11,21,31,41(
図1,2参照)と、各サブハウジング11,21,31,41に取り付けられる複数の雄形の端子金具15(
図6,7)と、各サブハウジング11,21,31,41に個別に取り付けられる複数のカバー24(
図5,6参照)と、を備えている。
【0017】
各サブハウジング11,21,31,41は、全体として、前後方向の奥行き寸法及び左右方向の幅寸法に対して、高さ寸法が小さい偏平な直方形をなしている。各サブハウジング11,21,31,41内には、前後方向に細長い複数の端子収容室12が、幅方向に並列するように形成されている。各端子収容室12内には、後述する端子金具15を抜止めするためのランス13(
図6,7参照)が形成されている。
【0018】
端子金具15は、
図6,7に示すように、全体として前後方向に細長い形状である。端子金具15は、端子本体部16と、端子本体部16から前方へ片持ち状に突出した細長いタブ17と、端子本体部16から後方へ延びた圧着部18とを有する。圧着部18は、電線19の前端部に対して圧着により接続されている。端子金具15は、端子本体部16を端子収容室12内に収容し、タブ17をサブハウジング11,21,31,41の前面から前方へ突出させた状態で、サブハウジング11,21,31,41に取り付けられる。端子金具15は、端子本体部16に形成した一次係止部22をランス13に係止させることによって、後方への移動を規制された状態に保持される。端子本体部16の後端部には、段差状の二次係止部23が形成されている。
【0019】
カバー24は、タブ17を異物の干渉から保護するために、各サブハウジング11,21,31,41の前端部に取り付けられる。カバー24は、複数のタブ17を一括して包囲する偏平な角筒状の覆い部25と、覆い部25の左右両端部から後方へ片持ち状に延出した一対のアーム部26とを有する。カバー24は、アーム部26をサブハウジング11,21,31,41の左右両側縁部に係止させることによって、サブハウジング11,21,31,41に取り付けられる。カバー24をサブハウジング11,21,31,41に取り付けた状態では、覆い部25がサブハウジング11,21,31,41の前方に隣接して並ぶように配置される。
【0020】
積層コネクタの組付けに際しては、まず、各サブハウジング11,21,31,41にカバー24を取り付け、その後、各サブハウジング11,21,31,41に複数の端子金具15を取り付ける。以上により、第1~第4の4種類の偏平なサブコネクタ10,20,30,40(
図5,6参照)が構成される。これら複数のサブコネクタ10,20,30,40は、高さ方向に積層した状態で組み付けられる。具体的には、下から順に、1つの第1サブコネクタ10と、1つの第2サブコネクタ20と、3つの第3サブコネクタ30と、1つの第4サブコネクタ40が積層される。サブコネクタ10,20,30,40を積層した後、複数のカバー24を、複数のサブハウジング11,21,31,41から一括して取り外す。以上により、積層コネクタの組付けが完了する。
【0021】
組み付けられた積層コネクタは、図示しないアウタハウジングに取り付けられるようになっている。アウタハウジングは、積層コネクタを収容するフレームと、フレームから前方へ突出した角筒状のフード部とを有する。フレーム内には、サブハウジング11,21,31,41が収容される。サブハウジング11,21,31,41から突出している複数のタブ17は、フード部によって一括して包囲される。複数のタブ17の前端部は、フード部内に収容したムービングプレート(図示省略)によって位置決めされるようになっている。
【0022】
<第1サブハウジング11の構成>
第1サブハウジング11は第3サブハウジング31と共通形状の部位を有するので、第1サブハウジング11の説明においては、第3サブハウジング31の形状をあらわす
図3,4も参照する。
図6に示すように、第1サブハウジング11の端子収容室12は、第1サブハウジング11の前後両端面に開口している。
図2~4に示すように、第1サブハウジング11の左右両外側面には、幅方向外方へ突出し、前後方向に延びた形状のガイドリブ32が形成されている。ガイドリブ32は、カバー24を第1サブハウジング11に対して着脱するときに、カバー24を案内するための部位である。ガイドリブ32は、外側面の前端側領域に配置されている。
図2に示すように、ガイドリブ32の後端部は、受け部33として機能する。
【0023】
第1サブハウジング11の左右両外側面の後端部には、幅方向外方に突出し、且つ第1サブハウジング11の下面よりも下方へ突出した形状の膨出部34が形成されている。膨出部34の上面は、第1サブハウジング11の上面及び受け部33よりも下方に位置しており、この高低差によって膨出部34の上方には位置決め凹部35が形成されている。第1サブハウジング11を上から視た平面視において、受け部33と位置決め凹部35は前後に隣り合うように配置されている。受け部33は、前方から位置決め凹部35に臨むように位置している。膨出部34の後端部には、幅方向外方へ突出した形状の治具嵌合部36が形成されている。
【0024】
第1サブハウジング11の上面における左右両端部には、上方へ壁状に突出した形状の弾性ロック片37が形成されている。弾性ロック片37は、左右方向へ傾くように弾性変形することができる。第1サブハウジング11の左右両外側面には、前後方向にリブ状に延びるロック突起38が形成されている。弾性ロック片37とロック突起38は、前後方向において、ガイドリブ32に形成領域の範囲内であり、且つ受け部33よりも前方に配置する。
【0025】
<第2サブハウジング21の構成>
第2サブハウジング21は第3サブハウジング31と共通形状の部位を有するので、第2サブハウジング21の説明においては、第3サブハウジング31の形状をあらわす
図3,4も参照する。第2サブハウジング21は、第1サブハウジング11と同じく、一対のガイドリブ32、一対の受け部33、一対の膨出部34、一対の位置決め凹部35、一対の治具嵌合部36、一対の弾性ロック片37及び一対のロック突起38を有する。第2サブハウジング21は、更に、一対の位置決め突部39と、一対の押圧部42と、一対の保持解除部43と、複数の抜止部44とを有する。
【0026】
位置決め突部39は、膨出部34のうち第2サブハウジング21の下面よりも下方へ突出した部位である。平面視において、位置決め突部39は位置決め凹部35と同じ領域に配置されている。位置決め突部39の前端部のうち前方へ臨む部位は、押圧部42として機能する。押圧部42は、第2サブハウジング21の下面よりも下方に位置する。位置決め突部39の前端部のうち下方へ臨む部位は、保持解除部43として機能する。
【0027】
複数の抜止部44は、突起状をなし、第2サブハウジング21の上面に幅方向に所定ピッチで並ぶように配置されている。幅方向において、複数の抜止部44は、第3サブハウジング31に形成されている複数の端子収容室12と同じ位置に配置されている。前後方向において、抜止部44は、ランス13よりも後方に配置されている。
【0028】
<第3サブハウジング31>
第3サブハウジング31は、第2サブハウジング21と同じく、一対のガイドリブ32、一対の受け部33、一対の膨出部34、一対の位置決め凹部35、一対の治具嵌合部36、一対の弾性ロック片37、一対のロック突起38、一対の位置決め突部39、一対の保持解除部43と、一対の押圧部42、及び複数の抜止部44を有する。
【0029】
第3サブハウジング31は、更に、複数の端子収容口45を有する。各端子収容口45は、第3サブハウジング31の下壁部46(外壁部)を端子収容室12に沿って切り欠いた形状である。端子収容口45の開口幅は、端子収容室12の全幅領域に相当する。前後方向における端子収容口45の開口範囲は、ランス13よりも後方の位置から、端子収容室12(第3サブハウジング31)の後端に至る領域である。端子収容口45の前端縁45Fの位置は、端子収容室12内に挿入されている端子金具15の二次係止部23の後端と同じ位置である。端子収容口45の後端部は、第3サブハウジング31の後端面における端子収容室12の開口と連通している。
【0030】
<第4サブハウジング41>
第4サブハウジング41は、第3サブハウジング31と同じく、一対のガイドリブ32、一対の受け部33、一対の膨出部34、一対の位置決め凹部35、一対の治具嵌合部36、一対の弾性ロック片37、一対のロック突起38、一対の位置決め突部39、一対の保持解除部43、一対の押圧部42、複数の抜止部44、及び複数の端子収容口45を有する。第4サブハウジング41は、第3サブハウジング31に形成されていた一対の弾性ロック片37と複数の抜止部44を有していない。
【0031】
<積層コネクタの組み付け手順>
まず、カバー24を前方からサブハウジング11,21,31,41に接近させ、アーム部26をガイドリブ32に摺接させることによって、カバー24をサブハウジング11,21,31,41に取り付ける。アーム部26に形成した弾性保持片(図示省略)を受け部33に係止させることによって、カバー24がサブハウジング11,21,31,41に対して取付け状態に保持される。サブハウジング11,21,31,41の前方、即ち端子金具15をサブハウジング11,21,31,41に取り付けたときにタブ17が突出する領域には、カバー24の覆い部25が配置される。
【0032】
カバー24をサブハウジング11,21,31,41に取り付けた後に、端子金具15を端子収容室12に取り付ける。第1サブハウジング11と第2サブハウジング21に関しては、サブハウジング11,21の後方から端子金具15を挿入する。第3サブハウジング31と第4サブハウジング41に関しては、
図10に示すように、端子金具15を端子収容口45から端子収容室12内に収容する。
【0033】
第3サブハウジング31及び第4サブハウジング41に取り付けを開始するときの端子金具15の移動方向は、前後方向(端子収容室12及び端子金具15の長さ方向)ではなく、高さ方向(端子収容室12及び端子金具15の長さ方向と直交する方向)である。端子収容口45から端子収容室12に収容するときの端子金具15の位置は、タブ17の前端が端子収容口45の前端縁よりも僅かに後方に位置するように設定する。
【0034】
端子収容口45から端子金具15を端子収容室12に収容した後、端子金具15を前方へスライドさせる。端子金具15が、正規の取付け位置(端子本体部16の前端が端子収容室12の前端の壁面に突き当たる位置)に到達すると、
図11に示すように、一次係止部22がランス13に係止することによって、端子金具15が抜止めされる。端子収容口45から端子収容室12内に収容された端子金具15が、正規の取付け位置に至るまでに移動する距離(端子収容室12内における端子金具15の前後方向の移動距離Da)は、端子収容口45の前端縁45Fから端子収容室12の前端までの長さに、端子本体部16からのタブ17の突出寸法を加えた長さである。
【0035】
端子収容室12内における前後方向の移動距離Daは、端子金具15を端子収容室12の後端の開口から挿入する場合の移動距離Dbに比べると、端子収容口45の前後方向の長さ寸法分だけ短かい。そして、サブハウジング31,41(端子収容室12)の外部に位置する端子金具15を、端子収容口45から端子収容室12内に収容するときの上下方向の移動距離は、端子金具15の高さ寸法と、サブハウジング31,41の下壁部46の厚さ寸法と、端子収容室12の高さ寸法とを併せた長さである。この長さは、端子収容口45の前後長さに比べると、充分に短い。
【0036】
したがって、端子金具15を端子収容口45から端子収容室12に収容して取り付ける本実施例1の場合と、端子金具15をサブハウジング11,21の後端の開口から挿入して取り付ける場合とを比較すると、端子金具15の取付け工程における総移動距離は、本実施例1の場合の方が短い。よって、本実施例1では、端子金具15を第3サブハウジング31及び第4サブハウジング41に取り付ける際のタクトタイムを短縮することができる。
【0037】
端子金具15を各サブハウジング11,21,31,41に取り付けた状態では、タブ17がサブハウジング11,21,31,41の前端面よりも前方へ突出するが、タブ17の突出部位は、カバー24の覆い部25によって上下方向及び左右方向から全周に亘って包囲されている。したがって、タブ17に対して異物が干渉する虞はない。
【0038】
サブハウジング11,21,31,41にカバー24と端子金具15を取り付けることによって、第1~第4サブコネクタ10,20,30,40が構成される。第1~第4サブコネクタ10,20,30,40を積層する際には、まず、第1サブコネクタ10の上面に第2サブコネクタ20を重ねる。上下に重ね合わせた第1サブコネクタ10と第2サブコネクタ20は、第1サブハウジング11の弾性ロック片37と第2サブハウジング21のロック突起38との係止によって、積層状態に保持される。
【0039】
両サブハウジング11,21を積層した状態では、第2サブハウジング21の位置決め突部39が第1サブハウジング11の位置決め凹部35に嵌合されることによって、両サブコネクタ10,20が左右方向に位置決めされる。同時に、第1サブハウジング11の受け部33に対して第2サブハウジング21の押圧部42が後方から当接することによって、第2サブハウジング21が第1サブハウジング11に対して前方へ相対移動することを規制される。
【0040】
さらに、第2サブハウジング21の位置決め突部39が第1サブハウジング11の位置決め凹部35に嵌合すると、第1サブハウジング11に取り付けたカバー24の弾性保持片(図示省略)が、保持解除部43によって弾性変形させられ、第1サブハウジング11の受け部33から外れる。これにより、カバー24を第1サブハウジング11から離脱させることが可能になる。
【0041】
この後、第2サブコネクタ20の上面に第3サブコネクタ30を重ね合わせる。このとき、第1サブコネクタ10の上面に第2サブコネクタ20を重ねたときと同様に、第2サブコネクタ20と第3サブコネクタ30が、積層状態に保持され、左右方向に位置決めされる。また、第3サブハウジング31が第2サブハウジング21に対して前方へ相対移動することを規制される。第2サブハウジング21に取り付けられていたカバー24は、第2サブハウジング21から離脱することが可能となる。
【0042】
さらに、第2サブハウジング21の抜止部44が、第3サブハウジング31の端子収容口45から端子収容室12内に進入して、第3サブハウジング31内の端子金具15の二次係止部23に対して後方から係止可能となる。これにより、第3サブハウジング31内の端子金具15がランス13と抜止部44とによって確実に抜止め状態に保持される。また、第2サブハウジング21の抜止部44は、第3サブハウジング31の端子収容口45の前端縁45Fに対して後方から近接した位置関係で対向するので、第3サブハウジング31が第2サブハウジング21に対して後方へ相対変位することを規制される。
【0043】
この後、第3サブコネクタ30の上面に別の第3サブコネクタ30を重ね合わせる。このとき、第2サブコネクタ20の上面に第3サブコネクタ30を重ねたときと同様に、2つの第3サブコネクタ30同士が、積層状態に保持され、左右方向に位置決めされる。また、上側の第3サブハウジング31が下側の第3サブハウジング31に対して前方及び後方へ相対移動することを規制される。下側の第3サブハウジング31に取り付けられているカバー24は、第3サブハウジング31から離脱することが可能となる。この後、上側の第3サブコネクタ30の上面に、更に別の第3サブコネクタ30を重ね合わせる。
【0044】
3つの第3サブコネクタ30を積層した後、最上層の第3サブコネクタ30の上面に、第4サブコネクタ40を重ねる。このとき、第3サブコネクタ30同士を重ねたときと同様に、第3サブコネクタ30と第4サブコネクタ40とが、積層状態に保持され、左右方向に位置決めされる。また、第4サブハウジング41が最上層の第3サブハウジング31に対して前方及び後方へ相対移動することを規制される。最上層の第3サブハウジング31に取り付けられていたカバー24は、第3サブハウジング31から離脱することが可能となる。第4サブハウジング41に取り付けられていたカバー24の弾性保持片(図示省略)は、第4サブハウジング41の受け部33に係止したままの状態である。以上により、サブコネクタ10,20,30,40の積層工程が完了する。
【0045】
この後、第4サブコネクタ40のカバー24の弾性保持片を、治具等によって受け部33から外し、全てのカバー24をサブハウジング11,21,31,41から前方へスライドさせるようにして外す。以上により、積層コネクタの組付けが完了する。
【0046】
本実施例1の積層コネクタは、偏平な形状をなし、積層状態で組み付けられる複数のサブハウジング11,21,31,41と、複数の端子金具15とを有する。各サブハウジング11,21,31,41の内部には、前後方向に細長い空間であって、幅方向に沿って並列するように配置された複数の端子収容室12が形成されている。複数の端子金具15は、複数の端子収容室12に対して個別に収容される。端子収容室12には、端子金具15を抜止めするためのランス13が形成されている。第3サブハウジング31と第4サブハウジング41の下壁部46(外壁部)には、端子収容口45が形成されている。端子収容口45は、下壁部46のうちランス13よりも後方の領域のみを、端子収容室12に沿って前後方向に細長く切り欠いた形態である。端子収容口45は、端子収容室12をサブハウジング31,41の下壁面47(外壁面)に開口させる。
【0047】
この構成によれば、端子金具15を第3サブハウジング31及び第4サブハウジング41の端子収容室12内に取り付ける際には、端子金具15を端子収容口45から端子収容室12内に収容した後、端子金具15を端子収容室12内で前方へ移動させてランス13により抜止め状態にすればよい。端子金具15を端子収容室12に取り付ける工程において、端子金具15を第3サブハウジング31や第4サブハウジング41の後端面から端子収容室12に挿入する場合に比べると、端子収容室12内における端子金具15の移動ストロークが短い。したがって、本実施例1によれば、端子金具15を端子収容室12に取り付ける際のタクトタイムが短くなり、製造コストを低減することができる。
【0048】
積層状態において上下に重なり合う2つのサブハウジング21,31,41のうち、一方(下側)のサブハウジング21,31には、他方(上側)のサブハウジング31,41の端子収容口45を貫通可能な突起状の抜止部44が形成されている。積層状態では、上側のサブハウジング31,41に取り付けた端子金具15が、抜止部44によって抜止めされる。この構成によれば、端子収容口45を利用して端子金具15を確実に抜止することができる。
【0049】
積層状態では、一方(下側)のサブハウジング21,31の抜止部44が、他方(上側)のサブハウジング31,41の端子収容口45の前端縁45Fに対して後方から対向する位置に配置される。この構成によれば、積層状態において、上側のサブハウジング31,41が下側のサブハウジング21,31に対して後方へ相対変位することを規制することができる。積層状態において重なり合う2つのサブハウジング21,31,41のうち一方(下側)のサブハウジング21,31には、受け部33が形成され、他方(上側)のサブハウジング31,41には押圧部42が形成されている。受け部33と押圧部42は、前後方向に当接することによって、下側のサブハウジング21,31に対して上側のサブハウジング31,41が前方へ相対変位することを規制する前進規制部としての機能を発揮する。抜止部44と端子収容口45と受け部33と押圧部42とによって、積層状態において上下に重なり合う2つのサブハウジング21,31,41を前後両方向に関して位置決めすることができる。
【0050】
積層状態において重なり合う2つのサブハウジング11,21,31,41のうち、一方(下側)のサブハウジング11,21,31には、弾性ロック片37が形成され、他方(上側)のサブハウジング21,31,41にはロック突起38が形成されている。弾性ロック片37とロック突起38は、互いに係止することによって、積層状態の2つのサブハウジング11,21,31,41が上下方向に離隔することを規制可能なロック部として機能する。弾性ロック片37とロック突起38とによって、サブハウジング11,21,31,41を積層状態に保持することができる。
【0051】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
端子金具は、前端部に細長いタブを有する雄形の端子金具に限らず、タブを有しない雌形の端子金具であってもよい。
抜止部は、端子収容口側(他方)のサブハウジングが抜止部側(一方)のサブハウジングに対して前方へ相対変位することを規制する機能を有しないものでもよい。
端子収容室間を区画する隔壁部のうち、前後方向において抜止部と同じ領域を切り欠き、その切り欠き部分に、幅方向に細長い1つの抜止部を嵌合させてもよい。
受け部は、押圧部との協動によってサブハウジング同士の相対変位を規制する機能と、カバーの弾性保持片を係止させる機能のうち、いずれか一方の機能のみを有するものであってもよい。
端子収容口に抜止部が収容されない形態としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…第1サブコネクタ
11…第1サブハウジング
12…端子収容室
13…ランス
15…端子金具
16…端子本体部
17…タブ
18…圧着部
19…電線
20…第2サブコネクタ
21…第2サブハウジング(一方のサブハウジング)
22…一次係止部
23…二次係止部
24…カバー
25…覆い部
26…アーム部
30…第3サブコネクタ
31…第3サブハウジング(サブハウジング、一方のサブハウジング、他方のサブハウジング)
32…ガイドリブ
33…受け部(一方のサブハウジングの前進規制部)
34…膨出部
35…位置決め凹部
36…治具嵌合部
37…弾性ロック片(ロック部)
38…ロック突起(ロック部)
39…位置決め突部
40…第4サブコネクタ
41…第4サブハウジング(サブハウジング、他方のサブハウジング)
42…押圧部(他方のサブハウジングの前進規制部)
43…保持解除部
44…抜止部
45…端子収容口
45F:端子収容口の前端縁
46…下壁部(外壁部)
47…下壁面(外壁面)
Da…端子収容口から端子収容室内に収容された端子金具の移動距離
Db…端子金具を端子収容室の後端の開口から挿入する場合の端子金具の移動距離