(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035443
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパ、及び制振構成部材
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139898
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000101905
【氏名又は名称】イイダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕章
(72)【発明者】
【氏名】三輪 直也
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AC05
3J048AD05
3J048BD08
3J048BF09
3J048BF13
3J048DA04
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】異なる方向に沿った振動の減衰に好適に用いることのできるダイナミックダンパ、及び制振構成部材を提供する。
【解決手段】ダイナミックダンパ11は、建築物を構成する構成部材に取り付けられる筐体21と、筐体21内に配置され、複数の外面31a~31fによって多面体状に形成される錘部材31と、錘部材31と筐体21とを接続する粘弾性部材41とを備える。錘部材31の各外面31a~31fは、粘弾性部材41が接触される接触領域と、粘弾性部材41が接触されない非接触領域とを有する。各接触領域の全周は、非接触領域により囲まれることで、各接触領域に接続される各粘弾性部材41a~41fは、互いに非接触となるように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を構成する構成部材に取り付けられる筐体と、
前記筐体内に配置され、複数の外面によって多面体状に形成される錘部材と、
前記錘部材と前記筐体とを接続する粘弾性部材と、を備え、
前記錘部材の前記各外面は、前記粘弾性部材が接触される接触領域と、前記粘弾性部材が接触されない非接触領域と、を有し、
前記各接触領域の全周は、前記非接触領域により囲まれることで、前記各接触領域に接続される前記各粘弾性部材は、互いに非接触となるように配置される、ダイナミックダンパ。
【請求項2】
前記粘弾性部材は、ゲル状材料から構成される粘弾性部材を含む、請求項1に記載のダイナミックダンパ。
【請求項3】
前記粘弾性部材は、自己粘着性を有し、前記錘部材及び前記筐体に粘着する粘弾性部材を含む、請求項1又は請求項2に記載のダイナミックダンパ。
【請求項4】
建築物を構成する構成部材と、
前記構成部材に取り付けられる請求項1に記載のダイナミックダンパと、を備える制振構成部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックダンパ、及び制振構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、軟質層と軟質層に積層された硬質層を有する板状防音材が知られている。この板状防音材は、連結具によって床下地材から離間した状態で取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような板状防音材は、床下地材等の構造部材の一方向の振動に対して一定の効果が得られるものの、異なる方向に沿った振動を減衰させるという観点で未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、異なる方向に沿った振動の減衰に好適に用いることのできるダイナミックダンパ、及び制振構成部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するダイナミックダンパ、及び制振構成部材の各態様について説明する。
態様1のダイナミックダンパは、建築物を構成する構成部材に取り付けられる筐体と、前記筐体内に配置され、複数の外面によって多面体状に形成される錘部材と、前記錘部材と前記筐体とを接続する粘弾性部材と、を備え、前記錘部材の前記各外面は、前記粘弾性部材が接触される接触領域と、前記粘弾性部材が接触されない非接触領域と、を有し、前記各接触領域の全周は、前記非接触領域により囲まれることで、前記各接触領域に接続される前記各粘弾性部材は、互いに非接触となるように配置される。
【0007】
この構成によれば、錘部材と筐体とを接続する粘弾性部材は、錘部材の各外面に接続されているため、錘部材は、錘部材の各外面に交差する方向に沿って移動することができる。このとき、各粘弾性部材は、錘部材の各外面の上記接触領域に対する接続により、互いに非接触となるように配置されている。これにより、上記の各方向に沿った錘部材の動きの制約が緩和されるとともに、外部からの振動に対する錘部材の応答性が向上される。
【0008】
態様2のダイナミックダンパは、態様1において、前記粘弾性部材は、ゲル状材料から構成される粘弾性部材を含んでもよい。この構成によれば、ゲル状材料の柔軟性により、錘部材の動き易さを向上させることができる。
【0009】
態様3のダイナミックダンパは、態様1又は態様2において、前記粘弾性部材は、自己粘着性を有し、前記錘部材及び前記筐体に粘着する粘弾性部材を含んでもよい。この構成によれば、構成部材から錘部材への振動の伝達性が確保され易くなることで、錘部材の動き易さを容易に維持することが可能となる。
【0010】
態様4の制振構成部材は、建築物を構成する構成部材と、前記構成部材に取り付けられる上記ダイナミックダンパと、を備える。この構成によれば、建築物の振動を減衰させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、異なる方向に沿った振動の減衰に好適に用いることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態におけるダイナミックダンパを示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、ダイナミックダンパを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、制振構成部材の要部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、錘部材における接触領域及び非接触領域を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ダイナミックダンパ、及び制振構成部材の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1~
図3に示すように、ダイナミックダンパ11は、筐体21と、筐体21内に配置される錘部材31と、錘部材31と筐体21とを接続する粘弾性部材41とを備えている。ダイナミックダンパ11は、建築物を構成する構成部材に取り付けられて用いられる。
【0014】
<筐体21>
筐体21の形状は、六面体である。筐体21は、下壁22と、上壁23と、下壁22と上壁23との間に設けられる4つの側壁24とを有している。側壁24は、互いに向かい合う一対の第1側壁24a及び第2側壁24bを有している。側壁24は、第1側壁24aと第2側壁24bとの間に配置され、互いに向かい合う第3側壁24c及び第4側壁24dを有している。
【0015】
以下、図面中のXYZ軸におけるX軸は、水平方向を表し、Y軸は、X軸と直交する水平方向を表し、Z軸はXY平面に対して直交する上方を表している。
下壁22と第3側壁24cとは、一体品である第1壁体W1を構成している。上壁23と第4側壁24dとは、一体品である第2壁体W2を構成している。
図2に示すように、第1壁体W1と第2壁体W2とを組み付けることで筒状体C1が得られる。
【0016】
図1~
図3に示すように、筐体21は、第1側壁24aに設けられる第1嵌合部25を備えている。筐体21は、第2側壁24bに設けられる第2嵌合部26を備えている。
図2及び
図3に示すように、第1嵌合部25は、筒状体C1の両端部のうち、一端部に外嵌する。第2嵌合部26は、筒状体C1の両端部のうち、他端部に外嵌する。
【0017】
本実施形態の筐体21は、取り付け用の複数の取付片21a,21bを備えている。取付片21a,21bは、第1側壁24aと隣り合う位置に設けられている。取付片21a,21bは、例えば、ボルト等の取付部材を挿通可能な貫通孔を有している。
【0018】
筐体21の材料としては、例えば、樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。樹脂材料の中でも、筐体21の耐衝撃性を高める観点から、ABS樹脂が好ましい。筐体21を構成する部材は、例えば、射出成形等により成形することができる。
【0019】
<錘部材31>
錘部材31は、複数の外面によって多面体状に形成されている。本実施形態の錘部材31の形状は、六面体である。詳述すると、錘部材31は、
図1に示すように、筐体21の下壁22に向かい合う第1外面31aと、筐体21の上壁23に向かい合う第2外面31bとを有している。錘部材31は、筐体21の第1側壁24a、第2側壁24b、第3側壁24c、及び第4側壁24dにそれぞれ向かい合う第3外面31c、第4外面31d、第5外面31e、及び第6外面31fを有している。
【0020】
錘部材31の材料としては、例えば、鉄鋼等の金属材料が挙げられる。錘部材31の一辺の寸法は、特に限定されないが、例えば、50mm以上、90mm以下の範囲内である。
【0021】
<粘弾性部材41>
粘弾性部材41は、筐体21の下壁22に接続される第1粘弾性部材41aと、上壁23に接続される第2粘弾性部材41bとを有している。粘弾性部材41は、筐体21の第1側壁24aに接続される第3粘弾性部材41cと、第2側壁24bに接続される第4粘弾性部材41dとを有している。粘弾性部材41は、筐体21の第3側壁24cに接続される第5粘弾性部材41eと、第4側壁24dに接続される第6粘弾性部材41fとを有している。
【0022】
粘弾性部材41は、ゲル状材料から構成される粘弾性部材41を含むことが好ましい。本実施形態の各粘弾性部材41a~41fは、いずれもゲル状材料から構成されている。ゲル状材料は、各種高分子材料(有機高分子材料)から構成することが可能である。ゲル状材料は、耐久性等の観点から、ポリウレタンゲルが好ましい。ポリウレタンゲルは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを含有するウレタン原料から得られる。ポリオール成分としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール、多価アルコールとポリカルボン酸とのヒドロキシル末端反応生成物であるポリエステルポリオール、及びポリカーボネートジオール類が挙げられる。イソシアネート成分としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートモノマー、及びそれらのプレポリマーが挙げられる。
【0023】
ポリオール成分及びイソシアネート成分は、それぞれ単独種を用いてもよいし、ポリオール成分及びイソシアネート成分の少なくとも一方について複数種を用いてもよい。
ウレタン原料には、必要に応じて、可塑剤、触媒、耐候安定剤等の添加剤を含有させることもできる。可塑剤は、硬度を調整するために用いることができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等)、安息香酸エステル、及び脂肪酸エステルが挙げられる。触媒としては、例えば、アミン系触媒、及び有機金属系触媒が挙げられる。触媒としては、ウレタン化反応による樹脂化を促進するという観点から有機金属系触媒が好ましい。耐候安定剤は、ゲル状材料の熱、光、又は水による劣化を抑制するために用いることができる。耐候安定剤としては、例えば、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等)、光安定剤(ヒンダードアミン系等)、及び加水分解防止剤(カルボジイミド系等)が挙げられる。
【0024】
粘弾性部材41は、ゲル状材料の押出成形、射出成形等により成形することができる。本実施形態の各粘弾性部材41a~41fは、同じ種類のゲル状材料から構成されている。なお、各粘弾性部材41a~41fのうち、少なくとも二つの粘弾性部材41を互いに異なる種類のゲル状材料から構成することもできる。
【0025】
粘弾性部材41の硬度は、Shore00硬度において、35以上であることが好ましく、より好ましくは、40以上である。粘弾性部材41のShore00硬度が35以上の場合、粘弾性部材41の過剰な変形を抑えることができる。粘弾性部材41の硬度は、Shore00硬度において、77以下であることが好ましく、より好ましくは、50以下である。粘弾性部材41のShore00硬度が77以下の場合、粘弾性部材41の動きを促進することができる。粘弾性部材41の硬度は、厚さ10mmの粘弾性部材41の測定用サンプルについて、温度23±2℃の条件でShore00硬度計を用いて測定することができる。
【0026】
本実施形態の粘弾性部材41は、自己粘着性を有することで、錘部材31及び筐体21に粘着する。粘弾性部材41の粘着力は、1.0N以上であることが好ましい。粘弾性部材41の粘着力は、粘弾性部材41に粘着させた樹脂フィルムを剥離する剥離試験により測定することができる。剥離試験では、まず、厚さ5mm、長さ100mm、幅25mmの粘弾性部材41の測定用サンプルを準備する。この測定用サンプルを鋼板(冷間圧延鋼板(SPCC)、厚さ0.8mm、長さ200mm、幅25mm)に長さ方向を合わせるように貼り付ける。さらに、測定用サンプルに、PETフィルム(厚さ25μm×長さ250mm×幅30mm)を、長さ方向を合わせるように貼り付けた後、PETフィルム上を500gのローラーを1往復させることで、PETフィルムを測定用サンプルに圧着させる。続いて、PETフィルムを180°の角度で折り返す方向に引っ張ることで、測定用サンプルから剥離させたときの強度を測定する。剥離試験は、温度23±2℃、PETフィルムの引張速度200mm/minの条件で測定することができる。
【0027】
<錘部材31と粘弾性部材41との接続構造>
図4に示すように、錘部材31における第2外面31bは、梨地模様で示す接触領域A1と、接触領域A1の全周を囲む非接触領域A2とを有している。接触領域A1は、第2粘弾性部材41bが接触される領域であり、非接触領域A2は、第2粘弾性部材41bが接触されない領域である。
【0028】
錘部材31における第1外面31a及び第3~第6外面31c~31fの各外面についても、図示を省略するが、接触領域A1と、接触領域A1の全周を囲む非接触領域A2とを有している。すなわち、第1外面31a及び第3~第6外面31c~31fの各外面の接触領域A1は、各外面に対応して設けられる第1粘弾性部材41a及び第3~第6粘弾性部材41c~41fが接触される領域である。また、第1外面31a及び第3~第6外面31c~31fの各外面の非接触領域A2は、各外面に対応して設けられる第1粘弾性部材41a及び第3~第6粘弾性部材41c~41fが接触されない領域である。
【0029】
以上のように、各接触領域A1に接触される各粘弾性部材41a~41fは、互いに非接触となるように配置される。
<粘弾性部材41の厚さ>
図1~
図3に示すように、粘弾性部材41は、互いに異なる厚さの粘弾性部材41を含む。ここで言う粘弾性部材41の厚さにより、振動しない平常時における筐体21と錘部材31との間隔が決定される。粘弾性部材41は、互いに異なる厚さ範囲となる複数の組により構成されている。粘弾性部材41の組は、錘部材31に対して互いに反対側となる一対の外面に接続される粘弾性部材41をいう。本実施形態の粘弾性部材41は、互いに異なる厚さ範囲となる第1組、第2組、及び第3組により構成されている。
【0030】
詳述すると、第1組は、第1粘弾性部材41aと第2粘弾性部材41bとからなる。第2組は、第3粘弾性部材41cと第4粘弾性部材41dとからなる。第3組は、第5粘弾性部材41eと第6粘弾性部材41fとからなる。
【0031】
第1組を構成する第1粘弾性部材41aの厚さ寸法t11と第2粘弾性部材41bの厚さ寸法t12は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。第2組を構成する第3粘弾性部材41cの厚さ寸法t21と第4粘弾性部材41dの厚さ寸法t22は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。第3組を構成する第5粘弾性部材41eの厚さ寸法t31と第6粘弾性部材41fの厚さ寸法t32は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0032】
第2組を構成する粘弾性部材41の厚さ寸法t21,t22は、第1組を構成する粘弾性部材41の厚さ寸法t11,t12よりも大きい。第3組を構成する粘弾性部材41の厚さ寸法t31,t32は、第2組を構成する粘弾性部材41の厚さ寸法t21,t22よりも大きい。
【0033】
第1組の厚さ範囲は、下記式(1.1)、及び式(1.2)で表される範囲内であることが好ましい。
2mm≦T11・・・(1.1)
T11≦T12≦1.5×T11・・・(1.2)
但し、第1粘弾性部材41aと第2粘弾性部材41bとの両部材のうち、一方の部材の厚さ寸法をT11とし、他方の部材の厚さ寸法をT12とする。
【0034】
第2組の厚さ範囲は、下記式(2.1)、及び式(2.2)で表される範囲内であることが好ましい。
T12<T21・・・(2.1)
T21≦T22≦1.5×T21・・・(2.2)
但し、第3粘弾性部材41cと第4粘弾性部材41dとの両部材のうち、一方の部材の厚さ寸法をT21とし、他方の部材の厚さ寸法をT22とする。
【0035】
第3組の厚さ範囲は、下記式(3.1)、及び式(3.2)で表される範囲内であることが好ましい。
T22<T31・・・(3.1)
T31≦T32≦1.5×T31・・・(3.2)
但し、第5粘弾性部材41eと第6粘弾性部材41fとの両部材のうち、一方の部材の厚さ寸法をT31とし、他方の部材の厚さ寸法をT32とする。
【0036】
第1組を構成する粘弾性部材41の厚さ寸法t11,t12は、例えば、5mm±1mmである。第2組を構成する粘弾性部材41の厚さ寸法t21,t22は、例えば、7mm±1mmである。第3組を構成する粘弾性部材41の厚さ寸法t31,t32は、例えば、18mm±1mmである。
【0037】
<ダイナミックダンパ11の製造方法>
次に、ダイナミックダンパ11の製造方法の一例について説明する。
まず、
図1に示すように、下壁22、上壁23、及び第1~第4側壁24a~24dに粘弾性部材41を取り付ける。このとき、粘弾性部材41を錘部材31に取り付けてもよい。次に、
図2に示すように、錘部材31を挟み込むように第1壁体W1と第2壁体W2とを組み付けることで、筒状体C1を得る。このとき、第1壁体W1と第2壁体W2を、接着剤を用いて接着してもよい。続いて、筒状体C1に第1側壁24aと第2側壁24bとを組み付けることで、ダイナミックダンパ11が得られる。このとき、筒状体C1と第1側壁24aを、接着剤を用いて接着してもよい。また、筒状体C1と第2側壁24bを、接着剤を用いて接着してもよい。
【0038】
<制振構成部材>
図3に示すように、制振構成部材51は、建築物を構成する構成部材52と、ダイナミックダンパ11とを備えている。構成部材52は、例えば、下階と上階との間の天井を構成する木造の梁が挙げられる。ダイナミックダンパ11は、筐体21の取付片21a,21bと、取付片21a,21bを構成部材52に取り付けるボルト等の取付部材によって構成部材52に固定することができる。本実施形態のダイナミックダンパ11は、筐体21の第1側壁24aが構成部材52の外面に沿うように取り付けられる。
【0039】
構成部材52に伝達された振動は、ダイナミックダンパ11の錘部材31を振動させる。このとき、粘弾性部材41が弾性変形されることで、振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。これにより、構成部材52の振動を減衰させることができる。
【0040】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ダイナミックダンパ11は、錘部材31と筐体21とを接続する粘弾性部材41とを備えている。錘部材31の各外面31a~31fは、粘弾性部材41が接触される接触領域A1と、粘弾性部材41が接触されない非接触領域A2とを有している。各接触領域A1の全周は、非接触領域A2により囲まれることで、各接触領域A1に接続される各粘弾性部材41a~41fは、互いに非接触となるように配置されている。
【0041】
この構成によれば、錘部材31と筐体21とを接続する粘弾性部材41は、錘部材31の各外面に接続されているため、錘部材31は、錘部材31の各外面31a~31fに交差する方向に沿って移動することができる。このとき、各粘弾性部材41a~41fは、錘部材31の各外面31a~31fの上記接触領域A1に対する接続により、互いに非接触となるように配置されている。これにより、上記の各方向に沿った錘部材31の動きの制約が緩和されるとともに、外部からの振動に対する錘部材31の応答性が向上される。従って、異なる方向に沿った振動の減衰に好適に用いることができる。
【0042】
(2)粘弾性部材41は、ゲル状材料から構成される粘弾性部材41を含むことが好ましい。すなわち、粘弾性部材41a~41fの少なくとも一つは、ゲル状材料から構成されることが好ましい。この場合、ゲル状材料の柔軟性により、錘部材31の動き易さを向上させることができる。従って、振動の減衰性能を容易に高めることが可能となる。この点、各粘弾性部材41a~41fのいずれもゲル状材料から構成されることがより好ましい。
【0043】
(3)粘弾性部材41は、自己粘着性を有し、錘部材31及び筐体21に粘着する粘弾性部材41を含むことが好ましい。すなわち、粘弾性部材41a~41fの少なくとも一つは、自己粘着性を有し、錘部材31及び筐体21に粘着する粘弾性部材41であることが好ましい。この場合、構成部材52から錘部材31への振動の伝達性が確保され易くなることで、錘部材31の動き易さを容易に維持することが可能となる。従って、振動の減衰性能を容易に高めることが可能となる。この点、各粘弾性部材41a~41fは、いずれも自己粘着性を有し、錘部材31及び筐体21に粘着する粘弾性部材41であることがより好ましい。
【0044】
(4)粘弾性部材41は、例えば、第1粘弾性部材41aと第3粘弾性部材41cとは、互いに異なる厚さの粘弾性部材41である。このように粘弾性部材41が互いに異なる厚さの複数の粘弾性部材41を含む場合、錘部材31の振動態様を容易に変化させることができる。これにより、例えば、より幅の広い周波数領域の振動を減衰することが可能となる。
【0045】
(5)例えば、第1粘弾性部材41aと第2粘弾性部材41bとからなる第1組と、第3粘弾性部材41cと第4粘弾性部材41dとからなる第2組とは、互いに異なる厚さ範囲を有している。このように粘弾性部材41は、互いに異なる厚さの範囲となる複数の組により構成されている。粘弾性部材41の組は、錘部材31に対して互いに反対側となる一対の外面に接続される粘弾性部材41から構成されている。この場合、例えば、上記第1組と第2組との2つの組により錘部材31の振動態様を容易に変化させることができる。これにより、例えば、より幅の広い周波数領域の振動を減衰することが可能となる。この点、例えば、本実施形態のように、錘部材31の形状が六面体であり、上記第1組、第2組、及び第3組、すなわち互いに異なる厚さの範囲となる3つの組により構成されることが好ましい。
【0046】
<変更例>
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・粘弾性部材41は、自己粘着性により、錘部材31及び筐体21に粘着するように構成しているが、例えば、自己粘着性を有しない粘弾性層と、粘弾性層に積層された粘着層又は接着層と、を有する粘弾性部材に変更することもできる。自己粘着性を有しない粘弾性層は、例えば、自己粘着性を有するゲル状材料を樹脂フィルム等の非粘着性の粘弾性材料で被覆することで構成することができる。
【0048】
・粘弾性部材41は、ゲル状材料とは異なる材料から構成することもできる。粘弾性部材41を、例えば、ゴム状材料からなる粘弾性層を有する粘弾性部材に変更してもよい。この粘弾性部材は、自己粘着性を有するゴム状材料から構成され、錘部材31及び筐体21に粘着することが好ましい。
【0049】
・粘弾性部材41は、中実部材に限定されず、例えば、空洞を有する中空部材やスポンジ状の多孔質部材であってもよい。
・例えば、第1粘弾性部材41aの数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。第2~第6粘弾性部材41b~41fの各粘弾性部材41の数についても、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0050】
・筐体21の第1嵌合部25及び第2嵌合部26の少なくとも一方を省略してもよい。筐体21の下壁22、上壁23、及び側壁24は、例えば、接着剤を用いて接着することで、組み付けることもできる。また、筐体21の下壁22、上壁23、及び側壁24は、各壁に係止部を設けることで、組み付けることもできる。
【0051】
・下壁22と第3側壁24cとは、一体品として第1壁体W1を構成しているが、別体品として構成した下壁22と第3側壁24cとを組み付けることもできる。上壁23と第4側壁24dとは、一体品として第2壁体W2を構成しているが、別体品として構成した上壁23と第4側壁24dとを組み付けることもできる。
【0052】
・筐体21の取付片21a,21bは、ボルト等の取付部材により構成部材52に取り付けられているが、例えば、接着剤を用いて構成部材52に取り付けることもできる。なお、筐体21は、二つの取付片21a,21bを有しているが、取付片の数は、一つ又は三つ以上であってもよい。
【0053】
・筐体21の取付片21a,21bを省略することもできる。この場合、筐体21を構成する下壁22、上壁23、及び第1~第4側壁24a~24dの少なくとも一つの壁を、例えば、ボルト等の取付部材、又は接着剤を用いて構成部材52に取り付ければよい。
【0054】
・粘弾性部材41の寸法は、例えば、構成部材52に入力される振動の周波数に応じて適宜変更することができる。例えば、第1組、第2組、及び第3組を構成する各粘弾性部材41a~41fの厚さを同じ厚さに変更してもよい。
【0055】
また、例えば、第3組を構成する粘弾性部材41の厚さ範囲を、第2組を構成する粘弾性部材41の厚さ範囲と同様の範囲に変更してもよい。すなわち、第3組の厚さ範囲を表す式のうち、上記式(3.1)を下記式(3.1.1)に変更することもできる。
【0056】
2mm≦T11・・・(1.1)
T11≦T12≦1.5×T11・・・(1.2)
T12<T21・・・(2.1)
T21≦T22≦1.5×T21・・・(2.2)
T12<T31・・・(3.1.1)
T31≦T32≦1.5×T31・・・(3.2)
また、例えば、第2組を構成する粘弾性部材41の厚さ範囲を、第1組を構成する粘弾性部材41の厚さ範囲と同様の範囲に変更してもよい。すなわち、第2組の厚さ範囲を表す式のうち、上記式(2.1)を下記式(2.1.1)に変更し、さらに下記式(3.1.2)を満たすように変更してもよい。
【0057】
2mm≦T11・・・(1.1)
T11≦T12≦1.5×T11・・・(1.2)
2mm≦T21・・・(2.1.1)
T21≦T22≦1.5×T21・・・(2.2)
T12<T31・・・(3.1.2)
T22<T31・・・(3.1)
T31≦T32≦1.5×T31・・・(3.2)
・構成部材52に対してダイナミックダンパ11を取り付ける向きは、例えば、構成部材52に入力される周波数に応じて変更することができる。例えば、互いに向かい合う筐体21の側壁24,24が上下の関係となる配置で、ダイナミックダンパ11を構成部材52に取り付けてもよい。このように筐体21の下壁22及び上壁23は、構成部材52に取り付けたダイナミックダンパ11において上下を規定するものではない。
【0058】
・上記ダイナミックダンパ11は、建築物を構成する構成部材52の上面と下面との間で鉛直方向に延びる側面に取り付けられているが、構成部材52の上面又は下面に取り付けることもできる。
【0059】
・上記実施形態の錘部材31における六つの外面31a~31fは、二つ正方形の面と四つの長方形とから構成されている。錘部材31における六つの外面31a~31fは、正方形の面のみから構成されてもよいし、長方形の面のみから構成されてもよい。
【0060】
・錘部材31の形状は、六面体以外の多面体状に変更することもできる。この場合、筐体21の形状も錘部材31の形状に合わせて変更すればよい。
・上記粘弾性部材41の形状は、六面体等の多面体状に限定されず、例えば、円柱状、球状等の形状に変更することもできる。
【0061】
・建築物を構成する構成部材52の材料は、限定されない。構成部材52の材料としては、例えば、木材、鉄骨等が挙げられる。
・ダイナミックダンパ11が取り付けられる構成部材52は、梁に限定されず、根太、大引き、柱等であってもよい。また、構成部材52は、床や壁等を構成する板状の部材であってもよい。
【0062】
・建築物は、戸建住宅であってもよいし、集合住宅であってもよい。また、建築物の用途は、特に限定されず、例えば、店舗、事務所等であってもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0063】
(イ)前記粘弾性部材は、互いに異なる厚さの複数の粘弾性部材を含む、ダイナミックダンパ。
(ロ)前記錘部材の形状は、六面体であり、前記粘弾性部材は、互いに厚さ範囲の異なる複数の組により構成され、前記粘弾性部材の組は、錘部材に対して互いに反対側となる一対の外面に接続される粘弾性部材から構成される、ダイナミックダンパ。
【符号の説明】
【0064】
11…ダイナミックダンパ
21…筐体
21a,21b…取付片
22…下壁
23…上壁
24…側壁
24a~24d…第1~第4側壁
25…第1嵌合部
26…第2嵌合部
31…錘部材
31a~31f…第1~第6外面
41…粘弾性部材
41a~41f…第1~第6粘弾性部材
51…制振構成部材
52…構成部材
A1…接触領域
A2…非接触領域
C1…筒状体
W1…第1壁体
W2…第2壁体
t11,t12,t21,t22,t31,t32…厚さ寸法