(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035445
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240307BHJP
H04N 25/10 20230101ALI20240307BHJP
G06T 3/4053 20240101ALI20240307BHJP
G03B 7/00 20210101ALI20240307BHJP
【FI】
H04N5/232 290
H04N9/07 A
G06T3/40 730
G03B7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139901
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野村 研一
【テーマコード(参考)】
2H002
5B057
5C065
5C122
【Fターム(参考)】
2H002GA00
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE03
5B057CE06
5B057DA07
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5C065BB10
5C065BB48
5C065CC09
5C065DD01
5C122EA38
5C122FH04
5C122FH09
5C122FH11
5C122FH18
5C122HA42
5C122HA88
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】画質の高い高解像度画像をより安定して生成できる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、画像処理部28を備える。画像処理部28は、複数の画像と位置ずれ量とを取得し対象画素位置を決定する(S33)。画像処理部28は、第1の画素配置法により、対象画素の近傍領域内の各画素の位置と、対象画素位置と、の距離指標に応じた比率を算出し(S35)、対象画素の画素値を比率に基づき分配した重み付け画素値を算出し、重み付け画素値の積算画素値(S36)および比率積算値(S37)を算出し、積算画素値および比率積算値に基づき画素値を算出して、高解像度画像を生成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理部を備え、
前記画像処理部は、
位置ずれがある複数の画像と、前記複数の画像の位置ずれ量と、を取得し、
前記位置ずれ量に基づき、前記複数の画像の中の対象画素の、高解像度画像空間上の対象画素位置を決定し、
第1の画素配置法により、
前記対象画素位置に基づき、前記高解像度画像空間上における前記対象画素の近傍領域を決定し、
前記近傍領域内の各画素の位置と、前記対象画素位置と、の距離に関連する大きさを示す距離指標に応じた比率を算出し、
前記対象画素の画素値を、前記近傍領域内の各画素に、前記比率に基づき重み付けして分配した重み付け画素値を算出し、
前記重み付け画素値を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して積算画素値を算出し、
前記比率を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して比率積算値を算出し、
前記高解像度画像空間上の画素位置毎に、前記積算画素値と前記比率積算値とに基づき画素値を算出し、高解像度画像を生成する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記積算画素値を前記比率積算値に基づき正規化して、前記画素値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記高解像度画像空間上の着目画素の前記比率積算値に応じて、前記着目画素の正規化された前記積算画素値と、前記着目画素の周辺の複数の画素の正規化された前記積算画素値の平均値と、をそれぞれの混合割合で混合して、前記着目画素の前記画素値を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記混合割合を、前記高解像度画像空間の総画素数と、前記複数の画像の合計画素数と、に基づき算出することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記距離指標が小さいほど、前記比率を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記高解像度画像空間は、複数の画素を、一方向と、前記一方向に交差する他方向とに配列して構成され、
前記距離指標は、2次元の前記高解像度画像空間上における、前記近傍領域内の各画素の位置と前記対象画素位置との、前記一方向の第1距離と、前記他方向の第2距離と、であることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記距離指標は、2次元の前記高解像度画像空間上における、前記近傍領域内の各画素の位置と、前記対象画素位置との直線距離であることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記第1の画素配置法と、第2の画素配置法と、の何れか一方により高解像度画像を生成可能であり、
前記第2の画素配置法において、
前記対象画素位置に基づき、前記高解像度画像空間上において前記対象画素に最も近接した最近接画素を決定し、
前記対象画素の画素値を、前記最近接画素の画素値に積算して積算画素値を算出し、
前記最近接画素の比率積算値に1を積算し、
前記高解像度画像空間上の画素位置毎に、前記積算画素値と前記比率積算値とに基づき画素値を算出し、高解像度画像を生成し、
前記画像処理部は、前記複数の画像の合計画素数が、前記高解像度画像空間の総画素数の、1以上の所定数倍である場合に、前記第1の画素配置法に代えて、前記第2の画素配置法により高解像度画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記近傍領域は、前記対象画素の画素位置を含む2×2画素の領域、3×3画素の領域、または4×4画素の領域であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
位置ずれがある複数の画像と、前記複数の画像の位置ずれ量と、を取得し、
前記位置ずれ量に基づき、前記複数の画像の中の対象画素の、高解像度画像空間上の対象画素位置を決定し、
第1の画素配置法により、
前記対象画素位置に基づき、前記高解像度画像空間上における前記対象画素の近傍領域を決定し、
前記近傍領域内の各画素の位置と、前記対象画素位置と、の距離に関連する大きさを示す距離指標に応じた比率を算出し、
前記対象画素の画素値を、前記近傍領域内の各画素に、前記比率に基づき重み付けして分配した重み付け画素値を算出し、
前記重み付け画素値を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して積算画素値を算出し、
前記比率を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して比率積算値を算出し、
前記高解像度画像空間上の画素位置毎に、前記積算画素値と前記比率積算値とに基づき画素値を算出し、高解像度画像を生成する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
位置ずれがある複数の画像と、前記複数の画像の位置ずれ量と、を取得させ、
前記位置ずれ量に基づき、前記複数の画像の中の対象画素の、高解像度画像空間上の対象画素位置を決定させ、
第1の画素配置法により、
前記対象画素位置に基づき、前記高解像度画像空間上における前記対象画素の近傍領域を決定させ、
前記近傍領域内の各画素の位置と、前記対象画素位置と、の距離に関連する大きさを示す距離指標に応じた比率を算出させ、
前記対象画素の画素値を、前記近傍領域内の各画素に、前記比率に基づき重み付けして分配した重み付け画素値を算出させ、
前記重み付け画素値を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して積算画素値を算出させ、
前記比率を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して比率積算値を算出させ、
前記高解像度画像空間上の画素位置毎に、前記積算画素値と前記比率積算値とに基づき画素値を算出し、高解像度画像を生成させる、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置ずれがある複数の画像から高解像度画像を生成する画像処理装置、画像処理方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
位置ずれがある複数の画像から高解像度画像を生成する画像処理装置は、従来から提案されている。
【0003】
例えば、国際公開WO2019/092844号公報には、複数の画像の位置ずれ量を検出し、検出された位置ずれ量に基づき各画像の画素情報を位置合わせして高解像度画像空間上で合成し、高解像度合成画像を生成する技術が記載されている。該公報にはさらに、位置合わせ誤差を評価した結果に基づいて、高解像度合成画像を補正することが記載されている。
【0004】
こうした従来の高解像度画像合成では、撮像して得られた画像の各画素の画素値を、高解像度画像空間上において該当画素に最も近い位置の画素に配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2019/092844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の高解像度画像合成技術において、高解像度画像に画素値が配置されない対象画素がある場合、対象画素の周辺にある画素の画素値から補間処理を行って、対象画素の画素値を生成する。このとき、高解像度画像の全画素数に対する、複数枚の撮像画像のトータルの画素数が十分でないと、画素値が配置されない画素が多くなる。すると、対象画素から離れた位置にある周辺画素の画素値も補間処理に用いることになり、解像度の低下、つまり画質の低下が著しくなってしまう。
【0007】
こうして、従来の高解像度画像合成技術では、高解像度画像の全画素数と、複数枚の撮像画像のトータルの画素数と、の大小関係が変化すると、生成される高解像度画像の画質が急激に低下することがあった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、画質の高い高解像度画像をより安定して生成できる画像処理装置、画像処理方法、およびコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による画像処理装置は、画像処理部を備え、前記画像処理部は、位置ずれがある複数の画像と、前記複数の画像の位置ずれ量と、を取得し、前記位置ずれ量に基づき、前記複数の画像の中の対象画素の、高解像度画像空間上の対象画素位置を決定し、第1の画素配置法により、前記対象画素位置に基づき、前記高解像度画像空間上における前記対象画素の近傍領域を決定し、前記近傍領域内の各画素の位置と、前記対象画素位置と、の距離に関連する大きさを示す距離指標に応じた比率を算出し、前記対象画素の画素値を、前記近傍領域内の各画素に、前記比率に基づき重み付けして分配した重み付け画素値を算出し、前記重み付け画素値を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して積算画素値を算出し、前記比率を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して比率積算値を算出し、前記高解像度画像空間上の画素位置毎に、前記積算画素値と前記比率積算値とに基づき画素値を算出し、高解像度画像を生成する。
【0010】
本発明の一態様による画像処理方法は、位置ずれがある複数の画像と、前記複数の画像の位置ずれ量と、を取得し、前記位置ずれ量に基づき、前記複数の画像の中の対象画素の、高解像度画像空間上の対象画素位置を決定し、第1の画素配置法により、前記対象画素位置に基づき、前記高解像度画像空間上における前記対象画素の近傍領域を決定し、前記近傍領域内の各画素の位置と、前記対象画素位置と、の距離に関連する大きさを示す距離指標に応じた比率を算出し、前記対象画素の画素値を、前記近傍領域内の各画素に、前記比率に基づき重み付けして分配した重み付け画素値を算出し、前記重み付け画素値を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して積算画素値を算出し、前記比率を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して比率積算値を算出し、前記高解像度画像空間上の画素位置毎に、前記積算画素値と前記比率積算値とに基づき画素値を算出し、高解像度画像を生成する。
【0011】
本発明の一態様によるコンピュータプログラムは、コンピュータに、位置ずれがある複数の画像と、前記複数の画像の位置ずれ量と、を取得させ、前記位置ずれ量に基づき、前記複数の画像の中の対象画素の、高解像度画像空間上の対象画素位置を決定させ、第1の画素配置法により、前記対象画素位置に基づき、前記高解像度画像空間上における前記対象画素の近傍領域を決定させ、前記近傍領域内の各画素の位置と、前記対象画素位置と、の距離に関連する大きさを示す距離指標に応じた比率を算出させ、前記対象画素の画素値を、前記近傍領域内の各画素に、前記比率に基づき重み付けして分配した重み付け画素値を算出させ、前記重み付け画素値を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して積算画素値を算出させ、前記比率を前記高解像度画像空間上の画素位置毎に積算して比率積算値を算出させ、前記高解像度画像空間上の画素位置毎に、前記積算画素値と前記比率積算値とに基づき画素値を算出し、高解像度画像を生成させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像処理装置および画像処理方法によれば、画質の高い高解像度画像をより安定して生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】上記第1の実施形態において、画素ずらし超解像撮影モードにおける画像処理部の処理を示すフローチャートである。
【
図3】上記第1の実施形態における画素配置法決定処理を示すフローチャートである。
【
図4】上記第1の実施形態における近傍画素分配法処理を示すフローチャートである。
【
図5】上記第1の実施形態における特定位置配置法処理を示すフローチャートである。
【
図6】上記第1の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の2×2画素の近傍領域に、対象画素の画素値を近傍画素分配法で分配する例を示す図である。
【
図7】上記第1の実施形態において、近傍画素分配法により近傍領域の各画素に分配される重み付け画素値と比率との例を示す図表である。
【
図8】上記第1の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の2×2画素の近傍領域に、対象画素の画素値を特定位置配置法で配置する例を示す図である。
【
図9】上記第1の実施形態において、特定位置配置法により近傍領域の最近接画素に配置される画素値と比率との例を示す図表である。
【
図10】上記第1の実施形態において、比率積算値が0でない画素の正規化処理の一例を説明するための図表である。
【
図11】上記第1の実施形態において、高解像度空間内の着目画素について、着目画素自体の正規化された画素値と、周辺画素の正規化された画素値とを用いて、どのように補間処理を行うかを説明するためのグラフである。
【
図12】上記第1の実施形態において、高解像度空間内の着目画素の補間処理の例を示す図表である。
【
図13】本発明の第2の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の3×3画素の近傍領域に、対象画素の画素値を近傍画素分配法で分配する例を示す図である。
【
図14】上記第2の実施形態において、近傍画素分配法により近傍領域の各画素に分配される重み付け画素値と比率との例を示す図表である。
【
図15】上記第2の実施形態において、対象画素の画素位置の条件に応じて定まる正規化の除数DNを示す図表である。
【
図16】本発明の第3の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の4×4画素の近傍領域に、対象画素の画素値を近傍画素分配法で分配する例を示す図である。
【
図17】上記第3の実施形態において、近傍画素分配法により近傍領域の各画素に分配される重み付け画素値と比率との例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
[第1の実施形態]
【0015】
図1から
図12は本発明の第1の実施形態を示したものであり、
図1は第1の実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
なお、本実施形態では、撮像装置がデジタルカメラである例を説明する。ここでは、デジタルカメラがレンズ交換式である例を挙げるが、レンズ一体型であっても構わない。さらに、デジタルカメラに限定されず、撮像装置は、撮像機能を備える任意の装置であってよい。
【0017】
撮像装置は、交換式レンズ1とカメラ本体2とを備える。交換式レンズ1とカメラ本体2とは、レンズマウント等を用いて着脱自在に接続される。
【0018】
交換式レンズ1は、レンズ11と、光学絞り12と、レンズドライバ13と、絞りドライバ14と、フラッシュメモリ15と、レンズ側マイクロコンピュータ16と、を備える。
【0019】
レンズ11は、例えば1枚以上の光学レンズを含む撮影光学系である。レンズ11は、被写体の光学像(被写体像)をカメラ本体2の後述する撮像素子22上に結像する。レンズ11は、フォーカス位置を調整するためのフォーカスレンズを含む。
【0020】
光学絞り12は、レンズ11から撮像素子22へ向かう光束の通過範囲(開口径)を制御し、被写体像の光量を調節する。
【0021】
レンズドライバ13は、レンズ側マイクロコンピュータ16からの指令に基づき、レンズ11のフォーカスレンズを駆動してフォーカス位置の調整を行う。
【0022】
絞りドライバ14は、レンズ側マイクロコンピュータ16からの指令に基づき、光学絞り12を駆動して開口径を変化させる。光学絞り12の開口径が変化すると、被写体像の明るさおよびボケの大きさなどが変化する。
【0023】
フラッシュメモリ15は、レンズ側マイクロコンピュータ16により実行される制御プログラム、および交換式レンズ1に関する各種の情報を記録する記録媒体である。
【0024】
レンズ側マイクロコンピュータ16は、レンズドライバ13、絞りドライバ14、フラッシュメモリ15、および後述するインタフェース(I/F)29と接続されている。レンズ側マイクロコンピュータ16は、インタフェース29を経由して、後述する本体側マイクロコンピュータ40と通信する。レンズ側マイクロコンピュータ16は、本体側マイクロコンピュータ40からの指令を受けて、フラッシュメモリ15に記録されている情報の読出/書込を行い、交換式レンズ1に関する各種の情報を本体側マイクロコンピュータ40へ送信する。また、レンズ側マイクロコンピュータ16は、本体側マイクロコンピュータ40からの指令を受けて、レンズドライバ13および絞りドライバ14を制御する。
【0025】
次に、カメラ本体2は、メカニカルシャッタ21と、撮像素子22と、像ぶれ補正機構23と、アナログ処理回路24と、アナログ/デジタル変換器(A/D変換器)25と、バス26と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)27と、画像処理部28と、インタフェース(I/F)29と、シャッタドライバ31と、撮像素子ドライバ32と、像ぶれ補正ドライバ33と、メモリインタフェース(メモリI/F)34と、記録媒体35と、LCD(Liquid Crystal Display)ドライバ36と、LCD37と、操作デバイス38と、フラッシュメモリ39と、本体側マイクロコンピュータ40と、を備えている。
【0026】
メカニカルシャッタ21は、レンズ11と撮像素子22との間に配置される。メカニカルシャッタ21は、レンズ11からの光束が撮像素子22へ到達する時間を制御する。メカニカルシャッタ21は、例えばシャッタ幕を走行させる構成の光学シャッタである。
【0027】
シャッタドライバ31は、本体側マイクロコンピュータ40からの指令に基づいてメカニカルシャッタ21を駆動し、メカニカルシャッタ21を開閉する。シャッタドライバ31は、静止画撮影時に、メカニカルシャッタ21が開く時間を制御し、つまり撮像素子22の露光時間を制御する。
【0028】
また、シャッタドライバ31は、動画撮影時あるいはライブビュー時に、メカニカルシャッタ21を開放状態に維持する。このとき、各フレーム画像の取得は、撮像素子22が備える電子シャッタの機能により行われる。なお、静止画撮影時に電子シャッタを用いても構わない。
【0029】
撮像素子22は、複数の画素が所定の画素ピッチで2次元状に配列された画素エリアを有する。撮像素子22は、複数の画素により被写体像を露光して電気的な画像データを生成する。例えば、撮像素子22は、アナログ撮像素子として構成され、被写体像を光電変換(撮像)して、アナログ画像信号を生成する。なお、撮像素子22を、後述するアナログ処理回路24およびA/D変換器25の機能を備えたデジタル撮像素子として構成し、デジタル画像信号を出力するようにしても構わない。
【0030】
本実施形態の撮像素子22は、複数色のカラーフィルタを備えるカラー撮像素子として構成されている。原色フィルタを備える場合、画素の種類は、G(緑色)フィルタが配置されたG画素、R(赤色)フィルタが配置されたR画素、およびB(青色)フィルタが配置されたB画素の3種類がある。具体例を挙げれば、原色ベイヤ配列は、公知のように、(2,2)画素を基本配列とし、(2,2)画素の一方の対角位置にG画素を配置し、他方の対角位置にR画素とB画素とをそれぞれ配置した構成となっている。撮像素子22の画素エリアは、(2,2)画素の基本配列が2次元上に周期的に繰り返されている。
【0031】
なお、撮像素子22の画素配列は、ベイヤ配列に限らず、その他の任意の画素配列であっても構わない。従って、基本配列も(2,2)画素に限定されない。また、カラーフィルタも原色系に限らず、補色系を用いてもよい。さらに、撮像素子22は、モノクロ撮像素子であっても構わない。
【0032】
撮像素子ドライバ32は、本体側マイクロコンピュータ40からの指令に基づいて撮像素子22を駆動し、撮像素子22に撮像させる。
【0033】
像ぶれ補正機構23は、所定の可動範囲内において、レンズ11の光軸に垂直な方向に、被写体像と撮像素子22との少なくとも一方をシフトして、相対的な位置を調整する。
図1に示す像ぶれ補正機構23は、例えば、撮像素子22をシフトして像ぶれを抑制する。ただし、これに限定されない。例えば、像ぶれ補正機構23は、レンズ11の少なくとも一部を移動して撮像素子22上に結像される被写体像をシフトし、像ぶれを補正する構成であっても構わない。または、撮像素子22をシフトする構成と、レンズ11の少なくとも一部を移動する構成と、の両方を備える像ぶれ補正機構23を採用してもよい。
【0034】
具体的に、像ぶれ補正機構23は、例えばホール素子とボイスコイルモータとを含み、撮像素子22を含む撮像ユニットをボイスコイルモータの磁力で宙に浮かせて、ホール素子により位置を検出しながら、磁力を制御することにより位置を移動する。ただし、この構成に限定されず、ボイスコイルモータ以外の駆動源、および/またはホール素子以外の位置検出デバイスを用いた適宜の構成の像ぶれ補正機構23を採用して構わない。
【0035】
像ぶれ補正ドライバ33は、撮像装置の手ぶれ等によるぶれ量を検出するぶれ量検出センサを備えている。ぶれ量検出センサは、例えば、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)などを備える。像ぶれ補正ドライバ33は、検出されたぶれ量に基づき、像ぶれ補正機構23を制御して、撮像素子22に結像される被写体像の位置を安定化する像ぶれ補正を行う。像ぶれ補正ドライバ33は、本体側マイクロコンピュータ40からの指令に基づき、像ぶれ補正機構23を制御する。
【0036】
また、像ぶれ補正ドライバ33は、画素ずらし超解像撮影モードにおいて、像ぶれ補正機構23を制御して、高解像度画像を生成するための画素ずらしを行う。ここで、高解像度画像は、撮像素子22から得られる1フレームの撮像画像よりも解像度が高い画像である。
【0037】
画素ずらしは、被写体像と撮像素子22との相対的な位置を、画素ピッチ、または画素ピッチよりも小さいピッチの移動単位でずらす処理である。移動単位の例として、1画素ピッチ単位、0.5画素ピッチ単位、0.3画素ピッチ単位などが挙げられる。
【0038】
なお、ここでは、像ぶれ補正ドライバ33および像ぶれ補正機構23が画素ずらしを行って高解像度画像を生成する例を説明するが、これに限定されない。例えば、手ぶれによる被写体像と撮像素子22との相対的な位置の変化を利用して、高解像度画像を生成しても構わない。従って、能動的な画素ずらしを用いるに限らず、受動的な画素ずらしを用いてもよい。
【0039】
アナログ処理回路24は、撮像素子22から読み出されたアナログ画像信号に対して、リセットノイズ等を低減した上で波形整形を行い、さらに目的の明るさとなるようにゲインアップする。
【0040】
A/D変換器25は、アナログ処理回路24から出力されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。A/D変換器25により変換されたデジタル画像データは、RAW画像データと呼ばれる。
【0041】
バス26は、撮像装置内のある場所で発生した各種のデータや指令(制御信号)を、撮像装置内の他の場所へ転送するための転送路である。本実施形態におけるバス26は、A/D変換器25、DRAM27と、画像処理部28と、メモリI/F34と、LCDドライバ36と、本体側マイクロコンピュータ40と、を含む各部に接続されている。
【0042】
A/D変換器25から出力されたRAW画像データは、バス26を経由して転送され、DRAM27に一旦記憶される。
【0043】
DRAM27は、上述したRAW画像データ、画像処理部28等において処理された画像データ等の各種データを一時的に記憶する記憶素子である。
【0044】
画像処理部28は、バス26を経由して入力されるRAW画像データに対して、例えば、OB減算、ホワイトバランス(WB)ゲイン、デモザイク、ノイズ低減、色変換、ガンマ変換、拡大縮小、などの各種の画像処理を行う。画像処理部28が、記録/表示用画像を生成する処理は、現像処理と呼ばれる。
【0045】
さらに、画像処理部28は、画素ずらし超解像撮影モードが設定された場合に、位置ずれがある複数の画像から高解像度画像を生成する処理を行う。画像処理部28が高解像度画像を生成する処理については、後でより詳細に説明する。
【0046】
なお、一般的に、記録媒体35に静止画や動画を記録する際には、データ圧縮が行われる。また、記録媒体35から静止画や動画を読み出す際には、データ伸張が行われる。こうしたデータ圧縮/データ伸張を、画像処理部28が行ってもよいし、専用の圧縮伸張回路を別途に設けて行っても構わない。
【0047】
画像処理部28は、例えば、メモリに記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)に従ってCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等のプロセッサが処理を行うコンピュータとして構成されてもよい。この場合、画像処理部28を本体側マイクロコンピュータ40と一体に構成して、本体側マイクロコンピュータ40が画像処理部28の機能を果たすようにしても構わない。従って、メモリとして、フラッシュメモリ39、DRAM27などを用いてよい。また、画像処理部28は、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブルな回路であってもよい。さらに、画像処理部28は、通常のIC(Integrated Circuit)で構成された規定の処理を行う回路(画像処理回路)であっても構わない。
【0048】
インタフェース29は、レンズ側マイクロコンピュータ16と、本体側マイクロコンピュータ40とを、双方向に通信可能に接続する。
【0049】
メモリI/F34は、記録媒体35への画像データの記録、および記録媒体35からの画像データの読み出しを行う。
【0050】
記録媒体35は、画像データを含む各種データを不揮発に記録する。記録媒体35の一例は、カメラ本体2に着脱できるメモリカードである。ただし、記録媒体35は、メモリカードに限定されず、ディスク状の記録媒体でも構わないし、その他の任意の記録媒体であってもよい。また、記録媒体35は、カメラ本体2に内蔵されるタイプでも構わない。記録媒体35は、撮像装置に固有の構成であることに限定されない。
【0051】
LCDドライバ36は、画像処理部28により画像処理されてDRAM27に記憶されている画像データを読み出して映像信号に変換し、映像信号に基づく画像をLCD37に表示させる。
【0052】
LCD37は、LCDドライバ36の駆動制御により、画像や各種の情報を表示する。なお、撮像装置が備える表示デバイスは、LCD37に限らず、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)などの他のデバイスであっても構わない。
【0053】
操作デバイス38は、ユーザが操作して、撮像装置に対する各種の操作入力を行う操作装置である。操作デバイス38は、電源ボタン、レリーズボタン、再生ボタン、メニューボタン、十字キー、OKボタン等の操作ボタン類を含んでいる。電源ボタンは、撮像装置の電源をオン/オフする。レリーズボタンは、画像の撮影開始を指示する。レリーズボタンは、例えば2段式操作ボタンとして構成され、1st(ファースト)レリーズスイッチおよび2nd(セカンド)レリーズスイッチを備える。再生ボタンは、記録画像の再生を行う。メニューボタンは、撮像装置の設定等を行う。十字キーは、例えば項目の選択操作に用いる。OKボタンは、例えば選択項目の確定操作に用いる。
【0054】
ここで、メニューボタンや十字キー、OKボタン等を用いて設定できる項目には、撮影モード(静止画撮影モード、画素ずらし超解像撮影モード、動画撮影モード等)、記録モード、再生モード、像ぶれ補正機能のオン/オフなどが含まれている。操作デバイス38に対して操作が行われると、操作デバイス38は、操作内容に応じた信号を本体側マイクロコンピュータ40へ出力する。
【0055】
フラッシュメモリ39は、本体側マイクロコンピュータ40により実行される処理プログラム(コンピュータプログラム)と、撮像装置に係る各種の情報と、を不揮発に記録する、コンピュータにより読み取りできる一時的でない記録媒体である。
【0056】
フラッシュメモリ39が記録する撮像装置に係る各種の情報は、撮像装置を特定するための機種名や製造番号、画像処理に用いるパラメータ、ユーザにより設定された設定値などを含む。
【0057】
また、フラッシュメモリ39が記録する処理プログラムは、画像を撮影するための撮影プログラムを含む。さらに、本体側マイクロコンピュータ40が画像処理部28の機能を果たす場合は、処理プログラムが、複数の画像から高解像度画像を合成するための画像処理プログラム等を含む。
【0058】
本体側マイクロコンピュータ40は、撮像装置を統括的に制御する制御部である。本体側マイクロコンピュータ40は、例えば、CPU等を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサが、フラッシュメモリ39等の記憶装置に記憶された処理プログラムを読み込んで実行することにより、各部の機能を果たすように構成されている。ただし、これに限定されず、本体側マイクロコンピュータ40の少なくとも一部が電子回路として構成されていても構わない。
【0059】
本体側マイクロコンピュータ40は、カメラ本体2内の各部を制御すると共に、インタフェース29を経由してレンズ側マイクロコンピュータ16へ指令を送信し、交換式レンズ1を制御する。
【0060】
本体側マイクロコンピュータ40は、操作デバイス38が操作された場合には、操作デバイス38から入力された情報を解析する。本体側マイクロコンピュータ40は、フラッシュメモリ39に記録されている処理プログラムに従って、操作デバイス38からの入力に応じた各種のシーケンスを実行する。本体側マイクロコンピュータ40は、シーケンスを実行する際に、フラッシュメモリ39およびDRAM27から処理に必要なパラメータを読み込んで、種々の演算処理等を行う。
【0061】
なお、レンズ11のフォーカスレンズを制御するためのフォーカス演算処理は、本体側マイクロコンピュータ40により行ってもよいし、画像処理部28により行ってもよいし、専用のAF(Auto Focus)処理回路を設けて行っても構わない。本体側マイクロコンピュータ40は、フォーカス演算処理の結果に基づき、I/F29およびレンズ側マイクロコンピュータ16を経由して、レンズドライバ13によりフォーカスレンズを駆動する。
【0062】
また、自動露出(AE:Auto Exposure)制御のための適正露光条件の演算処理は、本体側マイクロコンピュータ40により行ってもよいし、画像処理部28により行ってもよいし、専用のAE処理回路を設けて行っても構わない。適正露光条件が決定されると、例えば、光学絞り12と、メカニカルシャッタ21または撮像素子22の素子シャッタと、アナログ処理回路24のゲイン(および/または画像処理部28等のデジタルゲイン)と、が制御される。
【0063】
なお、像ぶれ補正機能がオンに設定され、かつ、画素ずらし超解像撮影モードが設定されている場合、本体側マイクロコンピュータ40の制御の下に、像ぶれ補正ドライバ33が像ぶれ補正機構23に像ぶれ補正と画素ずらしとを行わせる。そして、本体側マイクロコンピュータ40は、撮像素子ドライバ32を制御して、高解像度画像を生成するために用いる、位置ずれがある複数の撮像画像を、撮像素子22に取得させる。
【0064】
図2は、第1の実施形態において、画素ずらし超解像撮影モードにおける画像処理部28の処理を示すフローチャートである。なお、
図2以降の処理は、モノクロ撮像素子により取得されるモノクロ画像にはそのまま適用できる。また、カラー撮像素子により取得されるカラー画像の場合には、色毎の画像に適用される。このとき、OB減算を行った後の色毎の画像に適用するとよい。なお、デモザイク処理を行った後の色毎の画像を用いて
図2の処理を行ってもよいが、後で説明する
図2のステップS11において補間処理を行うため、デモザイク処理前の色毎の画像を用いても構わない。
【0065】
ユーザが操作デバイス38を操作して画素ずらし超解像撮影モードを設定すると、本体側マイクロコンピュータ40の制御の下に、画像処理部28により
図2の処理が開始され、高解像度画像の合成に用いる撮像画像の枚数Nを画像処理部28が設定する(ステップS1)。
【0066】
撮像画像の枚数Nは、予め定められた枚数を設定してもよい。また、画素ずらし超解像撮影モードとして、生成される高解像度画像の解像度が異なる複数のモードを用意しておき、ユーザが操作デバイス38を操作して何れかのモードを選択することで、モードに応じた撮像画像の枚数Nが設定されるようにしてもよい。もしくは、ユーザが操作デバイス38を操作して、撮像画像の枚数Nを手動で設定しても構わない。
【0067】
枚数Nを設定したら、さらに画像処理部28は、画素配置法決定処理を行う(ステップS2)。
【0068】
図3は、第1の実施形態における画素配置法決定処理を示すフローチャートである。
【0069】
この処理に入ると、画像処理部28は、閾値Thを設定する(ステップS21)。ここで、1枚の撮像画像の画素数をkとし、高解像度画像空間の総画素数をmとする。このとき、閾値Thを、(m/k)以上の所定数に設定してもよい。
【0070】
この場合、(k×Th)≧mとなるから、N≧ThとなるNに対して、(k×N)≧mとなる。つまり、N≧Thの場合、N枚の撮像画像の合計画素数(k×N)が、高解像度画像空間の総画素数mの、1以上の所定数倍になる。
【0071】
画像処理部28は、設定した閾値Thと、合成枚数Nとを比較して、N<Thであるか否かを判定する(ステップS22)。
【0072】
ここで、N<Thであると判定した場合、画像処理部28は、画素配置法を近傍画素分配法(第1の画素配置法)に決定する(ステップS23)。
【0073】
合成枚数Nが閾値Th未満である場合、後述する特定位置配置法(第2の画素配置法)では画素値が配置されない画素が多くなり、Nが小さくなるほど画質が急激に低下する。従って、N<Thの場合、画素配置法を、画質がより安定して、解像度の点で有利になると考えられる近傍画素分配法に決定する。
【0074】
また、ステップS22においてN≧Thであると判定した場合、画像処理部28は、画素配置法を特定位置配置法(第2の画素配置法)に決定する(ステップS24)。
【0075】
合成枚数Nが閾値Th以上である場合、特定位置配置法でも画素値が高解像度画像空間の各画素に十分に配置されると期待される。そして、後述するように、近傍画素分配法は高解像度画像空間内の複数の画素に画素値が分配されるが、特定位置配置法は画素値の分配がない。このため、特定位置配置法は、画素値が配置されない画素が少なければ、解像度の点で近傍画素分配法よりも有利になると考えられる。従って、N≧Thの場合、画素配置法を特定位置配置法に決定する。
【0076】
ここで、具体的な数値の例を挙げて説明する。例えば、1枚の撮像画像の画素数kをk=20(Mpixel)、高解像度画像空間の総画素数mをm=80(Mpixel)とする。このとき、閾値Thを、例えば(m/k)(=4)以上の所定数である8に設定する。このような前提条件において、例えば、合成枚数N=6(<8)の場合に画素配置法を近傍画素分配法に決定し、合成枚数N=10(≧8)の場合に特定位置配置法に決定する。
【0077】
こうして、本実施形態では、1枚の撮像画像の画素数kと、合成枚数Nと、高解像度画像空間の総画素数mとに応じて、より画質的に有利な画素配置法を選択して合成を行うハイブリッド方式を採用している。
【0078】
ステップS23またはステップS24の処理を行ったら、
図2の処理にリターンする。
【0079】
ステップS2において画素配置法を決定したら、画像処理部28は、撮像画像の枚数をカウントするカウンタnに1を設定し(ステップS3)、n>Nであるか否かを判定する(ステップS4)。
【0080】
ここで、n≦Nであると判定した場合、画像処理部28は、本体側マイクロコンピュータ40の制御により撮像素子22が撮像したn枚目の撮像画像を取得する(ステップS5)。
【0081】
そして、画像処理部28は、ステップS2において決定された画素配置法が、近傍画素分配法であるか、または特定位置配置法であるかを判定する(ステップS6)。
【0082】
ここで、近傍画素分配法であると判定した場合、画像処理部28は、近傍画素分配法処理を行う(ステップS7)。
【0083】
図4は、第1の実施形態における近傍画素分配法処理を示すフローチャートである。
【0084】
図4の処理に入ると、画像処理部28は、取得したn枚目の撮像画像中における対象画素を設定する(ステップS31)。対象画素は任意の順序で設定できるが、例えば、撮像画像の左上角の画素からラスタスキャン順に設定してもよい。
【0085】
次に、画像処理部28は、位置ずれ取得部として機能し、対象画素の位置ずれ量を取得する(ステップS32)。画像処理部28は、像ぶれ補正ドライバ33から出力される位置ずれ量を、本体側マイクロコンピュータ40およびバス26を経由して取得する。
【0086】
なお、全画素が同時に露光される場合には、位置ずれ量は撮像画像の全体でグローバルな量となる。一方、画素毎に露光タイミングが異なる場合、位置ずれ量は画素毎のローカルな量となる場合がある。従って、位置ずれ量がローカルな量である場合、ステップS32の処理を画素毎に行う。また、位置ずれ量がグローバルな量である場合、1画素目にステップS32で取得した位置ずれ量を、2画素目以降にも適用して構わない。そして、位置ずれ量がグローバルな量である場合、1枚目の撮像画像を基準画像とした位置ずれ量を取得すれば良いため、n=1のときは位置ずれ量が0となる。
【0087】
画像処理部28は、位置ずれ量を考慮して、高解像度画像空間における対象画素の位置を決定する(ステップS33)。
【0088】
画像処理部28は、ステップS33で決定した対象画素の位置に基づき、高解像度画像空間における対象画素の近傍領域を決定する(ステップS34)。
【0089】
図6は、第1の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の2×2画素の近傍領域に、対象画素の画素値を近傍画素分配法で分配する例を示す図である。
【0090】
2×2画素の近傍領域に関し、左上の画素をA、右上の画素をB、左下の画素をC、右下の画素をDとする。このとき、2×2画素の近傍領域は、画素Aの中心位置と、画素Bの中心位置と、画素Cの中心位置と、画素Dの中心位置と、で囲まれる四角内に対象画素が含まれる領域として設定される。
【0091】
高解像度画像空間は、複数の画素を、一方向と、一方向に交差する他方向とに配列して構成されている。
【0092】
具体的に、近傍領域の横方向(右方向)をx方向、x方向に直交する縦方向(下方向)をy方向とし、画素Aの中心位置を原点(0,0)とし、1画素ピッチを長さ1として、近傍領域の(x,y)座標を設定する。すると、画素Bの中心位置は(1,0)、画素Cの中心位置は(0,1)、画素Dの中心位置は(1,1)となる。
【0093】
このとき、対象画素の画素位置(x,y)は、0≦x≦1、0≦y≦1の範囲に入る。
図6では、対象画素の画素位置が(x,y)=(0.3,0.2)となる一例を示している。
【0094】
画像処理部28は、対象画素の画素値を近傍領域の各画素A,B,C,Dへ配分する比率RA,RB,RC,RDを、対象画素の画素位置(x,y)と、各画素A,B,C,Dの中心位置と、の距離に基づき決定する(ステップS35)。
【0095】
比率RA,RB,RC,RDの算出は、近傍領域内の各画素A,B,C,Dの位置と、対象画素の画素位置(x,y)と、の距離に関連する大きさを示す距離指標に応じて行う。
【0096】
比率RA,RB,RC,RDの第1の決定法は、2次元の高解像度画像空間上における、近傍領域内の各画素A,B,C,Dの位置と、対象画素の画素位置(x,y)との直線距離を距離指標として、直線距離に基づき決定する方法(実距離法)である。
【0097】
この場合、対象画素と画素Aとの距離DAは、
DA=√(x2+y2)
対象画素と画素Bとの距離DBは、
DB=√{(1-x)2+y2}
対象画素と画素Cとの距離DCは、
DC=√{x2+(1-y)2}
対象画素と画素Dとの距離DDは、
DD=√{(1-x)2+(1-y)2}
となる。
【0098】
このとき、比率RA,RB,RC,RDは、一例として、各距離DA,DB,DC,DDの逆数を用いて次のように決定できる(ただし、実距離法による比率RA,RB,RC,RDの決定方法は、下記の一例に限定されない)。
RA=(1/DA)/{(1/DA)+(1/DB)+(1/DC)+(1/DD)}
RB=(1/DB)/{(1/DA)+(1/DB)+(1/DC)+(1/DD)}
RC=(1/DC)/{(1/DA)+(1/DB)+(1/DC)+(1/DD)}
RD=(1/DD)/{(1/DA)+(1/DB)+(1/DC)+(1/DD)}
【0099】
距離DA,DB,DC,DDの何れか1つが0になるとき(なお、距離DA,DB,DC,DDの2つ以上が同時に0になることはない)は、距離が0となる画素の極限値として得られる比率が1となり、距離が0の画素に対象画素の画素値が全て配分されることが分かる。
【0100】
第1の決定法を用いると、加算および減算に加えて、2乗演算、平方根演算、および逆数演算が必要になり、さらに正規化のための除数{(1/DA)+(1/DB)+(1/DC)+(1/DD)}も対象画素の画素位置(x,y)に依存する。このため、第1の決定法は、処理負荷が比較的大きい。
【0101】
そこで、本実施形態では、次に説明するような比率の第2の決定法を用いる。
【0102】
比率RA,RB,RC,RDの第2の決定法は、距離指標を、2次元の高解像度画像空間上における、近傍領域内の各画素A,B,C,Dの位置と、対象画素の画素位置(x,y)との、一方向(x方向)の第1距離(x方向距離)と、他方向(y方向)の第2距離(y方向距離)と、に設定して、比率を決定する方法(分割距離法)である。
【0103】
すなわち、比率RA,RB,RC,RDを、対象画素の画素位置(x,y)と、各画素A,B,C,Dの中心位置と、のx方向の距離およびy方向の距離に基づき決定する。この場合、
対象画素と画素Aとのx方向距離DAxはx、y方向距離DAyはy、
対象画素と画素Bとのx方向距離DBxは(1-x)、y方向距離DByはy、
対象画素と画素Cとのx方向距離DCxはx、y方向距離DCyは(1-y)、
対象画素と画素Dとx方向距離DDxは(1-x)、y方向距離DDyは(1-y)
となる。
【0104】
そして、画素Aへ配分する比率RAを(1-DAx)×(1-DAy)/DN、画素Bへ配分する比率RBを(1-DBx)×(1-DBy)/DN、画素Cへ配分する比率RCを(1-DCx)×(1-DCy)/DN、画素Dへ配分する比率RDを(1-DDx)×(1-DDy)/DNとする。
【0105】
ここで、DNは正規化のための除数であり、計算すると、
DN=(1-DAx)×(1-DAy)+(1-DBx)×(1-DBy)
+(1-DCx)×(1-DCy)+(1-DDx)×(1-DDy)
=(1-x)×(1-y)+x×(1-y)+(1-x)×y+x×y
=1
となる。
【0106】
つまり、第2の決定法では、画素Aへ配分する比率RAが(1-x)×(1-y)、画素Bへ配分する比率RBがx×(1-y)、画素Cへ配分する比率RCが(1-x)×y、画素Dへ配分する比率RDがx×yとなる。すなわち、各画素へ配分する比率は、1からx方向距離を引いた値と、1からy方向距離を引いた値と、の乗算値である。
【0107】
こうして、第2の決定法を用いると、減算および乗算を行えば足り、正規化のための除数DNも対象画素の画素位置(x,y)に依存しない定数になるため、処理負荷を軽減できる。
【0108】
画像処理部28が、距離指標として直線距離を用いる第1の決定法(実距離法)と、距離指標としてx,y方向距離を用いる第2の決定法(分割距離法)と、の何れを用いる場合においても、距離指標が小さいほど比率が大きくなる。
【0109】
画像処理部28は、算出部および積算部として機能し、対象画素の画素値を、各画素A,B,C,Dへ配分する比率RA,RB,RC,RDに基づき重み付けした重み付け画素値を算出し、算出した重み付け画素値を各画素へ分配して画素位置毎に積算し、積算画素値を算出する(ステップS36)。
【0110】
対象画素の画素値をZとすると、対象画素の画素位置が(x,y)=(0.3,0.2)である場合の近傍領域の各画素A,B,C,Dに分配される重み付け画素値を
図7に示す。
図7は、第1の実施形態において、近傍画素分配法により近傍領域の各画素に分配される重み付け画素値と比率との例を示す図表である。
【0111】
図6および
図7に示す例では、対象画素から近傍領域の各画素までの距離が近い順に画素A,B,C,Dとなる。このため、対象画素の画素値Zは、画素A,B,C,Dの順に大きい比率で分配される。
【0112】
具体的な数値例では、画素Aに0.56×Zの重み付け画素値が分配されて、画素Aの既存の積算画素値に積算される。同様に、画素Bに0.24×Zの重み付け画素値が分配されて、画素Bの既存の積算画素値に積算される。画素Cに0.14×Zの重み付け画素値が分配されて、画素Cの既存の積算画素値に積算される。画素Dに0.06×Zの重み付け画素値が分配されて、画素Dの既存の積算画素値に積算される。
【0113】
ここで、1枚の撮像画像内の各画素を順次に対象画素としたとき、高解像度画像空間内のある画素(例えば、画素Aとする)が、複数の対象画素の複数の近傍領域に含まれることがある。この場合、画素Aに対して、複数の対象画素から画素値の分配が複数回行われ、分配された画素値が順次積算される。加えて、1枚の撮像画像に対して画素Aに積算された画素値が、さらに、N枚の撮像画像に渡って積算される。
【0114】
そこで、画像処理部28は、画素A(画素B,C,Dも同様)に対して積算された画素値を正規化するために、高解像度画像空間上の画素位置毎に積算した比率である比率積算値を、次のように算出する。
【0115】
すなわち、画像処理部28は、各画素A,B,C,Dへ配分する比率を、各画素A,B,C,Dの比率積算値に積算する(ステップS37)。従って、
図7に示す例では、画素Aの比率積算値に0.56が積算され、画素Bの比率積算値に0.24が積算され、画素Cの比率積算値に0.14が積算され、画素Dの比率積算値に0.06が積算される。
【0116】
画像処理部28は、n枚目の撮像画像中における全ての画素を対象画素に設定したか否かを判定する(ステップS38)。ここで、まだ対象画素に設定していない画素がある場合には、ステップS31へ戻って上述した処理を行う。一方、全ての画素を対象画素に設定した場合には、
図2の処理にリターンする。
【0117】
また、ステップS6において特定位置配置法であると判定した場合、画像処理部28は、特定位置配置法処理を行う(ステップS8)。
【0118】
図5は、第1の実施形態における特定位置配置法処理を示すフローチャートである。
【0119】
図5の処理に入ると、画像処理部28は、ステップS31と同様に、取得したn枚目の撮像画像中における対象画素を設定する(ステップS41)。
【0120】
次に、画像処理部28は、ステップS32と同様に位置ずれ取得部として機能し、対象画素の位置ずれ量を取得する(ステップS42)。なお、位置ずれ量がグローバルな量である場合、n=1のときに位置ずれ量が0となるのは上述の通りである。
【0121】
画像処理部28は、ステップS33と同様に、位置ずれ量を考慮して、高解像度画像空間における対象画素の位置を決定する(ステップS43)。
【0122】
画像処理部28は、ステップS34と同様に、対象画素の位置に基づき、高解像度画像空間における対象画素の近傍領域を決定する(ステップS44)。
【0123】
画像処理部28は、近傍領域内において、対象画素の位置に基づき、対象画素に最も近接した最近接画素を決定する(ステップS45)。
【0124】
図8は、第1の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の2×2画素の近傍領域に、対象画素の画素値を特定位置配置法で配置する例を示す図である。
【0125】
対象画素の画素位置が(x,y)=(0.3,0.2)である図示の例では、近傍領域の各画素A,B,C,Dの内の、最近接画素は画素Aとなる。最近接画素の決定は、上述した比率の第1の決定法または第2の決定法を用いて行ってもよい。
【0126】
例えば、最近接画素の決定を比率の第1の決定法を用いて行う場合、対象画素の画素位置(x,y)と、各画素A,B,C,Dの中心位置と、の直線距離が最小になる画素を最近接画素に決定すればよい。
【0127】
また、最近接画素の決定を比率の第2の決定法を用いて行う場合、第2の決定法で算出した比率が最大の画素を最近接画素に決定すればよい。上述したように、最近接画素の決定を、第2の決定法を用いて行えば、第1の決定法を用いて行う場合よりも処理負荷を軽減できる。
【0128】
なお、
図5の処理では近傍領域を決定してから最近接画素を決定したが、最近接画素は、近傍領域を決定しなくても高解像度画像空間において一意に決定される。従って、ステップS44の処理を省略して、ステップS45において、高解像度画像空間内の最近接画素を決定しても構わない。
【0129】
画像処理部28は、算出部および積算部として機能し、対象画素の画素値Zを、最近接画素に配置して積算し、積算画素値を算出する(ステップS46)。
【0130】
図9は、第1の実施形態において、特定位置配置法により近傍領域の最近接画素に配置される画素値と比率との例を示す図表である。
【0131】
図8および
図9に示す例では、最近接画素が画素Aとなるため、対象画素の画素値Zは、画素Aに配置(つまり、全て分配)され、画素B,C,Dには分配されない。
【0132】
画像処理部28は、最近接画素の比率積算値に比率1を積算する(ステップS47)。なお、特定位置配置法では、画素が配置される(比率1)か、または配置されない(比率0)かの何れかとなるため、比率は画素カウント値、比率積算値は画素カウント積算値と呼ぶこともできる。
【0133】
画像処理部28は、n枚目の撮像画像中における全ての画素を対象画素に設定したか否かを判定する(ステップS48)。ここで、まだ対象画素に設定していない画素がある場合には、ステップS41へ戻って上述した処理を行う。一方、全ての画素を対象画素に設定した場合には、
図2の処理にリターンする。
【0134】
ステップS7またはステップS8の処理を行ったら、画像処理部28は、撮像画像の枚数をカウントするカウンタnに格納される数を1増加して(ステップS9)、ステップS4の判定を行う。
【0135】
こうして、ステップS1で設定された合成枚数Nの撮像画像の処理が済むまで、ステップS4~S9の処理を繰り返して行う。
【0136】
ステップS4において、画像処理部28が、n>Nであると判定した場合、高解像度空間の各画素の画素値の正規化処理を行う(ステップS10)。正規化処理は、高解像度空間内における比率積算値が0でない画素を順に着目画素とし、着目画素の積算画素値を、着目画素の比率積算値で割ることにより行われる。
【0137】
図10は、第1の実施形態において、比率積算値が0でない画素の正規化処理の一例を説明するための図表である。
【0138】
図10に示す例は、合成枚数Nが4の場合に、4枚の撮像画像から着目画素に分配された重み付け画素値と、比率と、の一例を示している。
【0139】
図10に示す例では、着目画素の積算画素値は、
(0.7×0.8×100+0.2×0.6×80+0.3×0.7×110
+0.5×1.0×130)=56+9.6+23.1+65=153.7
となる。
【0140】
また、着目画素の比率積算値は、
0.7×0.8+0.2×0.6+0.3×0.7+0.5×1.0
=0.56+0.12+0.21+0.5=1.39
となる。
【0141】
従って、着目画素の正規化された画素値は、153.7/1.39=110.6となる。一般に、画素Aの積算画素値をa、画素Aの比率積算値をraとすると、画素Aの正規化画素値<a>は、<a>=a/raにより算出される。
【0142】
正規化処理を行ったら、高解像度空間内の各画素を順に着目画素として、補間処理を行う(ステップS11)。補間処理は、着目画素の周辺の画素の正規化された画素値を用いて、着目画素の画素値を補間する処理である。
【0143】
図11は、第1の実施形態において、高解像度空間内の着目画素について、着目画素自体の正規化された画素値と、周辺画素の正規化された画素値とを用いて、どのように補間処理を行うかを説明するためのグラフである。
図12は、第1の実施形態において、高解像度空間内の着目画素の補間処理の例を示す図表である。
図12は、合成枚数Nが、例えばN=10であるときの数値の一例を示している。
【0144】
図12のA欄に示すように、着目画素を画素Aとし、画素Aの上、左、右、および下に隣接する画素をそれぞれB,C,D,Eとする。さらに、画素A,B,C,D,Eの正規化画素値を<a>,<b>,<c>,<d>,<e>とする。
【0145】
画素B,C,D,Eの正規化画素値<b>,<c>,<d>,<e>の平均値を、画素Aに対する補間候補値<bcde>とすると、
<bcde>=(<b>+<c>+<d>+<e>)/4
である。
【0146】
補間処理は、画素Aの正規化画素値<a>と、画素Aに対する補間候補値<bcde>と、を混合して補間値を算出することにより行う。
【0147】
正規化画素値<a>の混合割合をα、補間候補値<bcde>の混合割合をβ=(1-α)とすると、画素Aの補間値[a]は、次のように算出される。
[a]=α×<a>+β×<bcde>
【0148】
図11に示すように、混合割合αは、画素Aの比率積算値raが0のときは0となり、比率積算値raに対して単調増加し、ra≧2.5のときに1.0となる。また、混合割合βは、画素Aの比率積算値raが0のときは1.0となり、比率積算値raに対して単調減少し、ra≧2.5のときに0となる。
【0149】
高解像度空間内における着目画素の比率積算値が大きいということは、撮像画像の画素値が着目画素に多く分配されていることを意味する。このため、比率積算値が大きいほど、着目画素の正規化画素値の信頼性が高いと考えられる。そこで、比率積算値が大きく信頼性が高い着目画素は、画像の解像度を重視し、着目画素自体の画素値を多く混合して画素値を算出する。 一方、比率積算値が小さい着目画素は、正規化画素値の信頼性が低いと考えられる。そこで、安定性を重視し、周囲の画素値を多く混合して、着目画素の画素値を算出する。
【0150】
こうして、
図11に示すグラフは、着目画素の比率積算値が大きいほど着目画素自体の画素値を重視して最終的な画素値を算出するための、混合割合α,βの一例を示している。
【0151】
なお、
図11では、混合割合αの単調増加区間、および混合割合βの単調減少区間は1次関数となっているが、これに限らず、正規化条件であるα+β=1を満たしていれば、適宜の関数を用いて構わない。
【0152】
また、混合割合αの単調増加、および混合割合βの単調減少が一定値(α=1、β=0)に移行する閾値rathを2.5としているが、閾値rathは2.5に限定されない。例えば、閾値rathを、高解像度画像空間の総画素数mと、N枚の撮像画像の合計画素数(k×N)と、に基づき算出してもよい。
【0153】
具体的に、(k×N)/mは、高解像度画像空間における着目画素の比率積算値の平均値を与える。従って、(k×N)/mが2.5以下の場合は、閾値rath=2.5を維持し、(k×N)/mが2.5より大きい場合は、閾値rathを2.5より大きくしても構わない。
【0154】
図12のA欄の各画素A,B,C,D,Eに記載した数値は、比率積算値ra,rb,rc,rd,reの数値例をそれぞれ示している。
【0155】
図12の1A欄の例では、ra=1.0、rb=3.5、rc=0.6、rd=4.2、re=1.2である。raが1.0のとき、
図11に示すように、α=0.4、β=0.6となる。各画素A,B,C,D,Eの積算画素値をそれぞれa,b,c,d,eとすると、画素Aの補間値[a]は、
図12の1B欄のように算出される。
【0156】
図12の2A欄の例では、ra=3.0、rb=3.5、rc=0.6、rd=4.2、re=1.2である。raが3.0のとき、
図11に示すように、α=1.0、β=0.0となる。すると、画素Aの補間値[a]は、
図12の2B欄のように[a]=<a>として算出される。
【0157】
つまり、ra≧2.5のときには、画素Aの正規化画素値<a>をそのまま補間値[a]とすることになる。従って、ステップS11の補間処理は、高解像度空間内における、比率積算値が2.5未満の全ての画素について行えば足りる。
【0158】
なお、上述では、補間候補値を、着目画素Aの周辺の上、下、左、右の4つの画素の画素値から算出する例を示したが、左上、右上、左下、右下の4つの画素の画素値を加えて、合計8つの画素の画素値から算出してもよい。このときには、補間候補値を算出する際の、上、下、左、右の4つの画素の重みと、左上、右上、左下、右下の4つの画素との重みと、を異ならせてもよい。さらに、これらに限らず、適宜の数の周辺画素の画素値から、適宜の重み付けを行って補間候補値を算出して構わない。
【0159】
ステップS11の処理を行うことで、高解像度空間内の全画素の正規化された画素値が決定される。こうして、画像処理部28は、高解像度空間内の画素値を生成する画素値生成部、および高解像度画像を合成する高解像度合成部として機能する。
【0160】
画像処理部28は、高解像度空間の画像に現像処理を行う(ステップS12)。現像処理は、上述のように記録/表示用画像を生成する処理であり、ここでは、ホワイトバランス(WB)ゲイン、ノイズ低減、色変換、ガンマ変換、拡大縮小、などの処理が含まれる。
【0161】
こうして、現像処理が行われた高解像度画像が生成されたら、必要に応じて、記録媒体35へ記録し、LCD37へ表示する等を行って、1枚の高解像度画像の撮影を終了する。
【0162】
第1の実施形態によれば、合成枚数Nが閾値Th未満である場合、近傍画素分配法(第1の画素配置法)により対象画素の画素値を近傍領域内の画素に分配するようにしたために、画質の高い高解像度画像をより安定して生成できる。
【0163】
また、合成枚数Nが閾値Th以上である場合、特定位置配置法(第2の画素配置法)により対象画素の画素値を最近接画素に配置するようにしたために、より高い解像度の高解像度画像を生成できる。
【0164】
そして、着目画素の比率積算値に応じて、着目画素の正規化された積算画素値と、着目画素の周辺の複数の画素の正規化された積算画素値の平均値と、をそれぞれの混合割合で混合するため、着目画素の画素値の信頼性を向上できる。
【0165】
距離指標を、2次元の高解像度画像空間上における、近傍領域内の各画素の位置と対象画素位置との、一方向の第1距離および他方向の第2距離とすることで、演算の処理負荷を軽減できる。
[第2の実施形態]
【0166】
図13から
図15は本発明の第2の実施形態を示したものである。
図13は、第2の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の3×3画素の近傍領域に、対象画素の画素値を近傍画素分配法で分配する例を示す図である。
【0167】
第2の実施形態において、第1の実施形態と同様である部分に同一の符号を付して説明を適宜省略する。第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を主に説明する。
【0168】
近傍画素分配法を用いる場合、対象画素の画素値を、第1の実施形態では2×2画素の近傍領域に分配したが、第2の実施形態は3×3画素の近傍領域に分配する。
【0169】
3×3画素の近傍領域に関し、左上の画素からラスタスキャン順に、A、B、C、D、E、F、G、H、Iとする。このとき、対象画素が含まれる画素Eを取り囲む3×3画素の領域が、近傍領域として設定される。
【0170】
画素Aの中心位置を原点(0,0)とし、右方向をx方向、下方向をy方向とし、1画素ピッチを長さ1として、近傍領域の(x,y)座標を設定する。すると、画素Bの中心位置は(1,0)、画素Cの中心位置は(2,0)、画素Dの中心位置は(0,1)、画素Eの中心位置は(1,1)、画素Fの中心位置は(2,1)、画素Gの中心位置は(0,2)、画素Hの中心位置は(1,2)、画素Iの中心位置は(2,2)となる。
【0171】
このとき、対象画素の画素位置(x,y)は、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.5の範囲に入る。この範囲において、対象画素から近傍画素への距離の最大値は、x方向およびy方向共に、1.5となる。具体例を挙げれば、(x,y)=(0.5,0.5)のとき、画素Iの中心位置(2,2)とのx方向距離DIxは1.5、y方向距離DIyは1.5となる。
【0172】
そこで、対象画素の画素値を近傍領域の各画素A~Iへ配分する比率RA~RIを、x方向距離が1.5、かつy方向距離が1.5であるときに0になるように調整する。すると、距離指標としてx方向距離およびy方向距離を用いる第2の決定法(分割距離法)を用いた場合、比率は、次のように表現される。
{1.5-(x方向の距離)}×{1.5-(y方向の距離)}/DN
【0173】
各画素A~Iの比率RA~RIおよび重み付け画素値を具体的に示したのが
図14である。
図14は、第2の実施形態において、近傍画素分配法により近傍領域の各画素に分配される重み付け画素値と比率との例を示す図表である。
図14においても、対象画素の画素値をZとしている。
【0174】
図14に示した各数式のDNは、3×3画素の近傍領域内の全て比率の合計を1に正規化するための除数である。
図14の比率欄におけるA~I各欄の分子を合計することで正規化のための除数DNが算出される。
図15は、第2の実施形態において、対象画素の画素位置(x,y)の条件に応じて定まる正規化の除数DNを示す図表である。
【0175】
図15に示す正規化の除数DNは、対象画素の画素位置(x,y)に依存する値となって定数にはならない。しかし、距離指標として直線距離を用いる第1の決定法(実距離法)のような平方根演算等は不要であるため、第1の決定法(実距離法)よりも処理負荷を軽減できる。ただし、処理負荷が大きくなっても構わなければ、第1の決定法(実距離法)を用いてもよいことは、第1の実施形態と同様である。
【0176】
そして、距離指標として第1の決定法(実距離法)と第2の決定法(分割距離法)との何れを用いる場合においても、距離指標が小さいほど比率が大きくなるのは、第1の実施形態と同様である。
【0177】
第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態とほぼ同様の効果を奏する。
【0178】
また、第2の実施形態によれば、3×3画素の近傍領域に対象画素の画素値を配置することで、画像の解像度はやや低下するものの、高解像度画像をより安定して生成できる。
[第3の実施形態]
【0179】
図16および
図17は本発明の第3の実施形態を示したものである。
図16は、第3の実施形態において、高解像度画像空間における対象画素の4×4画素の近傍領域に、対象画素の画素値を近傍画素分配法で分配する例を示す図である。
【0180】
第3の実施形態において、第1,2の実施形態と同様である部分に同一の符号を付して説明を適宜省略する。第3の実施形態では、第1,2の実施形態と異なる点を主に説明する。
【0181】
第3の実施形態は、近傍画素分配法において、対象画素の画素値を4×4画素の近傍領域に分配する。
【0182】
4×4画素の近傍領域に関し、左上の画素からラスタスキャン順に、A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、Pとする。このとき、4×4画素の近傍領域は、画素Fの中心位置と、画素Gの中心位置と、画素Jの中心位置と、画素Kの中心位置と、で囲まれる四角内に対象画素が含まれる領域として設定される。
【0183】
画素Aの中心位置を原点(0,0)とし、右方向をx方向、下方向をy方向とし、1画素ピッチを長さ1として、近傍領域の(x,y)座標を設定する。すると、画素Bの中心位置は(1,0)、画素Cの中心位置は(2,0)、画素Dの中心位置は(3,0)、画素Eの中心位置は(0,1)、画素Fの中心位置は(1,1)、画素Gの中心位置は(2,1)、画素Hの中心位置は(3,1)、画素Iの中心位置は(0,2)、画素Jの中心位置は(1,2)、画素Kの中心位置は(2,2)、画素Lの中心位置は(3,2)、画素Mの中心位置は(0,3)、画素Nの中心位置は(1,3)、画素Oの中心位置は(2,3)、画素Pの中心位置は(3,3)となる。
【0184】
このとき、対象画素の画素位置(x,y)は、1≦x≦2、1≦y≦2の範囲に入る。この範囲において、対象画素から近傍画素への距離の最大値は、x方向およびy方向共に、2となる。具体例を挙げれば、(x,y)=(1,1)のとき、画素Pの中心位置(3,3)とのx方向距離DPxは2、y方向距離DPyは2となる。
【0185】
そこで、対象画素の画素値を近傍領域の各画素A~Pへ配分する比率RA~RPを、x方向距離が2、かつy方向距離が2であるときに0になるように調整する。すると、距離指標としてx方向距離およびy方向距離を用いる第2の決定法(分割距離法)を用いた場合、比率は、次のように表現される。
{2-(x方向の距離)}×{2-(y方向の距離)}/DN
ここで、DNは正規化のための除数である。
【0186】
図17は、第3の実施形態において、近傍画素分配法により近傍領域の各画素に分配される重み付け画素値と比率との例を示す図表である。
図17においても、対象画素の画素値をZとしている。
【0187】
図17の比率欄におけるA~P各欄の分子を合計することで正規化のための除数DNが算出され、算出結果はDN=16となる。すると、上記の比率は、次のように表現される。
{2-(x方向の距離)}×{2-(y方向の距離)}/16
【0188】
除数DNは、対象画素の画素位置(x,y)に依存しない定数になる。このため、距離指標として直線距離を用いる第1の決定法(実距離法)よりも処理負荷を軽減できる。ただし、処理負荷が大きくなっても構わなければ、第1の決定法(実距離法)を用いても構わないことは、上述した各実施形態と同様である。
【0189】
こうして算出した除数DNに基づいて、各画素A~Pの比率RA~RPおよび重み付け画素値を具体的に示したのが
図17である。
【0190】
第3の実施形態において、距離指標として第1の決定法(実距離法)と第2の決定法(分割距離法)との何れを用いる場合においても、距離指標が小さいほど比率が大きくなるのは、上述した各実施形態と同様である。
【0191】
第3の実施形態によれば、上述した第1,2の実施形態とほぼ同様の効果を奏する。
【0192】
また、第3の実施形態によれば、4×4画素の近傍領域に対象画素の画素値を配置することで、画像の解像度はさらに低下するものの、高解像度画像をさらに安定して生成できる。
【0193】
なお、第1~第3の実施形態から、第2の決定法(分割距離法)において、近傍領域内の各画素に対象画素の画素値を配分する比率を、より一般に、次のように表現できる。
【0194】
すなわち、n,mを2以上の整数としたとき、n×m画素の近傍領域に対して、近傍領域内の左上の画素の中心位置を原点(0,0)とし、右方向をx方向、下方向をy方向とし、1画素ピッチを長さ1として、近傍領域の(x,y)座標を設定する。
【0195】
さらに、対象画素から近傍領域内のある画素までの、x方向の距離をDX、y方向の距離をDY、対象画素から近傍領域内の任意の画素までの、x方向の距離として取り得る最大値をDXmax、y方向の距離として取り得る最大値をDYmax、正規化の除数をDNとする。このとき、比率は、次のようになる。
{DXmax-DX}×{DYmax-DY}/DN
【0196】
ここで、除数DNは、座標(0,0)~(n,m)のn×m画素の近傍領域内の全画素に対して、{DXmax-DX}×{DYmax-DY}を合計した値として算出される。
【0197】
このように、第2の決定法(分割距離法)を適用する近傍領域は、2×2~4×4画素の領域に限定されず、正方領域にも限定されない。
【0198】
なお、上述では本発明が、画像処理装置である場合を主として説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、画像処理装置を含む、例えば撮像装置などの装置であってもよい。本発明は、画像処理装置と同様の処理を行う画像処理方法であってもよい。本発明は、コンピュータに画像処理装置と同様の処理を行わせるためのコンピュータプログラムであってもよい。本発明は、前記コンピュータプログラムを記録するコンピュータにより読み取り可能な一時的でない記録媒体、等であってもよい。
【0199】
また、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明の態様を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0200】
1…交換式レンズ
2…カメラ本体
11…レンズ
12…光学絞り
13…レンズドライバ
14…絞りドライバ
15…フラッシュメモリ
16…レンズ側マイクロコンピュータ
21…メカニカルシャッタ
22…撮像素子
23…像ぶれ補正機構
24…アナログ処理回路
25…A/D変換器
26…バス
27…DRAM
28…画像処理部
29…インタフェース
31…シャッタドライバ
32…撮像素子ドライバ
33…像ぶれ補正ドライバ
34…メモリI/F
35…記録媒体
36…LCDドライバ
37…LCD
38…操作デバイス
39…フラッシュメモリ
40…本体側マイクロコンピュータ