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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035453
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240307BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240307BHJP
   B62D 109/00 20060101ALN20240307BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D109:00
B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139909
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】内野 義友輝
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA63
3D232DA98
3D232DB05
3D232DE08
3D232EA01
3D232EB04
3D232EB08
3D232EC22
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB29
3D333CB46
3D333CC31
3D333CC38
3D333CE11
3D333CE47
(57)【要約】
【課題】車両の電源がオンされてから車両が走行可能な状態となるまでの期間を短縮することができる操舵制御装置を提供する。
【解決手段】操舵制御装置は、車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力を発生する反力モータと、転舵輪を転舵させるための転舵力を発生する転舵モータと、を備える操舵装置を制御対象とする。操舵制御装置は、反力モータおよび転舵モータの駆動を制御する制御部を有する。制御部は、車両電源がオフされたとき、ステアリングホイールの回転位置と、転舵輪の転舵位置との位置関係を、定められた舵角比に応じた位置関係に補正するための処理である舵角同期処理を実行する(ステップS102)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力を発生する反力モータと、前記転舵輪を転舵させるための転舵力を発生する転舵モータと、を備える操舵装置を制御対象とする操舵制御装置であって、
前記反力モータおよび前記転舵モータの駆動を制御する制御部を有し、
前記制御部は、車両電源がオフされたとき、前記ステアリングホイールの回転位置と、前記転舵輪の転舵位置との位置関係を、定められた舵角比に応じた位置関係に補正するための処理である舵角同期処理を実行するように構成される操舵制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記舵角同期処理として、前記転舵輪の転舵位置が、前記ステアリングホイールの回転位置に対応する転舵位置となるように、前記転舵輪の転舵位置を補正するように構成される請求項1に記載の操舵制御装置。
【請求項3】
前記操舵装置は、前記ステアリングホイールの回転を機械的に規制するための機構であって、車両電源がオフされることを契機として、前記ステアリングホイールの回転を許容するアンロック状態から、前記ステアリングホイールの回転を規制するロック状態へ切り替わるように構成されるステアリングロック機構を有し、
前記制御部は、車両電源がオフされた場合、前記ステアリングロック機構が前記アンロック状態から前記ロック状態に切り替わった後、前記舵角同期処理を実行するように構成される請求項2に記載の操舵制御装置。
【請求項4】
前記操舵装置は、前記車両の運転者の降車を検出するセンサと、
前記ステアリングホイールの回転を機械的に規制するための機構であって、車両電源がオフされることを契機として、前記ステアリングホイールの回転を許容するアンロック状態から、前記ステアリングホイールの回転を規制するロック状態へ切り替わるように構成されるステアリングロック機構と、を有し、
前記制御部は、車両電源がオフされた場合、前記センサを通じて前記運転者の降車が検出された後、かつ前記ステアリングロック機構が前記ロック状態に切り替わる前に、前記舵角同期処理を実行開始するように構成される請求項1または請求項2に記載の操舵制御装置。
【請求項5】
前記操舵装置は、前記車両の運転者の降車を検出するセンサと、
前記ステアリングホイールの回転を機械的に規制するための機構であって、車両電源がオフされることを契機として、前記ステアリングホイールの回転を許容するアンロック状態から、前記ステアリングホイールの回転を規制するロック状態へ切り替わるように構成されるステアリングロック機構と、を有し、
前記制御部は、車両電源がオフされた場合、前記センサを通じて前記運転者の降車が検出された後、かつ前記ステアリングロック機構が前記ロック状態に切り替わる前に、前記舵角同期処理を実行開始するように構成され、
前記制御部は、前記舵角同期処理として、前記ステアリングホイールの回転位置と、前記転舵輪の転舵位置との位置関係が、定められた舵角比に応じた位置関係となるように、前記転舵輪の転舵位置、および前記ステアリングホイールの回転位置の少なくとも一方を補正するように構成される請求項1に記載の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達を分離した、いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵装置が存在する。操舵装置は、ステアリングシャフトに付与される操舵反力の発生源である反力モータを有する反力機構と、転舵輪を転舵させる転舵力の発生源である転舵モータを有する転舵機構とを備えている。車両の走行時、操舵装置の制御装置は、反力モータに対する給電制御を通じて操舵反力を発生させるとともに、転舵モータに対する給電制御を通じて転舵輪を転舵させる。
【0003】
ステアバイワイヤ方式の操舵装置においては、ステアリングホイールが転舵機構からの制約を受けない。このため、車両の電源がオフされている状態でステアリングホイールに何らかの外力が加わった際、ステアリングホイールが回転するおそれがある。このとき、転舵輪は動作しないため、ステアリングホイールと転舵輪との位置関係が所定の舵角比に応じた本来の位置関係と異なる状況が生じる。舵角比とは、ステアリングホイールの操舵角と転舵輪の転舵角との比である。
【0004】
たとえば特許文献1の操舵装置は、ステアリングホイールの回転位置を自動調節する機能を有している。操舵装置の制御装置は、車両の電源がオフされたときのステアリングホイールの回転位置を記憶している。制御装置は、車両の電源がオフされたときのステアリングホイールの回転位置と車両の電源がオンされたときのステアリングホイールの回転位置との比較を通じてステアリングホイールの回転位置のずれ量を演算し、このずれ量が0(零)になるように反力モータを駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-195086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、車両電源がオンされたとき、ステアリングホイールの回転位置を調節することにより、たしかにステアリングホイールと転舵輪との位置関係が所定の舵角比に応じた位置関係とすることができる。しかし、ステアリングホイールの回転位置を調節する分だけ、車両電源がオンされてから車両が走行可能な状態となるまでの期間が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得る操舵制御装置は、車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力を発生する反力モータと、前記転舵輪を転舵させるための転舵力を発生する転舵モータと、を備える操舵装置を制御対象とする操舵制御装置である。操舵制御装置は、前記反力モータおよび前記転舵モータの駆動を制御する制御部を有する。前記制御部は、車両電源がオフされたとき、前記ステアリングホイールの回転位置と、前記転舵輪の転舵位置との位置関係を、定められた舵角比に応じた位置関係に補正するための処理である舵角同期処理を実行するように構成される。
【0008】
この構成によれば、車両電源がオンされたときに舵角同期処理を実行する必要がない。このため、車両電源がオンされたときに舵角同期処理を実行する場合に比べて、車両電源がオンされてから車両が走行可能な状態となるまでの期間を短縮することができる。
【0009】
上記の操舵制御装置において、前記制御部は、前記舵角同期処理として、前記転舵輪の転舵位置が、前記ステアリングホイールの回転位置に対応する転舵位置となるように、前記転舵輪の転舵位置を補正するように構成されるようにしてもよい。
【0010】
この構成によれば、転舵輪の転舵位置が、ステアリングホイールの回転位置に対応する転舵位置に補正されることにより、ステアリングホイールの回転位置と、転舵輪の転舵位置との位置関係が、定められた舵角比に応じた位置関係に補正される。
【0011】
上記の操舵制御装置において、前記操舵装置は、前記ステアリングホイールの回転を機械的に規制するための機構であって、車両電源がオフされることを契機として、前記ステアリングホイールの回転を許容するアンロック状態から、前記ステアリングホイールの回転を規制するロック状態へ切り替わるように構成されるステアリングロック機構を有していてもよい。この場合、前記制御部は、車両電源がオフされた場合、前記ステアリングロック機構が前記アンロック状態から前記ロック状態に切り替わった後、前記舵角同期処理を実行するように構成されるようにしてもよい。
【0012】
この構成によれば、ステアリングロック機構がロック状態であるとき、舵角同期処理が実行される。ステアリングホイールの回転が規制された状態、すなわち操舵角が変化しない状態で転舵輪の転舵位置が補正される。このため、転舵輪の転舵位置を、ステアリングホイールの回転位置に対応する転舵位置に、より正確に合わせることができる。また、転舵輪の転舵位置と、ステアリングホイールの回転位置との関係が変化することを抑制できる。
【0013】
上記の操舵制御装置において、前記操舵装置は、前記車両の運転者の降車を検出するセンサと、前記ステアリングホイールの回転を機械的に規制するための機構であって、車両電源がオフされることを契機として、前記ステアリングホイールの回転を許容するアンロック状態から、前記ステアリングホイールの回転を規制するロック状態へ切り替わるように構成されるテアリングロック機構と、を有していてもよい。この場合、前記制御部は、車両電源がオフされた場合、前記センサを通じて前記運転者の降車が検出された後、かつ前記ステアリングロック機構が前記ロック状態に切り替わる前に、前記舵角同期処理を実行開始するように構成されるようにしてもよい。
【0014】
このようにしても、車両電源がオンされたときに舵角同期処理を実行する場合に比べて、車両電源がオンされてから車両が走行可能な状態となるまでの期間を短縮することができる。
【0015】
上記の操舵制御装置において、前記操舵装置は、前記車両の運転者の降車を検出するセンサと、前記ステアリングホイールの回転を機械的に規制するための機構であって、車両電源がオフされることを契機として、前記ステアリングホイールの回転を許容するアンロック状態から、前記ステアリングホイールの回転を規制するロック状態へ切り替わるように構成されるテアリングロック機構と、を有していてもよい。この場合、前記制御部は、車両電源がオフされた場合、前記センサを通じて前記運転者の降車が検出された後、かつ前記ステアリングロック機構が前記ロック状態に切り替わる前に、前記舵角同期処理を実行開始するように構成されるようにしてもよい。また、前記制御部は、前記舵角同期処理として、前記ステアリングホイールの回転位置と、前記転舵輪の転舵位置との位置関係が、定められた舵角比に応じた位置関係となるように、前記転舵輪の転舵位置、および前記ステアリングホイールの回転位置の少なくとも一方を補正するように構成されるようにしてもよい。
【0016】
このようにしても、車両電源がオンされたときに舵角同期処理を実行する場合に比べて、車両電源がオンされてから車両が走行可能な状態となるまでの期間を短縮することができる。また、舵角同期処理として、ステアリングホイールの回転位置を補正する処理が採用される場合であれ、運転者が降車した後であるため、舵角同期処理の実行を通じてステアリングホイールが自動回転したとしても、運転者に違和感を与えることがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の操舵制御装置によれば、車両の電源がオンされてから車両が走行可能な状態となるまでの期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】操舵制御装置の一実施の形態が搭載される操舵装置の構成図である。
図2】一実施の形態の操舵制御装置の終了シーケンスの処理手順を示すフローチャートである。
図3】(a),(b)は、一実施の形態にかかる舵角同期処理の実行に伴う、転舵輪の転舵位置とステアリングホイールの回転位置との関係の変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、操舵制御装置の一実施の形態を説明する。操舵制御装置は、車両の操舵装置を制御対象とする。
図1に示すように、車両の操舵装置10は、車両のステアリングホイール11に操舵反力を付与する反力ユニット20、および車両の転舵輪12を転舵させる転舵ユニット30を有している。操舵反力とは、運転者によるステアリングホイール11の操作方向と反対方向へ向けて作用するトルクをいう。操舵反力をステアリングホイール11に付与することにより、運転者に適度な手応え感を与えることが可能である。
【0020】
反力ユニット20は、ステアリングホイール11が連結されたステアリングシャフト21、反力モータ22、減速機構23、回転角センサ24、トルクセンサ25、ステアリングロック機構26、および反力制御部27を有している。
【0021】
反力モータ22は、操舵反力の発生源である。反力モータ22としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。反力モータ22は、減速機構23を介して、ステアリングシャフト21に連結されている。反力モータ22が発生するトルクは、操舵反力としてステアリングシャフト21に付与される。
【0022】
回転角センサ24は反力モータ22に設けられている。回転角センサ24は反力モータ22の回転角θを検出する。
トルクセンサ25は、ステアリングシャフト21における減速機構23とステアリングホイール11との間の部分に設けられている。トルクセンサ25は、ステアリングホイール11の回転操作を通じてステアリングシャフト21に加わる操舵トルクTを検出する。
【0023】
ステアリングロック機構26は、ステアリングホイール11の回転を機械的に規制するための機構である。ステアリングロック機構26は、たとえば、モータと、ロックバーとを有している。ロックバーは、モータの回転に連動して、ロック位置とアンロック位置との間を移動する。ロック位置は、ステアリングシャフト21の嵌合部に嵌合するロックバーの位置である。ロックバーがロック位置にあるとき、ステアリングロック機構26は、ステアリングホイール11の回転を許容するアンロック状態となる。アンロック位置は、ステアリングシャフト21の嵌合部に対する嵌合が解除されるロックバーの位置である。ロックバーがアンロック位置にあるとき、ステアリングロック機構26は、ステアリングホイール11の回転を規制するロック状態となる。
【0024】
反力制御部27は、回転角センサ24を通じて検出される反力モータ22の回転角θに基づきステアリングシャフト21の回転角である操舵角θを演算する。反力制御部27は、ステアリングホイール11の操舵中立位置に対応する反力モータ22の回転角θであるモータ中点を基準とする回転数をカウントしている。反力制御部27は、モータ中点を原点として回転角θを積算した角度である積算角を演算し、この演算される積算角に減速機構23の減速比に基づく換算係数を乗算することにより、ステアリングホイール11の操舵角θを演算する。ちなみに、モータ中点は舵角中点情報として反力制御部27に記憶されている。
【0025】
反力制御部27は、反力モータ22の駆動制御を通じて操舵トルクTに応じた操舵反力を発生させる反力制御を実行する。反力制御部27は、トルクセンサ25を通じて検出される操舵トルクTに基づき目標操舵反力を演算し、この演算される目標操舵反力および操舵トルクTに基づきステアリングホイール11の目標操舵角を演算する。反力制御部27は、反力モータ22の回転角θに基づき演算される操舵角θと目標操舵角との差を求め、当該差を無くすように反力モータ22に対する給電を制御する。反力制御部27は、回転角センサ24を通じて検出される反力モータ22の回転角θを使用して反力モータ22をベクトル制御する。
【0026】
転舵ユニット30は、転舵シャフト31、転舵モータ32、減速機構33、ピニオンシャフト34、回転角センサ35、および転舵制御部36を有している。
転舵シャフト31は、車幅方向(図1中の左右方向)に沿って延びている。転舵シャフト31の両端には、それぞれタイロッド13を介して左右の転舵輪12が連結されている。
【0027】
転舵モータ32は転舵力の発生源である。転舵モータ32としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。転舵モータ32は、減速機構33を介してピニオンシャフト34に連結されている。ピニオンシャフト34のピニオン歯34aは、転舵シャフト31のラック歯31aに噛み合わされている。転舵モータ32が発生するトルクは、転舵力としてピニオンシャフト34を介して転舵シャフト31に付与される。転舵モータ32の回転に応じて、転舵シャフト31は車幅方向(図1中の左右方向)に沿って移動する。転舵シャフト31が移動することにより転舵輪12の転舵角θが変更される。
【0028】
回転角センサ35は転舵モータ32に設けられている。回転角センサ35は転舵モータ32の回転角θを検出する。
転舵制御部36は、転舵モータ32の駆動制御を通じて転舵輪12を操舵状態に応じて転舵させる転舵制御を実行する。転舵制御部36は、回転角センサ35を通じて検出される転舵モータ32の回転角θに基づきピニオンシャフト34の回転角θを演算する。また、転舵制御部36は、反力制御部27により演算される目標操舵角を使用してピニオンシャフト34の目標回転角を演算する。ただし、ピニオンシャフト34の目標回転角は、所定の舵角比を実現する観点に基づき演算される。転舵制御部36は、ピニオンシャフト34の目標回転角と実際の回転角θとの差を求め、当該差を無くすように転舵モータ32に対する給電を制御する。転舵制御部36は、回転角センサ35を通じて検出される転舵モータ32の回転角θを使用して転舵モータ32をベクトル制御する。ピニオンシャフト34の回転角θは、転舵輪12の転舵角θを反映する値である。
【0029】
なお、反力制御部27および転舵制御部36は、操舵制御装置40を構成する。反力制御部27および転舵制御部36は、つぎの3つの構成A1,A2,A3のうちいずれか一を含む処理回路を有している。
【0030】
A1.ソフトウェアであるコンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含む。
A2.各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の専用のハードウェア回路。ASICは、CPUおよびメモリを含む。
【0031】
A3.構成A1,A2を組み合わせたハードウェア回路。
メモリは、コンピュータで読み取り可能とされた媒体であって、コンピュータに対する処理あるいは命令を記述したプログラムを記憶している。本実施の形態では、コンピュータは、CPUである。メモリは、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含む。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを定められた演算周期で実行することによって各種の制御を実行する。
【0032】
反力制御部27、転舵制御部36、および各種の車載制御装置は、車載ネットワークを介して相互に接続されている。車載ネットワークは、たとえばCAN(Controller Area Network)である。車載制御装置は、たとえば、ステアリングロック制御装置50を含む。
【0033】
ステアリングロック制御装置50は、ステアリングロック機構26の動作を制御する。ステアリングロック制御装置50は、車両電源がオンされたとき、ステアリングホイール11のロックが解除されるようにステアリングロック機構26の動作を制御する。ステアリングホイール11のロックを解除するための処理は、車両を走行可能な状態に遷移させるための処理である。ステアリングロック制御装置50は、車両電源がオフされたとき、ステアリングホイール11がロックされるようにステアリングロック機構26の動作を制御する。ステアリングロック制御装置50は、ロック状態信号を生成する。ロック状態信号は、ステアリングロック機構26によるステアリングホイール11のロックまたはアンロックが完了したかどうかを示す電気信号である。
【0034】
なお、車両電源がオンまたはオフすることは、たとえば運転席に設けられる起動スイッチがオンまたはオフすることでもある。起動スイッチは、車両の走行用駆動源を始動または停止させる際に操作されるものであって、たとえばイグニッションスイッチあるいはパワースイッチである。
【0035】
反力制御部27、転舵制御部36、およびステアリングロック制御装置50は、いわゆるパワーラッチ制御を実行する。パワーラッチ制御は、車両電源のオフ操作を契機として、定められた期間だけ電源を保持するための制御である。車両電源のオフ操作が行われてから所定時間が経過するまで、反力制御部27、転舵制御部36およびステアリングロック制御装置50は、制御を継続することが可能である。
【0036】
<転舵制御部36の終了シーケンス>
つぎに、転舵制御部36の終了シーケンスについて説明する。終了シーケンスは、車両電源がオフされることを契機として実行される一連の処理である。
【0037】
図2のフローチャートに示すように、転舵制御部36は、車両電源がオフされたとき、ステアリングロック機構26がロック状態であるかどうかを判定する(ステップS101)。
【0038】
転舵制御部36は、ステアリングロック制御装置50により生成されるロック状態信号を取り込む。転舵制御部36は、ロック状態信号がステアリングロック機構26によるステアリングホイール11のロックが完了したことを示すものであるとき、ステアリングロック機構26がロック状態であると判定する。転舵制御部36は、ロック状態信号がステアリングロック機構26によるステアリングホイール11のアンロックが完了したことを示すものであるとき、ステアリングロック機構26がアンロック状態であると判定する。
【0039】
転舵制御部36は、ステアリングロック機構26がアンロック状態であると判定されるとき(ステップS101でNO)、処理を終了する。転舵制御部36は、ステアリングロック機構26がロック状態であると判定されるとき(ステップS101でYES)、舵角同期処理の実行を開始する(S102)。
【0040】
舵角同期処理は、転舵輪12の転舵位置を補正するための処理である。転舵制御部36は、転舵輪12の転舵位置がステアリングホイール11の回転位置に対応する転舵位置と異なるとき、転舵輪12の転舵位置がステアリングホイール11の回転位置に対応する転舵位置となるように転舵モータ32を駆動させる。
【0041】
転舵制御部36は、車両電源がオフされた直後、反力制御部27により演算される操舵角θを取り込む。また、転舵制御部36は、車両電源がオフされた直後のピニオンシャフト34の回転角θに基づき転舵輪12の転舵角θを演算し、演算される転舵角θに舵角比の逆数を乗算することにより転舵角θを操舵角θに換算する。転舵制御部36は、換算した操舵角θと、反力制御部27から取り込んだ操舵角θとの差を求め、その差を無くすように転舵モータ32に対する給電を制御する。転舵制御部36は、換算した操舵角θが、反力制御部27から取り込んだ操舵角θと一致するとき、舵角同期処理の実行を終了する。
【0042】
図3(a),(b)に示すように、舵角同期処理の実行を通じて、転舵輪12の転舵位置Pがステアリングホイール11の回転位置Pに対応する転舵位置Pとなる。すなわち、転舵輪12の転舵角θが、ステアリングホイール11の操舵角θに対応する転舵角θとなる。車両電源がオフされてから、次に車両電源がオンされるまでの期間、ステアリングロック機構26がロック状態に維持される。ステアリングホイール11の回転が規制された状態に維持されるため、転舵輪12の転舵位置Pも、ステアリングホイール11の回転位置Pに対応する転舵位置に維持される。
【0043】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)転舵制御部36は、車両電源がオフされたとき、舵角同期処理を実行する。舵角同期処理の実行を通じて、転舵輪12の転舵位置Pがステアリングホイール11の回転位置Pに対応する転舵位置Pに補正される。このため、車両電源がオンされたときに舵角同期処理を実行する必要がない。したがって、車両電源がオンされたときに舵角同期処理を実行する場合に比べて、車両電源がオンされてから車両が走行可能な状態となるまでの期間を短縮することができる。
【0044】
(2)転舵制御部36は、ステアリングロック機構26がロック状態であるとき、舵角同期処理を実行する。ステアリングホイール11の回転が規制された状態、すなわち操舵角θが変化しない状態で転舵輪12の転舵位置Pが補正される。このため、転舵輪12の転舵位置Pを、ステアリングホイール11の回転位置Pに対応する転舵位置Pに、より正確に合わせることができる。また、転舵輪12の転舵位置Pと、ステアリングホイール11の回転位置Pとの関係が変化することを抑制できる。
【0045】
(3)転舵輪12の転舵位置Pを、ステアリングホイール11の回転位置Pに対応する転舵位置Pに合わせる。このため、ステアリングホイール11の回転位置Pを、転舵輪12の転舵位置Pに合わせる場合と異なり、舵角同期処理の実行によりステアリングホイール11が自動回転することがない。したがって、車両の運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
【0046】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・ステアリングロック制御装置50は、車両電源がオフされた場合、車載のセンサ51を通じて運転者が降車したことが検出されるとき、ステアリングロック機構26をアンロック状態からロック状態へ切り替えるようにしてもよい。センサは、たとえば、着座センサ、およびドアセンサを含む。着座センサは、運転者が座席に着座しているかどうかを検出する。ドアセンサは、車両のドアの開閉を検出する。ステアリングロック制御装置50は、着座センサの検出結果、およびドアセンサの検出結果に基づき、運転者の降車を検出する。ステアリングロック制御装置50は、たとえば、着座センサがオンからオフに切り替わった後、ドアセンサを通じてドアの開閉が検出されるとき、運転者が降車したと判定する。この場合、転舵制御部36は、つぎの処理を実行するようにしてもよい。すなわち、転舵制御部36は、たとえば、ステアリングロック制御装置50を通じて、運転者の着座状態、およびステアリングロック機構26の状態を取得する。転舵制御部36は、運転者の降車が検出された後、かつステアリングロック機構26がロック状態に切り替わる前に舵角補正処理を実行する。このようにしても、舵角同期処理の実行を通じて、転舵輪12の転舵位置Pがステアリングホイール11の回転位置Pに対応する転舵位置Pに補正される。
【0047】
・前述したように、運転者の降車が検出された後、かつステアリングロック機構26がロック状態に切り替わる前に舵角同期処理を実行開始する場合、反力制御部27が、ステアリングホイール11の回転位置Pを、転舵輪12の転舵位置Pに対応する位置に合わせるようにしてもよい。また、反力制御部27および転舵制御部36が、ステアリングホイール11の回転位置Pと、転舵輪12の転舵位置Pとを互いに合わせ合うようにしてもよい。運転者が降車した後であるため、舵角同期処理の実行を通じてステアリングホイール11が自動回転したとしても、運転者に違和感を与えることがない。なお、反力制御部27および転舵制御部36は、たとえば、ステアリングロック制御装置50を通じて、運転者の着座状態、およびステアリングロック機構26の状態を取得する。
【0048】
・製品仕様によっては、反力制御部27および転舵制御部36を単一の制御部として構成してもよい。
・製品仕様によっては、操舵装置10として、ステアリングロック機構26を割愛した構成を採用してもよい。この場合、ステアリングロック制御装置50も割愛することができる。転舵制御部36は、車両電源がオフされたとき、舵角同期処理の実行を開始する。
【0049】
・製品仕様によっては、操舵装置10が、ギヤ比可変機能を有していてもよい。たとえば、操舵性の向上を目的として、ステアリングシャフト21にVGRモータが設けられる。VGRモータの駆動を通じて、ステアリングホイール11の操舵角θと転舵輪12の転舵角θとの比率である舵角比を変化させる。
【符号の説明】
【0050】
10…操舵装置
11…ステアリングホイール
12…転舵輪
22…反力モータ
26…ステアリングロック機構
27…操舵制御装置を構成する反力制御部
36…操舵制御装置を構成する転舵制御部
32…転舵モータ
40…操舵制御装置
51…センサ
図1
図2
図3