(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035459
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】CO2回収装置、CO2回収量予測方法及び排気システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240307BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20240307BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20240307BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F01N3/08 A ZAB
F01N3/18 F
F01N11/00
B01D53/92 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139927
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】上出 英行
(72)【発明者】
【氏名】奥原 誠
(72)【発明者】
【氏名】本城 匠
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB08
3G091BA13
3G091CA12
3G091CA13
3G091DA10
3G091DB11
3G091EA01
3G091EA21
3G091EA32
3G091EA35
3G091HA36
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA20
4D002CA07
4D002DA41
4D002EA02
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
(57)【要約】
【課題】回収したCO2の貯留量を精度良く制御すること。
【解決手段】実施形態に係るCO2回収装置20は、車両の排気ガスからCO2を回収する回収部への排気ガスの流入量を監視する。また、CO2回収装置20は、監視した結果を基に、回収部への排気ガスの流入量を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両の排気ガスからCO2を回収するCO2回収装置であって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
車両の排気ガスからCO2を回収する回収部への排気ガスの流入量を監視し、
監視した結果を基に、前記回収部への排気ガスの流入量を制御する
CO2回収装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
第1の期間における前記回収部への排気ガスの流入量の単位時間当たりの平均値を上限値に設定し
前記第1の期間の後の第2の期間において、前記回収部への排気ガスの単位時間当たりの流入量が前記上限値を超えないように制御する
請求項1に記載のCO2回収装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第2の期間において、前記回収部に流入した排気ガスのうち前記上限値を下回った量を記録し、前記上限値を超えた分の排気ガスであって、記録した量を超えない量の排気ガスを前記回収部に流入させる
請求項2に記載のCO2回収装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記回収部による単位時間当たりのCO2の飽和回収量に応じた排気ガスの量を上限値に設定し
前記回収部への排気ガスの単位時間当たりの流入量が前記上限値を超えないように制御する
請求項1に記載のCO2回収装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記上限値を超えた分の排気ガスを廃棄させる
請求項2又は4に記載のCO2回収装置。
【請求項6】
CO2を回収するCO2回収装置と、車両のエンジンと、流入量調整装置と、を備えた排気システムであって、
前記CO2回収装置は、
排気ガスからCO2を分離する分離部と、
前記分離部によって分離されたCO2を貯留する貯留部と、
を備え、
前記流入量調整装置は、制御に従って前記エンジンの排気ガスの前記CO2回収装置への流入量を調整し、
前記CO2回収装置は、前記エンジンの排気ガスからCO2を回収する回収部と、コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記回収部への排気ガスの流入量を監視し、
監視した結果を基に、前記流入量調整装置を制御する
排気システム。
【請求項7】
車両の排気ガスからCO2を回収する回収部への排気ガスの流入量を監視し、
第1の期間における前記回収部への排気ガスの流入量の単位時間当たりの平均値を、前記第1の期間の後の第2の期間における前記回収部への排気ガスの単位時間当たりの流入量として予測する
処理をコンピュータが実行することを特徴とするCO2回収量予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収装置、CO2回収量予測方法及び排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CO2(二酸化炭素)を回収し蓄積するCO2回収装置が搭載された車両が知られている(例えば、特許文献1を参照)。例えば、エンジン等からの排気ガスを、CO2回収装置に通すことで、排気ガスに含まれるCO2が回収される。また、排気ガスから回収されたCO2は、車両内で一時的に貯留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術には、車両に搭載されたCO2回収装置において、回収したCO2の貯留量を精度良く制御することが難しいという問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、CO2回収装置が搭載された車両について開示されている。
【0006】
一方で、車両に備えられた貯留装置の貯留量は、発電所等に備えられた大規模な回収施設等と比較して大きくない。このため、車両に備えられた貯留装置は、例えば車両が走行中に排出されるCO2を全て回収することは困難である。
【0007】
ここで、CO2の回収は、排気ガスからCO2を分離することによって行われる。
図1は、速度による排ガス量の変化を示す図である。
図1に示すように、CO2を分離する前の流入する排気ガスの流量によって、分離して生じるCO2の量が大きく変化する。
【0008】
図1に示すように、軽自動車がアイドル状態であるときの排ガス量は、15.8m
2である。一方で、軽自動車が速度80~90km/hで走行中の排ガス量は、79.2m
2である。このように、排ガス量は車両の状態によって大幅に変わる。そして、排ガス量に比例して、分離できるCO2の量も大きく変わる。
【0009】
一般的に、分離したCO2を一時貯留するための吸収材1kgに対して、数10gから100g程度のCO2しか貯留できない。一方、輸送用の小型トラック(例えば、最大積載量が3t未満のトラック)は、1日平均で172km程度走行し、排気ガスに含まれるCO2量は17kg程度となる。
【0010】
つまり、輸送用の小型トラックから1日に排出されるCO2の全てを、1kg当たり50gのCO2を吸収する吸収材で貯留しようとすると、1000/50*17=3400kg(3.4t)もの吸収材が必要となる。
【0011】
しかし、輸送用の小型トラックには、3.4tもの吸収材を搭載することはできない。このため、車両に搭載される吸収剤は小型化せざるを得ない。
【0012】
このため、例えば所望する期間に亘ってCO2を回収し続けるためには、吸収剤がすぐに吸収容量の上限に達しないように制御する必要がある。
【0013】
図2に従来の制御装置の構成例を示す。
図2に示すように、従来の制御装置50においては、全体制御部51が、CO2吸収装置40に備えられた吸収材におけるCO2の貯留量を監視し(貯留量監視部52)、吸収材が吸収容量の上限になった場合に通知する(満貯留通知部53)。
【0014】
このため、従来の制御装置50は、吸収剤が吸収容量の上限になったことを通知することはできるが、流入量の制御はできなかった。
【0015】
また、特許文献1では、車両の排気ガスの排出量の監視及び予測について開示されているが、回収したCO2の貯留量の制御については検討されていない。このため、特許文献1に記載の技術では、車両における回収したCO2の貯留量を精度良く制御することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るCO2回収装置は、車両の排気ガスからCO2を回収する回収部への排気ガスの流入量を監視する。また、CO2回収装置は、監視した結果を基に、回収部への排気ガスの流入量を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両に搭載されたCO2回収装置において、回収したCO2の貯留量を精度良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、速度による排ガス量の変化を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る排気システムの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、上限値の設定方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、CO2の飽和回収量を説明する図である。
【
図8】
図8は、制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、流入量制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するCO2回収装置、CO2回収量予測方法及び排気システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
前述の通り、排気ガスから回収されたCO2は、車両内で一時的に貯留される(一時貯留)。その後、車両内で貯留されたCO2は、大規模な回収施設等で回収される。
【0021】
下記の実施形態の1つの目的は、回収したCO2の貯留量を精度良く制御することである。
【0022】
[第1の実施形態]
図3を用いて、第1の実施形態に係る排気システムの構成を説明する。
図3は、本実施形態に係る排気システムの構成例を示す図である。
図3の矢印は排気ガスの流れを示している。また、
図3の破線は制御信号を示している。
【0023】
図3に示す排気システム1は、車両のエンジン11から出る排気ガスからCO2を回収し、回収したCO2を貯留する。また、排気システム1は、CO2を回収した後の排気ガス、又はCO2を回収しなかった排気ガスを大気に排出する。この例では、流入量調整装置13及びCO2回収装置20は、マフラー12の後段にあるが、マフラー12の前段にあっても構わない。マフラー12の前段とは、エンジン11とマフラー12の間である。
【0024】
これにより、排気システム1によれば、車両から大気に排出されるCO2を削減することができる。なお、貯留されたCO2は、燃料の生成等に利用可能である。
【0025】
図3に示すように、排気システム1は、エンジン11、マフラー12、流入量調整装置13及びCO2回収装置20を有する。ここでは、排気システム1は、車両に搭載されるものとする。
【0026】
エンジン11から出た排気ガスは、マフラー12を通り、マフラー12の後段に備えられた流入量調整装置13へ送られる。
【0027】
流入量調整装置13は、CO2回収装置20への排気ガスの流入量を調整するための装置である。流入量調整装置13は、制御に従ってエンジン11の排気ガスのCO2回収装置20への流入量を調整する。
【0028】
流入量調整装置13は、CO2回収装置20へ流入する排気ガスの圧力を調整することができる。例えば、流入量調整装置13は、三方弁又はウェイストゲートバルブ等により実現される。また、流入量調整装置13は、電気信号等により制御可能であるものとする。
【0029】
流入量調整装置13によってCO2回収装置20へ送られなかった排気ガスは、そのまま大気へ排出される。なお、排気ガスには、CO2の他、N2(窒素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)等が含まれる。
【0030】
CO2回収装置20は、排気ガスからCO2を回収し、CO2を回収した後の排気ガスを排出する。また、CO2回収装置20は、回収したCO2を貯留する。
【0031】
CO2回収装置20は、制御部21及び回収部22を有する。
【0032】
制御部21は、流入量調整装置13及び回収部22を制御する。制御部21は、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)がコントローラとして機能し、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって実現される。
【0033】
また、コントローラは、CPUに限られず、ECU(Electronic Control Unit)、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、SoC(System on a Chip)等であってもよい。
【0034】
また、コントローラは、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、コントローラは、単一のソケットで接続される単一のチップ内に複数のコアを有するマルチコア構成であってもよい。
【0035】
ここで、
図4を用いて回収部22の構成を説明する。
図4は、回収部の構成例を示す図である。
【0036】
図4に示すように、回収部22は、分離部221及び貯留部222を有する。また、分離部221は、分離膜2211を備える。
【0037】
分離部221は、排気ガスからCO2を分離する。分離部221は、分離膜2211にCO2を透過させ、排気ガス中のCO2を回収する。分離膜2211には、平膜タイプ、中空糸膜タイプ、管状膜タイプ、袋状膜タイプといった既知の分離膜モジュールを適用することができる。例えば、分離膜2211は、促進輸送膜である。
【0038】
貯留部222は、回収されたCO2を貯留する。例えば、貯留部222は、活性炭等の多孔質物質にCO2を吸着させて貯留する。
【0039】
貯留部222は、車両に搭載されるCO2の吸収材であるため、前述の通り貯留可能なCO2の量は限られている。例えば、大型トラックが一日中走行した場合に排出されるCO2を全て貯留部222に貯留させるのは難しい。例えば、貯留部222が貯留可能なCO2の量は、大型トラックが数時間(例えば、3時間程)走行した場合に排出されるCO2の量程度である。
【0040】
図5を用いて制御部21の構成を説明する。
図5は、制御部の構成例を示す図である。
【0041】
図5に示すように、制御部21は、全体制御部211、流入量監視部212、流入量全体制御部213、流入量設定部214、貯留量監視部215、満貯留通知部216を有する。
【0042】
なお、全体制御部211、流入量監視部212、流入量全体制御部213、流入量設定部214、貯留量監視部215、満貯留通知部216は機能部であり、CPU等がソフトウェアを実行することにより実現される。
【0043】
全体制御部211は、流入量監視部212、流入量全体制御部213、流入量設定部214、貯留量監視部215、満貯留通知部216を制御する。
【0044】
流入量監視部212は、車両の排気ガスからCO2を回収する回収部22への排気ガスの流入量を監視する。例えば、流入量監視部212は、マフラー12又は流入量調整装置13に設けられた圧力センサのセンサ値、又は車両のECUから取得したエンジン11の回転数から排気ガスの流入量を推定することができる。
【0045】
これは、エンジン11の回転数と排気ガスの量、及び排気ガスの圧力が関連するためである。エンジン11の回転数が増加すると、単位時間当たりの排気ガスの量及び圧力は大きくなる。
【0046】
流入量全体制御部213は、流入量監視部212が監視した結果を基に、回収部22への排気ガスの流入量を制御する。例えば、流入量全体制御部213は、流入量調整装置13を制御し、単位時間ごと(例えば1秒ごと)に、CO2回収装置20へ流入する排気ガスの量を調整する。その際、流入量全体制御部213は、後述する上限値等のパラメータに従って制御を行う。
【0047】
流入量設定部214は、CO2回収装置20への排気ガスの流入量に関する上限値等のパラメータを設定する。
【0048】
制御部21によれば、排気ガスのCO2回収装置20への流入量を制御し、例えば単位時間当たりのCO2の回収量を一定にすることができる。その結果、回収したCO2の貯留量を精度良く制御される。
【0049】
貯留量監視部215は、貯留部222に貯留されたCO2の量を監視する。満貯留通知部216は、貯留量監視部215による監視結果を基に通知を行う。例えば、貯留部222が満貯留になったことを通知する。
【0050】
例えば、満貯留通知部216は、車両に搭載された出力装置(スピーカ、ディスプレイ等)を介して通知を行う。
【0051】
(平均値に基づく制御)
制御部21による排出ガスの流入量の制御方法を具体的な例を挙げて説明する。まず、ある期間における排気ガスの流入量に基づく制御方法を説明する。
【0052】
流入量設定部214は、第1の期間における回収部22への排気ガスの流入量の単位時間当たりの平均値を、第1の期間の後の第2の期間における回収部22への排気ガスの単位時間当たりの流入量として予測する。
【0053】
図6は、上限値の設定方法を説明する図である。
図6に示すように、流入量設定部214は、時刻t
0から時刻t
1までの、長さT
0の第1の期間における排気ガスの流入量の平均値を計算する。
【0054】
流入量設定部214は、第1の期間における回収部22への排気ガスの流入量の単位時間当たりの平均値を上限値に設定する。第2の期間は、時刻t1以降の期間である。流入量設定部214によれば、流入量に制限ラインが設けられることになる。
【0055】
流入量全体制御部213は、第1の期間の後の第2の期間において、回収部22への排気ガスの単位時間当たりの流入量が上限値を超えないように制御する。
【0056】
これにより、過去の実績に基づき、容易に排気ガスの流入量を予測し、その後の流入量の適切な制御に利用することができる。
【0057】
単位時間当たりのCO2の貯留量をf(t)とすると、ある期間の貯留量はf(t)の時間積分によって表される。制限ラインが設けられた場合、当該時間積分から、制限ラインを超えた排出ガスに対応するCO2が除かれた量のCO2が貯留される。
【0058】
例えば、流入量全体制御部213は、CO2回収装置20に、第2の期間において、上限値を超えた分の排気ガスを廃棄させる。なお、廃棄は、排気ガスを大気へ放出することを意味する。
【0059】
なお、第2の期間において、流入量調整装置13は、CO2回収装置20を経由せずに大気と接続されたルート13aを使って排気ガスを廃棄することができる。
【0060】
これにより、CO2回収装置20は、上限を超えた排気ガスを適切に処理できる。
【0061】
なお、全ての排気ガスを回収部22に流入させ、分離できなかったCO2を含む排気ガスを回収部22から大気に排出することも考えられる。しかしながら、この方法では、分離膜2211が劣化しやすくなるという問題がある。特に分離膜2211が高分子膜である場合、分離膜2211に影響のある被毒物質(NOx、SOx等)を多少なりとも含む不必要な排気ガスを処理する(不必要な排気ガスを分離膜2211に接触させる)ことで分離膜2211の劣化が早まり、分離膜2211の分離性能が低下しやすい。
【0062】
本実施形態のように、回収部22へ排気ガスを流入させることなく迂回させて廃棄(バイパス)することで、分離膜2211の劣化が抑止される。
【0063】
さらに、流入量全体制御部213は、第2の期間において、回収部22に流入した排気ガスのうち上限値を下回った量を記録し、上限値を超えた分の排気ガスであって、記録した量を超えない量の排気ガスを回収部22に流入させてもよい。
【0064】
例えば、流入量全体制御部213は、排気ガスの量が制限ラインを下回る時刻t2から時刻t3の間に、制限ラインを下回った排気ガスの量を記録しておく。そして、流入量全体制御部213は、排気ガスの量が制限ラインを超える時刻t3から時刻t4の間に、制限ラインを上回った排気ガスの一部又は全部を、記録した量を超えない範囲で回収部22に流入させる。
【0065】
時刻t2から時刻t4において、回収部22に流入した流入量を示す曲線を時刻t2から時刻t4までの期間(長さt4-t2)で積分した値(面積)は、時間t4-t2を横の辺とし、排気ガス流入量0から制限ラインまでを縦の辺とした長方形の面積を超えない。
【0066】
これにより、CO2回収装置20は、流入する排気ガスの量を平滑化し、CO2の回収性能を無駄なく利用できる。
【0067】
(飽和量回収量に基づく制御)
流入量設定部214は、回収部22による単位時間当たりのCO2の飽和回収量に応じた排気ガスの量を上限値に設定することができる。この場合、流入量全体制御部213は、回収部22への排気ガスの単位時間当たりの流入量が上限値を超えないように制御する。
【0068】
ここで、
図7に示すように、分離膜2211の性能により、CO2を分離可能な排気ガスの量が決まる。
図7は、CO2の飽和回収量を説明する図である。
図7には、単位時間当たりの排気ガスの流入量(横軸)に対するCO2分離量(縦軸)が示されている。
【0069】
図7の例では、排気ガスの流入量がX
1以下の場合、分離膜2211によるCO2分離量がリニアに増加する。一方で、排気ガスの流入量がX
1を超えても、分離膜2211によるCO2分離量は増加しない。この場合、回収部22の飽和回収量はY
1である。
【0070】
例えば、流入量設定部214は、単位時間当たりの流入量が、常にY
1程度となるように流入量調整装置13を制御する。例えば、流入量設定部214は、単位時間当たりの流入量が、Y1の80%~100%程度(Y1は超えない)となるように流入量調整装置13を制御する。例えば、
図6の制限ラインは飽和回収量Y
1の80%程度である。
【0071】
これにより、CO2回収装置20は、エンジン11の動作状態等に関係なく、CO2の流入量の上限を一定にすることで、CO2の回収量を一定に保つことができる。
【0072】
図8を用いて、制御部21の処理の流れを説明する。
図8は、制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
まず、制御部21は、時刻t=0とおく(ステップS11)。そして、制御部21は、tが平均算出時間(
図6のT
0に相当)を超えるまで(ステップS13、No)、排気ガス流入量とそのログを監視する(ステップS12)。
【0074】
tが平均算出時間(
図6のT
0に相当)を超えた場合(ステップS13、Yes)、制御部21は、平均算出時間における排気ガスの流入量の平均値を算出する(ステップS14)。
【0075】
続いて、制御部21は、平均値を基に、排気ガス流入量の上限を設定する(ステップS15)。そして、制御部21は、上限を基に、排気ガス流入量の制御を実施する(ステップS16)。
【0076】
制御部21は、再平均算出時間が経過するまで(ステップS17、No)、ステップS16の制御を継続する。例えば、制御部21は、
図6の時刻t
2からさらにT
0が経過した場合に再平均算出時間が経過したと判断する。
【0077】
制御部21は、再平均算出時間が経過した場合(ステップS17、Yes)、エンジン11が停止しているか否かを確認する(ステップS18)。
【0078】
エンジン11が停止していれば(ステップS18、Yes)、制御部21は処理を終了する。エンジン11が停止していない場合(ステップS18、No)、制御部21はステップS11に戻り処理を繰り返す。
【0079】
図9を用いて、流入量制御処理(
図8のステップS16)の流れを説明する。
図9は、流入量制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0080】
まず、制御部21は、回収部22への外気ガスの流入量の監視を開始する(ステップS161)。そして、制御部21は、排気ガス流入量とそのログを監視する(ステップS162)。
【0081】
排気ガスの流入量が上限を超えない場合(ステップS163、No)、制御部21は監視を続ける。
【0082】
排気ガスの流入量が上限を超える場合(ステップS163、Yes)、制御部21は、上限を超える排気ガスを廃棄(大気へ放出)させ(ステップS164)、処理を終了する。
【0083】
上述してきたように、実施形態に係るCO2回収装置20は、車両の排気ガスからCO2を回収する回収部への排気ガスの流入量を監視する。また、CO2回収装置20は、監視した結果を基に、回収部への排気ガスの流入量を制御する。
【0084】
このように、排気ガスの流入量を制御することにより、回収したCO2の貯留量を精度良く制御することが可能になる。
【0085】
CO2回収装置20は、単位時間当たりのCO2の貯留量を一定に保つだけでなく、ユーザの所望するタイミングで貯留部222が吸収容量の上限になるように上限を設定することもできる。
【0086】
さらに、CO2回収装置20は、排気ガスの流入量を制御することにより、満貯留通知部216によるユーザへの通知タイミングを調整できる。これにより、例えば、貯留部222が吸収容量の上限になりそうであるとユーザが感じるタイミングで通知が行われるような調整が可能になる。
【0087】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 排気システム
11 エンジン
12 マフラー
13 流入量調整装置
20 CO2回収装置
21 制御部
22 回収部
211 全体制御部
212 流入量監視部
213 流入量全体制御部
214 流入量設定部
215 貯留量監視部
216 満貯留通知部
221 分離部
222 貯留部
2211 分離膜