(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035464
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F04B39/00 107F
F04B39/00 107Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139934
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】成澤 伸之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 浩介
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC02
3H003AD03
3H003BD10
3H003BF03
3H003CB01
3H003CB05
3H003CE04
(57)【要約】
【課題】樹脂とインサート部品の熱膨張差に起因したピストンの強度低下をさらに抑制できる圧縮機を提供する。
【解決手段】コンロッド32に支持されたピストン33がシリンダ22内を揺動しながら往復動する圧縮機10であって、ピストン33は、少なくともシリンダ22の内周壁22aに接触する面33aと圧縮室22b側の面33cとを構成する樹脂36と、樹脂36の内部に埋め込まれたインサート部品41と、インサート部品41に設けられ樹脂36が充填された貫通孔41dとを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロッドに支持されたピストンがシリンダ内を揺動しながら往復動する圧縮機であって、
前記ピストンは、
少なくとも前記シリンダの内周壁に接触する面と圧縮室側の面とを構成する樹脂と、
前記樹脂の内部に埋め込まれたインサート部品と、
前記インサート部品に設けられ、前記樹脂が充填された貫通孔とを備えることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮機であって、
前記貫通孔は、前記ピストンの内側に径が拡大するテーパ部を備えることを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の圧縮機であって、
前記貫通孔の内壁に対する前記テーパ部の勾配角が、0度より大きくかつ60度以下であることを特徴とする圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載の圧縮機であって、
前記貫通孔が前記インサート部品の中心から所定距離以上離れていることを特徴とする圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記ピストンと前記コンロッドとの間に中空部が形成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載の圧縮機において、
前記中空部の内外を連通する連通孔を備えることを特徴とする圧縮機。
【請求項7】
請求項6に記載の圧縮機において、
前記連通孔は、2つ以上設けられ、
前記連通孔のうちの少なくとも1つがクランクケース側に開口し、他の少なくとも1つが前記シリンダの側壁側に開口していることを特徴とする圧縮機。
【請求項8】
請求項6に記載の圧縮機において、
前記インサート部品の前記コンロッドの側の面に、放熱フィンを有することを特徴とする圧縮機。
【請求項9】
請求項1に記載の圧縮機であって、
前記貫通孔は、前記樹脂によって挟み込まれた前記インサート部品の鍔部に設けられていることを特徴とする圧縮機。
【請求項10】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記インサート部品にはネジ穴が設けられ、
前記コンロッドには前記ネジ穴と重畳する貫通孔が設けられ、
前記貫通孔に前記ピストンに向かって挿入されたネジが、前記ネジ穴と螺合され、前記ピストンを前記コンロッドに固定することを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機には、原動機の回転運動をクランクシャフト、コネクティングロッド(以下、コンロッド)を介して往復動運動に転換し、ピストンを往復運動させることにより、シリンダ内に吸入した流体を圧縮する往復動圧縮機がある。この往復動圧縮機には、ピストンが軸受を介して首振り可能にコンロッドに取り付けられた通常ピストン方式と、ピストンがコンロッドに直接取付けられた揺動ピストン方式とがある。
【0003】
後者の揺動ピストン方式は、通常ピストン方式と比較して軸受やピストンピンを持たない分だけ構造が簡素であり、軸受温度に関し潤滑を確保する上での設計的な制限がないことや、往復動する部分の質量を低減することができる。
【0004】
この揺動ピストン方式の圧縮機として、特許文献1には、圧縮室側が樹脂で構成されたピストンをクランクケース側からネジによってコンロッドに固定した圧縮機が開示されている。このようにクランクケース側からネジを挿入すると、圧縮室内の高温の圧縮気体によるネジの加熱が防止される。これによりネジの周囲のピストンの樹脂のクリープ変形を抑制できるので、ネジの緩みの発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のピストンは、樹脂の内部に金属製のインサート部品が埋め込まれたインサート構造を有しており、当該インサート部品がコンロッドとネジで結合されている。
【0007】
通常、こうしたインサート構造では、樹脂とインサート部品(金属)の熱膨張率の差に起因する変形や、樹脂の成形欠陥(例えばひけ)に起因する密着不良により、樹脂とインサート部品との間に隙間が生じてピストンの強度が低下し得る点に留意する必要がある。これに関して特許文献1では、インサート部品においてコンロッド側に位置する縁部が樹脂に対して食い込んだ形状を設け、ピストンに上下方向の荷重が作用した場合のインサート部材と樹脂の分離を当該縁部によって抑制している。
【0008】
しかし、ピストンに作用する荷重は上下方向に限られない。つまり、樹脂の熱膨張によるピストンの変形をさらに抑制する観点からは、特許文献1の技術はインサート部品の圧縮室側の構造に関して改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、樹脂とインサート部品の熱膨張差に起因したピストンの強度低下をさらに抑制できる圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、コンロッドに支持されたピストンがシリンダ内を揺動しながら往復動する圧縮機であって、前記ピストンは、少なくとも前記シリンダの内周壁に接触する面と圧縮室側の面とを構成する樹脂と、前記樹脂の内部に埋め込まれたインサート部品と、前記インサート部品に設けられ前記樹脂が充填された貫通孔とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂とインサート部品の熱膨張差に起因したピストンの強度低下をさらに抑制できる圧縮機を提供できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の概略側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る圧縮機本体の構成を示す一部断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る圧縮機のコンロッドとコンロッドの小端部に固定されたピストンの概略側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るインサート部品の斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るピストンの概略側面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る圧縮機のコンロッドとコンロッドの小端部に固定されたピストンの概略側面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るコンロッドとピストンの展開斜視図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係るインサート部品の背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の第1実施形態~第4実施形態に係る圧縮機の構成及び動作について説明する。本発明の圧縮機は空気や冷媒などの各種流体を圧縮する圧縮機のうち、揺動ピストン方式を採用する様々な圧縮機に適用可能であり、その種類や型式、用途は特に限定されない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧縮機10の概略側面図である。
図1に示すように圧縮機10は、圧縮機本体1と、圧縮機本体1を駆動する電動機2と、圧縮機本体1が吐出す流体を貯留するタンク3と、圧縮機プーリ4と、電動機プーリ5と、伝動ベルト6とを備えている。
【0015】
図2は、本発明の第1実施形態に係る圧縮機本体1の構成を示す一部断面図である。圧縮機本体1は流体を圧縮する装置で、
図2に示すように、クランクケース21と、シリンダ22と、シリンダヘッド23と、クランクシャフト24と、バルブプレート26と、コンロッド32と、ピストン33とを有している。
【0016】
なお、
図1,2に、圧縮機10が1対のピストン・シリンダを備える1気筒1段圧縮機である場合を示した。しかし、これに限定されず、圧縮機10は複数対のピストン・シリンダを備える圧縮機でもよい。
【0017】
圧縮機本体1は、クランクシャフト24と電動機2の回転軸とが平行に配置されるように、タンク3上に配置して固定されている。クランクシャフト24には圧縮機プーリ4が取り付けられ、電動機2の回転軸には電動機プーリ5が取り付けられている。そして、圧縮機プーリ4と電動機プーリ5とには、電動機2の動力を圧縮機本体1に伝達するための伝動ベルト6が巻回されている。
【0018】
そのため、電動機2を起動させると、電動機プーリ5と伝動ベルト6と圧縮機プーリ4を介して、クランクシャフト24が回転する。そして、クランクシャフト24のクランクピンに取り付けられたコンロッド32の大端部32aが円運動する。これにより、コンロッド32の小端部32bに取り付けられたピストン33が、シリンダ22内を揺動しながら往復動する。そのため、流体はシリンダヘッド23の取入口からシリンダ22の圧縮室22b内に流入し、ピストン33により圧縮され、シリンダヘッド23の吐出口からタンク3に吐出される。
【0019】
なお、
図1に示す圧縮機10では、圧縮機本体1が電動機2に電動機プーリ5と伝動ベルト6と圧縮機プーリ4を介して接続されている。しかし、これに限定されず、圧縮機本体1のクランクシャフト24と電動機2の回転軸とを、例えば、軸継手を用いて直接、接続してもよい。
【0020】
また、圧縮機プーリ4に羽根を設けてもよい。この羽根は圧縮機プーリ4の回転に伴って回転し冷却風を圧縮機本体1に向けて発生させ、圧縮機本体1を冷却することができる。
【0021】
図3は、本実施形態に係る圧縮機10のコンロッド32とコンロッド32に小端部32bに固定されたピストン33の概略側面図である。
図3に示すように、ピストン33は、コンロッド32の小端部32bの先端にネジ35(本実施形態では六角穴付きボルト)によって固定されている。
【0022】
ピストン33は、少なくとも、シリンダ22の内周壁22a(
図2参照)に接触する外周面33aと、シリンダ22の圧縮室22b(
図2参照)内に露出する上面33cとが樹脂36によって構成されている。
【0023】
ピストン33には、ピストンリング34が取り付けられている。また、ピストン33の外周面33aは、シリンダ22の内周側の直径よりわずかに小さい直径の球面となっていることが好ましい。
【0024】
図4は、
図3のIV-IV断面図である。
図4に示すように、ピストン33は、樹脂36と、樹脂36の内部に埋め込まれたインサート部品41を備えている。樹脂36とインサート部品41とはインサート成形により一体に成形されている。
【0025】
樹脂36は、例えば、耐摩耗性に優れるポリテトラフルオロエチレン(Poly Tetra Fluoro Ethylene、PTFE)や、熱膨張率に優れるポリフェニレンサルファイド(Poly Phenylene Sulfide、PPS)を用いることが好ましい。
【0026】
樹脂36には、ピストンリング34を装着するためのリング溝33bが設けられている。なお、ピストンリング34を使用しないこともできる。この場合には、樹脂36にリング溝33bは設けられない。
【0027】
ピストン33には、インサート部品41のコンロッド32側の一部を、樹脂36が環状に覆う環状部33dが設けられていることが好ましい。環状部33dは、ピストン33の外周面33aを形成する樹脂と繋がっている。これにより、ピストン33が往復動慣性力や摩擦力によってクランクケース21側に引き下げ荷重を受けた場合でも、インサート部品41がピストン33のコンロッド32側に抜け出すことを抑制できる。
【0028】
さらに、環状部33dは、コンロッド32の小端部32bに設けられた環状溝32eと嵌合する。これにより、コンロッド32の小端部32bに対してピストン33を位置決めすることができる。
【0029】
図5は、本実施形態に係るインサート部品41の斜視図である。インサート部品41は、金属(例えば、アルミニウム合金)により形成されたボーダーハット状の部材で、円筒部41aと、蓋部41bと、鍔部41cと、貫通孔41dとを有している。
【0030】
円筒部41aは、蓋部41bにより上方の開口を塞がれ、円筒部41aと蓋部41bによって、下側に開口する空隙部41e(
図4参照)が形成されている。
【0031】
鍔部41cは、円筒部41aの下部外周壁から径方向外側に延伸する環状の部分である。
【0032】
図4に示すように、円筒部41aの外周壁と、蓋部41bの上面と、鍔部41cの上面と側面と、鍔部41cの下面の径方向外側とが、樹脂36によって覆われている。一方、円筒部41aの内周壁と、蓋部41bの下面と、鍔部41cの下面の径方向内側とは、樹脂36によって覆われず、露出する。
【0033】
貫通孔41dは、インサート部品41に設けられ、貫通孔41dには樹脂が充填されている。本実施形態の貫通孔41dは、
図5に示すように、蓋部41bの溝41fに直線状に4つ配設されている。
【0034】
溝41fは、バルブプレート26に設けられた吸込み弁板26a(
図2参照)にピストン33が当接することを避けるためにピストンに33の上面33cに設けられた溝33f(
図3参照)に沿って蓋部41bを凹ませた部分である。そのため、蓋部41bは溝41fで薄くなっており、容易に貫通孔41dを設けることができる。
【0035】
ただし、貫通孔41dの配置は、上記に限定されず、多数考えられ得る。例えば、ピストン33とシリンダ22との摩擦抵抗によって、ピストン33から樹脂36を引き剥がす荷重に対応できるように、溝41fに対して交差する方向に沿って貫通孔41dを配列しても良い。また、貫通孔41dは、少なくとも1つ有ればよい。
【0036】
貫通孔41dは、インサート部品41の中心41oから所定距離D(
図5参照)以上に離れていることが好ましい。また、所定距離Dは、ピストン33をインサート成形する時に用いる金型のゲートの半径であることが好ましい。このように略円筒形状のピストン33を射出成型によって構成する場合、金型のゲートはインサート部品41の中央の上方に設けることが多く、その直下に貫通孔41dを設けることは、成形欠陥防止の観点から避けた方が良いためである。
【0037】
また、貫通孔41dはピストン33の内側(空隙部41e側)に径が拡大するテーパ部41g(
図4参照)を備えることが好ましい。本実施形態のテーパ部41gは、蓋部41bの下面に設けられた貫通孔41dの開口部が広がった形状(面取り形状)をしている。なお、貫通孔41dは、ピストン33の内側に径が拡大するテーパ部41gを備えればよく、例えば、
図5に示すように、逆側に径が拡大する逆テーパ部を備えても良い。
【0038】
また、貫通孔41dの内壁に対するテーパ部41gの勾配角θ(
図4参照)が、0度より大きくかつ60度以下であることが好ましい。これにより、エッジ感度が高い樹脂を使用した場合においても、クラックの発生を抑制することができる。
【0039】
図6は、
図4のVI-VI断面図である。
図6に示すようにインサート部品41の下部には、下方に開口するネジ穴41hが設けられていることが好ましい。また、コンロッド32の小端部32bには、ネジ穴41hと重畳する貫通孔32cが設けられていることが好ましい。そして、貫通孔32cにピストン33に向かって挿入されたネジ35は、ネジ穴41hに螺合され、ピストン33をコンロッド32に固定することが好ましい。
【0040】
このとき、インサート部品41の下面41iとコンロッド32の小端部32bの上面32dとが当接する。インサート部品41とコンロッド32は金属により形成されているため、熱膨張率に大きな差がなく、インサート部品41のネジ穴41hに螺合するネジ35が圧縮室22bから伝わる圧縮熱によって緩むことを抑制できる。
【0041】
また、コンロッド32の小端部32bには、上側に開口する凹部32fが設けられていることが好ましい。また、ピストン33をコンロッド32に固定することにより凹部32fは、インサート部品41に設けられた下側に開口する空隙部41eと連通することが好ましい。これにより、ピストン33とコンロッド32の小端部32bの間には、中空部37が形成されていることが好ましい。
【0042】
[効果]
本実施形態に係る圧縮機10のピストン33は、少なくともシリンダ22の内周壁22aに接触する面33aと圧縮室22b側の面33cとを構成する樹脂36の内部に埋め込まれたインサート部品41に設けられ、樹脂36が充填された貫通孔41dを備える。
【0043】
そのため、インサート部品41の圧縮室22b側を覆う樹脂36は、インサート部品41に設けられた貫通孔41dに充填された樹脂36によってインサート部品41に結合される。
【0044】
これにより、本実施形態に係る圧縮機10のピストン33は、インサート部品41の圧縮室22b側を覆う樹脂36が圧縮室22bから伝わる圧縮熱によって熱膨張した場合でも、その変形を抑制することができる。
【0045】
したがって、インサート部品41と樹脂36との熱膨張率の差によってインサート部品41の圧縮室22b側を覆う樹脂36がインサート部品41から剥がれ、樹脂36の強度が低下し樹脂36に亀裂が生じることを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態に係る圧縮機10のピストン33では、インサート部品41に設けられた貫通孔41dがピストン33の内側(空隙部41e側)に径が拡大するテーパ部41gを備えるので、貫通孔41dに充填された樹脂36はピストン33の外側に移動できない。そのため、本実施形態に係る圧縮機10のピストン33は、インサート部品41を覆う樹脂36がインサート部品41から剥がれることをさらに抑制できる。
【0047】
本実施形態に係る圧縮機10のピストン33では、貫通孔41dの内壁に対するテーパ部41gの勾配角θが、0度より大きくかつ60度以下である。そのため、貫通孔41dに充填された樹脂36のテーパ部36a(
図4参照)の勾配角は、貫通孔41dに充填された樹脂36の側壁に対して0度より大きくかつ60度以下となる。これにより、樹脂36のテーパ部36aにクラックが発生することを抑制できる。
【0048】
また、本実施形態に係る圧縮機10のピストン33では、
図5に示すように、貫通孔41dがインサート部品41の中心41oから所定距離D以上離れている。そのため、ピストン33をインサート成形する時に、金型に固定されたインサート部品41の略中央と重畳する位置に設けられるゲートの半径の外側に貫通孔41dを設けることができる。これにより、樹脂36にひけ等の成形不良が発生することを抑制できる。そのため、圧縮室22bの圧力によって引張応力を樹脂36に発生させる原因となる樹脂36とインサート部品41との間の隙間の発生を抑制でき、樹脂36の強度低下を抑制できる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る圧縮機10では、ピストン33とコンロッド32の間に中空部37が形成されているので、ピストン33及びコンロッド32を含む往復動部分の質量を低減できる。そのため、往復動慣性力に起因する圧縮機本体1の振動を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態に係る圧縮機10では、ピストン33をコンロッド32に固定するネジ35が、コンロッド32の貫通孔32cにピストン33に向かって挿入され、ピストン33のインサート部品41に設けたコンロッド32側に開口するネジ穴41hに螺合し、ピストン33をコンロッド32に固定する。これにより、ネジ35は圧縮室22b内に露出しないので、ネジ35が圧縮室22b内の圧縮熱によって緩むことを抑制できる。
【0051】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係るピストン233の概略側面図である。本実施形態に係るピストン233が、第1実施形態に係るピストン33と異なる点は、インサート部品241に設けられた貫通孔241dの位置である。
【0052】
即ち、第1実施形態に係るピストン33では、貫通孔41dが蓋部41bに設けられている。それに対し、本実施形態に係るピストン233では、樹脂236によって挟み込まれたインサート部品241の鍔部241cに設けられている。
【0053】
[効果]
本実施形態に係る圧縮機のピストン233では、樹脂236によって挟み込まれたインサート部品241の鍔部241cに設けられているので、樹脂236によって挟み込まれた鍔部241cが、樹脂236から外れてしまうことを抑制できる。
【0054】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係るに係る圧縮機のコンロッド332とコンロッド332の小端部332bに固定されたピストン33の概略側面図である。
図9は、本実施形態に係るコンロッド332とピストン33の展開斜視図である。
図10は、
図8のX-X断面図である。
図11は、
図10のXI-XI断面図である。
【0055】
本実施形態に係るコンロッド332が、第1実施形態に係るコンロッド32と異なる点は、中空部37の内外を連通する連通孔(第1連通孔332g,第2連通孔332h)を備える点である。
【0056】
第1連通孔332gは、小端部332bの上部に設けられた径方向に延伸する溝332iとピストン33の下端33eとによって挟まれ、中空部37の内外を連通する連通孔で、シリンダ22の内周壁22a(
図2参照)側に開口している。
【0057】
また、第2連通孔332hは、コンロッド332の小端部332bの下部に設けられ、凹部332dの底面332jを貫通して中空部37の内外を連通する連通孔で、クランクケース21側に開口する。
【0058】
[効果]
本実施形態に係る圧縮機では、中空部37の内外を連通する連通孔(第1連通孔332g,第2連通孔332h)を備えるので、中空部37内に溜まった熱を中空部37外に放出することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る圧縮機は、連通孔(第1連通孔332g,第2連通孔332h)が2つ以上設けられ、連通孔のうちの少なくとも1つ(第1連通孔332g)がシリンダ22の内周壁22a側に開口し、他の少なくとも1つ(第2連通孔332h)がクランクケース21側に開口している。
【0060】
これにより、ピストン33がクランクケース21側に移動したときに、
図12に示すように、流体がクランクケース21側に開口する第2連通孔332hから中空部37内に流入し、シリンダ22の内周壁22a側に開口する第1連通孔332gから中空部37外に放出されるので、冷却効果を高めることができる。
【0061】
なお、クランクケース21は呼吸フィルタを介して外気を呼吸しているため、中空部37内には外気温相当の冷却風を供給でき、冷却効率をさらに向上させることができる。
【0062】
また、この連通孔の個数や方向は、取り得る開口面積や強度の関係から、他にもいくつものパターンが考えられる。しかし、中空部37の内部に対して積極的に空気を流すことを考慮した場合、この連通孔は、2つ以上を、互いに異なる方向に向けて設けることが望ましい。
【0063】
(第4実施形態)
図13は、本発明の第4実施形態に係るインサート部品441の背面斜視図である。本実施形態に係るインサート部品441が、第1実施形態に係るインサート部品41と異なる点は、インサート部品441のコンロッド32の側の面(インサート部品441の蓋部441bの下面441h)に、放熱フィン441jを有する点である。
【0064】
本実施形態の放熱フィン441jは、インサート部品441の蓋部441bの下面441hからコンロッド32の側に突出され、インサート部品441の円筒部441aの内壁441kに結合させることで、強度が高くなっている。また、放熱フィン441jは、貫通孔441dを避けて設けることが好ましい。
【0065】
[効果]
本実施形態に係るインサート部品441は、コンロッド32の側の面(下面441h)に、放熱フィン441jを有する。そのため、インサート部品441を効率よく冷却することができ、インサート部品441の熱膨張を軽減し、インサート部品441の圧縮室22b側を覆う樹脂36の強度低下をさらに抑制できる。
【0066】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…圧縮機本体、10…圧縮機、21…クランクケース、22…シリンダ、22a…内周壁、22b…圧縮室、32,332…コンロッド、32c…貫通孔、33,233…ピストン、35…ネジ、36,236…樹脂、36a…テーパ部、37…中空部、41,241,441…インサート部品、41a…円筒部、41b,441b…蓋部、41c,241c…鍔部、41d,241d,441d…貫通孔、41e…空隙部、41g…テーパ部、41h…ネジ穴、41o…中心、332g…第1連通孔、332h…第2連通孔、441j…放熱フィン