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特開2024-35465微粒子分散型重合性組成物の製造方法および該製造方法により作製された微粒子分散型重合性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035465
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】微粒子分散型重合性組成物の製造方法および該製造方法により作製された微粒子分散型重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/00 20060101AFI20240307BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C08L81/00
C08K3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139935
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】金 英輝
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 美幸
(72)【発明者】
【氏名】飯島 志行
(72)【発明者】
【氏名】高村 叶多
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CN011
4J002DE046
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002EA019
4J002EA059
4J002EB029
4J002EC028
4J002ED029
4J002EV047
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD209
4J002GP00
4J002GP01
4J002GP02
(57)【要約】
【課題】微粒子分散型重合性組成物を得る方法として、金属酸化物微粒子をより高濃度で分散させるための方法が求められている。
【解決手段】金属酸化物微粒子(D)を含む分散液を減圧乾燥処理することにより金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を得る、減圧工程を含む、微粒子分散型重合性組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物微粒子(D)を含む分散液を減圧乾燥処理することにより金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を得る、減圧工程を含む、微粒子分散型重合性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記分散液の溶媒が、重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
重合性硫黄系組成物(A)が、下記構造式(1)~(8)で表される化合物からなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【化1】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化2】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化3】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化4】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化6】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化7】
【化8】
【請求項4】
重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)が、低級アルコールを含む、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)に、硫黄系分散剤(C)を溶解させて溶解組成物を得る工程と、
前記溶解組成物に、前記減圧工程により得た金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を分散させ、硫黄系分散剤(C)で表面修飾された金属酸化物微粒子(D2)を含む微粒子含有溶解組成物を得る工程と、
前記微粒子含有溶解組成物と、重合性硫黄系組成物(A)とを混合撹拌して分散組成物を得る工程と、
前記分散組成物から、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)を除去して、重合性硫黄系組成物(A)に分散された表面修飾金属酸化物微粒子(D3)を含む微粒子分散型重合性組成物を得る工程と、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
硫黄系分散剤(C)の含有量が、重合性硫黄系組成物(A)100質量部に対して、15~75質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
硫黄系分散剤(C)が、分子構造内に硫黄原子を2以上またはエピスルフィド基を1以上含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
硫黄系分散剤(C)が、下記一般式(9)で表される、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
K―N―M 式(9)
(式中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基を有する親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。)
【化9】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化10】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化11】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化12】
(式中、Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化13】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化14】
(式中、nは1~3の整数を表す。)
【請求項9】
金属酸化物微粒子(D)が、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群より選択される1種以上の金属元素を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
非プロトン性溶媒(E)が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル及びアセトニトリルからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
低極性溶媒(F)が、ジエチルエーテル、トリクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びo-キシレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型重合性組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法により微粒子分散型重合性組成物を作製する工程を含む、微粒子分散型硬化物の製造方法。
【請求項14】
さらに、熱又は活性エネルギー線により前記微粒子分散型重合性組成物を硬化させる工程を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学樹脂レンズや光導波路、導光板等の光学部品を作製する際に必要な微粒子分散型重合性組成物の製造方法、該製造方法により作製された微粒子分散型重合性組成物、並びに、該微粒子分散型重合性組成物を用いた微粒子分散型硬化物の製造方法、該製造方法により作製された微粒子分散型硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ガラスは、透光性に優れているなどの諸物性に優れており、光学部材として広い分野で用いられている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、加工性、生産性が悪い等の短所があり、無機ガラスに代わる素材として光学用樹脂の開発が盛んに行われている。
【0003】
そのような光学用樹脂として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。可視光領域波長から近赤外線領域波長において、幅広く、又は選択的に良好な透光性を有し、しかも無機ガラス材料に比べて成形性、量産性、あるいは可撓性、強靱性、耐衝撃性等の優れた特徴を有する汎用樹脂材料が望まれている。
【0004】
このような樹脂材料に高い屈折率を付与することによって、薄肉軽量な光学レンズ(メガネレンズ、フレネルレンズ、CD、DVDなどの情報記録機器におけるピックアップレンズ、デジタルカメラなどの撮影機器用レンズ等)、光学プリズム、光導波路、光ファイバー、薄膜成形物、光学用接着剤、光半導体用封止材料、回折格子、導光板、液晶基板、光反射板、反射防止材等の高屈折光学部材の材料等への展開が期待されている。
【0005】
高屈折率化には、硫黄元素を含有するモノマーが有用である。例えばチオール化合物とイソシアネート化合物を熱重合しチオウレタン結合を形成して得られる樹脂(nd=1.60~1.66程度)や、エピスルフィド、エピチオスルフィド化合物を重合硬化してなる樹脂(nd=1.7程度)などがある。ただ、nd=1.73以上の更なる高屈折率化を実現するには不十分であった。
【0006】
屈折率1.73を超える高屈折率化には、樹脂中に金属酸化物微粒子を含有させる方法が挙げられる。金属酸化物微粒子は、粒子表面が高極性であるため高極性の溶媒に安定に分散する。一方で、金属酸化物微粒子は、低極性である硫黄元素を含有するモノマーとは親和性が低く混ざりにくい。そのため、この方法では、金属酸化物微粒子の凝集を防ぎ、モノマーとの相溶性を向上させるため、金属酸化物微粒子を高分子分散剤や有機酸を用いて表面修飾する必要がある(例えば、特許文献1および2)。
【0007】
また、高屈折率化を図る方法として、金属酸化物微粒子の濃度を高くすることが挙げられる。しかし、この場合、粒子表面の極性を下げてモノマーとの相溶性を向上させるためには、分散剤の添加量を増やす必要がある。ところが、分散剤の添加量が多すぎると、余剰分が原因となり屈折率が十分に高くならないという問題があった。
このような問題に鑑み、微粒子分散型重合性組成物を得る方法として、金属酸化物微粒子をより高濃度で分散させるための方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-201634号公報
【特許文献2】特許第5422393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、光学樹脂レンズや光導波路、導光板等の光学部品を作製する際に有用な微粒子分散型重合性組成物を得る方法、および該微粒子分散型重合性組成物を用いた微粒子分散型硬化物の製造方法を提供する。また本発明は、高い透光性を有する微粒子分散型重合性組成物および微粒子分散型硬化物も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、金属酸化物微粒子を特定の硫黄系分散剤に分散させる前に所定の前処理を行うことで、硫黄系分散剤の添加量を抑えつつ、金属酸化物微粒子をより高濃度で含有し得る微粒子分散型重合性組成物が得られることを見出すに至った。更に、硬化反応時に硫黄系分散剤と重合性硫黄系組成物とが架橋反応し、透光性に優れる硬化物を容易に得られることを見出すに至った。
【0011】
すなわち本発明は、下記に記載する通りである。
[1]金属酸化物微粒子(D)を含む分散液を減圧乾燥処理することにより金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を得る、減圧工程を含む、微粒子分散型重合性組成物の製造方法。
[2]前記分散液の溶媒が、重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)である、[1]に記載の製造方法。
[3]重合性硫黄系組成物(A)が、下記構造式(1)~(8)で表される化合物からなる群より選択される1以上を含む、[1]又は[2]に記載の製造方法。
【化1】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化2】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化3】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化4】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化6】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化7】
【化8】
[4]重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)が、低級アルコールを含む、[2]又は[3]に記載の製造方法。
[5]非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)に、硫黄系分散剤(C)を溶解させて溶解組成物を得る工程と、
前記溶解組成物に、前記減圧工程により得た金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を分散させ、硫黄系分散剤(C)で表面修飾された金属酸化物微粒子(D2)を含む微粒子含有溶解組成物を得る工程と、
前記微粒子含有溶解組成物と、重合性硫黄系組成物(A)とを混合撹拌して分散組成物を得る工程と、
前記分散組成物から、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)を除去して、重合性硫黄系組成物(A)に分散された表面修飾金属酸化物微粒子(D3)を含む微粒子分散型重合性組成物を得る工程と、
を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6]硫黄系分散剤(C)の含有量が、重合性硫黄系組成物(A)100質量部に対して、15~75質量部である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7]硫黄系分散剤(C)が、分子構造内に硫黄原子を2以上またはエピスルフィド基を1以上含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の製造方法。
[8]硫黄系分散剤(C)が、下記一般式(9)で表される、[1]~[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
K―N―M 式(9)
(式中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基を有する親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。)
【化9】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化10】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化11】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化12】
(式中、Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化13】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化14】
(式中、nは1~3の整数を表す。)
[9]金属酸化物微粒子(D)が、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群より選択される1種以上の金属元素を含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の製造方法。
[10]非プロトン性溶媒(E)が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル及びアセトニトリルからなる群より選択される1種以上を含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11]低極性溶媒(F)が、ジエチルエーテル、トリクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びo-キシレンからなる群より選択される1種以上を含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の製造方法。
[12][1]~[11]のいずれか一項に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型重合性組成物。
[13][1]~[11]のいずれか一項に記載の製造方法により微粒子分散型重合性組成物を作製する工程を含む、微粒子分散型硬化物の製造方法。
[14]さらに、熱又は活性エネルギー線により前記微粒子分散型重合性組成物を硬化させる工程を含む、[13]に記載の製造方法。
[15][13]又は[14]に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型硬化物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硫黄系分散剤で表面修飾を施した金属酸化物微粒子がより高濃度で重合性硫黄系組成物に分散し、得られる微粒子分散型重合性組成物は透光性に優れ、かつ易成型であり、硬化後においても微粒子分散型硬化物の透光性が維持されることから、光学素子、特に厚膜な導光板や薄膜な回折格子等の作製に利用されるインプリント材料への展開が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について説明する。なお、以下は本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0014】
[微粒子分散型重合性組成物の製造方法]
1.減圧工程
本発明の一態様の製造方法は、金属酸化物微粒子(D)を含む分散液を減圧乾燥処理することにより金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を得る、減圧工程を含む。本発明の一態様の製造方法において、前記分散液の溶媒は、重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)であってもよいし、重合性硫黄系組成物(A)に均一混合される溶媒(B’)であってもよい。溶媒(B)および溶媒(B’)については後述する。
減圧乾燥処理に用いる装置は特に制限されず、既知の減圧乾燥機を用いることができる。減圧乾燥機として、例えば、蒸留装置を用いることができる。設定温度としては、分散液の溶媒が除去できる温度であればよく、通常30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、また、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
真空度は、分散液の溶媒を十分に除去する観点から、目安として0.5~50Torr、好ましくは0.5~40Torr、より好ましくは0.5~30Torr、更に好ましくは0.5~20Torrである。真空度は、例えば、回転式マクラウド真空計等の市販の真空計を用いて測定することができる。また、減圧乾燥処理は、真空度を上記範囲に設定しつつ、上記分散液を攪拌しながら行うことが好ましい。攪拌の方法は特に制限されず、例えば、容器を回転させて攪拌してもよいし、スターラーチップを用いて攪拌してもよい。
減圧乾燥処理の時間は、分散液の溶媒が除去できる温度であればよく、通常20分間以上、好ましくは30分間以上、より好ましくは35分間以上、更に好ましくは40分間以上であり、また、好ましくは80分間以下、より好ましくは70分間以下、更に好ましくは60分間以下である。
減圧乾燥処理の条件を上記のように調整することで、分散液の溶媒が十分に除去されるだけでなく、得られる金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を後述の重合性硫黄系組成物(A)に分散させた際の粘度を低くすることができ、成形性の観点から好ましい。
なお、前記分散液を得る方法は特に制限されず、常法により、金属酸化物微粒子(D)を溶媒に分散させることができる。
【0015】
(重合性硫黄系組成物(A))
本発明の一態様の重合性硫黄系組成物(A)は、分子内に硫黄原子を含有する化合物である。前記重合性硫黄系組成物(A)としては、例えば、エピチオ化合物((チオ)エポキシ化合物)やチオール化合物が挙げられる。更に、前記重合性硫黄系組成物(A)としては、分子内に硫黄原子を含有する化合物とアリル化合物やイソシアネート化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、前記重合性硫黄系組成物(A)は、下記構造式(1)~(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を含んでよい。
【化15】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化16】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化17】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化18】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化19】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化20】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化21】
【化22】
【0017】
(エピチオ化合物)
エピチオ化合物としては、例えば、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3,6-ジチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1-(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1-(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-4-チアヘキサン、1,5,6-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアヘキサン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4,5-トリス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,1,1-トリス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]エタン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-5,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物;
1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン等の環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物;
1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}メタン、2,2-ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}プロパン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフィド、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフォン、4,4’-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3-エピチオプロピルチオ化合物;
3-メルカプトプロピレンスルフィド、4-メルカプトブテンスルフィド等のメルカプト基含有エピチオ化合物等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0018】
(チオール化合物)
チオール化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、脂環族チオール化合物、芳香族チオール化合物、複素環含有チオール化合物等が挙げられる。より具体的には、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、(2-メルカプトエチル)スルフィド、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート) 、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]3-メルカプトプロパン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0019】
(溶媒(B))
本発明の一態様の溶媒(B)は、重合性硫黄系組成物(A)と均一に混合されずに異なる液相を構成する、前記重合性硫黄系組成物(A)に比して極性の高い溶媒である。このような溶媒として、低級アルコールが好適に挙げられる。より好ましくは、炭素数が5以下の低級アルコールであり、更に好ましくは、炭素数が3以下の低級アルコールである。また、このような溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、n-アミルアルコール、sec-アミルアルコールを挙げることができる。
本発明の一実施形態において、これらの溶媒は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、上記の溶媒(B)は、上記低級アルコールと水とを含む混合溶媒であってもよい。この場合、前記混合溶媒における水の含有量は特に制限されないが、目安として、1~50質量%、好ましくは1~15質量%が挙げられる。
【0020】
(溶媒(B’))
本発明の一態様の溶媒(B’)は、重合性硫黄系組成物(A)と均一に混合され、単一の液相を構成する、前記重合性硫黄系組成物(A)と同程度の極性を有する溶媒である。このような溶媒として、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール等のグリコールエーテルや、後述する非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)と同様のものが挙げられる。本発明の一実施形態において、これらの溶媒は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(金属酸化物微粒子(D))
本発明の一態様の金属酸化物微粒子(D)は、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む。
【0022】
また、金属酸化物微粒子(D)を構成する金属酸化物は、例えば、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)等の単酸化物;チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸アルミニウム、チタン酸リチウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化インジウムスズ(ITO)等の複合酸化物等を挙げることができる。本発明の一実施形態において、これらの金属酸化物は、分散質粒子として1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、屈折率、透光性、安定性の観点から、酸化ジルコニウムが特に好ましい。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、金属酸化物微粒子(D)は、積算分布曲線の50%積算値を示す粒子径であるメジアン径(D50)が20nm以下であり、好ましくは15nm以下である。このような粒子径を有することにより、得られる微粒子分散型硬化物の高い透光性に寄与することができる。
また、金属酸化物微粒子(D)は、粒度分布における90%積算値を示す粒子径であるD90が30nm以下であることが好ましく、特に好ましくは25nm以下である。これにより、微粒子分散型硬化物の透光性を一層高いものとすることができる。
なお、金属酸化物微粒子(D)のD50やD90は、動的光散乱法を用いて球相当径とする体積基準の粒度分布に基づき測定することができる。
【0024】
更に、金属酸化物微粒子(D)は、結晶状であってもアモルファス状であってもよく、また、等方性粒子であっても異方性粒子であってもよく、繊維状であってもよい。更に、金属酸化物微粒子(D)は、一般的な粉末状であってもよいし、微粒子ゾルであってもよい。
【0025】
(金属酸化物微粒子(D)の製造方法)
本発明で用いられる金属酸化物微粒子(D)の製造方法(調製方法)は、特に限定されず、既知の方法を好適に用いることができる。例えば、代表的な製造方法として、粗大粒子を機械的に解砕、微細化していくトップダウン方式;いくつかの単位粒子を生成させ、それが凝集したクラスター状態を経由して粒子が形成されるボトムアップ方式;の2種類の方式の製造方法を挙げることができるが、いずれの方法で調製されたものであってもよい。また、これら方式の製造方法は、湿式法または乾式法のいずれであってもよいが、乾式法では粉砕限界粒子径が大きく、光散乱の影響が大きいため、光学用途に使用の場合、湿式法の方がより好ましい。また、これら方式の製造方法で用いられる媒体としては、水系であっても非水系であっても気相であってもよい。
【0026】
また、ボトムアップ方式には、物理的方法と化学的方法があるが、いずれの方法によるものであってもよい。物理的方法の代表例としては、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させ、ガスとの衝突により冷却凝縮させてナノ粒子を生成するガス中蒸発法が挙げられる。また、化学的方法の代表例としては、液相還元法(液相中で保護剤の存在下で金属イオンを還元し、生成した0価の金属をナノサイズで安定化させる方法)、金属錯体の熱分解法等が挙げられる。液相還元法のより具体的な例としては、化学的還元法、電気化学的還元法、光還元法、または化学的還元法と光照射法とを組み合わせた方法等を挙げることができる。
【0027】
なお、前述した各種の方式または方法を採用して金属酸化物微粒子(D)を製造する際には、その製造工程で用いた媒体中から金属酸化物微粒子(D)を取り出すために、保護剤を使用することができる。保護剤は、金属酸化物微粒子(D)の表面を修飾する表面修飾剤、あるいは、金属酸化物微粒子(D)の表面を保護する表面保護剤等を挙げることができる。保護剤により表面が被覆されるか、あるいは、保護剤に含浸されることにより、媒体中から金属酸化物微粒子(D)を安定的に取り出すことができる。
【0028】
2.溶解組成物を得る工程
本発明の一態様の製造方法は、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)に、硫黄系分散剤(C)を溶解させて溶解組成物を得る工程を含む。
溶解の方法は特に制限されず、常法により、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)に、硫黄系分散剤(C)を溶解させることができる。
【0029】
(硫黄系分散剤(C))
本発明の一態様の硫黄系分散剤(C)は、分子構造内に硫黄原子を2以上またはエピスルフィド基を1以上含むものである。また、本発明の一実施形態において、硫黄系分散剤(C)は、分子構造内に親水基と親油基とを有し、前記親水基が、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される1以上を含み、前記親油基が、スルフィド基、ジスルフィド基、チオール基、及び(チオ)エポキシ基からなる群より選択される1以上を含むことがより好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、前記硫黄系分散剤(C)は、下記一般式(9)で表されるものである。
K―N―M 式(9)
式(9)中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基からなる群より選択される親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。
本発明の一実施形態において、式(9)中、MおよびNの組み合わせとしては、以下の態様があり得る。すなわち、式(9)は、K-(n1)-(m1)、K-(n1)-(m2)、K-(n1)-(m3)、K-(n2)-(m1)、K-(n2)-(m2)、K-(n2)-(m3)、K-(n3)-(m1)、K-(n3)-(m2)、K-(n3)-(m3)であり得る。
【化23】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化24】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化25】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化26】
(式中、Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化27】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化28】
(式中、nは1~3の整数を表す。)
【0031】
本発明の一実施形態において、硫黄系分散剤(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。更に、硫黄系分散剤(C)は、他のシランカップリング剤と組み合わせて使用してもよい。
【0032】
(シランカップリング剤)
硫黄系分散剤(C)と組み合わせて使用することができるシランカップリング剤は特に限定されず、ラジカル重合反応性の官能基を有するシランカップリング剤及びその他のシランカップリング剤が挙げられる。
【0033】
ラジカル重合反応性シランカップリング剤は、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基含有シランが好ましい。
【0034】
その他のシランカップリング剤は、ラジカル重合反応性の官能基を有さないシラン化合物である。その他のシランカップリング剤は、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン等のハロアルキル基含有シランが挙げられる。
【0035】
(非プロトン性溶媒(E))
本発明の一態様の非プロトン性溶媒(E)は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル及びアセトニトリルからなる群より選択される1種以上を含む。その中でも、非プロトン性溶媒(E)として、テトラヒドロフランがより好ましい。
【0036】
(低極性溶媒(F))
本発明の一態様の低極性溶媒(F)は、ジエチルエーテル、トリクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びo-キシレンからなる群より選択される1種以上を含む。その中でも、低極性溶媒(F)として、トルエンがより好ましい。
【0037】
3.微粒子含有溶解組成物を得る工程
本発明の一態様の製造方法は、上記「2.溶解組成物を得る工程」で得た溶解組成物に、上記「1.減圧工程」で得た金属酸化物微粒子(D)の乾燥粉末(D1)を分散させ、硫黄系分散剤(C)で表面修飾された金属酸化物微粒子(D2)を含む微粒子含有溶解組成物を得る工程を含む。
硫黄系分散剤(C)を含有する溶解組成物に乾燥粉末(D1)を分散させ、乾燥粉末(D1)を硫黄系分散剤(C)で表面修飾する方法は、特に制限されず、混合撹拌などの方法により行うことができる。
また、表面修飾後には、微粒子含有溶解組成物を静置してもよい。静置する時間は特に制限されないが、目安として、1~48時間、好ましくは12~24時間を例示することができる。
【0038】
4.分散組成物を得る工程
本発明の一態様の製造方法は、上記「3.微粒子含有溶解組成物を得る工程」で得た微粒子含有溶解組成物と、重合性硫黄系組成物(A)とを混合撹拌して分散組成物を得る工程を含む。これにより、硫黄系分散剤(C)で表面修飾された金属酸化物微粒子(D2)を重合性硫黄系組成物(A)に分散させることができる。
混合攪拌の方法は特に制限されず、金属酸化物微粒子(D2)が重合性硫黄系組成物(A)に分散されればよく、既知の手法を用いることができる。
【0039】
5.微粒子分散型重合性組成物を得る工程
本発明の一態様の製造方法は、上記「4.分散組成物を得る工程」で得た分散組成物から、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)を除去して、重合性硫黄系組成物(A)に分散された表面修飾金属酸化物微粒子(D3)を含む微粒子分散型重合性組成物を得る工程を含む。
表面修飾が施された金属酸化物微粒子(D3)が分散した重合性硫黄系組成物(A)を、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)と分離し、回収することで、微粒子分散型重合性組成物を得ることができる。回収した微粒子分散型重合性組成物は、有機溶媒を用いて更に洗浄してもよい。
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)を脱溶媒する方法は特に制限されず、例えば、減圧乾燥処理が挙げられる。減圧乾燥の方法は、上記「1.減圧工程」と同様の方法とすることができる。
【0040】
本発明一態様の製造方法は、表面修飾金属酸化物微粒子(D3)が重合性硫黄系組成物(A)に十分に分散するよう、回収した微粒子分散型重合性組成物を追加的に撹拌または均一化してもよい。例えば、2本ロール、3本ロール等のロールミル;ボールミル、振動ボールミル等のボールミル;ペイントシェーカー;連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミル;サンドミル;ジェットミル;等を用いる方法を挙げることができるが、特に限定されない。また、超音波発生浴の中で分散処理を行うこともできる。
【0041】
こうして得られた微粒子分散型重合性組成物は、硫黄系分散剤(C)の構造内の親水基と親油基によって、金属酸化物微粒子(D)と重合性硫黄系組成物(A)との間に相互作用が形成されたものである。
【0042】
[微粒子分散型重合性組成物]
本発明は、上述した各工程を経て作製された、微粒子分散型重合性組成物にも関する。本発明の好ましい実施形態において、微粒子分散型重合性組成物は、23℃での粘度が100,000mPa・s以下であり、より好ましくは20,000mPa・s以下である。
【0043】
本発明の一実施形態において、微粒子分散型重合性組成物の作製に用いられる主な成分、すなわち重合性硫黄系組成物(A)、溶媒(B)又は溶媒(B’)、硫黄系分散剤(C)、金属酸化物微粒子(D)、及び、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)の組み合わせとしては、以下の態様があり得る。
<1>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<2>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n3)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<3>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m3)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<4>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):エタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<5>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<6>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):エタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<7>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化チタン、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
【0044】
また、重合性硫黄系組成物(A)、溶媒(B)又は溶媒(B’)、硫黄系分散剤(C)、金属酸化物微粒子(D)、及び、非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F)の組み合わせとしては、以下の態様もあり得る。
<8>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n3)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<9>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m3)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<10>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n3)-(m1)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
<11>
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、
溶媒(B)又は溶媒(B’):メタノール、メチルエチルケトン又は1-メトキシ-2-プロパノール
硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m3)で表される構造を有する化合物、
金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛、
非プロトン性溶媒(E)又は低極性溶媒(F):テトラヒドロフラン又はトルエン。
【0045】
また本発明の一実施形態において、微粒子分散型重合性組成物には、上述した成分(A)~(F)以外の成分が含まれてもよい。その他の成分としては、具体的には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等のように既知の様々な添加剤を挙げることができる。
【0046】
本発明の微粒子分散型重合性組成物は、重合開始剤を含むことが好ましく、中でも熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれか1つ以上を含有することがより好ましい。
重合開始剤としては、イオンを発生するアニオン重合開始剤やカチオン重合開始剤、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱重合開始剤、紫外線の照射により重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤などが挙げられる。
これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などを更に添加することも好ましい。
【0047】
本発明の微粒子分散型重合性組成物において、上述した成分(A)~(F)の配合量(含有量または添加量)は特に限定されず、各成分の種類、物性、微粒子分散型重合性組成物の用途等の諸条件に応じて、適宜好適な範囲を設定することができる。このうち、硫黄系分散剤(C)については、金属酸化物微粒子(D)を良好に分散させ、高屈折率の微粒子分散型硬化物を得る観点、高粘度化を回避し製造効率を向上させる観点から、所定の範囲内で配合することが好ましい。
【0048】
具体的には、硫黄系分散剤(C)の配合量は、微粒子分散型重合性組成物の全量を100質量%としたときに、通常5質量%以上であり、好ましくは7質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは9質量%以上である。硫黄系分散剤(C)の配合量の上限値は、分散剤の分子構造と重合性硫黄系組成物(A)の種類に応じて異なるが、目安として、50質量%以下、40質量%以下、または30質量%以下等が挙げられ、好ましくは20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、または16質量%以下等が挙げられる。
【0049】
また、硫黄系分散剤(C)の配合量は、分散媒の濡れ性や微粒子分散型硬化物の高屈折率化の観点から、重合性硫黄系組成物(A)100質量部に対して、通常10~80質量部、好ましくは15~75質量部、より好ましくは16~70質量部、更に好ましくは17~60質量部である。
【0050】
また、金属酸化物微粒子(D)の配合量は、微粒子分散型重合性組成物の全量を100質量%としたときに、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が更に好ましく、30~60質量%が特に好ましい。
前記諸条件にもよるが、金属酸化物微粒子(D)がこの範囲内であれば、得られる微粒子分散型硬化物の光学特性及び物性を良好なものにできるとともに、硫黄系分散剤(C)との組合せにより表面平滑性の向上にも寄与することができる。
【0051】
重合性硫黄系組成物(A)の配合量は、微粒子分散型重合性組成物の全量を100質量%としたときに、1~95質量%が好ましく、4~90質量%がより好ましく、10~70質量%が更に好ましく、20~60質量%が特に好ましい。
前記諸条件にもよるが、重合性硫黄系組成物(A)がこの範囲内で配合されれば、膜状または層状の微粒子分散型硬化物(硬化膜または硬化層)を形成したときに、金属酸化物微粒子(D)を良好に分散した状態で、微粒子分散型硬化物として良好な物性を実現することができる。また、硫黄系分散剤(C)との組合せにより当該硬化物の表面平滑性の向上にも寄与することができる。
【0052】
なお、溶媒(B)又は溶媒(B’)の配合量は特に制限されず、金属酸化物微粒子(D)の分散に十分な量を配合すればよい。また、非プロトン性溶媒(E)及び低極性溶媒(F)の配合量も特に制限されず、硫黄系分散剤(C)の溶解に十分な量を配合すればよい。
その他の成分は、当該成分の添加により所望の機能を発揮できる範囲内で添加すればよい。
【0053】
[微粒子分散型硬化物の製造方法]
本発明は、上述した各工程により微粒子分散型重合性組成物を作製する工程を含む、微粒子分散型硬化物の製造方法にも関する。
本発明の微粒子分散型硬化物の製造方法は、上記の微粒子分散型重合性組成物を熱または活性エネルギー線により硬化させる工程を更に含む。本発明の一態様の製造方法は、微粒子分散型重合性組成物における上記一般式(1)~(8)で示される化合物からなる群より選択される1種以上を含む重合性成分を架橋させて、硬化させることが好ましい。
【0054】
[微粒子分散型硬化物]
本発明の一態様の微粒子分散型硬化物は、上記の微粒子分散型重合性組成物を硬化させることにより得ることができる。ここで、「微粒子分散型硬化物」とは、本発明の一態様の微粒子分散型重合性組成物の硬化性成分を架橋させて、硬化させたものを意味する。
【0055】
(硬化物の耐熱性)
本発明の好ましい実施形態において、微粒子分散型硬化物は、光学材料として使用するために、一定以上の耐熱性を有する。耐熱性を示す指標としては、硬化物のガラス転移温度が挙げられる。好ましい耐熱性は、微粒子分散型重合性組成物を塗布する基板の種類によって決定される。例えば、微粒子分散型重合性組成物の線膨張係数に近い線膨張係数を有する樹脂シートとガラス基板との間に、微粒子分散型重合性組成物を一対の基板の隙間を封止する光学接着剤として使用する場合、本発明の微粒子分散型重合性組成物を硬化させて得られる微粒子分散型硬化物のガラス転移温度は、30℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。微粒子分散型硬化物のガラス転移温度が上記範囲であれば、各基板と接着剤との間での界面剥離等が生じる可能性が少ない。
【0056】
なお、ここでいう樹脂シートとは、可視光領域において透明性が高い樹脂から構成されることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン(COC)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、透明ABS樹脂、透明ナイロン、透明ポリイミド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0057】
(硬化物のその他の物性)
本発明の一態様の微粒子分散型硬化物は、d線屈折率(nd)が1.73以上であり、830nmにおける屈折率(n830)が1.72以上であり、厚さ0.25mmの波長800nmにおける光透過率が75.0%以上であり、波長600nmにおける光透過率が75.0%以上である。
本発明の好ましい一態様の微粒子分散型硬化物は、d線屈折率(nd)が1.73以上であり、830nmにおける屈折率(n830)が1.72以上であり、厚さ0.25mmの波長800nmにおける光透過率が79.0%以上であり、波長600nmにおける光透過率が77.0%以上である。
上記各態様において、微粒子分散型硬化物のアッベ数(vd)は、用いる金属酸化物微粒子(D)の種類に応じて変化し、下限値の好ましい範囲としては、例えば、10.0以上、14.0以上、18.0以上、22.0以上、24.0以上、28.0以上、30.0以上、34.0以上、34.5以上、または35.0以上等が挙げられる。また、上限値の好ましい範囲としては、例えば、50.0以下、40.0以下、30.0以下、25.0以下、20.0以下、または18.0以下等が挙げられる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載における「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0059】
(硫黄系分散剤(C)の合成)
100mlバイアル瓶にチオール化合物である4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール(GST)を73.7g仕込み、触媒としてトリフェニルホスフィンを0.08g添加した。50℃で30分撹拌した後、4-ペンテン酸を8.1g添加した。更に、80℃4日間撹拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、4-ペンテン酸の化学構造内にある1650-1630cm-1付近のアルケンに起因する吸収の消失により確認した。反応後、生成物を含む混合液を中圧分取精製装置にて、未反応GSTを除去し親水性構造と親油性構造を有する下記構造式(10)で表される化合物を得た。
【化29】
【0060】
(粘度測定)
後述の方法で得られた微粒子分散型重合性組成物について、電磁スピニング(EMS)粘度計(京都電子工業株式会社、EMS-1000S)を用いて23℃での粘度を測定した。
【0061】
(硬化物の光学物性の測定方法)
後述の方法で得られた微粒子分散型硬化物について、25℃で光学物性の測定を行った。透過率測定には、紫外可視分光光度計(日本分光、V-630)を用いた。透過率測定において、厚み0.25mmにて波長600nm、800nmを測定した。屈折率測定には、カルニュー精密屈折計(島津製作所、KPR-3000)を用いた。屈折率測定において、d線(波長587.56nm)の屈折率ndとアッベ数νd、LD830(半導体レーザー、波長823.92nm)の屈折率n830を測定した。
【0062】
(実施例1)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-M、D50=4.0nm、D90=6.7nm)をマグネチックスターラー用攪拌子と共に20mLバイアル瓶に5.60g用意した。蒸留装置を用いて、45℃、真空度10torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、撹拌子を回転させながら45分かけてメタノール溶媒を除去した。
次に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒6.72gと上記構造式(10)で表される硫黄系分散剤0.61gをガラス瓶に用意した。15分間室温で撹拌し、溶解組成物を調製した後、当該溶解組成物を、メタノールを除去した20mLバイアル瓶に添加し、マグネチックスターラーを用いて16時間室温で混合撹拌した。
その後、上述の構造式(1)においてn=0である(チオ)エポキシ化合物1.71gを前記バイアル瓶に加え、15分間室温で混合撹拌した。蒸留装置を用いて45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、60分かけてTHF溶媒を除去した。
上記工程を経て、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物からなる微粒子分散型重合性組成物を得た(粒子1gに対して1.0mmolの分散剤を含み、ジルコニア粒子は組成物全体の42質量%であった)。
【0063】
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、熱硬化)
実施例1として得た微粒子分散型重合性組成物99.58質量%に、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.42質量%を混合し、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機を用いて100℃で300分、140℃で180分、加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし、光学物性の評価に供した。
【0064】
(実施例2)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-M、D50=4.0nm、D90=6.7nm)をマグネチックスターラー用攪拌子と共に20mLバイアル瓶に5.60g用意した。蒸留装置を用いて、45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、撹拌子を回転させながら45分かけてメタノール溶媒を除去した。
次に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒6.72gと上記構造式(10)で表される硫黄系分散剤0.36gをガラス瓶に用意した。15分間室温で撹拌し、溶解組成物を調製した後、当該溶解組成物を、メタノールを除去した20mLバイアル瓶に添加し、マグネチックスターラーを用いて16時間室温で混合撹拌した。
その後、上述の構造式(1)においてn=0である(チオ)エポキシ化合物1.96gを前記バイアル瓶に加え、15分間室温で混合撹拌した。蒸留装置を用いて45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、60分かけてTHF溶媒を除去した。
上記工程を経て、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物からなる微粒子分散型重合性組成物を得た(粒子1gに対して0.60mmolの分散剤を含み、ジルコニア粒子は組成物全体の42質量%であった)。
【0065】
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、熱硬化)
実施例2として得た微粒子分散型重合性組成物99.50質量%に、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.50質量%を混合し、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機を用いて100℃で180分、140℃で300分、加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし、光学物性の評価に供した。
【0066】
(実施例3)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-M、D50=4.0nm、D90=6.7nm)をマグネチックスターラー用攪拌子と共に20mLバイアル瓶に6.67g用意した。蒸留装置を用いて、45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、撹拌子を回転させながら45分かけてメタノール溶媒を除去した。
次に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒8.00gと上記構造式(10)で表される硫黄系分散剤0.65gをガラス瓶に用意した。15分間室温で撹拌し、溶解組成物を調製した後、当該溶解組成物を、メタノールを除去した20mLバイアル瓶に添加し、マグネチックスターラーを用いて16時間室温で混合撹拌した。
その後、上述の構造式(1)においてn=0である(チオ)エポキシ化合物1.35gを前記バイアル瓶に加え、15分間室温で混合撹拌した。蒸留装置を用いて45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、60分かけてTHF溶媒を除去した。
上記工程を経て、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物からなる微粒子分散型重合性組成物を得た(粒子1gに対して0.90mmolの分散剤を含み、ジルコニア粒子は組成物全体の50質量%であった)。
【0067】
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、熱硬化)
実施例3として得た微粒子分散型重合性組成物99.65質量%に、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.35質量%を混合し、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機を用いて100℃で180分、140℃で420分、加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし、光学物性の評価に供した。
【0068】
(実施例4)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-M、D50=4.0nm、D90=6.7nm)をマグネチックスターラー用攪拌子と共に20mLバイアル瓶に6.67g用意した。蒸留装置を用いて、45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、撹拌子を回転させながら45分かけてメタノール溶媒を除去した。
次に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒8.00gと上記構造式(10)で表される硫黄系分散剤0.58gをガラス瓶に用意した。15分間室温で撹拌し、溶解組成物を調製した後、当該溶解組成物を、メタノールを除去した20mLバイアル瓶に添加し、マグネチックスターラーを用いて16時間室温で混合撹拌した。
その後、上述の構造式(1)においてn=0である(チオ)エポキシ化合物1.42gを前記バイアル瓶に加え、15分間室温で混合撹拌した。蒸留装置を用いて45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、60分かけてTHF溶媒を除去した。
上記工程を経て、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物からなる微粒子分散型重合性組成物を得た(粒子1gに対して0.80mmolの分散剤を含み、ジルコニア粒子は組成物全体の50質量%であった)。
【0069】
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、熱硬化)
実施例4として得た微粒子分散型重合性組成物99.65質量%に、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.35質量%を混合し、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機を用いて100℃で180分、140℃で420分、加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし、光学物性の評価に供した。
【0070】
(実施例5)
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、光硬化)
実施例4として得た微粒子分散型重合性組成物97.90質量%に、光硬化剤としてテトラブチルアンモニウム=ブチルトリナフチルボラート1.05質量%および増感剤として4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド1.05質量%を加えて、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、395nmのLED光(シーシーエス株式会社、HLDL-120V9-NWPSC、500mW/cm)を15分間照射した。その後、乾燥機を用いて140℃で120分加熱処理した。二枚の板状ガラスに挟んだ硬化膜をガラス板から剥がし、光学物性の評価に供した。
【0071】
(参考例1)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-M、D50=4.0nm、D90=6.7nm)をマグネチックスターラー用攪拌子と共に20mLバイアル瓶に5.60g用意した。蒸留装置を用いて、45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、撹拌子を回転させながら45分かけてメタノール溶媒を除去した。
次に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒6.72gと上記構造式(10)で表される硫黄系分散剤1.00gをガラス瓶に用意した。15分間室温で撹拌し、溶解組成物を調製した後、当該溶解組成物を、メタノールを除去した20mLバイアル瓶に添加し、マグネチックスターラーを用いて16時間室温で混合撹拌した。
その後、上述の構造式(1)においてn=0である(チオ)エポキシ化合物1.32gを前記バイアル瓶に加え、15分間室温で混合撹拌した。蒸留装置を用いて45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、60分かけてTHF溶媒を除去した。
上記工程を経て、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物からなる微粒子分散型重合性組成物を得た(粒子1gに対して1.65mmolの分散剤を含み、ジルコニア粒子は組成物全体の42質量%であった)。
【0072】
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、熱硬化)
参考例1として得た微粒子分散型重合性組成物99.68質量%に、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.32質量%を混合し、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機を用いて100℃で180分、140℃で300分、加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし、光学物性の評価に供した。
【0073】
(参考例2)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-M、D50=4.0nm、D90=6.7nm)をマグネチックスターラー用攪拌子と共に20mLバイアル瓶に6.67g用意した。蒸留装置を用いて、45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、撹拌子を回転させながら45分かけてメタノール溶媒を除去した。
次に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒8.00gと上記構造式(10)で表される硫黄系分散剤0.87gをガラス瓶に用意した。15分間室温で撹拌し、溶解組成物を調製した後、当該溶解組成物を、メタノールを除去した20mLバイアル瓶に添加し、マグネチックスターラーを用いて16時間室温で混合撹拌した。
その後、上述の構造式(1)においてn=0である(チオ)エポキシ化合物1.13gを前記バイアル瓶に加え、15分間室温で混合撹拌した。蒸留装置を用いて45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、60分かけてTHF溶媒を除去した。
上記工程を経て、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物からなる微粒子分散型重合性組成物を得た(粒子1gに対して1.20mmolの分散剤を含み、ジルコニア粒子は組成物全体の50質量%であった)。
【0074】
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、熱硬化)
参考例2として得た微粒子分散型重合性組成物99.73質量%に、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.27質量%を混合し、45℃で60分間かけて均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機を用いて100℃で180分、140℃で420分、加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし、光学物性の評価に供した。
【0075】
(参考例3)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-M、D50=4.0nm、D90=6.7nm)をマグネチックスターラー用攪拌子と共に20mLバイアル瓶に5.60g用意した。蒸留装置を用いて、45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、撹拌子を回転させながら45分かけてメタノール溶媒を除去した。
次に、テトラヒドロフラン(THF)溶媒6.72gと上記構造式(10)で表される硫黄系分散剤0.24gをガラス瓶に用意した。15分間室温で撹拌し、溶解組成物を調製した後、当該溶解組成物を、メタノールを除去した20mLバイアル瓶に添加し、マグネチックスターラーを用いて16時間室温で混合撹拌した。
その後、上述の構造式(1)においてn=0である(チオ)エポキシ化合物2.08gを前記バイアル瓶に加え、15分間室温で混合撹拌した。蒸留装置を用いて45℃、真空度10Torr以下に保ち(回転式マクラウド真空計で確認した)、60分かけてTHF溶媒を除去した。
上記工程を経て、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物からなる微粒子分散型重合性組成物を得た(粒子1gに対して0.40mmolの分散剤を含み、ジルコニア粒子は組成物全体の42質量%であった)。
【0076】
参考例3として得た微粒子分散型重合性組成物は、流動性がなく高粘度であり、45℃で60分間かけても、室温下で20mLバイアル瓶から取り出すことができなかった。そのため、微粒子分散型重合性組成物の粘度測定および微粒子分散型硬化物の光学物性の測定を行うことはできなかった。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から、本発明の製造方法により作製された微粒子分散型重合性組成物および該微粒子分散型重合性組成物を用いて作製された微粒子分散型硬化物は、光学材料として優れ、回折格子、光導波路、光ファイバー、レンズ、フィルタ等の光学素子に有用であるといえる。