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  • 特開-発電モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035471
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】発電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20240307BHJP
   H01M 8/1009 20160101ALI20240307BHJP
   H01M 8/02 20160101ALN20240307BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240307BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALN20240307BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALN20240307BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/1009
H01M8/02
H01M8/10 101
H01M8/0206
H01M8/0273
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139945
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】507294395
【氏名又は名称】株式会社ホクシンエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】田中 義克
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 洋
(72)【発明者】
【氏名】宇野 宏志
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅史
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB06
5H126JJ01
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】赤外線を利用することにより効率的な発電が可能であるとともに、コスト削減を可能とする発電モジュールを提供する。
【解決手段】第1ケーシング11と第2ケーシング12とを嵌合することによってその内部に空隙18を形成し、発電部2を設ける。第1ケーシング11及び第2ケーシング12には第1赤外線透過層13及び第2赤外線透過層14を備える。発電部2は、ひとつの発電ユニット20として一対の高分子電解質膜21と、高分子電解質膜21の内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第1スペーサ22と、第1スペーサ22の内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第2スペーサ23と、第1スペーサ22及び第2スペーサ23間に配置されマイナス端子に接続されるマイナスリード線24と、第2スペーサ23間に配置されてプラス端子に接続されるプラスリード線25と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシング内に位置するとともに溶液が充填された発電部と、を備える発電モジュールであって、
前記発電部は、一対の高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第1スペーサと、
前記第1スペーサの内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第2スペーサと、
前記第1スペーサ及び前記第2スペーサ間に配置されマイナス端子に接続されるマイナスリード線と、
前記第2スペーサ間に配置されてプラス端子に接続されるプラスリード線と、を備え、
前記ケーシングには、前記発電部に対して赤外線を透過可能な赤外線透過層を備えることを特徴とする発電モジュール。
【請求項2】
前記第1スペーサ及び前記第2スペーサは、メッシュ材料によって構成されることを特徴とする請求項1記載の発電モジュール。
【請求項3】
前記第1スペーサの厚さと前記マイナスリード線の直径との和が0.1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の発電モジュール。
【請求項4】
前記第1スペーサの厚さ、前記第2スペーサの厚さ及び前記プラスリード線の直径和が0.1mmよりも大きいことを特徴とする請求項1記載の発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電モジュールに関するものであり、特に溶液に浸潤させた高分子電解質膜を用いた発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発電モジュールとして、一対の基板の間に電極・電解質一体化物を備えるものがあった。
特に特許文献1によれば、正極、負極、固体電解質膜を積層して一体化し、これら一体化物には液体燃料が浸潤される。液体燃料として、メタノール水溶液、エタノール水溶液を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-273265
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の発電モジュールによれば、液体燃料として特別にメタノール水溶液等を用意しなければならず、可燃性を有するためその取扱いも容易ではない。さらに、液体燃料を補充するための液体燃料貯蔵部が別途必要であり、その分構造が複雑になりコストも増大してしまうという問題があった。
【0005】
この発明は、赤外線を利用することにより効率的な発電が可能であるとともに、コスト削減を可能とする発電モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ケーシングと、前記ケーシング内に位置するとともに溶液が充填された発電部と、を備える発電モジュールであって、前記発電部は、一対の高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第1スペーサと、前記第1スペーサの内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第2スペーサと、前記第1スペーサ及び前記第2スペーサ間に配置されマイナス端子に接続されるマイナスリード線と、前記第2スペーサ間に配置されてプラス端子に接続されるプラスリード線と、を備え、前記ケーシングには、前記発電部に対して赤外線を透過可能な赤外線透過層を備えることを特徴とする。
この発明によれば、赤外線を利用することにより発電効率を向上させることができ、複雑な構成を要しないのでコスト低減が可能となる。
【0007】
前記第1スペーサ及び第2スペーサは、メッシュ材料によって構成されることを特徴とする。
メッシュ材料を用いることにより発電部全体に溶液を浸潤させることができる。
【0008】
前記第1スペーサの厚さと前記マイナスリード線の直径との和が0.1mm以下であることを特徴とする。
高分子電解質膜から0.1mm以内に形成される陰イオン発生領域に確実にマイナスリード線を配置することができる。
【0009】
前記第1スペーサの厚さ、第2スペーサの厚さ及び前記プラスリード線の直径和が0.1mmよりも大きいことを特徴とする。
陰イオン発生領域を避けて陽イオン発生領域に確実にプラスリード線を配置することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る発電モジュールによれば、赤外線を利用することにより発電効率を向上させることができ、複雑な構成を要しないのでコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発電モジュールの分解斜視図。
図2】発電モジュール正面図であっての第2ケーシングを外した状態の図。
図3】発電モジュールの断面の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発電モジュールM)
この発明の一実施形態である発電モジュールMは、縦方向Y及び横方向Xを有する略矩形であり、ケーシング1と、ケーシング1内に位置する発電部2とを備える。
図1はこの発明の発電モジュールMの分解斜視図であるが、マイナスリード線24及びプラスリード線25の端部は省略している。図2は発電モジュールMの正面図であるが、構成の一部である第2ケーシング12及び第2赤外線透過層14を外してその内側が見えるようにした図である。図3は発電モジュールMを横方向Xに平行に切断した断面図であり、説明のために一部を省略するとともに、その積層状態を概念的に示したものである。図3において各層の厚さなどは実際のものとは異なる。
【0013】
(ケーシング1)
ケーシング1は、第1ケーシング11と第2ケーシング12とを有し、これらを嵌合することによってその内部に空隙を形成し、発電部2を設けることができる。第1ケーシング11及び第2ケーシング12は、少なくともその一部に第1赤外線透過層13及び第2赤外線透過層14をそれぞれ備える。この実施形態において、第1ケーシング11及び第2ケーシング12の略中央部にその厚さ方向に貫通する第1開口11a及び第2開口12aを形成し、これら第1開口11a及び第2開口12aに第1赤外線透過層13及び第2赤外線透過層14を水密に嵌合する。
【0014】
第1ケーシング11及び第2ケーシング12として絶縁性材料を用い、例えばプラスチック樹脂等を用いることができる。第1赤外線透過層13及び第2赤外線透過層14は、少なくともその外部から内部に向かって赤外線を透過可能であって、例えば赤外線透過ガラスや赤外線透過プラスチックなどを用いることができる。
【0015】
第1赤外線透過層13の周囲には、第1ケーシング11の表面側から裏面側へと突起する周壁15を備え、周壁15の上端と第2ケーシング12が当接することによってその内部を発電部2が設置可能な空隙18とすることができる。周壁15の上端と第2ケーシング12とは水密に当接するようにしている。空隙18の外側、すなわち周壁15の外側には後述するリード線を巻回可能なマイナス端子16a及びプラス端子16bが設けられる。周壁15のマイナス端子16a及びプラス端子16b近傍にはこれらに対応するノッチ19がそれぞれ形成される。
【0016】
第1ケーシング11の空隙18内には、マイナスリード線24及びプラスリード線25をそれぞれ巻回可能な突起が設けられる。周壁15の内側であって図2の下方すなわちノッチ19側に位置する第1突起17aと、第1突起17aに対向し図2の上方に位置する第2突起17bとを備える。これら第1突起17a及び第2突起17b間でリード線を縦方向Yに沿って空隙18内において往復設置することによって、空隙18外へリード線が延出するのを最小限に抑えることができ、その分空隙18内から外へと溶液が滲出するのを予防することができる。
【0017】
(発電部2)
第1ケーシング11と第2ケーシング12との間に設けられた空隙18には発電部2が形成される。発電部2は、ひとつの発電ユニット20として一対の高分子電解質膜21と、高分子電解質膜21の内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第1スペーサ22と、第1スペーサ22の内側にそれぞれ隣接する絶縁性の第2スペーサ23と、第1スペーサ22及び第2スペーサ23間に配置されマイナス端子16aに接続されるマイナスリード線24と、第2スペーサ23間に配置されてプラス端子16bに接続されるプラスリード線25と、を備える。この実施形態において発電ユニット20を2つ積層する。なお、二つの発電ユニット20間で隣接する高分子電解質膜21は、一方が他方を兼ねている。第1スペーサ22は、高分子電解質膜21とマイナスリード線24との離間距離を担保し、第2スペーサ23は、マイナスリード線24とプラスリード線25との離間を担保するものである。
【0018】
高分子電解質膜21として、例えばパーフルオロカーボン材料からなるナフィオン(商標:デュポン(DuPont)社)を用いることができるが、電解質膜としての機能を発揮するものであれば、これに限定されるものではない。第1スペーサ22及び第2スペーサ23として、例えばナイロンメッシュを用いることができるが、各離間寸法を確保することができれば種々の材料を用いることができる。またマイナスリード線24及びプラスリード線25として、例えば白金線を用いることができる。
この実施形態において、高分子電解質膜21の厚さは約0.14mm、第1スペーサ22の厚さは約0.06mm、第2スペーサ23の厚さは約0.2mm、マイナスリード線24及びプラスリード線25の直径は約0.03mmとしている。
【0019】
上記のような構成の発電モジュールMにおいて空隙18には溶液として水を充填している。より詳細には超純水を用いる。この実施形態において空隙18は発電部2の設置領域であるとともに溶液の貯蔵部として用いることができる。
【0020】
このような構成において、発電部2の高分子電解質膜21の第1スペーサ22に対向する面では陰イオン(H3O2-)が発生する陰イオン発生領域とり、陰イオン発生領域は約0.1mmであるとされる。陰イオン発生領域の間、すなわち発電ユニットの中心近傍である一対の第2スペーサ23間近傍が陽イオン(H3O+)が発生する陽イオン発生領域となる。
【0021】
マイナスリード線24は、第1スペーサ22を介して高分子電解質膜21に積層される。第1スペーサ22の厚さは約0.06mm、マイナスリード線24は直径約0.03mmであるから、高分子電解質膜21からマイナスリード線24までの距離は約0.09mmである。そうすると、マイナスリード線24は高分子電解質膜21から約0.1mmの陰イオン発生領域内に位置する。プラスリード線25は、第1スペーサ22及び第2スペーサ23を介して高分子電解質膜21に積層される。第1スペーサ22の厚さは約0.06mm、第2スペーサ23の厚さは約0.2mm、プラスリード線25の直径は約0.03mmであるので、高分子電解質膜21からプラスリード線25までの距離は約0.26mmである。そうすると、プラスリード線25は陽イオン発生領域内に位置する。このように陰イオン発生領域に位置するマイナスリード線24及び陽イオン発生領域に位置するプラスリード線25によって発電部2において電圧を発生させることができる。
【0022】
上記のような発電部2は第1赤外線透過層13及び第2赤外線透過層14の両方、又はいずれか一方を介して赤外線が照射可能とされる。赤外線が照射されることによって、発電部2の溶液における水分子を振動させることができ、陰イオン発生領域において持続的な陰イオン(H3O2-)の発生を可能とすることができる。持続的に陰イオンを発生させることによって発電量を増大させることができる。このように発電された電圧はマイナス端子16a及びプラス端子16bを集電部として集電可能である。
【0023】
このような発電モジュールMによれば、簡単な構成で効率よく発電することができる。また溶液として水を用いることができ、特別な溶液を必要としないので装置全体のコストを低減することができる。さらに、赤外線を照射することによって発電効率を向上させることができ、太陽光による赤外線を利用することで地球環境に対して負荷の少ないエネルギーを得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 :ケーシング
2 :発電部
11 :第1ケーシング
11a :第1開口
12 :第2ケーシング
12a :第2開口
13 :第1赤外線透過層
14 :第2赤外線透過層
15 :周壁
16a :マイナス端子
16b :プラス端子
17a :第1突起
17b :第2突起
18 :空隙
20 :発電ユニット
21 :高分子電解質膜
22 :第1スペーサ
23 :第2スペーサ
24 :マイナスリード線
25 :プラスリード線
M :発電モジュール
図1
図2
図3