(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035479
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】管理機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/08 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A01B33/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139957
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山川 紀行
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】村本 恭平
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】原 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】米田 彩美
(72)【発明者】
【氏名】富久 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮内 正男
【テーマコード(参考)】
2B033
【Fターム(参考)】
2B033AA06
2B033AB01
2B033AB11
2B033AB18
2B033AC04
2B033CA01
2B033CA02
2B033CA03
2B033CA14
2B033CA40
2B033ED04
2B033ED15
(57)【要約】
【課題】 従来、歩行型伝動耕運機において、走行装置や作業装置の駆動モータの制御が円滑に出来ない。
【解決手段】機体を走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する走行アクチュエータと、機体に装着され所定の作業を行う作業装置9と、作業装置9を駆動する作業アクチュエータと、機体に取付けられたバッテリーケース1に収納されたバッテリー1aと、制御装置10とを備え、走行アクチュエータは、少なくとも走行モータ5とその制御を行う走行インバーター6とを有し、作業アクチュエータは、少なくとも作業モータ9cとその制御を行う作業インバーター9dとを有し、制御装置10は少なくとも作業アクチュエータの作業インバーター9dを制御する、ことを特徴とする管理機。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を走行させる走行装置と、
前記走行装置を駆動する走行アクチュエータと、
前記機体に装着され、所定の作業を行う作業装置と、
前記作業装置を駆動する作業アクチュエータと、
前記機体に取付けられたバッテリーケースに収納されたバッテリーと、
制御装置と、を備え、
前記走行アクチュエータは、少なくとも走行モータとその制御を行う走行インバーターとを有し、
前記作業アクチュエータは、少なくとも作業モータとその制御を行う作業インバーターとを有し、
前記制御装置は少なくとも前記作業アクチュエータの前記作業インバーターを制御する、ことを特徴とする管理機。
【請求項2】
前記機体が後進するように、前記走行アクチュエータの前記走行モータが回転する場合は、前記制御装置は、前記作業アクチュエータの前記作業モータを停止させるように前記作業インバーターを制御する、請求項1記載の管理機。
【請求項3】
前記バッテリーは、少なくとも前記走行装置を駆動し、
前記バッテリーケースの上方に、所定の間隔をおいて上方カバーが設けられ、
前記バッテリーケースが載置されるフロントフレームが設けられ、
前記バッテリーケースの底面は開放されるとともに、前記フロントフレームの、前記バッテリーが載置される平板部にはスリットが形成されている、請求項2記載の管理機。
【請求項4】
前記バッテリーケースの前面は、上下方向に回動可能に軸支された前カバーで構成され、
前記前カバーは垂直状態と水平状態とが選択可能であり、水平状態に位置した状態では、前記バッテリーが前記前カバーの上を摺動可能になっている、請求項3記載の管理機。
【請求項5】
前記前カバーは、その主面に風通しを良くするための複数のスリット部が設けられ、さらに、その主面の左右両側には左右壁が立設し、その左右壁には複数個のベアリングが回動可能に取り付けられており、
前記バッテリーは前記複数個のベアリングを利用して前記前カバーの上を摺動可能に移動できる、請求項4記載の管理機。
【請求項6】
前記作業装置は耕耘装置であって、
前記機体、前記バッテリー、前記走行インバーター、前記作業インバーター及び前記耕耘装置を含む管理機全体のバランスをとるためのウェイトが、前記機体における前後方向に移動可能に、前記機体に装着され、
前記ウェイトを前記前後方向に移動させるためのウェイトアクチュエータが設けられ、
前記制御装置は、前記機体が圃場を直進する際には、前記ウェイトアクチュエータによって前記ウェイトを前記機体の所定位置に位置させ、前記機体が圃場を旋回する際には、前記ウェイトアクチュエータによって前記ウェイトを前記機体の前記所定位置より前記機体における前側方向に所定量移動させる、請求項5記載の管理機。
【請求項7】
前記機体の前記所定位置は、管理機全体の重心よりも後側の位置であり、
前記所定位置より前側へ移動させる場合は、前記管理機全体の重心よりも前側の位置まで移動させる、請求項6記載の管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕運機などの管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリーからの電力供給によってモータを駆動し、モータから耕耘装置等の作業装置に伝動し、圃場を管理する電動式の歩行型管理機は公知となっている。
【0003】
先行技術に示す電動管理機は、耕耘装置を駆動するモータと、走行装置を駆動するモータを備え、1つのバッテリーと制御装置を備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのような従来の技術では、バッテリーからの電力で直にモータを駆動しているため、モータの回転数の制御が極端になりがちであった。
【0006】
本発明では、そのような従来技術の課題を考慮し、モータの制御が円滑に出来る管理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、
機体を走行させる走行装置と、
前記走行装置を駆動する走行アクチュエータと、
前記機体に装着され、所定の作業を行う作業装置と、
前記作業装置を駆動する作業アクチュエータと、
前記機体に取付けられたバッテリーケースに収納されたバッテリーと、
制御装置と、を備え、
前記走行アクチュエータは、少なくとも走行モータとその制御を行う走行インバーターとを有し、
前記作業アクチュエータは、少なくとも作業モータとその制御を行う作業インバーターとを有し、
前記制御装置は少なくとも前記作業アクチュエータの前記作業インバーターを制御する、ことを特徴とする管理機である。
【0008】
第2の本発明は、
前記機体が後進するように、前記走行アクチュエータの前記走行モータが回転する場合は、前記制御装置は、前記作業アクチュエータの前記作業モータを停止させるように前記作業インバーターを制御する、第1の本発明の管理機である。
【0009】
第3の本発明は、
前記バッテリーは、少なくとも前記走行装置を駆動し、
前記バッテリーケースの上方に、所定の間隔をおいて上方カバーが設けられ、
前記バッテリーケースが載置されるフロントフレームが設けられ、
前記バッテリーケースの底面は開放されるとともに、前記フロントフレームの、前記バッテリーが載置される平板部にはスリットが形成されている、第2の本発明の管理機である。
【0010】
第4の本発明は、
前記バッテリーケースの前面は、上下方向に回動可能に軸支された前カバーで構成され、
前記前カバーは垂直状態と水平状態とが選択可能であり、水平状態に位置した状態では、前記バッテリーが前記前カバーの上を摺動可能になっている、第3の本発明の管理機である。
【0011】
第5の本発明は、
前記前カバーは、その主面に風通しを良くするための複数のスリット部が設けられ、さらに、その主面の左右両側には左右壁が立設し、その左右壁には複数個のベアリングが回動可能に取り付けられており、
前記バッテリーは前記複数個のベアリングを利用して前記前カバーの上を摺動可能に移動できる、第4の本発明の管理機である。
【0012】
第6の本発明は、
前記作業装置は耕耘装置であって、
前記機体には、前記バッテリー、前記インバーター及び前記耕耘装置を含む管理機全体のバランスをとるための、前記機体における前後方向に移動可能なウェイトが装着され、
前記ウェイトを前記前後方向に移動させるためのウェイトアクチュエータが設けられ、
前記制御装置は、前記機体が圃場を直進する際には、前記ウェイトアクチュエータによって前記ウェイトを前記機体の所定位置に位置させ、前記機体が圃場を旋回する際には、前記ウェイトアクチュエータによって前記ウェイトを前記機体の前記所定位置より前記機体における前側方向に所定量移動させる、第5の本発明の管理機である。
【0013】
第7の本発明は、前記機体の所定位置は、管理機全体の重心よりも後側の位置であり、
前記所定位置より前側へ移動させる場合は、前記管理機全体の重心よりも前側の位置まで移動させる、第6の本発明の管理機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、モータの制御が円滑に出来る管理機を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明における実施の形態にかかる管理機の上方から見た斜視図
【
図5】同上管理機のバッテリーケースを中心とする斜視図
【
図6】(A)、(B)同上バッテリーケースの前カバーの斜視図
【
図7】(A)、(B)、(C)同上管理機のウェイト移動機構を説明するための図
【
図8】(A)、(B)同上管理機の別のウェイト移動機構を説明するための図
【
図9】同上管理機において、機体の傾きを検出するために用いられるジャイロセンサーなどの角速度センサの取り付け位置を説明するための機体全体の側面図
【
図10】
図9におけるフロントフレームなどの一部平面図
【
図11】
図9におけるエンジンや上方カバーなどの一部側面図
【
図12】
図9におけるハンドルブラケットやミッションケースなどの一部側面図
【
図13】(A)同上管理機における傾斜制御の原理図、(B)3次元軸体の具体例を示す図、(C)上記3次元軸体の他の例を示す図
【
図14】同上管理機において、手動で耕運機ユニットのロータリークラッチのプレートを切り替えるやり方を示す略示斜視図
【
図15】(A)
図14のクラッチレバーを別方向から見た斜視図、(B)別の切り替えのやり方を示す略示斜視図、(C)別の切り替えのやり方を示す略示斜視図
【
図16】(A)機体の略示平面図、(B)は機体の略示背面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態にかかる管理機の一例としての歩行型耕運機の上方からの斜視図、
図2は下方からの斜視図、
図3は一部拡大図である。以下では、耕運機の進行方向を基準として、前後、左右、上下とする。
【0018】
1はバッテリー1aを収納するバッテリーケースであって、その上に上方カバー2が装着されている。3はバッテリー1a及びバッテリーケース1を支持するフロントフレームである。31はヒッチである。フロントフレーム3には走行用の左右の駆動用モータ5(5a、5b)が取り付けられ、それぞれのモータ5a、5bにはそれぞれ左右の駆動輪4(4a、4b)が連結されている。ここに左右の駆動輪4(4a、4b)は本発明の走行装置の一例である。
【0019】
さらに、フロントフレーム3には左右の駆動用モータ5a、5bをそれぞれ個別に電気的に制御するための左右の走行インバーター6(6a、6b)が配置されている。ここに、左右の駆動用モータ5a、5bと左右の走行インバーター6(6a、6b)とは、本発明の走行アクチュエータの一例である。
【0020】
上方カバー2の後部にはハンドル7が配置され、その下部はフロントフレーム3に連結されたハンドルブラケット8に固定されている。
【0021】
9は機体の後部に連結された耕耘ユニットであり、耕耘爪9aと、その耕耘爪9aに動力を伝えるロータリーミッション9bと、そのロータリーミッション9bを駆動するロータリー(作業)モータ9cと、そのロータリーモータ9cを電気的に制御するロータリー(作業)モータインバーター9dなどで構成されている。このロータリーモータインバーター9dは駆動用モータ5aの横位置に位置しているが、駆動用モータ5aの後側、あるいはロータリーモータ9c側に配置されてもよい。ここに耕耘ユニット9は本発明の作業装置の一例である。また、ロータリーモータ9cとロータリーモータインバーター9dは本発明の作業アクチュエータの一例である。
【0022】
上記バッテリー1aの出力は左右の駆動用モータ5a、5bに供給されるとともに、ロータリーモータ9cにそれぞれ供給されている。
【0023】
さらに、10は制御装置であって、上記走行インバーター6a、6bと、ロータリーモータインバーター9dを制御するコンピューターなどで構成される。
【0024】
図4は本実施例の制御関係を示す構成図である。ここに11は機体が後進しているかどうかを検出する後進センサである。例えば、左右の車輪4a、4bに設けられた光センサである。あるいは左右の走行モータ5a、5bに設けられ回転方向を検出するセンサでもよい。
【0025】
この後進センサ11からの信号に基づき、制御装置10は機体が後進する場合は、ロータリーモータインバーター9dを、ロータリーモータ9cが回転停止するように制御する。
【0026】
なお、制御装置10が走行インバーター6a、bを制御して走行モータ5a、5bを駆動しているタイプの場合、走行インバーター6a、bに、走行モータ5a、5bが後進するように制御信号を送るが、その場合、後進センサ11は制御装置10自ら備えていると看做し得て、そのように後進させる指示をする際に、同時にロータリーモータインバーター9dにロータリーモータ9cが停止するように信号を送ることが出来る。
【0027】
このように、本実施の形態では、バッテリー1aからの電力で直にモータを駆動しておらず、インバーターを介してモータを制御しているので、走行において急発進・急停止する恐れは少なく、また、耕運ユニット9の駆動もスムーズに行えるというメリットがある。
【0028】
図5はバッテリーケース1の変形例である。本バッテリーケース1は半分筒状の本体1bと、前方の前カバー1cと、側方のベルトカバー1dなどで構成されている。その中にバッテリ-1aやモータ5a、9cなどが配置される。半分筒状の本体1bの上面はベルトカバー1dに平面視重複するように配置されている。
【0029】
この半分筒状の本体1bの上方には所定間隔を置いて上記上方カバー2が配置され(
図1参照)、下方にはフロントフレーム3が配置されている。その所定間隔によってバッテリー1aから発生する熱を放熱しやすくなるとともに、上方カバー2によってバッテリーケース1の上方を保護できる。バッテリーケース1の上面にはバッテリ-1aの端子が露出しているのでそこを保護できる。
【0030】
なお、このバッテリーケース1の底面は開放されており、フロントフレーム3の平板部3a上に配置されている。そして、その平板部3aにはスリット部3a1が形成されている(
図2参照)。1eはフロントフレームと前カバー1cを連結するリンクである。
【0031】
この前カバー1cは下辺が回動軸となって上下方向に回動可能となっており、また、前カバー1cの上部には孔1c1が形成され、他方、半分筒状の本体1bの前端上部には、ネジ穴が形成された固定片1b1が固定されており、ボルトを孔1c1に挿入することで、前カバー1cを本体1bに連結することが出来る。そのように連結しておくことでバッテリーケース1はほぼ閉鎖空間を形成出来、バッテリー1aを塵埃から保護することが出来る。
【0032】
なお、変形例としてバッテリーケース1の底面が存在し、他方フロントフレーム3の平板部3aが無い例もあり得る。そのような場合はバッテリーケース1の底面にスリット部が形成されることになる。
【0033】
このようなスリット部の存在によってバッテリ-1aで発生する熱を放熱することが容易となる。
【0034】
この前カバー1cは、
図6(A)、(B)に示すような構造を有している。すなわち、下方部1c2がフロントフレーム3に軸支されており、上下方向に回動可能となっている。その回動によって、前カバー1cは垂直状態(
図6(A)参照)と水平状態(
図6(B)参照)が選択可能となっている。
【0035】
垂直状態となった位置では、前カバー1cの上部を、上述したようにボルトを孔1c1に挿入し固定片1b1へ螺合させることで、半分筒状の本体1bに固定することが出来る。
【0036】
水平状態となった位置では、フロントフレーム3にその状態でロックされるようになっている(図示省略)。さらに、水平状態となった状態において、格納されているバッテリー1aを前カバー1cの上を摺動させて外部へ引き出すことが出来る。このように構成することによってバッテリー1aのメンテナンスや交換が容易となる。
【0037】
なお、この前カバー1cの主面には風通しを良くしてバッテリー1aから発生する熱を放熱するため、スリット部1c3が形成されている。例えばルーバー式などのスリット部である。ルーバー式にすることで雨などが入り込むことを防止できる。
【0038】
さらに、その主面の左右両側には左右の壁1c4、1c4が立設されており、その左右の壁1c4、1c4には複数個のベアリング1c5が回動可能に取り付けられている。この複数個のベアリング1c5の上をバッテリー1aが摺動して外部へ取り出されるようになっている。
【0039】
別の例としては前カバー1cの主面にレールなどを敷設してバッテリー1aを摺動させえることも可能であるが、本例のように主面にルーバー式などのスリット部1c3を形成している場合はそこにレールなどを敷設することは難しいが、本例のベアリングを採用することでバッテリー1aの放熱もメンテナンスも両立することが容易となる。
【0040】
図7(A)、(B)は本発明の別の実施の形態を示す斜視図である。
【0041】
図7(A)において、20はウェイト移動機構を示し、ウェイト20aとそのウェイト20aを支持する左右のフレーム20bなどから構成されている。このウェイト移動機構20は機体の中心位置に備えられるのが望ましいが、一例としては後述するジャイロセンサーをフロントフレーム3に取り付ける位置などが選択可能である。
【0042】
ウェイト20aはその左右のフレーム20bの間に隙間をおいて前後移動可能に配置されている。そのウェイト20aの左右側面にはピン20a1がそれぞれ左右方向に向いて取り付けられている。他方、左右のフレーム20bにはそれぞれ前後方向に長孔20b1が穿設されており、上記ウェイト20aのピン20a1はその長孔20b1に挿入されており、ウェイト20aはそのピン20a1によってフレーム20bに支持されながら、前後方向に移動可能となっている。
【0043】
さらに、ウェイト20aの後面20a3にはボールねじ20a2が螺合されるタップ孔が穿設されており、ボールねじ20a2がモータ20a4によって回動するようになっている。すなわち、モータ20a4によってボールねじ20a2が回転することでウェイト20aが前後方向に移動可能となっている。
【0044】
なお、
図7(B)はピン20a1が2箇所設けられた変形例の斜視図であって、ウェイト20aの前後移動が安定して実現できる。
【0045】
図7(C)はウェイト20aとボールねじ20a2との螺合の仕方の別例を示す、下方から見上げた斜視図である。ウェイト20aの底面に設けられたステー20a5に前後方向にナット20a6が穿設され、そこにボールねじ20a2が螺合することによって、ウェイト20aの移動の可能とする。ストロークを大きく実現することが出来る。
【0046】
そのモータ20a4の正逆の回転方向はハンドル7の手元に設けたスイッチによって切り替え可能である。
【0047】
このような構成によって、耕耘中のような直進状態ではウェイト20aは、例えば管理機全体の重心といった所定位置、あるいはそれよりも後側の所定位置などへ移動させておく。それによって耕耘ユニット9の耕耘爪9aが耕耘時に反発することを抑制できる。
【0048】
これに対して機体を旋回させるときはハンドル7でもって、耕耘ユニット9が取り付けてある、機体の後側を持ち上げるが、その際、ウェイト20aをモータ20a4によって前記所定位置より前方へ、例えば上記重心位置よりも前側へ移動させる。それによって後側を持ち上げやすくする。
【0049】
なお、上記モータ20a4の切り替えスイッチを、ハンドル手元に設け、また直進旋回を切り替えるレバーに連結しておき、そのようなレバーを直進に切り替えると自動的にスイッチがウェイト20aを後側へ移動させ、レバーを旋回に切り替えると自動的にスイッチはウェイト20aを前側に移動させるようにしてもよい。面倒な操作が不要となる。
【0050】
上記モータ20a4、ボールねじ20a2などは本発明のウェイトアクチュエータの一例である。
【0051】
図8は本発明のさらに別の実施の形態を示す斜視図である。
【0052】
30はウェイト移動機構の別実施例である。30aはウェイトであり、30bはそのウェイト30aを前後方向に移動させるリンクプレートである。30cは左右両側に配置されたフロントフレームであって、その側面には前後方向に長孔(図示省略)が穿設されている。他方ウェイト30aの左右両側には左右のピン30a2が突出形成されており、この左右のピン30a2が上記長孔に挿入されることによって、ウェイト30aは前後方向に移動可能となっている。さらに、がたつきを押さえるためレール(図示省略)が設けられていてもよい。
【0053】
上記リンクプレート30bの前端はウェイト30aの上面に左右方向に移動可能に連結されている。すなわち、リンクプレート30bの前端部に左右方向の長孔30b1が2個穿設されており、他方、ウェイト30aの上面には2本のピン30a1が立設されており、このピン30a1が長孔30b1に挿入されている。これによってリンクプレート30bはウェイト30aの上面を左右方向に移動可能となっている。
【0054】
このリンクプレート30bの中央には前後方向に長い矩形状の開口部30b2が形成されており、その内側縁の左右両側には直線状の左歯部30b3、右歯部30b4が形成されている(ラック構造)。
【0055】
さらに、開口部30b2の内側後方位置にはスプライン形成されたピニオン30b5が立設されている。このピニオン30b5はリンクプレート30bが左側へ移動すると、右側の歯部30b4に接触するようになっており、その接触状態でピニオン30b5が反時計方向に回転するとスプラインが歯部30b4に螺合してリンクプレート30bを前方へ移動させることが出来、逆にリンクプレート30bが右側へ移動すると、左側の歯部30b3に接触するようになっており、その接触状態でピニオン30b5が上記反時計方向に回転するとスプラインが歯部30b3に螺合してリンクプレート30bを後方へ移動させることが出来るようになっている。すなわち、ピニオン30b5は同じ方向に回るだけでリンクプレート30bを前後に移動させることが出来る。そのピニオン30b5の回転は、例えばファンからの回転力で回転する軸で実現出来る。このピニオン30b5などは本発明のウェイトアクチュエータの一例である。
【0056】
このようにその前後方向の移動を切り替えるために、上述したようにリンクプレート30bは左右方向に移動するがその切り替え構造は以下のとおりである。
【0057】
図8(A)において、左側のフロントフレーム30cの上面にはピン30c2が取付け孔30c1に立設している。他方、リンクプレート30bの上面にはピン30b7が立設しており、両ピン30c2、30b7との間に引張りスプリング30dが懸架されている。従って、常時、すなわち、ウェイト30aが前後方向に移動しても、リンクプレート30bは左側へ引っ張り付勢されていることになる。
【0058】
なお、ピン30c2はフロントフレーム3の上面に立設するのではなく、ウェイト30a側に取付けてもよい。その場合はウェイト30aの前後移動によってピン30c2も前後移動する。この場合は、リンクプレート30bの幅がウェイト30aの幅より狭いこと、スライド用長孔30b1よりラックの幅が狭い等の条件を満足する位置に取り付ける必要がある。
【0059】
他方、
図8(A)と
図8(B)において、右側のフロントフレーム30cの上面には支持ピン30c5が回動可能に立設している。その支持ピン30c5に左右切替プレート30c3が取り付けられている。さらにその左右切替プレート30c3の左端側には左右切替ピン30c6が、左右切替プレート30c3の下方へ向かって突出するように取り付けられている。
【0060】
一方、リンクプレート30bの、上記左右切替プレート30c3の左端側の下位置には、円弧状の切り欠き30b6が穿設され、この円弧状の切り欠き30b6に上記下方へ突出している左右切替ピン30c6が摺動可能に挿入されている。
【0061】
さらに、左右切替プレート30c3の右端側にはケーブル30eの先端が連結係止する孔30c4が穿設されている。そのケーブル30eは直進旋回切替レバーに連結されている。
【0062】
上記ピニオン30b5、リンクプレート30b、ケーブル30e、左右切替プレート30c3などは本発明のウェイトアクチュエータの一例である。
【0063】
このような構造において、スプリング30dが左側へリンクプレート30bを引き寄せている状態では、ピニオン30b5が右側の歯部30b4に接触するので、その接触状態でピニオン30b5が反時計方向に回転するとスプラインが歯部30b4に螺合してリンクプレート30bを前方へ移動させる。
【0064】
これに対して、ケーブル30eで左右切替プレート30c3の右端側を例えば引っ張ると左右切替プレート30c3が支持ピン30c5を中心として回動する。そのため、左端側に取り付けられた左右切替ピン30c6も回動する。
【0065】
この左右切替ピン30c6は円弧状の切り欠き30b6に挿入されているので、切り欠き30b6の端まで移動し、その端に来た状態でさらに回動すると、リンクプレート30bがスプリング30dの付勢力に抗して右側へ引き付けられることになる。
【0066】
このようにして、リンクプレート30bが右側へ引き付けられると、左側の歯部30b3にピニオン30b5が接触し、その接触状態でピニオン30b5が上記反時計方向に回転するとスプラインが歯部30b3に螺合してリンクプレート30bを後方へ移動させる。
【0067】
次に、本発明の別の実施の形態を説明する。
【0068】
土などの硬さの違いで作業中に機体が前後左右に傾くことがあり、そのため進行方向が変わったり、最悪の場合転倒することがある。そこで、機体がある程度傾くと正常な状態の戻す必要がある。そのため、機体の傾きを検出する傾斜センサーが必要となる。
【0069】
図9、
図10、
図11、
図12は、機体の傾きを検出するために用いられるジャイロセンサーなどの角速度センサーの取り付け位置を説明するための図面である。
図9はその機体全体を示す側断面図、
図10はフロントフレームなどの一部平面図、
図11はエンジンや上方カバー2などの一部側面図、
図12はハンドルブラケットやミッションケースなどの一部側面図である。
【0070】
図10において、おおよそ機体の中心部であって、エンジンを搭載したフロントフレーム3の、平面視でエンジンとミッションケースの間の位置に角速度センサ42を配置する。
【0071】
図11において、上方カバー2の下方位置に角速度センサ40を配置する。
【0072】
図12において、ハンドル7の根本が取り付けられるハンドルブラケット8に角速度センサ41を配置する。
【0073】
次に、土などの硬さの違いなどによって作業中に前後左右に傾くことがある。そこで傾いた機体をもとの正常な状態に戻すための機構について説明する。
図13において、(A)は原理図を示す。すなわち、x、y、zの3方向に伸びる3次元軸体52を機体のおおよその中心位置に配置しておき、それぞれの軸に油圧又は電動シリンダー51を取り付け、それぞれのシリンダー51のロッドにウェイト50を取り付ける。それらの配置は機体が停止状態で傾きが無い状態に対応するような初期位置に設定しておく。このシリンダー51をx、y、z方向に個別に伸縮させることによって、機体の傾きを修正することが出来る。例えば、左側へ所定の閾値より大きく傾斜したことを角速度センサ40が検出すると、y軸のウェイトが中心側へ移動するようにシリンダー51のロッドを縮める。右側に傾いたときは逆に伸長する。
【0074】
前方向へ傾いたときはx軸側のウェイトを中心側から遠ざかる方へ移動させる。また、機体の重心が高すぎる場合はz軸側のウェイトを中心側に低くすることも出来る。
【0075】
図13(B)は上記3次元軸体52の具体例であって、L字曲げした丸棒にその折り曲げ部に他の丸棒を溶接することで製作できる。
図13(C)は上記3次元軸体52の他の例であって、L字曲げした板部材にその折り曲げ部に他の板部材を溶接することで製作できる。
【0076】
耕運機ユニットのロータリークラッチはリモコンなどの送信機や、スマートフォンや、タブレットなどの機器でオンオフ出来る機構がある。他方、手動で以下のようにロータリークラッチをオンオフすることも可能である。
【0077】
すなわち、
図14は手動で耕運機ユニット9のロータリークラッチのプレートを切り替えるやり方を示す略示斜視図である。ここに60はクラッチレバーであって、その基部に2枚の薄板61を平行に取り付けている。さらに、63はスイッチであって62はその駆動ピン(トグル)である。このスイッチ63は小型の電動シリンダー64に接続され、シリンダー64のロッドのフック部はロータリークラッチのプレートに接続されたケーブル66の端部に連結された回動可能な片65に連結されている。
【0078】
したがって、クラッチレバー60をどちらかに傾けるとスイッチ63の駆動ピン62が駆動され、ロータリークラッチがオンオフされる。なお、ケーブルなど以外の部材の組合せでもロータリークラッチをオンオフ出来る。
【0079】
図15(A)は
図14のクラッチレバー60を別方向から見た斜視図である。
図15(B)はクラッチレバー60の基部に根元にU字型切り欠きを設けたプレート67を固定し、その先に下向きに小さな筒68を固定しておき、その筒68内にスイッチ63の駆動ピン62を挿入している。この場合もクラッチレバー60を傾けることで駆動ピン62を左右に傾けてオンオフすることが出来る。なお、駆動ピン62に、プレート67に固定された筒68を単に被せておき、クラッチレバー60にプレート67を固定せず単に当接させているだけでも同様な動作は可能である。
【0080】
図15(C)はプレート67に長孔69を穿設しておき、そこへ駆動ピン62を挿入することで、クラッチレバー60を傾けることで駆動ピン62をオンオフすることが出来る。
【0081】
なお、
図14や
図15の技術はそのようなロータリークラッチのオンオフに適用可能なばかりでなく、旋回時に必要なデフロック機能のオンオフにも適用可能である。
【0082】
図16(A)は機体の略示平面図であって、車輪4を旋回方向に向けるための構造を示し、左右のタイヤ軸71と車輪4のリムとを油圧シリンダ70で連結し、この油圧シリンダ70を制御することで旋回方向を決定する。
【0083】
図16(B)は機体の略示背面図であって、旋回場面や傾斜地の場面などに適するように、左右の車輪4のタイヤ軸71と機体の側面とを油圧シリンダ70で連結し、この油圧シリンダ70を制御することで、タイヤ軸71を上下方向に傾斜させることが出来る。
【0084】
次に、本発明の実施の形態にかかる管理機の圃場における全体的な動きを説明する。
【0085】
まず、手動で機体側のメインクラッチをオンにする。その後リモコンなどを用いて遠隔で耕運機ユニットのロータリークラッチをオンする。作業が始まると、リモコンなどで左右方向の操舵を制御するとともに、制御装置は自動的に左右前後の傾きを正常な状態に制御する。
【0086】
圃場の端に到達し旋回するに至ると、リモコンなどでロータリークラッチをオフとするとともにウェイトを前側へ移動させる。またデフロック制御を自動で行う。すなわち、旋回時には左右方向の操舵と、ロータリークラッチのオンオフと、デフロックのオンオフと、機体の前後方向の傾き制御が必要であるが、手動で一つ一つ順に行うことも出来るが、これらの作業を予めプログラムしておき、作業者はどちらかへの旋回方向を指示さえすれば、自動的にこれらの制御は可能となる。タイヤの方向変更は
図16に示すような方法で実行できる。
【0087】
旋回終了するとロータリークラッチをオンとするとともに、デフロック制御を止める。
【0088】
作業の最後に至ると、ロータリークラッチをオフとするとともに、手動でメインクラッチをオフとする。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、走行装置を駆動するモータや作業装置を駆動するモータの制御が円滑に出来る管理機を提供することが出来るので、電動式歩行型管理機に最適である。
【符号の説明】
【0090】
1 バッテリーケース
1a バッテリー
1b 本体
1c 前カバー
1c1 孔
1c2 下方部
1c4 壁
1c5 ベアリング
2 上方カバー
3 フロントフレーム
3a 平板部
3a1 スリット部
4 左右の駆動輪
5 駆動用モータ
6 走行インバーター
7 ハンドル
8 ハンドルブラケット
9 耕耘ユニット(耕耘装置)
9a 耕耘爪
10 制御装置