(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035481
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】不織布ワイパー
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4258 20120101AFI20240307BHJP
A47L 13/16 20060101ALI20240307BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20240307BHJP
【FI】
D04H1/4258
A47L13/16 A
D04H1/492
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139963
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 生弥
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074AC03
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA04
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB07
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーを提供すること。
【解決手段】ビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維からなる不織布ワイパーであって、前記ビスコースレーヨン繊維と前記リヨセル繊維の質量比が50:50~30:70であり、目付が25~35g/m2であり、単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量が8.5g/m2以上である、不織布ワイパー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維からなる不織布ワイパーであって、
前記ビスコースレーヨン繊維と前記リヨセル繊維の質量比が50:50~30:70であり、
目付が25~35g/m2であり、
単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量が8.5g/m2以上である、不織布ワイパー。
【請求項2】
ウェットテーバー試験を行ったとき、表面の毛羽立ちが5回まで発生せず、
ドライテーバー試験を行ったとき、表面の毛羽立ちが3回まで発生せず、
タンブリング試験の結果が800個/m2以下であり、
保水量TWAが260g/m2以上であり、
クレム吸水度が90mm以上である、請求項1に記載の不織布ワイパー。
【請求項3】
厚みが0.18mm以上であり、
乾燥相対引張強度が10N/25mm以上であり、
湿潤相対引張強度が9N/25mm以上であり、
吸水速度が3秒以下である、請求項1に記載の不織布ワイパー。
【請求項4】
前記ビスコースレーヨン繊維と前記リヨセル繊維がスパンレース法を用いて交絡されている、請求項1に記載の不織布ワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、不織布ワイパーに関する。特に、クリーンエリア等の低発塵性を必要とする環境で使用される低発塵性不織布ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、不織布で作られたワイパーが、クリーンエリア等の低発塵性を必要とする環境で使用されている。不織布ワイパーは、繊維素材、製法等によって強度、発塵性、吸水性、吸油性等の品質特徴を付与することができる。これまでは半導体産業等の限定的な分野でのみ製造環境のクリーン化が行われていたが、近年、化粧品、医療品、食品等の様々な分野でクリーン環境の導入が行われている。様々な拭き取り環境に対応するため、不織布ワイパーの繊維素材、配合割合、配向等の工夫が施されている。
【0003】
不織布ワイパーは、例えば、天然繊維(セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、リヨセル等)と合成繊維(PET、PP、PE等)の短繊維とを用い、湿式法又はスパンレース法等で接合して製造されている。特許文献1には、ビスコースレーヨン短繊維を含む不織布ワイパーが記載されている。特許文献2には、パルプ繊維、レーヨン、リヨセル等の再生繊維及び複合合成繊維を含む組合せウェブとスパンボンド法で得たスパンボンドウェブとを積層して一体に形成してなる不織布ワイパーが記載されている。しかし、特許文献1及び特許文献2には、ビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維を組み合わせた不織布ワイパーは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-39841号公報
【特許文献2】特開2019-39116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビスコースレーヨン繊維は、コストが安価であり、吸水性が高いため、ビスコースレーヨン繊維を使用する低発塵性不織布ワイパーが開発されている。しかし、ビスコースレーヨン繊維は、吸水性が高いが、乾燥強度及び湿潤強度が共に低い。それらの強度の改善のために、合成繊維(PET、熱融着繊維等)を配合すれば、吸水性が著しく低下する。また、リヨセル繊維は、コストが高く、吸水性もビスコースレーヨン繊維よりも低い。
吸水性を相対的に高めるために、目付を高くすると、コストが高くなり、また後述の比較例5の通り、ゴワゴワ感(柔らかさ)及び発塵性の評価が悪化する。
【0006】
本願発明の課題は、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲の目付とし、特定の質量比でビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維を用いて不織布ワイパーを調製したところ、意外にも優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが得られることを見出し、本願発明を完成した。すなわち、本願発明は以下の通りである。
【0008】
[1] ビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維からなる不織布ワイパーであって、
前記ビスコースレーヨン繊維と前記リヨセル繊維の質量比が50:50~30:70であり、
目付が25~35g/m2であり、
単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量が8.5g/m2以上である、不織布ワイパー。
【0009】
[2] ウェットテーバー試験を行ったとき、表面の毛羽立ちが5回まで発生せず、
ドライテーバー試験を行ったとき、表面の毛羽立ちが3回まで発生せず、
タンブリング試験の結果が800個/m2以下であり、
保水量TWAが260g/m2以上であり、
クレム吸水度が90mm以上である、[1]に記載の不織布ワイパー。
【0010】
[3] 厚みが0.18mm以上であり、
乾燥相対引張強度が10N/25mm以上であり、
湿潤相対引張強度が9N/25mm以上であり、
吸水速度が3秒以下である、[1]又は[2]に記載の不織布ワイパー。
[4] 前記ビスコースレーヨン繊維と前記リヨセル繊維がスパンレース法を用いて交絡(接合)されている、[1]~[3]のいずれかに記載の不織布ワイパー。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によって、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】不織布ワイパーの製造方法の一実施形態を模式的に示す側面図である。
【
図2】ドライテーバー試験後の不織布ワイパーの表面状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<不織布ワイパー>
本願発明の不織布ワイパーは、ビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維からなる不織布ワイパーであって、前記ビスコースレーヨン繊維と前記リヨセル繊維の質量比が50:50~30:70であり、目付が25~35g/m2であり、単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量が9g/m2以上である、不織布ワイパーである。本願発明の不織布ワイパーは、優れた吸水性と高い表面強度とをバランス良く併せ持ち、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーであり、各種工業分野において清拭用のワイパーとして好適に使用できる。
【0014】
(ビスコースレーヨン繊維)
ビスコースレーヨン繊維とは、例えば、ビスコース法に従って、セルロースを化学的に処理して、分散・溶解したビスコースを紡糸して作製した再生セルロース繊維である。比較的安価であり、吸湿性・染色性が良いとの特性を有する。ビスコースレーヨン繊維の平均繊維長は、好ましくは34~42mmが挙げられ、より好ましくは36~40mmが挙げられる。ビスコースレーヨン繊維の平均繊度は、好ましくは1.00~2.40dtexが挙げられ、より好ましくは1.50~1.90dtexが挙げられる。ビスコースレーヨン繊維の平均繊維長及び平均緯度がこれらの範囲に含まれることで、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0015】
(リヨセル繊維)
リヨセル繊維とは、例えば、誘導体化というプロセスを経由せずに、セルロースそのものを溶剤に溶解させた溶液を紡糸して得られる再生セルロースである。リヨセル繊維の平均繊維長は、好ましくは34~42mmが挙げられ、より好ましくは36~40mmが挙げられる。リヨセル繊維の平均繊度は、好ましくは1.00~2.40dtexが挙げられ、より好ましくは1.50~1.90dtexが挙げられる。リヨセル繊維の平均繊維長及び平均緯度がこれらの範囲に含まれることで、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0016】
(他の繊維)
本願発明の不織布ワイパーは、ビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維からなるが、本願発明の効果を奏する限り、他の繊維を含んでも良い。
他の繊維としては、例えば、合成繊維が挙げられるが、これに限定されるものではない。合成繊維としては、融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル等のポリアクリル系繊維、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系繊維等が挙げられる。合成繊維等の他の繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。他の繊維の含有量としては、例えば、不織布ワイパーに対して、10質量%以下が挙げられ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下が挙げられる。特に好ましくは、他の繊維が含まれない。
【0017】
本願発明の不織布ワイパーにおける前記ビスコースレーヨン繊維と前記リヨセル繊維の質量比は、50:50~30:70である。好ましくは47:53~33:67が挙げられ、より好ましくは44:56~36:64が挙げられ、更に好ましくは42:58~38:62が挙げられる。これらの質量比であることで、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが提供される。質量比が上記の範囲より高い(リヨセル繊維の含有量が低い)と、発塵性の評価が顕著に低下する(参照,比較例4)。質量比が上記の範囲より低い(リヨセル繊維の含有量が高い)と、使用感、吸水性能、ゴワゴワ感及び単位面積当たりのリヨセル量(コストの指標)の評価が顕著に低下する(参照,比較例3)。
【0018】
本願発明の不織布ワイパーの目付(坪量)は、25~35g/m2の範囲である。好ましくは27~34g/m2の範囲が挙げられ、より好ましくは28~33g/m2の範囲が挙げられる。目付が上記の範囲にあることで、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが提供される。目付が25g/m2未満では、耐摩耗性が低下し、クレム吸水度が低く、使用感の評価が劣る(参照,比較例6)。目付が35g/m2を超えると、ゴワゴワ感が強く、発塵性の評価が顕著に低下する(参照,比較例5)。
【0019】
本願発明の不織布ワイパーにおける単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量は、8.5g/m2以上である。好ましくは9g/m2以上が挙げられ、より好ましくは9.5g/m2以上が挙げられ、更に好ましくは10g/m2以上が挙げられ、更により好ましくは10.5g/m2以上が挙げられる。単位面積当たりの質量が上記の範囲にあることで、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが提供される。単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量が8.5g/m2未満であると、保水量TWAが低く、点滴吸水度が長くなり、使用感及び吸水性能の評価が劣るとの問題がある(参照,比較例1、2と6)。
【0020】
本願発明の不織布ワイパーの厚みは、例えば0.13mm以上が挙げられ、好ましくは0.15mm以上が挙げられ、より好ましくは0.18mm以上が挙げられ、更に好ましくは0.2mm以上が挙げられ、更により好ましくは0.22mm以上が挙げられる厚みを上記の範囲にあることで、優れた吸水性と高い表面強度を有し、コストが安価である低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0021】
<不織布ワイパーの物性>
本願発明の不織布ワイパーは、好ましくは、実施例に記載する、ウェットテーバー試験(回)、ドライテーバー試験(回)、タンブリング試験(個/1枚)、保水量TWA(g/m2)、及びクレム吸水度(mm)の測定方法で測定した結果、以下の特性を有する。
・ウェットテーバー試験を行ったとき、表面の毛羽立ちが5回まで発生しない
・ドライテーバー試験を行ったとき、表面の毛羽立ちが3回まで発生しない
・タンブリング試験の結果が800個/m2以下である
・保水量TWAが260g/m2以上である
・クレム吸水度が90mm以上である
【0022】
本願発明の不織布ワイパーは、更に好ましくは、実施例に記載する、乾燥相対引張強度(N/25mm)、湿潤相対引張強度(N/25mm))、及び点滴吸水度(秒)の測定方法で測定した結果、以下の特性を有する。
・乾燥相対引張強度が10N/25mm以上である
・湿潤相対引張強度が9N/25mm以上である
・吸水速度が3秒以下である
【0023】
(ウェットテーバー試験(回))
本願発明の不織布ワイパーのウェットテーバー試験における表面の毛羽立ちが発生しない回数としては、例えば5回、好ましくは6回、より好ましくは7回、更に好ましくは8回、更により好ましくは9回が挙げられる。ウェットテーバー試験における表面の毛羽立ちが発生しない回数が上記の範囲に含まれることで、優れた使用感及び高い表面強度を有する低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0024】
(ドライテーバー試験(回))
本願発明の不織布ワイパーのドライテーバー試験における表面の毛羽立ちが発生しない回数としては、例えば3回、好ましくは4回、より好ましくは5回が挙げられる。ドライテーバー試験における表面の毛羽立ちが発生しない回数が上記の範囲に含まれることで、優れた使用感及び高い表面強度を有する低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0025】
(タンブリング試験(個/1枚))
本願発明の不織布ワイパーのタンブリング試験の結果としては、好ましくは800個/m2以下、より好ましくは700個/m2以下、更に好ましくは600個/m2以下、更により好ましくは500個/m2以下、特に好ましくは400個/m2以下が挙げられる。タンブリング試験の結果が上記の範囲に含まれることで、優れた低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0026】
(保水量TWA(g/m2))
本願発明の不織布ワイパーの保水量TWAとしては、例えば250g/m2以上、好ましくは260g/m2以上、より好ましくは270g/m2以上、更に好ましくは280g/m2以上、更により好ましくは290g/m2以上、特に好ましくは300g/m2以上が挙げられる。保水量が上記の範囲に含まれることで、優れた吸水性と高い表面強度を有する低発塵性不織布ワイパーが提供される。保水量が250g/m2未満であると、拭き取り性、使用感及び給水性能が低下する。
【0027】
(クレム吸水度(mm))
本願発明の不織布ワイパーのクレム吸水度としては、好ましくは90mm以上、より好ましくは100mm以上、更に好ましくは120mm以上、更により好ましくは140mm以上が挙げられる。クレム吸水度が上記の範囲に含まれることで、優れた吸水性を有する不織布ワイパーが提供される。
【0028】
(乾燥相対引張強度(N/25mm))
本願発明の不織布ワイパーの乾燥相対引張強度としては、例えば9N/25mm以上、好ましくは10N/25mm以上、より好ましくは11N/25mm以上が挙げられる。乾燥相対引張強度が上記の範囲に含まれることで、高い表面強度を有する低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0029】
(湿潤相対引張強度(N/25mm))
本願発明の不織布ワイパーの湿潤相対引張強度としては、例えば、8N/25mm以上、好ましくは9N/25mm以上、より好ましくは9.5N/25mm以上、更に好ましくは10N/25mm以上が挙げられる。湿潤相対引張強度が上記の範囲に含まれることで、高い表面強度を有する低発塵性不織布ワイパーが提供される。
【0030】
(点滴吸水度(秒))
本願発明の不織布ワイパーの点滴吸水度としては、好ましくは4秒以下、より好ましくは3秒以下、更に好ましくは2秒以下、更により好ましくは1.5秒以下が挙げられる。吸水速度が上記の範囲に含まれることで、優れた吸水性を有する不織布ワイパーが提供される。
【0031】
<不織布ワイパーの製造方法>
本願発明の不織布ワイパーは、例えば、従来公知のスパンレース不織布の製造方法に従って作製することができる。このように作製されるスパンレース不織布は好ましい。
図1に、ウェブ作製工程と、水流交絡工程と、乾燥工程と、を含むスパンレース不織布の製造方法の一実施形態を示す。
【0032】
ウェブ作製工程では、ビスコースレーヨン繊維、リヨセル繊維、及び必要に応じて他の繊維の各所定量をカード機10に通すことで、繊維ウェブを得る。得られた繊維ウェブは、水流交絡工程に搬送される。
【0033】
水流交絡工程では、繊維ウェブに対して上方のほぼ垂直な方向に配置されたウォータージェットノズル11から高圧水流を噴射し、繊維ウェブ内で各繊維を交絡させる。本実施態様においてウォータージェットノズル11は4本であるが、本実施形態に限定されず、任意の本数とすることができる。ここで、ウォータージェットノズル11の穴直径φは、例えば、0.06mm以上0.15mm以下の範囲、又は0.10mm以上0.12mm以下の範囲である。また、隣り合う2つのウォータージェットノズル11の間隔は例えば0.4mm以上1.0mm以下の範囲である。また、水流交絡処理の水圧は、繊維ウェブの坪量等に応じて設定され、例えば、1MPa以上30MPa以下の範囲である。こうして水流交絡が施され、各繊維が絡み合った繊維ウェブが得られ、この繊維ウェブは乾燥工程に搬送される。
【0034】
乾燥工程では、前述の繊維同士が絡み合った繊維ウェブを乾燥機12内にて乾燥し、本願発明の不織布ワイパーをスパンレース不織布として得る。所定量のビスコースレーヨン繊維、リヨセル繊維、及び必要に応じて他の繊維を用いると共に、ウォータージェットノズル11の穴直径φ、ウォータージェットノズル11の間隔、及び水流交絡処理の水圧をそれぞれ前述の範囲にすることで、本願発明の所定の特性を有するスパンレース不織布を得ることができる。ここで、乾燥条件は特に限定されないが、例えば、80℃以上180℃以下の温度条件で1分以上20分以下の範囲で乾燥を実施すればよい。さらに80℃以上180℃以下の温度条件で熱プレスパート(熱カレンダー等)を実施するのが好ましい。
【実施例0035】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本願発明を更に具体的に説明する。
【0036】
(実施例1~5及び比較例1~6)
ビスコースレーヨン繊維、リヨセル繊維、及び必要に応じて合成繊維(PET繊維)を表1に示す含有量(質量部)を用い、スパンレース法を用いて不織布を作製し、実施例1~5及び比較例1~6の不織布ワイパーを製造した。
ビスコースレーヨン繊維、リヨセル繊維、及びPET繊維は、以下のものを用いた。
ビスコースレーヨン繊維:平均繊維長38mm,平均繊度1.70dtex
リヨセル繊維 :平均繊維長38mm,平均繊度1.67dtex
PET繊維 :平均繊維長51mm,平均繊度1.56dtex
【0037】
【0038】
実施例1~5及び比較例1~6の不織布ワイパーを、以下に示す測定方法を用いて評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
<測定方法>
(目付(g/m2))
JIS P 8124に準拠して測定した。
【0040】
(ウェットテーバー試験(回))
テーバー形摩耗試験機((株)東洋精器製作所製、商品名:Rotary Abrasion Tester TS-2)を使用し、JIS L1096に規定の織物及び編物の生地試験方法に準拠して、摩擦輪H-18を用い、湿潤状態の不織布を試験したときの値(回数)を用いた。
【0041】
(ドライテーバー試験(回))
テーバー形摩耗試験機((株)東洋精器製作所製、商品名:Rotary Abrasion Tester TS-2)を使用し、その上部の所定箇所に2個の摩耗輪:CS-0/S-32(Rubber)を対向するように取り付け、試料(不織布ワイパー)を2個の摩耗輪の間に挟み込み、2個の摩耗輪を所定の回数で回転させ、試料(不織布ワイパー)の2個の摩耗輪との接触面を目視観察し、毛羽立ちが生じるまでの回数を測定した。
【0042】
(タンブリング試験(個/1枚))
JIS B 9923に準拠して測定した。
【0043】
(保水量TWA(g/m2))
不織布を75mm×75mmの正方形に切断してサンプルを作製し、乾燥重量(W1)を測定した。次に、このサンプルを蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態(100%RH)の容器中で、サンプルの1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態で吊るし、30分放置して重量(W2)を測定した。そして、測定値(W2-W1)をサンプル1m2当たりの保水量(g/m2)に換算した。
【0044】
(クレム吸水度(mm))
JIS P 8141に準拠して測定した。
【0045】
(厚み(mm))
シックネスゲージ(尾崎製作所製、ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料(不織布ワイパー1プライ)を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。測定は10回繰り返して平均値を求めた。
【0046】
(乾燥相対引張強度(N/25mm)及び湿潤相対引張強度(N/25mm))
JIS P 8113及び8135に基づいて、乾燥時と湿潤時の縦横の引張強度を測定した。
乾燥相対引張強度(N/25mm)は、乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTとのGMT(積の平方根)である。
湿潤相対引張強度(N/25mm)は、湿潤時のMD方向の引張強度DMDTと湿潤時のCD方向の引張強度DCDTとのGMT(積の平方根)である。
【0047】
(点滴吸水度(秒))
JIS L1907に規定された吸水速度試験に準拠し、0.1mlの水滴が試験片の表面に達したときから、試験片の鏡面反射が消えるまでの時間(秒)を測定して求めた。
【0048】
<評価基準>
(評価1)使用感(拭き取り易さ)
モニター10名により、不織布で汚れなどの対象物を拭き取った時の拭き取り易さを、以下の5段階で評価した。
5:段階3より優れている
4:段階3よりやや優れている
3:使用上、柔軟性と吸水能力が共に問題なく、拭き心地が良い
2:段階3よりやや劣っている
1:段階3より劣っている
【0049】
(評価2)吸水性能
モニター10名により、水分を拭き取った時の吸水能力を、以下の5段階で官能評価した。
5:段階3より優れている
4:段階3よりやや優れている
3:使用上、吸水能力(吸水速度と吸水量)が問題ない
2:段階3よりやや劣っている
1:段階3より劣っている
【0050】
(評価3)強度(破れ易さ)
乾燥相対引張強度と湿潤相対引張強度のGMT(積の平方根)を求めて、以下の5段階で官能評価した。
5:12以上
4:10以上、12未満
3:8以上、10未満
2:6以上、8未満
1:6未満
【0051】
(評価4)ゴワゴワ感(柔らかさ)
モニター10名により、不織布ワイパーの触感を、以下の5段階で評価した。
5:段階3より優れている
4:段階3よりやや優れている
3:使用上、柔らかさと硬さのバランスが取れており、柔軟性があり、ゴワゴワ感に問題がない
2:段階3よりやや劣っている
1:段階3より劣っている
【0052】
(評価5)発塵性
不織布の自己発塵性を評価した。JIS B 9923のタンブリング法で、250mm×250mmのサイズの不織布ワイパーを自己発塵させ、発塵させた空気10L中の粒子径0.3μm~5μmの発塵の個数をパーティクルカウンター(商品名:KC-03B、リオン(株)製)で計測した。前述のサイズの不織布ワイパー1枚当たりの発塵個数を求めた。以下の5段階で評価した。
5:発塵個数が200未満である
4:発塵個数が200以上、500未満である
3:発塵個数が500以上、800未満である
2:発塵個数が800以上、1000未満である
1:発塵個数が1000以上である
【0053】
(評価6)単位面積当たりのリヨセル量
1m2のシートを製造するのに必要なリヨセル量を、コストの指標として算出した。
5:15gsm(g/m2)未満
4:15gsm以上、20gsm未満
3:20gsm以上、25gsm未満
2:25gsm以上、30gsm未満
1:30gsm以上
【0054】
実施例1~5の不織布ワイパーは、評価1~6で示されるように、優れた使用感、吸水性能、強度、ゴワゴワ感、発塵性及び単位面積当たりのリヨセル量をバランスよく有し、各種工業分野において清拭用不織布ワイパーとして好適に使用できる。特に、評価1、2及び4の「優れた使用感、吸水性能、及びゴワゴワ感」の評価が高く、他の評価が劣っていないもの(例えば、実施例4と5等)がより好ましい。また、評価6の「単位面積当たりのリヨセル量」の評価が高く、他の評価が劣っていないもの(例えば、実施例2)がより好ましい。
【0055】
具体的には、ビスコースレーヨン繊維とリヨセル繊維の質量比に関して、50:50~30:70である実施例1~5の不織布ワイパーは、評価1~6で示される、優れた使用感、吸水性能、強度、ゴワゴワ感、発塵性及び単位面積当たりのリヨセル量を有する。質量比が上記の範囲より高い(リヨセル繊維の含有量が低い)比較例4では、発塵性の評価が顕著に低下する。質量比が上記の範囲より低い(リヨセル繊維の含有量が高い)比較例3では、使用感、吸水性能、ゴワゴワ感及び単位面積当たりのリヨセル量(コストの指標)の評価が顕著に低下する。
【0056】
不織布ワイパーの目付(坪量)に関して、25~35g/m2の範囲である実施例1~5の不織布ワイパーは、評価1~6で示される、優れた使用感、吸水性能、強度、ゴワゴワ感、発塵性及び単位面積当たりのリヨセル量を有する。目付が25g/m2未満である比較例6では、耐摩耗性が低下し、クレム吸水度が低く、使用感の評価が劣る。目付が35g/m2を超える比較例5では、ゴワゴワ感が強く、発塵性の評価が顕著に低下する。
【0057】
不織布ワイパーにおける単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量が8.5g/m2以上である実施例1~5の不織布ワイパーは、評価1~6で示される、優れた使用感、吸水性能、強度、ゴワゴワ感、発塵性及び単位面積当たりのリヨセル量を有する。単位面積当たりのビスコースレーヨン繊維の質量が8.5g/m2未満である比較例1、2と6では、保水量TWAが低く、点滴吸水度が長くなり、使用感及び吸水性能の評価が劣るとの問題がある。保水量TWAが低く、点滴吸水度が長くなり、使用感及び吸水性能の評価が劣るとの問題がある。
【0058】
以上、本願発明を、実施形態を用いて説明したが、本願発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた実施形態も本願発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。