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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035484
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】羽根車、送風機及び空調機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F04D29/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139969
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 健
(72)【発明者】
【氏名】守屋 大志
(72)【発明者】
【氏名】石田 有賀里
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AB12
3H130AB26
3H130AB45
3H130AC11
3H130BA66C
3H130EA06C
3H130EB03C
3H130EB04C
3H130EB05C
(57)【要約】
【課題】送風効率の低下を抑制したり、熱交換性能の低下を抑制させたりすることができる羽根車及び送風機を提供する。
【解決手段】空気の吸込み口33を形成し、環状の側板32と、円盤状の主板31と、軸線Xの周りに所定間隔で配置された複数の翼40と、を備え、各翼40の翼面は、翼幅方向において、翼厚変化面43b、主板側面43a及び側板側面43cを有し、翼厚変化面43bは、翼厚変化面43bよりも主板31側の翼厚が翼厚変化面43bよりも側板32側の翼厚よりも厚くなるように、翼幅方向における翼面の軸線Xに対する角度が主板側面43a及び側板側面43cの角度に対して変化している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を回転中心とする羽根車であって、
空気の吸込み口を形成し、前記軸線を中心とした環状の側板と、
前記側板に対向して設けられ、前記軸線を中心とした円盤状の主板と、
前記側板と前記主板との間において、前記軸線の方向に沿った翼幅を有し、前記軸線の周りに所定間隔で配置された複数の翼と、
を備え、
各前記翼の翼面は、翼幅方向において、翼厚変化面、該翼厚変化面の前記主板側に接続された主板側面及び前記翼厚変化面の前記側板側に接続された側板側面を有し、
前記翼厚変化面は、該翼厚変化面よりも前記主板側の翼厚が前記翼厚変化面よりも前記側板側の翼厚よりも厚くなるように、前記翼幅方向における前記翼面の前記軸線に対する角度が前記主板側面及び前記側板側面の角度に対して変化している、
羽根車。
【請求項2】
前記翼厚変化面は、前記軸線に対して略垂直な面とされている、
請求項1に記載の羽根車。
【請求項3】
前記翼面のうち負圧面は、前記翼幅方向において連続した滑らかな面とされている、
請求項1又は2に記載の羽根車。
【請求項4】
前記翼幅方向において前記側板側の前記翼の端部の位置を0%として前記主板側の前記翼の端部の位置を100%としたとき、前記翼厚変化面は、25%以上75%以下の範囲に位置している、
請求項1又は2に記載の羽根車。
【請求項5】
前記翼厚変化面は、前記翼幅方向に沿って前記翼面の複数箇所に設けられている、
請求項1又は2に記載の羽根車。
【請求項6】
前記翼厚変化面は、前記翼の前縁から後縁にかけて前記側板側から前記主板側に傾斜している、
請求項1又は2に記載の羽根車。
【請求項7】
請求項1に記載の羽根車と、
前記羽根車を前記軸線の周りに回転させる駆動部と、
を備えている、
送風機。
【請求項8】
請求項7に記載の送風機と、
熱交換器と、
を備えている、
空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、羽根車、送風機及び空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシロッコファンの羽根車において、吸込み口が形成された側板側から主板側にかけて翼の断面形状を同一の形状にした場合、翼の側板側と主板側との流れの角度の差によって、翼面から気流がはく離することがある。はく離が生じた場合、吐出風量が主板側に偏ったり、騒音が発生したり、送風効率が低下したりする。
【0003】
ここで、特許文献1には、はく離を防止するために、翼の主板側と側板側とで出口角度を異ならせる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6415741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成を採用したとしても、吐出風量が主板側に偏る現象は改善されない可能性がある。
【0006】
吐出風量が主板側に偏った場合、送風効率が低下する。また、羽根車を収容するケーシング内における流速にも偏りが生じるので、ケーシングからの吐出風量にも偏りが生じて、熱交換性能が低下する。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、送風効率の低下を抑制したり、熱交換性能の低下を抑制させたりすることができる羽根車、送風機及び空調機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の羽根車、送風機及び空調機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る羽根車は、軸線を回転中心とする羽根車であって、空気の吸込み口を形成し、前記軸線を中心とした環状の側板と、前記側板に対向して設けられ、前記軸線を中心とした円盤状の主板と、前記側板と前記主板との間において、前記軸線の方向に沿った翼幅を有し、前記軸線の周りに所定間隔で配置された複数の翼と、を備え、各前記翼の翼面は、翼幅方向において、翼厚変化面、該翼厚変化面の前記主板側に接続された主板側面及び前記翼厚変化面の前記側板側に接続された側板側面を有し、前記翼厚変化面は、該翼厚変化面よりも前記主板側の翼厚が前記翼厚変化面よりも前記側板側の翼厚よりも厚くなるように、前記翼幅方向における前記翼面の前記軸線に対する角度が前記主板側面及び前記側板側面の角度に対して変化している。
【0009】
また、本開示の一態様に係る送風機は、上記の羽根車と、前記羽根車を前記軸線の周りに回転させる駆動部と、を備えている。
【0010】
また、本開示の一態様に係る空調機は、上記の送風機と、熱交換器と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、送風効率の低下を抑制したり、熱交換性能の低下を抑制させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る送風機が搭載された空調機の斜視図である。
図2図1に示す切断線II-IIにおける空調機の横断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る送風機が搭載された空調機の背面図である。
図4図2に示す切断線IV-IVにおける送風機の縦断面図である。
図5】本開示の一実施形態に係る羽根車の斜視図である。
図6図5に示す矢印Aの方向から見た羽根車の側面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る羽根車を内側から見た部分的な斜視図である。
図8図6に示す羽根車のB部の拡大図である。
図9図8に示す切断線IX-IXにおける翼の縦断面図である。
図10】翼と翼との間の隙間が図示された翼の縦断面図である。
図11図8に示す切断線IX-IXにおける翼の縦断面図の他の例である。
図12】本開示の一実施形態に係る羽根車を内側から見た部分的な斜視図である。
図13図6に示す羽根車のB部の変形例2における拡大図である。
図14図13に示す切断線XIV-XIVにおける翼の縦断面図である。
図15】変形例3に係る羽根車の翼を正圧面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係る羽根車及び送風機について、図面を参照して説明する。
【0014】
[送風機について]
送風機20は、羽根車30が回転することによって空気を送り出すシロッコファンであり、例えば天井埋込ダクト形の空調機1に搭載される。
【0015】
図1から図3に示すように、空調機1は、筐体11、熱交換器13及び送風機20を備えている。
【0016】
筐体11は、例えば直方体形状に構成された外箱であり、内部の空間に熱交換器13及び送風機20が収容・設置されている。
筐体11の正面には吹出し口12が開口しており、送風機20から送り出され熱交換器13を通過した空気が吹き出されるように構成されている。
【0017】
熱交換器13は、冷媒と空気との間で熱交換を行う機器であり、筐体11の長手方向に沿って延在している。
熱交換器13は、筐体11の内部において、吹出し口12側(筐体11の正面側)に配置されている。
【0018】
送風機20は、前述の通り、羽根車30が回転することによって空気を送り出す機器である。
送風機20は、筐体11の内部において、熱交換器13の背面側に配置されている。このように配置することで、送風機20から送り出された空気が熱交換器13を通過することになる。
送風機20は、熱交換器13の長手方向に沿って複数台設置されてもよく、図3の場合、3台の送風機20が設置されている。
【0019】
送風機20は、羽根車30、渦巻ケーシング21、電動モータ22及び駆動軸23を有している。
【0020】
羽根車30は、複数の翼40が軸線X周りに間隔を空けて配置されることで軸線Xを中心とする略筒状の外形状をなした部品である。
羽根車30の詳細な構成については後述する。
【0021】
渦巻ケーシング21は、羽根車30を収容する、既知のスクロール形状をした容器である。
図2及び図4に示すように、渦巻ケーシング21には、ベルマウス21a及び吐出し口21bが形成されている。渦巻ケーシング21の外部にある空気は、羽根車30が回転することによって、ベルマウス21aを介して整流されながら取り込まれる。また、回転する羽根車30から吐出した空気は、渦巻ケーシング21の内部で整流・昇圧されて吐出し口21bから送り出される。
【0022】
図2及び図3に示すように、電動モータ22は、駆動軸23を介して羽根車30を軸線X周りに回転させるための機器である。
駆動軸23は、後述する羽根車30の主板31と接続されている。これによって、電動モータ22と接続された駆動軸23の駆動力(回転)が羽根車30に伝達される。
なお、電動モータ22は、羽根車30と1対1で対応している必要はなく、1つの電動モータ22で2つの羽根車30を回転させてもよい。この場合、例えば、電動モータ22の両サイドに羽根車30が配置されることになる。また、1つの電動モータ22で3つ以上の羽根車30を回転させてもよい。
【0023】
[羽根車の詳細について]
図5から図7に示すように、羽根車30は、主板31、側板32及び複数の翼40を備えており、軸線Xを中心とする略筒状の外形状をなしている。
羽根車30は、軸線Xを回転中心として、例えば図5図6に示した矢印Rの方向に回転する。
羽根車30は、樹脂製や金属製とされ、例えば、射出成型によって一体的に成形されてもよいし、複数の部品を組み立てることで構成してもよい。
【0024】
ここで、図5に示した羽根車30は、主板31の両サイドに2つの側板32を備えたタイプとされているが、本発明に係る羽根車30は、このタイプに限定されることはなく、例えば1つの側板32を備えたタイプでもよい。
【0025】
主板31は、軸線Xを中心とした円盤状の部分である。
図5及び図6に示すように、主板31の中心には、電動モータ22と接続された駆動軸23が接続されている。このとき、軸線Xは、駆動軸23の回転軸線と一致している。
【0026】
側板32は、軸線Xを中心とした環状の部分である。
側板32は、主板31から軸線X方向に離間するとともに、主板31と平行に対向するように配置されている。
側板32は、ベルマウス21aと対向して配置されており、ベルマウス21aから渦巻ケーシング21の内部に取り込まれた空気は、吸込み口33(側板32の内側の領域)から羽根車30の内側領域(翼40で囲われた領域)に流れ込む。すなわち、側板32は、羽根車30における空気の吸込み口33を画定している。
【0027】
図5から図7に示すように、翼40は、主板31の外周縁と側板32との間において軸線Xと平行に配置されており、翼幅方向WDが軸線Xの方向に沿っている。ここでは、翼幅方向WDにおける主板31側の翼端を基端41として、翼幅方向WDにおける側板32側の翼端を先端42とする。
翼40は、軸線X周りに所定の間隔(隙間G)を空けて配置されている。隙間Gは、羽根車30の内側(全ての翼40で囲われた内側領域)に流れ込んだ空気を羽根車30の外部に吐出させるための開口である。
【0028】
図6から図9に示すように、翼40は、翼面として正圧面43及び負圧面44を有しており、その横断面形状が流線形状とされている。
ここでいう「横断面」とは、軸線Xと直交する面における断面を意味する。
【0029】
なお、正圧面43は、羽根車30の回転方向に対して前方に位置する翼面である。
また、負圧面44は、羽根車30の回転方向に対して後方に位置する翼面である。
【0030】
負圧面44は、例えば、翼幅方向WDにおいて連続した滑らかな面であり、翼幅方向WDにおいて軸線Xと略平行とされている。
【0031】
正圧面43は、例えば、基端側面43a(主板側面)、翼厚変化面43b及び先端側面43c(側板側面)を有しており、これらが接続されることで1つの正圧面43を形成している。
【0032】
基端側面43aは、翼40の基端41側の領域に位置する面であり、一端が主板31と接続され、他端が翼厚変化面43bの縁と接続されている。
基端側面43aは、例えば、翼幅方向WDにおいて軸線Xと略平行な面とされている。そのため、基端側面43aに対応する翼40の部分(範囲)は、翼幅方向WDにおいて翼厚が略一定とされている。
【0033】
翼厚変化面43bは、翼40の略中央の領域に位置する面であり、一端が基端側面43aの縁と接続され、他端が先端側面43cの縁と接続されている。
翼厚変化面43bは、主板31から側板32に向かう翼幅方向WDにおいて、翼40の翼厚を変化させる面である。翼厚変化面43bの詳細については後述する。
【0034】
先端側面43cは、翼40の先端42側の領域に位置する面であり、一端が翼厚変化面43bの縁と接続され、他端の外縁が側板32と接続されている。
先端側面43cは、例えば、翼幅方向WDにおいて軸線Xと略平行な面とされている。そのため、先端側面43cに対応する翼40の部分(範囲)は、翼幅方向WDにおいて翼厚が略一定とされている。ただし、その翼厚は、基端側面43aに対応する翼40の部分の翼厚よりも薄い。
【0035】
[翼厚変化面について]
図7から図9に示すように、翼厚変化面43bは、翼幅方向WDにおける軸線Xに対する角度が、基端側面43a及び先端側面43cの角度(翼幅方向WDにおける軸線Xに対する角度)に対して変化している面である。
例えば、基端側面43a及び先端側面43cが翼幅方向WDにおいて軸線Xと略平行な面の場合、翼厚変化面43bは、翼幅方向WDにおいて軸線Xと略平行な面ではなく、翼幅方向WDにおいて軸線Xに対して傾斜した面である。
【0036】
これによって、主板31から側板32に向かう翼幅方向WDにおいて、翼40の翼厚が変化することになる。具体的には、先端側面43cに対応する翼40の部分の翼厚が、基端側面43aに対応する翼40の部分の翼厚よりも薄くなる。つまり、軸線Xの方向から翼40を見たとき、先端側面43cに対応する翼40の部分の横断面形状は、基端側面43aに対応する翼40の部分の横断面形状の範囲に収まることになる。
なお、ここでいう「翼厚」とは、例えば、最大翼厚や同一の縦断面における翼厚を意味している。
【0037】
ここで、「(翼厚が)薄くなる」について具体例を用いて説明する。
第1の例として、先端側面43cに対応する翼40の部分の翼厚は、基端側面43aに対応する翼40の部分の翼厚に対して、50%~70%程度とされる。
第2の例として、先端側面43cは基端側面43aに対して法線方向に沿って負圧面44側にオフセットされており、オフセットの量は最大翼厚の30%~50%とされている。例えば、最大翼厚が4mmのとき、先端側面43cは一律で2mmだけオフセットされている。
【0038】
また、図10に示すように、先端側面43cに対応する翼40の部分の翼厚は基端側面43aに対応する翼40の部分の翼厚よりも薄いので、隣り合う翼40同士の隙間Gを見たとき、先端側面43cに対応する領域における隙間Gは、基端側面43aに対応する領域における隙間Gよりも大きくなる。
【0039】
翼厚変化面43bは、図9に示すように軸線Xに対して垂直な面でもよいし、図11に示すように軸線Xに対して傾斜する面でもよい。
翼厚変化面43bが軸線Xに対して垂直な面の場合、翼厚変化面43bによって正圧面43に段差が生じることになる。
図11に示すように、翼厚変化面43bが軸線Xに対して傾斜した面の場合、翼厚変化面43bによって正圧面43に勾配が生じることになる。勾配の角度θは、例えば、軸線Xにして45度以上90度以下が好ましい。なお、勾配の角度θが90度の場合は、翼厚変化面43bが軸線Xに対して垂直な面となる(図9参照)。
いずれの場合であっても、翼厚変化面43bは、側板32から主板31に向かう翼幅方向WDにおいて、正圧面43の突出部分/引っ掛かり部分となる。
【0040】
[空気の流れについて]
羽根車30が回転することで、ベルマウス21aを介して渦巻ケーシング21の内部に空気が取り込まれる。
渦巻ケーシング21の内部に取り込まれた空気は、羽根車30の吸込み口33から軸線Xの方向に沿うように羽根車30の内側領域(翼40で囲われた領域)に流れ込む。
羽根車30の内側領域に流れ込んだ空気は、環状に配置された翼40が軸線X周りに一体的に回転することによって、遠心力で各隙間Gから吐出される。
隙間Gから吐出した空気は、渦巻ケーシング21の内部で整流・昇圧されて吐出し口21bから送り出される。
【0041】
ここで、本実施形態に係る羽根車30の翼40には、翼厚変化面43bが設けられているため、空気が各隙間Gから吐出される際に、次のような流れを形成する。
【0042】
図12に示すように、軸線Xの方向に沿うように羽根車30の内側領域に流れ込んだ空気の一部は、翼40の正圧面43に沿って流れる。
このとき、正圧面43上で側板32から主板31に向かって流れる空気は、翼厚変化面43bに衝突する。その結果、空気の流れの向きが半径方向(軸線Xに対する半径方向)の外側に転向する。そのため、翼厚変化面43b近傍の領域にある隙間Gから積極的に空気が羽根車30の外部に吐出されることになる。
【0043】
また、先端側面43cに対応する領域における隙間Gは、基端側面43aに対応する領域における隙間Gよりも大きくなっているので、先端側面43cに対応する領域にある隙間Gから積極的に空気が羽根車30の外部に吐出されることになる。
反対に、基端側面43aに対応する領域における隙間Gは、先端側面43cに対応する領域における隙間Gよりも小さくなっている。このため、先端側面43cに対応する隙間Gと比較すると、流路抵抗の影響によって基端側面43aに対応する隙間Gから空気が吐出されにくいことになる。
【0044】
[翼厚変化面の変形例について]
<変形例1>
翼幅方向WDにおいて翼40の先端42の位置を0%として基端41の位置を100%としたとき、翼厚変化面43bは、25%以上75%以下の範囲、好ましくは、25%以上60%以下の範囲に設けられている。
【0045】
<変形例2>
図13及び図14に示すように、翼厚変化面43bを、翼幅方向WDに沿って正圧面43の複数箇所に設けてもよい。
図14における上方の翼厚変化面を符号43bで記載し、下方の翼厚変化面を符号43b′で記載した場合、翼厚変化面43bと翼厚変化面43b′との間の正圧面43は、中間面43dとされる。
【0046】
この場合、翼厚変化面43bを基準とした場合は、中間面43dが主板側面に相当し、先端側面43cが側板側面に相当する。一方で、翼厚変化面43b′を基準とした場合は、中間面43dが側板側面に相当し、基端側面43aが主板側面に相当する。
【0047】
なお、本変形例の場合、複数ある翼厚変化面43bのうち少なくとも1つの翼厚変化面43bが、25%以上75%以下の範囲、好ましくは、25%以上60%以下の範囲に設けられていればよい。
【0048】
<変形例3>
図15に示すように、翼厚変化面43bを、翼40の前縁46から後縁45にかけて側板32側から主板31側に傾斜させてもよい。
なお、図15に示す二点鎖線は、傾斜していない通常の状態の翼厚変化面43bである(参考のために図示)。
【0049】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
正圧面43上で側板32から主板31に向かって流れる空気は、翼厚変化面43bに衝突する。その結果、空気の流れの向きが半径方向の外側に転向する。そのため、翼厚変化面43b近傍の領域にある隙間Gから積極的に空気が羽根車30の外部に吐出されることになる。これによって、空気が吐出される領域が主板31側に偏る現象を抑制することができる。
【0050】
また、先端側面43cに対応する領域における隙間Gは、基端側面43aに対応する領域における隙間Gよりも大きくなっているので、先端側面43cに対応する領域にある隙間Gから積極的に空気が羽根車30の外部に吐出されることになる。反対に、先端側面43cに対応する隙間Gと比較すると、流路抵抗の影響によって基端側面43aに対応する隙間Gから空気が吐出されにくい。これによって、空気が吐出される領域が主板31側に偏る現象を抑制することができる。
【0051】
以上のように、空気が吐出される領域が主板31側に偏る現象を抑制することによって、羽根車30を収容する渦巻ケーシング21の内部における流速の偏りが改善され、例えば、風速の偏りに起因した旋回流の発生によって生じる送風損失を抑制して静圧効率を向上させたり、渦巻ケーシング21から熱交換器13に向かって吹き出される空気の風速分布が均一化することで熱交換性能の低下を抑制させたりすることができる。
【0052】
また、主板31側よりも側板32側の翼厚が薄いので、翼40を射出成型する際に単純な形状の型を使用して容易に軸線Xの方向に型抜きすることができる。そのため、羽根車30の製造コストを低減させることができる。
【0053】
また、翼厚変化面43bを軸線Xに対して垂直な面とすることで、空気の流れの向きを急激に転向することができる。
【0054】
また、負圧面44を翼幅方向WDにおいて連続した滑らかな面とすることで、負圧面44側に射出成型時の型抜きに必要な抜き勾配を設けることができる。
【0055】
また、翼厚変化面43bを25%以上60%以下の範囲に位置させることで、空気が吐出されやすい領域を側板32側に寄せることができる。
【0056】
また、翼厚変化面43bを翼幅方向WDに沿って正圧面43の複数個所に設けることで、例えば、羽根車30の径に対して翼幅が大きな羽根車30についても、同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、翼厚変化面43bを翼40の前縁46から後縁45にかけて側板32側から主板31側に傾斜させることで、吸込み口33から流れ込んだ空気の流れの向きを円滑に転向することができる。そのため、向きが転向された際の損失を低減することができ、静圧効率を更に向上させることができる。
また、傾斜させた分だけ翼厚変化面43bの面積(空気に触れる面積)が大きくなり、空気の流れの向きを効率的に変えることができる。
また、急な流れの向きの転向に伴う空力騒音の悪化を抑制することができる。
【0058】
また、静圧効率が向上された羽根車30によって、電動モータ22の入力を低減することができる。
【0059】
なお、翼厚変化面43bと同様の構成を負圧面44に設けてもよい。
また、軸線Xの方向から翼40を見たときに、先端側面43cに対応する翼40の部分の横断面形状が、基端側面43aに対応する翼40の部分の横断面形状に収まる範囲において、先端側面43cに対応する翼40の部分と基端側面43aに対応する翼40の部分との翼出口角度を異ならせてもよい。
【0060】
以上の通り説明した一実施形態に係る羽根車及び送風機は、例えば、以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る羽根車(30)は、軸線(X)を回転中心とする羽根車であって、空気の吸込み口(33)を形成し、前記軸線を中心とした環状の側板(32)と、前記側板に対向して設けられ、前記軸線を中心とした円盤状の主板(31)と、前記側板と前記主板との間において、前記軸線の方向に沿った翼幅を有し、前記軸線の周りに所定間隔で配置された複数の翼(40)と、を備え、各前記翼の翼面(43)は、翼幅方向(WD)において、翼厚変化面(43b)、該翼厚変化面の前記主板側に接続された基端側面(43a)及び前記翼厚変化面の前記側板側に接続された先端側面(43c)を有し、前記翼厚変化面は、該翼厚変化面よりも前記主板側の翼厚が前記翼厚変化面よりも前記側板側の翼厚よりも厚くなるように、前記翼幅方向における前記翼面の前記軸線に対する角度が前記基端側面及び前記先端側面の角度に対して変化している。
【0061】
本態様に係る羽根車によれば、翼面は、翼幅方向において、翼厚変化面、翼厚変化面の主板側に接続された基端側面及び翼厚変化面の側板側に接続された先端側面を有し、翼厚変化面は、該翼厚変化面よりも前記主板側の翼厚が前記翼厚変化面よりも前記側板側の翼厚よりも厚くなるように、翼幅方向における翼面の軸線に対する角度が基端側面及び先端側面の角度に対して変化しているので、側板に形成された吸気口から軸線の方向に沿うように流れ込んだ空気の一部が翼厚変化面に衝突することで、流れの向きが半径方向の外側に転向する。そのため、翼の先端側面に対応する領域で空気の一部を半径方向の外側に吐出させることができる。これによって、空気が吐出される領域が主板側に偏る現象を抑制することができる。
また、主板側よりも側板側の翼厚が薄くなっているので、隣り合う翼同士の隙間(G)を見たとき、側板側の隙間は大きいので空気が流れやすいのに対して、主板側の隙間は小さいので流路抵抗によって空気が流れにくくなる。これによって、空気が吐出される領域が主板側に偏る現象を抑制することができる。
以上のように、空気が吐出される領域が主板側に偏る現象を抑制することによって、羽根車を収容するケーシング(21)の内部における流速の偏りが改善され、例えば、風速の偏りに起因した旋回流の発生によって生じる送風損失を抑制して静圧効率を向上させたり、ケーシングから熱交換器(13)に向かって吹き出される空気の風速分布が均一化することで熱交換性能の低下を抑制させたりすることができる。
【0062】
また、主板側よりも側板側の翼厚が薄いので、翼を射出成型する際に単純な形状の型を使用して容易に軸線の方向に型抜きすることができる。そのため、羽根車の製造コストを低減させることができる。
【0063】
また、本開示の第2態様に係る羽根車は、第1態様において、翼厚変化面が前記軸線に対して略垂直な面とされている。
【0064】
本態様に係る羽根車によれば、翼厚変化面は、軸線に対して略垂直な面とされているので、段差面によって吸気口から流れ込んだ空気の流れの向きを急激に転向することができる。
【0065】
また、本開示の第3態様に係る羽根車は、第1態様又は第2態様において、前記翼面のうち負圧面(44)が前記翼幅方向において連続した滑らかな面とされている。
【0066】
本態様に係る羽根車によれば、負圧面は、翼幅方向において連続した滑らかな面とされているので、負圧面側に射出成型時の型抜きに必要な抜き勾配を設けることができる。
【0067】
また、本開示の第4態様に係る羽根車は、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、前記翼幅方向において前記側板側の前記翼の端部(42)の位置を0%として前記主板側の前記翼の端部(41)の位置を100%としたとき、前記翼厚変化面が25%以上60%以下の範囲に位置している。
【0068】
本態様に係る羽根車によれば、翼幅方向において側板側の翼の端部の位置を0%として主板側の翼の端部の位置を100%としたとき、翼厚変化面は、25%以上60%以下の範囲に位置しているので、空気が吐出されやすい領域を側板側に寄せることができる。
【0069】
また、本開示の第5態様に係る羽根車は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記翼厚変化面が前記翼幅方向に沿って前記翼面の複数箇所に設けられている。
【0070】
本態様に係る羽根車によれば、翼厚変化面は、翼幅方向に沿って前記翼面の複数個所に設けられているので、例えば、羽根車の径に対して翼幅が大きな羽根車についても、同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、本開示の第6態様に係る羽根車は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、前記翼厚変化面が前記翼の前縁から後縁にかけて前記側板側から前記主板側に傾斜している。
【0072】
本態様に係る羽根車によれば、翼厚変化面は、翼の前縁から後縁にかけて側板側から主板側に傾斜しているので、吸気口から流れ込んだ空気の流れの向きを円滑に転向することができる。そのため、向きが転向された際の損失を低減することができ、静圧効率を更に向上させることができる。
また、傾斜した分だけ翼厚変化面の面積(空気と接触し得る面積)が大きくなり、空気の流れの向きを効率的に変えることができる。
また、急な流れの向きの転向に伴う空力騒音の悪化を抑制することができる。
【0073】
また、本開示の第7態様に係る送風機(20)は、第1態様から第6態様のいずれかに記載の羽根車と、前記羽根車を前記軸線の周りに回転させる駆動部(22)と、を備えている。
【0074】
本態様に係る送風機によれば、上記の羽根車と、羽根車を軸線の周りに回転駆動する駆動部と、を備えているので、静圧効率が向上された羽根車によって、駆動部の入力(消費電力)を低減することができる。
【0075】
また、本開示の第8態様に係る空調機(1)は、第6態様に記載の送風機と、熱交換器(13)と、を備えている。
【0076】
本態様に係る空調機によれば、上記の送風機と、熱交換器と、を備えているので、ケーシングから熱交換器に向かって吹き出される空気の風速分布が均一化されている場合、熱交換性能の低下を抑制させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 空調機
11 筐体
12 吹出し口
13 熱交換器
20 送風機
21 渦巻ケーシング
21a ベルマウス
21b 吐出し口
22 電動モータ(駆動部)
23 駆動軸
30 羽根車
31 主板
32 側板
33 吸込み口
40 翼
41 基端(主板側の翼端)
42 先端(側板側の翼端)
43 正圧面
43a 基端側面(主板側面)
43b,43b′ 翼厚変化面
43c 先端側面(側板側面)
43d 中間面
44 負圧面
45 後縁
46 前縁
G 隙間
X 軸線
図1
図2
図3
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図5
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