(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035487
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】治療装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A61M1/36 141
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139973
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】519041389
【氏名又は名称】有限会社イーブイエフ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】内海 征夫
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077AA05
4C077CC03
4C077DD19
4C077EE01
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でチューブを密接させながら並行状態に維持できるチューブ保持部材を備えた治療装置を提供する。
【解決手段】チューブ保持部材25により、患者の体に設けた脱血口より体外へ取り出した血液を血液処理部へ送り出す動脈側チューブ16と、血液処理部で処理された血液を再度、患者の体に設けた返血口より体内に戻す静脈側チューブ26とを所定長、密接させながら並行状態を維持する。チューブ保持部材25は、脱血口と返血口の近傍において患者に密着させない状態で取付けられ、かつ、動脈側チューブ16と静脈側チューブ26を保持したまま、これらのチューブに沿って移動可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体に設けた脱血口より体外へ取り出した血液に対して血液処理部で所定の処理を施した後、該血液処理部で処理された血液を再度、患者の体に設けた返血口より体内に戻すことで所定の治療を行う治療装置であって、
前記脱血口より前記血液処理部へ血液を送り出すための第1のチューブと、
前記血液処理部で処理された血液を前記返血口へ戻すための第2のチューブと、
前記第1のチューブと前記第2のチューブとを所定長、密接させながら並行状態を維持するように保持するチューブ保持部材と、
を備え、
前記チューブ保持部材は、前記脱血口と前記返血口の近傍において患者の体に密着させない状態で取付けられ、かつ、前記第1のチューブと前記第2のチューブを保持しながら、これらのチューブに沿って移動可能に構成されていることを特徴とする治療装置。
【請求項2】
前記チューブ保持部材は、前記第1のチューブと前記第2のチューブを位置決め載置する長尺状の底面部材と、該底面部材の一方面側において、前記位置決め載置された前記第1のチューブと前記第2のチューブとを覆う長尺状の上面部材とからなることを特徴とする請求項1記載の治療装置。
【請求項3】
前記底面部材および前記上面部材それぞれの長手方向の一方端部同士が蝶着して蝶着部を構成していることを特徴とする請求項2に記載の治療装置。
【請求項4】
前記底面部材は、長手方向の一方端部から長手方向の中央部に向かって下降傾斜する第1の板状部材と、長手方向の他方端部から長手方向の中央部に向かって下降傾斜する第2の板状部材とからなり、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とが前記長手方向の中央部で接合していることを特徴とする請求項2に記載の治療装置。
【請求項5】
前記上面部材は透明性のある樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の治療装置。
【請求項6】
前記チューブ保持部材で保持された部位において前記第1のチューブを流れる血液から、前記第2のチューブを流れる血液へ生体エネルギーの移動を可能にすることを特徴とする請求項1に記載の治療装置。
【請求項7】
当該治療装置は、前記血液処理部をダイアライザー(人工腎臓)とする人工透析装置であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の治療装置。
【請求項8】
当該治療装置は、前記血液処理部を人工肺とする体外式膜型人工肺(ECMO)であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアライザー(濾過装置)を使用して人工透析等を行う治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腎不全を患った患者は、動脈側から血液を採取し、ダイアライザーにより透析を行った後、血液を静脈側へ戻す透析療法(血液透析、あるいは人工透析という)を行うことで、血液中の老廃物の除去、水分量の調整している。
【0003】
本願の出願人は、人工透析を行う治療装置(人工透析装置)として、例えば特許文献1に記載された治療装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の人工透析装置では、保持部材を使用して、人工透析者から血液を取り出し透析側に供給する取り出しチューブと、透析血液を人工透析者に戻す戻しチューブとを位置決めし、それらのチューブが収容された保持部材を固定バンドで人工透析者の腕に密着させている。
【0006】
このように透析者の腕に固定バンドで保持部材を密着させる作業は、透析者以外の者が行っても時間を要する作業であり、透析者自身で行おうとした場合には、相当の困難を伴うため他人の介助が必要となることから、透析開始時等において透析者への負担となるという課題がある。また、保持部材へのチューブの出し入れを簡単に行えないという課題もある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、血液処理部へ患者の血液を送り出すチューブと、血液処理部から患者に血液を戻すチューブとを、簡易な操作で密接させながら並行状態に維持できるチューブ保持部材を備えた治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、患者の体に設けた脱血口より体外へ取り出した血液に対して血液処理部で所定の処理を施した後、該血液処理部で処理された血液を再度、患者の体に設けた返血口より体内に戻すことで所定の治療を行う治療装置であって、前記脱血口より前記血液処理部へ血液を送り出すための第1のチューブと、前記血液処理部で処理された血液を前記返血口へ戻すための第2のチューブと、前記第1のチューブと前記第2のチューブとを所定長、密接させながら並行状態を維持するように保持するチューブ保持部材とを備え、前記チューブ保持部材は、前記脱血口と前記返血口の近傍において患者の体に密着させない状態で取付けられ、かつ、前記第1のチューブと前記第2のチューブを保持しながら、これらのチューブに沿って移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
例えば、前記チューブ保持部材は、前記第1のチューブと前記第2のチューブを位置決め載置する長尺状の底面部材と、該底面部材の一方面側において、前記位置決め載置された前記第1のチューブと前記第2のチューブとを覆う長尺状の上面部材とからなることを特徴とする。例えば、前記底面部材および前記上面部材それぞれの長手方向の一方端部同士が蝶着して蝶着部を構成していることを特徴とする。また、例えば、前記底面部材は、長手方向の一方端部から長手方向の中央部に向かって下降傾斜する第1の板状部材と、長手方向の他方端部から長手方向の中央部に向かって下降傾斜する第2の板状部材とからなり、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とが前記長手方向の中央部で接合していることを特徴とする。さらに例えば、前記上面部材は透明性のある樹脂からなることを特徴とする。例えば、前記チューブ保持部材で保持された部位において前記第1のチューブを流れる血液から、前記第2のチューブを流れる血液へ生体エネルギーの移動を可能にすることを特徴とする。
【0010】
例えば、当該治療装置は、前記血液処理部をダイアライザー(人工腎臓)とする人工透析装置であることを特徴とする。また、例えば、当該治療装置は、前記血液処理部を人工肺とする体外式膜型人工肺(ECMO)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構造を有し、取り扱いが簡単なチューブ保持部材を備えた治療装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る血液透析装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)はチューブガイド部材へチューブを収容する前の様子を示す図であり、
図3(b)はチューブを収容した様子を示す図である。
【
図4】チューブガイド部材を短手方向に切断したときの断面図である。
【
図5】
図5(a)はチューブガイド部材の他の例の外観斜視図であり、
図5(b)は他の例に係るチューブガイド部材の断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る体外式膜型人工肺において、V-V ECMOにチューブガイド部材を使用した例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る体外式膜型人工肺において、V-A ECMOにチューブガイド部材を使用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る血液透析装置の構成を示す。
図1に示す血液透析装置1は、人工透析に使用する血液透析装置(人工透析装置)であり、人工透析者の血液を浄化する機能を有する。
【0015】
人工透析とは、患者の体外に引き出した血液をダイアライザー(人工腎臓)に流して浄化し、その浄化された血液を再び患者の体内に戻す治療をいう。このような人工透析を行うため、血液透析装置1は、患者Pの動脈Aから採取された血液を血液透析装置1に供給する動脈側回路11(動脈側の血液回路)と、血液透析装置1より透析された血液(浄化血液)を静脈Bに戻す静脈側回路21(静脈側の血液回路)とを備える。
【0016】
動脈側回路11には、動脈Aと静脈Bとを繋いだ動静脈吻合部(内シャントとも呼ばれる)Cの動脈側から血液を採取する血液ポンプ12、血液透析液との濃度差により血液から老廃物や余分な水分を濾過して除去するダイアライザー15が配置されている。動静脈吻合部Cは、
図1に示す例では、患者Pの腕の内側に形成されている。
【0017】
ダイアライザー15は、患者Pから血液ポンプ12によって動脈側回路11を介して導出された血液が流入する血液流入口14、および浄化した血液を静脈側回路21へ流出させる血液流出口23を備える。
【0018】
動脈側回路11を構成するチューブ(動脈側チューブ)16は、その一方端が患者Pの腕の血管に穿刺針を穿刺して設けた脱血口に接続され、他方端がダイアライザー15へ延びている。また、静脈側回路21を構成するチューブ(静脈側チューブ)26は、その一方端が患者Pの血管に穿刺針を穿刺して設けた返血口に接続され、他方端がダイアライザー15へ延びている。
【0019】
動脈側チューブ16と静脈側チューブ26は、動静脈吻合部Cに近い位置において、所定長Lのチューブガイド部材25に収容され、そのチューブガイド部材25の内部で互いに密着し、並行状態が維持される。
【0020】
なお、動脈側チューブ16を含む動脈側回路11、および静脈側チューブ26を含む静脈側回路21は、可撓性を有する樹脂製のチューブで構成されている。
【0021】
動脈側回路11において、血液ポンプ12とダイアライザー15との間には、動脈圧モニタ13が接続されている。また、静脈側回路21において、ダイアライザー15と、動静脈吻合部Cの静脈B側との間には、静脈圧モニタ22、気泡検知器(図示せず)が接続されている。
【0022】
ダイアライザー15には透析液監視装置30が接続されている。透析液監視装置30は、不図示の透析液供給装置より血液透析液の供給を受け、ダイアライザー15の外周面に配置された透析液流入口より透析液を供給し、透析液流出口より尿素等を含む透析液(透析排液)を回収する。
【0023】
なお、透析液監視装置30と不図示の透析液供給装置との間、ダイアライザー15より浄化した血液を流出させる血液流出口23と静脈圧モニタ22との間、および動静脈吻合部Cと血液ポンプ12との間には、それぞれ混合器(不図示)が設けられている。これらの混合器を介して、酸性水微細気泡水が供給される。
【0024】
酸性水による微細気泡水はマイナス電位に帯電する微細気泡を含有し、殺菌作用があるため、血液透析液内の細菌に吸着して殺菌し、排出することができる。
【0025】
さらに、血液流出口23と静脈圧モニタ22間の混合器には、不図示の投入液供給装置より、治療に適した薬液、ミネラル等の栄養素を主成分とした栄養液が、手動あるいは自動で投入される。
【0026】
ダイアライザー15は、血液流入口14より流入した血液に対して、内部に設けた透析膜を通じて、透析液との間で尿素、クレアチニン、尿酸等の尿毒素の除去、老廃物の除去、水分量の調整等を行う。
【0027】
上述した微細気泡水のマイナス電位により吸着した老廃物や不活化した細菌は、ダイアライザー15において血液から排出される。ダイアライザー15で浄化された血液は、血液流出口23を介して静脈側回路21へ流入する。
【0028】
次に、本実施形態に係る血液透析装置において、動脈側チューブと静脈側チューブを収容するとともに、チューブ相互の位置決めをするためのチューブガイド部材(チューブ保持部材)について詳細に説明する。
【0029】
図2は、チューブガイド部材25の外観斜視図である。チューブガイド部材25は、長手方向の寸法Lが例えば20cm、幅方向(短手方向)の寸法Wが例えば1.5~2cmで、長手方向の両端部に開口部51,53を設けた中空状の長尺部材である。
【0030】
チューブガイド部材25は、動脈側チューブ16と静脈側チューブ26の一部を収容し、載置する底部材43と、これらのチューブが載置された状態の底部材43の上部を覆う蓋部材41とからなる。底部材43は、例えばポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリエチレン(PE)等の樹脂からなる。蓋部材41は、例えばアクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)等の透明樹脂からなる。
【0031】
図3(a),(b)は、チューブガイド部材25の使用例を示している。
図3(a)に示すように、チューブガイド部材25の底部材43と蓋部材41は、それぞれの長手方向の一方端部同士が蝶着して蝶着部46を構成している。また、底部材43と蓋部材41の長手方向の他方端部同士を着脱可能に接合するために接合部47を設けた構成を有する。
【0032】
チューブガイド部材25において、蝶着部46が蝶番となって底部材43と蓋部材41とを繋ぎ合わせているので、蝶着部46を軸として蓋部材41を回転可能に動かして、載置されたチューブとともに底部材43を覆うことができる。
【0033】
チューブガイド部材25を使用する場合、最初に使用者(透析者)は、動脈側回路11を構成する動脈側チューブ16の一端を、透析者に設けた脱血口を介して動脈Aに接合し、静脈側回路21を構成する静脈側チューブ26の一端を、透析者に設けた返血口を介して静脈Bに接合する。これにより、血液透析装置1により透析を開始できる状態にする。
【0034】
その後、チューブガイド部材25の蓋部材41を開けた状態にして(
図3(a))、動脈側チューブ16と静脈側チューブ26の一部、すなわち、動静脈吻合部Cに近い部位であって、チューブガイド部材25の長手方向の寸法Lに相当する長さ分を、チューブガイド部材25の底部材43の上に載置する。
【0035】
ここでは、動脈側チューブ16と静脈側チューブ26が隣接するように揃えてから底部材43上に載置してもよいし、あるいは、2本のチューブを個別に底部材43に載置してから、それらが底部材43上で隣接するように揃えてもよい。
【0036】
動脈側チューブ16と静脈側チューブ26を底部材43に載置した後、
図3(b)に示すように、蓋部材41と底部材43が接合部47によって接合されるように蓋部材41を閉じる。これにより、動脈側チューブ16と静脈側チューブ26のうち、チューブガイド部材25の長さL分に相当する長さのチューブが互いに密着しながら並行状態に維持されて、チューブガイド部材25に収容される。
【0037】
図4は、
図3(b)に示すチューブガイド部材25を矢視線X-X´に沿って軸方向(長手方向y)に垂直な方向(短手方向x)に切断したときの断面図である。
図3(b)に示すように底部材43のうち、長手方向yに延びる中央部43aのz方向の高さが、両側面部43b,43cのz方向の高さよりも低くなっている。
【0038】
すなわち、底部材43の断面はV字型をなし、その上面(チューブが載置される面)は、一方の側面である側面部43bから中央部43aに向かうにつれてz方向の高さが低くなる、傾斜角θの第1の斜面48aと、他方の側面である側面部43cから中央部43aに向かうにつれてz方向の高さが低くなる、傾斜角θの第2の斜面48bとで構成されている。
【0039】
底部材43を上記のような構成とすることで、第1の斜面48a上に載置された動脈側チューブ16には、中央部43aに向かって滑る力(図中、S1)が作用し、第2の斜面48b上に載置された静脈側チューブ26にも中央部43aに向かって滑る力(図中、S2)が作用する。
【0040】
その結果、チューブガイド部材25に収容された動脈側チューブ16と静脈側チューブ26とが、底部材43の上面においてx方向に押し合い、互いに接触して隙間のない状態が確保されるので、チューブ間の密着性の向上と並行状態の維持が可能となる。
【0041】
ここでは、上記2本のチューブが収容されたチューブガイド部材25によって透析者の腕が拘束されて、動きが制限されることを回避するため、チューブガイド部材25を透析者の腕に密着させない。また、ダイアライザー15側へ延びる動脈側チューブ16と静脈側チューブ26とを揃えて透析者の手の甲側に回し、例えば小指と薬指の間から手の平側の腕に添うように曲げる必要もない。
【0042】
チューブガイド部材の底部材の形態は、
図3、
図4等に示す例に限定されない。例えば、
図5(a)は、他の例に係るチューブガイド部材55であって、蓋部材51を開けた状態を示す斜視図である。また、
図5(b)は、チューブガイド部材55を矢視線Y-Y´に沿って長手方向に垂直な方向に切断したときの断面図である。
【0043】
図5(a)に示すようにチューブガイド部材55の底部材53には、その長手方向に平行に延びる2本の溝部57a,57bが設けられており、
図5(b)に示すように、これらの溝部57a,57bの窪み径を、動脈側チューブ16と静脈側チューブ26の径に合わせる。こうすることで、蓋部材51を閉じた状態のチューブガイド部材55において、動脈側チューブ16と静脈側チューブ26を密着させて並行状態に維持できる。
【0044】
以上説明したように本実施形態に係る血液透析装置では、ダイアライザー側へ延びる動脈側チューブと静脈側チューブのうち、透析患者の動静脈吻合部の近傍にある部位を互いに密着させて並行に維持しながらチューブガイド部材に収容した状態で血液透析を行うことができる。
【0045】
その際、チューブを収容したチューブガイド部材を透析患者の腕の表面に密着・固定させる必要がないので、テーピング等が不要になり、医療従事者等の作業負担が大幅に減ることに加え、動脈側チューブと静脈側チューブのうち、患者の腕に近い部位を所定長、患者の腕から離れる方向に引き出すことができるため、チューブを患者の指の間に通して腕に這わせることによる煩わしさを排除し、患者の腕の近傍でチューブ同士が絡まることも防止できる。
【0046】
また、チューブガイド部材にチューブを収容した状態でチューブガイド部材そのものをチューブに沿って移動(摺動)可能であるため、透析患者はチューブガイド部材を、腕が解放される位置に微調整して、透析中においても腕を使用した軽作業を行えるという効果がある。
【0047】
さらにチューブガイド部材は、蝶番として機能する蝶着部によって底部材と蓋部材とを繋ぎ合わせた構成を有するので、透析患者が片手で蓋部材を開閉することでチューブの収容および取り出しを容易に行える。また、蓋部材に透明樹脂を用いることで、外部から血液の流れ等、チューブガイド部材内のチューブの状態を容易に視認できる。
【0048】
また、透析患者に設けた脱血口と返血口の近傍にチューブガイド部材を配置し、そのチューブガイド部材の内部において動脈側チューブと静脈側チューブとが並行かつ密着していることで、動脈側チューブから血液が体外へ流出しても、生体エネルギーを静脈側チューブから再び体内に戻すことができるので、生体エネルギーが体外に排出されない。これにより透析者の体力の消耗を少なくして、透析後の疲労、体調の悪化等を軽減できる。
【0049】
<第2の実施形態>
上述したチューブガイド部材は血液透析装置への適用に限定されず、いわゆる人工肺として知られている体外式膜型人工肺(ECMO)にも適用できる。
図6および
図7は、本発明の第2の実施形態に係る体外式膜型人工肺の構成を示す。ECMOには、大腿静脈から脱血し、上大静脈(内頸静脈)へ送血するV-V ECMO(
図6)と、大腿静脈から脱血し、大腿動脈へ送血するV-A ECMO(
図7)がある。
【0050】
図6は、体外式膜型人工肺(V-V ECMO)101にチューブガイド部材125を使用した例を示している。体外式膜型人工肺(V-V ECMO)101は、患者Pの脱血口Qより取り出した静脈血を、脱血回路121によりポンプ104に導き、その血液を、ポンプ104を使用して人工肺102に送り込む。そして、人工肺102で酸素化し、二酸化炭素を除去した血液を、送血回路111を介して患者Pの返血口Rより静脈へ戻す動作を行う。
【0051】
図6において、脱血回路121を構成するチューブのうち、患者Pに近い部位にあるチューブ116と、送血回路111を構成するチューブのうち、患者Pにより近い部位にあるチューブ126とをチューブガイド部材125に収容する。これにより、これらのチューブ116,126が互いに密着しながら並行状態が維持される。
【0052】
図6に示す構成では、患者の脱血口Qと返血口Rが離れた位置にあることから、脱血回路121を構成する脱血用のチューブのうち、脱血口Qに近い部位にチューブガイド部材125を配置し、その配置位置においてチューブ116,126をチューブガイド部材125に収容する。このようなチューブガイド部材の配置は、特に生体エネルギーの体外排出を抑えるという点において有効となる。
【0053】
図7は、体外式膜型人工肺(V-A ECMO)201にチューブガイド部材125を使用した例を示している。この例では、患者の脱血口Qと返血口Rが相互に近い位置にあるので、脱血回路121を構成するチューブと、送血回路111を構成するチューブのいずれについても、患者Pに近い部位にあるチューブ116,126を互いに密着させ、並行状態を維持しながらチューブガイド部材125に収容できる。
【0054】
なお、
図6、
図7に示す構成において、チューブガイド部材125の構造は、上述したチューブガイド部材25と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0055】
本実施形態に係る体外式膜型人工肺において、上述したチューブガイド部材を適用することで、患者の体外に取り出された血液から放出される生体エネルギーを、体内に戻される血液に吸収させることができ、呼吸困難に陥った患者の救命率を向上できる。
【符号の説明】
【0056】
1 血液透析装置
11 動脈側回路
12 血液ポンプ
13 動脈圧モニタ
14 血液流入口
15 ダイアライザー
16 動脈側チューブ
21 静脈側回路
22 静脈圧モニタ
23 血液流出口
25,55,125 チューブガイド部材
26 静脈側チューブ
30 透析液監視装置
41,51 蓋部材
43,53 底部材
46 蝶着部
47 接合部
51,53 開口部
101 体外式膜型人工肺(V-V ECMO)
102 人工肺
104 ポンプ
111 送血回路
116,126 チューブ
121 脱血回路
201 体外式膜型人工肺(V-A ECMO)
A 動脈
B 静脈
C 動静脈吻合部
P 患者
Q 脱血口
R 返血口