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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035493
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/662 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H01H33/662 H
H01H33/662 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139981
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日俣 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 芳充
(72)【発明者】
【氏名】大坊 昂
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛
(72)【発明者】
【氏名】浅利 直紀
【テーマコード(参考)】
5G026
【Fターム(参考)】
5G026HA01
5G026HA03
5G026HB02
(57)【要約】
【課題】金属粒子に起因する絶縁破壊を抑制可能な真空バルブを得る。
【解決手段】実施形態に係る真空バルブは、例えば、筒状の容器と、容器に収容される第一電極と、第一電極と対向して容器に収容される第二電極と、容器に固定して収容されるシールド部材と、を備える。容器は、第一方向に沿って延びる側壁と、側壁と接触するとともに、第一方向と交差する第二方向に沿って延びる複数の板材と、を有する。シールド部材の先端には、容器の軸心に沿って曲折する開口部が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に沿って延びる側壁と、前記側壁と接触するとともに、前記第一方向と交差する第二方向に沿って延びる複数の板材と、を有する筒状の容器と、
前記容器に収容される第一電極と、
前記第一電極と対向して前記容器に収容される第二電極と、
前記容器に固定して収容される複数のシールド部材と、
を備え、
前記シールド部材の先端には、前記容器の軸心に沿って曲折する開口部が設けられた、
真空バルブ。
【請求項2】
前記複数のシールド部材のうち一部は、前記側壁から延びるとともに、前記第一電極および前記第二電極を囲み、
前記開口部は、前記第一電極および前記第二電極に向かって開口する、
請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記複数のシールド部材のうち一部は、一方の前記板材から他方の前記板材に向かって延び、
前記開口部は、一方の前記板材に向かって開口する、
請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項4】
前記開口部の開口径は、前記開口部の最大内径と少なくとも同等である、
請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記シールド部材の表面には、表面粗さを変化させる表面処理が施された、
請求項2又は3に記載の真空バルブ。
【請求項6】
前記板材の表面には、表面粗さを変化させる表面処理が施された、
請求項5に記載の真空バルブ。
【請求項7】
前記複数のシールド部材のうち一部の最小内径は、前記第一電極および前記第二電極の外径と少なくとも同等である、
請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項8】
前記複数のシールド部材のうち一部の内径は、前記最小内径よりも大きい、
請求項7に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、碍管内部に固定された固定側電極と、固定側電極に向かって移動可能な可動側電極と、固定側電極及び可動側電極を取り囲むアークシールドと、を備える真空バルブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-351485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の真空バルブにおいて、電流を遮断するために固定側電極及び可動側電極が開閉する際、当該固定側電極及び可動側電極から金属粒子が飛散する。飛散した金属粒子は、重力や機械的衝撃等によって真空バルブ内部の様々な部分に付着する。これにより、真空バルブ内部では、固定側電極及び可動側電極から飛散した金属粒子を起点とする絶縁破壊が発生しやすくなる。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、金属粒子に起因する絶縁破壊を抑制可能な真空バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る真空バルブは、例えば、筒状の容器と、容器に収容される第一電極と、第一電極と対向して容器に収容される第二電極と、容器に固定して収容されるシールド部材と、を備える。容器は、第一方向に沿って延びる側壁と、側壁と接触するとともに、第一方向と交差する第二方向に沿って延びる複数の板材と、を有する。シールド部材の先端には、容器の軸心に沿って曲折する開口部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態の真空バルブの断面図である。
図2図2は、本実施形態のアークシールドの先端を拡大した断面図である。
図3図3は、本実施形態のアークシールドの先端の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態)
以下、本実施形態の真空バルブ1を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
図1は、本施形態の真空バルブ1の断面図である。図1に示すように、真空バルブ1は、絶縁容器2と、固定電極3と、可動電極4と、ベローズ5と、アークシールド6と、二つのフランジシールド7と、を備える。なお、絶縁容器2は、容器の一例であり、固定電極3は、第一電極の一例である。さらに、可動電極4は、第二電極の一例であり、アークシールド6およびフランジシールド7は、シールド部材の一例である。
【0010】
以下の実施形態では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。絶縁容器2の軸心Axを回転中心とした径方向を、単に径方向と称し、絶縁容器2の軸心Axを回転中心とした周方向を、単に周方向と称する。Z方向は、絶縁容器2の軸心Axに沿う方向であり、上下方向とも称され得る。なお、本実施形態における前後左右上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、真空バルブ1の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。また、Z方向は、第一方向の一例であり、径方向は、第二方向の一例である。
【0011】
絶縁容器2は、上下方向(Z方向)に、二つに分割可能な円筒状の容器であり、例えば、固定電極3と、可動電極4と、ベローズ5と、アークシールド6と、フランジシールド7と、を収容する。なお、絶縁容器2の形状は、円筒状に限らない。絶縁容器2の形状は、例えば、多角形の筒状でも良い。
【0012】
絶縁容器2は、碍管21と、二枚のフランジ22と、を有する。なお、碍管21は、側壁の一例であり、フランジ22は、板材の一例である。碍管21は、例えば、セラミック等の絶縁性を有する材料で構成されるとともに、上下方向(Z方向)に沿って延びる円筒状に形成されている。
【0013】
絶縁容器2には、上下方向(Z方向)における両端に第一開口部23と、第二開口部224と、が設けられている。
【0014】
第一開口部23は、上方向(+Z方向)における碍管21の端部である上端部21aから上下方向(Z方向)に開口している。上端部21aは、上下方向(Z方向)に延びた第一金具21a1と接合している。
【0015】
第二開口部24は、下方向(-Z方向)における碍管21の端部である下端部21bから上下方向(Z方向)に開口している。すなわち、第二開口部24は、第一開口部23の反対側に位置する。下端部21bは、上下方向(Z方向)に延びた第二金具21b1と接合している。
【0016】
二枚のフランジ22は、径方向に沿って延びて第一開口部23および第二開口部24を塞ぐとともに、碍管21と接触して第一金具21a1および第二金具21b1に接合する円盤状の板である。なお、本実施形態では、二枚のフランジ22は、上下方向と直交する径方向に沿って延びているが、少なくとも上下方向と交差する方向に沿って延びていれば良い。
【0017】
二枚のフランジ22と第一金具21a1および第二金具21b1は、例えば、銀ロウによって接合される。これにより、絶縁容器2の内部は密閉される。さらに、二枚のフランジ22には、二つの孔部221が設けられている。各孔部221は、各フランジ22の中心から上下方向(Z方向)に開口している。
【0018】
固定電極3は、例えば、アルミニウムやクロム銅等の金属で形成された円板である。なお、固定電極3は、他の金属により形成されても良い。固定電極3は、第一開口部23を通過して絶縁容器2に収容されている。
【0019】
図1に示すように、固定電極3は、固定通電軸31を有する。固定通電軸31は、孔部221を挿通するとともに、外部から固定電極3に向かって上下方向(Z方向)に延びた円柱である。
【0020】
上下方向における固定通電軸31の固定電極3側(下方向)の端部である下端部31aには、例えば、銀ロウ付けによって固定電極3を取り付けている。なお、下端部31aに固定電極3を取り付ける方法は、銀ロウ付けに限らない。
【0021】
固定通電軸31の外径は、孔部221の内径と略同一径である。固定通電軸31は、銀ロウ等によって孔部221と接合されることにより、フランジ22に固定されるとともに、支持されている。すなわち、固定通電軸31は、孔部221に挿通するとともに、固定されている。
【0022】
可動電極4は、固定電極3と同様に、アルミニウムやクロム銅等の金属で形成された円板である。なお、可動電極4は、他の金属により形成されても良い。可動電極4は、第二開口部24を通過して絶縁容器2に収容されている。
【0023】
すなわち、可動電極4は、固定電極3と対向している。なお、固定電極3および可動電極4は、上下方向(Z方向)において、真空バルブ1の電流遮断時に当該固定電極3と可動電極4とが互いに接触しない位置に設けられる。
【0024】
図1に示すように、可動電極4は、可動通電軸41を有する。可動通電軸41は、孔部221を挿通するとともに、外部から可動電極4に向かって上下方向(Z方向)に延びた円柱である。
【0025】
上下方向における可動通電軸41の可動電極4側(上方向)の端部である上端部41aには、例えば、銀ロウ付けによって可動電極4を取り付けている。なお、上端部41aに可動電極4を取り付ける方法は、銀ロウ付けに限らない。
【0026】
可動通電軸41の外径は、孔部221の内径よりも小さくなっている。そして、可動通電軸41の上端部41aの反対側の端部は、例えば、進退機構に接続されている。これにより、可動通電軸41は、上下方向(Z方向)に移動可能である。なお、可動通電軸41の外径は、可動通電軸41が上下方向(Z方向)に移動可能な程度に小さければ良い。
【0027】
ベローズ5は、絶縁容器2に収容された上下方向(Z方向)に伸縮可能な蛇腹状の伸縮管であり、例えば、金属等で形成される。ベローズ5の内部は、可動通電軸41が貫通している。
【0028】
ベローズ5の上方向(+Z方向)における端部である上端部5aは、可動通電軸41の側面に接合されている。
【0029】
ベローズ5の下方向(-Z方向)における端部である下端部5bは、孔部221を覆うとともに、フランジ22に接合されている。すなわち、ベローズ5の外径は、孔部221の内径よりも大きい。
【0030】
これにより、ベローズ5は、可動通電軸41と孔部221との隙間から流入する大気を内部に留める。また、ベローズ5は、ベローズカバー51を有する。
【0031】
ベローズカバー51は、ベローズ5の上端部5aを覆うカバーである。本実施形態では、ベローズカバー51は、可動通電軸41と一体となっている。これにより、例えば、アークによって飛散する金属溶融物がベローズ5に付着することを抑制できる。なお、これに限らず、ベローズカバー51は、可動通電軸41とは別々に設けられても良い。
【0032】
また、ベローズカバー51の外径は、少なくともベローズ5を覆う大きさであれば良い。すなわち、ベローズカバー51の外径は、少なくともベローズ5の外径よりも大きい。
【0033】
アークシールド6は、例えば、ステンレスや銅等の金属で形成されており、絶縁容器2における碍管21の固定電極3および可動電極4を向く内面21cに固定されて、絶縁容器2に収容されている。言い換えると、アークシールド6は、分割された絶縁容器2に挟み込まれて固定されている。
【0034】
アークシールド6は、碍管21の内面21cから固定電極3および可動電極4に向かって延びた後、第一開口部23および第二開口部24に向かって延びている。すなわち、アークシールド6は、上下方向(Z方向)における両端が開口した円筒形状である。
【0035】
アークシールド6は、径方向において碍管21の内面21cと固定電極3および可動電極4との間に設けられ、真空バルブ1の電流遮断時に固定電極3および可動電極4から生じる金属粒子が碍管21の内面21cに付着しないように防ぐ。
【0036】
上下方向(Z方向)におけるアークシールド6の長さは、少なくとも上下方向における固定電極3および可動電極4の厚さと、電流遮断状態における固定電極3と可動電極4との間の距離と、の合計以上の長さである。すなわち、アークシールド6は、固定電極3および可動電極4を囲むように位置する。
【0037】
さらに、アークシールド6の上下方向(Z方向)における先端6aには、開口部61が設けられている。図2は、本実施形態のアークシールド6の先端6aを拡大した断面図である。
【0038】
図1、2に示すように、開口部61は、アークシールド6の先端6aを絶縁容器2の軸心Axに沿って曲折することで形成されている。さらに、開口部61は、固定電極3および可動電極4に向かって開口している。なお、開口部61が開口する方向は、接点に向く方向であれば適宜変更しても良い。
【0039】
本実施形態では、開口部61の開口径D1は、開口部61の最大内径D2よりも小さい。しかし、これに限らず、開口部61の開口径D1は、少なくとも開口部61の最大内径D2と同等であれば良い。
【0040】
なお、開口径D1とは、開口部61の先端61aからアークシールド6における固定電極3および可動電極4を向く内面6bまでの長さである。また、開口部61の最大内径D2とは、開口部61において最も内径が大きい部分のことである。
【0041】
さらに、開口部61の先端61aの形状は、適宜変化しても良い。先端61aの形状の変化としては、例えば、先端61aの形状を球体形状する、先端61aの一部を太くする、先端61aを絶縁物でコーティングする、先端61aをさらに開口部61の内側に曲折させる等が挙げられる。このような構成によれば、開口部61の開口径D1をさらに狭くすることが可能である。
【0042】
さらに、開口部61の先端61aの形状が丸みを帯びた形状になることで、アークシールド6の先端6aにおける電界が緩和される。
【0043】
また、本実施形態では、開口部61はアークシールド6の先端6aを曲折することで形成しているが、開口部61を形成する方法はこれに限らない。図3は、本実施形態のアークシールド6の先端6aの一例を示す断面図である。
【0044】
図3に示すように、開口部61を形成する方法は、例えば、アークシールド6の先端6aに摩擦圧接、銀ロウ62を用いた銀ロウ付け及びカシメ等によって一方向に開口した捕獲部品63を接合する方法でも良い。このような構成によれば、本実施形態の真空バルブ1では、アークシールド6の開口部61の加工難易度を下げることが可能である。
【0045】
本実施形態では、アークシールド6および開口部61における内面6b、61bには、表面処理が施されている。内面6b、61bに施されている表面処理は、例えば、研磨処理やブラスト処理等である。
【0046】
アークシールド6において開口部61以外の内面6bは、研磨処理によって表面粗さが細かくなっている。一方で、開口部61の内面61bは、ブラスト処理によって表面粗さが粗くなっている。なお、本実施形態では、アークシールド6および開口部61の内面6b、61bに表面処理が施されているが、これに限らない。例えば、アークシールド6および開口部61の内面6b、61b以外の面に表面処理が施されていても良い。
【0047】
図1に示すように、アークシールド6の最小内径D3は、固定電極3および可動電極4の外径と略同等である。しかし、これに限らず、アークシールド6の最小内径D3は、固定電極3および可動電極4の外径よりも小さくても良い。すなわち、アークシールド6の最小内径D3は、少なくとも固定電極3および可動電極4の外径と同等であれば良い。なお、アークシールド6の最小内径D3とは、アークシールド6において最も内径が小さい部分のことである。
【0048】
アークシールド6の最小内径D3を固定電極3および可動電極4の外径よりも小さくする加工方法および組立方法は、例えば、アークシールド6を二つに分割可能な構成に加工して、可動電極4側のアークシールド6、可動電極4、固定電極3、固定電極3側のアークシールド6の順番で絶縁容器2に収容する等である。
【0049】
二つのフランジシールド7は、例えば、ステンレスや銅等の金属で形成されており、各フランジ22に固定されて、絶縁容器2に収容されている。各フランジシールド7は、一方のフランジ22の固定電極3および可動電極4を向く内面22aから他方のフランジ22に向かってそれぞれ延びている。すなわち、二つのフランジシールド7は、上方向又は下方向における端部が開口した円筒形状である。
【0050】
上下方向(Z方向)における二つのフランジシールド7の長さは、少なくとも上下方向においてフランジ22の内面22aから第一金具21a1および第二金具21b1までの距離より長い。すなわち、二つのフランジシールド7は、二つのフランジ22と第一金具21a1および第二金具21b1との接合部を遮っている。
【0051】
さらに、二つのフランジシールド7の上下方向(Z方向)における先端7aには、開口部71が設けられている。開口部71は、各フランジシールド7の先端7aを絶縁容器2の軸心Axに沿って曲折することで形成されている。さらに、開口部71は、当該開口部71が設けられているフランジシールド7を固定しているフランジ22に向かって開口している。
【0052】
二つのフランジシールド7および開口部71における内面7b、71aと、フランジ22の内面22aの一部と、には、表面処理が施されている。内面7b、71aおよびフランジ22の内面22aの一部に施されている表面処理は、例えば、ブラスト処理等である。なお、フランジ22の内面22aの一部とは、ベローズ5の表面からフランジシールド7の内面7bの間と、固定通電軸31の表面からフランジシールド7の内面7bの間と、のことである。
【0053】
本実施形態では、各フランジシールド7および開口部71の内面7b、71aと、フランジ22の内面22aの一部と、は、ブラスト処理によって表面粗さが粗くなっている。なお、本実施形態では、各フランジシールド7および開口部71の内面7b、71aと、フランジ22の内面22aの一部と、に表面処理が施されているが、これに限らない。例えば、各フランジシールド7および開口部71の内面7b、71aと、フランジ22の内面22aの一部と、の以外の面に表面処理が施されていても良い。
【0054】
また、本実施形態では、可動通電軸41側に固定されているフランジシールド7の内径D4は、アークシールド6の最小内径D3およびベローズカバー51の外径よりも大きい。また、固定通電軸31側に固定されているフランジシールド7の内径D5は、アークシールド6の最小内径D3よりも大きい。なお、フランジシールド7の内径D4、D5とは、開口部71の先端71b部分の内径である。
【0055】
さらに、本実施形態では、アークシールド6の開口部61およびフランジシールド7開口部71の断面形状は円形状であるが、これに限らない。開口部61、71の断面形状は、例えば、長方形状、楕円形状及び多角形状等であっても良い。このような構成によれば、製造者は、開口部61、71の加工方法を選択することが可能になる。従って、アークシールド6およびフランジシールド7の加工コストは低減する。
【0056】
本実施形態の真空バルブ1は、固定通電軸31を介してフランジ22に固定された固定電極3に対して、可動通電軸41を介して上下方向(Z方向)に移動可能な可動電極4が接触または離間することで、電流を通電または遮断させる。電流遮断時には、固定電極3および可動電極4から金属粒子が発生する。
【0057】
アークシールド6は、径方向において絶縁容器2の碍管21と固定電極3および可動電極4との間に設けられているため、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子はアークシールド6の内面6bに付着する。
【0058】
アークシールド6の内面6bに付着した金属粒子は、機械的な衝撃や重力等の影響により移動してアークシールド6の開口部61に溜まる。開口部61は、固定電極3および可動電極4に向かって開口している。これにより、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子は、開口部61に溜りやすい。
【0059】
本実施形態では、アークシールド6において開口部61以外の内面6bは、研磨処理によって表面粗さが細かくなっている。一方で、開口部61の内面61bは、ブラスト処理によって表面粗さが粗くなっている。これにより、アークシールド6の内面6bに付着した金属粒子は、開口部61に向かって転がり落ちやすくなる。そして、開口部61溜まっている金属粒子は、機械的な衝撃等によって当該開口部61から離脱し難くなる。
【0060】
さらに、開口部61の開口径D1は、開口部61の最大内径D2よりも小さい。これにより、開口部61の先端61aは、かえしとしての役割を果たす。そのため、開口部61から脱出しようとする金属粒子は、先端61aによって開口部61に戻される。従って、開口部61の先端61aは、開口部61から金属粒子が脱出することをさらに抑制する。
【0061】
さらに、アークシールド6の最小内径D3は、固定電極3および可動電極4の外径と略同等である。これにより、開口部61は、より多くの金属粒子を捕獲することが可能になる。
【0062】
アークシールド6の開口部61に捕獲されなかった金属粒子およびアークシールド6の開口部61から脱出した金属粒子は、フランジ22に向かって落下し、フランジ22の内面22aに付着する。
【0063】
フランジ22には、内面22aから第一開口部23および第二開口部24に向かって延びるフランジシールド7が設けられている。そして、フランジシールド7の先端7aには、開口部71が設けられている。この開口部71は、当該開口部71が設けられているフランジシールド7を固定しているフランジ22に向かって開口している。これにより、フランジ22の内面22aから離脱する金属粒子は、フランジシールド7の開口部71に付着する。
【0064】
本実施形態では、フランジシールド7および開口部71の内面7b、71aと、フランジ22の内面22aにおけるベローズ5の表面からフランジシールド7の内面7bの間と、固定通電軸31の表面からフランジシールド7の内面7bの間と、は、ブラスト処理によって表面粗さが粗くなっている。これにより、フランジ22、フランジシールド7および開口部71の内面22a、7b、71aに付着した金属粒子は、摩擦力によって離脱し難くなる。
【0065】
さらに、可動通電軸41側に固定されているフランジシールド7の内径D4は、アークシールド6の最小内径D3およびベローズカバー51の外径よりも大きい。そして、固定通電軸31側に固定されているフランジシールド7の内径D5は、アークシールド6の最小内径D3よりも大きい。これにより、フランジシールド7は、アークシールド6の開口部61で捕獲されなかった金属粒子をより多く獲することが可能になる。
【0066】
以上のような構成によれば、真空バルブ1では、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子の移動を抑制することが可能である。そのため、一度飛散した金属粒子が真空バルブ1内部の様々な部分に付着することが抑制される。従って、本実施形態の真空バルブ1では、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子を起点とする絶縁破壊を抑制することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、真空バルブ1が縦に配置された状態を例として説明した。しかし、真空バルブ1を配置する方向は、これに限らない。例えば、真空バルブ1を横向きに配置しても良い。真空バルブ1を横向きに配置した場合、アークシールド6の開口部61およびフランジシールド7の開口部71は、上記実施形態よりも多くの金属粒子を捕獲可能である。
【0068】
以上のように、真空バルブ1は、筒状の絶縁容器2と、絶縁容器2に収容される固定電極3と、固定電極3と対向して絶縁容器2に収容される可動電極4と、絶縁容器2に固定して収容されるアークシールド6と、フランジシールド7と、を備える。絶縁容器2は、上下方向に沿って延びる碍管21と、碍管21と接触するとともに、径方向に沿って延びる複数のフランジ22と、を有する。アークシールド6およびフランジシールド7の先端6a、7aには、絶縁容器2の軸心Axに沿って曲折する開口部61、71が設けられている。
【0069】
真空バルブ1は、電流遮断時に固定電極3および可動電極4から金属粒子が飛散する。飛散した金属粒子は、機械的な衝撃や重力等の影響により絶縁容器2に固定されているアークシールド6およびフランジシールド7の先端6a、7aに設けられた開口部61、71に溜まる。
【0070】
これにより、開口部61、71は、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子が真空バルブ1内部の様々な部分に付着することを抑制する。従って、真空バルブ1では、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子を起点とする絶縁破壊が抑制される。
【0071】
また、本実施形態では、アークシールド6は、碍管21から延びるとともに、固定電極3および可動電極4を囲む。開口部61は、固定電極3および可動電極4に向かって開口する。これにより、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子は、開口部61に溜まりやすくなる。
【0072】
また、本実施形態では、フランジシールド7は、一方のフランジ22から他方のフランジ22に向かって延びる。開口部71は、一方のフランジ22に向かって開口する。固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子の一部は、フランジ22に落下する。フランジ22に落下した金属粒子が機械的な衝撃や重力等の影響により移動しようとする場合、フランジシールド7によって妨げられる。これにより、フランジシールド7は、フランジ22に落下した金属粒子の移動を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、開口部61の開口径D1は、開口部61の最大内径D2と少なくとも同等である。開口部61に捕獲されている金属粒子が当該開口部61から離脱しようとする場合、開口部61の先端61aがかえしとなって金属粒子が開口部61から離脱することを抑制する。これにより、開口部61は、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子が真空バルブ1内部の様々な部分に付着することをさらに抑制する。
【0074】
また、本実施形態では、アークシールド6およびフランジシールド7の内面7bには、表面粗さを変化させる表面処理が施されている。例えば、アークシールド6の開口部61以外の表面粗さを細かくして、開口部61の表面粗さを粗くする場合、アークシールド6に付着した金属粒子は、先端6aに設けられている開口部61に向かって転がり落ちる。一方で、開口部61に捕獲されている金属粒子は、当該開口部61の内面61bが粗いため、機械的な衝撃や重力等の影響により移動し難くなる。これにより、開口部61は、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子が真空バルブ1内部の様々な部分に付着することをさらに抑制する。
【0075】
また、本実施形態では、フランジ22の内面22aには、表面粗さを変化させる表面処理が施されている。例えば、フランジ22の表面粗さを粗くする場合、当該フランジ22に付着した金属粒子は、機械的な衝撃や重力等の影響により移動し難くなる。これにより、フランジ22は、当該フランジ22に付着した金属粒子が移動することを抑制する。
【0076】
また、本実施形態では、アークシールド6の最小内径D3は、固定電極3および可動電極4の外径と少なくとも同等である。これにより、固定電極3および可動電極4から飛散した金属粒子は、アークシールド6を通過して落下し難くなる。従って、金属粒子は、アークシールド6の先端6aに設けられた開口部61に捕獲されやすくなる。
【0077】
また、本実施形態では、可動通電軸41側に固定されているフランジシールド7の内径D4および固定通電軸31側に固定されているフランジシールド7の内径D5は、アークシールド6の最小内径D3よりも大きい。これにより、アークシールド6に捕獲されなかった金属粒子は、フランジシールド7に捕獲されやすくなる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
1 真空バルブ
2 絶縁容器(容器)
21 碍管(側壁)
21c 内面
22 フランジ(板材)
22a 内面
3 固定電極(第一電極)
4 可動電極(第二電極)
6 アークシールド(シールド部材)
6a 先端
6b 内面
61 開口部
61a 先端
61b 内面
7 フランジシールド(シールド部材)
7a 先端
7b 内面
71 開口部
71a 内面
71b 先端
図1
図2
図3