(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035509
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】半導体発光装置、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20240307BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20240307BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140007
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大輔
(72)【発明者】
【氏名】重枝 裕司
(72)【発明者】
【氏名】田井 浩平
(72)【発明者】
【氏名】平本 亜紀
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA58
5F142BA24
5F142CA02
5F142CC26
5F142CE02
5F142CE16
5F142CE32
5F142CG05
5F142CG15
5F142CG16
5F142DA12
5F142DB24
5F142FA01
5F142FA21
(57)【要約】
【課題】光の出射効率が高く、かつ、リードフレームの反射率が腐食により低下しにくく、光出力が維持される半導体発光装置を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂により、リードフレームの上面の縁に沿って枠体を形成すると同時に、枠体で囲まれた領域を第1、第2および第3領域に仕切る第1および第2堰堤を形成する。第2領域内に発光素子をダイボンディングする。発光素子の一対の電極を第1、第2領域内のリードフレーム上面にワイヤボンディングする。第1、第2領域内を第1封止部材で充填する。発光素子および第1封止部材を覆うように、第2封止部材で充填する。第1、第2堰堤の高さは、発光素子の上面よりも低い。第1封止部材の熱膨張係数は、第2封止部材の熱膨張係数とリードフレームの熱膨張係数の間の値である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレームと、
前記リードフレームの上面の縁に沿って搭載された枠体と、
前記枠体で囲まれた前記リードフレームの上面の領域を第1、第2および第3領域に仕切る第1および第2堰堤と、
中央の前記第2領域内の前記リードフレーム上面に、接着部材によりダイボンディングされた発光素子と、
前記発光素子の一対の上面電極を、それぞれ前記第1領域および第2領域内のリードフレーム上面に接続するボンディングワイヤと、
前記第1領域および第2領域内に前記第1および第2堰堤の高さまで充填された光反射性の樹脂製の第1封止部材と、
前記発光素子および前記第1封止部材を覆うように、前記枠体内に充填された、蛍光体を含有する樹脂製の第2封止部材とを有し、
前記第1および第2堰堤の高さは、前記発光素子の上面よりも低く、
前記枠体、および、前記第1および第2堰堤は、光反射性の粒子を含有する樹脂混合体により構成され、
前記第1封止部材の熱膨張係数は、前記第2封止部材の熱膨張係数と前記リードフレームの熱膨張係数の間の値であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記樹脂混合体は、光反射性の粒子を含有する熱可塑性樹脂であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記第1封止部材の硬度は、前記第2封止部材の硬度と前記リードフレームの硬度の間の値であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記第1封止部材は、組成式[(RSiO1.5)n](R:アルキル基、n:整数)で表されるポリシルセスキオキサン(PSQ)樹脂を樹脂媒質とする樹脂混合体により構成されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記第1および第2堰堤は、前記枠体の内周面から延在していることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記接着部材は、光反射性の粒子を含有する樹脂であり、前記接着部材は、前記第2領域内の前記リードフレーム上面の全体を覆っていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記第1および第2堰堤の幅方向の断面は、側面がテーパー形状であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記リードフレームは、ギャップにより第1電極と第2電極に分割されており、前記ギャップは、前記第1領域に位置し、
前記ギャップには、前記枠体と同じ樹脂が充填されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記リードフレーム、第1封止部材、および、第2封止部材は、この順に硬度が大きいことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記第1領域内の前記リードフレームのギャップは、屈曲しており、一部が、第1堰堤の下に位置することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項11】
光反射性の粒子を含有する樹脂混合体により、リードフレームの上面の縁に沿って枠体を形成すると同時に、前記枠体で囲まれた前記リードフレームの上面の領域を第1、第2および第3領域に仕切る第1および第2堰堤を形成する工程と、
中央の前記第2領域内の前記リードフレーム上面に、接着部材により発光素子をダイボンディングする工程と、
前記発光素子の一対の上面電極を、それぞれ前記第1領域および第2領域内のリードフレーム上面にワイヤボンディングする工程と、
前記第1領域および第2領域内を前記第1および第2堰堤の高さまで、光反射性の樹脂で充填し硬化させ、第1封止部材を形成する工程と、
前記発光素子および前記第1封止部材を覆うように、前記枠体内に、蛍光体を含有する樹脂で充填し硬化させ、第2封止部材を形成する工程とを有し、
前記第1および第2堰堤の高さは、前記発光素子の上面よりも低く、
硬化後の前記第1封止部材の熱膨張係数は、硬化後の前記第2封止部材の熱膨張係数と前記リードフレームの熱膨張係数の間の値であることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム上に半導体発光素子を接着部材により固定し、周囲を樹脂で封止した構造の半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレーム上に、半導体発光素子と、その周囲を取り囲むように樹脂製の枠体が搭載され、半導体発光素子を含む枠体で囲まれた空間を封止樹脂により封止された構造の半導体発光装置が特許文献1~3等により知られている。この構造の半導体発光装置は、リードフレームと、枠体や封止樹脂とが剥離しやすいという課題がある。
【0003】
そのため、特許文献1では、リードフレームの半導体発光素子が搭載される領域の周囲および枠体の内周にそれぞれ凹部を設け、凹部内に樹脂を充填することにより、リードフレームと枠体や封止樹脂との密着性を向上させることを開示している。
【0004】
また、特許文献2および3では、熱硬化性樹脂をトランスファ・モールドにより成形して枠体を形成する構造において、熱硬化性樹脂とリードフレームの密着性の向上を図る技術として、特許文献2ではリードフレームに切欠き部を設ける構造、特許文献3では上面視においてリードフレームに凹部を設ける構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-182215号公報
【特許文献2】特開2010-62272号公報
【特許文献3】特開2006-156704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、リードフレームの半導体発光素子が搭載される領域の周囲を取り囲むように凹部を形成し、樹脂部(枠体)の樹脂が充填される構造となっている。しかし、このような凹部を備えたリードフレームは強度が低下して発光装置の信頼性を損ねる。
【0007】
また、特許文献2、3の技術は、リードフレームに切り欠き部または凹部を設けているが、リードフレームの上面においては発光素子の載置領域以外の領域に封止樹脂が接しており発光素子の発熱により剥離することがある。
【0008】
本発明の目的は、リードフレームと封止樹脂との密着性が高く、また信頼性の高い半導体発光装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、リードフレームと、リードフレームの上面の縁に沿って搭載された枠体と、枠体で囲まれたリードフレームの上面の領域を第1、第2および第3領域に仕切る第1および第2堰堤と、中央の第2領域内のリードフレーム上面に、接着部材によりダイボンディングされた発光素子と、発光素子の一対の上面電極を、それぞれ第1領域および第2領域内のリードフレーム上面に接続するボンディングワイヤと、第1領域および第2領域内を第1および第2堰堤の高さまで充填された光反射性の樹脂製の第1封止部材と、発光素子および第1封止部材を覆うように、枠体内に充填された、蛍光体を含有する樹脂製の第2封止部材とを有する。第1および第2堰堤の高さは、発光素子の上面よりも低い。枠体、および、第1および第2堰堤は、光反射性の粒子を含有する樹脂混合体により構成されている。第1封止部材の熱膨張係数は、第2封止部材の熱膨張係数とリードフレームの熱膨張係数の間の値である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リードフレームと封止樹脂との密着性が高く、また信頼性の高い半導体発光装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)、(b)および(c)は、実施形態1の半導体発光装置1の上面図、長辺の側面図および短辺の側面図であり、(d)は、半導体発光装置1の長軸に沿った断面図、(e)は、短軸に沿った断面図、(f)は製作途中の上面図である。
【
図2】実施形態1の半導体発光装置の製造工程を示すフロー図である。
【
図3】(a)~(c)実施形態1の半導体発光装置の製造工程を示す上面図である。
【
図4】(a)~(c)実施形態1の半導体発光装置の製造工程を示す上面図である。
【
図5】(a)、(b)および(c)は、実施形態2の半導体発光装置1の上面図、長辺の側面図および短辺の側面図であり、(d)は、半導体発光装置1の長軸に沿った断面図、(e)は、短軸に沿った断面図、(f)は製作途中の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の半導体発光装置について以下に説明する。
【0013】
<<実施形態1>>
実施形態1の半導体発光装置1の構成について
図1(a)~(f)を用いて説明する。
図1(a)、(b)および(c)は、半導体発光装置1の上面図、長辺の側面図および短辺の側面図である。
図1(d)は、半導体発光装置1の長軸に沿った断面図、
図1(e)は、短軸に沿った断面図である。
図1(f)は、半導体発光装置1から第1封止部材と第2封止部材を除去した状態の上面図である。なお、
図1(a)、(b)、(c)および(f)では、構造を理解しやすくするため、断面ではない部分にも、ハッチングを付している。
【0014】
実施形態1の半導体発光装置1は、
図1(a)~(f)のように、一対の平板状のリードフレーム11の周縁に沿って、且つリードフレーム11の一面が底面となる矩形状の凹部を有するように枠体10が設けられ、その底面に発光素子12が接着部材13を介して載置されている。また、凹部は第1封止部材15と第2封止部材16で埋設されている。
【0015】
なお、以後の説明において、リードフレーム11の発光素子12を載置した側の一面を上面とし、その面上方向を上方と称する。また、リードフレーム11の上面の反対面を下面とし、その面上方向を下方と称する。
【0016】
枠体10は、矩形の凹部を形成する樹脂混合体であり、可視光帯域の光を反射する特性を備えている。枠体10のリードフレーム11との接合部は、
図1(e)に示すように、リードフレーム11の長辺の縁の側面にも回り込むように形成されている。具体的には、枠体10は、リードフレーム11の側面に設けれた段差30まで、上面から延在して回り込み、リードフレーム11と枠体10との密着度を高めている。また枠体10は、リードフレーム11の短辺の縁が枠体10から突出すように形成されている。突出した部分のリードフレーム11は、半導体発光装置1を回路基板へ実装する際のはんだフィレット形成部となる。
【0017】
リードフレーム11は、上面と、上面に平行な下面を備えた矩形状の平板であり、短軸方向に平行なギャップ11cにより分割され、一対の電極11a、11bを形成している。ギャップ11cには枠体10から延在する樹脂混合体が充填されている。
【0018】
枠体10で囲まれたリードフレーム11の上面には、リードフレーム11の短軸方向に平行な枠体10の内周面から延在する第1および第2堰堤17a、17bが間隔をあけて配置され、枠体10で囲まれたリードフレーム11の上面領域を第1領域110a、第2領域110b及び第3領域110cの3つの領域に仕切っている。
【0019】
堰堤17a、17bの幅は、上面の方が下面よりも狭く、幅方向の断面は、テーパー形状に形成されている。
【0020】
第1堰堤17aと第2堰堤17bで挟まれた中央の第2領域110bには、リードフレーム11の第2電極11bが位置し、その上面に発光素子12が絶縁性の接着部材13により接合(ダイボンディング)されている。接着部材13は、発光素子12の下面及び第2領域110bの上面全体を覆っている。
【0021】
第1堰堤17aと枠体10で挟まれた第1領域110aには、リードフレーム11のギャップ11cと第1電極11aと第2電極11bが位置している。第1領域110aの第1電極11aの上面には、ボンディングワイヤ18aの一端が接続され、ボンディングワイヤ18aの他端は、発光素子12の一対の上面電極(不図示)の一方に接続されている。
【0022】
また、第1領域110aの第1電極11aの上面には、発光素子を保護するツェナーダイオード(ZD)19の裏面電極が、はんだ等の導電性接着材により接合(ダイボンディング)されている。また、ツェナーダイオード(ZD)19の上面電極(不図示)は、ボンディングワイヤ20により、第1領域110aの第2電極11bの上面に接続されている。
【0023】
一方、第2堰堤17bと枠体10で挟まれた第3領域110cには、リードフレーム11の第2電極11bが位置している。第3領域110cの第2電極11bの上面には、ボンディングワイヤ18bの一端が接続され、ボンディングワイヤ18bの他端は、発光素子12の一対の上面電極の他方に接続されている。
【0024】
第1堰堤17aと枠体10で挟まれた第1領域110aには、接着部材13と同じ又は同等な樹脂混合体からなる第1封止部材15が、第1堰堤17aの高さまで一様に充填されている。これにより、ツェナーダイオード(ZD)19およびボンディングワイヤ18aの下端部は、第1封止材15に埋め込まれている。
【0025】
同様に第2堰堤17bと枠体10で挟まれた第3領域110cにも、第1封止部材15が、第2堰堤17bの高さまで一様に充填されている。これにより、ボンディングワイヤ18bの下端部は、第1封止材15に埋め込まれている。
【0026】
接着部材13は、発光素子12が容易に脱落しない接着強度を備え、また発光素子12の一対の上面電極(不図示)にボンディングワイヤ18a、18bがボンディングされる際の力が緩和しないような硬質な樹脂混合体である。また、接着部材13は、可視光帯域の光を反射する樹脂混合体でもある。なお、実施例においては、第1領域110a及び第3領域110cを埋設する第1封止部材15にも同じ樹脂混合体を用いている。
【0027】
第2封止部材16は、第2領域110bの発光素子12の上面及び側面と接着部材13の上面と、さらに第1領域110a及び第3領域110cを埋設する第1封止材15の上面と、ボンディングワイヤ18a、18bを被覆する。また、第2封止部材16は、枠体10の上端まで充填され、その上面は、リードフレーム11の上面に略平行な平坦な面となっている。また、第2封止部材は、可視光帯域の光を透光する媒質樹脂に波長変換部材としての蛍光体粒子を含んだ樹脂混合体である。
【0028】
このような構造の半導体発光装置1において、第1および第2堰堤17a,17bの高さは、枠体10よりも低く、特に、発光素子12の上面の高さ以下にすることが望ましい。第1および第2堰堤17a,17bが発光素子12の上面の高さ以下にすることにより、ボンディングワイヤ18a、18bの発光素子12の上面に接続されている端部に近い部分を、リードフレーム11の上面にほぼ平行に且つ近接して張ることができ、第2封止部材16の高さ(枠体10の高さ)を抑えることができ、半導体発光装置1の高さ(厚さ)を小さく(薄型化)することができる。また、第2封止部材16の高さを抑えることで、温度変化に応じて発生する熱膨張係数に起因する応力を小さくできる。
【0029】
また、第1および第2堰堤17a,17bの高さを、発光素子12の上面と同等にすることで、第1および第2堰堤17a,17bの側面がテーパー形状であるため、発光素子12の側面からの出射光を、第1および第2堰堤17a,17bで反射でき、第2封止部材16の上面から出光することができる。これにより、半導体発光装置1の光出力を向上させることができる。
【0030】
また、接着部材13及び第1封止部材15は、樹脂混合体により構成され、この樹脂混合体の熱膨張係数は、リードフレーム11の熱膨張係数と第2封止部材16の熱膨張係数の間の値を有する。すなわち、熱膨張係数は、
リードフレーム11<接着部材13=第1封止部材15<第2封止部材16
、の関係になっている。
【0031】
すなわち、第2封止部材16とリードフレーム11との間に、それらの熱膨張係数の間の熱膨張係数の値を有する接着部材13及び第1封止部材15が配置されている。言い換えれば、第2封止部材16が、リードフレーム11の上面に直接接しないようにし、且つ、熱膨張係数差が大きい1つの境界面が、熱膨張係数差が小さい2つの境界面に分散するように構成している。これにより例えば、半導体発光装置1の使用時に、発光素子12の発する熱等により、第2封止部材16、接着部材13、第1封止部材15、および、リードフレーム11の温度が上昇し、熱膨張が生じても、リードフレーム11と第2封止材16の熱膨張率の違いによって生じる応力を、接着部材13及び第1封止部材15によって、2つの境界面に分散させ、且つ、小さくすることができる。
【0032】
よって、リードフレーム11と枠体10の境界面が剥離した場合においても、続くリードフレームと接着部材13及び第1封止樹脂15の境界面が剥離しないので、発光素子12及びボンディングワイヤとリードフレーム11の接合部に、剥離部から侵入する水分又は腐食ガス等が達することなく、発光装置1の光出力の低下又は不灯を防止することができる。すなわち、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0033】
また、接着部材13及び第1封止部材15は、樹脂混合体により構成され、この樹脂混合体の硬度は、リードフレーム11の硬度と第2封止部材16の硬度の間の硬度を有する。すなわち、硬度は、
第2封止部材16<接着部材13=第1封止部材15<リードフレーム11
、の関係になっている。
【0034】
すなわち、第2封止部材16とリードフレーム11との間に、それらの硬度の間の硬度値を有する接着部材13及び第1封止部材15が配置されている。言い換えれば、第2封止部材16がリードフレーム11の上面に直接接しないようにして、硬度差が大きい1つの境界面を硬度差が小さい2つの境界面になるように構成している。これにより例えば、半導体発光装置1の発光素子12の発する熱等により、第2封止部材16、接着部材13及び第1封止部材15、リードフレーム11の温度が上昇し、熱膨張が生じても、硬度の低い第2封止材16側の変形集中を、接着部材13及び第1封止部材15によって2つの境界面に分散し、且つ第2封止部材16側に変形集中することを抑制できる。
【0035】
よって、リードフレーム11と枠体10の境界面が剥離した場合においても、続くリードフレームと接着部材13及び第1封止樹脂15の境界面が剥離しないので、発光素子12及びボンディングワイヤとリードフレーム11の接合部に、剥離部から侵入する水分又は腐食ガス等が達することなく、発光装置1の光出力の低下又は不灯を防止することができる。すなわち、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0036】
また、第1および第2堰堤17a、17bを設けたことにより、第1領域110a及び第3領域110cの第1封止部材15の厚みを厚くできるため、第1封止部材15の熱膨張の緩衝層としての機能を高めることができる。
【0037】
また、第2領域110bは発光素子12が載置されることで発光装置1の長軸方向の撓み強度が高くなる。対して、第1領域110aおよび第3領域110cは撓み強度に弱いが、封止部材15を厚く形成できるため、撓み強度を高くすることができる。
【0038】
このように、接着部材13と第1封止部材15により発光装置1のリードフレーム11上面部の機械強度が向上するので、リードフレーム11と枠体10との剥離自体を防止できる。
【0039】
また、第1および第2堰堤17a、17bを設けたことにより、中央の第2領域110bに発光素子12を接着する際に、接着部材13が、ボンディングワイヤ18a,18bの接続領域である両脇の第1領域110aおよび第3領域110cに濡れ広がることを防止することができる。
【0040】
他方、両脇の第1および第3領域110a、110cに、第1封止部材15を充填する際にも、第1封止部材15が発光素子12まで達するのを防止できる。よって、発光素子12の側面が、第1封止部材15で覆われて遮光されることがない。すなわち、発光装置1の光出力の減衰を防止できる。
【0041】
以下、各部材の材質の例についてさらに詳しく説明する。
【0042】
(リードフレーム11)
リードフレーム11は、心材としてCuを用い、その表面に、腐食性ガスに耐性のあるNi層とAu層をこの順に積層したメッキ層(Ni/Au)を備えるものを用いる。心材としては,Alおよび鉄合金(Fe-Ni-Co)とすることもできる。また、メッキ層として可視光帯域の全域で反射率の高いNi層とAg層をこの順で積層したメッキ層(Ni/Ag)を用いることもできる。
【0043】
なお、リードフレームの心材であるCuの熱膨張係数は、17.8ppm(1/℃)である。硬度は、ビッカース硬さ120HVである。
【0044】
特に、Au層を表面に備えるメッキ層を形成することにより、Au層の耐腐食性により、大気中の窒素酸化物、硫黄酸化物の濃度が高い環境下でリードフレーム11が腐食されるのを防止できる。よって、リードフレーム11と枠体10の境界面の露出端から内部への腐食進行を抑えることができる。言い換えれば、腐食部を起点とした剥離を防止できる。
【0045】
(発光素子12)
発光素子12としては、n型半導体層、発光層、p型半導体層を有する発光機能層を備え、可視光から赤外光の所望の波長の光を発する半導体発光装置(LED)を用いる。なお、本実施形態では、透光性かつ絶縁性のサファイア基板の上面に青色発光する発光機能層を有し、発光機能層の上面側に一対の上面電極を備えるものを用いる。
【0046】
(枠体10)
枠体10を構成する樹脂混合体は、媒質樹脂となる透光性のポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレート(PCT)樹脂に、光反射性の粒子である酸化チタン(TiO2)粒子を分散したものを用いる。
【0047】
媒質樹脂としては、例えば、成形性の良好な熱可塑性の変性ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレート(PCT)樹脂や、成形後に軟化しない熱硬化性のジアルキル系シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂を用いることもできる。
【0048】
光反射性の粒子としては、可視光をミー散乱させる200~300nmのTiO2の粒子が好適である。添加量は、遮光性を高くできる16wt%以上が好ましい。添加上限量は、成形性が損なわれない60wt%以下が好ましい。なお、枠体10の強度を向上するための微粒子、短繊維などを添加することもできる。
【0049】
(接着部材13)
接着部材13としては、媒質樹脂としてのポリシルセスキオキサン(PSQ)樹脂に骨材としての酸化チタン(TiO2)粒子が分散された樹脂混合体を用いる。
【0050】
接着部材13の媒質樹脂である組成式[(RSiO1.5)n](R:アルキル基、n:整数)で表されるポリシルセスキオキサン(PSQ)樹脂は、単位組成式中に1.5個の酸素を有する樹脂で、有機樹脂のシリコーン[(R2SiO)n]樹脂と、無機物のシリカ[SiO2]の間の特性を有しており、耐熱性が高く、熱膨張係数が小さく、さらに硬度が高い。
【0051】
また、PSQ樹脂にアルミナ(Al2O3)粒子、ジルコニア(ZrO2)粒子、酸化チタン(TiO2)粒子等の酸化物セラミック粒子を混合すると、PSQ樹脂とシロキサン結合して骨材として機能する。これにより、PSQ樹脂混合体の熱膨張係数を小さくし、硬度を高くすることができる。また、白色の酸化物セラミック粒子を混合することで、可視光の反射率を70%~95%程度まで高くできる。実施例においては粒径1nm~500nmの白色酸化チタン粒子を混合したPSQ樹脂混合体を用いているので、媒質樹脂より熱膨張係数は小さく、硬度は高く、さらに高い可視光反射率を有している。
【0052】
なお、接着部材13のPSQ媒質樹脂の熱膨張係数は、188ppm(1/℃)である。また、硬度(JIS K 6253のデュロメータ タイプD(ショアD))は、D75である。
【0053】
(第1封止部材15)
第1封止部材15としては、接着部材13と同じ樹脂混合体を用いた。具体的には、媒質樹脂として組成式[(RSiO1.5)n](R:アルキル基、n:整数)で表されるポリシルセスキオキサン(PSQ)樹脂を用い、この媒質樹脂に骨材として酸化チタン(TiO2)粒子が分散された樹脂混合体により、第1封止部材15を形成する。なお、接着部材13と同様な特性を有する樹脂混合体を用いることもできる。
【0054】
(第2封止部材16)
第2封止部材16としては、媒質樹脂としてジメチル系のシリコーン樹脂に波長変換部材としてYAG蛍光体粒子を分散させた樹脂混合体を用いる。
【0055】
媒質樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0056】
波長変換部材としての蛍光体は、発光素子12からの光により励起されて、所望の蛍光を発する蛍光体を用いることができる。例えば、β-SiAlON、KFS(K2SiF6:Mn4+)、CASN(CaAlSiN3:Eu)、S-CASN((Sr, Ca)AlSiN3 :Eu)および、YAG(Y3Al5O12:Ce3+)等である。蛍光体は、1種または複数種を混合して用いることができる。粒径は、発光素子12の出射光の吸収効率が高い5~30μmとしている。
【0057】
第2封止部材16の媒質樹脂の熱膨張係数は、212ppm(1/℃)である。また、硬度(JIS K 6253のデュロメータ タイプA(ショアA))は、A65-A78である。
【0058】
上述のように、第2封止部材16の媒質樹脂の熱膨張係数は、212ppm(1/℃)であり、接着部材13及び第1封止部材15の媒質樹脂の熱膨張係数は、188ppm(1/℃)であり、リードフレームの心材であるCuの熱膨張係数は、17.8ppm(1/℃)である。よって、それぞれの熱膨張係数は、
リードフレーム11 < 接着部材13=第1封止部材15 < 第2封止部材16
の関係を満たす。
【0059】
また、第2封止部材16の媒質樹脂の硬度は、A65-A78(Dレンジ換算でD20-D30)であり、接着部材13及び第1封止部材15の媒質樹脂の硬度は、D75であり、リードフレームの心材であるCuの硬度は、120HVである(Dレンジの最大値以上)。よって、それぞれの硬度は、
第2封止部材16 < 接着部材13=第1封止部材15 < リードフレーム11
の関係を満たす。
【0060】
なお、接着部材13及び第1封止部材15の樹脂混合体には、PSQ樹脂に白色酸化チタンを混合しているので、媒質樹脂の単体の熱膨張係数より小さく、硬度も高い。
【0061】
(製造方法)
つぎに、半導体発光装置1の製造方法について
図2のフロー、
図3(a)~(c)および
図4を用いて説明する。
【0062】
まず、リードフレームとなる銅(Cu合金)板を準備する。
【0063】
(ステップS1)
銅板を、予め用意したリードフレーム11が複数形成できる金型で打ち抜いて、
図3(a)のようなリードフレーム11が複数連続した形状に加工する。
【0064】
また、金型で打ち抜く方法の他に、レジストマスクを形成し、エッチングで型抜きしてもよい。
【0065】
(ステップS2)
ステップS1で打ち抜いた銅板に、電解メッキにより、リードフレーム11となる部分の上面にニッケル(Ni)及び金(Au)をこの順で積層する。
【0066】
(ステップS3)
次に、メッキ済のリードフレーム11を枠体11となる部分が形成された金型に固定し、続いて粒径200~300nmの酸化チタンの粒子を含有するPCT樹脂混合体(熱可塑性樹脂)を加熱して軟化させ、金型へ注入して(注入成形)、リードフレーム11に、
図3(b)のように、枠体10と第1および第2堰堤17a,17bを同時に形成する。
【0067】
熱可塑性のPCT樹脂混合体は、高温溶解時においてもリードフレーム11の第1領域110a~第3領域110cとなる表面(上面)に密着した金型の間に侵入することがないので、リードフレーム11の第1領域110a~第3領域110cとなる表面(上面)を、枠体10成形後に洗浄する必用がないので好適である。
【0068】
例えば、枠体10として熱硬化性のシリコーン樹脂混合体を持ちる場合は、リードフレーム11の第1領域110a~第3領域110cとなる表面(上面)に密着した金型の間に侵入することがあり、リードフレーム11の第1領域110a~第3領域110cとなる表面(上面)に樹脂混合体が付着することがある。この場合、インサート成形で枠体10を成形した後に洗浄する。洗浄方法としては、ウオーターブラスト、電気分解洗浄などがある。
【0069】
(ステップS4)
つぎに、
図3(c)のように、第1および第2堰堤17a,17bで3つに仕切られた領域の中央の第2領域110b内のリードフレーム11に、接着部材13として粒径1~500nmの酸化チタンを含有するPSQ樹脂混合体を塗布し、発光素子12をマウントして、約180℃、30分加熱して接着部材13を硬化させる。
【0070】
次に、端の第1領域110aの第1電極11aにソルダーペーストはんだを塗布し、ツェナーダイオード19をマウントする。その後、240℃まで加熱してツェナーダイオード19を第1電極11aに接合する。
【0071】
その後、ボンディングワイヤ18a,18bとして、金ワイヤを用いて、発光素子12の上面電極と、第1および第3領域110a,110cの第1電極11a、第2電極11bとをそれぞれワイヤボンディングする。
【0072】
このとき、第1および第2堰堤17a,17bによって接着部材13の濡れ広がりが遮られているので、第1および第3領域110a,110c内のリードフレーム11の上面のボンディング領域は確保されており、容易にワイヤボンディングすることができる。
【0073】
また、第1および第2堰堤17a,17bの高さは、発光素子12の上面より低いので、ボンディングワイヤ18a,18bの発光素子12に近い部分を、リードフレーム11の上面に平行に張ることができる。
【0074】
同様に、ツェナーダイオード19の上面電極と、第1領域110a内の第2電極とをボンディングワイヤ20によりワイヤボンディングする。
【0075】
(ステップS5)
つぎに、
図4(a)のように、第1封止部材15として、粒径1~500nmの酸化チタンを含有するPSQ樹脂を用い、第1および第2領域110a、110bの凹部に塗布し、第1および第2領域110a、110bのリードフレーム11全体を覆う。その後、180℃、30分間加熱して仮硬化し、第1封止部材15を形成する。なお、第1封止部材15の仮硬化を省略することもできる。この場合は、ステップS6で第2封止部材16と同時に本硬化されるので問題ない。
【0076】
(ステップS6)
つぎに、
図4(b)のように、ジメチル系シリコーン樹脂にYAG蛍光体を混合した樹脂混合体を枠体10内に充填し、150℃、1時間で加熱して樹脂を硬化させ、第2封止部材16を形成する。また、第1封止部材15が本硬化される。
【0077】
(ステップS7)
最後に、
図4(c)のように、リードフレーム11をタイバーカットして連結部から切り離し、半導体発光装置1単位に個片化する。
【0078】
以上により、本実施形態の半導体発光装置1を製造することができる。
【0079】
上述したように、第1および第2堰堤17a、17bは、枠体10と同一のステップS3工程で同時に成形することができるため、第1および第2堰堤17a、17bの成形のために、製造工程が増加することがない。また、第1封止部材15の製造工程としては、ステップS5の1工程が増加するのみである。また、ステップS5工程においては樹脂混合体の仮硬化を省略することもできる。
【0080】
<<実施形態2>>
実施形態2の半導体発光装置50の構成について
図5(a)~(f)を用いて説明する。
図5(a)~(f)は、実施形態1の
図1(a)~(f)と対応している。
【0081】
第2実施形態の半導体発光装置50は、ギャップ11cの形状をクランク(屈曲)させ、ギャップ11cの一部を第1堰堤17aの下に位置させている。これにより、ギャップ11cを充填する樹脂混合体と、第1堰堤17aを構成する樹脂混合体とを一体化させている。これにより、
図2のステップS3の成形の工程において、第1堰堤17aとなる部分に樹脂混合体がスムースに注入できるようになるので成形性を向上できる。なお、第2堰堤17bの下方の第2電極11bに第2堰堤17bに沿った凹部を設けることもできる。このような凹部は
図2のステップS1の工程で形成することができる。
【0082】
また、半導体発光装置50は、第1領域110aの第1電極11aの一部は、ギャップ11cが屈曲したことにより、
図1の半導体発光装置1よりも第2領域110bに接近している。接近した第1電極11aにボンディングワイヤ18aを接続することにより、ボンディングワイヤ18aの長さを短くしている。
【0083】
本実施形態の半導体発光装置は、PLCC(Plastic leaded chip carrier)パッケージ全般に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 半導体発光装置
10 枠体
11 リードフレーム
11a 第1電極
11b 第2電極
11c ギャップ
12 発光素子
13 接着部材
17a 堰堤
18a ボンディングワイヤ
18b ボンディングワイヤ
19 ツェナーダイオード
20 ボンディングワイヤ
30 段差
50 半導体発光装置
110a 第1領域
110b 第2領域
110c 第3領域