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特開2024-3551高圧タンクライナの製造装置及び高圧タンクライナの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003551
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】高圧タンクライナの製造装置及び高圧タンクライナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 12/00 20060101AFI20240105BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20240105BHJP
   F17C 1/16 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
F16J12/00 F
B29C65/02
F17C1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102761
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆治
(72)【発明者】
【氏名】岸 有香
(72)【発明者】
【氏名】石山 樹雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進也
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 潤也
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
4F211
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BD03
3E172CA14
3E172CA20
3E172CA22
3J046BA02
3J046BA03
3J046CA03
3J046DA05
3J046EA03
4F211AA04
4F211AA24
4F211AA29
4F211AA37
4F211AA39
4F211AA40
4F211AD16A
4F211AG07
4F211AG24
4F211AH55
4F211AP06
4F211AQ01
4F211AR02
4F211AR07
4F211TA01
4F211TC11
4F211TD07
4F211TJ11
4F211TN07
4F211TQ01
4F211TW15
4F211TW24
(57)【要約】
【課題】本発明は、ライナ半体同士の良好な溶着品質をより確実に実現することができる高圧タンクライナの製造装置を提供する。
【解決手段】ライナ半体31の端面を加熱溶融する加熱手段40と、加熱手段40の待機位置P1と加熱手段40のライナ半体31に対する加熱位置P2との間で加熱手段40をスライド移動させる加熱手段搬送機構45と、一対のライナ半体31同士を相対的に接近させ又は離反させるように駆動する昇降機構43(駆動機構)と、加熱手段40のスライド移動に応じてライナ半体31の端面同士の平行度を調節する平行度調節機構47と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
向かい合わせに配置された一対のライナ半体の端面同士を溶着して一体化する高圧タンクライナの製造装置であって、
向かい合わせに配置された一対の前記ライナ半体の端面同士の間に配置されてそれぞれの前記ライナ半体の端面を加熱溶融する加熱手段と、
一対の前記ライナ半体から離れた前記加熱手段の待機位置と、一対の前記ライナ半体の端面同士の間に設定された、前記ライナ半体の端面に対する前記加熱手段の加熱位置との間で前記加熱手段をスライド移動させる加熱手段搬送機構と、
一対の前記ライナ半体同士を相対的に接近させ又は離反させるように、一対の前記ライナ半体のうちの少なくともいずれか一方を駆動する駆動機構と、
前記加熱手段のスライド移動に応じて前記ライナ半体の端面同士の平行度を調節する平行度調節機構と、
を備えることを特徴とする高圧タンクライナの製造装置。
【請求項2】
前記ライナ半体の端面同士が上下方向に向き合うように配置される請求項1に記載の高圧タンクライナの製造装置であって、
前記加熱手段搬送機構は、前記加熱手段をスライド移動方向に案内するレール部材を備え、
前記平行度調節機構は、前記レール部材に対して上方に向けて荷重を付加する荷重付加手段を備えていることを特徴とする高圧タンクライナの製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の高圧タンクライナの製造装置において、
前記平行度調節機構は、前記加熱手段の加熱位置を挟んで前記加熱手段の待機位置の反対側にカウンタウエイトを備えていることを特徴とする高圧タンクライナの製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の高圧タンクライナの製造装置において、
前記駆動機構は、上下に並ぶ一対の前記ライナ半体のうち、下側の前記ライナ半体と、前記加熱手段とを一体にして、固定された上側の前記ライナ半体に対して、下側の前記ライナ半体を接近させ又は離反させる昇降機構であることを特徴とする高圧タンクライナの製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の高圧タンクライナの製造装置において、
前記平行度調節機構は、上側の前記ライナ半体の端面に対する下側の前記ライナ半体の端面の平行度を検出するセンサを備え、
前記荷重付加手段は、前記センサの検出信号に基づいて前記レール部材の端部に対する荷重を付加することで、前記ライナ半体の端面同士の平行度を所定の範囲内に設定することを特徴とする高圧タンクライナの製造装置。
【請求項6】
一対のライナ半体を向かい合わせに配置する配置工程と、
一対の前記ライナ半体から離れた待機位置にある加熱手段を、一対の前記ライナ半体の端面同士の間に設定された前記ライナ半体の端面に対する加熱位置にスライド移動させる加熱手段搬送工程と、
前記ライナ半体の端面を加熱溶融する加熱工程と、
前記加熱位置にある前記加熱手段を前記待機位置にスライド移動させて退避させる加熱手段退避工程と、
前記ライナ半体の端面同士を溶着させて前記ライナ半体を一体化する溶着工程と、
を有する高圧タンクライナの製造方法であって、
少なくとも前記加熱手段退避工程と前記溶着工程との間に、前記加熱手段のスライド移動に応じて前記ライナ半体の端面同士の平行度を調節する平行度調節工程をさらに有することを特徴とする高圧タンクライナの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の高圧タンクライナの製造方法において、
前記加熱手段搬送工程と前記加熱工程との間に、前記加熱手段のスライド移動に応じて前記ライナ半体の端面同士の平行度を調節する平行度調節工程をさらに有することを特徴とする高圧タンクライナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧タンクライナの製造装置及び高圧タンクライナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧ガスを充填するためのいわゆる高圧タンクとしては、熱可塑性樹脂からなる円筒状のライナ(高圧タンクライナ)の外側に繊維強化樹脂層を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このライナは、円筒形状のライナ半体同士を溶着して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2020-56468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記したライナ(例えば、特許文献1参照)の製造方法としては、例えば、所定の平行度の範囲内となるようにライナ半体の端面同士を向き合わせる平行度調節工程と、ライナ半体の端面同士の間に加熱手段を搬送してライナ半体の端面を加熱溶融する工程と、加熱手段を端面同士の間から退避させるとともに所定の平行度を維持しながらライナ半体の端面同士を溶着させる工程と、を有するものが考えられる。
【0005】
このような製造方法によれば、ライナ半体の端面同士の平行度を所定の範囲内に調節することによって、ライナ半体の端面をその周方向にむらなく加熱することができる。そして、その平行度を維持しながらライナ半体の端面同士を溶着させることで、得られるライナの溶着品質は一段と向上すると考えられる。
【0006】
その一方で、このような製造方法を実施するライナの製造装置としては、ライナ半体の大きさ(径)を考慮すると、加熱手段が重量物(100kg前後)となることが想定される。そのためこの製造装置は、加熱手段をライナ半体の端面同士の間に搬送し、その後加熱手段をライナ半体の端面同士の間から退避させる加熱手段搬送機構が必要となる。
【0007】
しかしながら、このような製造装置においては、加熱手段がライナ半体の端面同士の間に配置されたときと、端面同士の間から退避したときとの重心が、重量物たる加熱手段の移動とともに大きく変動することとなる。これにより所定の平行度の範囲内となるように予め製造装置に設置したライナ半体も、製造装置の重心の変動に伴って変動する恐れがある。そして、所定の平行度の範囲(例えば、0.2mm以下)から逸脱した状態で端面同士が加熱され、その端面同士が溶着されると、ライナ半体同士の所期の良好な溶着品質を実現することができないこととなる。
【0008】
本発明の課題は、ライナ半体同士の良好な溶着品質をより確実に実現することができる高圧タンクライナの製造装置及び高圧タンクライナの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決した本発明の高圧タンクライナの製造装置は、向かい合わせに配置された一対のライナ半体の端面同士を溶着して一体化する高圧タンクライナの製造装置であって、向かい合わせに配置された一対の前記ライナ半体の端面同士の間に配置されてそれぞれの前記ライナ半体の端面を加熱溶融する加熱手段と、一対の前記ライナ半体から離れた前記加熱手段の待機位置と、一対の前記ライナ半体の端面同士の間に設定された、前記ライナ半体の端面に対する前記加熱手段の加熱位置との間で前記加熱手段をスライド移動させる加熱手段搬送機構と、一対の前記ライナ半体同士を相対的に接近させ又は離反させるように、一対の前記ライナ半体のうちの少なくともいずれか一方を駆動する駆動機構と、前記加熱手段のスライド移動に応じて前記ライナ半体の端面同士の平行度を調節する平行度調節機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記課題を解決した本発明の高圧タンクライナの製造方法は、一対のライナ半体を向かい合わせに配置する配置工程と、一対の前記ライナ半体から離れた待機位置にある加熱手段を、一対の前記ライナ半体の端面同士の間に設定された前記ライナ半体の端面に対する加熱位置にスライド移動させる加熱手段搬送工程と、前記ライナ半体の端面を加熱溶融する加熱工程と、前記加熱位置にある前記加熱手段を前記待機位置にスライド移動させて退避させる加熱手段退避工程と、前記ライナ半体の端面同士を溶着させて前記ライナ半体を一体化する溶着工程と、を有する高圧タンクライナの製造方法であって、少なくとも前記加熱手段退避工程と前記溶着工程との間に、前記加熱手段のスライド移動に応じて前記ライナ半体の端面同士の平行度を調節する平行度調節工程をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高圧タンクライナの製造装置及び高圧タンクライナの製造方法によれば、ライナ半体同士の良好な溶着品質をより確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法によって得られる高圧タンクライナを使用した高圧タンクの縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る高圧タンクライナの製造装置の構成説明図である。
図3A図2のIIIa方向から見たライナ半体の下端部の部分拡大斜視図である。
図3B図2のIIIb方向から見たライナ半体の上端部の部分拡大斜視図である。
図4図2のIV-IV断面から見下ろした様子で示す高圧タンクライナの製造装置の構成説明図である。
図5図2の製造装置を構成する加熱手段の全体斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る高圧タンクライナの製造方法の工程説明図である。
図7A】本発明の実施形態に係る高圧タンクライナの製造方法における加熱手段搬送工程の説明図である。
図7B】本発明の実施形態に係る高圧タンクライナの製造方法における第1の平行度調節工程の説明図である。
図7C図7BのVIIc部の部分拡大図である。
図7D】本発明の実施形態に係る高圧タンクライナの製造方法における加熱手段退避工程の説明図である。
図7E】本発明の実施形態に係る高圧タンクライナの製造方法におけるライナ半体の溶着工程の説明図である。
図7F図7EのVIIf部の部分拡大図である。
図7G】本発明の実施形態に係る高圧タンクライナの製造方法における切削工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態(実施形態)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本実施形態に係る製造方法にて得られる高圧タンクライナを使用した高圧タンクについて説明する。
【0014】
≪高圧タンク≫
図1は、本発明の実施形態に係る高圧タンク1の縦断面図である。
本実施形態の高圧タンク1は、例えば、燃料電池車に搭載され、燃料電池システムに供給するための水素ガスを貯留するものを想定している。ただし、高圧タンク1は、これに限定されるものではなく、他の高圧ガスについて使用されるものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、高圧タンク1は、後に詳しく説明する高圧タンクライナ2(以下、単に「ライナ2」と称することがある)と、このライナ2に連結される口金3と、ライナ2から口金3に亘ってこれらの外側を覆う繊維強化樹脂層4と、を備えている。
【0016】
口金3は、例えば、アルミニウム合金などの金属製材料にて形成されるものを想定している。口金3は、内側に給排孔21を有する円筒状の口金本体18と、この口金本体18の軸方向の一端側に形成されるフランジ部19とを有している。給排孔21は、フランジ部19が形成される一端側で高圧タンク1内に連通する。そして、給排孔21の他端側には、前記の燃料電池システムなどに連通する配管(図示を省略)が接続されることとなる。
【0017】
口金本体18の一端側における給排孔21の内周面には、後記するライナ2の筒状部17に形成されるねじ部17aと噛み合うねじ部21aが形成されている。そして、ライナ2の筒状部17の先端部と給排孔21の内周面との間には、Оリング(図示を省略)が装着されることとなる。
【0018】
また、給排孔21の内部には、金属材料からなる円筒状のカラー22が配置されている。このカラー22は、給排孔21の内周面に支持される一端側からライナ2側に延びて、ライナ2の筒状部17内に嵌入されている。
【0019】
本実施形態での繊維強化樹脂層4は、ライナ2から口金3に亘ってこれらの外周面に強化繊維を巻回するFW(Filament Winding:フィラメントワインディング)工程と、強化繊維を付与したライナ2を所定の金型内に配置するとともに、この金型内にマトリックス樹脂を充填してこれを硬化させるRTM(Resin Transfer Molding:レジントランスファモールディング)工程とを経て得られるものを想定している。
【0020】
本実施形態での強化繊維としては、複数の炭素繊維フィラメントからなるストランドをさらに複数纏めて形成される帯状のロービング(図示を省略)を想定している。ただし、強化繊維は、これに限定されるものではなく、例えば、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などを使用することもできる。
【0021】
本実施形態でのマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化物からなるものを想定している。
ただし、繊維強化樹脂層4は、前記のRTM工程を経て得られるものに限定されるものではなく、強化繊維に予めマトリクス樹脂を含侵させたプリプレグをライナ2及び口金3の外周面に巻回した後、このマトリクス樹脂を硬化させて得られるものであってもよい。
【0022】
≪高圧タンクライナ≫
次に、本実施形態に係る製造方法によって得られるライナ2(図1参照)について説明する。
ライナ2は、熱可塑性樹脂からなる中空体である。熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
本実施形態のライナ2は、円筒体からなる胴部5と、この胴部5の両端に一体に成形される鏡部6と、を備えている。
【0023】
胴部5は、所定の外径にて形成されて胴部5の軸(Ax)方向の殆どを占める一般部8と、胴部5の軸(Ax)方向の中央部に形成され、一般部8よりも拡径した拡径部9と、を備えて構成されている。
拡径部9は、後に詳しく説明するように、一対のライナ半体31(図2参照)の端部同士を溶着にて接合した接合部36(図7G参照)に切削加工を施して形成したものである。
【0024】
鏡部6は、図1に示すように、胴部5側から軸(Ax)方向外側に離れるほど徐々に縮径するように収斂する扁平の椀状体である。
鏡部6の径方向の中央部は、口金3のフランジ部19の形状に対応するように陥没する陥没部16を有している。
また、陥没部16の中央部には、口金3の給排孔21内に向けて突出するように、前記の筒状部17が形成されている。そして、前記した給排孔21のねじ部21aと噛み合うねじ部17aは、筒状部17の外周面に形成されている。
【0025】
≪高圧タンクライナの製造装置≫
次に、ライナ2(図1参照)の製造装置について説明する。
図2は、本実施形態の製造装置Aの構成説明図である。以下の説明における上下前後の方向は、製造装置Aの上下前後方向に一致させた図2の上下前後方向を基準とする。
本実施形態の製造装置Aは、図2に示すように、一対のライナ半体31同士を溶着して一体化するように構成されている。
【0026】
<ライナ半体>
まず、ライナ半体31(図2参照)について説明する。
ライナ半体31は、後記するフランジ部32(図3A及び図3B参照)及び突出端部34(図3A及び図3B参照)を有することを除いて、図1に示すライナ2を軸Ax方向の中央部で2分割した形状と略同じ形状を有している。
ライナ半体31同士は、開口部33(図2参照)側で溶着されることで一体となる。
【0027】
図3Aは、上側のライナ半体31の下端部を、図2のIIIa方向から見た部分拡大斜視図である。図3Bは、下側のライナ半体31の上端部を、図2のIIIb方向から見た部分拡大斜視図である。
フランジ部32は、図3A及び図3Bに示すように、ライナ半体31における胴部5よりも径方向外側に張り出すように胴部5に一体に成形された、胴部5と同軸の環状体である。
フランジ部32には、周溝32aが形成されている。
この周溝32aは、上方に向けて開口するようにフランジ部32の周方向に沿って延在している。
そして、周溝32aの底面32a1は、平坦面で形成され、同じく平坦面で形成される突出端部34の端面34aと平行になっている。
【0028】
突出端部34は、図3A及び図3Bに示すように、ライナ半体31の開口部33側の端面に一体に成形された胴部5と同軸の環状体である。
突出端部34の外径は、ライナ半体31における胴部5の外径よりも大きく、そしてフランジ部32の外径よりも小さくなるように設定されている。
また、突出端部34の内径は、ライナ半体31の内径と同じになるように設定されている。
そして、ライナ半体31の軸方向Axにおける突出端部34の厚さは、後記するライナ半体31同士の溶着時における溶融代35よりも厚くなっている。
【0029】
図2に戻って、本実施形態に係る製造装置Aは、地面等の床面FLに配置されるフレーム41と、一対のライナ半体31のうち、上側のライナ半体31を、支持ジグ46を介してフレーム41の上部で支持する上側支持部42aと、下側のライナ半体31を、支持ジグ46を介して昇降機構43に連結して支持する下側支持部42bと、この下側支持部42bを昇降させる昇降機構43と、ライナ半体31を部分的に加熱して溶融する加熱手段40と、加熱手段40の搬送機構45と、一対のライナ半体31の端面同士の平行度を所定の範囲内に設定する平行度調節機構47と、を主に備えて構成されている。
なお、昇降機構43は、特許請求の範囲にいう「駆動機構」に相当する。また、
搬送機構45は、特許請求の範囲にいう「加熱手段搬送機構」に相当する。
【0030】
<支持ジグ>
図2に示すように、上側支持部42aの下端には、開口部33を下側に向けたライナ半体31を支持する支持ジグ46が取り付けられている。
下側支持部42bの上端には、開口部33を上側に向けたライナ半体31を支持する支持ジグ46が取り付けられている。
そして、上下一対の支持ジグ46のそれぞれは、次に説明するように、ライナ半体31のフランジ部32(図3A及び図3B参照)を係止するとともに、ライナ半体31の胴部5(図3A及び図3B参照)の外周面に接するように配置される。これにより支持ジグ46は、ライナ半体31を上側支持部42a及び下側支持部42bのそれぞれに支持させることとなる。
【0031】
上下一対の支持ジグ46のうち、上側の支持ジグ46は、図3Aに示すように、フランジ部32を係止する内爪部46aと、外爪部46bとを有している。
内爪部46aは、ライナ半体31における胴部5の外周面に接するとともに、フランジ部32の周溝32aに嵌入する。
そして、内爪部46aの先端面46a1は、平坦面で形成され、周溝32aの底面32a1と平行になっている。
【0032】
外爪部46bは、内爪部46aの外周側に配置され、フランジ部32の外周面に接するように配置されている。具体的には、外爪部46bは、周溝32aに嵌入した内爪部46aとの間で、フランジ部32における周溝32aの径方向外側の肉部を挟み付けている。
【0033】
図3Bに示すように、下側に配置されるライナ半体31と支持ジグ46とは、図3Aに示した上側に配置されるライナ半体31と支持ジグ46に対して、上下対称構造となるように、配置されている。
つまり、図3Bに示すように、ライナ半体31の開口部33側には、上側のライナ半体31(図3A)と同様に、周溝32aを有するフランジ部32と、溶融代35を有する突出端部34とが形成されている。
【0034】
また、下側の支持ジグ46についても、図3Aに示した上側の支持ジグ46と同様に、フランジ部32の周溝32aに嵌入する内爪部46aと、周溝32aの径方向外側のフランジ部32の肉部をこの内爪部46aとの間で挟み付ける外爪部46bと、を有している。そして、内爪部46aの先端面46a1と、周溝32aの底面32a1と、突出端部34の端面34aとは、平坦面で形成されているとともに、相互に平行になっている。
【0035】
<昇降機構>
次に、昇降機構43(図2参照)について説明する。
昇降機構43(駆動機構)は、図2に示すように、電動モータや油圧発生装置などを有する駆動源43aと、この駆動源43aによって昇降する上下一対の昇降加圧板43bと、一対の昇降加圧板43b同士の間に配置されるゴムダンパ43cと、を主に備えて構成されている。
【0036】
図4は、図2のIV-IV断面から見下ろした様子で示す製造装置Aの構成説明図である。図4中、符号43bは、図2に示す一対の昇降加圧板43bのうち、上側に配置される昇降加圧板である。
図4に示すように、前記の上側の昇降加圧板43bは、前後幅よりも横幅の長い略矩形の平面形状を有する板体で構成されている。ゴムダンパ43cは、昇降加圧板43bの略四隅に対応する位置に配置されている。このゴムダンパ43cは、後記するように、昇降機構43によってライナ半体31の端面同士を接触させる際の緩衝装置として機能する。
【0037】
上側の昇降加圧板43bの上面には、図2及び図4に示すように、下側のライナ半体31が、支持ジグ46及び下側支持部42bを介して配置されているとともに、加熱手段40が搬送機構45を介して配置されている。
つまり、図2に示すように、昇降機構43は、フレーム41の上部に固定された上側のライナ半体31に対して、下側のライナ半体31を接近させ又は離反させるように駆動するとともに、下側のライナ半体31と一体になった加熱手段40と搬送機構45とを連動させるように駆動する。
【0038】
<加熱手段>
次に、製造装置A(図2参照)を構成する加熱手段40(図2参照)について説明する。
図2に示すように、製造装置Aは、上側に配置されたライナ半体31を加熱する加熱手段40aと、下側に配置されたライナ半体31を加熱する加熱手段40bと、を備えている。加熱手段40aと加熱手段40bとは、支持プレート40cを介して背中合わせに一体となっている。具体的には、後記する加熱源44aが支持プレート40cの反対側で露出するように加熱手段40aと加熱手段40bとは一体に接合されている。
なお、加熱手段40aと加熱手段40bとを区別する必要がない場合には単に「加熱手段40」と称する。
ちなみに、図2中、符号P1は、ライナ半体31を加熱する前に、一対のライナ半体31から離れた位置で加熱手段40を待機させるために設定した待機位置である。また、符号P2は、後に説明する加熱手段20のライナ半体31に対する加熱位置である。
【0039】
図5は、加熱手段40の全体斜視図である。
図5に示すように、加熱手段40は、加熱源44aと、この加熱源44aを支持するベース部材44bと、を備えている。
本実施形態での加熱手段40は、後記の「高圧タンクライナの製造方法」を構成するライナ半体31の加熱工程(図7C参照)において、突出端部34の端面34aを加熱し、突出端部34の溶融代35(図7C参照)を溶融する。
【0040】
本実施形態での加熱手段40は、平面形状が略正方形の板体からなるベース部材44bと、このベース部材44bにリング状に埋め込まれた加熱源44aと、を備えている。
そして、加熱手段40aと加熱手段40bのそれぞれは、支持プレート40cの中央部に配置されている。
ちなみに、本実施形態での加熱源44aは、電熱線などによるジュール熱を使用するものや遠赤外線による放射熱によるものなどを想定しているがこれに限定されるものではない。
【0041】
このような加熱手段40aの加熱源44aは、ライナ半体31の加熱工程(図7C参照)において、図3Aに示す突出端部34の端面34aに対向するように配置される。
また、図2に示す加熱手段40bの加熱源44a(図5には不図示)は、ライナ半体31の加熱工程(図7C参照)において、図3Bに示す突出端部34の端面34aに対向するように配置される。
つまり、図2に示す加熱手段40a及び加熱手段40bのそれぞれにおける加熱源44aの内径及び外径は、図3A及び図3Bに示す突出端部34の端面34aの内径及び外径に対応付けて設定されることとなる。
【0042】
以上のような加熱手段40は、図4に示すように、支持プレート40cが、搬送機構45を構成する一対のレール部材45aに不図示のローラなどの転動部材を介して渡し架けられることで前記の昇降機構43(図2参照)の上側の昇降加圧板43bに支持される。
【0043】
<加熱手段搬送機構>
次に、搬送機構45(図4参照)について説明する。
搬送機構45は、図4に示すように、製造装置Aの上面視で、下側のライナ半体31を挟む位置で前後方向に平行に延びる一対のレール部材45aを備えている。
これらのレール部材45aは、前記した加熱手段40の待機位置P1(図2参照)と後記する加熱位置P2(図7A及び図7B参照)との間で加熱手段40がスライド移動するように案内する。これらのレール部材45aは、上側の昇降加圧板43bに固定されるとともに、フレーム41の後端よりもさら後方に向けて延出している。
【0044】
また、搬送機構45は、図示は省略するが、支持プレート40cとレール部材45aとの間に配置される前記の転動部材と、支持プレート40cにチェーンなどを介して連結されて加熱手段40をスライド移動させる電動モータなどの駆動源と、所定のタイミングで加熱手段40がスライド移動するように前記の駆動源に指令するとともに、所定のタイミングで待機位置P1(図2参照)と加熱位置P2(図7A及び図7B参照)とに加熱手段40を停止させる制御部(図示を省略)と、を主に備えて構成されている。
この搬送機構45の動作については、本実施形態に係るライナ2(図1参照)の製造方法とともに後に詳しく説明する。
【0045】
<平行度調節機構>
次に、製造装置A(図2参照)を構成する平行度調節機構47(図2参照)について説明する。
平行度調節機構47は、図2に示すように、レール部材45aに対して上方に向けて荷重を付加する荷重付加手段47aと、下側支持部42bに取り付けられたカウンタウエイト47bと、上側のライナ半体31の端面に対する下側の前記ライナ半体31の端面の平行度を検出するセンサ47cと、センサ47cの検出信号に基づいて荷重付加手段47aに指令信号を送信してライナ半体31の端面同士の平行度が所定の範囲内となるようにレール部材45aに荷重を付加させる制御部47dと、を主に備えて構成されている。
【0046】
本実施形態での荷重付加手段47aは、床面FLにアンカ(図示を省略)を施して固定したエアシリンダを有するものを想定している。ただし、荷重付加手段47aは、所定の荷重を発生できればエアシリンダに限定されるものではなく油圧や電動にて荷重を発生するものであっても構わない。
なお、本実施形態での荷重付加手段47aは、図2に示すように、一対のレール部材45aにおけるそれぞれの後端部45a1と床面FLとの間で上下に延在するように設けられるものを想定している。つまり、本実施形態での荷重付加手段47aは、加熱手段40の待機位置P1に隣接して設けられるものを想定している。
ただし、荷重付加手段47aは、図4に示す上面視で、レール部材45aの後端部45a1と昇降加圧板43bの後縁との間の区間のいずれかの位置に設けることもできる。また、一つのレール部材45a当たりに設ける荷重付加手段47aの数は、一つに限定されずに、複数設けることもできる。
【0047】
本実施形態でのカウンタウエイト47bは、図2に示すように、下側支持部42bの前側上部に取り付けられている。このカウンタウエイト47bは、加熱手段40の加熱位置P2を挟んで加熱手段40の待機位置P1の反対側で下側支持部42bに取り付けられている。
このようなカウンタウエイト47bは、下側支持部42bの前側上部が下方に向かうモーメントを形成することで、荷重付加手段47aがレール部材45aに付加する荷重を軽減する。
【0048】
センサ47cは、上側のライナ半体31の端面(図3Aに示す突出端部34の端面34a)に対する下側の前記ライナ半体31の端面(図3Bに示す突出端部34の端面34a)の平行度を検出する。なお、図2に示すセンサ47cは、模式的に記したものであり、その形状や取付位置などを具体的に示したものではない。
【0049】
本実施形態でのセンサ47cとしては、ライナ半体31の端面同士の平行度を検出して検出信号を出力するものであれば特に制限はない。このようなセンサ47cとしては、接触式、光学式のいずれであってもよく、例えば、走査型有接触プローブや非接触レーザセンサなどによってライナ半体31の端面同士の相対的な距離を検出するものが挙げられる。また、センサ47cとしては、市販品(例えば、キーエンス社製ベクトロンなど)を使用することもできる。
【0050】
また、センサ47cは、上側のライナ半体31の端面(図3Aに示す突出端部34の端面34a)が水平になるように固定されていることを前提に、下側のライナ半体31の端面(図3Bに示す突出端部34の端面34a)の水平度を検出する水平度検出センサであっても構わない。
【0051】
制御部47dは、センサ47cの検出信号に基づいて荷重付加手段47aに指令信号を送信する。具体的には、制御部47dは、ライナ半体31の端面同士の平行度が所定の範囲内(例えば、0.2mm以下)となるように荷重付加手段47aがレール部材45aに対して付加する荷重を制御する。具体的には、制御部47dは、センサ47cの検出信号に基づいて平行度が0.2mmを超えたと判断した場合に、センサ47cの検出信号に基づく平行度が予め設定した最小基準値(例えば、0.1mm)に収束するように、荷重付加手段47aが出力する荷重を制御する。
なお、この制御部47dは、必須の構成要素ではなく、センサ47cが出力する具体的な平行度の値を取得した作業員が、荷重付加手段47aを操作して平行度が所定の範囲内となるように調節しても構わない。
【0052】
≪高圧タンクライナの製造方法≫
次に、本実施形態の製造装置A(図2参照)の動作について説明しながら、本実施形態の製造方法について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係るライナ2(図1参照)の製造方法の工程説明図である。
図6に示すように、この製造方法は、一対のライナ半体31(図2参照)の配置工程(ステップS101)と、加熱手段40(図2参照)の搬送工程(ステップS102)と、第1の平行度調節工程(ステップS103)と、ライナ半体31の加熱工程(ステップS104)と、加熱手段40の退避工程(ステップS105)と、第2の平行度調節工程(ステップS106)と、ライナ半体31同士の溶着工程(ステップS107)と、溶着工程で一体化したライナ半体31同士の接合部に切削加工を施す切削工程(ステップS108)と、を有している。
【0053】
<ライナ半体の配置工程>
図6に示すステップS101のライナ半体31(図2参照)の配置工程においては、前記のように、一対のライナ半体31が準備される。
本実施形態でのライナ半体31は、射出成型法やブロー成型法などにて得られたものを想定している。
そして、この配置工程においては、図2に示すように、一対のライナ半体31の端面(図3Aに示す突出端部34の端面34a、及び図3Bに示す突出端部34の端面34a)同士が上下に向かい合わせとなるように、ライナ半体31が上側の支持ジグ46と下側の支持ジグ46のそれぞれに取り付けられる。
【0054】
<加熱手段搬送工程>
図7Aは、図6に示すステップS102の加熱手段搬送工程の説明図である。
図7Aに示すように、この加熱手段搬送工程においては、加熱手段40が搬送機構45によって、待機位置P1から加熱位置P2に搬送される。
これにより加熱手段40は、下側のライナ半体31の上方に配置される。この際、図示は省略するが、下側の加熱手段40bの加熱源44aと、下側のライナ半体31の端面(図7Cに示す端面34a参照)とは、後記の所定間隔D(図7C参照)が開けて対向する。
【0055】
<第1の平行度調節工程>
図6に示すステップS103の第1の平行度調節工程においては、図7Aに示す下側のライナ半体31は、下側の加熱手段40bの加熱源44aとの間に所定間隔D(図7C参照)を維持した状態で、加熱手段40と一体で昇降機構43にて上方に向けてリフトアップされる。
図7Bは、図6に示すステップS103の第1の平行度調節工程の説明図である。
図7Bに示すように、下側のライナ半体31は、上側の加熱手段40aは、上側のライナ半体31に近接する。
【0056】
図7BのVIIc部の部分拡大図である図7Cに示すように、上側のライナ半体31における端面(突出端部34の端面34a)は、上側の加熱手段40aの加熱源44aとの間に所定間隔Dを開けて対向する。
そして、図7Bに示すセンサ47cは、図7Cに示す上下のライナ半体31の端面(突出端部34の端面34a)同士の平行度を検出し、その検出信号を出力する。図7Bに示す制御部47dは、センサ47cの検出信号に基づいて、ライナ半体31の端面同士の平行度が所定の範囲(例えば、0.2mm以下)となるように、図7Bに示す荷重付加手段47aが図7Bに示すレール部材45aに対して付加する荷重を制御する。
【0057】
<ライナ半体の加熱工程>
図6に示すステップS104の加熱工程においては、平行度が所定の範囲内に設定された図7Cに示すライナ半体31の端面(突出端部34の端面34a)同士を図7Cに示す加熱手段40が加熱する。
これにより図7Cに示す突出端部34の溶融代35が加熱溶融される。
【0058】
<加熱手段退避工程>
図7Dは、図6に示すステップS105の加熱手段退避工程の説明図である。
図7Dに示すように、この加熱手段退避工程においては、図7Cに示す加熱位置P2(図7C参照)にあった加熱手段40を、搬送機構45によって、待機位置P1にスライド移動させて退避させる。これにより加熱手段40は、一対のライナ半体31から離れた位置に移動する。
【0059】
<第2の平行度調節工程>
図6に示すステップS106の第2の平行度調節工程においては、図7Dに示すように、加熱手段40が待機位置P1に位置決めされた状態で、センサ47cは、上下のライナ半体31の端面同士の平行度を検出し、その検出信号を出力する。制御部47dは、センサ47cの検出信号に基づいて、ライナ半体31の端面同士の平行度が所定の範囲(例えば、0.2mm以下)となるように、荷重付加手段47aがレール部材45aに対して付加する荷重を制御する。
【0060】
<ライナ半体の溶着工程>
図6に示すステップS107の溶着工程について説明する。
図7Eは、溶着工程の説明図である。図7Fは、図7EのVIIf部の部分拡大図である。
この溶着工程においては、図7Eに示すように、下側のライナ半体31が、昇降機構43によって、図7Dに示す高さからさらに上方に向けてリフトアップされる。
図7Fに示すように、上側のライナ半体31の端部と下側のライナ半体31の端部とが溶着する。
【0061】
具体的には、この溶着工程では、図7Fに示すように、支持ジグ(図面省略)でライナ半体31同士を所定の荷重にて押し付けて、ライナ半体31同士の押圧方向(軸Ax方向)に対して交差する方向に溶融代35(図7C参照)の溶融物35aを流動させる。これによりライナ半体31同士の溶融物35aは、仮想線(二点鎖線)にて示す溶着面36aで互いに溶け合う。そして、溶融物35aが冷却されることで、ライナ半体31同士は、溶着面36aにて一体化して接続される。
なお、このような溶着工程においては、ライナ半体31同士を溶着面36aにて一体化する際に、所定の振動装置によってライナ半体31同士を振動させて、ライナ半体31同士の溶着を促進させることもできる。
【0062】
<切削工程>
図6に示すステップS108の切削工程について説明する。
図7Gは、切削工程の説明図である。
図7Gに示すように、接合部36におけるフランジ部32(仮想線(二点鎖線)にて示す)がその根元部分32cを残して切削加工により取り除かれる。
そして、残された根元部分32cにて、前記のライナ2における拡径部9が形成される。これにより本実施形態のライナ2(図1参照)の一連の製造工程が終了する。
【0063】
≪作用効果≫
次に、本実施形態のライナ2の製造方法及びこの製造方法を実施するライナ2の製造装置Aの奏する作用効果について説明する。
本実施形態に係る製造装置A及び製造方法によれば、重量物たる加熱手段40が待機位置P1と加熱位置P2との間をスライド移動することによって、ライナ半体31の端面同士の間の平行度が予め設定した所定の範囲を逸脱することを防止するべく、加熱手段40のスライド移動に応じて当該平行度を調節している。
これにより本実施形態に係る製造装置A及び製造方法は、ライナ半体31同士の所期の良好な溶着品質を実現することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る製造装置Aは、加熱手段40をスライド移動方向に案内するレール部材45aに対して、上方に向けて荷重を付加する荷重付加手段47を備えている。
この製造装置Aは、ライナ半体31の端面同士の間の平行度が予め設定した所定の範囲を逸脱する原因となる製造装置Aに掛かる加熱手段40の荷重を荷重付加手段47が軽減する。
このような製造装置Aによれば、簡素な構造でライナ半体31の端面同士の間の平行度を調節することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る製造装置Aは、加熱手段40の加熱位置P2を挟んで加熱手段40の待機位置P1の反対側にカウンタウエイト47bを備えている。
この製造装置Aは、荷重付加手段47がレール部材45aに対して上方に向けて付加する荷重のモーメントに対して、カウンタウエイト47bは、加熱位置P2を挟んで加熱手段40の待機位置P1の反対側で下方に向かうモーメントを形成する。
このような製造装置Aによれば、荷重付加手段47aがレール部材45aに付加する荷重をカウンタウエイト47bによって軽減することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る製造装置Aにおいては、昇降機構43(駆動機構)は、下側のライナ半体31と、加熱手段40とを一体にして、固定された上側のライナ半体31に対して、下側のライナ半体31を接近させ又は離反させる構成となっている。
このような製造装置Aによれば、下側のライナ半体31と加熱手段40との連結構造によって、荷重付加手段47aにてレール部材45aに付加される荷重が、直接的に効率よく当該平行度の調節に反映される。
【0067】
また、本実施形態に係る製造装置Aにおいては、荷重付加手段47が、センサ47cの検出信号に基づいてライナ半体31の端面同士の平行度を所定の範囲内に設定する。
このような製造装置Aによれば、正確にかつ迅速にライナ半体31の端面同士の平行度を調節することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る製造方法においては、溶着工程に先立って行われる平行度調節工程(図6のステップS106参照)に加えて、加熱手段搬送工程(図6のステップS102参照)と加熱工程(図6のステップS104)との間に、平行度調節工程(図6のステップS103参照)が実施される。
このような製造方法によれば、加熱手段40によってライナ半体31の端面がむらなく加熱されるので、ライナ半体31同士の溶着品質が、より一層向上する。
【0069】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態に係る製造装置Aにおいては、荷重付加手段47がレール部材45aに対して上方に向けて荷重を付加する構成となっているが、荷重付加手段47は、レール部材45aを上方に吊り上げるように荷重を付加するものであってもよい。
【0070】
また、前記実施形態では、固定された上側のライナ半体31に対して下側のライナ半体31を接近させ又は離反させる構成となっているが、下側のライナ半体31に対して上側のライナ半体31を接近させ又は離反させる構成とすることもできる。また、製造装置Aは、下側のライナ半体31と上側のライナ半体31とを相互に接近させ又は離反させる構成とすることもできる
【0071】
また、前記実施形態では、センサ47によって、当該平行度を加熱手段40の移動に応じて検出している。しかしながら、平行度は、予め行ったシミュレーション試験などによって、待機位置P1に加熱手段40が位置したときの当該平行度と、待機位置P2に加熱手段40が位置したときの当該平行度とを求めておき、それらの平行度が所定の範囲内となるように、荷重付加手段47がレール部材45aに対して荷重を付加する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 高圧タンク
2 高圧タンクライナ
4 繊維強化樹脂層
5 胴部
8 胴部の一般部
9 胴部の拡径部
31 ライナ半体
31a ライナ半体の内周面
32 ライナ半体のフランジ部
33 ライナ半体の開口部
34 ライナ半体の突出端部
34a ライナ半体(突出端部)の端面
36 フランジ部同士の接合部
40 加熱手段
40a 加熱手段
40b 加熱手段
43 昇降機構(駆動機構)
45 加熱手段の搬送機構(加熱手段搬送機構)
45a レール部材
46 支持ジグ
47 平行度調節機構
47a 荷重付加手段
47b カウンタウエイト
47c センサ
A 高圧タンクライナの製造装置
Ax 高圧タンクライナの軸
P1 加熱手段の待機位置
P2 加熱手段の加熱位置
S101 ライナ半体の配置工程
S102 加熱手段搬送工程
S103 平行度調節工程
S104 ライナ半体の加熱工程
S105 加熱手段退避工程
S106 平行度調節工程
S107 ライナ半体の溶着工程
S108 切削工程
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G