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特開2024-35514リンク機構、リンクシステム、リニアアクチュエータおよび身体支援装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035514
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】リンク機構、リンクシステム、リニアアクチュエータおよび身体支援装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/02 20060101AFI20240307BHJP
   F16G 13/20 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F16H19/02 B
F16G13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140013
(22)【出願日】2022-09-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、ムーンショット型研究開発事業「適応自在Limbs」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰久
(72)【発明者】
【氏名】ウンデ ジャヤント シェシナラヤン
(72)【発明者】
【氏名】青山 忠義
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB14
3J062AB26
3J062AC07
3J062BA12
3J062CA04
3J062CA33
3J062CB02
(57)【要約】
【課題】伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンク機構を提供する。
【解決手段】巻き取りおよび伸長が可能なリンク機構1は、互いに回転可能に直列に連結された少なくとも4個のリンク11、12、13、14と、リンク同士を1つおきに連結する少なくとも2個の連結ロッド21、22と、を備える。連結ロッド21、22は、連結対象のリンクの間にあるリンクを斜めに横断して、連結対象のリンク同士を回転可能に連結する。連結ロッド21、22同士は、リンクを直線状に伸長したとき、互いに略平行に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き取りおよび伸長が可能なリンク機構であって、
互いに回転可能に直列に連結された少なくとも4個のリンクと、
前記リンク同士を1つおきに連結する少なくとも2個の連結ロッドと、を備え、
前記連結ロッドは、連結対象のリンクの間にあるリンクを斜めに横断して、前記連結対象のリンク同士を回転可能に連結し、
前記連結ロッド同士は、前記リンクを直線状に伸長したとき、互いに略平行に配置されていることを特徴とするリンク機構。
【請求項2】
請求項1に記載のリンク機構と、
巻き取られたリンクを収納する収納部と、を備えることを特徴とするリンクシステム。
【請求項3】
前記収納部の出口部分に、少なくとも2つのリンクの曲げを禁止する禁止機構を備えることを特徴とする請求項2に記載のリンクシステム。
【請求項4】
前記リンクがスパイラル状に巻き取られることを特徴とする請求項2または3に記載のリンクシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のリンク機構と、
前記リンクを巻き取るおよび伸長する動力機構と、を備えることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1または2に記載のリンク機構を備えることを特徴とする身体支援装置。
【請求項7】
前記リンクが巻き取られるまたは伸長されるとき、前記リンクの巻き取られた部分が床面に接しながら並進運動することを特徴とする請求項6に記載の身体支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リンク機構、リンクシステム、リニアアクチュエータおよび身体支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアアクチュエータは直線的な動きを作り出す機構である。油圧シリンダーや空気圧シリンダーのような従来のリニアアクチュエータは、本質的に直線的な動きを生成する。一方電動リニアアクチュエータは、リードスクリュー機構により、回転運動を直線運動に変換する。こうしたリニアアクチュエータは、ロボット、オートメーション、産業用アプリケーションなど、広い分野で利用されている。
【0003】
従来のリニアアクチュエータには、伸長比が低いという課題がある。ここで伸長比とは、アクチュエータが完全に伸びたときの長さ(L)と完全に縮んだときの長さ(l)との比のことをいう。従来のリニアアクチュエータでは、この伸長比は2未満である(L<2l)。すなわちこの場合、アクチュエータのストローク長は、アクチュエータの本来の長さより短いものとなる。このように従来のリニアアクチュエータが高い伸長比を得られないことの根本的な原因は、折れたり曲がったりすることのできない硬いピストンを使用することにある。
【0004】
これに対し電動リニアアクチュエータには、サイズがコンパクトでありながら、高い伸長比を持つ機械的機構を持つものが存在する。こうしたアクチュエータはテレスコピック・リニアアクチュエータと呼ばれ、一例としてリジッドチェーン・アクチュエータがある(例えば、非特許文献1参照)。これは、プッシュ・プル・リフトアプリケーションなどに利用される、特殊な機械式伸縮リニアアクチュエータである。リジッドチェーンアクチュエータは、牽引力を伝達するための伸縮部材を形成する多関節チェーンと、回転ピニオン装置と、から構成される。アクチュエータである多関節チェーンのリンクは、一方向にのみ直線から曲がるように接続されている。ピニオンが回転すると、チェーンをガイドし、固定するハウジング内で、チェーンリンクが90度回転する。これにより、圧縮(座屈)および引張に耐える剛性を持つ支柱が形成される。このようにして多関節チェーン(作動部材)は、コンパクトに密着して巻かれ、収納される。
【0005】
剛体チェーンアクチュエータの改良型に、ジッパーに似た2本の多関節チェーンを連結し、最大1000mm/sの速度で押し引きすることのできる、1本の強力な支柱を形成するジップチェーンアクチュエータがある(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
高い伸長比を持つ伸縮式リニアアクチュエータの別の例として、スパイラルリフト(例えば、非特許文献3参照)やヘリカルバンドアクチュエータ(例えば、特許文献1参照)がある。これは、最もコンパクトな電動リニアアクチュエータで、水平方向および垂直方向に運動する金属製のバンドを「展開」して荷物を持ち上げるシステムで構成されている。スパイラルリフトをロボットに組み込むことで、ロボットの有効作業空間を拡大し、コンパクトで容易な運搬が実現される(例えば、非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4875660号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Basics of rigid-chain actuators" May 24, 2016, LINIEAR MOTION TIPS, A Design World Resource,https://www.linearmotiontips.com/basics-rigid-chain-actuators/
【非特許文献2】“Zip Chain Actuators” Tsubakimoto Europe B.V.https://tsubaki.eu/products/mechanical-components/zip-chain-actuators/
【非特許文献3】“Spiralift” PACO Grouphttp://www.pacospiralift.com/
【非特許文献4】“Design of a spherical robot arm with the spiral zipper prismatic joint”F. Collins and M. Yim, 2016 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA), pp. 2137.2143. May 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のリニアアクチュエータの多くは、伸長比が低く、通常は原寸アクチュエータの2倍以下である。さらにこれらのリニアアクチュエータは、ストローク長に比べて大きな設置スペースを必要とする。また、ストローク長が長くなるにつれ、重量が指数関数的に増加する。加えて、空気圧式や油圧式のリニアアクチュエータの多くは、2点止めの機能しか持っておらず、中間位置を実現することができない。
【0010】
さらに、上記で説明したコンパクトな設置スペースで高い伸長比を持つ伸縮式リニアアクチュエータにも、利点だけでなく限界がある。剛体チェーンアクチュエータの場合、多関節チェーンがコンパクトに収納され、高速(1000mm/s)で展開することが可能である。しかしこの機構の持つ欠点は、伸長軸に垂直に作用する力に対応できない点にある。これは、こうした力が、多関節チェーンの収納時に、チェーンを折りたたむように曲げてしまうからである。ジップチェーンアクチュエータでは、2本の多関節チェーンが連動し、すべての軸を拘束する高剛性の支柱を形成し、高速で作動させることで、この問題を解決している。しかしこのアクチュエータには、すべての軸を拘束するために2本の多関節チェーンを必要するため、設置スペースが増大するという欠点がある。
【0011】
スパイラルリフトやヘリカルバンドアクチュエータは、既存の伸縮式リニアアクチュエータに比べて、低い設置スペースで作動させることができる。しかしスパイラルリフトやヘリカルバンドアクチュエータを伸長させるときに、伸長比が高いにも関わらず、リジッドチェーンアクチュエータなどの従来の直接駆動型アクチュエータに比べて動作速度が遅い(最大でも10mm/s程度)という欠点がある。これは、金属バンドを螺旋状に回転させてチューブを形成する、インターロック工程の速度制約に起因する。一方、この機構は、全軸を拘束しており、どの伸長点でも力に対抗することができる。
【0012】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンク機構およびリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のリンク機構は、巻き取りおよび伸長が可能なリンク機構であって、互いに回転可能に直列に連結された少なくとも4個のリンクと、リンク同士を1つおきに連結する少なくとも2個の連結ロッドと、を備える。連結ロッドは、連結対象のリンクの間にあるリンクを斜めに横断して、連結対象のリンク同士を回転可能に連結する。連結ロッド同士は、リンクを直線状に伸長したとき、互いに略平行に配置されている。
【0014】
この態様によると、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンク機構を提供することができる。
【0015】
本発明の別の態様はリンクシステムである。このリンクシステムは、上記のリンク機構と、巻き取られたリンクを収納する収納部と、を備える。
【0016】
この態様によると、巻き取られたリンクを収納することのできる、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンクシステムを提供することができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様はリニアアクチュエータである。このリニアアクチュエータは、上記のリンク機構と、リンクを巻き取るおよび伸長する動力機構と、を備える。
【0018】
この態様によると、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリニアアクチュエータを提供することができる。
【0019】
本発明のさらに別の態様は身体補助装置である。この身体補助装置は、上記のリンク機構を備える。
【0020】
この態様によると、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトな身体支援装置を提供することができる。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンク機構およびリニアアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施の形態に係るリンク機構のリンクを直線状に伸ばした状態を示す模式図である。
図2】第1の実施の形態に係るリンク機構の様々なリンクの形状を示す模式図である。
図3】第1の実施の形態に係るリンク機構の様々なリンクの形状を示す模式図である。
図4】第1の実施の形態に係るリンク機構のリンクを直線状に伸ばした状態を示す模式図である。
図5】第1の実施の形態に係るリンク機構のリンクを曲線状に巻き取った状態を示す模式図である。
図6】第2の実施の形態に係るリンクシステムの模式図である。
図7】第3の実施の形態に係るリンクシステムの透視側面図である。
図8】第3の実施の形態に係るリンクシステムの透視斜視図である。
図9】第3の実施の形態に係るリンクシステムのリンクが伸長されたときの状態を示す側面図である。
図10】第3の実施の形態に係るリンクシステムの透視側面図である。
図11】第3の実施の形態に係るリンクシステムの側面図である。
図12】第3の実施の形態に係るリンクシステムの斜視図である。
図13】第3の実施の形態に係るリンクシステムの正面図である。
図14】第3の実施の形態に係るリンクシステムのリンクが伸長されたときの状態を示す側面図である。
図15】第4の実施の形態に係るリンクシステムに使われるリンクを示す模式的図である。
図16】第5の実施の形態に係るリニアアクチュエータの透視側面図である。
図17】第5の実施の形態に係るリニアアクチュエータの透視斜視図である。
図18】第5の実施の形態に係るリニアアクチュエータの正面図である。
図19】第5の実施の形態に係るリニアアクチュエータのリンクが伸長されたときの状態を示す側面図である。
図20】第6の実施の形態に係る身体支援装置を装着したユーザが、着座した状態から立ち上がるまでの様子を示す模式図である。
図21】第6の実施の形態に係る身体支援装置を装着したユーザが着座した状態を示す側面図である。
図22】第6の実施の形態に係る身体支援装置を装着したユーザが立ち上がった状態を示す側面図である。
図23】第6の実施の形態に係る身体支援装置の側面図である。
図24】第6の実施の形態に係る身体支援装置の正面図である。
図25】第6の実施の形態に係る身体支援装置のリンク機構を最も巻き取ったときの側面図である。
図26】第6の実施の形態に係る身体支援装置のリンク機構を最も巻き取ったときの正面図である。
図27】ユーザが第6の実施の形態に係る身体支援装置を身体の左側に装着したとき、正面から撮影した写真である。
図28】ユーザが第6の実施の形態に係る身体支援装置を身体の左側に装着したとき、左側面から撮影した写真である。
図29】第6の実施の形態に係る身体支援装置の2つのプロトタイプを側面から撮影した写真である。
図30】第6の実施の形態に係る身体支援装置の2つのプロトタイプを正面から撮影した写真である。
図31】第6の実施の形態に係る身体支援装置を用いて、ユーザの着座からの立位および立位からの歩行を支援する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態及び変形例では、同一又は同等の構成要素、部材には同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示す。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要でない部材の一部は省略して表示する。また、第1、第2などの序数を含む用語が多様な構成要素を説明するために用いられるが、こうした用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1に、第1の実施の形態に係るリンク機構1を示す。図1に示すものは、リンク機構1を構成するリンクを直線状に伸ばした状態である。リンク機構1は、4個のリンク、すなわち第1のリンク11と、第2のリンク12と、第3のリンク13と、第4のリンク14と、を備える。リンク機構1はさらに、2個の連結ロッド、すなわち第1の連結ロッド21と、第2の連結ロッド22と、を備える。
【0026】
図1の例では、第1のリンク11は、I字型をしている。第2のリンク12、第3のリンク13および第4のリンク14は、T字型をしている。第1の連結ロッド21および第2の連結ロッド22は、I字型をしている。第1のリンク11の両端付近および中央付近には、貫通孔が設けられている。第1の連結ロッド21および第2の連結ロッド22の両端付近にも、貫通孔が設けられている。第2のリンク12、第3のリンク13および第4のリンク14のT字を構成する2本の棒の両端付近およびこれら2本の棒が交差する付近にも、貫通孔が設けられている。各リンクおよび各連結ロッドを重ねてそれぞれの貫通孔を一致させ、一致させた貫通孔に連結ピンを通すことにより、各リンクおよび各連結ロッド同士を、互いに回転可能にピボット連結することができる。
【0027】
第1のリンク11と第2のリンク12とは、貫通孔105でピボット連結される。第2のリンク12と第3のリンク13とは、貫通孔106でピボット連結される。第3のリンク13と第4のリンク14とは、貫通孔107でピボット連結される。第1のリンク11と第1の連結ロッド21とは、貫通孔101でピボット連結される。第3のリンク13と第1の連結ロッド21とは、貫通孔103でピボット連結される。第2のリンク12と第2の連結ロッド22とは、貫通孔102でピボット連結される。第4のリンク14と第2の連結ロッド22とは、貫通孔104でピボット連結される。すなわち、第1のリンク11と第3のリンク13とは、第1の連結ロッド21を介して連結されている。同様に、第2のリンク12と第4のリンク14とは、第2の連結ロッド22を介して連結されている。
【0028】
第1の連結ロッド21は、連結対象の第1のリンク11と第3のリンク13との間にある第2のリンク12を斜めに横断して、第1のリンク11と第3のリンク13とを連結している。第2の連結ロッド22は、連結対象の第2のリンク12と第4のリンク14との間にある第3のリンク13を斜めに横断して、第2のリンク12と第4のリンク14とを連結している。すなわち、連結ロッドは、連結対象のリンクの間にあるリンクを斜めに横断して、連結対象のリンク同士を回転可能に連結している。
【0029】
第1の連結ロッド21と第2の連結ロッド22とは、互いに略平行に配置されている。すなわち、連結ロッド同士は、リンクを直線状に伸長したとき、互いに略平行に配置されている。
【0030】
図1の例では、第1の連結ロッド21は、紙面を覗く方から見て、各リンクの裏側に配置されている。一方、第2の連結ロッド22は、紙面を覗く方から見て、各リンクの表側に配置されている。
【0031】
図1の例では、第1のリンク11はI字型、第2のリンク12、第3のリンク13および第4のリンク14はT字型、第1の連結ロッド21および第2の連結ロッド22はI字型であった。しかしながら、これらの形状は上記に限られない。第1のリンクは、リンク機構1が直線状に伸ばされる方向と直行する方向の両端付近および中央付近に貫通孔が設けられたものであれば任意の好適な形状であってよい。図2に、様々な形状の第1のリンクの例を模式的に示す。図2(a)はT字状、図2(b)はD字状のリンクを示す。同様に、第2、第3および第4のリンクは、リンク機構1が直線状に伸ばされる方向と直行する方向の両端付近および先端中央付近に貫通孔が設けられたものであれば任意の好適な形状であってよい。図3に、様々な形状の第2、第3および第4のリンクの例を模式的に示す。図3(a)は三角形状、図3(b)は三角形の各辺を曲線にした形状のリンクを示す。
【0032】
以下、図1に示されるような、4個のリンクおよび2個の連結ロッドから構成されたリンク機構を「単位リンク機構」と呼ぶ。単位リンク機構に順次リンクおよび連結ロッドを追加して接続することにより、より長いリンク機構を実現することができる。
【0033】
図4および図5に、単位リンク機構に8個のリンクおよび8個の連結ロッドを追加したリンク機構2を模式的に示す。すなわちリンク機構2は、第1のリンク11と、第2のリンク12と、第3のリンク13と、第4のリンク14と、第5のリンク15と、第6のリンク16と、第7のリンク17と、第8のリンク18と、第9のリンク19と、第10のリンク10aと、第11のリンク11aと、第12のリンク12aと、第1の連結ロッド21と、第2の連結ロッド22と、第3の連結ロッド23と、第4の連結ロッド24と、第5の連結ロッド25と、第6の連結ロッド26と、第7の連結ロッド27と、第8の連結ロッド28と、第9の連結ロッド29と、第10の連結ロッド20aと、を備える。図4は、直線状に伸長したリンク機構2を示す。図5は、曲線状に巻き取ったリンク機構2を示す。図4図5とも、点線で囲まれた部分が単位リンク機構である。
【0034】
図4のように直線的に伸長されたリンク機構2は、以下のようにして巻き取ることができる。先ず、左端の第1のリンク11を動かないように固定しながら、第2のリンク12に対して、時計回り方向の力を与える。この場合、時計回り方向の力とは、リンク機構2の伸長方向と連結ロッドの長手方向とのなす角度が大きくなる方向の力である。
【0035】
すると第2のリンク12は、貫通孔105の回りを時計回りに回転しようとする。しかし、リンク12は連結ロッド22と連結しているため、リンク14が時計回りに回転しないことには、リンク12が回転できない。ただし、第12のリンクの右端先端のリンク12aは、リンク12から見て連結ロッド22に相当するリンクが接続されていないため、時計回りに回転することができる。これにより第12のリンク12aは、リンク機構2の伸長方向に対して、下方向に曲がる。第12のリンク12aが回転し始めると、第12のリンクに直接連結された連結ロッド20aを介してリンク11aが同様に時計回りに遅れて少しずつ回転する。この回転の遅れは、リンク12aの回転角が、リンク11aの回転角より必ず大きくなることによって生じる。上記の動きは、第1のリンク11の貫通孔105の近辺を「根本」と見たとき、先端から、第12のリンク12a、第11のリンク11a、第10のリンク10aが順次時計回りに回転するものであるといってもよい。
【0036】
第12のリンク12aは、関節角限界に達するとそれ以上回転できなくなる(曲がらなくなる)。例えば、図5の連結ロッド28とリンク10aとの連結軸が、連結ロッド20aと接触することで、関節角となる。
【0037】
このようにして、先端リンクから順に、それぞれのリンクが関節角限界に達するまで次々に回転していく。これにより、屈曲場所を根本側に順次変えていきながら、リンク機構2を曲線状に(図4では、時計回りの渦巻き状に)巻き取ることができる。回転限界に達したリンクは、屈曲方向に剛体と見なせる。
【0038】
ここで、注意すべきことは、
・巻き取り始めは必ず根本のリンクを固定し、先端のリンクに力を与えること、
・与える力の方向は、リンク機構の伸長方向と連結ロッドの長手方向とのなす角度が大きくなる方向(図4では、時計回り方向)であること、
・関節角限界まで屈曲した先端部は剛体として見なせるので、上記の与える力は、リンク機構2の先端に巻取り方向のトルクを加えることでも実現できる、
の3点である。上記と逆方向(図4では、反時計回り方向)の力を加えても、リンク機構2は動かない。
【0039】
図5では、第12のリンク12a~第6のリンク16は関節角限界まで完全に巻き取られており(すなわち、剛体)、第5のリンク15~第3のリンク13は巻取り過程にあり、第2のリンク12は伸長されている(すなわち、曲がりを持たない)。
【0040】
図5のように曲線状に巻き取られたリンク機構2は、以下のようにして伸長することができる。先ず、伸長されたリンク(図5では、第10のリンク10a~第12のリンク12a)を動かないように固定しながら、巻取り過程にあるリンクに対して、伸ばす方向の(図5では反時計回り方向の)力を与える。
【0041】
すると第3のリンク13は、反時計回りに回転し始める。第3のリンク13が回転し始めると、第3のリンクに直接連結された第4のリンク14や連結ロッド23を介して第5のリンク15も、同様に反時計回りに加速的に回転する。
【0042】
このようにして、根本のリンクから順に、それぞれのリンクが直線状になるまで反時計回りに回転する。
【0043】
ここで、注意すべきことは、
・伸長し始めるときは必ず既に伸長されたリンクを固定し、次のリンクに伸ばす方向の力を与えること、
・力を与えたリンクが直線状になったら、次のリンクに力を与えること、
・次のリンクに順次力を加えるには、リンク機構2の先端に伸長する方向へ(反時計周り)トルクを関節角限界に達したリンクに加えることも実現できる、
の3点である。
【0044】
各リンクと各連結ロッドを構成する部材に十分な剛性があり、また、各リンク間および各リンクと各連結ロッドとの間の連結に実質的な緩み等がなければ、上記のリンク機構の伸長した部分は剛体とみなすことができる。従ってこのリンク機構は、リニアアクチュエータやフレキシブルトラスなどの構造体に利用することができる。さらに、上記のリンク機構の巻き取った部分は、渦巻き状となるので、大きな伸長比を得ることができる。加えて、上記のリンク機構は、自由なところで停止や起動が可能である。
【0045】
このように本実施の形態によれば、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンク機構を提供することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
図6に、第2の実施の形態に係るリンクシステム200を模式的に示す。リンクシステム200は、リンク機構3と、巻き取られたリンクを収納する収納部30と、を備える。リンク機構3は、エンドピン32を備える。収納部30は、ローター31を備える。ローター31は、ガイドスロット34を備える。
【0047】
リンク機構3は、前述の実施の形態で説明したものである。
【0048】
収納部30は、金属やプラスティックなどの任意の好適な材料で形成された筐体であり、リンクシステム200のリンクの巻き取られた部分を収納する。
【0049】
収納部30に配置されたローター31は、中心軸の回りに時計回りおよび半時計回りに回転可能である。ローター31には、5箇所のガイドスロット33が設けられている。ガイドスロット33は、リンクシステム200に設けられたエンドピンと32と、形状および配置の点で適切に噛み合う。これにより、ローター31が時計回りに回転するとリンクシステム200は巻き取られ、ローター31が半時計回りに回転するとリンクシステム200は伸長される。
【0050】
図6の例では、リンクの巻き取りおよび伸長機構は、5つのエンドピンおよびガイドスロットを用いた。しかしこれに限られず、エンドピンおよびガイドスロットの数は任意の好適なものであってもよい。さらに回転力を伝える伝達機構も動力もエンドピンおよびガイドスロットに限られず、例えば摩擦力によるものであってもよい。
【0051】
本実施の形態によれば、リンクの巻き取りおよび伸長機構を備え、巻き取られたリンクを収納することのできる、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンクシステムを提供することができる。
【0052】
[第3の実施の形態]
(実施例1)
図7図9を用いて、第3の実施の形態に係るリンクシステム201を説明する。図7は、リンクシステム201の透視側面図である。図8は、リンクシステム201の透視斜視図である。図9は、リンクシステム201のリンクが伸長されたときの状態を示す側面図である。
【0053】
リンクシステム201は、リンク機構4と、巻き取られたリンクを収納する収納部35と、2つのスパーギア、すなわちスパーギア40aと、スパーギア40bと、を備える。
【0054】
リンク機構4は、前述の実施の形態で説明したものである。ただし、リンク機構4の各リンクには、スパーギア40aおよびスパーギア40bと噛み合うラックが形成されている。
【0055】
スパーギア40aおよびスパーギア40bは、収納部35の出口付近であって、リンク機構4の隣接する2つのリンクに形成されたラックと噛み合う位置に配置される。スパーギア40aおよびスパーギア40bをこのように配置し、これらがリンク機構4の隣接する2つのリンクと噛み合うことにより、これら2つのリンクに対する曲げ方向の力が抑制され、曲げが禁止される。言い換えれば、スパーギア40aおよびスパーギア40bは、収納部35の出口部分に備えられた、少なくとも2つのリンクの曲げを禁止する禁止機構として機能する。その結果、図9に示されるように、直線状に伸長されたリンクは曲がったり撓んだりすることなく、剛性が保たれる。
【0056】
なお、リンク機構4のリンクの巻き取りおよび伸長は、スパーギア40aおよびスパーギア40bの回転によって直接駆動されてもよい。あるいは、リンク機構4のリンクの巻き取りおよび伸長のための駆動機構は別に設けられてもよい。この場合、スパーギア40aおよびスパーギア40bは、専ら曲げを禁止する禁止機構として機能してもよい。
【0057】
本実施の形態によれば、直線状に伸長されたリンクの剛性を保つことができる。
【0058】
(実施例2)
図10図14を用いて、第3の実施の形態の別の実施例に係るリンクシステム202を説明する。図10は、リンクシステム202の透視側面図である。図11は、リンクシステム202の側面図である。図12は、リンクシステム202の斜視図である。図13は、リンクシステム202の正面図である。図14は、リンクシステム202のリンクが伸長されたときの状態を示す側面図である。
【0059】
リンクシステム202は、リンク機構5と、巻き取られたリンクを収納する収納部36と、スクリューナット50と、を備える。
【0060】
リンク機構5は、前述の実施の形態で説明したものである。ただし、リンク機構5の各リンクの周囲には、スクリューナット50と噛み合うネジ山が形成されている。
【0061】
スクリューナット50は、収納部36の出口付近であって、リンク機構5の隣接する2つのリンクに形成ネジ山と噛み合う位置に配置される。スクリューナット50をこのように配置し、これらがリンク機構5の隣接する2つのリンクと噛み合うことにより、これら2つのリンクに対する曲げ方向の力が抑制され、曲げが禁止される。言い換えれば、スクリューナット50は、収納部36の出口部分に備えられた、少なくとも2つのリンクの曲げを禁止する禁止機構として機能する。その結果、図14に示されるように、直線状に伸長されたリンクは曲がったり撓んだりすることなく、剛性が保たれる。
【0062】
なお、リンク機構4のリンクの巻き取りおよび伸長は、スクリューナット50を回転させることによって駆動されてもよい。この場合、スクリューナット50は、リンク機構5のリンクの巻き取りおよび伸長のための駆動機構と、曲げを禁止する禁止機構の両方の機能をあわせ持つ。
【0063】
本実施の形態によれば、直線状に伸長されたリンクの剛性を保つことができる。
【0064】
[第4の実施の形態]
図15に、第4の実施の形態に係るリンクシステムに使われるリンク6を模式的に示す。この実施の形態では、リンク6がスパイラル状に巻き取られる。この場合、巻き取られたリンクの根本からの半径が、先端にいくにつれて連続的または非連続的に増加するように、各リンクおよび各連結ロッドの寸法が構成されてもよい。
【0065】
本実施の形態によれば、リンクシステムの伸長比をさらに改善することができる。
【0066】
[第5の実施の形態]
図16図19を用いて、第5の実施の形態に係るリニアアクチュエータ300を説明する。図16は、リニアアクチュエータ300の透視側面図である。図17は、リニアアクチュエータ300の透視斜視図である。図18は、リニアアクチュエータ300の正面図である。図19は、リニアアクチュエータ300のリンクが伸長されたときの状態を示す側面図である。
【0067】
リニアアクチュエータ300は、リンク機構7と、巻き取られたリンクを収納する収納部37と、モータ60と、ウォームギア61と、ウォームホイール62と、を備える。
【0068】
リンク機構7は、前述の実施の形態で説明したものである。
【0069】
モータ60が回転すると、その回転力は、ウォームギア61およびウォームホイール62を介してリンク機構7に伝えられ、リンクを巻き取るまたは伸長する。すなわち本実施の形態のリニアアクチュエータ300は、リンク機構7と、リンクを巻き取るおよび伸長する動力機構と、を備える。
【0070】
従って、本実施の形態によれば、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリニアアクチュエータを提供することができる。
【0071】
[第6の実施の形態]
前述のリンク機構、リンクシステムあるいはリニアアクチュエータは、ユーザの身体運動を支援する身体支援装置に応用することができる。身体支援装置は、指、肘および肩などの上肢の関節運動を支援するものや、膝および腰などの下肢の運動を支援するものを含む。前述の実施の形態に係るリンク機構、リンクシステム、リニアアクチュエータは、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいため、こうした身体支援装置に好適である。
【0072】
図20に本実施の形態に係る身体支援装置400を装着したユーザ500が、着座した状態から立ち上がるまでの様子を模式的に示す。図20(a)はユーザ500が着座した状態、図20(b)は中腰の状態、図20(c)は立ち上がった状態を示す。
【0073】
身体支援装置400は、前述の実施の形態に係るリンク機構を備える。身体支援装置400はさらに、リンクが巻き取られるまたは伸長されるとき、リンクの巻き取られた部分が床面に接しながら並進運動する。
【0074】
以下、図20を参照して、着座しているユーザ500が立ち上がるまでの、身体支援装置400の動作を説明する。図20(a)に示されるように、身体支援装置400のリンクは、ユーザ500が着座しているとき最も巻き取られた状態にある。ここからユーザが立ち上がると、身体支援装置400のリンクは徐々に伸長する(図20(b))。このリンクの伸長運動により、ユーザの立位運動が補助される。ユーザ500が完全に立ち上がると、身体支援装置400のリンクは最も伸長した状態となる(図20(c))。このようにリンクが伸長していると、ユーザ500は身体支援装置400によって支えられ、ユーザ500が立位姿勢を保つことが助けられる。
【0075】
容易に理解されるように、身体支援装置400は、上記と逆のプロセスをたどることにより、立位しているユーザ500が着座するまでの運動を支援することもできる。
【0076】
図20の右向き矢印で示されるように、身体支援装置400は、リンクが伸長されるとき、リンクの巻き取られた部分が床面に接しながら右向きに並進運動する。この並進運動は、ユーザ500が立ち上がるときに上半身が右に移動する動きと連動する。
【0077】
このように、リンクが伸長されるとき、リンクの巻き取られた部分が床面に接しながら並進運動することにより、より効率的かつスムーズにユーザの運動を支援することができる。
【0078】
図21は、身体支援装置400を装着したユーザ500が着座した状態を示す側面図である。図22は、身体支援装置400を装着したユーザ500が立ち上がった状態を示す側面図である。図示されるように、この例の身体支援装置400は、腰部固定具70と、肩部固定具71と、を備えている。これらの固定具により、ユーザ500は、身体支援装置400を安定的に装着することができる。
【0079】
図23は、身体支援装置401の側面図である。図24は、身体支援装置401の正面図である。身体支援装置401は、14個のリンク、すなわちリンク第1のリンク411、…、第14のリンク414aを備える。身体支援装置401はさらに、12個の連結ロッド、すなわち第1の連結ロッド421、…、第12の連結ロッド422aを備える。ただし、図23および図24では、第2のリンク~第13のリンクおよび第2の連結ロッド~第11の連結ロッドについては、符号の表示を省略している。
【0080】
身体支援装置401はさらに、2本の巻き取り用牽引紐431と、2本の伸長用牽引紐と、を備える。巻き取り用牽引紐431は、第1のリンク411の一方の側(巻き取り用牽引紐431を引いたときに、身体支援装置401の各リンクを巻き取る力が生じる方の側)に固定される。巻き取り用牽引紐431は、第2のリンク412から第14のリンク414aの上を横断して延長する。伸長用牽引紐432は、第1のリンク411の他方の側(伸長用牽引紐432を引いたときに、身体支援装置401の各リンクを伸長する力が生じる方の側)に固定される。伸長用牽引紐432は、第2のリンク412から第14のリンク414aの上(巻き取り用牽引紐431と反対側)を横断して延長する。このように巻き取り用牽引紐431および伸長用牽引紐432を設けると、巻き取り用牽引紐431を引くことにより身体支援装置401の各リンクを巻き取り、伸長用牽引紐432を引くことにより身体支援装置401の各リンクを伸長することができる。
【0081】
図25は、身体支援装置401のリンク機構を最も巻き取ったときの側面図である。図26は、身体支援装置401のリンク機構を最も巻き取ったときの正面図である。身体支援装置401の各リンクは正面から見たときU字型であるように構成されている。さらに、身体支援装置401の各リンクおよび各連結ロッドの寸法は、巻き取られたリンクの根本からの半径が、先端にいくにつれて連続的増加するように構成されている。身体支援装置401の各リンクおよび連結ロッドをこのように設計することにより、リンクの巻き取られた部分をスパイラル状に収納することができる。さらに、各リンクのU字部分が床面に接することにより、身体支援装置401のリンクが巻き取られるまたは伸長されるとき、リンクの巻き取られた部分が床面に接しながら並進運動することができる。
【0082】
図27は、ユーザ500が身体支援装置401を身体の左側に装着したとき、正面から撮影した写真である。図28は、ユーザ500が身体支援装置401を身体の左側に装着したとき、左側面から撮影した写真である。
【0083】
図29は、第6の実施の形態に係る身体支援装置の2つのプロトタイプ、すなわち第1のプロトタイプ402および第2のプロトタイプ403を側面から撮影した写真である。図30は、第1のプロトタイプ402および第2のプロトタイプ403を正面から撮影した写真である。
【0084】
第2のプロトタイプ403は、リンク機構、巻き取り用牽引紐431および伸長用牽引紐432に加えて、巻き取り用牽引紐431および伸長用牽引紐432を引くためのモータ440を備える。これにより、ユーザの運動をさらに効率的に支援することができる。
【0085】
図31に、第6の実施の形態に係る身体支援装置を用いて、ユーザの着座から立位、立位からの歩行を支援する様子を模式的に示す。
【0086】
ユーザは、身体支援装置を身体の両側に装着する。前述のように、身体支援装置のリンクは、ユーザが着座しているとき最も巻き取られた状態にある。ここからユーザが立ち上がると、身体支援装置のリンクは徐々に伸長する。このリンクの伸長運動により、ユーザの立位運動が補助される。ユーザが完全に立ち上がると、身体支援装置のリンクは最も伸長した状態となる。このようにリンクが伸長していると、ユーザは身体支援装置によって支えられ、ユーザが立位姿勢を保つことが助けられる。
【0087】
さらに立位状態から歩行に移ると、ユーザが歩行時に引き上げる方の足の側の身体支援装置のリンクが巻き取られる。このリンクの巻き取り運動により、ユーザの足の引き上げが補助される。続けて、ユーザが引き上げた足を伸ばすとき、当該伸ばす足の側の身体支援装置のリンクが伸長される。このリンクの伸長運動により、ユーザの足を伸ばす運動が補助される。以下、同様に、このような身体支援装置のリンクの巻き取りおよび伸長を、左右交互に繰り返すことにより、ユーザの歩行を補助することができる。
【0088】
[本開示の各態様]
本開示のある態様のリンク機構は、巻き取りおよび伸長が可能なリンク機構であって、互いに回転可能に直列に連結された少なくとも4個のリンクと、リンク同士を1つおきに連結する少なくとも2個の連結ロッドと、を備える。連結ロッドは、連結対象のリンクの間にあるリンクを斜めに横断して、連結対象のリンク同士を回転可能に連結する。連結ロッド同士は、リンクを直線状に伸長したとき、互いに略平行に配置されている。
【0089】
この態様によれば、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンク機構を提供することができる
【0090】
本開示のある態様のリンクシステムは、上記の態様のリンク機構と、巻き取られたリンクを収納する収納部を備える。
【0091】
この態様によれば、巻き取られたリンクを収納することのできる、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリンクシステムを提供することができる。
【0092】
ある態様では、収納部の出口部分に、少なくとも2つのリンクの曲げを禁止する禁止機構を備える。
【0093】
この態様によれば、直線状に伸長されたリンクの剛性を保つことができる。
【0094】
ある態様では、リンクがスパイラル状に巻き取られる。
【0095】
この態様によれば、リンクシステムの伸長比をさらに改善することができる。
【0096】
本開示のある態様のリニアアクチュエータは、上記の態様のリンク機構と、リンクを巻き取るおよび伸長する動力機構と、を備える。
【0097】
この態様によれば、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトなリニアアクチュエータを提供することができる。
【0098】
本開示のある態様の身体支援装置は、上記のいずれかの態様のリンク機構を備える。
【0099】
この態様によれば、伸長比が高く、多点停止が可能で、設置スペースが小さいコンパクトな身体支援装置を提供することができる。
【0100】
ある態様では、リンクが巻き取られるまたは伸長されるとき、リンクの巻き取られた部分が床面に接しながら並進運動する。
【0101】
この態様によれば、ユーザの運動をさらに効率的に支援することができる。
【0102】
以上、本開示を実施例を基に説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合わせには、色々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0103】
例えば、第5の実施の形態のリニアアクチュエータ300は、リンクを巻き取るおよび伸長する動力機構として、モータ60と、ウォームギア61と、ウォームホイール62を用いた。しかしこれに限られず、モータの回転力を伝える伝達機構は、スパーギア、ヘリカルギア、ベベルギアなどであってもよい。さらに動力もモータに限られず、油圧や空気圧によるものであってもよいし、人工筋によるものであってもよい。
【0104】
この変形例によれば、構成の自由度を向上させることができる。
【0105】
以上、実施の形態及び変形例を説明した。実施の形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は実施の形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施の形態及び変形例は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施の形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のリンク機構およびリンクシステムは、フレキシブルトラフなどの構造物やリニアアクチュエータの構成部品に利用することができる。本発明のリニアアクチュエータは、ロボット、オートメーション、産業用アプリケーションに利用することができる。本発明の身体補助装置は、指、肘および肩などの上肢の関節運動の支援、膝および腰などの下肢の運動の支援に利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1・・リンク機構、
2・・リンク機構、
3・・リンク機構、
4・・リンク機構、
5・・リンク機構、
6・・リンク、
7・・リンク機構、
11・・第1のリンク、
12・・第2のリンク、
13・・第3のリンク、
14・・第4のリンク、
15・・第5のリンク、
16・・第6のリンク、
17・・第7のリンク、
18・・第8のリンク、
19・・第9のリンク、
10a・・第10のリンク、
11a・・第11のリンク、
12a・・第12のリンク、
21・・第1の連結ロッド、
22・・第2の連結ロッド、
23・・第3の連結ロッド、
24・・第4の連結ロッド、
25・・第5の連結ロッド、
26・・第6の連結ロッド、
27・・第7の連結ロッド、
28・・第8の連結ロッド、
29・・第9の連結ロッド、
20a・・第10の連結ロッド、
30・・収納部、
31・・ローター、
32・・エンドピン、
33・・ガイドスロット、
34・・ガイドスロット、
35・・収納部、
36・・収納部、
37・・収納部、
40a・・スパーギア、
40b・・スパーギア、
50・・スクリューナット、
60・・モータ、
61・・ウォームギア、
62・・ウォームホイール、
70・・腰部固定具、
71・・肩部固定具、
101・・貫通孔、
102・・貫通孔、
103・・貫通孔、
104・・貫通孔、
105・・貫通孔、
106・・貫通孔、
107・・貫通孔、
200・・リンクシステム、
201・・リンクシステム、
202・・リンクシステム、
300・・リニアアクチュエータ、
400・・身体支援装置、
401・・身体支援装置、
402・・第1のプロトタイプ、
403・・第2のプロトタイプ、
411・・第1のリンク、
412・・第2のリンク、
414a・・第14のリンク、
421・・第1の連結ロッド、
422a・・第12の連結ロッド、
431・・巻き取り用牽引紐、
432・・伸長用牽引紐、
440・・モータ、
500・・ユーザ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31