(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035520
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240307BHJP
B41J 2/195 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/195
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140022
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EA28
2C056EB16
2C056EB30
2C056EC29
2C056EC45
2C056FA10
2C056HA15
2C056KB13
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】低温環境の場合や高粘度のインクを使用する場合でもインク吐出可能とする。
【解決手段】プリンタ10は、インクヘッド21と、キャリッジ22と、インクカートリッジ25と、インクチューブ60と、ヒータ線70と、を備えている。ヒータ線70が可撓性を有することで、キャリッジ22の移動を妨げない。また、ヒータ線70がインクチューブ60の内部に設けられていることで、インクがインクカートリッジ25からインクヘッド21に向かって流れる間に、ヒータ線70がインクを加熱することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジに備えられ、インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクが貯留されたインクカートリッジと、
前記インクカートリッジに接続された第1接続部と、前記インクヘッドに接続された第2接続部とを有し、前記インクが流れるインクチューブと、
前記インクチューブの内部に設けられ、前記インクを加熱する可撓性を有するヒータ線と、を備え、
前記ヒータ線は、前記インクチューブのうち前記キャリッジの外部に位置する第1位置から、前記インクチューブのうち前記第1位置よりも前記第2接続部に近い第2位置にわたって設けられている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第2位置は、前記インクチューブの前記第1接続部と前記第2接続部との中間よりも前記インクヘッドに近い位置である、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記ヒータ線を制御する制御装置と、
前記インクの温度を測定する測温体と、を備え、
前記測温体は、前記第2位置、または、前記第2位置よりも前記インクヘッドに近い位置の前記インクの温度を測定し、
前記制御装置は、
前記測温体の測定値を受信する受信部と、
前記受信部が受信した測定値が予め設定された設定温度になるように前記ヒータ線を制御する温度制御部と、を有している、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ヒータ線から前記インクチューブの外部に延びる第1外部電線および第2外部電線を備え、
前記インクチューブは、
前記第1接続部と前記第1位置との間に位置する上流部と、前記第1位置と前記第2位置との間に位置する中途部と、前記第2位置と前記第2接続部との間に位置する下流部と、を有し、
前記第1位置に形成され、前記インクチューブの前記上流部と前記第1外部電線と前記インクチューブの前記中途部とが接続された第1ジョイントと、
前記第2位置に形成され、前記インクチューブの前記中途部と前記第2外部電線と前記インクチューブの前記下流部とが接続された第2ジョイントと、を備えた請求項1から3のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記キャリッジは、第1移動位置と第2移動位置との間を移動するように構成され、
前記インクチューブは、
前記キャリッジが前記第1移動位置と前記第2移動位置との間を移動するときに屈曲する屈曲領域と、
前記屈曲領域よりも前記インクカートリッジに近い非屈曲領域と、を備え、
前記第1ジョイントおよび前記第2ジョイントのいずれか一方は、前記非屈曲領域に設けられている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ヒータ線の全部または一部は、螺旋形状を有している、請求項1、2、および3のいずれか一つ記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記ヒータ線の全部または一部は、網目形状を有している、請求項1、2、および3のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体に対して相対移動するキャリッジに備えられ、ノズルからインクを吐出するインクヘッドと、キャリッジに備えられ、インクを加熱するヒータと、インクを貯留するインクカートリッジとインクヘッドとを繋ぐインク供給路と、を備えるインクジェットプリンタが知られている。例えば、特許文献1には、ヒータを用いてインクを加熱し、インクの温度を一定に保ちながらインクを吐出するインクジェットプリンタが開示されている。一般的に、インクジェットプリンタに用いられるインクは、温度が高くなるほど粘度が低下し、温度が低くなるほど粘度が上昇する。したがって、インクの粘度が変化すると、ノズルから吐出されるインクの吐出量が変化し、印刷を所望のとおりに実行することができない。そこで、係るインクジェットプリンタでは、インクを加熱するヒータを制御し、インクの温度を一定に保つことによりインクの粘度が一定に保たれている。このことにより、インクの吐出量を一定に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなインクジェットプリンタでは、インク供給路のうちヒータによりインクが加熱される領域が大きいほど、インクをより多く加熱することができる。しかし、上記インクジェットプリンタでは、インクを加熱するヒータユニットは、キャリッジの内部にのみ配置されている。すなわち、ヒータユニットが配置される領域は、インク供給路のうち比較的小さな領域に留まっている。
【0005】
上記のようなインクジェットプリンタでは、インクを加熱する領域が限られていることから、周囲温度が比較的低い場合(例えば、20℃未満の場合)、インクの温度が所望の温度まで上昇しない可能性がある。インクの温度が所望の温度まで上昇しないと、インクの吐出不良が発生する。そこで、インクの吐出不良が発生しないように、インクジェットプリンタが使用できる周囲温度に下限値(例えば、20℃)が設けられている。また、一般的に用いられるインクよりも高粘度のインクを用いて印刷しようとする場合、インクの温度をより高い温度に保ち、粘度を下げておく必要がある。しかし、インクが加熱される領域が制限されるため、所望の粘度になる温度までインクを加熱することができない可能性がある。したがって、ユーザは、使用するインクの種類が制限される。
【0006】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的低い周囲温度において印刷する場合や、比較的高粘度のインクを用いて印刷する場合でも、良好にインクを吐出可能なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示されるインクジェットプリンタは、往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに備えられ、インクを吐出するインクヘッドと、前記インクが貯留されたインクカートリッジと、前記インクカートリッジに接続された第1接続部と、前記インクヘッドに接続された第2接続部とを有し、前記インクが流れるインクチューブと、前記インクチューブの内部に設けられ、前記インクを加熱する可撓性を有するヒータ線と、を備えている。前記ヒータ線は、前記インクチューブのうち前記キャリッジの外部に位置する第1位置から、前記インクチューブのうち前記第1位置よりも前記第2接続部に近い第2位置にわたって設けられている。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタによると、ヒータ線はインクチューブの内部に設けられている。そのため、インクチューブ内のインクを直接的に加熱することができる。また、ヒータ線は第1位置から第2位置にわたって設けられており、少なくとも第1位置はキャリッジの外部の位置である。そのため、インクを加熱する領域がキャリッジ内に制限されない。インクチューブのより広範囲の領域にてインクを加熱することができる。したがって、従来に比べて、インクを十分に加熱することができる。ところで、ヒータ線をより広範囲に配置する場合、ヒータ線がキャリッジの移動を妨げてしまうことが懸念される。しかし、前記ヒータ線は可撓性を有しているため、キャリッジが移動するときに、インクチューブと一緒に屈曲することができる。このことにより、前記インクチューブの内部の広範囲の領域に前記ヒータ線を設けても、前記キャリッジの移動は妨げられない。以上のことから、前記インクが前記インクカートリッジから前記インクヘッドに至る間に、前記インクを所望の温度になるよう十分に加熱することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的低い周囲温度において印刷する場合や、比較的高粘度のインクを用いて印刷する場合でも、良好にインクを吐出可能なインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】一実施形態に係るインクヘッドの底面の構成を示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係るインク供給システム示す模式図である。
【
図5】キャリッジが移動するときのプリンタの正面図である。
【
図6】一実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図7】
図7(a)および(b)は、別実施形態に係るヒータ線を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。
図2は、プリンタ10の主要部の正面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは、主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Zは、上下方向を示している。図面中の符号Xは、副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)する方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、ベース部材40と、本体ケース50と、右脚部16Rと、左脚部16Lと、を備えている。ベース部材40は、プラテン15を備えている。プラテン15は、主走査方向Yに延びている。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40の下部に取り付けられている。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40を支持する。
図2に示すように、本体ケース50には、複数のインクカートリッジ25が収容されている。プリンタ10は、インクカートリッジ25ごとにインク供給システム55を備える。また、プリンタ10は、キャリッジ22と制御装置30とを備えている。キャリッジ22には、4つのインクヘッド21が備えられている。
【0014】
プリンタ10は、ベース部材40に設けられたガイドレール13を備えている。ガイドレール13は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール13には、キャリッジ22が係合している。キャリッジ22は、キャリッジ移動機構8によって、ガイドレール13に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構8は、ガイドレール13の左端側に配置された左側のプーリ19aと、ガイドレール13の右端側に配置された右側のプーリ19bとを有している。右側のプーリ19bには、キャリッジモータ8aが連結されている。なお、キャリッジモータ8aは左側のプーリ19aに連結されていてもよい。右側のプーリ19bは、キャリッジモータ8aによって駆動される。左側のプーリ19aおよび右側のプーリ19bには、それぞれベルト16が巻き掛けられている。キャリッジ22は、ベルト16に固定されている。左側のプーリ19aおよび右側のプーリ19bが回転してベルト16が走行すると、キャリッジ22が主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ22はガイドレール13に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0015】
図2に示すように、プラテン15は、ベース部材40のほぼ中央に設けられている。プラテン15は、本体ケース50の左前カバー54Lと右前カバー54Rとの間に配置されている。プラテン15には、記録媒体12が載置される。プラテン15は、主走査方向Yに延びている。プラテン15には、複数のグリットローラ17が設けられている。グリットローラ17は、ベース部材40に設けられた図示しないピンチローラと対向する位置に配置されている。グリットローラ17はフィードモータ17aに連結されている。グリットローラ17はフィードモータ17aによって回転駆動される。記録媒体12がグリットローラ17とピンチローラとの間に挟まれた状態でグリットローラ17が回転すると、記録媒体12は副走査方向X(
図1参照)に搬送される。
【0016】
インクカートリッジ25は、インクを貯留する容器である。本実施形態では、4個のインクカートリッジ25が本体ケース50に収容されるが、インクカートリッジ25の数は、4個に限定されない。インクカートリッジ25は、後述するインクチューブ60(
図4参照)の第1接続部65(
図4参照)に着脱自在に接続されている。インクカートリッジ25は、インクヘッド21より上方に配置されている。インクカートリッジ25には、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、および、ブラックインクなどのプロセスカラーインクや、ホワイトインク、メタリックインク、および、クリアインクなどの特色インク、あるいは無色インクのうち何れかのインクが貯留されている。
【0017】
図3は、キャリッジ22の下面の構成を模式的に示す平面図である。キャリッジ22は、インクヘッド21を搭載し、インクヘッド21を移動させるための部材である。インクヘッド21は、ノズル面23を有している。ノズル面23は、インクヘッド21の底面を構成している。インクヘッド21は、ノズル面23が露出するようにキャリッジ22に取り付けられている。各ノズル面23には、複数のノズル24が形成されている。ノズル24は、記録媒体5にインクを吐出する微細な穴である。インクヘッド21において、複数のノズル24は、副走査方向Xに並ぶノズル列を形成している。ここでは、主走査方向Yに隣り合う2列のノズル列が形成されている。以下では、ノズル24が形成する2つの列をそれぞれ第1ノズル列24a、第2ノズル列24bとする。ここでは、各インクヘッド21におけるノズル列の数は2列であるが、これに限定されない。ノズル列の数は、1列でもよく、3列以上でもよい。また、
図3では、ノズル列を形成するノズル24の数は12個としているが、実際にはもっと多数(例えば200~300個程度)のノズル24が形成されている。ノズル列を形成するノズル24の数は限定されない。本実施形態では、インクヘッド21の数は4つだが、インクへッドの数は4つに限定されない。また、インクヘッド21は、インクヘッドの内部を通過するインクを加熱するためのヒータ(図示せず)を有していてもよい。
【0018】
図2に示すように、プリンタ10は、インクカートリッジ25ごとにインク供給システム55を備えている。
図4は、インクカートリッジ25からインクヘッド21へインクを供給するインク供給システム55を示す模式図である。
図4に示すように、インク供給システム55は、インクカートリッジ25、インクヘッド21、インクチューブ60、バルブ67、供給ポンプ68、ヒータ線70、ダンパー80、および測温体90を備えている。ヒータ線70は、インクチューブ60の途中に位置する第1位置61の第2位置62にわたって設けられている。
図2に示すように、インクヘッド21およびダンパー80はキャリッジ22に搭載され、主走査方向Yに往復移動する。一方、インクカートリッジ25は、キャリッジ22に搭載されておらず、主走査方向Yに往復移動しない。本実施形態では、合計4つのインクチューブ60が設けられている。インクチューブ60は、ケーブル類保護案内装置46により覆われている。
【0019】
図4に示すように、バルブ67は、インクチューブ60に接続されている。本実施形態では、バルブ67は、インクカートリッジ25と供給ポンプ68との間に配置されている。バルブ67は、インクチューブ60の流路を開放または閉鎖可能に構成されている。なお、「バルブ67がインクチューブ60の流路を開放または閉鎖」するとは、バルブ67がインクチューブ60の流路を完全に開放または閉鎖する場合と、インクチューブ60の流路を部分的に開放または閉鎖する場合とを含む。バルブ67が開放されると、インクチューブ60の流路が開放され、バルブ67が閉鎖されると、インクチューブ60の流路が閉鎖される。バルブ67がインクチューブ60の流路を開放することにより、インクカートリッジ25に収容されたインクをインクヘッド21に供給することができる。一方、バルブ67がインクチューブ60の流路を閉鎖すると、インクカートリッジ25に収容されたインクをインクヘッド21に供給することができなくなる。バルブ67は、制御装置30によって制御される。
【0020】
供給ポンプ68は、インクチューブ60に接続されている。本実施形態では、供給ポンプ68は、バルブ67とインクチューブ60の第1位置61との間に配置されている。供給ポンプ68は、インクカートリッジ25からインクヘッド21に向けてインクを供給する。即ち、バルブ67が開放されているときに、供給ポンプ68は、インクカートリッジ25からインクヘッド21に向けてインクを供給する。供給ポンプ68は、ダンパー80に備えられた貯留室81内の圧力が所定の圧力以下(例えば貯留室81内の絶対圧が所定の圧力以下)であることが検出されたときに駆動される。供給ポンプ68によって貯留室81にインクが所定の量だけ供給された後には、貯留室81内の圧力が所定の圧力より大きく(例えば貯留室81内の絶対圧が所定の圧力より大きく)なっている。
【0021】
インクカートリッジ25とインクヘッド21とは、インクチューブ60を介して連通している。インクチューブ60は、インクカートリッジ25からインクヘッド21にインクを導く流路を形成している。インクチューブ60は、可撓性を有しており、弾性変形が可能である。したがって、キャリッジ22が主走査方向Y(
図2参照)に移動しても、インクチューブ60は損傷しない。また、このとき、インクチューブ60が変形するため、キャリッジ22の移動はインクチューブ60によって妨げられない。インクチューブ60は、例えば、可撓性を有するゴム製のチューブにより形成されるが、インクチューブ60を形成する材料は、これに限定されない。
【0022】
インクチューブ60は、インクカートリッジ25に接続された第1接続部65と、インクヘッド21に固定された第2接続部66と、を備えている。また、インクチューブ60は、第1接続部65と第1位置61との間に位置する上流部60Aと、第1位置61と第2位置62との間に位置する中途部60Bと、第2位置62と第2接続部66との間に位置する下流部60Cと、を備えている。ここで、第1位置61は、インクチューブ60のうちキャリッジ22の外部に位置する位置である。第2位置62は、インクチューブ60のうち第1位置61よりも第2接続部66に近い位置である。本実施形態では、第2位置62は、キャリッジ22の外部に隣接する位置に設けられている。ここでは、インクがインクカートリッジ25とインクヘッド21との間を流れるとき、第1位置61はインクの流れの上流に位置し、第2位置62はインクの流れの下流に位置する。なお、インクチューブ60の長さは、インク供給システム55ごとに異なるものであってもよい。また、第1位置61および第2位置62の配置も、インク供給システム55ごとに異なる位置であってもよい。
【0023】
図5は、キャリッジ22が主走査方向Yに移動するときのインク供給システム55を表す模式的な正面図である。キャリッジ22は、第1移動位置R1と第2移動位置R2との間を移動する。第1移動位置R1および第2移動位置R2は、キャリッジ22がガイドレール13に沿って移動するときのキャリッジ22の主走査方向Yの位置である。本実施形態では、キャリッジ22がガイドレール13の右端にあるときのキャリッジ22の位置を第1移動位置R1とし、キャリッジ22がガイドレール13の左端にあるときのキャリッジ22の位置を第2移動位置R2とする。ただし、第1移動位置R1および第2移動位置R2は特に限定されない。インクチューブ60は、下方から上方に向かって左方に折り返された屈曲部100を有する。キャリッジ22が第1移動位置R1と第2移動位置R2との間を移動するとき、屈曲部100の位置も移動する。このとき、屈曲部100を形成するインクチューブ60の領域が変化する。以下では、キャリッジ22が第1移動位置R1にあるときに屈曲部100を形成するインクチューブ60の領域を第1流路101とする。第1流路101よりも上流の領域を第2流路102とする。キャリッジ22が第1移動位置R1から第2移動位置R2に移動するとき、インクチューブ60の有する可撓性により、第1流路101は、屈曲している状態から徐々に左右方向に延びた状態に変形する。このとき、第2流路102は、第1流路101に近い部分から徐々に屈曲する。キャリッジ22が第2移動位置R2まで移動したとき、第2流路102の一部が屈曲部100を形成する。このように、インクチューブ60は、キャリッジ22が第1移動位置R1と第2移動位置R2との間を移動するときに、屈曲部100を形成し得る領域と、屈曲部100を形成することがない領域と、を有する。すなわち、インクチューブ60は、キャリッジ22の移動中に屈曲し得る領域と屈曲しない領域とを有する。インクチューブ60の領域のうち、キャリッジ22が第1移動位置R1と第2移動位置R2との間を移動するときに屈曲し得る領域を屈曲領域60aとする。屈曲領域60aよりも上流の領域を非屈曲領域60bとする。
【0024】
図4に示すように、ヒータ線70は、インクチューブ60の内部に配置されている。ヒータ線70は、第1位置61から第2位置62にわたって設けられている。ヒータ線70は、第1位置61と第2位置62の間を通過するインクを加熱する。インク供給システムは、ヒータ線からインクチューブの外部に延びる第1外部電線71および第2外部電線72を備えている。第1外部電線71および第2外部電線72は制御装置30に接続されている。制御装置30は、第1外部電線71および第2外部電線72を通じてヒータ線70に電気を供給する。ヒータ線70は、制御装置30により制御される。
【0025】
ヒータ線70は、可撓性を有する。したがって、キャリッジ22が移動するときに、ヒータ線70は、インクチューブ60の移動を妨げない。例えば、インクチューブ60が屈曲部100(
図5参照)を形成しているとき、第1流路100(
図5参照)の内部のヒータ線70も第1流路100と同様に屈曲している。このように、インクチューブ60が屈曲するときヒータ線70も屈曲することにより、ヒータ線70は、キャリッジ22の主走査方向Yの移動を妨げない。なお、必ずしもヒータ線70の全体が可撓性を有していなくてもよい。ヒータ線70のうち、少なくともインクチューブ60の屈曲部100に配置されている部分が可撓性を有していればよい。ヒータ線70の材料は、特に限定されない。本実施形態では、ヒータ線70はステンレス線により形成されている。
【0026】
ヒータ線70の長さは、インクの温度を所望の温度となるまで上昇させることができるような長さであることが好ましい。例えば、ヒータ線70がインクの温度を所望の温度まで上昇させるために必要な加熱時間をt[sec]とする。単位時間あたりにノズル24から吐出されるインクの量をV[mm3/sec]とすると、t[sec]の間に吐出されるインクの量は、V×t[mm3]である。インクチューブ60の断面積をA[mm2]とする。このとき、ヒータ線70の長さを、(V×t)/A[m]とすると、ヒータ線70は、インクが第1位置61と第2位置62との間を通過する間に、インクをt[sec]だけ加熱することができる。ヒータ線70は、インクが第1位置61と第2位置62との間を通過する間に、インクの温度を所望の温度まで上昇させることができる。したがって、ヒータ線70は、(V×t)/A[m]以上の長さを有することが好ましい。
【0027】
図4に示すように、インクチューブ60の第1位置61には第1ジョイント63が設けられている。インクチューブ60の第2位置62には第2ジョイント64が設けられている。第1ジョイント63および第2ジョイント64は、インクチューブ60に分岐を設ける分岐路である。第1ジョイント63および第2ジョイント64は、可撓性を有しない材料により形成されている。本実施形態では、第1ジョイント63および第2ジョイント64は、逆T字の形状を有している。第1ジョイント63には、インクチューブ60の上流部60Aと、第1外部電線71と、インクチューブ60の中途部60Bとが接続されている。第2ジョイント64には、インクチューブの中途部60Bと、第2外部電線72と、インクチューブの下流部60Cと、測温体90と、が接続されている。
【0028】
ヒータ線70は、第1外部電線71および第2外部電線72に接続されていてもよいが、第1外部電線71とヒータ線70と第2外部電線72とは、単一のヒータ線(以下、単一線という)であってもよい。その場合、作業者は、第1ジョイント63からインクチューブ60の内部に単一線を引き込み、第2ジョイント64からインクチューブ60の外部に単一線を引き出すことにより、インクチューブ60の内部にヒータ線70を配置することができる。第1ジョイント63および第2ジョイント64の材質は、特に限定されないが、例えば樹脂製である。第1ジョイント63および第2ジョイント64は可撓性を有しないため、
図5に示すように、第1ジョイント63および第2ジョイント64は、インクチューブ60の屈曲領域60a以外の箇所に設けられる。本実施形態では、第1ジョイント63は、非屈曲領域60bに設けられている。第2ジョイント64は、屈曲領域60aよりも下流の領域に配置されている。なお、
図5においてヒータ線70は、図示を省略されている。
【0029】
図4に示すように、ダンパー80は、インクチューブ60の第2位置62とインクヘッド21との間に接続されている。ダンパー80は、インクが一時的に貯留される貯留室81を有している。貯留室81には、インクカートリッジ25から供給されたインクが一時的に貯留される。ダンパー80は、インクヘッド21と連通している。ダンパー80は、例えばインクヘッド21の上部に設けられる。ダンパー80は、検出装置(図示せず)を備えている。検出装置は、ダンパー80の貯留室81内の圧力(言い換えると、貯留室81に流入するインクの量)を検出する。貯留室81内の圧力に基づいて供給ポンプ68が制御される。
【0030】
測温体90は、インクチューブ60の第2位置62に配置されている。本実施形態では、測温体90は、第2ジョイント64により接続されている。測温体90は、インクの温度を測定する部材である。例えば、測温体90は、サーミスタや熱電対である。本実施形態では、測温体90は、第2位置62を通過するインクの温度を測定する。測温体90は、制御装置30と電気的に接続されている。測温体90の測定値に基づいて制御装置30がヒータ線70を制御する。
【0031】
図6に示すように、プリンタ10の全体の動作は、制御装置30によって制御されている。制御装置30の構成は特に限定されない。制御装置30は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。
図2に示すように、制御装置30は、本体ケース50の内部に設けられている。ただし、制御装置30は本体ケース50の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置30は、プリンタ10の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置30は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0032】
図6に示すように、制御装置30は、インクヘッド21、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、バルブ67、供給ポンプ68、ヒータ線70、および測温体90と通信可能に接続している。制御装置30は、インクヘッド21、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、バルブ67、供給ポンプ68、およびヒータ線70を制御する。
【0033】
図6に示すように、制御装置30は、受信部31および温度制御部32を備えている。制御装置30の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置30の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0034】
受信部31は、測温体90が測定したインクの温度を受信する。温度制御部32は、受信部31が受信したインクの温度に基づいて、ヒータ線70を制御する。温度制御部32がヒータ線70を制御することにより、インクの温度を所望の温度まで上昇させることができる。温度制御部32は、例えば、ヒータ線70により消費される電力を制御する。例えば、インクの比熱をc[J/(g・℃)]、インクの所望の温度をT1[℃]、インクチューブ60の第1位置61と第2位置62との間に含まれるインクの重量をP[g]とする。受信部31が受信したインクの温度をT2[℃](T1>T2)とすると、インクの所望の温度と受信部31が受信したインクの温度との差ΔTは、ΔT=T1-T2[℃]である。このとき、インクの温度を所望の温度まで上昇させるには、c×P×ΔT=c×P×(T1-T2)[J]だけ熱量が必要である。ここで、ヒータ線70がインクの温度を所望の温度まで上昇させるために必要な加熱時間をt[sec]とする。このとき、ヒータ線70により消費される電力が(c×W×(T1-T2))/t[W]となるように、温度制御部32がヒータ線70を制御することで、インクの温度を所望の温度まで加熱することができる。
【0035】
以上、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成について説明した。次に、インクがヒータ線70により加熱され、インクヘッド21から吐出されるまでのプリンタ10の動作について説明する。
【0036】
図5において、インクは、インクカートリッジ25からインクチューブ60の上流部60Aを通り第1位置61に到達する。このときインクは加熱されていないため、室温程度の温度となっている。第1位置61を通過したインクは、インクチューブ60の中途部60Bを流れる。中途部60Bには、ヒータ線70が配置されているため、インクは中途部60Bを流れるときにヒータ線70により加熱される。ヒータ線70は、制御装置30の温度制御部32により制御されているため、インクが第2位置62に到達するとき、インクの温度は、所望の温度まで上昇している。第2位置62を通過したインクは、ダンパー80を通り、インクヘッド21に到達する。制御装置30がインクヘッドを駆動することにより、インクは、インクヘッド21のノズル24(
図3参照)から吐出される。
【0037】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、ヒータ線70は、インクチューブ60の中途部60Bにおいて、インクを直接的に加熱することができる。したがって、従来に比べてインクを十分に加熱することができる。また、ヒータ線70は、可撓性を有しているため、キャリッジ22が移動するときにインクチューブ60と一緒に屈曲することができる。このことにより、インクチューブ60の内部にヒータ線70が設けられていても、キャリッジ22の移動が妨げられない。
【0038】
本実施形態のプリンタ10によると、第2位置62は、キャリッジ22の外部に隣接する位置であり、第1接続部65と第2接続部66との中間よりもインクヘッド21に近い位置である。ここで、ヒータ線70は、第1位置61から第2位置62にわたって設けられている。したがって、インクは、第2位置62を通過してからインクヘッド21に到達するまでの間は、ヒータ線70により加熱されない。そこで、第2位置62をインクヘッド21に比較的近い位置に設けることにより、インクが第2位置62を通過してからインクヘッド21に到達するまでの間に、インクの温度が低下することが抑制される。
【0039】
本実施形態のプリンタ10によると、測温体90は、第2位置62を通過するインクの温度を測定している。制御装置30は、測温体90の測定値に基づいてヒータ線70を制御している。第2位置62は、インクを吐出するインクヘッド21に比較的近い位置である。測温体90が第2位置62を通過するインクの温度を測定することにより、インク吐出時のインクの所望の温度と、実際にインクが吐出されるときのインクの温度と、の差異を小さくすることができる。
【0040】
本実施形態のプリンタ10によると、インクチューブ60の第1位置61に第1ジョイント63が設けられ、インクチューブ60の第2位置62に第2ジョイント64が設けられている。第1外部電線71とヒータ線70と第2外部電線72とが接続されている場合または一体となっている場合、作業者は、第1ジョイント63からインクチューブ60の内部にヒータ線70および第2外部電線72を引き込み、第2ジョイント64からインクチューブ60の外部に第2外部電線72を引き出すことにより、インクチューブ60の内部にヒータ線70を配置することができる。したがって、第1ジョイント63および第2ジョイント64が設けられていることにより、ヒータ線70の配置が容易となる。
【0041】
本実施形態のプリンタ10によると、第1ジョイント63は、非屈曲領域60bに設けられ、第2ジョイント64は、インクチューブ60のうち屈曲領域60aよりも下流の領域に配置されている。したがって、キャリッジ22が第1移動位置R1と第2移動位置R2との間を移動するときに、第1ジョイント63および第2ジョイント64により、インクチューブ60の屈曲が妨げられることがない。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は、ほかにも種々の形態で実施可能である。
【0043】
上述した実施形態では、ヒータ線70は、インクチューブ60に沿った線状の形状をしているが、これに限定されない。
図7(a)、(b)は、ヒータ線70が上述した実施形態と異なる形状を有する場合のインクチューブ60の断面図である。
図7(a)、(b)では、第1ジョイント63および第2ジョイント64は、図示を省略している。例えば、
図7(a)に示すように、ヒータ線70は、全部又は一部が螺旋形状を有していてもよい。また、
図7(b)に示すように、ヒータ線70は、全部又は一部が網目形状を有していてもよい。ヒータ線70が螺旋形状または網目形状を有することにより、ヒータ線70とインクとが接触する面積が増加する。したがって、ヒータ線70がインクを加熱する領域が増加する。このことにより、第1位置61と第2位置62の間隔を上述した実施形態よりも短くすることができる。あるいは、第1位置61と第2位置62との間隔が上述した実施形態と同じ場合、インクの温度を上述した実施形態よりも高い温度まで上昇させることができる。
【0044】
上述した実施形態では、ヒータ線70によってインクが加熱される。しかしながら、インクヘッド21がヒータを備えることにより、ヒータ線70によるインクの加熱に加えて、インクヘッド21の内部でインクが加熱されてもよい。インクがインクチューブ60の第2位置62を通過した後、インクがインクヘッド21の備えるノズル24から吐出されるまでの間にインクの温度が低下する場合がある。インクヘッド21がヒータを備えていることにより、インクヘッド21の内部でもインクが加熱される。したがって、インクが第2位置62を通過した後に、インクの温度が低下してもインクヘッド21の内部で再度インクを加熱することができる。このことにより、インク吐出時のインクの温度をより正確に制御することができる。
【0045】
上述した実施形態では、ヒータ線70は、第1ジョイント63および第2ジョイント64により設けられた分岐により、インクチューブ60に設けられていた。しかしながら、ヒータ線70をインクチューブ60に設ける方法は、これに限定されない。例えば、インクチューブ60は、第1位置61および第2位置62にヒータ線70が通過できる穴が形成されていてもよい。第1位置61および第2位置62に形成された穴によりヒータ線70をインクチューブ60に設けることができる。
【0046】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタ10の他、例えば、記録媒体を台の上に載置し、台を副走査方向Xに搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジ22を主走査方向Y及び副走査方向Xに移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 プリンタ
12 記録媒体
21 インクヘッド
21a ノズル
22 キャリッジ
25 インクカートリッジ
60 インクチューブ
61 第1位置
62 第2位置
65 第1接続部
66 第2接続部
70 ヒータ線