IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

特開2024-35535耐傷性及び耐久性に優れた樹脂成型部材
<>
  • 特開-耐傷性及び耐久性に優れた樹脂成型部材 図1
  • 特開-耐傷性及び耐久性に優れた樹脂成型部材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035535
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】耐傷性及び耐久性に優れた樹脂成型部材
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240307BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20240307BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240307BHJP
   C08J 5/08 20060101ALI20240307BHJP
   A47K 13/00 20060101ALN20240307BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
C08J5/04 CER
B29C70/06
B29C70/42
C08J5/08 CEZ
A47K13/00
B29K101:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140056
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】井上 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】林田 猛
(72)【発明者】
【氏名】岩下 直基
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】島井 曜
【テーマコード(参考)】
2D037
4F072
4F205
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AA13
4F072AA08
4F072AB09
4F072AD04
4F072AD07
4F072AD37
4F072AD42
4F072AD44
4F072AD46
4F072AK14
4F072AL01
4F205AA04
4F205AA11
4F205AA17
4F205AA23
4F205AA24
4F205AA29
4F205AA32
4F205AA34
4F205AB25
4F205AC01
4F205AD16
4F205AR20
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA34
4F205HA36
4F205HB01
4F205HC16
(57)【要約】
【課題】 表面の耐傷性に優れ、樹脂成型部材に求められる諸性質を備えた樹脂成型部材の提供。
【解決手段】
樹脂成型部材は結晶性樹脂を含んでなり、その最表層における結晶化度が50%以上であり、かつこの最表層の結晶化度が、最表層、すなわち部材の最表面、から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることを特徴とする樹脂成型部材は、耐傷性に加え、耐久性、強度、寸法保持性などの性能においても優れたものであり、いわゆる水まわり部材として好ましく利用することができる。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性樹脂を含んでなる樹脂成型部材であって、
その最表層における結晶化度が50%以上であり、かつ前記最表層の前記結晶化度が、前記最表層から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることを特徴とする、樹脂成型部材。
【請求項2】
前記最表層における結晶化度が70%以上である、請求項1に記載の樹脂成型部材。
【請求項3】
前記最表層における結晶化度が少なくとも深さ50μmまで保持される、請求項1又は2に記載の樹脂成型部材。
【請求項4】
水まわり部材である、請求項1又は2に記載の樹脂成型部材。
【請求項5】
前記結晶性樹脂が、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項1又は2に記載の樹脂成型部材。
【請求項6】
前記結晶性樹脂が、ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の樹脂成型部材。
【請求項7】
ガラス繊維をさらに含んでなる、請求項1又は2に記載の樹脂成型部材。
【請求項8】
便器のふたであり、当該ふたの閉状態において上方に露出するふた上面部と、下方に露出するふた下面部との双方の面において、その最表層における結晶化度が50%以上であり、かつ前記最表層の前記結晶化度が、前記最表層から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂成型部材。
【請求項9】
請求項1に記載の樹脂成型部材の製造方法であって、
金型を樹脂の結晶化温度+10℃の範囲の温度に加熱し、
当該金型に、当該金型の温度以上の温度に加熱された樹脂を充填し、
前記金型温度を前記樹脂の結晶化温度+10℃の範囲に少なくとも20秒以上保持し、その後、前記金型を冷却し、
前記金型から樹脂成型部材を得ることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐傷性及び耐久性に優れた樹脂成型部材に関し、詳しくは、擦る等により表面の清掃が行われる、水まわり部材に適した樹脂成型部材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料によってさまざまな成型部材が形成され、その多くにあって、その表面の清掃は擦る操作により行われる。このような擦る操作による清掃の可能性のある部材は、物理的な擦る力(摺動力)に対し耐傷性が求められる。とりわけ、水がかかりそれが拭きとられる部材及び/又は水を用いての清掃が頻繁に行われる部材の表面には、清掃により生じる負荷に耐え得る耐傷性が求められる。
【0003】
樹脂成型部材の耐傷性を向上する手法が従来提案されている。例えば、特開2000-308601号公報(特許文献1)は、結晶核剤を0.05~5重量部含むプロピレン重合組成物で、かつ、反射X線回折法で測定した表面層の結晶化度が60%以上の樹脂で構成された便座用部品を開示し、この部品は、その耐擦傷性及び防汚性に優れるとする。
【0004】
また、特開2021-137567号公報(特許文献2)は、結晶性樹脂を含み、表面硬度は、鉛筆硬度でB以上であり、表面粗さは、0.02μm以上であることを特徴とする水まわり部材を開示する。表面硬度を鉛筆硬度でB以上とすることで、表面に傷がつくことを抑制でき、表面粗さを0.02μm以上とすることで、予め表面にある程度の凹凸があるため、表面に傷がついた際にも傷を目立ちにくくすることができるとする。さらに当該文献は、樹脂の成型において、樹脂及び金型の温度の制御を開示する。具体的には、加熱された金型に、金型以上の温度とされた樹脂を充填し、その後冷却することで、部材表面付近の結晶化を促進し、その硬度を大きくすることができるとする(例えば、特許文献2、段落0058及び0059)。
【0005】
耐傷性の点からは部材表面に樹脂の結晶化度を上げることでその性質を高めることができるが、他方、樹脂の結晶化度が上がると樹脂はもろくなりやすく、また成型後の寸法変化が無視できなくなる可能性が存在する。さらに成型部材は、その強度や耐久性においても充分な性質を備える必要がある。これら観点において、より優れた成型部材への希求が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-308601号公報
【特許文献2】特開2021-137567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、今般、樹脂成型部材において、樹脂の特定の結晶化度を、表面から一定の深さまで保持することで、優れた表面の耐傷性に加え、樹脂成型部材に求められる諸性質を備えた樹脂成型部材が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0008】
したがって、本発明は、表面の耐傷性に優れ、樹脂成型部材に求められる諸性質を備えた樹脂成型部材の提供をその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明による樹脂成型部材は結晶性樹脂を含んでなり、その最表層における結晶化度が50%以上であり、かつこの最表層の結晶化度が、最表層、すなわち部材の最表面、から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面の耐傷性に優れ、樹脂成型部材に求められる諸特性を備えた樹脂成型部材が提供される。本発明による成型部材は、好ましくは耐傷性に加え、耐久性、強度、寸法保持性などの性能においても優れたものであり、いわゆる水まわり部材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例における高温保形性試験に用いた便器のふたの斜視図であり、最大幅Aの測定位置を示す図である。
図2】実施例における高温保形性試験に用いた便器のふたの側面図であり、ゲート高さB、及び先端反りCの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
樹脂成型部材
本発明による樹脂成型部材は結晶性樹脂を含んでなり、その最表層における結晶化度が50%以上であり、かつこの最表層の結晶化度が、最表層、すなわち部材の最表面、から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることを特徴とする。
【0013】
本発明において、樹脂の結晶化度とは、結晶性樹脂における結晶部分の比率をいい、その測定方法は周知であり、例えば結晶化度の測定方法として、密度法・熱分析法・NMR法・IR法などが挙げられる。本発明にあっては、好ましくは、X線回折法により結晶化度を測定する。すなわち、樹脂成型部材にX線を照射し、得られる回折情報から、結晶に由来する散乱領域と、非結晶に由来する散乱領域とを分け、全散乱強度に対する結晶散乱強度の比として計算し、これを結晶化度とする。
【0014】
本発明において、「最表層の結晶化度が保持される」とは、部材の最表面から少なくとも深さ9.0μmまで、結晶化度の値が同一であることに加え、少なくとも9.0μmの深さまで、最表層の結晶化度と比較し、その変化が7%程度の値の範囲、好ましくは5%の値の範囲にとどまることを意味する。
【0015】
上記所定の結晶化度が、部材の最表面から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることで、部材表面は擦りよる傷が付きにくい性質を備え、さらに樹脂成型部材に求められる諸特性、すなわち、強度、耐久性に優れ、また成型後の寸法変化が小さいという性質を備えるものとなる。樹脂が結晶化することで一般的に低下するとされる性質においても良好な樹脂部材が実現できる点で、本発明は有利である。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、最表層の結晶化度は、50%以上であり、より好ましくは70%以上である。また、そのような最表層の結晶化度が、少なくとも深さ9.0μmまで保持され、より好ましくは少なくとも深さ50μmまで保持される。
【0017】
本発明による成型部材として利用可能な結晶性樹脂の例としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる、
【0018】
本発明による成型部材は、好ましくは水まわり部材として用いられる。本発明において、水まわり部材とは、水がかかりそれが拭きとられる部材及び/又は水を用いての清掃が頻繁に行われ、水のふきとりが行われる部材を意味する。本発明による成型部材は、その表面の耐傷性に優れることから、部材の表面の水をふき取り操作による表面の傷の発生が抑えられる。その結果、成型部材の表面の意匠性を損なうことなく長期間利用することができる。
【0019】
本発明による成型部材の具体例としては、便座;便器のふた;温水洗浄便座のケースカバー;リモコンの樹脂部材;便器のサイドパネル;ペーパーホルダーの樹脂部材;浴室カウンターやバスエプロン、洗面台、手洗い器の周りの樹脂部材;キッチン収納部の取っ手や小物入れなどの樹脂部材;ハンドドライヤーの樹脂部材など挙げられる。
【0020】
本発明の一つの好ましい態様によれば、樹脂成型部材は便器のふたである。便器のふたは、その閉状態において上方に露出するふた上面部と、下方に露出するふた下面部があり、その双方の面おいて耐傷性が求められる。したがって、この便器のふたにあって、部材の最表層とは上記の上面部と下面部の双方を好ましくは意味し、双方の面において本発明の条件を満たすものとされることが好ましい。
【0021】
本発明の別の好ましい態様によれば、樹脂は、樹脂材料の性質や樹脂成型部材の性質を改善するために慣用されている添加剤を含むことができる。例えば、その強度を高めるために無機材料からなるフィラー、好ましくはガラス繊維を含むことができる。
【0022】
製造方法
本発明による成型部材は、結晶性樹脂の結晶化の制御が可能な方法により製造され、好ましくは以下の方法により製造される。すなわち、溶融温度まで加熱した樹脂を、その樹脂の結晶化温度+10℃の範囲の温度に加熱した金型に充填し、少なくとも20秒以上、金型内に保持し、金型を冷却後に樹脂成形部材を得る方法により好ましく製造することができる。ここで、樹脂の結晶化温度は、例えば示唆走査熱量測定(DSC測定)などにより以下の方法で導出できる。結晶性樹脂を融点以上の温度に加熱し、樹脂を完全に融解させたのち、例えば5℃/分程度の降温速度にて樹脂を冷却する。降温時に結晶化に伴う発熱ピークが観測され、そのピークの温度を結晶化温度とする。
【0023】
本発明の一つの態様によれば、樹脂がPP樹脂である場合、金型を110℃以上130℃以下の温度に加熱し、当該金型の温度以上の温度に加熱された樹脂を金型に充填する。ここで、本発明の好ましい態様によれば、樹脂の温度は、180℃から220℃℃以上とし、より好ましくは190℃程度とする。樹脂を金型に充填後、金型の温度を、必要であれば加温して、金型温度を110℃以上130℃以下の範囲に、少なくとも20秒以上、好ましくは40秒以上で、さらに好ましくは60秒以下の時間保圧され、その後、放熱又は冷却後に成型部材を得る。
【実施例0024】
本発明をさらに以下の実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
用いた樹脂材料
以下の実施例及び比較例において、以下のポリプロピレン(PP)樹脂を用いた。
PP1(PP100%)
JIS K-7210に準拠したMFR(温度230℃、荷重2.16kgf)が19g/10minのPP樹脂を使用した。
PP2(ガラス繊維(GF)10wt%含有)
PP1に、ガラス繊維(GF)を10質量部となるように、押出機を用いて溶融混錬をし、PP2の樹脂ペレットを作成した。
PP3(GF20wt%含有)
PP1に、ガラス繊維(GF)を20質量部となるように、押出機を用いて溶融混錬をし、PP3の樹脂ペレットを作成した。
PP4(GF30wt%含有)
PP1に、ガラス繊維(GF)を30質量部となるように、押出機を用いて溶融混錬をし、PP4の樹脂ペレットを作成した。
【0026】
実施例1~4
樹脂材料PP1ないしPP4を190℃に加熱し、これを120℃に加熱した金型に充填した。その後、金型の温度を120℃に40秒間維持し、放冷後、成型体を金型から抜き、180mm×180mm×3mmの試験片を得た。
【0027】
比較例A1~A4
樹脂材料PP1ないしPP4を190℃に加熱し、これを160℃に加熱した金型に充填した。充填10秒後に金型を冷却し、樹脂を冷却硬化させた。成型体を金型から抜き、180mm×180mm×3mmの試験片を得た。
【0028】
比較例B1~B4
樹脂材料PP1ないしPP4を190℃に加熱し、これを40℃に加熱した金型に充填し、その後金型の加熱は止め、20秒後に成型体を金型から抜き、180mm×180mm×3mmの試験片を得た。
【0029】
結晶化度の測定
実施例及び比較例において得た試験片の結晶化度を、下記の測定装置及び条件で測定した。
分析装置:株式会社リガク製SmartLab
X線源:CuKα(45kV-200mA)
光学系:アウトオブプレーン(入射角:0.3、1、2、3、5°)
ステージ:RxRyアタッチメントヘッド
検出器:HyPix-3000
スキャンモード:0次元
スキャン速度:3.5°・min-1
ステップ幅:0.056°
スキャン軸:2θ
スキャン範囲:5~40°
入射スリットボックス:0.072 mm
長手制限スリット:10 mm
受光スリットボックス1:1.0 mm
受光スリットボックス2:1.1 mm
【0030】
X線入射角(ω)を0.3~5度で変化させた。このX線入射角(ω)は分析深さ(X線侵入深さ)2.4μmから46.0μmに対応している。
【0031】
各X線入射角にて得られる、X線回折図形にて結晶部面積と非結晶部の面積を求め、下記に示す演算式にて結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[(結晶部分の面積)/(結晶部分の面積+非結晶部分の面積)]×100
【0032】
測定された表面からの深さと結晶化度は、以下の表に示されるとおりであった。
【表1】
【0033】
対傷性の評価1:鉛筆硬度
実施例及び比較例で得た試験片の鉛筆硬度試験を、JIS K 5600-5-4:1999に準拠しておこなった。JIS K 5600-5-4:1999で規定されていない6B未満の鉛筆硬度は、三菱鉛筆株式会社製ハイユニ(Hi-uni)シリーズを用いた。結果は、下記の表に示されるとおりであった。
【0034】
対傷性の評価2:ペーパー掃引試験
市販のトイレットペーパーを3枚重ねにし、ステンレス製の人の爪形状の治具に付け、この治具に100gから1.400gの荷重で、実施例及び比較例で得た試験片の表面を1回掃引した。掃引した箇所と、掃引していない箇所について、それぞれRz(μm)を測定し、その差ΔRzを算出した。ここで、ΔRzが0.5以上であると、掃引した箇所と掃引していない箇所の差異が傷として明瞭に認識され、傷があるとみなせる。なお、ひっかき速度他の条件はJIS K 5600-5-4:1999に準拠して行った。結果は、下記の表に示されるとおりであった。
【表2】
【0035】
引張強度試験
実施例及び比較例で得た試験片の引張強度を、下記の測定装置及び条件で測定した。
試験機:オートグラフAG-X plus(株式会社 島津製作所)
試験温度:常温、試験片:JIS K7139 タイプA1
引張速度:50mm/min, チャック間距離:115mm
【0036】
すなわち、荷重を加えると、強度が上昇し最大応力を示した値を、引張強度とした。その結果は以下の表に示されるとおりであった。
【表3】
【0037】
高温保形性試験
PP2を使用し、実施例2、比較例A2の成型条件に準じた製造条件下、図1に示される形状の便器ふたサンプルを製造した。このサンプルについて、高温下での保管(輸送)を想定して、高温下での保形性を下記の手順で評価した。すなわち、まず、サンプルを常温環境下(23±1℃)で、図1及び2に示される最大幅A、ゲート高さB、及び先端反りCついて寸法を測定した。その後サンプルを50℃の恒温槽に保管し、その間、サンプルを48時間、96時間、そして240時間後に取り出し、前記三か所の寸法を測定した。なお、サンプルは恒温槽に縦に置いた。最初の測定値に対しての変化量を、mmを単位として示した結果は、下記表のとおりであった。
【表4】
【0038】
本発明の好ましい態様
本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
(1)結晶性樹脂を含んでなる樹脂成型部材であって、
その最表層における結晶化度が50%以上であり、かつ前記最表層の前記結晶化度が、前記最表層から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることを特徴とする、樹脂成型部材。
(2)前記最表層における結晶化度が70%以上である、前記(1)に記載の樹脂成型部材。
(3)前記最表層における結晶化度が少なくとも深さ50μmまで保持される、前記(1)又は(2)に記載の樹脂成型部材。
(4)水まわり部材である、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂成型部材。
(5)前記結晶性樹脂が、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂成型部材。
(6)前記結晶性樹脂が、ポリプロピレンである、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂成型部材。
(7)ガラス繊維をさらに含んでなる、前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂成型部材。
(8)便器のふたであり、当該ふたの閉状態において上方に露出するふた上面部と、下方に露出するふた下面部との双方の面において、その最表層における結晶化度が50%以上であり、かつ前記最表層の前記結晶化度が、前記最表層から少なくとも深さ9.0μmまで保持されることを特徴とする、前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の樹脂成型部材。
(9)前記(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂成型部材の製造方法であって、
金型を樹脂の結晶化温度+10℃の範囲の温度に加熱し、
当該金型に、当該金型の温度以上の温度に加熱された樹脂を充填し、
前記金型温度を前記樹脂の結晶化温度+10℃の範囲に少なくとも20秒以上保持し、その後、前記金型を冷却し、
前記金型から樹脂成型部材を得ることを特徴とする、方法。
図1
図2