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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035548
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】牽引車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240307BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240307BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20240307BHJP
   B62D 12/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G05D1/02 Z
G05D1/02 W
B62D53/00 Z
B62D12/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140075
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】深津 史浩
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC14
5H181FF03
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL11
5H301AA01
5H301AA09
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG16
5H301GG23
5H301GG29
5H301HH01
5H301LL01
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】牽引車両に連結された被牽引車の車幅を自動的に検知することができる牽引車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】走行制御装置1は、牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとを検出する障害物センサ14,15と、障害物センサ14,15の検出データに基づいて、牽引台車3の車幅Wを算出する車幅算出部22と、車幅算出部22により算出された牽引台車3の車幅Wに応じてトーイングトラクタ2を走行させるように制御する走行軌跡設定部23、走行経路生成部24及び走行制御部25とを備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引車が連結された牽引車両の走行制御装置において、
前記被牽引車までの距離と前記牽引車両に対する前記被牽引車の向きとを検出する被牽引車検出部と、
前記被牽引車検出部の検出データに基づいて、前記被牽引車の車幅を算出する車幅算出部と、
前記車幅算出部により算出された前記被牽引車の車幅に応じて前記牽引車両を走行させるように制御する制御部とを備える牽引車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被牽引車の車幅に応じた走行軌跡を設定し、前記牽引車両を前記走行軌跡に従って走行させるように制御する請求項1記載の牽引車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記被牽引車検出部の検出データに基づいて、前記牽引車両が牽引する前記被牽引車の台数を検知する台数検知部を更に備え、
前記制御部は、前記車幅算出部により算出された前記被牽引車の車幅と前記台数検知部により検知された前記被牽引車の台数とに応じた前記走行軌跡を設定する請求項2記載の牽引車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記被牽引車検出部の検出データに基づいて、前記牽引車両が牽引する前記被牽引車の高さを検知する高さ検知部を更に備え、
前記制御部は、前記高さ検知部により検知された前記被牽引車の高さに基づいて、前記走行軌跡を含む走行経路を生成し、前記牽引車両を前記走行経路に沿って走行させるように制御する請求項2記載の牽引車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記被牽引車検出部は、前記牽引車両の側方及び後方を含む領域に存在する障害物を検出する障害物センサである請求項1記載の牽引車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記被牽引車の車幅に応じた障害物検知範囲を設定する検知範囲設定部と、
前記障害物センサの検出データに基づいて、前記検知範囲設定部により設定された前記障害物検知範囲に前記障害物が存在するかどうかを検知する障害物検知部とを更に備える請求項5記載の牽引車両の走行制御装置。
【請求項7】
前記被牽引車検出部は、前記被牽引車までの距離として、前記被牽引車検出部から前記被牽引車の前端の左右の角部までの距離を検出し、前記牽引車両に対する前記被牽引車の向きとして、前記被牽引車検出部と前記被牽引車の前端の左右の角部とを結ぶ線と、前記被牽引車検出部を通ると共に前記牽引車両の前後方向に延びる線とのなす角度を検出する請求項1記載の牽引車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、トーイングトラクタ等の作業車両に対する航空機の作業用出入口の相対位置を検出し、その検出データに基づいて作業車両を作業用出入口まで接近させる接近経路を設定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-75157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トーイングトラクタ(牽引車両)は、牽引する荷物によって牽引台車(被牽引車)の車幅が異なる。トーイングトラクタの有人運転を行う場合は、牽引台車の車幅を考慮した走行軌跡でトーイングトラクタを走行させる。一方、自動運転トーイングトラクタでは、予め決められた走行軌跡に従ってトーイングトラクタを走行させる。ここで、牽引台車の車幅が異なる場合は、作業者が牽引台車の車幅を判定し、その車幅に応じた走行軌跡に切り替える必要がある。しかし、作業者が牽引台車の車幅の判定ミスを引き起こす可能性がある。また、トーイングトラクタの自動運転を行う場合、トーイングトラクタの乗員が必ずしもいるとは限らない。従って、牽引台車の車幅を自動的に検知する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、牽引車両に連結された被牽引車の車幅を自動的に検知することができる牽引車両の走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、被牽引車が連結された牽引車両の走行制御装置において、被牽引車までの距離と牽引車両に対する被牽引車の向きとを検出する被牽引車検出部と、被牽引車検出部の検出データに基づいて、被牽引車の車幅を算出する車幅算出部と、車幅算出部により算出された被牽引車の車幅に応じて牽引車両を走行させるように制御する制御部とを備える。
【0007】
このような走行制御装置においては、被牽引車検出部によって被牽引車までの距離と牽引車両に対する被牽引車の向きとが検出される。そして、被牽引車検出部の検出データに基づいて、被牽引車の車幅が算出され、その被牽引車の車幅に応じて牽引車両が走行するように制御される。このように被牽引車までの距離と牽引車両に対する被牽引車の向きとを検出することで、被牽引車の車幅が算出される。これにより、牽引車両に連結された被牽引車の車幅を自動的に検知することができる。
【0008】
(2)上記の(1)において、制御部は、被牽引車の車幅に応じた走行軌跡を設定し、牽引車両を走行軌跡に従って走行させるように制御してもよい。このような構成では、被牽引車の車幅に適した走行軌跡が設定されることとなる。従って、例えば被牽引車が連結された牽引車両がカーブ走行するときでも、被牽引車の車幅に関わらず、牽引車両をスムーズに走行させることができる。
【0009】
(3)上記の(1)または(2)において、走行制御装置は、被牽引車検出部の検出データに基づいて、牽引車両が牽引する被牽引車の台数を検知する台数検知部を更に備え、制御部は、車幅算出部により算出された被牽引車の車幅と台数検知部により検知された被牽引車の台数とに応じた走行軌跡を設定してもよい。このような構成では、被牽引車の車幅と被牽引車の台数とに適した走行軌跡が設定されることとなる。従って、例えば被牽引車が連結された牽引車両がカーブ走行するときでも、被牽引車の車幅及び台数に関わらず、牽引車両をスムーズに走行させることができる。
【0010】
(4)上記の(1)~(3)の何れかにおいて、走行制御装置は、被牽引車検出部の検出データに基づいて、牽引車両が牽引する被牽引車の高さを検知する高さ検知部を更に備え、制御部は、高さ検知部により検知された被牽引車の高さに基づいて、走行軌跡を含む走行経路を生成し、牽引車両を走行経路に沿って走行させるように制御してもよい。このような構成では、牽引車両が牽引する被牽引車の高さを検知することにより、被牽引車が高さ制限されずに通行可能な走行経路に沿って、被牽引車が連結された牽引車両を走行させることができる。
【0011】
(5)上記の(1)~(4)の何れかにおいて、被牽引車検出部は、牽引車両の側方及び後方を含む領域に存在する障害物を検出する障害物センサであってもよい。このような構成では、既存の障害物センサが被牽引車検出部として使用されるため、被牽引車検出部として専用のセンサを牽引車両に別途搭載しなくて済む。従って、コストアップを抑制することができる。
【0012】
(6)上記の(5)において、走行制御装置は、被牽引車の車幅に応じた障害物検知範囲を設定する検知範囲設定部と、障害物センサの検出データに基づいて、検知範囲設定部により設定された障害物検知範囲に障害物が存在するかどうかを検知する障害物検知部とを更に備えてもよい。このような構成では、被牽引車の車幅によって障害物検知範囲が変更されることとなる。従って、被牽引車の車幅が変わっても、牽引車両の近傍に存在する障害物が精度良く検出される。
【0013】
(7)上記の(1)~(6)の何れかにおいて、被牽引車検出部は、被牽引車までの距離として、被牽引車検出部から被牽引車の前端の左右の角部までの距離を検出し、牽引車両に対する被牽引車の向きとして、被牽引車検出部と被牽引車の前端の左右の角部とを結ぶ線と、被牽引車検出部を通ると共に牽引車両の前後方向に延びる線とのなす角度を検出してもよい。このような構成では、被牽引車検出部から被牽引車の前端の左右の角部までの距離を検出すると共に、被牽引車検出部と被牽引車の前端の左右の角部とを結ぶ線と、被牽引車検出部を通ると共に牽引車両の前後方向に延びる線とのなす角度を検出することにより、単純な計算式を用いて被牽引車の車幅を算出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、牽引車両に連結された被牽引車の車幅を自動的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る走行制御装置が適用されるトーイングトラクタに牽引台車が連結された状態を概略的に示す側面図である。
図2】トーイングトラクタに牽引台車が連結された状態を示す平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る走行制御装置の構成を示すブロック図である。
図4図3に示された車幅算出部により牽引台車の車幅を算出する際に使用される計算式のパラメータを示す概念図である。
図5図3に示された車幅算出部により牽引台車の車幅を算出する際に使用される他の計算式のパラメータを示す概念図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る走行制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】トーイングトラクタに複数台の牽引台車が連結された状態を概略的に示す側面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る走行制御装置の構成を示すブロック図である。
図9】トーイングトラクタに連結された牽引台車の荷台に荷物が積載された状態を概略的に示す側面図である。
図10図2に示された障害物センサの配置箇所の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図中、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る走行制御装置が適用されるトーイングトラクタに牽引台車が連結された状態を概略的に示す側面図である。図2は、トーイングトラクタに牽引台車が連結された状態の平面図である。図1及び図2において、本実施形態に係る走行制御装置1は、トーイングトラクタ2に搭載されている。
【0018】
トーイングトラクタ2は、例えば空港等で使用される産業車両である。トーイングトラクタ2は、連結式の牽引台車3(被牽引車)を牽引する牽引車両である。牽引台車3は、トーイングトラクタ2の後端部に連結器4を介して連結される。
【0019】
トーイングトラクタ2は、車体5と、4つの車輪6とを備えている。牽引台車3は、荷物M(図9参照)が積載される荷台7と、4つの車輪8とを備えている。牽引台車3の車幅Wは、トーイングトラクタ2の車幅W0よりも大きい。牽引台車3の車幅Wは、荷台7の幅寸法である。トーイングトラクタ2の車幅W0は、車体5の幅寸法である。空港では、車幅Wが異なる複数種類(例えば3種類)の牽引台車3が使用される。
【0020】
図3は、本発明の第1実施形態に係る走行制御装置の構成を示すブロック図である。図3において、本実施形態の走行制御装置1は、牽引台車3が連結されたトーイングトラクタ2を自動走行させるように制御する装置である。
【0021】
走行制御装置1は、自己位置推定用センサ11と、地図記憶部12と、障害物センサ13~15と、車両情報記憶部16と、駆動部17と、警報器18と、コントローラ20とを備えている。
【0022】
自己位置推定用センサ11は、トーイングトラクタ2の自己位置の推定に使用される。自己位置推定用センサ11は、トーイングトラクタ2の周囲に存在する物体を検出するセンサである。自己位置推定用センサ11としては、例えばLIDAR(Light Detection and Ranging)またはレーザレンジファインダ等のレーザセンサが使用される。
【0023】
自己位置推定用センサ11は、トーイングトラクタ2の周囲にレーザ光を照射して、そのレーザ光の反射光を受光することにより、自己位置推定用センサ11からトーイングトラクタ2の周囲に存在する物体までの距離を検出する。
【0024】
地図記憶部12は、トーイングトラクタ2が走行する場所(ここでは空港)の地図データを記憶する。地図データには、建物、柱及び壁等が含まれている。
【0025】
障害物センサ13~15としては、例えば自己位置推定用センサ11と同様のレーザセンサが使用される。障害物は、トーイングトラクタ2の周囲に存在する作業者及び他の車両等である。
【0026】
障害物センサ13は、トーイングトラクタ2の前端部に取り付けられている(図2参照)。障害物センサ13は、トーイングトラクタ2の前方を含む領域に存在する障害物を検出するセンサである。障害物センサ13は、トーイングトラクタ2の前方を含む領域にレーザ光を照射して、そのレーザ光の反射光を受光することにより、障害物を検出する。
【0027】
障害物センサ14は、トーイングトラクタ2の左側端部の後側部分に取り付けられている(図2参照)。障害物センサ14は、トーイングトラクタ2の左側方及び左後方を含む領域に存在する障害物を検出するセンサである。障害物センサ14は、トーイングトラクタ2の左側方及び左後方を含む領域にレーザ光を照射して、そのレーザ光の反射光を受光することにより、障害物を検出する。
【0028】
障害物センサ15は、トーイングトラクタ2の右側端部の後側部分に取り付けられている(図2参照)。障害物センサ15は、トーイングトラクタ2の右側方及び右後方を含む領域に存在する障害物を検出するセンサである。障害物センサ15は、トーイングトラクタ2の右側方及び右後方を含む領域にレーザ光を照射して、そのレーザ光の反射光を受光することにより、障害物を検出する。
【0029】
障害物センサ14,15は、トーイングトラクタ2に連結された牽引台車3も検出する。障害物センサ14,15は、牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとを検出する被牽引車検出部を構成している。
【0030】
障害物センサ14,15は、牽引台車3までの距離として、障害物センサ14,15から牽引台車3の前端3aまでの距離を検出する。具体的には、障害物センサ14,15から牽引台車3の前端3aまでの距離は、障害物センサ14,15から牽引台車3の前端3aの左右の角部までの距離である。
【0031】
障害物センサ14,15は、トーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとして、障害物センサ14,15と牽引台車3の前端3aの左右の角部とを結ぶ線と、障害物センサ14,15を通ると共にトーイングトラクタ2の前後方向に延びる線とのなす角度を検出する。
【0032】
車両情報記憶部16は、トーイングトラクタ2に関する情報を記憶する。トーイングトラクタ2に関する情報としては、障害物センサ14,15の位置情報等が含まれている。障害物センサ14,15の位置は、2次元座標(XY座標)で表される(後述)。
【0033】
駆動部17は、例えば図示はしないが、トーイングトラクタ2の車輪6を回転させる走行モータと、車輪6を転舵させる操舵モータとを有している。
【0034】
警報器18は、コントローラ20の障害物検知部27(後述)によりトーイングトラクタ2の近傍に障害物が存在することが検知されたときに、警報音または警報表示によって警報を行う。
【0035】
コントローラ20は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ20は、自己位置推定部21と、車幅算出部22と、走行軌跡設定部23と、走行経路生成部24と、走行制御部25と、検知範囲設定部26と、障害物検知部27とを有している。これらの機能は、トーイングトラクタ2に牽引台車3が連結された後、例えば操作スイッチ(図示せず)によりトーイングトラクタ2の自動走行の開始が指示されると実行される。
【0036】
自己位置推定部21は、自己位置推定用センサ11の検出データと地図記憶部12に記憶された地図データとに基づいて、トーイングトラクタ2の自己位置を推定する。具体的には、自己位置推定部21は、例えばSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、自己位置推定用センサ11の検出データと地図データとをマッチングさせてトーイングトラクタ2の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを用いて自己位置推定を行う自己位置推定技術である。
【0037】
車幅算出部22は、障害物センサ14,15の検出データと車両情報記憶部16に記憶されたトーイングトラクタ2に関する情報とに基づいて、牽引台車3の車幅Wを算出する。具体的には、車幅算出部22は、以下のようにして牽引台車3の車幅Wを算出する。
【0038】
即ち、図4に示されるように、トーイングトラクタ2の所定位置を原点Oとし、牽引台車3の左前角部CLの位置を(X3,Y3)とし、牽引台車3の右前角部CRの位置を(X4,Y4)とすると、牽引台車3の車幅Wは、下記式で表される。原点Oは、トーイングトラクタ2の車幅方向の中心線G上に位置している。中心線Gは、トーイングトラクタ2の前後方向に延びている。具体的には、原点Oは、中心線Gと左右の後側の車輪6の車軸が通る軸線Sとが交わる点である。
W=((X4-X3)+(Y4-Y3)1/2 …(A)
【0039】
また、左側の障害物センサ14の位置を(X1,Y1)とし、右側の障害物センサ15の位置を(X2,Y2)とすると、下記式が得られる。障害物センサ14,15の位置は、車両情報記憶部16に事前に登録されている。
X3=X1-L1・sinθ1
Y3=Y1-L1・cosθ1
X4=X2+L2・sinθ2
Y4=Y2-L2・cosθ2
【0040】
L1は、左側の障害物センサ14から牽引台車3の左前角部CLまでの距離である。L2は、右側の障害物センサ15から牽引台車3の右前角部CRまでの距離である。θ1は、左側の障害物センサ14と牽引台車3の左前角部CLとを結ぶ線P1と、左側の障害物センサ14を通ると共にトーイングトラクタ2の前後方向に延びる線Q1とのなす角度である。θ2は、右側の障害物センサ15と牽引台車3の右前角部CRとを結ぶ線P2と、右側の障害物センサ15を通ると共に牽引台車3の前後方向に延びる線Q2とのなす角度である。
【0041】
距離L1及び角度θ1は、障害物センサ14の検出データから得られる。距離L2及び角度θ2は、障害物センサ15の検出データから得られる。距離L1,L2は、障害物センサ14,15から牽引台車3までの距離に相当する。角度θ1,θ2は、トーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きに相当する。
【0042】
図3に戻り、走行軌跡設定部23は、車幅算出部22により算出された牽引台車3の車幅Wに応じた走行軌跡を設定する。走行軌跡は、例えばトーイングトラクタ2がカーブ走行する際のトーイングトラクタ2の軌跡である。走行軌跡設定部23は、牽引台車3の車幅Wが大きくなるほど大回りになるような走行軌跡を設定する。
【0043】
牽引台車3の車幅Wとトーイングトラクタ2の走行軌跡との関係は、例えばマップデータとして予め決められている。そして、走行軌跡設定部23は、牽引台車3の車幅Wに対応した走行軌跡を選択する。
【0044】
走行経路生成部24は、走行軌跡設定部23により設定された走行軌跡を含む走行経路を生成する。走行経路は、トーイングトラクタ2に牽引台車3が連結された地点から目的地までトーイングトラクタ2が走行する経路である。
【0045】
走行制御部25は、自己位置推定部21により推定されたトーイングトラクタ2の自己位置に基づいて、走行経路生成部24により生成された走行経路に沿ってトーイングトラクタ2を走行させるように駆動部17を制御する。また、走行制御部25は、後述する障害物検知部27によりトーイングトラクタ2の近傍に障害物が存在することが検知されたときに、トーイングトラクタ2を減速または停止させるように駆動部17を制御する。
【0046】
走行軌跡設定部23、走行経路生成部24及び走行制御部25は、車幅算出部22により算出された牽引台車3の車幅Wに応じてトーイングトラクタ2を走行させるように制御する制御部を構成する。制御部は、牽引台車3の車幅Wに応じた走行軌跡を設定し、トーイングトラクタ2を走行軌跡に従って走行させるように制御する。
【0047】
検知範囲設定部26は、牽引台車3の車幅Wに応じた障害物検知範囲(後述)を設定する。検知範囲設定部26は、牽引台車3の車幅Wが大きくなるほど障害物検知範囲を広くする。
【0048】
牽引台車3の車幅Wと障害物検知範囲との関係は、例えばマップデータとして予め決められている。そして、検知範囲設定部26は、牽引台車3の車幅Wに対応した障害物検知範囲を選択する。
【0049】
障害物検知部27は、障害物センサ13~15の検出データに基づいて、検知範囲設定部26により設定された障害物検知範囲に障害物が存在するかどうかを検知する。障害物検知範囲は、トーイングトラクタ2の近傍に障害物が存在するかどうかを検知するための指定範囲である。障害物検知部27は、障害物検知範囲に障害物が存在するときは、警報器18により警報を行うと共に、走行制御部25に対してトーイングトラクタ2を減速または停止させるための指示を行う。
【0050】
以上のような走行制御装置1において、トーイングトラクタ2が牽引台車3に対して後退して、トーイングトラクタ2に牽引台車3が連結器4を介して連結された後、トーイングトラクタ2が目的地に向かって自動走行する。トーイングトラクタ2と牽引台車3との連結は、作業者による手作業で行われる。なお、トーイングトラクタ2と牽引台車3との連結を自動的に行ってもよい。
【0051】
トーイングトラクタ2に牽引台車3が連結されると、まず障害物センサ14,15の検出データに基づいて、牽引台車3の車幅Wが算出される。そして、牽引台車3の車幅Wに応じた走行軌跡が設定され、その走行軌跡を含むトーイングトラクタ2の走行経路が生成されると共に、牽引台車3の車幅Wに応じた障害物検知範囲が設定される。
【0052】
そして、トーイングトラクタ2は、自己位置推定用センサ11により自己位置を推定しながら、走行経路に沿って目的地に向かって走行する。このとき、障害物センサ13~15によってトーイングトラクタ2の近傍に障害物が存在することが検知されたときは、警報器18により警報が行われると共に、トーイングトラクタ2が強制的に減速または停止する。
【0053】
以上のように本実施形態にあっては、障害物センサ14,15によって牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとが検出される。そして、障害物センサ14,15の検出データに基づいて、牽引台車3の車幅Wが算出され、その牽引台車3の車幅Wに応じてトーイングトラクタ2が走行するように制御される。このように牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとを検出することで、牽引台車3の車幅Wが算出される。これにより、トーイングトラクタ2に連結された牽引台車3の車幅Wを自動的に検知することができる。その結果、例えば作業者による牽引台車3の車幅Wの判定ミスを排除することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、牽引台車3の車幅Wに応じた走行軌跡が設定され、トーイングトラクタ2が走行軌跡に従って走行するように制御される。このため、牽引台車3の車幅Wに適した走行軌跡が設定されることとなる。従って、例えば牽引台車3が連結されたトーイングトラクタ2がカーブ走行するときでも、牽引台車3の車幅Wに関わらず、トーイングトラクタ2をスムーズに走行させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、既存の障害物センサ14,15を使用して、牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとが検出される。このため、牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとを検出するための専用のセンサをトーイングトラクタ2に別途搭載しなくて済む。従って、コストアップを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、牽引台車3の車幅Wに応じた障害物検知範囲が設定される。このため、牽引台車3の車幅Wによって障害物検知範囲が変更されることとなる。従って、牽引台車3の車幅Wが変わっても、トーイングトラクタ2の近傍に存在する障害物が精度良く検出される。
【0057】
また、本実施形態では、障害物センサ14,15から牽引台車3の前端3aの左右の角部(左前角部CL及び右前角部CR)までの距離L1,L2を検出すると共に、障害物センサ14,15と牽引台車3の前端3aの左右の角部とを結ぶ線P1,P2と、障害物センサ14,15を通ると共にトーイングトラクタ2の前後方向に延びる線Q1,Q2とのなす角度θ1,θ2を検出することにより、単純な計算式を用いて牽引台車3の車幅Wを算出することができる。
【0058】
また、本実施形態では、牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きを検出することにより、牽引台車3がトーイングトラクタ2に対して傾いた状態で連結されても、牽引台車3の車幅Wを算出することができる。
【0059】
なお、図5に示されるように、牽引台車3がトーイングトラクタ2に対して傾いた状態ではなく、牽引台車3がトーイングトラクタ2に対して真っ直ぐに連結されている場合には、上記の(A)式に代えて、下記式により牽引台車3の車幅Wを算出してもよい。
W=L1・sinθ1+Y1+Y2+L2・sinθ2 …(B)
【0060】
Y1は、左側の障害物センサ14とトーイングトラクタ2の車幅方向の中心線Gとの距離である。Y2は、右側の障害物センサ15とトーイングトラクタ2の車幅方向の中心線Gとの距離である。距離Y1,Y2は、車両情報記憶部16に事前に登録されている。
【0061】
障害物センサ14,15の検出データに基づいて、牽引台車3がトーイングトラクタ2に対して真っ直ぐに連結されていることが検知されたときは、(B)式を用いて牽引台車3の車幅Wを算出することにより、計算時間の短縮化を図ることができる。
【0062】
図6は、本発明の第2実施形態に係る走行制御装置の構成を示すブロック図である。図6において、本実施形態の走行制御装置1Aは、上記の第1実施形態におけるコントローラ20に代えて、コントローラ20Aを備えている。
【0063】
コントローラ20Aは、上記の自己位置推定部21と、上記の車幅算出部22と、台数検知部28と、走行軌跡設定部23Aと、上記の走行経路生成部24と、上記の走行制御部25と、上記の検知範囲設定部26と、上記の障害物検知部27とを有している。
【0064】
台数検知部28は、図7に示されるように、障害物センサ14,15の検出データに基づいて、トーイングトラクタ2が牽引する牽引台車3の台数を検知する。なお、台数検知部28は、障害物センサ14,15の何れか一方のみの検出データに基づいて、トーイングトラクタ2が牽引する牽引台車3の台数を検知してもよい。
【0065】
図7では、トーイングトラクタ2は、3台の牽引台車3を直列に牽引している。このとき、後側の牽引台車3は、前側の牽引台車3の後端部に連結器4を介して連結されている。障害物センサ14,15は、トーイングトラクタ2の両側端部の後側上端部に取り付けられている。これにより、障害物センサ14,15から照射されたレーザ光Lがトーイングトラクタ2の後方まで届きやすくなるため、トーイングトラクタ2が牽引する牽引台車3の台数を検知しやすくなる。
【0066】
走行軌跡設定部23Aは、車幅算出部22により算出された牽引台車3の車幅Wと台数検知部28により検知された牽引台車3の台数とに応じた走行軌跡を設定する。走行軌跡設定部23Aは、牽引台車3の車幅Wが大きくなるほど大回りになるような走行軌跡を設定すると共に、牽引台車3の台数が多くなるほど大回りになることで、牽引台車3の台数に応じて最短距離となるような走行軌跡を設定する。牽引台車3の車幅W及び台数とトーイングトラクタ2の走行軌跡との関係は、例えばマップデータとして予め決められている。そして、走行軌跡設定部23Aは、牽引台車3の車幅W及び台数に対応した走行軌跡を選択する。
【0067】
走行軌跡設定部23A、走行経路生成部24及び走行制御部25は、車幅算出部22により算出された牽引台車3の車幅Wに応じてトーイングトラクタ2を走行させるように制御する制御部を構成する。制御部は、車幅算出部22により算出された牽引台車3の車幅Wと台数検知部28により検知された牽引台車3の台数とに応じた走行軌跡を設定する。
【0068】
このような本実施形態では、トーイングトラクタ2が牽引する牽引台車3の台数を検知することにより、牽引台車3の車幅Wと牽引台車3の台数とに適した走行軌跡が設定されることとなる。従って、例えば牽引台車3が連結されたトーイングトラクタ2がカーブ走行するときでも、牽引台車3の車幅W及び台数に関わらず、トーイングトラクタ2をスムーズに走行させることができる。その結果、トーイングトラクタ2による運搬効率を向上させることが可能となる。
【0069】
図8は、本発明の第3実施形態に係る走行制御装置の構成を示すブロック図である。図8において、本実施形態の走行制御装置1Bは、上記の第1実施形態におけるコントローラ20に代えて、コントローラ20Bを備えている。
【0070】
コントローラ20Bは、上記の自己位置推定部21と、上記の車幅算出部22と、上記の走行軌跡設定部23と、高さ検知部29と、走行経路生成部24Bと、上記の走行制御部25と、上記の検知範囲設定部26と、上記の障害物検知部27とを有している。
【0071】
高さ検知部29は、図9に示されるように、障害物センサ14,15の検出データに基づいて、トーイングトラクタ2が牽引する牽引台車3の荷台7に積載された荷物Mの高さを検知する。高さ検知部29は、トーイングトラクタ2が牽引する牽引台車3の高さを検知する。牽引台車3の高さは、荷物Mを含む牽引台車3の最大高さである。なお、高さ検知部29は、障害物センサ14,15の何れか一方のみの検出データに基づいて、牽引台車3の高さを検知してもよい。
【0072】
障害物センサ14,15は、上記の第2実施形態と同様に、トーイングトラクタ2の両側端部の後側上端部に取り付けられている。これにより、障害物センサ14,15から照射されたレーザ光Lが荷物Mの上端まで届きやすくなるため、牽引台車3の高さを検知しやすくなる。
【0073】
走行経路生成部24Bは、高さ検知部29により検知された牽引台車3の高さに基づいて、走行軌跡設定部23により設定された走行軌跡を含む走行経路を生成する。走行経路生成部24Bは、例えば荷物Mが積載された牽引台車3が通行可能な目的地までの最短経路を走行経路として生成する。
【0074】
走行軌跡設定部23、走行経路生成部24B及び走行制御部25は、車幅算出部22により算出された牽引台車3の車幅Wに応じてトーイングトラクタ2を走行させるように制御する制御部を構成する。制御部は、高さ検知部29により検知された牽引台車3の高さに基づいて、走行軌跡を含む走行経路を生成し、トーイングトラクタ2を走行経路に沿って走行させるように制御する。
【0075】
このような本実施形態では、トーイングトラクタ2が牽引する牽引台車3の高さを検知することにより、牽引台車3が高さ制限されずに通行可能な走行経路に沿って、牽引台車3が連結されたトーイングトラクタ2を走行させることができる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば上記実施形態では、障害物センサ14,15は、トーイングトラクタ2の側端部の後側部分に配置されているが、障害物センサ14,15の配置位置としては、トーイングトラクタ2の側方及び後方を含む領域に存在する障害物を検出することが可能であれば、特にトーイングトラクタ2の側端部の後側部分には限られない。
【0077】
例えば図10(a)に示されるように、トーイングトラクタ2の側端部の前側部分に障害物センサ14,15を配置してもよい。この場合には、障害物センサ14,15によってトーイングトラクタ2の前方に存在する障害物が検出可能となるため、上記の障害物センサ13は無くてもよい。
【0078】
また、図10(b)に示されるように、トーイングトラクタ2の後角部に障害物センサ14,15を配置してもよい。また、特に図示はしないが、トーイングトラクタ2に連結された牽引台車3の左前角部CL及び右前角部CR(図4参照)が検知可能であれば、トーイングトラクタ2の後端部に障害物センサを1つのみ配置してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、牽引台車3までの距離として、障害物センサ14,15から牽引台車3の左前角部CL及び右前角部CRまでの距離L1,L2(図4参照)が検出されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、牽引台車3までの距離として、障害物センサ14,15から牽引台車3の前端3aまでの最短距離を検出してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、障害物センサ14,15を用いて、牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとが検出されているが、障害物センサ14,15とは別に、牽引台車3までの距離とトーイングトラクタ2に対する牽引台車3の向きとを検出する専用のセンサを、トーイングトラクタ2に具備してもよい。この場合、専用のセンサとしては、障害物センサ14,15等と同様にレーザセンサを使用してもよいし、カメラ等の画像センサを使用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、複数種類の牽引台車3の車幅Wは、全てトーイングトラクタ2の車幅W0よりも大きいが、特にその形態には限られず、トーイングトラクタ2の車幅W0と等しい車幅Wを有する牽引台車3を使用してもよいし、トーイングトラクタ2の車幅W0よりも小さい車幅Wを有する牽引台車3を使用してもよい。
【0082】
また、上記実施形態は、牽引台車3が連結されたトーイングトラクタ2の走行制御を行う走行制御装置であるが、本発明は、車幅Wが異なる複数種類の被牽引車が連結される牽引車両であれば、トーイングトラクタ2以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B…走行制御装置、2…トーイングトラクタ(牽引車両)、3…牽引台車(被牽引車)、3a…前端、14,15…障害物センサ(被牽引車検出部)、22…車幅算出部、23,23A…走行軌跡設定部(制御部)、24,24B…走行経路生成部(制御部)、25…走行制御部(制御部)、26…検知範囲設定部、27…障害物検知部、28…台数検知部、29…高さ検知部、CL…左前角部(角部)、CR…右前角部(角部)、L1,L2…距離、P1,P2…線、Q1,Q2…線、θ1,θ2…角度(向き)、W…車幅。
図1
図2
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図7
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図10