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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035559
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】眼科装置及び眼科装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140108
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優一
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB04
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA09
4C316FA18
4C316FB12
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】被検眼の被観察部位の良好な3次元データを簡単に生成可能な眼科装置及び眼科装置の制御方法を提供する。
【解決手段】被観察部位(眼底Ef)に対するプレスキャンを実行するプレスキャン制御部216と、被観察部位の断層形状を検出又は予測する断層形状取得部218と、光スキャナを制御して、被観察部位に対する本スキャンを実行する本スキャン制御部220と、少なくとも本スキャンの前に本スキャンの特定スキャン位置における最適光路長を取得する光路長取得部214と、本スキャンの実行中に、光路長変更部を制御して光路長を最適光路長に調整する光路長調整制御部224と、被観察部位の3次元データ404を生成する3次元データ生成部226と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被検眼の被観察部位に照射し、前記測定光が照射された前記被観察部位からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
前記干渉光学系に設けられ、前記測定光及び前記参照光の少なくとも一方の光路長を変更する光路長変更部と、
前記被観察部位に対して前記測定光を走査する光スキャナと、
前記光スキャナを制御して、前記被観察部位に対するBスキャンであるプレスキャンを実行するプレスキャン制御部と、
前記プレスキャンの実行中に前記干渉光学系が検出した前記干渉光の検出信号に基づいて前記被観察部位のBスキャン画像を形成し、前記Bスキャン画像に基づいて前記被観察部位の断層形状を検出又は予測する断層形状取得部と、
前記光スキャナを制御して、前記被観察部位に対する前記Bスキャンのスキャン位置を変更しながら前記Bスキャンを繰り返し実行する3次元スキャンを本スキャンとして実行する本スキャン制御部と、
前記Bスキャン画像内の前記被観察部位の断層像の位置を予め定められた基準位置に調整可能な前記光路長を最適光路長とした場合に、少なくとも前記本スキャンの実行前に前記本スキャンの特定スキャン位置における前記最適光路長を取得する光路長取得部と、
前記断層形状取得部が検出又は予測した前記断層形状と、前記光路長取得部が取得した前記最適光路長と、に基づいて、前記本スキャンの実行中に、前記光路長変更部を制御して前記光路長を前記最適光路長に調整する光路長調整制御部と、
前記本スキャンの実行中に前記干渉光学系が検出した前記干渉光の検出信号に基づいて、前記被観察部位の3次元データを生成する3次元データ生成部と、
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記被観察部位に対する前記Bスキャンを行う場合のAスキャン方向及びBスキャン方向の双方に垂直な方向を垂直方向とした場合において、前記本スキャン制御部が、前記光スキャナを制御して、前記本スキャンとして、前記垂直方向に沿って前記スキャン位置を変更しながら前記Bスキャンを繰り返し実行する請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記プレスキャン制御部が、前記光スキャナを制御して、前記プレスキャンとして前記被観察部位に対して前記垂直方向の前記Bスキャンを実行し、
前記断層形状取得部が、前記Bスキャン画像から前記被観察部位の特定層を検出し、前記特定層の形状に基づいて前記断層形状を検出する請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記プレスキャン制御部が、前記光スキャナを制御して、前記プレスキャンとして互いに異なる複数の前記スキャン位置で前記Bスキャンを実行し、
前記断層形状取得部が、前記プレスキャンの前記スキャン位置ごとに前記Bスキャン画像を形成して、前記スキャン位置ごとの前記Bスキャン画像内の前記断層像の位置を検出した結果に基づいて前記断層形状を予測する請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記本スキャン制御部による前記本スキャンの動作モードが、前記測定光の走査範囲を第1範囲に設定した通常モードと、前記第1範囲よりも広角の第2範囲に設定した広角モードと、に選択的に切り替え可能であり、
前記動作モードが前記広角モードである場合にのみ、前記プレスキャン制御部、前記断層形状取得部、前記光路長取得部、及び前記光路長調整制御部が作動する請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項6】
表示装置と、
前記プレスキャンの前に、前記光スキャナによる前記特定スキャン位置に対する前記Bスキャンと、前記干渉光学系が検出した前記干渉光の検出信号に基づいた前記Bスキャン画像の形成及び前記表示装置による前記Bスキャン画像の表示と、を実行させるライブ表示制御部と、
を備え、
前記ライブ表示制御部が、前記干渉光学系が検出した前記干渉光の検出信号に基づいて前記光路長を前記最適光路長に調整し、
前記光路長取得部が、前記プレスキャンの前に前記ライブ表示制御部により調整された前記最適光路長を取得する請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記本スキャンの実行中に前記スキャン位置ごとに前記干渉光学系が検出した前記干渉光の検出信号に基づいて、前記スキャン位置ごとの前記Bスキャン画像を形成する画像形成部を備え、
前記3次元データ生成部が、前記画像形成部により前記スキャン位置ごとに形成された前記Bスキャン画像に基づいて、前記3次元データを生成する3次元データ生成部を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項8】
光源から出射された光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被検眼の被観察部位に照射し、前記測定光が照射された前記被観察部位からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
前記干渉光学系に設けられ、前記測定光及び前記参照光の少なくとも一方の光路長を変更する光路長変更部と、
前記被観察部位に対して前記測定光を走査する光スキャナと、
を備える眼科装置の制御方法において、
前記光スキャナによる前記被観察部位に対するBスキャンであるプレスキャンの実行中に前記干渉光学系が検出した前記干渉光の検出信号に基づいて、前記被観察部位のBスキャン画像を形成し、前記Bスキャン画像に基づいて前記被観察部位の断層形状を検出又は予測する断層形状取得工程と、
前記光スキャナが前記被観察部位に対する前記Bスキャンのスキャン位置を変更しながら前記Bスキャンを繰り返し実行する3次元スキャンを本スキャンとし、前記Bスキャン画像内の前記被観察部位の断層像の位置を予め定められた基準位置に調整可能な前記光路長を最適光路長とした場合に、少なくとも前記本スキャンの実行前に、前記本スキャンの特定スキャン位置における前記最適光路長を取得する光路長取得工程と、
前記断層形状取得工程で検出又は予測した前記断層形状と、前記光路長取得工程で取得した前記最適光路長と、に基づいて、前記本スキャンの実行中に、前記光路長変更部を制御して前記光路長を前記最適光路長に調整する光路長調整制御工程と、
前記本スキャンの実行中に前記干渉光学系が検出した前記干渉光の検出信号に基づいて、前記被観察部位の3次元データを生成する3次元データ生成工程と、
を有する眼科装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コヒーレンストモグラフィを用いた被検眼の断層像の取得を行う眼科装置及び眼科装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いた被検眼の断層像撮影を行う眼科装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の眼科装置は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、測定光を被検眼に照射して、被検眼からの戻り光と参照光との干渉光を検出する干渉光学系を備えている。この干渉光学系には、測定光を走査する光スキャナと、参照光又は測定光の光路長を変更するコーナーキューブ或いはリフレクタ等の光路長変更部と、が設けられている。
【0003】
上記特許文献1に記載の眼科装置は、被検眼の眼底(被観察部位)に測定光を照射することで眼底の深さ方向の一次元の信号を取得し(Aスキャン)、この測定光を被検眼に対して一次元走査(ラインスキャン)することで、眼底断層像を含むBスキャン画像を取得する(Bスキャン)。また、特許文献1に記載の眼科装置は、参照光等の光路長を調整してBスキャン画像内の基準位置(Z指定位置)に眼底断層像の所定領域を表示する機能(オートZ)、この基準位置に眼底断層像を維持する機能(Zロック)、及び基準位置を変更する機能(Zロック位置変更処理)を有している。
【0004】
特許文献2に記載の眼科装置は、Bスキャンのスキャン位置をAスキャン方向及びBスキャン方向の双方に垂直な方向に変更しながらBスキャンを繰り返し実行する3次元OCT撮影を実行して、スキャン位置ごとのBスキャン画像を取得することにより眼底の3次元データを生成する(Cスキャン)。
【0005】
このような3次元OCT撮影を実行する場合には、眼球の湾曲に起因して、Bスキャンの「スキャン開始位置」と「スキャン中央位置」と「スキャン終了位置」とでそれぞれ取得されるBスキャン画像内(フレーム内)の眼底断層像の表示位置が変化する。この際に、測定光の走査範囲が狭ければ各Bスキャン画像内に眼底断層像のほぼ全体が収まる。
【0006】
一方、3次元OCT撮影の条件(走査範囲、眼球の曲率等)によっては眼底断層像の全体がBスキャン画像内に表示されない裏像が発生したり、或いは眼底断層像の一部が折り返されたりすることで、眼底断層像が正常に表示されない場合がある。このような場合には、上記特許文献1に記載の眼科装置のようにBスキャン画像内の眼底断層像の表示位置を調整することが考えられる。しかしながら、特に測定光の走査範囲が広角に設定されている場合には、眼底断層像の全体がBスキャン画像内に収まるように基準位置が低めに設定されるため、被検眼の眼球の動きによりBスキャン画像内の眼底断層像の位置が下に移動して裏像が発生し易い。この場合には、Bスキャン画像内での断層像の高さ位置(平均値)が低いままであるので基準位置が変更されないおそれがある。また、測定光の走査範囲が広角に設定されている場合には、鮮明な眼底断層像が得られず、上述のオートZ、Zロック、及びZロック位置変更処理に必要な眼底断層像の位置検出の精度が低下するおそれもある。
【0007】
そこで、特許文献2に記載の眼科装置では、事前にBスキャンのスキャン方向の複数位置でAスキャン像を取得し、複数位置のAスキャン画像に基づいて被観察部位の断層像の全体がBスキャン画像内の最適位置に配置されるように参照光の光路長を調整している。
【0008】
また、特許文献3に記載の眼科装置では、Bスキャン時の測定光の走査範囲に応じて、被観察部位の断層像の全体がBスキャン画像内の最適位置に配置されるように測定光又は参照光の少なくとも一方の光路長を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-41221号公報
【特許文献2】特開2015-16151号公報
【特許文献3】特開2020-110256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
被検眼の眼底の3次元OCT撮影を行う場合において、特に測定光の走査範囲が広角になるほどBスキャン画像内の眼底断層像の湾曲が大きくなる。このため、Bスキャンのスキャン位置によっては上記各特許文献に記載の方法では対応できない、すなわちBスキャン画像内の眼底断層像が基準位置からずれて眼底断層像の一部が正常に表示されないおそれがある。その結果、良好な眼底の3次元データが生成されないおそれがある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被検眼の被観察部位の良好な3次元データを簡単に生成可能な眼科装置及び眼科装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するための眼科装置は、光源から出射された光を測定光と参照光とに分割し、測定光を被検眼の被観察部位に照射し、測定光が照射された被観察部位からの戻り光と参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、干渉光学系に設けられ、測定光及び参照光の少なくとも一方の光路長を変更する光路長変更部と、被観察部位に対して測定光を走査する光スキャナと、光スキャナを制御して、被観察部位に対するBスキャンであるプレスキャンを実行するプレスキャン制御部と、プレスキャンの実行中に干渉光学系が検出した干渉光の検出信号に基づいて被観察部位のBスキャン画像を形成し、Bスキャン画像に基づいて被観察部位の断層形状を検出又は予測する断層形状取得部と、光スキャナを制御して、被観察部位に対するBスキャンのスキャン位置を変更しながらBスキャンを繰り返し実行する3次元スキャンを本スキャンとして実行する本スキャン制御部と、Bスキャン画像内の被観察部位の断層像の位置を予め定められた基準位置に調整可能な光路長を最適光路長とした場合に、少なくとも本スキャンの実行前に本スキャンの特定スキャン位置における最適光路長を取得する光路長取得部と、断層形状取得部が検出又は予測した断層形状と、光路長取得部が取得した最適光路長と、に基づいて、本スキャンの実行中に、光路長変更部を制御して光路長を最適光路長に調整する光路長調整制御部と、本スキャンの実行中に干渉光学系が検出した干渉光の検出信号に基づいて、被観察部位の3次元データを生成する3次元データ生成部と、を備える。
【0013】
この眼科装置によれば、本スキャンの実行中において光路長を最適光路長に調整することで、本スキャンの各スキャン位置で形成されるBスキャン画像内の被観察部位の像を基準位置に調整することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、被観察部位に対するBスキャンを行う場合のAスキャン方向及びBスキャン方向の双方に垂直な方向を垂直方向とした場合において、本スキャン制御部が、光スキャナを制御して、本スキャンとして、垂直方向に沿ってスキャン位置を変更しながらBスキャンを繰り返し実行する。
【0015】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、プレスキャン制御部が、光スキャナを制御して、プレスキャンとして被観察部位に対して垂直方向のBスキャンを実行し、断層形状取得部が、Bスキャン画像から被観察部位の特定層を検出し、特定層の形状に基づいて断層形状を検出する。これにより、被観察部位の断層形状を精度よく検出することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、プレスキャン制御部が、光スキャナを制御して、プレスキャンとして互いに異なる複数のスキャン位置でBスキャンを実行し、断層形状取得部が、プレスキャンのスキャン位置ごとにBスキャン画像を形成して、スキャン位置ごとのBスキャン画像内の断層像の位置を検出した結果に基づいて断層形状を予測する。これにより、短時間で被観察部位の断層形状が得られるので、短時間で3次元OCT撮影を実行することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、本スキャン制御部による本スキャンの動作モードが、測定光の走査範囲を第1範囲に設定した通常モードと、第1範囲よりも広角の第2範囲に設定した広角モードと、に選択的に切り替え可能であり、動作モードが広角モードである場合にのみ、プレスキャン制御部、断層形状取得部、光路長取得部、及び光路長調整制御部が作動する。これにより、本スキャンの動作モードが通常モードである場合には、プレスキャンを省略することで、短時間で3次元OCT撮影を実行することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、表示装置と、プレスキャンの前に、光スキャナによる特定スキャン位置に対するBスキャンと、干渉光学系が検出した干渉光の検出信号に基づいたBスキャン画像の形成及び表示装置によるBスキャン画像の表示と、を実行させるライブ表示制御部と、を備え、ライブ表示制御部が、干渉光学系が検出した干渉光の検出信号に基づいて光路長を最適光路長に調整し、光路長取得部が、プレスキャンの前にライブ表示制御部により調整された最適光路長を取得する。
【0019】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、本スキャンの実行中にスキャン位置ごとに干渉光学系が検出した干渉光の検出信号に基づいて、スキャン位置ごとのBスキャン画像を形成する画像形成部を備え、3次元データ生成部が、画像形成部によりスキャン位置ごとに形成されたBスキャン画像に基づいて、3次元データを生成する3次元データ生成部を備える。
【0020】
本発明の目的を達成するための眼科装置の制御方法は、光源から出射された光を測定光と参照光とに分割し、測定光を被検眼の被観察部位に照射し、測定光が照射された被観察部位からの戻り光と参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、干渉光学系に設けられ、測定光及び参照光の少なくとも一方の光路長を変更する光路長変更部と、被観察部位に対して測定光を走査する光スキャナと、を備える眼科装置の制御方法において、光スキャナによる被観察部位に対するBスキャンであるプレスキャンの実行中に干渉光学系が検出した干渉光の検出信号に基づいて、被観察部位のBスキャン画像を形成し、Bスキャン画像に基づいて被観察部位の断層形状を検出又は予測する断層形状取得工程と、光スキャナが被観察部位に対するBスキャンのスキャン位置を変更しながらBスキャンを繰り返し実行する3次元スキャンを本スキャンとし、Bスキャン画像内の被観察部位の断層像の位置を予め定められた基準位置に調整可能な光路長を最適光路長とした場合に、少なくとも本スキャンの実行前に、本スキャンの特定スキャン位置における最適光路長を取得する光路長取得工程と、断層形状取得工程で検出又は予測した断層形状と、光路長取得工程で取得した最適光路長と、に基づいて、本スキャンの実行中に、光路長変更部を制御して光路長を最適光路長に調整する光路長調整制御工程と、本スキャンの実行中に干渉光学系が検出した干渉光の検出信号に基づいて、被観察部位の3次元データを生成する3次元データ生成工程と、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、被検眼の被観察部位の良好な3次元データを簡単に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の眼科装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】OCTユニットの光学系の概略図である。
図3】第1実施形態の演算制御ユニットの機能ブロック図である。
図4】3次元OCT撮影を説明するための説明図である。
図5】3次元OCT撮影[3D(H)スキャン]の撮影前から撮影完了までの測定光LSの走査を説明するための説明図である。
図6】3次元OCT撮影[3D(V)スキャン]の撮影前から撮影完了までの測定光LSの走査を説明するための説明図である。
図7】本スキャンの実行中の光路長調整制御部による対象光路長の調整を説明するための説明図である。
図8】第1実施形態の眼科装置による眼底の3次元OCT撮影処理の流れを示したフローチャートである。
図9】従来の方法で形成される本スキャンの各スキャン位置におけるBスキャン画像と、第1実施形態の眼科装置1により形成される本スキャンの各スキャン位置におけるBスキャン画像と、を比較した説明図である。
図10】第2実施形態のプレスキャンを説明するための説明図である。
図11】第2実施形態の断層形状取得部による眼底の断層形状の予測処理を説明するための説明図である。
図12】第2実施形態の眼科装置による眼底の3次元OCT撮影処理の流れを示したフローチャートである。
図13】第3実施形態の眼科装置の演算制御ユニットの機能ブロック図である。
図14】第3実施形態の眼科装置による眼底の3次元OCT撮影処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態の眼科装置]
図1は、第1実施形態の眼科装置1の構成の一例を示す概略図である。眼科装置1は、被検眼Eの被観察部位である眼底Efを撮影する眼底カメラと、OCTを用いて眼底Efの眼底断層像を得るOCT撮影(OCT計測、OCTスキャン)を実行する光干渉断層計と、を組み合わせた複合機である。なお、図中のZ方向は眼科装置1が被検眼Eに近づいたり遠ざかったりする前後方向であり、Y方向は上下方向であり、X方向は左右方向である。
【0024】
図1に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100、演算制御ユニット200、及び一対の前眼部カメラ300等を備える。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100は、眼底EfのOCT撮影を実行するための光学系を有する。演算制御ユニット200は、各種の演算処理及び制御処理等を実行するパーソナルコンピュータ等の演算処理装置である。
【0025】
[眼底カメラユニット]
眼底カメラユニット2は、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系として、照明光学系10及び撮影光学系30を備える。照明光学系10は眼底Efに対して照明光を照射する。撮影光学系30は、眼底Efで反射された照明光の眼底反射光を、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサ35,38に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100から出力された測定光LS(図2参照)を眼底Efに導くと共に、眼底Efを経由した戻り光LS1(図2参照)をOCTユニット100に導く。
【0026】
照明光学系10は、観察光源11、反射ミラー12、集光レンズ13、可視カットフィルタ14、撮影光源15、ミラー16、リレーレンズ17,18、絞り19、リレーレンズ20、孔開きミラー21、ダイクロイックミラー46、及び対物レンズ22等を備える。
【0027】
撮影光学系30は、既述の対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及び孔開きミラー21の他に、ダイクロイックミラー55、合焦レンズ31、ミラー32、ハーフミラー39A、視標表示部39、ダイクロイックミラー33、集光レンズ34、イメージセンサ35、ミラー36、集光レンズ37、及びイメージセンサ38等を備える。
【0028】
観察光源11は、例えばハロゲンランプ又はLED(Light Emitting Diode)光源等が用いられ、観察照明光を出射する。観察光源11から出射された観察照明光は、反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。さらに、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17,18、絞り19、及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。
【0029】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。さらに、この眼底反射光は、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、眼底反射光を撮像(受光)して撮像信号を出力する。表示装置3には、イメージセンサ35から出力された撮像信号に基づく観察画像が表示される。なお、撮影光学系30のピントが被検眼Eの前眼部Eaに調整されている場合には前眼部Eaの観察画像が表示装置3に表示され、撮影光学系30のピントが眼底Efに調整されている場合には眼底Efの観察画像が表示装置3に表示される。
【0030】
撮影光源15は、例えばキセノンランプ又はLED光源等が用いられ、撮影照明光を出射する。撮影光源15から出射された撮影照明光は、既述の観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光の眼底反射光と同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0031】
イメージセンサ38は、眼底反射光を撮像(受光)して撮像信号を出力する。表示装置3には、イメージセンサ38から出力された撮像信号に基づく撮影画像が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3とは、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0032】
視標表示部39は、例えば、ドットマトリクス液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びマトリクス発光ダイオード(LED)などが用いられる。この視標表示部39は固視標90を表示する。また、視標表示部39は、ドットマトリクスLCD等であるので、固視標90の表示態様(形状等)及び表示位置を任意に設定可能である。
【0033】
視標表示部39に表示された固視標90の光束は、その一部がハーフミラー39Aにて反射された後、ミラー32、合焦レンズ31、ダイクロイックミラー55、孔開きミラー21の孔部、ダイクロイックミラー46、及び対物レンズ22を経て被検眼Eに投射される。これにより、被検眼Eに対して固視標90などを提示することができる。
【0034】
さらに、眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50及びフォーカス光学系60を備える。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する眼底カメラユニット2の位置合わせ(アライメント)を行うためのアライメント指標を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるためのスプリット指標を生成する。
【0035】
アライメント光学系50は、既述の対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、孔開きミラー21、及びダイクロイックミラー55の他に、LED51、絞り52,53、及びリレーレンズ54を備える。また、フォーカス光学系60は、既述の対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及び孔開きミラー21の他に、LED61、リレーレンズ62、スプリット指標板63、二孔絞り64、ミラー65、集光レンズ66、及び反射棒67を備える。
【0036】
アライメント光学系50のLED51から出射されたアライメント光は、絞り52,53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの前眼部Eaの角膜に投射される。
【0037】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及び孔開きミラー21の孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過した後、合焦レンズ31、ミラー32、ハーフミラー39A、ダイクロイックミラー33、及び集光レンズ34を経てイメージセンサ35の受光面に入射する。
【0038】
イメージセンサ35は、アライメント光の角膜反射光を撮像(受光)して撮像信号を出力する。これにより、表示装置3に、既述の前眼部Eaの観察画像と共にアライメント指標が表示される。そして、検者は、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメント(オートアライメント)を行ってもよい。
【0039】
反射棒67の反射面は、フォーカス光学系60によるフォーカス調整が行われる場合に照明光学系10の光路上にセットされる。LED61から出射されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離された後、二孔絞り64、ミラー65、及び集光レンズ66を経て反射棒67の反射面に一旦結像され、この反射面にてリレーレンズ20に向けて反射される。さらにフォーカス光は、リレーレンズ20、孔開きミラー21、ダイクロイックミラー46、及び対物レンズ22を経て眼底Efに投射される。
【0040】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってイメージセンサ35により撮像される。イメージセンサ35は、フォーカス光の眼底反射光を撮像して撮像信号を出力する。これにより、表示装置3に観察画像と共にスプリット指標が表示される。後述の演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31等を移動させてピント合わせを自動で行う。また、検者がスプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0041】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT撮影用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT撮影に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、光スキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45と、が設けられている。
【0042】
光路長変更部41は、図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT撮影用の測定光LS(図2参照)の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正、及び干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、例えばコーナーキューブと、これを移動する機構と、を含む。
【0043】
光スキャナ42は、例えばガルバノスキャナであり、後述のOCTユニット100から出射された測定光LS(図2参照)を偏向(走査)する。光スキャナ42は、たとえば、測定光LSをx方向に走査するガルバノミラーと、測定光LSをy方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含む。これにより、測定光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができるので、眼底Efを測定光LSでXY方向に走査(2次元走査)することができる。
【0044】
眼底カメラユニット2には一対の前眼部カメラ300が設けられている。一対の前眼部カメラ300は、所謂ステレオカメラであり、前眼部Eaを異なる方向から実質的に同時に撮影する。また、一対の前眼部カメラ300は、照明光学系10の光路及び撮影光学系30の光路から外れた位置に設けられている。そして、各前眼部カメラ300は、被検眼Eが実質的に同じ位置(向き)にある状態での被検眼Eの撮影画像をそれぞれ取得する。各撮影画像は、演算制御ユニット200による眼底カメラユニット2に対する被検眼Eの相対位置の検出に用いられ、さらにこの相対位置検出結果は被検眼Eに対する眼底カメラユニット2の概略アライメントなどに用いられる。
【0045】
図2は、OCTユニット100の光学系の概略図である。図2及び既述の図1に示すように、OCTユニット100のOCT光源101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置の光源と同様に出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源であって、共振器を含むレーザー光源を含む。OCT光源101は、人眼では視認できない近赤外の波長域において、出力波長を時間的に変化させる。
【0046】
OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、OCT光源101からの光L0を測定光LSと参照光LRとに分割する機能と、被検眼Eからの測定光LSの戻り光LS1と参照光路を経由した参照光LRとを重ね合わせて干渉光LCを生成する機能と、この干渉光LCを検出する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光LCの検出結果(検出信号)は、干渉光LCのスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0047】
OCT光源101から出力された光L0は、光ファイバー102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、光ファイバー104によりファイバーカプラ105に導かれ、ファイバーカプラ105によって測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0048】
参照光LRは、光ファイバー110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。
【0049】
コーナーキューブ114(リトロリフレクタ)及びコーナーキューブ移動機構115は、本発明の光路長変更部に相当する。コーナーキューブ114は、コーナーキューブ移動機構115により、参照光LRの入射方向に沿って移動自在に保持されている。コーナーキューブ移動機構115は、コーナーキューブ114を参照光LRの入射方向に沿って移動させるアクチュエータであり、それにより参照光LRの光路長を変更する。
【0050】
なお、本実施形態では測定光LSの光路長を変更する光路長変更部41と、参照光LRの光路長を変更するコーナーキューブ114の双方が設けられているが、光路長変更部41とコーナーキューブ114のいずれか一方のみが設けられもよい。また、これら以外の光学部材を用いて、測定光LSの光路長と参照光LRの光路長との光路長差を変更することも可能である。
【0051】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバー117に入射する。光ファイバー117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバー119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバー121によりファイバーカプラ122に導かれる。
【0052】
一方、ファイバーカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバー127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44及びリレーレンズ45を経由する。リレーレンズ45を経由した測定光LSは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光LS1は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラ105に導かれ、光ファイバー128を経由してファイバーカプラ122に到達する。
【0053】
ファイバーカプラ122は、光ファイバー128を介して入射された戻り光LS1と、光ファイバー121を介して入射された参照光LRとの干渉光LCを生成する。また、ファイバーカプラ122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光LCを分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバー123,124を通じて検出器125に導かれる。
【0054】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をデータ収集機器(Data Acquisition System)であるDAQ130に送る。
【0055】
DAQ130には、OCT光源101からクロックKCが供給される。OCT光源101は、所定の波長範囲内で掃引される光L0の各波長の出力タイミングに同期してクロックKCを生成する。OCT光源101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。
【0056】
また、DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を演算制御ユニット200に送る。演算制御ユニット200は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、サンプリングデータに基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に演算制御ユニット200は、後述の図4に示すように、Aラインごとの反射強度プロファイルを画像化してAスキャン画像400を形成することで、眼底EfのBスキャン画像402を形成する。
【0057】
図3は、第1実施形態の演算制御ユニット200の機能ブロック図である。なお、図3では、眼科装置1のOCT撮影に関係ない構成については適宜図示を省略している(後述の図13も同様)。
【0058】
図3に示すように、演算制御ユニット200は、眼科装置1の各部の動作を統括制御する。この演算制御ユニット200には、既述の眼底カメラユニット2、表示装置3、及びOCTユニット100の他に、図示は省略するが、検者による各種の入力操作を受け付ける操作部、及び被検眼Eに対して眼底カメラユニット2を相対移動させる移動機構(アクチュエータ)などが接続されている。
【0059】
演算制御ユニット200は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、演算制御ユニット200の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0060】
演算制御ユニット200は、不図示の記憶部に記憶されている制御プログラムを実行することで、眼底撮影制御部202とOCT制御部204として機能する。
【0061】
眼底撮影制御部202は、眼底カメラユニット2の各部、前眼部カメラ300、及び不図示の移動機構等を制御して、眼科装置1による眼底撮影を実行する。なお、眼底撮影の具体的な処理、例えば、被検眼Eに対する眼底カメラユニット2のアライメント、及び眼底カメラユニット2による眼底撮影などは公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0062】
OCT制御部204は、眼底カメラユニット2の各部、OCTユニット100の各部、前眼部カメラ300、及び不図示の移動機構等を制御して、アライメント及び眼科装置1による眼底EfのOCT撮影等を実行する。このOCT撮影には、後述の図4に示すように、眼底Efの断層像である眼底断層像403を取得するための通常OCT撮影と、眼底Efの3次元データ404(3次元画像、3次元モデル、Cスキャン画像ともいう)を取得するための3次元OCT撮影と、が含まれる。なお、通常OCT撮影、及びこの通常OCT撮影を実行する場合のOCT制御部204の機能については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。以下、眼科装置1では3次元OCT撮影を実行するものとして説明を行う。
【0063】
図4は、3次元OCT撮影を説明するための説明図である。図4の符号IVA及び符号IVBに示すように、3次元OCT撮影では、予め定められた測定光LSの2次元の走査範囲RA内において、眼底Efに対するX方向のBスキャン(ラインスキャン)をそのスキャン位置をY方向に変更しながら繰り返し実行する3次元スキャンである3D(H)スキャン(Cスキャンともいう)を実行する。これにより、3D(H)スキャンのスキャン位置ごとに、眼底Efの深さ方向であるZ方向(Aスキャン方向)のAスキャン画像400をX方向(Bスキャン方向)に沿って配列したBスキャン画像402が得られる。
【0064】
3D(H)スキャンのスキャン位置ごとのBスキャン画像402には、それぞれ眼底断層像403が含まれる。その結果、図4の符号IVCに示すように、各Bスキャン画像402に基づいて眼底Efの3次元データ404を生成可能である。この場合には、Z方向が本発明のAスキャン方向に相当し、X方向が本発明のBスキャン方向に相当し、Y方向が本発明の垂直方向に相当する。
【0065】
なお、3D(H)スキャンを実行する代わりに、眼底Efに対するY方向のBスキャンをそのスキャン位置をX方向に変更しながら繰り返し実行する3次元スキャンである3D(V)スキャンを実行することで、眼底Efの3次元データ404を生成してもよい。この場合には、Y方向が本発明のBスキャン方向に相当し、X方向が本発明の垂直方向に相当する。
【0066】
図3に戻って、OCT制御部204は、3次元OCT撮影の開始前には、アライメント制御部210、ライブ表示制御部212、及び光路長取得部214として機能する。また、OCT制御部204は、3次元OCT撮影を実行する場合には、プレスキャン制御部216、断層形状取得部218、本スキャン制御部220、画像形成部222、光路長調整制御部224、及び3次元データ生成部226として機能する。
【0067】
アライメント制御部210は、例えば、一対の前眼部カメラ300により撮影された前眼部Eaの撮影画像に基づいて被検眼Eに対する眼底カメラユニット2の相対位置を検出し、この相対位置の検出結果に基づいて不図示の移動機構を駆動することで、被検眼Eに対する眼底カメラユニット2の概略アライメントを実行する。また、アライメント制御部210は、アライメント光学系50による前眼部Eaへのアライメント光の投射と、イメージセンサ35によるアライメント光の角膜反射光の撮像と、を実行する。そして、アライメント制御部210は、イメージセンサ35から出力される撮像信号に基づいて被検眼Eに対する眼底カメラユニット2の相対位置を検出し、この相対位置の検出結果に基づいて不図示の移動機構を駆動することで、被検眼Eに対する眼底カメラユニット2の精密アライメントを実行する。
【0068】
図5は、3次元OCT撮影[3D(H)スキャン]の撮影前から撮影完了までの測定光LSの走査を説明するための説明図である。図6は、3次元OCT撮影[3D(V)スキャン]の撮影前から撮影完了までの測定光LSの走査を説明するための説明図である。
【0069】
図3及び図5の符号VAに示すように、ライブ表示制御部212は、3次元OCT撮影[3D(H)スキャン]の前に、眼底カメラユニット2の各部及びOCTユニット100の各部を制御してライブ表示用OCT撮影を実行して、表示装置3に眼底断層像403をライブ表示させる。
【0070】
具体的にはライブ表示制御部212は、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、走査範囲RA内の予め定められた特定スキャン位置VCにおいてX方向のBスキャン(符号B1参照)を繰り返し実行させる。特定スキャン位置VCは、例えば、走査範囲RAのY方向中央位置を通るXスキャンラインに設定される。また、このBスキャンの実行中にライブ表示制御部212は、検出器125による干渉光LCの検出及び検出信号の出力と、DAQ130による検出信号のサンプリングと、を繰り返し実行させる。これにより、ライブ表示制御部212は、DAQ130から出力されるサンプリングデータに基づいて、眼底EfのBスキャン画像402の形成と、このBスキャン画像402の表示装置3への出力と、を繰り返し実行する。これにより、表示装置3に眼底EfのBスキャン画像402がライブ表示される。
【0071】
一方、図6の符号VIAに示すようにライブ表示制御部212は、3次元OCT撮影[3D(V)スキャン]の前には、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、走査範囲RA内の特定スキャン位置HCにおいてY方向のBスキャン(符号B1参照)を繰り返し実行させる。特定スキャン位置HCは、例えば、走査範囲RAのX方向中央位置を通るYスキャンラインに設定される。
【0072】
また、ライブ表示制御部212は、ライブ表示中に測定光LS及び参照光LRの少なくともいずれか一方の光路長(以下、対象光路長と略す)を調整する。具体的には、Bスキャン画像402内の眼底断層像403の所定領域(所望領域)の位置を所定の基準位置(Z指定位置)に調整可能な対象光路長を「最適光路長」とした場合に、ライブ表示制御部212は、検出器125が検出した干渉光LCの検出信号等に基づいて対象光路長を最適光路長に調整する光路長調整を実行する(上記特許文献1参照)。また、基準位置は、Bスキャン画像402内(フレーム内)に眼底断層像403の全体(ほぼ全体を含む)が収まるように適切に設定及び調整されている(上記特許文献1参照)。
【0073】
光路長取得部214は、ライブ表示制御部212により調整された最適光路長を示す最適光路長情報を取得する。最適光路長情報には、対象光路長に測定光LSの光路長が含まれる場合には光路長変更部41を構成するコーナーキューブ等の位置情報が含まれ、対象光路長に参照光LRの光路長が含まれる場合にはコーナーキューブ114の位置情報が含まれる。また、最適光路長情報には、走査範囲RA内の特定スキャン位置VC,HCを示す情報も含まれる。
【0074】
なお、光路長取得部214による最適光路長情報の取得のタイミングは、少なくとも後述の本スキャン[3D(H)スキャン又は3D(V)スキャン]の実行前であれば特に限定はされない。
【0075】
プレスキャン制御部216、断層形状取得部218、本スキャン制御部220、画像形成部222、光路長調整制御部224、及び3次元データ生成部226は、3次元OCT撮影に係る動作を実行する。ここで本実施形態の3次元OCT撮影は、眼底Efの断層形状を把握するためのプレスキャンと、既述の3D(H)スキャン又は3D(V)スキャンを実行する本スキャンと、を含む。
【0076】
図3及び図5の符号VBに示すように、プレスキャン制御部216は、本スキャンが3D(H)スキャンである場合には、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、眼底Efに対して特定スキャン位置HCでのY方向のBスキャンであるプレスキャン(符号B2参照)を1回実行(複数回実行しても可)する。なお、プレスキャンのスキャン位置は、特定スキャン位置HCからX方向にずれていてもよい。
【0077】
また、プレスキャン制御部216は、プレスキャンの実行中に、検出器125による干渉光LCの検出とDAQ130による検出信号のサンプリングと、を実行させる。
【0078】
なお、図6の符号VIBに示すように、プレスキャン制御部216は、本スキャンが3D(V)スキャンである場合には、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、眼底Efに対して特定スキャン位置VCでのX方向のBスキャンであるプレスキャン(符号B2参照)を1回実行させる。ここでプレスキャンのスキャン位置は、例えば特定スキャン位置VCからY方向にずれていてもよい。
【0079】
図3に示すように断層形状取得部218は、プレスキャンの実行中に検出器125が検出した干渉光LCの検出信号に応じてDAQ130から出力されるサンプリングデータに基づいて、Bスキャン画像402を形成する。次いで、断層形状取得部218は、このBスキャン画像402に基づいて眼底Efの断層形状を検出する。
【0080】
具体的には断層形状取得部218は、Bスキャン画像402から公知の方法で眼底Efの特定層、例えば、内境界膜(Internal Limiting Membrane:ILM)の層であるILM層403a(図7参照)を検出する。そして、断層形状取得部218は、検出したILM層403aの形状に基づいて眼底Efの断層形状を検出する。これにより、プレスキャンのスキャン方向に沿った眼底Efの断層形状の変化を把握可能である(図7参照)。
【0081】
本スキャン制御部220は、断層形状取得部218による眼底Efの断層形状取得後に、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、本スキャンとして、図5の符号VCに示す3D(H)スキャン、又は図6の符号VICに示す3D(V)スキャンを実行させる(符号B3参照)。この際に、3D(H)スキャンのスキャン位置がY方向に変更されるごと、又は3D(V)スキャンのスキャン位置がX方向に変更されるごとに、後述の光路長調整制御部224による対象光路長の調整が実行される。
【0082】
また、本スキャン制御部220は、本スキャンの実行中に、検出器125による干渉光LCの検出とDAQ130による検出信号のサンプリングと、を実行させる。
【0083】
画像形成部222は、本スキャンの実行中に検出器125が検出した干渉光LCの検出信号に応じてDAQ130から出力されるサンプリングデータに基づいて、本スキャンのスキャン位置ごとのBスキャン画像402を生成する。
【0084】
図7は、本スキャンの実行中の光路長調整制御部224による対象光路長の調整を説明するための説明図である。なお、図7では、本スキャンとして3D(H)スキャンが実行される場合を例に挙げて説明を行う。
【0085】
図3及び図7に示すように、光路長調整制御部224は、光路長取得部214から最適光路長情報を取得すると共に、断層形状取得部218から眼底EfのY方向に沿った断層形状を取得する。そして、光路長調整制御部224は、最適光路長情報及び眼底Efの断層形状に基づいて光路長変更部41及びコーナーキューブ移動機構115の少なくとも一方を駆動することで、3D(H)スキャンのスキャン位置ごとに対象光路長を最適光路長に調整する。以下、対象光路長の調整は、コーナーキューブ移動機構115によるコーナーキューブ114の移動によって実行されるものとして説明を行う。
【0086】
具体的には光路長調整制御部224は、3D(H)スキャンの各スキャン位置の中で既述の特定スキャン位置VC(その近傍のスキャン位置を含む)については、既述のライブ表示制御部212により調整された最適光路長、すなわち光路長取得部214が取得した最適光路長情報が示す最適光路長に調整する。これにより、特定スキャン位置VCで得られたBスキャン画像402内の眼底断層像403の位置が基準位置に調整され、このBスキャン画像402内に眼底断層像403の全体が収まる。
【0087】
一方、光路長調整制御部224は、3D(H)スキャンの各スキャン位置の中で特定スキャン位置VC以外のスキャン位置については、断層形状取得部218が検出した眼底Efの断層形状と、光路長取得部214が取得した最適光路長情報とに基づいて、最適光路長を決定する。
【0088】
具体的には光路長調整制御部224は、断層形状取得部218が検出した眼底Efの断層形状に基づいて、Y方向に沿った眼底Ef(ILM層403a)のZ位置変化を検出する。これにより、光路長調整制御部224は、3D(H)スキャンのスキャン位置ごとに、任意のZ基準(Z0)から眼底Ef(ILM層403a)までのZ方向距離DZを検出(推定)する。スキャン位置ごとのZ方向距離DZの差異は、測定光LSの光路長の差異を示す。従って、光路長調整制御部224は、特定スキャン位置VCのZ方向距離DZと他のスキャン位置のZ方向距離DZとの差分ΔZを演算し、この差分ΔZに基づいて最適光路長情報が示す特定スキャン位置VCの最適光路長を補正することで、他のスキャン位置に対応した最適光路長を決定する。
【0089】
このように光路長調整制御部224は、3D(H)スキャンのスキャン位置ごとに最適光路長を決定することで、3D(H)スキャンの実行中にそのスキャン位置ごとにコーナーキューブ移動機構115を駆動して対象光路長を最適光路長に調整する。これにより、眼底Efが大きく湾曲している場合でも、スキャン位置ごとに得られるBスキャン画像402の眼底断層像403の位置(Z方向位置)を基準位置に調整すること、すなわち各Bスキャン画像402内に眼底断層像403の全体を収めることができる。
【0090】
なお、光路長調整制御部224は、本スキャンとして3D(V)スキャンが実行される場合においても、3D(V)スキャンのスキャン位置ごとに最適光路長を決定することで、3D(V)スキャンの実行中にそのスキャン位置ごとにコーナーキューブ移動機構115を駆動して対象光路長を最適光路長に調整する。
【0091】
3次元データ生成部226は、画像形成部222により形成された本スキャンのスキャン位置ごとのBスキャン画像402に基づいて、公知の方法で眼底Efの3次元データ404を生成する。3次元データ生成部226は、生成した3次元データ404を表示装置3及び不図示の記憶部に出力する。これにより、3次元データ404が表示装置3により表示されると共に記憶部に記憶される。
【0092】
[第1実施形態の作用]
図8は、本発明の眼科装置の制御方法に係る、第1実施形態の眼科装置1による眼底Efの3次元OCT撮影処理の流れを示したフローチャートである。なお、ここでは3次元OCT撮影の本スキャンとして3D(H)スキャンを実行する場合を例に挙げて説明を行う。
【0093】
図8に示すように、被検者の顔が眼科装置1の不図示の顔支持部等に支持された後、アライメント制御部210が、一対の前眼部カメラ300、アライメント光学系50、及びイメージセンサ35等を用いて、被検眼Eに対する眼底カメラユニット2のアライメント(概略アライメント及び精密アライメント)を実行する(ステップS1)。なお、不図示のフォーカス制御部により公知のフォーカス調整も合わせて実行される。
【0094】
アライメント完了後、ライブ表示制御部212が、眼底カメラユニット2の各部及びOCTユニット100の各部を制御してライブ表示用OCT撮影を実行する。また、ライブ表示制御部212は、特定スキャン位置VCにおけるBスキャン画像402の形成と、表示装置3へのBスキャン画像402の出力と、を繰り返し実行する。これにより、表示装置3にBスキャン画像402がライブ表示される(ステップS2)。この際にライブ表示制御部212は、公知の方法で特定スキャン位置VCでの最適光路長を決定し、コーナーキューブ移動機構115を駆動して対象光路長を最適光路長に調整する。
【0095】
光路長取得部214は、プレスキャンの開始前にライブ表示制御部212により調整された特定スキャン位置VCでの最適光路長を示す最適光路長情報を取得して、この最適光路長情報を光路長調整制御部224へ出力する(ステップS3、本発明の光路長取得工程に相当)。
【0096】
次いで、眼底Efの3次元OCT撮影が開始される。最初にプレスキャン制御部216がOCT光源101及び光スキャナ42を制御して、既述の図5の符号VBに示したように眼底Efに対して特定スキャン位置HCでのプレスキャン(Y方向のBスキャン)を1回実行させる(ステップS4)。また同時にプレスキャン制御部216は、プレスキャンの実行中に、検出器125による干渉光LCの検出とDAQ130による検出信号のサンプリングと、を実行させる(ステップS5)。
【0097】
次いで、断層形状取得部218が、プレスキャンの実行中に検出器125が検出した干渉光LCの検出信号に応じてDAQ130から出力されるサンプリングデータに基づいてBスキャン画像402を形成する(ステップS6)。そして、断層形状取得部218は、Bスキャン画像402からILM層403aを検出することで眼底Efの断層形状を検出し、この断層形状検出結果を光路長調整制御部224へ出力する(ステップS7、本発明の断層形状取得工程に相当)。
【0098】
光路長調整制御部224は、光路長取得部214からの最適光路長情報と、断層形状取得部218からの断層形状検出結果を取得すると、既述の図7に示したように最適光路長情報及び断層形状検出結果に基づいて、3D(H)スキャンのスキャン位置ごとに最適光路長を決定する。そして、本スキャン制御部220が、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、図5の符号VCに示したように眼底Efに対して本スキャン[3D(H)スキャン]を開始する(ステップS8)。
【0099】
最初に光路長調整制御部224が、コーナーキューブ移動機構115を駆動して、対象光路長を3D(H)スキャンの最初のスキャン位置に対応した最適光路長に調整する(ステップS9、本発明の光路長調整制御工程に相当)。この調整後に本スキャン制御部220が、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、最初のスキャン位置でBスキャンを実行させる(ステップS10)。また同時に本スキャン制御部220は、Bスキャンの実行中に検出器125による干渉光LCの検出とDAQ130による検出信号のサンプリングと、を実行させる(ステップS11)。
【0100】
次いで、3D(H)スキャンの次のスキャン位置を対象として(ステップS12でNO、ステップS13)、対象光路長の最適光路長への調整と(ステップS9)、Bスキャンと(ステップS10)、干渉光LCの検出及び検出信号のサンプリング(ステップS11)と、が実行される。以下同様に、3D(H)スキャンの残りのスキャン位置ごとに、ステップS13の処理とステップS9からステップS11までの処理とが繰り返し実行される。
【0101】
本スキャン[3D(H)スキャン]が完了すると(ステップS12でYES)、画像形成部222が本スキャンのスキャン位置ごとのBスキャン画像402を形成する(ステップS14)。なお、ステップS14はステップS11とステップS12との間に実行してもよい。
【0102】
3次元データ生成部226は、画像形成部222により形成された本スキャンのスキャン位置ごとのBスキャン画像402に基づいて、公知の方法で眼底Efの3次元データ404を生成する(ステップS15、本発明の3次元データ生成工程に相当)。この3次元データ404は、表示装置3に表示されると共に不図示の記憶部に記憶される。
【0103】
[第1実施形態の効果]
図9は、従来の方法で形成される本スキャンの各スキャン位置におけるBスキャン画像402(符号IXA1から符号IXA3)と、第1実施形態の眼科装置1により形成される本スキャンの各スキャン位置におけるBスキャン画像402(符号IXB1から符号IXB3)と、を比較した説明図である。なお、図中の符号ZPは、Bスキャン画像402内の眼底断層像403の基準位置を示す。
【0104】
図9に示すように、「本スキャン中盤」のスキャン位置は既述のライブ表示時の特定スキャン位置HCに近いのに対して、「本スキャン序盤」又は「本スキャン終盤」のスキャン位置は特定スキャン位置HCから離れている。このため、特に走査範囲RAが広角に設定されている場合には、既述の図7に示したように眼底Efの湾曲によって「本スキャン序盤」又は「本スキャン終盤」のスキャン位置でのZ方向距離DZと、特定スキャン位置VCでのZ方向距離DZと、の差分ΔZが大きくなる。
【0105】
このような状態で従来の方法で本スキャン、すなわち特定スキャン位置VCに対応した最適光路長の設定のままで本スキャンを実行した場合には、「本スキャン中盤」のスキャン位置で取得されるBスキャン画像402(符号IXA2参照)については、眼底断層像403が基準位置に調整される。一方、「本スキャン序盤」又は「本スキャン終盤」のスキャン位置で取得されるBスキャン画像402(符号IXA1参照、符号IXA3参照)については、眼底断層像403が基準位置に調整されずに、眼底断層像403の一部の折り返し(図中の符号ER参照)が発生してしまう。
【0106】
これに対して第1実施形態の眼科装置1では、眼底Efの断層形状と特定スキャン位置HCでの最適光路長情報とに基づいて、本スキャンのスキャン位置ごとに対象光路長を最適光路長に調整することで、各スキャン位置においてBスキャン画像402内の眼底断層像403を基準位置に調整することができる(符号IXB1から符号IXB3参照)。また、眼底Efの断層形状と特定スキャン位置HCでの最適光路長情報とに基づいて本スキャンのスキャン位置ごとの最適光路長を決定するだけでよく、従来のように各スキャン位置においてオートZ等を実行する必要もない。その結果、各スキャン位置で形成されるBスキャン画像402内の眼底断層像403の位置を簡単に基準位置に調整することができる。これにより。良好な眼底Efの3次元データ404を簡単に生成することができる。
【0107】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の眼科装置1について説明を行う。上記第1実施形態の眼科装置1では、プレスキャンを1回だけ実行すると共に、断層形状取得部218がプレスキャンで得られたBスキャン画像402からILM層403aを検出した結果に基づいて眼底Efの断層形状を検出している。この際にILM層403aの検出には時間がかかるので眼底Efの3次元OCT撮影に時間を要するおそれがある。そこで、第2実施形態の眼科装置1では、第1実施形態よりも短時間で眼底Efの3次元OCT撮影を実行する。
【0108】
なお、第2実施形態の眼科装置1は、プレスキャン制御部216、断層形状取得部218及び光路長調整制御部224の機能が第1実施形態とは異なる点を除けば、上記第1実施形態の眼科装置1と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0109】
図10は、第2実施形態のプレスキャンを説明するための説明図である。なお、図10の符号XAは3D(H)スキャンの前に実行されるプレスキャンを示し、符号XBは3D(V)スキャンの前に実行されるプレスキャンを示す。
【0110】
図10の符号XAに示すように、第2実施形態のプレスキャン制御部216は、本スキャンが3D(H)スキャンである場合には、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、プレスキャンとして、眼底Efに対してY方向において互いに異なる複数のスキャン位置でX方向のBスキャン(符号B2参照)を実行する。なお、プレスキャンのスキャン位置の数は特に限定はされない。
【0111】
また、図10の符号XBに示すように、第2実施形態のプレスキャン制御部216は、本スキャンが3D(V)スキャンである場合には、OCT光源101及び光スキャナ42を制御して、プレスキャンとして、眼底Efに対してX方向において互いに異なる複数のスキャン位置でY方向のBスキャン(符号B2参照)を実行する。
【0112】
第2実施形態の断層形状取得部218は、プレスキャンの実行中に検出器125が検出した干渉光LCの検出信号に応じてDAQ130から出力されるサンプリングデータに基づいて、プレスキャンのスキャン位置ごとにBスキャン画像402を形成する。次いで、断層形状取得部218は、各スキャン位置のBスキャン画像402に基づいて、眼底Efの断層形状を予測する。
【0113】
図11は、第2実施形態の断層形状取得部218による眼底Efの断層形状の予測処理を説明するための説明図である。図11に示すように、第2実施形態の断層形状取得部218は、プレスキャンのスキャン位置ごとのBスキャン画像402からそれぞれ公知の方法でBスキャン画像402内の眼底断層像403のZ位置、例えばZ方向の平均高さ位置を表すZMEANを演算する。そして、第2実施形態の断層形状取得部218は、スキャン位置ごとのZMEANの演算結果に基づいて、眼底Efの断層形状(符号K参照)を予測する。
【0114】
第2実施形態の光路長調整制御部224は、断層形状取得部218が予測した眼底Efの断層形状と、光路長取得部214が取得した最適光路長情報とに基づいて、第1実施形態と同様に、本スキャンのスキャン位置ごとに最適光路長の決定と本スキャン中の対象光路長の調整とを実行する。
【0115】
図12は、第2実施形態の眼科装置1による眼底Efの3次元OCT撮影処理の流れを示したフローチャートである。なお、ステップS3までの処理は、図8に示した第1実施形態と同じであるのでここでは説明を省略する。
【0116】
ステップS3の処理の後、第1実施形態と同様にプレスキャンが開始される(ステップS4A)。プレスキャン制御部216がOCT光源101及び光スキャナ42を制御して、プレスキャンの最初のスキャン位置でBスキャンを実行させる(ステップS4B)。また同時に、プレスキャン制御部216は、Bスキャンの実行中に検出器125による干渉光LCの検出とDAQ130による検出信号のサンプリングと、を実行させる(ステップS4C)。
【0117】
次いで、プレスキャンの次のスキャン位置を対象として(ステップS4DでNO、ステップS4E)、Bスキャンと(ステップS4B)、干渉光LCの検出及び検出信号のサンプリング(ステップS4C)と、が実行される。以下同様に、プレスキャンの残りのBスキャンのスキャン位置ごとに、ステップS4Eの処理とステップS4BからステップS4Cまでの処理とが繰り返し実行される。
【0118】
プレスキャンが完了すると(ステップS4DでYES)、断層形状取得部218がプレスキャンのスキャン位置ごとにBスキャン画像402を形成し、既述の図11に示したように各Bスキャン画像402からそれぞれZMEANを演算した結果に基づいて眼底Efの断層形状を予測する(ステップS4G)。既述の第1実施形態のようにILM層403aを検出する場合と比較して、眼底Efの断層形状の精度は劣るが短時間で眼底Efの断層形状が得られる。
【0119】
以下、図8に示した第1実施形態と同様に、ステップS8以降の処理が実行される。
【0120】
以上のように第2実施形態の眼科装置1では、プレスキャンの複数のスキャン位置で得られたBスキャン画像402に基づいて眼底Efの断層形状を予測することで、短時間で眼底Efの断層形状が得られ、その結果、短時間で眼底Efの3次元OCT撮影を実行することができる。また、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0121】
なお、上記第2実施形態では、既述の図10に示したように本スキャンが3D(H)スキャンである場合にはプレスキャンのスキャン位置ごとにX方向のBスキャンを実行しているが、眼底Efの断層形状を予測可能であればプレスキャン中のBスキャンのスキャン方向は特に限定はされない。また同様に第2実施形態では、本スキャンが3D(V)スキャンである場合にはプレスキャンのスキャン位置ごとにY方向のBスキャンを実行しているが、プレスキャン中のBスキャンのスキャン方向は特に限定はされない。
【0122】
[第3実施形態]
図13は、第3実施形態の眼科装置1の演算制御ユニット200の機能ブロック図である。上記各実施形態では本スキャン前にプレスキャンを実行して眼底Efの断層形状を検出又は予測しているが、例えば走査範囲RAが広角でなければ光路長調整制御部224による光路長調整を実行しなくとも本スキャンの各スキャン位置で形成されるBスキャン画像402内の眼底断層像403の位置が概ね基準位置の近傍になる。このため、走査範囲RAが広角でなければプレスキャンを実行する必要はなく、プレスキャンを省略することで眼底Efの3次元OCT撮影を短時間で完了することができる。そこで、第3実施形態の眼科装置1では、走査範囲RAに応じてプレスキャンの実行と省略とを自動で切り替える。
【0123】
図13に示すように、第3実施形態の眼科装置1は、演算制御ユニット200がさらにモード切替部228として機能すると共に、プレスキャン制御部216、断層形状取得部218、及び光路長調整制御部224の機能が一部異なる点を除けば上記各実施形態の眼科装置1と基本的に同じ構成である。
【0124】
モード切替部228は、不図示の操作部に入力されたモード切替操作に応じて、眼科装置1(本スキャン制御部220)が実行する本スキャンの動作モードを、通常モードと広角モードとに選択的に切り替える。通常モードは、走査範囲RAを例えば6mm×6mmの範囲(本発明の第1範囲に相当)に設定したモードである。広角モードは、走査範囲RAを通常モードよりも広角に設定、例えば21mm×21mmの範囲(本発明の第2範囲に相当)に設定したモードである。なお、通常モード及び広角モードの走査範囲RAについては適宜変更可能である。
【0125】
なお、広角モード時には検者が対物レンズ22に広角レンズ(図示は省略)を装着したり、或いはモード切替部228の制御の下で不図示のレンズ挿脱機構により広角レンズを自動装着したりしてもよい。
【0126】
第3実施形態のプレスキャン制御部216、断層形状取得部218、及び光路長調整制御部224は、本スキャンの動作モードが広角モードである場合にのみ作動し、動作モードが通常モードである場合には作動しない。
【0127】
図14は、第3実施形態の眼科装置1による眼底Efの3次元OCT撮影処理の流れを示したフローチャートである。なお、ステップS3までの処理は、図8に示した第1実施形態と同じであるのでここでは説明を省略する。
【0128】
不図示の操作部に入力されたモード切替操作に応じて、モード切替部228が本スキャンの動作モードを広角モードに切り替えた場合には(ステップS3AでYES)、既述の図8に示した上記第1実施形態と同様のステップS4以降の処理が実行される。なお、図12に示した第2実施形態のステップS4A以降の処理を実行してもよい。これにより、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0129】
一方、モード切替部228が本スキャンの動作モードを通常モードに切り替えた場合には(ステップS3AでNO)、プレスキャンが実行されることなく、本スキャン制御部220がOCT光源101及び光スキャナ42、検出器125、及びDAQ130を制御して本スキャンを実行する(ステップS8A)。この本スキャンの実行中には、光路長調整制御部224による光路長調整は実行されない。
【0130】
そして、本スキャンが完了すると、画像形成部222が本スキャンのスキャン位置ごとのBスキャン画像402を形成する(ステップS14A)。以下、上記各実施形態と同様に3次元データ生成部226により3次元データ404が生成される(ステップS15)。
【0131】
以上のように第3実施形態では、本スキャンの動作モードが通常モード、すなわち走査範囲RAが広角ではない場合には、プレスキャン及び本スキャン中の光路長調整を省略することで、眼底Efの3次元OCT撮影を短時間で完了することができる。
【0132】
[その他]
上記各実施形態では、本スキャンのスキャン位置ごとに光路長調整制御部224による光路長調整を実行しているが、例えばスキャン位置が一定ライン数だけ進むごとに光路長調整を実行、すなわち間欠的に光路長調整を実行してもよい。また、差分ΔZが所定の閾値を超えるスキャン位置のみ光路長調整を実行してもよい。さらに、既述の図7に示した眼底Efの断面形状のように、眼底Efの断面の両端部で湾曲が強くなることに対応して、光路長調整制御部224が「本スキャン序盤」及び「本スキャン終盤」ではスキャン位置ごと或いは短い間隔で光路長調整を実行し、逆に「本スキャン中盤」では長い間隔で光路長調整を実行してよい。
【0133】
上記各実施形態では、眼科装置1が被検眼Eの眼底Efの3次元OCT撮影を実行しているが、被検眼Eの他の被観察部位の3次元OCT撮影を実行する場合にも本発明を適用可能である。
【0134】
上記各実施形態では、本スキャンの実行中にBスキャンのスキャン位置をAスキャン方向及びBスキャン方向の双方に対して垂直方向に位置変更しているが、走査範囲RAの全面を走査可能であればBスキャンのスキャン位置の変更方法は特に限定はされない。
【0135】
上記各実施形態では、スウェプトソースタイプのOCT撮影を行う眼科装置1を例に挙げて説明したが、例えばスペクトラルドメインタイプのOCT撮影など公知の各種方式のOCT撮影を実行する眼科装置1に本発明を適用可能である。
【0136】
上記各実施形態では、眼科装置1として眼底カメラ及び光干渉断層計の複合機を例に挙げて説明したが、眼科装置1が光干渉断層計のみで構成されていてもよく、被検眼Eの被観察部位の3次元OCT撮影を実行可能な各種装置に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0137】
1…眼科装置
2…眼底カメラユニット
3…表示装置
10…照明光学系
11…観察光源
12…反射ミラー
13…集光レンズ
14…可視カットフィルタ
15…撮影光源
16…ミラー
17…リレーレンズ
18…リレーレンズ
19…絞り
20…リレーレンズ
21…孔開きミラー
22…対物レンズ
30…撮影光学系
31…合焦レンズ
32…ミラー
33…ダイクロイックミラー
34…集光レンズ
35…イメージセンサ
36…ミラー
37…集光レンズ
38…イメージセンサ
39…視標表示部
39A…ハーフミラー
40…コリメータレンズユニット
41…光路長変更部
42…光スキャナ
43…合焦レンズ
44…ミラー
45…リレーレンズ
46…ダイクロイックミラー
50…アライメント光学系
51…LED
52…絞り
53…絞り
54…リレーレンズ
55…ダイクロイックミラー
60…フォーカス光学系
61…LED
62…リレーレンズ
63…スプリット指標板
64…二孔絞り
65…ミラー
66…集光レンズ
67…反射棒
90…固視標
100…OCTユニット
101…OCT光源
102…光ファイバー
103…偏波コントローラ
104…光ファイバー
105…ファイバーカプラ
110…光ファイバー
111…コリメータ
112…光路長補正部材
113…分散補償部材
114…コーナーキューブ
115…コーナーキューブ移動機構
116…コリメータ
117…光ファイバー
118…偏波コントローラ
119…光ファイバー
120…アッテネータ
121…光ファイバー
122…ファイバーカプラ
123…光ファイバー
124…光ファイバー
125…検出器
127…光ファイバー
128…光ファイバー
200…演算制御ユニット
202…眼底撮影制御部
204…OCT制御部
210…アライメント制御部
212…ライブ表示制御部
214…光路長取得部
216…プレスキャン制御部
218…断層形状取得部
220…本スキャン制御部
222…画像形成部
224…光路長調整制御部
226…3次元データ生成部
228…モード切替部
300…前眼部カメラ
400…Aスキャン画像
402…Bスキャン画像
403…眼底断層像
403a…ILM層
404…3次元データ
DZ…Z方向距離
E…被検眼
Ea…前眼部
Ef…眼底
HC…特定スキャン位置
KC…クロック
L0…光
LC…干渉光
LR…参照光
LS…測定光
LS1…戻り光
RA…走査範囲
VC…特定スキャン位置
ΔZ…差分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14