(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003556
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】吸収性物品の個包装体
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240105BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/56 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102767
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱野 椋子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA14
3B200BB02
3B200BB09
3B200BB20
3B200CA11
3B200DE03
3B200DE05
3B200DE10
3B200DF08
3B200DF09
(57)【要約】
【課題】吸収性物品を衛生的に保持することができ、環境にやさしい吸収性物品の個包装体を提供する。
【解決手段】トップシート11と、バックシート13と、吸収体12と、を有する吸収性物品10と、吸収性物品10を個装する包装シート14とを含む吸収性物品の個包装体1であって、バックシート13が衣類側表面に粘着剤層15を有し、包装シート14は、紙基材を有し、長手方向の端部及び長手方向に直交する幅方向の両端部にシール部が形成され、粘着剤層15に対向する対向面に剥離層16を有し、吸収性物品10は、長手方向の中央部にて、トップシート11側を内側にして折り曲げ部17にて2つ折りされ、包装シートは、長手方向の中央部にて、折り山部18にて2つ折りされており、吸収性物品の折り曲げ部17が、包装シートの折り山部18と反対側に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有する吸収性物品と、前記吸収性物品を個装する包装シートとを含む吸収性物品の個包装体であって、
前記バックシートが衣類側表面に粘着剤層を有し、
前記包装シートは、紙基材を有し、
前記包装シートの長手方向の端部及び長手方向に直交する幅方向の両端部にシール部が形成されており、
前記包装シートが前記粘着剤層に対向する対向面に剥離層を有し、
前記吸収性物品は、長手方向の中央部にて、前記トップシート側を内側にして折り曲げ部にて2つ折りされ、
前記包装シートは、長手方向の中央部にて、折り山部にて2つ折りされており、
前記吸収性物品の折り曲げ部が、前記包装シートの折り山部と反対側に配置される、
ことを特徴とする吸収性物品の個包装体。
【請求項2】
さらに、前記包装シートの折り山部と反対側の長手方向端部に、開封容易部を備えることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項3】
前記包装シートは、42g/m2以上60g/m2以下の坪量を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収性物品の個包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の個包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、生理用ナプキン、パンティーライナー、紙オムツ等の吸収性物品は、1個ずつ包装シートで包まれ、包装シートと一体となって3つ折りされ、包装シートの縁部同士をヒートシール等によって封着することにより個包装化した状態で提供されている。吸収性物品は個包装化により、衛生的に持ち運ぶことができる。
【0003】
しかし、吸収性物品の個包装体を使用する際は、包装シート及び吸収性物品を展開し、吸収性物品の一部を掴んで、包装シートから引き剥がす。このとき、吸収性物品に直接触れることは、衛生面の点から好ましくないという懸念があった。
【0004】
また、近年、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献が様々な企業に求められている。包装シートは、ポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂繊維から作られた不織布と、紙等の基材に剥離剤を塗布したものであって吸収性物品の粘着層を被覆する剥離紙と、で形成されることが多い。複数の素材を用いている包装シートは、リサイクルし難く、合成樹脂繊維(不織布)の焼却に燃焼エネルギーが必要であるため、改善が強く望まれていた。
【0005】
この問題に対して、例えば、特許文献1には、剥離層、熱可塑性樹脂層、不織布層が順に積層された剥離部材(包装シート)を有する体液吸収用当て材が開示されている。この剥離部材は、不織布と剥離紙の機能が一体化したものではあるが、合成樹脂繊維を用いることは変わらなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吸収性物品を衛生的に保持することができ、環境にやさしい吸収性物品の個包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、長手方向中央部にて吸収性物品と包装シートが2つ折りされた個包装体において、バックシートが衣類側表面に粘着剤層を有し、包装シートが粘着剤層に対向する対向面に剥離層を有し、包装シートは、紙基材を有し、長手方向の端部及び長手方向に直交する幅方向の両端部にシール部を形成し、吸収性物品の2つ折りの折り曲げ部が、包装シートの2つ折りの折り山部と反対側に配置されることで、吸収性物品を衛生的に保持することができ、環境にやさしい吸収性物品の個包装体を得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の吸収性物品の個包装体を提供するものである。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有する吸収性物品と、前記吸収性物品を個装する包装シートとを含む吸収性物品の個包装体であって、
前記バックシートが衣類側表面に粘着剤層を有し、
前記包装シートは、紙基材を有し、
前記包装シートの長手方向の端部及び長手方向に直交する幅方向の両端部にシール部が形成されており、
前記包装シートが前記粘着剤層に対向する対向面に剥離層を有し、
前記吸収性物品は、長手方向の中央部にて、前記トップシート側を内側にして折り曲げ部にて2つ折りされ、
前記包装シートは、長手方向の中央部にて、折り山部にて2つ折りされており、
前記吸収性物品の折り曲げ部が、前記包装シートの折り山部と反対側に配置される、
吸収性物品の個包装体である。
(2)本発明の第2の態様は、さらに、前記包装シートの折り山部と反対側の長手方向端部に、開封容易部を備える、(1)に記載の吸収性物品の個包装体である。
(3)本発明の第3の態様は、前記包装シートは、42g/m2以上60g/m2以下の坪量を有する、(1)又は(2)に記載の吸収性物品の個包装体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸収性物品を衛生的に保持することができ、環境にやさしい吸収性物品の個包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の個包装体の斜視図である。
【
図3】本発明の変形例に係る吸収性物品の個包装体の平面図である。
【
図4】本発明の別の変形例に係る吸収性物品の個包装体の平面図である。
【
図5】本発明の更に別の変形例に係る吸収性物品の個包装体の平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の装着工程(1)の平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の装着工程(2)の平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の装着工程(3)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。また、吸収性物品の長手方向とは、吸収性物品が着用されたときに着用者の前後にわたる方向である。また、吸収性物品の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向である。さらに、衣類側面とは、バックシート等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面であり、肌当接面とは、トップシート等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面である。
【0014】
<吸収性物品の個包装体>
本発明の吸収性物品の個包装体の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の個包装体の斜視図であり、
図2は、
図1のA-A断面の断面図である。
【0015】
吸収性物品の個包装体1は、吸収性物品10を着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート11と、トップシート11に対向して配置され、吸収性物品10を着用したときに相対的に衣類側に位置する液不透過性のバックシート13と、トップシート11とバックシート13との間に配置された吸収体12と、を有する吸収性物品10と、吸収性物品10を個装する包装シート14とを含む。包装シート14は、紙基材を有している。さらに、バックシート13には、衣類側表面に粘着剤層15を有しており、包装シート14には、粘着剤層15の対向面に剥離層16を有している。
【0016】
吸収性物品10と包装シート14とが、長手方向中央部に沿って、吸収性物品10の長手方向に2つ折りで折り畳まれる。言い換えると、吸収性物品10は、長手方向の中央部にて、トップシート11側を内側にして折り曲げ部17にて2つ折りされている。また、包装シート14は、長手方向の中央部にて、折り山部18にて2つ折りされている。また、吸収性物品10の折り曲げ部17は、包装シート14の折り山部18と反対側に配置される。
【0017】
包装シート14の長手方向の端部及び長手方向に直交する幅方向の両端部にシール部21が形成されている。吸収性物品の個包装体1は、シール部21で三方向を封止することにより、外部からのホコリ等が吸収性物品10に入り込むことを防止し、吸収性物品10を衛生的に保持することができる。シール部21は、手で開けられ、かつ包装シート14が破壊されない強度で接着されていることが好ましい。
【0018】
<吸収性物品>
吸収性物品10としては、一般的に知られているものであれば特に制限はなく、例えば、吸水ナプキン、軽失禁パッド、尿取りパッド等の失禁製品、生理用ナプキン等の生理用品、パンティーライナー、使い捨て紙おむつ等が挙げられる。吸収性物品10の長手方向、幅方向及び厚さの寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、装着のしやすさから、長手方向の範囲として100mm以上250mm以下、幅方向の範囲として40mm以上150mm以下、厚さ3mm以下のものである。吸収性物品10の寸法を上記の範囲に調整することで、種々の用途のものが容易に得られる。
【0019】
吸収性物品10の形状は、特に限定されず、略矩形型、略砂時計型、略扇型等、着用者の着用部位にフィットする形状であれば形状は問わない。また、吸収性物品10は、用途やタイプに応じて、立体ギャザー、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0020】
(トップシート)
トップシート11としては液透過性の基材を使用できる。例えば、サーマルボンド不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との積層体等の不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上を積層した複層シート等が挙げられる。トップシート11には、エンボス加工、穿孔加工等の方法、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の、改質剤の添加等を実施することができる。
【0021】
(吸収体)
吸収体12としては、一般に生理用ナプキン、紙オムツ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、吸収性繊維、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer;以下「SAP」ともいう。)、親水性シートといった材料から形成される。吸収性繊維は、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティッシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体12に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、特に限定されないが、50g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以上300g/m2以下であることがより好ましい。これにより、吸収体12により多くの体液(尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体)を吸収させることができる。
【0022】
吸収体12が含むSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はない。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、SAPの坪量は、特に限定されないが、50g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以上300g/m2以下であることがより好ましい。
【0023】
吸収体12において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体12の形状の安定化の目的から、吸収体12を包むような、キャリアシート(図示せず)を設けてもよい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、例えば、ティッシュ、吸収紙、エアレイド不織布、スパンボンド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。これらの中でも、スパンボンド不織布が好ましい。また、キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0024】
(バックシート)
バックシート13は、吸収性物品10の外部に体液が漏れないように液不透過性を有し、遮水性を有する基材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有してもよい。バックシート13としては、液不透過性の基材を使用できる。例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の不織布、ポリエステルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等の樹脂フィルム等が挙げられる。バックシート13には、液不透過性を向上させるための公知の方法を施すことができる。また、バックシート13に透湿性を備えるために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート13にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム等を挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0025】
バックシート13の坪量は、強度及び加工性の点から、15g/m2以上60g/m2以下であることが好ましく、25g/m2以上45g/m2以下であることがより好ましい。
【0026】
図2に示すように、バックシート13の衣類側表面には、粘着剤層15を有している。吸収性物品10が未使用の状態においては、この粘着剤層15を介して、バックシート13に包装シート14が固定され、後述する包装シート14に有する剥離層16により、保護されている。また、吸収性物品10の使用時には、粘着剤層15を介して、吸収性物品10が下着等に固定される。
【0027】
粘着剤層15の形状については、特に限定はないが、バックシート13の長手方向又は幅方向に延在することが好ましく、長手方向又は幅方向に延在するように、複数列形成することがより好ましく、バックシート13の長手方向に等間隔に3列形成することが更に好ましい。
【0028】
粘着剤層15を形成する粘着剤としては、特に限定はない。例えば、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン-アクリル系共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体等のホットメルト系粘着剤が挙げられる。これらを、1種のみを使用しても、複数をブレンドして使用してもよい。上記の粘着剤を、例えば、バックシート13の衣類側表面に塗布することで、粘着剤層15を形成することができる。
【0029】
<包装シート>
包装シート14は、紙基材を有する。紙基材を利用することで、石油由来の素材ではなく、再生可能原料を利用することができ、環境にやさしい包装シート14となる。また、紙基材の包装シート14は、合成樹脂繊維製の包装シート14と比較して、風合いに優れている。紙基材は木材パルプ繊維を主成分とするものが好ましい。木材パルプ繊維としては、例えば、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の化学パルプ、サーモメカニカルパルプ、ストーングラインドパルプ、リファイナーグラインドパルプ等の機械パルプ、及び、新聞紙、コート紙、上質紙等から得られる再生パルプ等の繊維が挙げられる。これらの木材パルプ繊維を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、ケナフ、麻、竹等の非木材パルプ、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等のセルロース繊維以外の繊維材料を1種又は2種以上配合することができる。
【0030】
紙基材の具体例としては、例えば、剥離紙用原紙、上質紙、クラフト紙、クルパック紙、フォ-ム紙、半晒紙、グラシン紙及びクレ-プ紙等が挙げられる。これらの中でも、紙基材の風合いを維持しやすい点から、パルプ繊維を漂白精製処理した晒パルプ繊維である針葉樹晒クラフトパルプ繊維(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ繊維(LBKP)、及びこれらの混合物を原料としたクレープ紙が好ましく、針葉樹晒クラフトパルプ繊維及び広葉樹晒クラフトパルプ繊維(LBKP)を併用するクレープ紙がより好ましく、広葉樹クラフトパルプ及び針葉樹クラフトパルプの固形分重量比が90/10以上50/50以下であるクレープ紙がさらに好ましい。
【0031】
包装シート14の紙基材には、吸収性物品の個包装体1として形成された際、外面側に印刷が施されていてもよい。また、紙基材は、防水性の確保のために、オーバーコートが施されたオーバーコート紙であってもよい。
【0032】
包装シート14は、少なくとも紙基材を含むが、更にシール層を含むことが好ましい。シール層は、吸収性物品の個包装体1において、シール部21として包装シート14の端部を封止する機能を有する。
【0033】
シール層は、ヒートシール層及び/又は接着剤層であることが好ましい。本発明の包装シート14は、例えば、紙基材/ヒートシール層、紙基材/接着剤層、紙基材/ヒートシール層/接着剤層、紙基材/接着剤層/ヒートシール層等のような層構成を取ることができる。なお、シール層は後述するように紙基材上に設けるが、紙基材の内部に設ける(例えば、紙基材を抄造する際に、シール層の原料も一緒に抄造して、シール層の原料を含んでシール性を有する包装シート14を得る)方式でもよい。
【0034】
本発明の吸収性物品の個包装体1において、ヒートシール層は、紙基材の全面に形成されていても、表面の一部、例えば、紙基材同士が積層・接合される部分にのみ形成されていてもよい。紙基材の表面においてヒートシール層を形成する位置、大きさ、及びヒートシール層が占める割合は適宜設定することができる。
【0035】
ヒートシール層を構成する材料としては特に限定されず、各種ヒートシール性を発現する材料のいずれも使用することができ、例えば、ポリオレフィン系樹脂や、その他の熱可塑性樹脂等を使用することができる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アイオノマー、非晶性ポリエステル、ポリプロピレン、スチレン-アクリル共重合体、プロピレン-エチレン共重合体(好ましくはエチレン含有量が10モル%以下の共重合体)、あるいは、ポリプロピレンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体等をグラフト重合又は共重合したポリプロピレン系樹脂、中密度ポリエチレン等を使用することができる。ヒートシール層を構成する材料は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ヒートシール層は、通常用いられる方法、例えば、紙基材上にポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を含有する組成物を押出法によって製膜する方法、公知のヒートシール加工装置(貼合処理装置)を用いて、紙基材に熱可塑性樹脂からなる、又は熱可塑性樹脂を含有するフィルムを貼り付ける方法、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物を水に溶解、又は分散させた水系ヒートシール剤、あるいは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶解、又は分散させた溶剤系ヒートシール剤をロールコート、グラビアロールコート、キスコート等の公知の方法で紙基材上に塗工する方法等で形成することができる。
【0037】
ヒートシール層の坪量は、50g/m2以下であることが好ましく、5g/m2以上35g/m2以下であることがより好ましく、10g/m2以上20g/m2以下であることが更に好ましい。ヒートシール層の坪量が上記範囲内にあることで、開封しやすい吸収性物品の個包装体1を得ることができる。また、必要とされる包装シート14のしなやかさと柔らかさ、強度のすべてがより良好に達成でき、さらに、吸収性物品の個包装体1としての密封性とシール部21の接着性を容易に確保しやすい傾向がある。
【0038】
ヒートシール層の坪量は、例えば、次のようにして求めることができる。まず、0.1M酢酸水溶液と0.1M酢酸ナトリウム水溶液を調製する。約830gの0.1M酢酸水溶液と約160gの0.1M酢酸ナトリウム水溶液を混合してpHが4となるようにし、これを酢酸緩衝液とする。この酢酸緩衝液にセルラーゼオノズカp1500(ヤクルト薬品工業株式会社製)を添加量が1重量%となるように添加する。セルラーゼオノズカp1500を添加した酢酸緩衝液50mlと、包装シート14(ヒートシール層が形成された紙基材)0.5gとをバイアル瓶に入れて、しっかりと蓋をする。次に、180rpm、40℃の条件で24時間振とうした後、バイアル瓶からヒートシール層を採取し、ヒートシール層部分の質量を測定する。包装シート14(ヒートシール層が形成された紙基材)の質量(0.5g)と採取したヒートシール層の質量から、下記式により、ヒートシール層の坪量を算出する。
ヒートシール層の坪量
=包装シート14の坪量×(ヒートシール層の質量/包装シート14の質量)
本発明の吸収性物品の個包装体1において、接着剤層は、紙基材、又は紙基材上に形成されたヒートシール層の全面に形成されていても、表面の一部、例えば、紙基材同士が積層・接合される部分にのみ形成されていてもよい。紙基材の表面において接着剤層を形成する位置、大きさ、及び接着剤層が占める割合は適宜設定することができる。
【0039】
接着剤層を構成する接着剤としては特に限定されず、公知のものをいずれも使用することができ、例えば、エチレン系接着剤、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、スチレン-アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等を使用することができる。これらの中でも、スチレン-アクリル系接着剤が好ましい。
【0040】
接着剤層は、接着剤を、紙基材、又は紙基材上に形成されたヒートシール層等に、例えば、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等の公知の方法で塗工することにより形成することができる。
【0041】
接着剤層の坪量(接着剤の乾燥塗布量)は、通常、2g/m2以上30g/m2以下が好ましく、3g/m2以上25g/m2以下がより好ましく、5g/m2以上20g/m2以下が更に好ましい。なお、接着剤層の坪量は、包装シート14の坪量と、接着剤層を設ける前にJIS P 8124に準拠して測定した紙基材の坪量とから、下記式により算出する。
接着剤層の坪量=包装シート14の坪量-紙基材の坪量
【0042】
前述のとおり、本発明の包装シート14においては、シール層はヒートシール層及び/又は接着剤層であることが好ましいが、通常、接着剤層よりも、ヒートシール層、特に、ポリオレフィン系樹脂を含有するヒートシール層の方が接着性に優れ、ヒートシール層、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂を含有するヒートシール層を設ける方が吸収性物品10をより包装し易くなる場合がある。また、開封し易い吸収性物品の個包装体1を得ることができる。
【0043】
包装シート14は、42g/m2以上60g/m2以下の坪量(例えば、紙基材とシール層及び/又は接着剤層とを有する場合、合計坪量)を有することが好ましく、43g/m2以上50g/m2以下の坪量を有することがより好ましい。包装シート14の坪量が42g/m2未満であると、吸収性物品10が外部から見えやすくなり、使用者は目につかないよう気を配る必要がある。また、包装シート14の坪量が60g/m2を超えると、開封する際に大きな音が発生する可能性が生じる。
【0044】
紙基材の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して基紙を製造することができる。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0045】
包装シート14の厚さは、風合い、手肉感の点から、65μm以上90μm以下が好ましく、70μm以上80μm以下がより好ましい。
【0046】
図2に示すように、包装シート14は、バックシート13に有する粘着剤層15に対向する対向面に剥離層16を有することが好ましい。包装シート14に剥離紙を形成せず、包装シート14に剥離性能を持たせることにより、個包装にした際にゴミの減量が可能となり、環境への配慮が高まるとともに、コストダウンが図れる。剥離層16は、バックシート13に有する粘着剤層15と接触しても、容易に剥がれる機能を有する。剥離層16の形状については、特に限定はないが、粘着剤層15と同形状とすることが好ましい。剥離層16を形成するための剥離処理は特に制限されず、例えば、熱硬化性あるいはUV(紫外線)硬化性のシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、イソシアネート系樹脂等の剥離剤を、粘着剤層15に対向する対向面に塗布することで、剥離層16を形成することができる。また、剥離剤の塗工量も同様に適宜設定することができる。
【0047】
さらに、包装シート14は、ゴミの減量が可能となり、環境への配慮が高まるとともに、コストダウンが図れることから、吸収性物品の個包装体1を開封する際に用いるタブテープを有さないことが好ましい。
【0048】
図3~
図5は、それぞれ本発明の変形例に係る吸収性物品の個包装体1の平面図である。
図3~
図5に示すように、包装シート14の折り山部18と反対側の長手方向端部に、開封容易部22~24を備えることが好ましい。開封容易部22~24を設けることにより、吸収性物品の個包装体1を開封する際に、吸収性物品10を包装シート14から剥がしやすくなる。
【0049】
図3の開封容易部22は、包装シート14の折り山部18と反対側の長手方向端部の中央付近に形成する摘み機能を有するものである。開封容易部22は、包装シート14の長手方向端部の向かい合わせの両端にそれぞれ形成してもよい。開封容易部22の形状に特に限定はなく、半円状、長方形、台形等、適宜設定することができる。中でも、半円状に形成することが、摘まみやすく、開封を容易にすることから好ましい。開封容易部22は、包装シート14の原反を包装シート14の形状に切断する際に、開封容易部22も含めた形状で切断することで、形成することができる。
【0050】
図4の開封容易部23は、一方側の端部の包装シート14のみに切り欠けとして形成している。開封容易部23があることで、切りかけのない、他方の摘まみ部分をつまんで開封する。開封容易部23の形状に特に限定はなく、半円状、長方形、台形等、適宜設定することができる。開封容易部23は、包装シート14の原反を包装シート14の形状に切断する際に、ミシン目として設けられている。消費者は、吸収性物品10を使用する際に、このミシン目を破断することで、開封容易部23を形成することができる。
【0051】
図5の開封容易部24は、包装シート14の折り山部18と反対側の長手方向端部の両方を折り返すことで形成している。これにより、長手方向端部に剛性を持たせ、摘まみやすくなり、開封が容易となる。開封容易部24の幅方向の寸法(包装シート14長手方向端部から折り返し線までの長さ)は、摘まみやすさの点から、2mm以上10mm以下であることが好ましい。開封容易部24は、吸収性物品10を包装シート14に内包し、シール層にて封止後、折り山部18と反対側の長手方向端部を折り返すことで、形成することができる。
【0052】
(吸収性物品の個包装体の包装構造)
図1~
図5に示すように、吸収性物品の個包装体1は、2つ折りに折り畳まれる。包装シート14は、幅方向に沿って延びる1つの折り畳み線F1にて折り畳み、その後、長手方向の端部及び幅方向の両縁部にシール部21を形成する。2つ折りとすることにより、吸収性物品10を装着する工程が、3つ折り以上のものと比較して、装着するまでの手間が軽減でき、開封時に音が出る回数が最低限になる。
【0053】
シール部21により、吸収性物品の個包装体1の3方向の縁部が閉じられるので、吸収性物品10を衛生的に保管することができる。上述したような、シール部21は、シール層による、ヒートシール加工による融着や、接着剤による接着による形成方法の他に、エッジエンボスを付与することにより形成することもできる。エッジエンボスとは、連続シートより幅狭の金属製ロールとゴムロールとで構成される一対のエッジエンボスロールにより、包装シート14の側縁部に線状のエッジエンボスを付与して、積層された包装シート14同士を一体化させる技術である。エッジエンボスのエンボスパターンは、時に限定はなく、適宜使用できる。
【0054】
図6~
図8は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品10の装着工程(1)~(3)の平面図である。
【0055】
(1)本実施形態の吸収性物品の個包装体1は、まず、包装シート14の長手方向端部あるいは開封容易部22~24を摘まんで開き、吸収性物品10を露出させる。このとき、吸収性物品10の折り曲げ部17が、包装シート14の折り山部18と反対側に配置されているので、吸収性物品10は2つ折りのままである。
【0056】
(2)開封した吸収性物品の個包装体1は、その状態のまま反対側に引っ繰り返し、露出した粘着剤層15を下着のクロッチ部25に貼り付ける。貼り付け後、
図7で示す矢印の方向へ包装シート14を引っ張って剥がす。
【0057】
(3)吸収性物品10は、包装シート14と同方向へ引っ張られ、下着のクロッチ部25に全部が装着される。本実施形態の構成により、手を触れずに、下着に貼り付けることができる。
【0058】
また、吸収性物品10の廃棄時は、包装シート14の外面側に吸収性物品10を置いて2つ折りに折り畳み、開封前と同じ畳み方をして廃棄することで、開いて中身が見えることが少なくなり、隠ぺい性を保ったまま廃棄できる。
【0059】
吸収性物品の個包装体1は、例えば、吸収性物品10と、吸収性物品10よりも長手方向及び幅方向の両方に大きい包装シート14とを、あらかじめ2つ折りにした吸収性物品10の折り曲げ部17が、折り山部18となる予定の部分とに反対側になり、吸収性物品10のバックシート13の衣類側面と包装シート14の表面とが接触するように積層する第1工程と、第1工程で得られた積層体において、包装シート14が吸収性物品10を包み込むように2つ折りする第2工程と、シール部21の形成により接合する第3工程と、を含む製造方法により作製することができる。
【0060】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0061】
1 吸収性物品の個包装体
10 吸収性物品
11 トップシート
12 吸収体
13 バックシート
14 包装シート
15 粘着剤層
16 剥離層
17 折り曲げ部
18 折り山部
21 シール部
22、23、24 開封容易部
25 下着のクロッチ部
F1 折り畳み線