(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035569
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】防虫用フィルタ及び防虫用フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
A01M 29/34 20110101AFI20240307BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20240307BHJP
F24F 8/15 20210101ALI20240307BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20240307BHJP
【FI】
A01M29/34
F24F8/108 320
F24F8/108 310
F24F8/15
F24F7/003
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140125
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】室井 利夫
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕幸
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121BA53
2B121BB27
2B121BB32
2B121CC02
2B121EA01
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】
従来の防虫剤が練りこまれた防虫ネットのようなフィルタでは、防虫ネットの網目を通り抜ける虫が少なくなかった。
【解決手段】
本発明の防虫用フィルタ1は、不織布5と、殺虫成分を含有する殺虫剤含有部4とを備え、
前記不織布5と前記殺虫剤含有部4とは、一体化されるように構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、
殺虫成分を含有する殺虫剤含有部と、を備え、
前記不織布と前記殺虫剤含有部とは、一体化されていることを特徴とする防虫用フィルタ。
【請求項2】
前記不織布と前記殺虫剤含有部とは別部材で構成されており、熱融着により一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の防虫用フィルタ。
【請求項3】
前記不織布と前記殺虫剤含有部とは別部材で構成されており、接着剤により一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の防虫用フィルタ。
【請求項4】
前記殺虫剤含有部は、ネットで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の防虫用フィルタ。
【請求項5】
請求項1に記載された防虫用フィルタを備えた換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防虫用フィルタ及び防虫用フィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、殺虫剤が練りこまれた防虫ネットが開示されている。特許文献1に代表される従来の防虫ネットのようなフィルタでは、網目を通り抜ける虫が少なくなかった。その理由は、ネットの網目よりも頭幅が小さいため、網目を通り抜ける虫や、ネットの網目よりも頭幅が大きくても、ネットの網目を拡げて通り抜ける虫や、拡げられた網目を探して通り抜ける虫がいたからである。しかもこれらの虫は短時間でネットを通り抜けることが多く、防虫ネットに練りこまれた殺虫剤の影響を十分に受けないままネットの網目をすり抜けることに成功していたのである。そのため、従来のネットに殺虫剤を練りこむだけでは、効果が十分であったとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
殺虫効果を十分に及ぼすことが可能な防虫用フィルタの提供及び防虫用フィルタの製造が目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、防虫用フィルタにおいて、不織布と、殺虫成分を含有する殺虫剤含有部とを備え、前記不織布と前記殺虫剤含有部とは一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
従来の防虫ネットにより構成されたフィルタに比べ、防虫効果の高い換気用フィルタの提供及び製造が可能となった。
【0007】
上記以外の課題、構成、作用及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1の防虫用フィルタの一部を切り出したもの
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の特徴的な部分の説明に必要な事項を主に説明することとし、公知技術を採用できる事項については説明を省略するものである。
【0010】
(第1の実施形態)
図1に本実施形態の防虫用フィルタ1を示す。本実施形態の防虫フィルタ1は空調・換気装置のフィルタ等に用いることができる。防虫用フィルタ1は、通気を許容しつつ侵入しようとする虫に対して殺虫効果を発揮し、虫の侵入を防止するものである。防虫用フィルタ1は薄板状の形態であり、防虫用フィルタ1の一方の面は虫侵入阻止機能と殺虫機能を兼ね備える防虫面2であり、他方の面は非防虫面3である。
図1では平面が矩形である形態を示しているが、設置される個所の形状に応じて円形等の他の形状を採用することができる。
【0011】
図2に
図1の防虫用フィルタ1の一部を切り出したものを示す。防虫用フィルタ1は、殺虫剤含有ネット4及び不織布5から構成されており、殺虫剤含有ネット4は不織布5の防虫面2側で一体化されている。両者を一体化する方法としては、殺虫剤含有ネット4と不織布5の防虫面2側の間に熱融着を採用することにより容易に製造が可能となるが、接着材により一体化する方法も採用され、殺虫剤含有ネット4がその機能を発揮できる方法において種々の方法が採用される。
【0012】
ここで、一体化とは、殺虫剤含有ネット4がその機能を発揮することができる範囲において、不織布5と分離しない程度の状態を意図しており、例えば、殺虫剤含有ネット4が経年変化により殺虫機能が劣化したとき不織布5と分離し、新しい殺虫剤含有ネット4と交換できるような形態を含む。
【0013】
本実施例の
図2の形態における殺虫剤含有ネット4は、殺虫剤を含んだ樹脂製の糸6、6によって形成された網目7を有する網であるが、殺虫剤含有ネット4は、糸6によって織られた網目状織物、糸6で編まれた網目状編み物、または、糸6を碁盤目状に一体的に形成した網目状の成形物であってもよい。また、網目状織物や網目状編み物の場合、糸6の交点を溶融接着したり、接着剤で接着し形状を保持するようにしてもよい。
【0014】
殺虫剤含有ネット4の網目7は、通風性の確保と虫の侵入を防止する機能をバランスよく実現する大きさを有している。また、網目7の大きさは、殺虫剤含有ネット4おいて均一である必要はなく、虫が侵入する確率の高い箇所と侵入する確率の低い箇所で異ならせることができる。例えば、侵入する確率が高い箇所では他の箇所よりも網目7の大きさを小さくすることができる。それにより、虫の侵入を防ぐ効果が高まるとともに、全体を一律に小さくしたときに比べて通風抵抗が大きくなることを防ぐことができる。
【0015】
殺虫剤含有ネット4が網目状の織物を採用した場合、織り方として、平織り、斜文織り及び朱子織り等を採用することができる。なお、
図2の殺虫剤含有ネット4は、平織り形式を採用した例である。
【0016】
殺虫剤含有ネット4が網目状の編み物を採用した場合、編み方として、天竺編み、フライス編み、または、スムース編み等を採用することができる。
【0017】
糸6はモノフィラメントであってよいし、複数のフィラメントを撚ったマルチフィラメントであってもよい。糸6の基材は、殺虫剤に対し耐薬品性を備えるものであればどのようなものでもよい。糸6の基材で特に好ましいものとして、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン系プラスチックを挙げることができる。また、耐久性等を考慮し、金属で構成することも可能である。
【0018】
糸6が含む殺虫剤は、殺虫の即効性が高く人畜への毒性が低いピレスロイド系殺虫剤が好ましい。ピレスロイド系殺虫剤の例として、エトフェンプロックス及びアレスリン等を挙げることができる。糸6が含む殺虫剤は、単一の殺虫剤でもよいし、複数の殺虫剤でもよい。また、殺虫剤の糸6の基材への定着や殺虫剤保持のために添加物が糸6の基材や殺虫剤に加えられてよい。
【0019】
殺虫剤は糸6の基材に練りこまれた形態であってもよいし、糸6の基材の表面に塗布された形態であってもよい。糸6は糸6の基材全体またはその表面に殺虫剤を含むので、殺虫剤含有ネット4は殺虫剤の種類に応じて糸6に接触する虫に対して殺虫効果を奏する。
【0020】
殺虫剤の基材における濃度は、殺虫剤含有ネット4において均一にする必要はない。虫が侵入する確率が高い箇所は、虫が侵入する確率が低い箇所に比べて殺虫剤の基材に対する濃度を高くすることができる。それにより、虫の侵入する確率が高い箇所の殺虫剤の濃度を高くすることにより虫の侵入を防ぐことができる一方、虫の侵入する確率が低い箇所では濃度を高くしないので、殺虫剤を無駄に使うことがないので、経済的であるし人体への影響も少なくすることができる。
【0021】
不織布5は、多数のフィラメントが絡みあって形成されたものである。フィラメントの材質は特に限定されるものではないが、樹脂やガラス等を挙げることが可能である。樹脂が選択された場合は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン系プラスチックを挙げることができる。
【0022】
不織布5を形成するフィラメントの単位体積当たりの密度は、通風性の確保と虫や他の異物等の侵入防止をバランスよく実現するものである。例えば、不織布5のフィラメントの単位体積当たりの密度は、不織布5の全体で均一であってもよいし、虫や異物の混入の頻度が高くなりそうな箇所については、他の箇所より高くすることもできる。
【0023】
防虫用フィルタ1は、不織布5の防虫面2側の表面に殺虫剤含有ネット4が熱融着されて一体化され防虫面2が形成される。熱融着後、殺虫剤含有ネット4の網目7は、通気孔の役割を果たす。
【0024】
本実施形態の防虫用フィルタ1の防虫面2から虫が侵入を試みる場合に、次の3つのケースがある。
【0025】
(第1のケース)大型の虫を殺虫剤含有ネット4で阻止できた場合
フィルタ1内への侵入を試みる虫の大きさと網目7との大きさの関係で、虫の大きさが大きい場合には殺虫剤含有ネット4で侵入が阻止される。大型の虫は、フィルタ1の表面で防虫用フィルタ1内への侵入を試みるために防虫用フィルタ1の表面を徘徊するが、大型の虫が網目7よりも大きい場合、例えば、少なくとも大型の虫の体の一部が殺虫剤含有ネット4に接触している場合、大型の虫の一部は常に殺虫剤含有ネット4に接触することになり、活動を停止したり死んでしまったりする。また、大型の虫が無理やり殺虫剤含有ネット4の網目7を拡大して不織布5内への侵入しようとしても、不織布5と殺虫剤含有ネット4が一体化されているため殺虫剤含有ネット4は不織布5に対して補強材としての機能を果たし不織布5は容易に拡げることができず、大型の虫の不織布5内への侵入を困難とし、大型の虫が不織布5の表面でもがいているうちに活動を停止したり死んでしまう。
【0026】
(第2のケース)虫が不織布5内へ無理やり入ろうとした場合
虫が不織布5の防虫面2側の表面に侵入しようとしても、不織布5と殺虫剤含有ネット4が一体化されているため網目7が不織布5に対して補強材としての機能をするため、虫は不織布5を容易に拡げることができず、不織布5の表面を徘徊しているうちに殺虫剤含有ネット4の殺虫剤を十分に浴びたり、不織布5の表面や表層でもがいているうちに、活動を停止したり死んだりする。不織布5に殺虫効果を付与した場合、虫の不織布5内への侵入をより困難にすることができる。
【0027】
また、補強材の効果としては、網目7が風雨に曝されても網目7と不織布5とが互いに補強材として機能するため網目7が不用意に拡がることを防ぐことができ、虫が侵入しやすい網目7が形成されることを防ぐことができる。また、不織布5からみても、網目7を介して風雨に曝されたとしても、網目7が不織布5に対して補強材として機能するため、その形状を保つことができ、不織布に求められる機能を維持することができる。なお、殺虫剤含有ネット4の補強材としての効果は、殺虫剤含有ネット4が不織布5と一体化していれば奏することができ、殺虫剤を含有していなくてもよい。
【0028】
(第3のケ―ス)小型の虫を殺虫剤含有ネット4で阻止できなかった場合
フィルタ1内への侵入を試みる小型の虫の大きさが網目7に比べて小さい場合、小型の虫は網目7を通り抜けることができる。しかし、網目7を通り抜けた小型の虫は、不織布5の防虫面2側表面で一旦侵入が阻止される。小型の虫は不織布5内への侵入を試みるが上記の第2のケースと同様に殺虫剤含有ネット4と不織布5とが一体化されているため、容易に不織布5内への侵入することができない。
【0029】
小型の虫は、さらに防虫用フィルタ1内への侵入を試みるため、不織布5の表面を徘徊し侵入できる箇所を探すが、不織布5と殺虫剤含有ネット4とが一体化されており不織布5と殺虫剤含有ネット4との間に虫が入る隙間がないため、小型の虫は不織布5の表面を徘徊しているときに、平面視で殺虫剤含有ネット4の位置に到達したときには、必ず殺虫剤含有ネット4に触れることになり、殺虫剤含有ネット4の殺虫剤の効果により活動が停止し、その後死に至るものである。
【0030】
従来の不織布と殺虫剤含有ネットが一体化されていない防虫フィルタは、不織布と殺虫剤含有ネットとの間に隙間ができることがあり、その隙間に小型の虫が侵入した場合殺虫剤含有ネットに触れないことがあるが、本実施例では、小型の虫は殺虫剤含有ネット4と不織布5との間に侵入することができず、不織布5のフィラメントで体をからめとられて、もがいているうちに侵入しようとする虫に接触している殺虫剤含有ネット4の殺虫剤を十分に浴びて、活動を停止したり死んでしまう。
【0031】
仮に、小型の虫が殺虫剤含有ネット4に触れず、不織布5の防虫面2側の表面に侵入しようとしても、不織布5と殺虫剤含有ネット4が一体化されているため不織布5に対して殺虫剤含有ネット4が補強材としての機能を果たすため不織布5は容易に拡げることができず、さらに不織布5内への侵入を困難とし、不織布内でもがいているうちに活動を停止したり、死んでしまう。
【0032】
上述のとおり、本実施形態により、従来の防虫ネットに比べて殺虫効果の高い防虫用フィルタの提供が可能となった。
【0033】
以下に本実施形態の防虫用フィルタ1の製造方法を示す。殺虫剤含有ネット4及び不織布5の製造方法に関しては、従来からの製造方法を採用できる。
【0034】
殺虫剤含有ネット4と不織布5の一体化する方法としては、典型的には熱融着によるものと接着剤を用いたものとが考えられる。しかし、接着剤を用いた一体化では塗布作業、貼着作業及び硬化作業の手間が煩雑なこと、時間がかかること及びコストが高くなることから、熱融着による一体化が有利である。熱融着の際の加熱の温度は、ネット4に含有される殺虫剤の劣化、揮発等の影響が少ない範囲であることが望ましい。
【0035】
本実施形態の製造方法においては、殺虫剤含有ネット4の片面を加熱して溶融させた後、溶融した面を不織布5の表面に貼り付ける。殺虫剤含有ネット4の溶融した面が不織布5のフィラメントに浸透しつつ硬化して、殺虫剤含有ネット4及び不織布5が一体化した防虫フィルタ1ができる。
【0036】
(第2の実施形態)
本実施形態に係るフィルタにおいては、不織布5に直接防虫面を構成することにより不織布と防虫面を一体化した点が特徴であり、フィルタを殺虫剤含有ネット4と不織布5の複数の部材で構成する第1の実施形態と相違し、不織布の基本的な構成殺虫剤の選択は第1の実施形態と共通する。以下では、本実施形態の特徴部分を中心に説明する。
【0037】
図3に本実施形態の防虫用フィルタ1を示す。本実施形態においては、防虫面2の構成として第1の実施形態の殺虫剤含有ネット4を用いず、不織布5の防虫面2側表面に直接殺虫剤を含有させたものを採用している。不織布5の殺虫剤を含有している部分を不織布8、殺虫剤を含有していない部分を不織布9で示している。殺虫剤を含有させる部分は不織布5の全面としてもよいし、部分的に含有させてもよい。殺虫剤を部分的に含有させる場合は、虫が侵入してくる経路に含有させることが望ましい。
【0038】
不織布5は目が細いので虫は容易に侵入できない。虫は侵入を試みたり不織布5のフィラメントで体をからめとられて、もがいているうちに防虫面2の殺虫剤を十分に浴びて、活動停止したり死んでしまう。なお、本実施形態の殺虫剤は、第1の実施形態のものと同じでよい。
【0039】
本実施形態により、従来のものに比べ殺虫効果の高い防虫フィルタの提供が可能となった。
【0040】
(第2の実施形態の製造方法)
以下に本実施形態の防虫用フィルタ1の製造方法を示す。不織布5の製造方法に関しては、従来からの製造方法を採用すればよい。
【0041】
不織布5の防虫面2側の表面に溶剤で希釈された殺虫剤を噴霧又は塗布し、溶剤を揮発させて防虫用フィルタ1とすることができるし、不織布5を構成するフィラメントのうち、防虫面を構成するフィラメントに予め殺虫効果を持たせておいて不織布を構成することにより防虫用フィルタ1とすることができる。
【0042】
(第3の実施形態) 本実施形態に係るフィルタにおいては、防虫面を別構成としたところが第1の実施形態と相違し、基本的な構成及び動作は第1の実施形態と共通する。以下では、本実施形態の特徴部分を中心に説明する。
【0043】
第1の実施形態においては、防虫面2の殺虫剤含有ネット4のみが殺虫剤を保持していたが、本実施形態においては、殺虫剤含有ネット4のみならず、不織布5の防虫面2側表面も殺虫剤を保持している。
【0044】
殺虫剤含有ネット4の構成は第1の実施形態と同一とし、不織布5の防虫面2側表面の構成は第2の実施形態と同一である。殺虫剤含有ネット4は不織布5の防虫面2側表面に熱融着されている。
【0045】
本実施形態により、殺虫構造が二層となるので第1の実施形態及び第2の実施形態よりもさらに高い殺虫効果を奏することができる。
【0046】
(第3の実施形態の製造方法)
以下に本実施形態の防虫フィルタ1の製造方法を示す。殺虫剤含有ネット4及び不織布5の製造方法に関しては、従来からの製造方法を採用すればよい。
【0047】
まず、第1の実施形態と同じ方法で殺虫剤含有ネット4に殺虫剤を含有させ、第2の実施形態と同じ方法で不織布5に殺虫剤を含有させる。
【0048】
次に、殺虫剤含有ネット4の片面を加熱して溶融させた後、溶融した面を不織布5の表面に貼り付ける。殺虫剤含有ネット4の溶融した面が不織布5のフィラメントに浸透しつつ硬化して、殺虫剤含有ネット4及び不織布5が一体化した防虫用フィルタ1が完成する。
【0049】
なお、殺虫剤含有ネット4及び不織布5の一体化前に殺虫剤を含有させず、一体化後に殺虫剤含有ネット4が融着した防虫面2側の表面に溶剤で希釈された殺虫剤を噴霧又は塗布し、必要に応じて溶剤を揮発させて防虫用フィルタ1を製造する方法を採用してもよい。
【0050】
本発明は上述した実施形態に制約されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらすべては、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0051】
(他の実施形態1)本実施形態は、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態ならびにそれらの製造方法において、不織布5として粗じんフィルタを用いる実施形態及びその製造方法である。粗じんフィルタは、安価で通風性が良いので、本実施形態においては、製造コストを抑え、圧力損失の少ない防虫フィルタ1が提供可能となる。なお、「粗じんフィルタ」はJISの定義によりフィルタを区分けした用語であり(JIS B 9908)、当業者にとり自明な用語である。
【0052】
(他の実施形態2)本実施形態は、第1の実施形態の製造方法、第2の実施形態の製造方法及び第3の実施形態の製造法方法において、殺虫剤含有ネット4の糸6としてリサイクルプラスチックを原料とする製造方法である。本実施形態により、資源の有効利用が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1…防虫用フィルタ、2…防虫面、3…非防虫面、4…殺虫剤含有ネット、5…不織布
6…糸、7…網目、8…殺虫剤を含有する不織布、9…殺虫剤を含有していない不織布