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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003557
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】X線管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20240105BHJP
   H01J 35/16 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01J35/06 E
H01J35/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102769
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 利巳
(72)【発明者】
【氏名】曽根 準基
(57)【要約】
【課題】 安定した耐電圧性能が維持できる信頼性の高いX線管を得るためのX線管の製造方法を提供する。
【解決手段】 X線管において、真空外囲器は、セラミックスからなる絶縁外囲器と、該絶縁外囲器の一端面に設けられ陰極フィラメントを支持する陰極側金属外囲器と、絶縁外囲器の他端面に設けられ、支持体に接合されて支持体を支持する陽極側金属外囲器と、支持体に接続されて陽極ターゲットに高電圧を印加する高圧ケーブルと、高圧ケーブルの周囲に配置された電気絶縁性の放熱体と、放熱体と高圧ケーブルとの間の空間に充填された樹脂材製の電気絶縁体とを備えている。前記電気絶縁体は、樹脂材を溶融状態で注入した後に加熱により硬化するものであり、前記注入と前記加熱による硬化の工程を、複数回行うことで充填する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を透過する出力窓が形成された真空外囲器と、
前記真空外囲器内に設けられ、前記出力窓に対向した陽極ターゲット及び前記陽極ターゲットの支持体と、
前記真空外囲器内に設けられ、前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極フィラメントと、を具備するX線管において、
前記真空外囲器は、セラミックスからなる絶縁外囲器と、該絶縁外囲器の一端面に設けられ前記陰極フィラメントを支持する陰極側金属外囲器と、前記絶縁外囲器の他端面に設けられ、前記支持体に接合されて前記支持体を支持する陽極側金属外囲器と、前記支持体に接続されて前記陽極ターゲットに高電圧を印加する高圧ケーブルと、前記高圧ケーブルの周囲に配置された電気絶縁性の放熱体と、前記放熱体と前記高圧ケーブルとの間の空間に充填された電気絶縁体とを備え、
前記電気絶縁体は、樹脂材を溶融状態で注入した後に加熱により硬化するものであり、前記注入と前記加熱による硬化の工程を、複数回行うことで充填するX線管の製造方法。
【請求項2】
前記支持体は雄ネジ部を有し、前記放熱体は雌ネジ部を有し、前記雌ネジ部は前記放熱体の内周面全体に亘って形成されており、一部のみが前記支持体の前記雄ネジ部に螺合しており、
前記電気絶縁体は、前記支持体の前記雄ネジ部と螺合していない前記放熱体の前記雌ネジ部に最初の溶融樹脂材を塗布した後に加熱により硬化後、次の溶融樹脂材を前記放熱体と前記高圧ケーブルとの間の空間に注入した後に硬化する請求項1に記載のX線管の製造方法。
【請求項3】
複数回に分けて注入される樹脂材の主成分は、同一のシリコーン樹脂である請求項1又は2に記載のX線管の製造方法。
【請求項4】
複数回に分けて注入される樹脂材において、先に注入される樹脂材の熱膨張率は後から注入される樹脂材の熱膨張率よりも小さい請求項3に記載のX線管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線管として、固定陽極型X線管が知られている。固定陽極型X線管は、真空外囲器、陽極ターゲット、陰極フィラメント、支持体、放熱体、電気絶縁体及び高圧ケーブルを備えている。真空外囲器の一端の平坦部にX線を透過する出力窓が設けられている。
【0003】
陽極ターゲットは、真空外囲器の内部に配置され、出力窓に対向している。陰極フィラメントは、真空外囲器の内部に配置され、陽極ターゲットに照射する電子を放出するものである。支持体は、真空外囲器内に設けられており、支持体の一端部は、陽極ターゲットを支持している。
【0004】
支持体の他端部には、高圧ケーブル及び放熱体が接続されている。高圧ケーブルは、陽極ターゲットに高電圧を印加するためのものである。放熱体は、支持体の他端部において高圧ケーブルを囲む周囲に配置されており、陽極ターゲットで発生して支持体に伝達された熱を放出するためのものである。電気絶縁体は、支持体の端部において高圧ケーブルと放熱体との間に充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6440192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、X線管の製造工程や市場での使用中に、電気絶縁体中に亀裂や、ボイド、剥離等の欠陥が発生し、X線管の耐電圧性能が著しく低下するという問題があった。
【0007】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、安定した耐電圧性能が維持できる信頼性の高いX線管を得るためのX線管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係るX線管の製造方法は、X線を透過する出力窓が形成された真空外囲器と、前記真空外囲器内に設けられ、前記出力窓に対向した陽極ターゲット及び前記陽極ターゲットの支持体と、前記真空外囲器内に設けられ、前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極フィラメントと、を具備するX線管において、前記真空外囲器は、セラミックスからなる絶縁外囲器と、該絶縁外囲器の一端面に設けられ前記陰極フィラメントを支持する陰極側金属外囲器と、前記絶縁外囲器の他端面に設けられ、前記支持体に接合されて前記支持体を支持する陽極側金属外囲器と、前記支持体に接続されて前記陽極ターゲットに高電圧を印加する高圧ケーブルと、前記高圧ケーブルの周囲に配置された電気絶縁性の放熱体と、前記放熱体と前記高圧ケーブルとの間の空間に充填された樹脂材製の電気絶縁体とを備え、前記電気絶縁体は、樹脂材を溶融状態で注入した後に加熱により硬化するものであり、前記注入と前記加熱による硬化の工程を、複数回行うことで充填するX線管の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、電気絶縁体中の欠陥の発生の防止を図ることができ、安定した耐電圧性能が維持できる信頼性の高いX線管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係るX線管の製造方法により製造したX線管の概略的構成を示す断面図である。
図2図2は、図1に示すB部の拡大図である。
図3図3は、第1実施形態に係るX線管の製造方法であって、図2において電気絶縁体を充填する前の状態を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るX線管の製造方法であって、図2において第1回目の溶融樹脂材を注入した状態を示す断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係るX線管の製造方法であって、図2において第2回目の溶融樹脂材を注入した状態を示す断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係るX線管の製造方法であって、図2において第2回目の溶融樹脂材を注入した状態を示す断面図である。
図7図7は、第4実施形態に係るX線管の製造方法であって、図2において第1回目の溶融樹脂材を注入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るX線管として固定陽極型X線管について詳細に説明する。なお、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
図1に示すように、固定陽極型X線管1は、真空外囲器3と、陽極ターゲット5と、支持体7と、陰極フィラメント9と、絶縁外囲器11と、管容器13と、放熱体15と、高圧ケーブル17とを備えている。
【0013】
真空外囲器3は、内部を真空保持しており、先端外径が徐々に細くした筒状であり、先端面の平坦部にX線を透過する出力窓19が設けられている。
この出力窓19は、X線の減衰が少ない材料として、例えばベリリウム(Be)で形成されている。
【0014】
真空外囲器3の内部には、出力窓19に対向して陽極ターゲット5が配置され、この陽極ターゲット5の外周側に陰極フィラメント9が配置されている。尚、陽極ターゲット5と陰極フィラメント9との間には、収束電極21が設けてある。
【0015】
また、真空外囲器3内の中心部には支持体7の先端部7aが配置されている。支持体7の先端部7aは収束電極21の内周側に配置されるとともに先端で陽極ターゲット5を支持している。支持体7の他端部7bは、絶縁外囲器11の他端側から突設してあり、接合体(陽極側金属外囲器)23がろう付けされて、接合体23によって絶縁外囲器11と支持体7との間が封止状態に結合されている。換言すれば、接合体23は陽極ターゲット5を支持している。
また、絶縁外囲器11の先端面(一端面)11bには金属膜36が形成してあり、金属膜36に陰極フィラメント9を支持する陰極側金属外囲器24がろう付けされている。
【0016】
支持体7の他端部7bの端面には、支持体7の内部に形成された排気路25を通じて真空外囲器3内を排気するための排気管27が設けられているとともに、陽極ターゲット5に高電圧を印加するための高圧ケーブル17が接続される給電部29が設けられている。
【0017】
放熱体15は、電気絶縁性を有している。放熱体15は、円筒形状を成しており、内周面には雌ネジ部31(図3参照)が形成されている。この雌ネジ部31が、支持体7の他端部7bに形成された雄ネジ部32に螺合されており、放熱体15の一端面15aは接合体23に当接されている。図2及び図3から明らかなように、放熱体15の雌ネジ部31は、放熱体15の内周面全体に形成されているが、支持体7の雄ネジ部32に螺合しているのは、支持体7側に位置する一部分のみである。
放熱体15は、20W/m・K以上の高熱伝導特性及び10kV/mm以上の高電圧絶縁性を有するセラミクスで、例えば窒化アルミニウムを用いることにより、90W/m・K以上の高熱伝導率が得られる。
【0018】
高圧ケーブル17は、放熱体15及び電気絶縁体33の内周側に位置していると共に絶縁材33の外部に引き出されている。
【0019】
図3に示すように、支持体7の後端面7cと、放熱体15と、高圧ケーブル17とで囲まれる空間Kには、電気絶縁体33(図2参照)が充填されている。換言すれば、円筒形状の放熱体15の内周面と高圧ケーブル17との間に電気絶縁体33が充填されている。電気絶縁体33は、例えばシリコーン樹脂などのポッティング材である。
この電気絶縁体33の詳細及び充填方法については、後述する。
【0020】
図1に示すように、管容器13の内周側には、絶縁外囲器11、接合体23及び放熱体15との間に他の電気絶縁体34が充填されている。他の電気絶縁体34は、電気絶縁体33と同様に、シリコーン樹脂などのポッティング材で形成されている。
【0021】
管容器13の外面には、冷却部35が配設されている。この冷却部35には、固定陽極型X線管1の入力に応じて例えば空冷式若しくは液冷式、又はヒートパイプ式を選択できるが、維持管理が容易な空冷式、又はヒートパイプ式が好ましい。冷却部はラジエータであってもよい。
【0022】
本実施形態の放熱について説明する。
陽極ターゲット5への電子の衝突によって熱が発生し、この陽極ターゲット5の熱が支持体7に伝わり、この支持体7の他端部7bに接続されている接合体23を介して絶縁外囲器11、電気絶縁体33及び放熱体15へ放散及び伝導され、放熱体15を介して他の電気絶縁体34及び管容器13などへ放散及び伝導される。他の電気絶縁体34や放熱体15から管容器13に伝導された熱は、管容器13の外面を冷却する冷却部35によって放出される。この実施形態において、放熱体15は支持体7の他端部7bに直に接続されているため、陽極ターゲット5で発生して支持体7に伝達された熱をより効率的に放出できる。
【0023】
次に、電気絶縁体33の充填について説明する。
電気絶縁体33は、例えば、約50℃で溶融状態となり、約100℃の加熱により硬化するものである。本実施形態では、電気絶縁体33は、溶融樹脂材による注入と加熱による硬化との工程を、複数回行うことで空間K(図4参照)に充填する。本実施形態では2回の工程に分けて電気絶縁体33を充填している。第1回目の注入をする第1樹脂材(溶融樹脂材)33aと第2回目の注入をする第2樹脂材(溶融樹脂材)33bとは、共に主成分は、同一のシリコーン樹脂であってもよく、さらに、先に注入される第1樹脂材33aの主成分のシリコーン樹脂材の中に熱伝導性やX線遮蔽能力を高めるために無機物(例えば、シリカ等)の微粒子を配合して、後で注入される第2樹脂材33bよりも熱膨張率を小さくしても良い。
例えば、シリコーンのみの熱膨張率は、270×10―6/Kであるが、微粒子を配合した場合には、200~270×10―6/K程度とすることができる。
【0024】
電気絶縁体33の充填は、以下の順序でおこなう。
(1)図3に示すように、支持体7の給電部29に高圧ケーブル17を接続し、支持体7の他端部7bの雄ネジ部32に、放熱体15の雌ネジ部31を螺合して、放熱体15の一端面15aが接合体23に当接するまで螺進する。
これにより、高圧ケーブル17と、支持体7の他端部7bと放熱体15とで囲まれる空間Kが形成される。この空間Kは電気絶縁体33を充填する空間である。
【0025】
(2)図4に示すように、放熱体15の雌ネジ部31(図3参照)に第1樹脂材33aを塗布し、加熱して硬化する。
第1樹脂材33aの塗布は、例えば、刷毛で雌ネジ部31に塗るが、雌ネジ部31のネジ溝が埋まるように盛り付ける。樹脂材は、例えば、50℃の溶融した状態で塗布し、その後炉に入れて約100℃に加熱することで硬化する。
【0026】
(3)次に、図4に示すように第1樹脂材33aが硬化した後、その内側の空間(残りの空間)K1に第2樹脂材33bを注ぎ込む(図2参照)。このとき、溶融状態の第2樹脂材33bは、支持体7を下に向けて(図4の状態から上下反転)空間K1に上から充填し、その後炉に入れて加熱することで硬化する。
【0027】
(4)最後に、第1樹脂材33a及び第2樹脂材33bを硬化した状態で、常温まで冷却して、電気絶縁体33となる。
【0028】
第1実施形態の効果について説明する。
第1実施形態によれば、第1樹脂材33aを塗布した後に加熱硬化し、その後第2樹脂材33bを注入した後に加熱硬化することで、電気絶縁体33を複数回に分けて充填しているので、各回に形成する電気絶縁体の体積を小さくしているから、製造工程中の位相変化(溶融樹脂→加熱硬化→冷却)で発生する電気絶縁体内部の残留応力の緩和を図ることができる。特に、充填する体積を分けて少なくしているから冷却時に生じる体積収縮による悪影響を低減できる。
【0029】
即ち、電気絶縁体33は、膨張した状態で硬化し、その後の冷却時に体積収縮すること及び電気絶縁体33が隣接するX線管の部材がそれぞれ異なる収縮率で収縮することから、電気絶縁体33の樹脂材中に内部応力が発生するが、電気絶縁体33について、位相変化する体積を小さくしているので、発生する電気絶縁体内部の残留応力の緩和を図ることができ、電気絶縁体33中の欠陥の発生を防止することが可能となる。これにより、安定した耐電圧性能が維持できる信頼性の高いX線管を得ることができる。
【0030】
また、第1樹脂材33aを放熱体15の雌ネジ部31に塗布することにより、放熱体15に接触する樹脂材を第1樹脂材33aのみとし、第2樹脂材33bは放熱体15との接触による影響(膨張率の相違による影響)を受けなくて済むから、これによっても高圧ケーブル17と放熱体15との間の電気絶縁体33中の欠陥の発生を防止することが可能となる。例えば、第1樹脂材33aについて、シリコーンのみの熱膨張率は、270×10―6/Kであるのに対して、放熱体15を形成する窒化アルミニウムの熱膨張率は、4~5×10―6/Kである。
【0031】
以下に他の実施形態を説明するが、以下に説明する実施形態において、上述した一実施形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では一実施形態と主に異なる点を説明する。
【0032】
図5に第2実施形態を示す。この第2実施形態では、電気絶縁体33を構成する樹脂材を3回に分けて充填するものであり、具体的には第1樹脂材33a、第2樹脂材33b、第3樹脂材33cに分けてこの順序で注入する。第1樹脂材33aは、上述した第1実施形態と同様に放熱体15の雌ネジ部31に塗布した後に加熱硬化し、第2樹脂材33bは第1樹脂材33aの内周側に厚めに盛るようにして塗布した後に加熱硬化し、残りの空間K2に第3樹脂材33cを充填した後加熱硬化する。
【0033】
この第2実施形態によれば、電気絶縁体33を構成する樹脂材33a、33b、33cを3回に分けて充填しているので、一回当たりの位相変化する体積を2回に分ける場合よりも小さくできるから、高圧ケーブル17と放熱体15との間の電気絶縁体33中の欠陥の発生を更に防止することができる。
【0034】
図6に第3実施形態を示す。この第3実施形態では、第2実施形態と同様に電気絶縁体33を構成する樹脂材を3回に分けて充填している。第1樹脂材33aは、上述した第1実施形態と同様に放熱体15の雌ネジ部31に塗布した後に加熱硬化し、第2樹脂材33bは高圧ケーブル17の外周面に塗布した後に加熱硬化し、第1樹脂材33aと第2樹脂材33bとの間の残り空間K3に第3樹脂材33cを充填した後加熱硬化する。
【0035】
この第3実施形態では、高圧ケーブル17の被覆材(シリコーン樹脂等)や放熱体15(窒化アルミ等)との界面部分を第1樹脂材33a、第2樹脂材33bで塗布した後硬化し、第1樹脂材33aと第2樹脂材33bの間の空間K3に同じ成分の第3樹脂材33cを注入しているので、第3樹脂材33cはその境界面が同じ成分となるからなじみが良いので、電気絶縁体33中の欠陥の発生を更に防止することができる。この場合にも、高圧ケーブル17との界面部分や放熱体15との界面部分に接触する第1樹脂材33a、第2樹脂材33bは、第3樹脂材33cよりも熱膨張率を小さくすることが望ましい。
【0036】
図7に第4実施形態を示す。
第4実施形態では、図7において、支持体7の他端部7bを下にするように上下反転した状態にして、空間Kに第1樹脂材33a、第2樹脂材33bを上下に重ねるように順次充填する。この実施形態では電気絶縁体33を第1樹脂材33a、第2樹脂材33bの2回に分けて充填する例を示しているが、3回や4回に分けて充填しても良い。
【0037】
この第4実施形態でも、電気絶縁体33は、複数回に分けて樹脂材33a、33bを充填することで、製造工程中(溶融樹脂→加熱硬化→冷却)位相変化する体積を分けて小さくできるから、高圧ケーブル17と放熱体15との間の電気絶縁体33中の欠陥の発生を防止できる。
また、複数回に分けて充填する樹脂材33a、33b等は、上下に順次重ねて注入すれば良いので充填し易い。
【0038】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…固定陽極型X線管、3…真空外囲器、5…陽極ターゲット、7…支持体、9…陰極フィラメント、11…絶縁外囲器、15…放熱体、17…高圧ケーブル、23…接合体(陽極側金属外囲器)、31…雌ネジ、32…雄ネジ、33…電気絶縁体、33a…第1樹脂材、33b…第2樹脂材、K…樹脂の充填空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7