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特開2024-35572フルオラン二量体化合物およびこれを用いた記録材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035572
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】フルオラン二量体化合物およびこれを用いた記録材料
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/28 20060101AFI20240307BHJP
   B41M 5/327 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C09B11/28 N CSP
B41M5/327 215
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140130
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000179904
【氏名又は名称】山本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085202
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 博
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 洋二郎
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 洋
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB14
2H026BB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】地肌の白色度、保存安定性、画像堅牢度の諸性能に優れ、鮮明なマゼンタ色の発色画像として有用な記録材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるフルオラン二量体化合物。

(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換の環状アルキル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換アリール基を表す。RとRは互いに結合して脂肪族環、複素環を形成しても良い。Aはアルキレン基、カルボニル基又は酸素原子を表し、nは0~1の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるフルオラン二量体化合物。
(式(1)中、
、Rはそれぞれ独立に
水素原子、
置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換の環状アルキル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換アリール基を表す。
とRは互いに結合して脂肪族環、複素環を形成しても良い。
Aはアルキレン基、カルボニル基又は酸素原子を表し、nは0~1の整数を表す。)
【請求項2】
が炭素数1~12のアルキル基である請求項1記載のフルオラン二量体化合物。
【請求項3】
電子供与性ロイコ色素と電子受容性顕色剤との反応を利用する記録材料において電子供与性ロイコ色素として請求項1~2いずれかに記載のフルオラン二量体化合物を含有することを特徴とする記録材料。
【請求項4】
記録材料が感熱記録材料である請求項3に記載の記録材料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルオラン二量体化合物、ならびにこれを含有する記録材料に関する。更に詳しくは、マゼンタ色(真紅色)に発色させる電子供与性を有する呈色性化合物、即ちフルオラン二量体化合物と電子受容性顕色剤が、サーマルヘッドやレーザーの近赤外線光により発熱する光-熱変換剤により、反応して、画像又はデータを記録する事が出来る記録材料に好適な、フルオラン二量体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の観点から、リライタブル記録材料技術の進展が著しい。
熱或いは光により可逆的に情報の記録や消去が可能な可逆性記録媒体として、各種プリペイカード、ポイントカード、クレジットカード、ICカード等の普及が進んでおり、更にはディスプレイの分野まで可逆性記録媒体の利用が検討されている。
並行して意匠性の観点からフルカラー化進んでいる。三原色の中でも鮮明なマゼンタ色(真紅色)に発色、発色前後の耐久性の優れたロイコ色素が求められている。
【0003】
特許文献1に2発色の発色記録が可能な感熱記録紙としてマゼンタ色(真紅色)に発色するフルオラン化合物が開示されている。しかし、発色前後の耐光性が低く、色変化するため、2発色の発色記録が可能な感熱記録紙として問題となるため、改善が求められている。
特許文献2に可逆性多色性記録媒体として赤色に発色するマゼンタ色(真紅色)に発色するフルオラン化合物が開示されている。しかし、特許文献1と同様に発色前後の耐光性が低く、色変化するため、可逆性多色性記録媒体として問題となるため、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-173922号公報
【特許文献2】特開2003-266941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、マゼンタ色(真紅色)に高濃度で発色し、発色前後の色変化の無い高耐光性のフルオラン二量体化合物を含有するフルカラー可逆性感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題に関し検討した結果、発色組成物に、特定構造のフルオラン二量体化合物を含有させることによりこれが解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(i)一般式(1)で表されるフルオラン二量体化合物
【0008】
(式(1)中、
、Rはそれぞれ独立に
水素原子、
置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換の環状アルキル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換アリール基を表す。
とRは互いに結合して脂肪族環、複素環を形成しても良い。
Aはアルキレン基、カルボニル基又は酸素原子を表し、nは0~1の整数を表す。
【0009】
(ii)Rが炭素数1~12のアルキル基である(i)のフルオラン二量体化合物。
(iii)電子供与性ロイコ色素と電子受容性顕色剤との反応を利用する記録材料において電子供与性ロイコ色素として(i)~(ii)いずれかに記載のフルオラン二量体化合物を含有することを特徴とする記録材料。
(iv)記録材料が感熱記録材料である(iii)に記載の記録材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフルオラン二量体化合物は、通常の状態では無色或いはほぼ無色であるが、顕色剤との反応(相互作用)により、鮮明なマゼンタ色(真紅色)に発色し、その発色画像は耐光性が高く、劣化しない。
そのため、フルカラー感熱記録材料のマゼンタ色(真紅色)発色材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明のフルオラン二量体化合物は、電子供与性ロイコ色素と電子受容性顕色剤との反応を利用する記録材料において、少なくとも1種を有することを特徴とする。
まず、フルオラン二量体化合物について以下に説明する。
【0012】
[フルオラン二量体化合物]
本発明のフルオラン二量体化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0013】
(式(1)中、
、Rはそれぞれ独立に
水素原子、
置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換の環状アルキル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換アリール基を表す。
とRは互いに結合して脂肪族環、複素環を形成しても良い。
Aはアルキレン基、カルボニル基又は酸素原子を表し、nは0~1の整数を表す。)
【0014】
~R
より好ましくは
水素原子、
炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基、
炭素数5~12の置換又は無置換の環状アルキル基、
炭素数7~25の置換または無置換のアラルキル基、
さらに好ましくは、
炭素数1~12の置換又は無置換のアルキル基、
炭素数7~19の置換または無置換のアラルキル基、
炭素数6~11の置換又は無置換のアリール基、
最も好ましくは、炭素数1~6の置換又は無置換のアルキル基があげられる。
【0015】
これらの置換基の例を下記に示す。
無置換アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、n-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基などの直鎖または分岐の無置換アルキル基が挙げられる。
【0016】
置換アルキル基の例としては、
例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-ブトキシメチル基、n-ヘキシルオキシメチル基、(2-エチルブチルオキシ)メチル基、2-(4'-ペンテニルオキシ)エチル基などの、アルキルオキシ基またはアルケニルオキシ基を有するアルキル基、
例えば、ベンジルオキシメチル基、2-(ベンジルオキシメトキシ)エチル基などの、アラルキルオキシ基を有するアルキル基、
例えば、フェニルオキシメチル基、4-クロロフェニルオキシメチル基、4-(2'-フェニルオキシエトキシ)ブチル基などのアリ-ルオキシ基を有するアルキル基、
例えば、n-ブチルチオメチル基、2-n-オクチルチオエチル基などのチオアルキル基を有するアルキル基、
例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パ-フルオロエチル基、4-フルオロシクロヘキシル基、ジクロロメチル基、4-クロロシクロヘキシル基、7-クロロヘプチル基などのハロゲン原子を有するアルキル基が挙げられる。
【0017】
置換または無置換の環状アルキル基としては
例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-イソプロピルシクロヘキシル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-ジメチルアミノシクロヘキシル基、4-ブチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、4-sec-ブチルシクロヘキシル基、4-トリフルオロメチルシクロヘキシル基、3-トリフルオロメチルシクロヘキシル基、
4-アミルシクロヘキシル基、
【0018】
置換または無置換のアラルキル基としては、
例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、フェネチル基、α-メチルフェネチル基、α,α-ジメチルベンジル基、α,α-ジメチルフェネチル基、4-メチルフェネチル基、4-メチルベンジル基、4-イソプロピルベンジル基などの、無置換またはアルキル基を有するアラルキル基、
例えば、4-ベンジルベンジル基、4-フェネチルベンジル基、4-フェニルベンジル基などのアリ-ル基またはアラルキル基を有するアラルキル基、
例えば、4-メトキシベンジル基、4-n-テトラデシルオキシベンジル基、4-n-ヘプタデシルオキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、4-メトキシメチルベンジル基、4-ビニルオキシメチルベンジル基、4-ベンジルオキシベンジル基、4-フェネチルオキシベンジル基などの置換オキシ基を有するアラルキル基。
例えば、4-フルオロベンジル基、3-クロロベンジル基、3,4-ジクロロベンジル基などのハロゲン原子を有するアラルキル基、
更には、例えば、2-フルフリル基、ジフェニルメチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0019】
置換または無置換のアリール基としては
例えばフェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2-n-プロピルフェニル基、3-n-プロピルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、3-n-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、2-n-ペンチルフェニル基、3-n-ペンチルフェニル基、4-n-ペンチルフェニル基、4-イソペンチルフェニル基、4-tert-ペンチルフェニル基、3-n-ヘキシルフェニル基、4-n-ヘキシルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、3-n-ヘプチルフェニル基、4-n-ヘプチルフェニル基、2-n-オクチルフェニル基、3-n-オクチルフェニル基、4-n-オクチルフェニル基、3-n-ノニルフェニル基、4-n-ノニルフェニル基、3-n-デシルフェニル基、4-n-デシルフェニル基、4-n-ウンデシルフェニル基、3-n-ドデシルフェニル基、4-n-ドデシルフェニル基、4-n-テトラデシルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,3,5,6-テトラメチルフェニル基、5-インダニル基、1,2,3,4-テトラヒドロ-5-ナフチル基、1,2,3,4-テトラヒドロ-6-ナフチル基、
【0020】
2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-n-プロポキシフェニル基、4-イソプロポキシフェニル基、2-n-ブトキシフェニル基、3-n-ブトキシフェニル基、4-n-ブトキシフェニル基、4-イソブトキシフェニル基、4-n-ペンチルオキシフェニル基、2-n-ヘキシルオキシフェニル基、3-n-ヘキシルオキシフェニル基、4-n-ヘキシルオキシフェニル基、4-シクロヘキシルオキシフェニル基、4-n-ヘプチルオキシフェニル基、3-n-オクチルオキシフェニル基、4-n-オクチルオキシフェニル基、4-n-ノニルオキシフェニル基、4-n-デシルオキシフェニル基、4-n-ウンデシルオキシフェニル基、4-n-ドデシルオキシフェニル基、4-n-テトラデシルオキシフェニル基、2,3-ジメトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,5-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3,5-ジエトキシフェニル基、2-メトキシ-4-メチルフェニル基、2-メトキシ-5-メチルフェニル基、2-メチル-4-メトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3-メチル-5-メトキシフェニル基、
2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、4-ブロモフェニル基、3-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3-トリフルオロメチルオキシフェニル基、4-トリフルオロメチルオキシフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2-メチル-4-クロロフェニル基、2-クロロ-4-メチルフェニル基、3-クロロ-4-メチルフェニル基、2-クロロ-4-メトキシフェニル基、3-メトキシ-4-フルオロフェニル基、3-メトキシ-4-クロロフェニル基、3-フルオロ-4-メトキシフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基、4-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-(4’-メチルフェニル)フェニル基、4-(4’-メトキシフェニル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-エトキシ-1-ナフチル基、6-n-ブチル-2-ナフチル基、6-メトキシ-2-ナフチル基、7-エトキシ-2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、2-テトラセニル基、2-フルオレニル基、9,9-ジメチル-2-フルオレニル基、9,9-ジ-n-プロピル-2-フルオレニル基、2-フリル基、5-n-ブチル-2-フリル基、5-n-ヘキシル-2-フリル基、5-n-オクチル-2-フリル基、2-チエニル基、5-n-プロピル-2-チエニル基、5-n-ブチル-2-チエニル基、5-n-ヘキシル-2-チエニル基、5-n-オクチル-2-チエニル基、5-n-デシル-2-チエニル基、5-n-トリデシル-2-チエニル基、5-フェニル-2-チエニル基、5-(2’-チエニル)-2-チエニル基、5-(5’-n-ブチル-2’-チエニル)-2-チエニル基、5-(5’-n-ヘキシル-2’-チエニル)-2-チエニル基、5-(5’-n-デシル-2’-チエニル)-2-チエニル基、3-チエニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基などの置換または未置換のアリール基を挙げることができる。
【0021】
1とRが互いに結合して複素環を形成する場合の具体例としては
例えば、ピロリジノ基、ピペリジノ基、4-メチルピペリジノ基、4-イソプロピルピペリジノ基、ピロリジノ基、3-メチルピロリジノ基等が挙げられる。
【0022】
一般式(1)のAは好ましくは酸素原子、カルボニル基、炭素数1~6のアルキレン基である。
Aはより好ましくは、酸素原子、カルボニル基、炭素数1~3のアルキレン基である。
アルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3―ジイル基、プロパン-1.2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、1,1,2,2-テトラメチルエタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ペンタン-1,2-ジイル基、2,4-ジエチルペンタン-1,5-ジイル基、3-メチルペンタン-1,5-ジイル基、シシクロペンタン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-2,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基が挙げられる。特に炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、炭素数1~3のアルキレン基がより好ましい。
nは0~1の整数が好ましい。
【0023】
本発明の記録材料に含有される一般式(1)のフルオラン二量体化合物の具体例を下記の表に示すが、これらの範囲に限定されるものではない。
【0024】

【0025】

【0026】

【0027】

【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
本発明の一般式(1)のフルオラン二量体化合物は、例えば一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を脱水縮合剤の存在下に0~100℃の温度で数十時間反応させ、アルカリで処理することで製造することが出来る。
【0034】
(式(2)中、R~R、A、nは一般式(1)のR~R、A、nと同じものを示す)
【0035】
(式(3)中、Rは水素原子又は低級アルキル基を示す)
【0036】
脱水縮合剤としては、濃硫酸、発煙硫酸、ポリリン酸、五酸化リンが使用できるが特に濃硫酸が特に好ましい。
濃硫酸を脱水縮合剤として使用する場合、反応温度は0~80℃の範囲が好ましい。
【0037】
アルカリによる処理とは、上記した両原料を脱水縮合剤の存在下に反応した反応物を、一定範囲の時間、一定の温度にアルカリ条件下に置くことである。
アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が使用できるが、水酸化ナトリウムが特に好ましく、水溶液として使用するのが、好ましい。アルカリによる処理の温度は0~100℃、好ましくは50~100℃であるが、一般に温度が高いほど処理が効率よく進行する。アルカリの量は、処理液がpH9以上となるように使用されるのが好ましい。
アルカリで処理した反応物は、有機溶剤で抽出して精製される。また、アルカリ処理時に有機溶剤を共存させてもよい。有機溶剤として、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等が使用できるが、通常、トルエンが好ましく使用される。有機溶剤より目的物を析出させる際に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールを併用してもよい。
【0038】
マゼンタ色(真紅色)に発色させる電子供与性を有する呈色性化合物、即ち本発明のフルオラン二量体化合物と電子受容性顕色剤から構成される記録材料としてサーマルヘッドやレーザー光とによる光-変換剤を熱源として反応発色する感熱記録材料及びタイプ等の筆圧により反応発色する感圧記録材料がある。
【0039】
本発明のフルオラン二量体化合物を有する記録材料の発色画像が、優れた耐光性を有する理由は明確でないが、例えば、色素は光により励起状態となり、光退色反応を起こす活性化状態となるが、励起状態を速やかに基底状態に失活さることで耐久性が向上すると考えられている。本発明のフルオラン二量体化合物は、一般式(1)のAで、2個のフルオラン誘導体を連結した構造を持つことから、色素分子が色素粒子即ち会合状態になり、基底状態への緩和が促進されると考えられる。
さらに、二量体化合物にすることで、は一般的なフルオラン化合物に比べ、油、可塑剤に対する溶解性が低くなり、発色画像は耐油性、耐可塑剤性に優れるものとなる
【0040】
[感熱記録材料]
感熱記録材料は、例えば特公昭45-14039号公報等に開示されている公知の種々の方法により製造できる。一般的には、ロイコ色素、顕色剤、増感剤をそれぞれポリビニルアルコール等の水溶性高分子水溶液とアトライター、サンドミル等を用いて薬剤の粒径が数ミクロン以下になるように分散する。増感剤はロイコ色素、顕色剤の何れか、或いは両方に加えて同時に分散しても良い、また場合によって予めロイコ色素或いは顕色剤との共融物を作成して分散しても良い。これらの分散液を混合して必要に応じて顔料、バインダー、ワックス、金属石鹸、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を加えて、感熱塗液とする。得られた感熱塗液を上質紙、合成紙、プラスチックフィルム等の支持体に塗布し、カレンダー処理により平滑性を付与すると、感熱記録紙が得られる。また、感熱塗液は、必要に応じて発色性を向上させるため、プラスチック顔料或いはシリカ等の断熱材の下塗層を有する支持体に塗布しても良い。更に、必要に応じて耐水性、耐薬品性を付与するために、感熱記録層上に水溶性高分子水溶液等で上塗り層を設けることも良い。
【0041】
感熱記録紙に使用する顕色剤としては、各種のフェノール性化合物が使用できる。具体例としては、ビスフェノールA、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビスフェノールS、4-ヒドロキシ-4‘-イソプロポキシジフェニルスルホン、3,3-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,5-ビス(p-ヒドロキシフェニルメルカプト)-3-オキサペンタン、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS等が挙げられる。特にビスフェノールAが好ましく用いられる。
【0042】
増感剤としては、p-ベンジルビフェニル、メタターフェニル、2-ベンジルオキシナフタレン、1,4-ジベンジルオキシナフタレン、シュウ酸ベンジル、シュウ酸ジ-p-メチルベンジル、シュウ酸ジ-p-クロロベンジル、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-m-トルオキシエタン、1,2-ジ-p-トルオキシエタン、1,4-ジフェノキシエタン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニル、テレフタル酸ベンジル等が挙げられる。特に、p-ベンジルビフェニル、メタターフェニル、2-ベンジルオキシナフタレン、シュウ酸ジ-p-メチルベンジル、1,2-m-トルオキエタンが好ましく用いられる。
顔料としては、有機及び無機の顔料が使用できる。好ましい具体例としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカ、尿素ホルムアルデヒド樹脂粉末、ポリエチレン樹脂粉末等が挙げられる。
【0043】
バインダーとしては、水溶性高分子及び水不溶性高分子が使用できる。好ましい具体例としては、水溶性高分子として、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン類、スチレン無水マレイン酸共重合体加水分解物、イソブチレン無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等が、また水不溶性高分子として、スチレンブタジエンゴムラッテクス、アクリロニトリルブタジエンゴムラッテクス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。ワックスの好ましい具体例としては、パラフィンワックス、カルボキシ変性パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。金属石鹸としては、高級脂肪酸金属塩が用いられる。好ましい具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類が用いられる。また紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤が用いられる。
【0044】
なお、書き換え可能な感熱記録材料として、リライタブル記録材料も挙げられる。
リライタブル記録材料は紙或いは合成樹脂フィルムの支持体にロイコ色素と熱の作用によってロイコ色素に対して顕色性を有する基と、減色性を有する基を同一分子内に有する化合物である顕減色剤或いは長鎖型顕色剤及びバインダー等からなる記録層を形成し、表面に必要に応じて耐久性向上用保護層、UV保護層、耐摩耗湯用保護層を重ねた構成となっている。
顕減色剤を用いる場合は熱エネルギーの制御によりロイコ色素のラクトン環と顕色性を有する基と接触するとラクトン環が開裂し発色し、減色性を有する基と接触するとクトン環が閉環し消色する。
長鎖型顕色剤を用いる場合は顕色剤の融点以上に加熱すると融解してロイコ色素と接触して発色し、これから徐冷するとロイコ色素と顕色剤の分離・結晶化を起こすため、消色するが、急冷すると顕色剤がロイコ色素との結合を維持したまま規則性をもって凝集、発色状態を維持する。また発色状態より加熱すると発色状態の凝集構造が崩れ、発色温度よりも低い温度では顕色剤は単独で安定な結晶状態となり、ロイコ色素と分離、消色する。
【0045】
ロイコ色素としては、例えばフタリド化合物、アザフタリド化合物、ジアザフタリド化合物、フルオラン化合物等が適用される。
顕減色剤としては、フェノール性水酸基及びカルボキシル基を少なくとも1つを有し、且つアミノ基を官能基として又は塩化合物の一部として有する両性化合物又は、少なくとも1つのフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物と脂肪族アミンとの塩又は錯塩が挙げられる。
例えば、脂肪族アミン類、アミノ安息香酸類、ヒドロキシアミノ香酸類、又はこれらのエステル化合物が挙げられる。
長鎖型顕色剤としては、分子内にロイコ色素に対する顕色性を有する基、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基等と、分子間の凝集力を制御する基、例えば長鎖炭化水素基と連結した基を有する化合物が挙げられる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定を受けるものではない。
【0047】
[実施例1]具体例化合物(1)の製造
98%硫酸67gに化合物(A)12.5gを25℃以下で少量ずつ添加、溶解後、化合物(B)6.3gを10~20℃で添加した。室温で1時間攪拌後、昇温し40~50℃で20時間攪拌した後、反応物を700gの氷水中へ排出し、析出した沈殿をろ取した。得られた沈殿物をトルエン300mLと30%水酸化ナトリウム水溶液40gとともに、攪拌下1時間還流した。次いで、トルエン層を分取、湯洗した。減圧下、トルエン溶液を濃縮し、残渣にイソプロパノール200mLを添加、還流下1時間攪拌後、冷却した。析出物をろ取、イソプロパノール50mLで洗浄して乾燥した。
下記構造式の(具体例化合物(1))13.9gを淡赤白色粉末として得た。
熱分解温度(TG-5%);331.3℃
熱重量示唆熱分析を実施、重量が5%減少した時の温度を熱分解温度(TG-5%)とした。以後、同じである。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・ESI-Mass: 841(M+H)
・元素分析値:実測値(C:79.96%、H:5.23%、N:3.36%);理論値(C:79.98%、H:5.27%、N:3.33%)
【0048】
[実施例2] 具体例化合物(2)の製造
実施例1の化合物(A)12.5gの代わりに化合物(C)14.7gを使用した以外は実施例1と同様にして下記構造式の(具体例化合物(2)16.5gを淡黄白色粉末として得た。
熱分解温度(TG-5%);357.1℃
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・ESI-Mass: 953(M+H)
・元素分析値:実測値(C:80.51%、H:6.28%、N:2.97%);理論値(C:80.65%、H:6.34%、N:2.94%)
【0049】
[実施例3] 具体例化合物(3)の製造
実施例1の化合物(A)12.5gの代わりに化合物(D)15.9gを使用した以外は実施例1と同様にして下記構造式の(具体例化合物(3)15.4gを淡茶白色粉末として得た。
熱分解温度(TG-5%);331.7℃
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・ESI-Mass: 1009(M+H)
・元素分析値:実測値(C:80.87%、H:6.69%、N:2.85%);理論値(C:80.92%、H:6.79%、N:2.78%)
【0050】
[実施例4] 具体例化合物(21)の製造
実施例1の化合物(A)12.5gの代わりに化合物(E)15.1gを使用した以外は実施例1と同様にして下記構造式の(具体例化合物(21)17.5gを淡桃白色粉末として得た。
熱分解温度(TG-5%);331.4℃
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・ESI-Mass: 969(M+H)
・元素分析値:実測値(C:79.19%、H:6.17%、N:2.93%);理論値(C:79.31%、H:6.24、N:2.89%)
【0051】
[実施例5] 具体例化合物(39)の製造
実施例1の化合物(A)12.5gの代わりに化合物(F)15.3gを使用した以外は実施例1と同様にして下記構造式の(具体例化合物(39)13.5gを淡黄色粉末として得た。
熱分解温度(TG-5%);330.4℃
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・ESI-Mass: 981(M+H)
・元素分析値:実測値(C:79.52%、H:6.13%、N:2.88%);理論値(C:79.57%、H:6.16%、N:2.86%)
【0052】
[実施例6] 具体例化合物(60)の製造
実施例1の化合物(A)12.5gの代わりに化合物(H)15.5gを使用した以外は実施例1と同様にして下記構造式の(具体例化合物(60)12.9gを淡黄白色粉末として得た。
熱分解温度(TG-5%);359.1℃
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・ESI-Mass: 991(M+H)
・元素分析値:実測値(C:71.21%、H:4.43%、N:2.87%);理論値(C:71.51%、H:4.48%、N:2.83%)
【0053】
[実施例7]感熱記録材料の製造
実施例1で製造した具体例化合物(1)5gを2.5%ポリビニルアルコール水溶液45gと共にサンドミルを用いて平均粒径が1ミクロンになるように粉砕し、分散液を作成した。一方、ビスフェノールA10gとパラベンジルビフェニル10gを2.5%ポリビニルアルコール水溶液80gと共にサンドミルを用いて平均粒径が3ミクロンになるように粉砕し、分散液を作成した。このようにして作成した2種の分散液を混合した後、炭酸カルシウム50%分散液30gとパラフィンワックス30%分散液を添加、よく混合して、感熱塗液を調整した。このようにして調整した感熱塗液を坪量50g/mの上質紙に固形分塗布量が5g/mとなるように塗布し、乾燥後、乾燥後、感熱記録面のベック平滑度が400~500秒となるようにカレンダー処理して、白色の感熱記録材料を作製した。
【0054】
[実施例8] 感熱記録材料の製造
実施例7において使用した具体例化合物(1)5gの代わりに実施例2で製造した具体例化合物(2)5g使用した以外は実施例7と同様にして白色の感熱記録材料を作製した。
【0055】
[実施例9] 感熱記録材料の製造
実施例7において使用した具体例化合物(1)5gの代わりに実施例3で製造した具体例化合物(3)5g使用した以外は実施例7と同様にして白色の感熱記録材料を作製した。
【0056】
[実施例10] 感熱記録材料の製造
実施例7において使用した具体例化合物(1)5gの代わりに実施例4で製造した具体例化合物(21)5g使用した以外は実施例7と同様にして白色の感熱記録材料を作製した。
【0057】
[実施例11] 感熱記録材料の製造
実施例7において使用した具体例化合物(1)5gの代わりに実施例5で製造した具体例化合物(39)5g使用した以外は実施例7と同様にして白色の感熱記録材料を作製した。
【0058】
[実施例12] 感熱記録材料の製造
実施例7において使用した具体例化合物(1)5gの代わりに実施例6で製造した具体例化合物(60)5g使用した以外は実施例7と同様にして白色の感熱記録材料を作製した。
【0059】
[比較例1] 感熱記録材料の製造
実施例7において使用した具体例化合物(1)5gの代わりに下記比較例化合物(I)5g使用した以外は実施例7と同様にして白色の感熱記録材料を作製した。
【0060】
[感熱記録材料の品質性能試験]
実施例7~12、比較例1で作製した感熱記録材料の地肌白色度及び地肌安定性試験、発色画像安定性試験

地肌耐光性の測定:感熱記録材料に2万ルックスの蛍光灯を72Hr照射した後、反射濃度計RD-914で地肌着色濃度(OD値)を測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
地肌白色度:数値が小さいほど、白色度が高いことを示す。
地肌の保存安定性:各試験後の数値が小さいほど、地肌の安定性が高いことを示す。
次に、同じく実施例7~12、比較例1~2で作成した感熱紙を印字装置TH-PMD(大倉電気製)を使用してパルス巾0.95msで発色させ、発色画像濃度(OD値)をマクベス製RD-914を用いて測定した。
安定性試験を下記の方法に従って行った。
画像耐湿熱性の測定:発色画像を50℃、90%RHの条件で72Hr晒した後、画像の濃度(OD値)を反射濃度計RD-914で測定した。
画像耐熱性の測定:発色画像を60℃、20%RHの条件に72Hr晒した後、画像の濃度(OD値)を反射濃度計RD-914で測定した。
画像耐光性の測定:発色画像に2万ルックスの蛍光灯を72Hr照射した後、画像の濃度(OD値)を反射濃度計RD-914で測定した。
各画像堅牢度を、下記式により表した。
【0063】
【数1】
【0064】
これらの結果を表2に示す。
[感熱記録材料の品質性能試験]
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のフルオラン二量体化合物を使用した記録材料は地肌の白色度、保存安定性、画像堅牢度の諸性能に優れ、鮮明なマゼンタ色の発色画像が得られるため、フルカラー用の感熱記録材料の発色剤として非常に有用である。