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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035575
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】姿勢角補正装置および姿勢角補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240307BHJP
   G01S 17/875 20200101ALI20240307BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/875
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140134
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 智
【テーマコード(参考)】
2F129
5J084
【Fターム(参考)】
2F129AA11
2F129BB02
2F129BB22
2F129BB26
2F129GG18
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB20
5J084AC06
5J084AC07
5J084AC10
5J084AD01
5J084BA03
5J084CA31
5J084CA70
5J084DA07
5J084DA09
5J084EA08
(57)【要約】
【課題】位置姿勢検出装置により検出される姿勢角を適切に補正可能な「姿勢角補正装置および姿勢角補正方法」を提供する。
【解決手段】LiDAR103およびIMU104による検出データから生成した3次元点群データに基づいて、電線の形状を表す基準軌跡を設定する基準軌跡設定部14と、複数の異なる仮姿勢角補正値を位置姿勢情報に適用して得られる複数の補正検出データごとに、電線について複数の補正3次元点群データを生成する補正点群データ生成部15と、補正された点群の位置と基準軌跡の位置との差が最小となる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定する補正値特定部16とを備え、複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、補正3次元点群データで示される点群の位置と基準軌跡の位置との差が最小となる仮姿勢角補正値を探索することで、誤差を抑制するための姿勢角補正値を特定可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式レーダおよび位置姿勢検出装置が搭載された移動体を、進行方向に沿って延在する形状の反射対象物の周囲を移動させて上記光学式レーダにより検出した距離方向情報および上記位置姿勢検出装置により検出した位置姿勢情報を含む検出データを取得する検出データ取得部と、
上記検出データ取得部により取得された上記検出データに基づいて、直角座標系において上記反射対象物の3次元点群データを生成する点群データ生成部と、
上記点群データ生成部により生成された上記3次元点群データまたはあらかじめ与えられた上記反射対象物に関する情報に基づいて、補正対象とする姿勢角に応じた2次元平面において上記反射対象物の形状を表す基準軌跡を設定する基準軌跡設定部と、
上記検出データ取得部により取得された上記検出データに基づいて、複数の異なる仮姿勢角補正値を上記位置姿勢情報に適用して得られる複数の補正検出データごとに、上記反射対象物について複数の補正3次元点群データを生成する補正点群データ生成部と、
上記複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、上記補正点群データ生成部により生成された上記補正3次元点群データで示される点群の上記2次元平面における位置と上記基準軌跡の位置との差が、上記点群データ生成部により生成された上記3次元点群データで示される点群の上記2次元平面における位置と上記基準軌跡の位置との差よりも小さくなる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定する補正値特定部とを備えた
ことを特徴とする姿勢角補正装置。
【請求項2】
上記補正対象とする姿勢角はピッチ角であり、
上記基準軌跡設定部は、上記反射対象物の長さ方向と高さ方向とを2軸とする上記2次元平面において上記基準軌跡を設定し、
上記補正値特定部は、複数の異なる仮ピッチ角補正値の中から、上記補正3次元点群データにより示される点群の上記2次元平面における高さ方向の位置と上記基準軌跡の位置との差が、上記3次元点群データで示される点群の上記2次元平面における高さ方向の位置と上記基準軌跡の位置との差よりも小さくなる仮ピッチ角補正値をピッチ角補正値として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢角補正装置。
【請求項3】
上記反射対象物は電線であり、
上記基準軌跡設定部は、上記反射対象物の長さ方向の両端点間を結ぶカテナリー曲線を上記基準軌跡として設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の姿勢角補正装置。
【請求項4】
上記反射対象物は電線であり、
上記基準軌跡設定部は、上記点群データ生成部により生成された上記反射対象物の3次元点群データにより示される点群の上記2次元平面における各位置の近似二次曲線を上記基準軌跡として設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の姿勢角補正装置。
【請求項5】
上記補正対象とする姿勢角はヨー角であり、
上記基準軌跡設定部は、2つの水平軸を2軸とする上記2次元平面において上記基準軌跡を設定し、
上記補正値特定部は、複数の異なる仮ヨー角補正値の中から、上記補正3次元点群データにより示される点群の上記2次元平面における位置と上記基準軌跡の位置との差が、上記3次元点群データで示される点群の上記2次元平面における位置と上記基準軌跡の位置との差よりも小さくなる仮ヨー角補正値をヨー角補正値として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢角補正装置。
【請求項6】
上記反射対象物は電線であり、
上記基準軌跡設定部は、上記反射対象物の長さ方向の両端点間を結ぶ直線を上記基準軌跡として設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の姿勢角補正装置。
【請求項7】
上記反射対象物は電線であり、
上記基準軌跡設定部は、上記点群データ生成部により生成された上記反射対象物の3次元点群データにより示される点群の上記2次元平面における各位置の近似直線を上記基準軌跡として設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の姿勢角補正装置。
【請求項8】
上記複数の異なる仮姿勢角補正値を設定する仮補正値設定部を更に備え、
上記補正点群データ生成部は、上記検出データ取得部により取得された上記検出データと、上記仮補正値設定部により設定された上記複数の異なる仮姿勢角補正値とに基づいて、上記複数の補正3次元点群データを生成する
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の姿勢角補正装置。
【請求項9】
上記補正値特定部は、上記複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、当該複数の異なる仮姿勢角補正値ごとに生成された上記補正3次元点群データで示される点群の上記2次元平面における位置と上記基準軌跡の位置との差が最小となる仮姿勢角補正値を上記姿勢角補正値として特定することを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の姿勢角補正装置。
【請求項10】
姿勢角補正装置の検出データ取得部が、光学式レーダおよび位置姿勢検出装置が搭載された移動体を、進行方向に沿って延在する形状の反射対象物の周囲を移動させて上記光学式レーダにより検出した距離方向情報および上記位置姿勢検出装置により検出した位置姿勢情報を含む検出データを取得する第1のステップと、
上記姿勢角補正装置の点群データ生成部が、上記検出データ取得部により取得された上記検出データに基づいて、直角座標系において上記反射対象物の3次元点群データを生成する第2のステップと、
上記姿勢角補正装置の基準軌跡設定部が、上記点群データ生成部により生成された上記3次元点群データまたはあらかじめ与えられた上記反射対象物に関する情報に基づいて、補正対象とする姿勢角に応じた2次元平面において上記反射対象物の形状を表す基準軌跡を設定する第3のステップと、
上記姿勢角補正装置の補正点群データ生成部が、上記検出データ取得部により取得された上記検出データに基づいて、複数の異なる仮姿勢角補正値を上記位置姿勢情報に適用して得られる複数の補正検出データごとに、上記反射対象物について複数の補正3次元点群データを生成する第4のステップと、
上記姿勢角補正装置の補正値特定部が、上記複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、上記補正点群データ生成部により生成された上記補正3次元点群データで示される点群の上記2次元平面における位置と上記基準軌跡の位置との差が、上記点群データ生成部により生成された上記3次元点群データで示される点群の上記2次元平面における位置と上記基準軌跡の位置との差よりも小さくなる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定する第5のステップとを有する
ことを特徴とする姿勢角補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢角補正装置および姿勢角補正方法に関し、特に、機器姿勢のピッチ角またはヨー角を補正する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection And Ranging)は、周囲にレーザ光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測することで、物体までの距離や方向の測定、ひいてはLiDARを中心とする座標系における物体の位置座標の取得が可能な装置である。LiDARは、地質学、気象学、リモートセンシングなどの分野で主に用いられてきた。例えば、LiDARと共にIMU(慣性航法装置)等の位置姿勢検出装置をドローン等の移動体に搭載して、地形調査やインフラの劣化・故障検査を行うといった使い方がある。近年では、LiDARは自動運転車用センサとしても注目されている。
【0003】
例えば、LiDARおよびIMUを取り付けたドローンを飛行させ、IMUにより検出されるデータが示す自己の位置姿勢情報をもとにLiDARの位置姿勢を特定し、LiDARにより検出される距離方向情報から3次元点群データを取得することが可能である。例えばインフラの劣化・故障検査は、以上のようにして生成される点群データを利用して行われる。例えば、点群データにより点検箇所を特定した後、その特定箇所を別途光学カメラで撮影し、その撮影映像からインフラに異常が発生していないか等を目視により確認することが可能である。
【0004】
上述のように、LiDARの計測データから3次元点群データを生成するに当たり、IMUにより検出される位置姿勢情報は、LiDARの位置姿勢を特定するために利用される。そのため、ドローンに対するLiDARとIMUの取付角度に誤差が生じないことが重要となる。取付角度誤差があると、IMUにより検出される姿勢角がLiDARの姿勢を正しく捉えたものとならないため、本来は同一点に重なるべき点がずれてしまい、点群データがブレているように見える要因になってしまうからである。
【0005】
しかしながら、従来はこの取付角度誤差が生じないことを、LiDARとIMUの実物を目視することで確認していた。そのため、視認できない程度の角度差は生じてしまっていた。また、IMUの性能上、センサが出力する値に定常誤差を含んでいる。この定常誤差も、点群データがブレているように見える要因となる。以上のことから、LiDARとIMUの取付角度誤差およびIMUのセンサ出力の定常誤差を除去するため、姿勢角の補正を適切に行うことが望まれる。
【0006】
なお、第1時刻の計測によって生成された第1レーザ点群および第2時刻の計測によって生成された第2レーザ点群のそれぞれから、第1時刻に計測された第1計測領域と第2時刻に計測された第2計測領域とに共通する共通計測領域に含まれる第1共通点群および第2共通点群を抽出し、第1共通点群と第2共通点群とを比較することによって、第1時刻における移動体の姿勢に対する第2時刻における移動体の姿勢の変化量を算出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この技術は、点群データの変化量から移動体の姿勢の変化量を算出するものであり、姿勢角の補正を行うものではない。
【0007】
また、航空レーザ測量や空中写真測量で得られた3次元地形データについて、領域内にわたる経路上で正しい座標値を計測した基準線を導入し、領域内各点において地形データと間近の基準線の高さとを比較して、その差の重み付き平均を補正量とすることで地形データの高さの値を補正する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この技術は、航空レーザで検出した点群の高さとあらかじめ検出した地形の高さ情報とを比較して、地形データの高さの値を補正するものであり、姿勢角の補正を行うものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-143994号公報
【特許文献2】特開2007-298332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような問題を解決するために成されたものであり、移動体に光学式レーダと共に取り付けられる位置姿勢検出装置により検出される姿勢角を適切に補正できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、移動体の進行方向に沿って延在する形状の反射対象物について光学式レーダおよび位置姿勢検出装置による検出データから生成した3次元点群データまたはあらかじめ与えられた反射対象物に関する情報に基づいて、補正対象とする姿勢角に応じた2次元平面において反射対象物の形状を表す基準軌跡を設定する一方、複数の異なる仮姿勢角補正値を検出データの位置姿勢情報に適用して得られる複数の補正検出データごとに、反射対象物について複数の補正3次元点群データを生成し、複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、補正3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差が、3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差よりも小さくなる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
移動体に対する光学式レーダと位置姿勢検出装置との取付角度誤差や、位置姿勢検出装置の出力の定常誤差が仮にないとすると、移動体が反射対象物の周囲を移動したときに検出されるデータに基づき生成される3次元点群データによって表される反射対象物の点群は、補正対象とする姿勢角に応じた2次元平面において反射対象物の形状を表す基準軌跡との差が極小化されるはずである。上記のように構成した本発明はこのことに鑑みてなされたものであり、位置姿勢情報に対して設定される複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、当該仮姿勢角補正値を適用して生成される補正3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差が、3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差よりも小さくなる仮姿勢角補正値を探索すれば、それを取付角度誤差や定常誤差を抑制するための姿勢角補正値として特定することができる。これにより、本発明によれば、光学式レーダと共に取り付けられる位置姿勢検出装置により検出される姿勢角を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態による姿勢角補正装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】ドローンの構成を単純化して模式的に示す図である。
図3】ドローンの移動経路を含む飛行環境の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態による基準軌跡の設定について説明するための図である。
図5】第1の実施形態による基準軌跡として用いるカテナリー曲線の算出例を説明するための図である。
図6】第1の実施形態における補正値特定部の処理内容を説明するための図である。
図7】第2の実施形態による基準軌跡の設定について説明するための図である。
図8】第2の実施形態における補正値特定部の処理内容を説明するための図である。
図9】本実施形態による姿勢角補正装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による姿勢角補正装置1の機能構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の姿勢角補正装置1は、機能構成として、検出データ取得部11、仮補正値設定部12、点群データ生成部13、基準軌跡設定部14、補正点群データ生成部15および補正値特定部16を備えている。
【0014】
上記機能ブロック11~16は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック11~16は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0015】
検出データ取得部11は、光学式レーダおよび位置姿勢検出装置が搭載された移動体を反射対象物の周囲を移動させて光学式レーダにより検出した距離方向情報および位置姿勢検出装置により検出した位置姿勢情報を含む検出データを取得する。光学式レーダは、本実施形態ではLiDARである。また、位置姿勢検出装置は、本実施形態ではIMU(慣性航法装置)である。移動体は、本実施形態ではドローン(無人飛行体)である。
【0016】
図2は、ドローン100の構成を単純化して模式的に示す図である。図2に示すように、ドローン100は、飛行体本体101および4つのプロペラ102を備えている。ドローン100は、4つのプロペラ102の回転数を調整することによって、上昇や下降、前進、後進、旋回等を行う。飛行体本体101の下部にはLiDAR103およびIMU104が取り付けられている。
【0017】
LiDAR103は、周囲にレーザ光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測することで、物体までの距離および方向を検出し、距離方向情報(距離情報および方向情報)を出力する。LiDAR103は、レーダ測定動作の実行中、所定の周期でセンシングを繰り返し実行し、当該所定の周期で距離方向情報を逐次生成する。LiDAR103がレーザ光を照射する周囲の物体、すなわち反射対象物は、本実施形態ではドローン100の進行方向に沿って延在する形状の物体であり、例えば鉄塔間の電線である。
【0018】
IMU104は、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ等の各種センサを備えており、IMU104の自身の位置および姿勢を検出し、位置姿勢情報(位置情報および姿勢情報)を出力する。IMU104の位置情報とは、緯度、経度および高度により特定される三次元的な位置の情報である。IMU104の姿勢情報とは、IMU104のロール角、ピッチ角およびヨー角の組み合わせから成る姿勢角の情報である。
【0019】
図3は、ドローン100の移動経路を含む飛行環境の一例を示す図である。図3(a)は電線を側方から見た飛行環境の様子を示し、図3(b)は電線を上から見た飛行環境の様子を示している。図3で例示する飛行環境では、地面に鉄塔T31,T32が設けられており、鉄塔T31と鉄塔T32との間に電線D31が懸架されている。
【0020】
飛行環境が図3で例示する状況である場合、ドローン100は、例えば、電線D31の一端(一方の鉄塔T31に接続された端点)と、電線D31の他端(他方の鉄塔T32に接続された端点)との間を電線D31に沿って移動する。なお、鉄塔T31,T32の間を移動すればよく、鉄塔T31,T32の間ではない範囲の移動経路が含まれていてもよい。
【0021】
ここで、ドローン100は、あらかじめ設定された飛行航路L31に沿って移動する。例えば、飛行航路L31は、図3(a)示すように鉄塔T31,T32の頭頂よりも高い高度で、図3(b)に示すように電線D31の鉛直上方の位置に設定された直線状の航路である。
【0022】
ドローン100は記憶媒体を搭載しており、図3に示す電線D31の周囲を飛行航路L31に沿って移動中に、LiDAR103およびIMU104により逐次検出される検出データ(電線D31に対する距離方向情報およびIMU104の位置姿勢情報)を時刻情報と共に記憶媒体にログデータとして記憶する。これにより、ドローン100の記憶媒体には、LiDAR103により検出される距離方向情報が累積的に記憶されるとともに、IMU104により検出される位置姿勢情報が累積的に記録される。距離方向情報と位置姿勢情報とは時刻情報により関連付けられる。
【0023】
検出データ取得部11は、ドローン100の記憶媒体に記憶されている検出データを取得する。例えば、検出データ取得部11は、Wi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)などの無線通信手段を用いて、ドローン100の記憶媒体に記憶されている検出データを取得する。あるいは検出データ取得部11は、リムーバブル記憶媒体またはUSB(Universal Serial Bus)などの通信ケーブルを用いて、ドローン100の記憶媒体に記憶されている検出データを取得してもよい。
【0024】
仮補正値設定部12は、検出データ取得部11により取得された位置姿勢情報に対する複数の異なる仮姿勢角補正値(仮ピッチ角補正値または仮ヨー角補正値)を設定する。例えば、仮補正値設定部12は、仮姿勢角補正値=0.0度を含め、プラス方向およびマイナス方向に所定角度ずつの刻みで複数の仮姿勢角補正値を設定する。ここで、仮補正値設定部12は、例えばユーザによる操作に基づく指示に従って、複数の仮姿勢角補正値の刻み幅となる所定角度の値を設定する。また、仮姿勢角補正値の上限値と下限値を更に設定するようにしてもよい。
【0025】
複数の仮姿勢角補正値の刻み幅となる所定角度の値を小さくするほど、より高精度に姿勢角補正値を求めることが可能となる一方で、計算負荷が大きくなる。精度または計算負荷のどちらをどの程度優先するかに応じて、所定角度の値を適宜設定することが可能である。また、仮姿勢角補正値の上限値と下限値を適切に設定することにより、設定される仮姿勢角補正値の数を調整することが可能であり、これにより計算負荷を調整することが可能である。なお、仮補正値設定部12を省略し、所定角度の値、上限値および下限値を固定値として姿勢角補正装置1にあらかじめ設定しておくようにしてもよい。
【0026】
点群データ生成部13は、検出データ取得部11により取得された検出データに基づいて、直角座標系において電線D31の3次元点群データを生成する。直角座標系は、例えば東西方向をX軸、南北方向をY軸、鉛直方向(高度方向)をZ軸とする座標系であり、X軸の値とY軸の値とにより水平座標が形成される。この点群データ生成部13の処理は、公知技術を適用して行うことが可能である。
【0027】
なお、LiDAR103によるレーザ光の照射範囲内に電線D31以外の反射対象物(例えば、鉄塔T31,T32、電線D31の付近に存在する樹木など)が存在する場合、点群データ生成部13により生成される3次元点群データの中には、電線D31以外の反射対象物に対応する点群も含まれる。ただし、電線D31の点群は細長の形状であるのに対し、電線D31以外の反射対象物は細長の形状ではないため、電線D31の点群を容易に識別可能である。これにより、3次元点群データに対するデータ処理によって電線D31の点群を抽出することが可能である。
【0028】
基準軌跡設定部14は、点群データ生成部13により生成された3次元点群データまたはあらかじめ与えられた電線D31に関する情報に基づいて、補正対象とする姿勢角(ピッチ角またはヨー角)に応じた2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡を設定する。補正対象とする姿勢角がピッチ角の場合、基準軌跡設定部14は、電線D31の長さ方向と高さ方向とを2軸とする2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡を設定する。また、補正対象とする姿勢角がヨー角の場合、基準軌跡設定部14は、2つの水平軸(X軸およびY軸)を2軸とする2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡を設定する。この基準軌跡の詳細は、後述する第1の実施形態および第2の実施形態として説明する。
【0029】
補正点群データ生成部15は、検出データ取得部11により取得された検出データと、仮補正値設定部12により設定された複数の異なる仮姿勢角補正値とに基づいて、複数の異なる仮姿勢角補正値を位置姿勢情報に適用して得られる複数の補正検出データごとに、電線D31について複数の補正3次元点群データを生成する。
【0030】
ここで、仮姿勢角補正値を位置姿勢情報に適用するとは、位置姿勢情報に含まれる姿勢角を仮姿勢角補正値で補正することを意味する。例えば、仮姿勢角補正値が+1.0度であれば、位置姿勢情報に含まれる姿勢角を1.0度大きくすることを意味する。補正検出データとは、このように仮姿勢角補正値で補正された姿勢角を含む位置姿勢情報および距離方向情報であり、補正された姿勢角以外は補正されていない検出データである。補正3次元点群データは、補正検出データから直角座標系において生成される3次元点群データである。
【0031】
補正値特定部16は、仮補正値設定部12により設定された複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、補正点群データ生成部15により生成された補正3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差が、点群データ生成部13により生成された3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差よりも小さくなる仮姿勢角補正値を抽出し、これを姿勢角補正値として特定する。一例として、補正値特定部16は、差が最小となる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定する。
【0032】
ドローン100に対するLiDAR103とIMU104の取付角度誤差や、IMU104のセンサ出力の定常誤差が仮にないとすると、ドローン100が電線D31の周囲を移動したときに検出されるデータに基づき生成される3次元点群データによって表される電線D31の点群は、補正対象とする姿勢角に応じた2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡との差が極小化されるはずである。一方、取付角度誤差や定常誤差があったとしても、適切な姿勢角補正値を設定すれば、補正検出データに基づき生成される補正3次元点群データによって表される電線D31の点群も、基準軌跡との差が極小化されるはずである。
【0033】
本実施形態ではこのことに鑑みて、位置姿勢情報に対して設定される複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、当該仮姿勢角補正値を適用して生成される補正3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差が最小となる仮姿勢角補正値を探索し、探索された仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定するようにしている。
【0034】
補正値特定部16により特定された姿勢角補正値は、点群データ生成装置(図示せず)に設定される。点群データ生成装置はビューアに内蔵されるものであってもよいし、ビューアとは別に存在するものであってもよい。姿勢角補正値を点群データ生成装置に設定することにより、ビューアが3次元点群データを表示する際には、IMU104により検出されたロール角(誤差を含む)が適切に補正された状態で3次元点群データを表示することが可能となる。
【0035】
なお、補正値特定部16により特定された姿勢角補正値をIMU104に設定するようにしてもよい。このようにすれば、姿勢角補正値に基づき補正された姿勢角を含む姿勢情報をIMU104から得ることが可能となる。
【0036】
(第1の実施形態)
次に、補正対象とする姿勢角がピッチ角の場合における第1の実施形態を説明する。上述したように、補正対象とする姿勢角がピッチ角の場合、基準軌跡設定部14は、電線D31の長さ方向と高さ方向とを2軸とする2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡を設定する。
【0037】
図4は、第1の実施形態による基準軌跡の設定について説明するための図である。図4(a)は、点群データ生成部13により生成された3次元点群データから電線D31の点群を抽出して水平座標平面に投影した状態を模式的に示している。これは、ビューアにおいて電線D31の点群を上空から見た状態に相当し、IMU104により検出されるヨー角について補正の必要がない状態であるとすると、電線D31の点群は始点SP(一方の鉄塔T31に接続された端点)と終点EP(他方の鉄塔T32に接続された端点)とを結ぶ直線に見える。
【0038】
図4(b),(c)は、図4(a)に示す電線D31の直線を移動してX軸上に重ねる様子を示している。まず、図4(b)に示すように、図4(a)に示す電線D31の直線を水平座標平面上で平行移動させることにより、電線D31の始点SPが水平座標平面の原点と一致するようにする。その後、図4(c)に示すように、始点SPを中心として電線D31の直線を水平座標平面上で角度θだけ回転させることにより、直線がX軸上に重なるようにする。このときの回転角θは、移動前の始点SPの水平座標を(x1,y1)、終点EPの水平座標を(x2,y2)とすると、tan-1θ=(y2-y1)/(x2-x1)で求められる。この回転により、X軸は電線D31の長さ方向を示すことになる。
【0039】
図4(d)は、基準軌跡を設定した様子を示している。この図4(d)では、図4(c)の状態から軸変換を行い、Y軸をZ軸に置き換えた2次元平面において電線D31の点群P,P,・・・,Pを示している。すなわち、図4(d)では、電線D31の長さ方向(X軸方向)の各位置における点群P~Pの高さ方向(Z軸方向)の値、つまり各点P~Pの高度を示している。IMU104により検出されるピッチ角を補正の対象としているため、各点P~Pの高度にはバラツキが生じている。
【0040】
基準軌跡設定部14は、図4(d)に示すX-Z座標の2次元平面における各点P~Pの位置をもとに基準軌跡RTを設定する。例えば、基準軌跡設定部14は、各点P~Pの位置の近似二次曲線を基準軌跡RTとして設定する。近似二次曲線は、例えば最小二乗法により求めることが可能である。周知の通り、鉄塔T31,T32の間に懸架された電線D31は、自重で弛んだ状態となる。そのため、電線D31の点群P~Pから最小二乗法により近似二次曲線として求められる基準軌跡RTは、実際の電線D31の弛み形状をよく反映したものとなる。
【0041】
別の例として、基準軌跡設定部14は、図4(d)に示す2次元平面における電線D31の点群P~Pのうち両端点P,Pの間を結ぶカテナリー曲線を基準軌跡RTとして設定するようにしてもよい。電線D31の長さ方向の両端点は、電線D31が鉄塔T31,T32に接続された両端点である。
【0042】
電線D31の直線長さS(鉄塔T31,T32間の距離)、単位長さ当たりの電線D31の荷重W、電線D31に加わる水平張力Tが情報として与えられている場合は、図5に示すように電線D31の弛み(弛度)Dおよび実長Lを(式1)および(式2)により算出することが可能である。基準軌跡設定部14は、この弛度Dおよび実長Lで表されるカテナリー曲線を基準軌跡RTとして設定することが可能である。なお、鉄塔T31,T32に接続された電線D31の両端点の位置情報があらかじめ与えられていて、図4(d)に示す2次元平面において電線D31の両端点の実際の位置に対応する座標を特定可能な場合は、その座標間を結ぶカテナリー曲線を基準軌跡RTとして設定するようにしてもよい。
【0043】
なお、ここでは電線D31の直線を移動してX軸上に重ねる例を示したが、Y軸上に重ねるようにしてもよい。また、電線D31の直線をX軸上またはY軸上に重ねることなく、図4(a)に示す位置のままで、電線D31の長さ方向とZ軸方向とを2軸とする2次元平面を想定し、当該2次元平面に基準軌跡RTを設定するようにしてもよい。
【0044】
補正値特定部16は、仮補正値設定部12により設定された複数の異なる仮ピッチ角補正値の中から、複数の異なる仮ピッチ角補正値ごとに生成された補正3次元点群データにより示される点群の2次元平面における高さ方向の位置と基準軌跡RTの位置との差が最小となる仮ピッチ角補正値をピッチ角補正値として特定する。例えば、補正値特定部16は、各点と基準軌跡RTとのZ軸方向の距離の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる仮ピッチ角補正値をピッチ角補正値として特定する。
【0045】
図6は、この補正値特定部16の処理内容を説明するための図である。図6(a)~図6(c)は、3つの異なる仮ピッチ角補正値α~αごとに生成された3つの補正3次元点群データにより示される点群P11~P1n,P21~P2n,P31~P3nを示している。異なる仮ピッチ角補正値α~αを与えて補正3次元点群データを生成することにより、第1の仮ピッチ角補正値αを与えたときに得られる点群P11~P1n図6(a))、第2の仮ピッチ角補正値αを与えたときに得られる点群P21~P2n図6(b))、および、第3の仮ピッチ角補正値αを与えたときに得られる点群P31~P3n図6(c))は、それぞれ2次元平面上で異なる位置にマッピングされる。
【0046】
補正値特定部16は、図6(a)~図6(c)のそれぞれごとに、各点P11~P1n,P21~P2n,P31~P3nと基準軌跡RTとのZ軸方向の距離の標準偏差σ~σを算出し、この中で標準偏差が最小となる仮ピッチ角補正値(α~αの何れか)をピッチ角補正値αとして特定する。なお、ここでは説明の簡略化のため3つの仮ピッチ角補正値α~αを適用する場合を説明しているが、実際にはより多くの仮ピッチ角補正値を適用して補正3次元点群データを生成し、標準偏差が最小となるピッチ角補正値αを特定する。あるいは、仮ピッチ角補正値と標準偏差とを2次元座標系にプロットし、最小二乗法による近似式によって、標準偏差が極小となるピッチ角補正値を特定するようにしてもよい。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、補正対象とする姿勢角がヨー角の場合における第2の実施形態を説明する。上述したように、補正対象とする姿勢角がヨー角の場合、基準軌跡設定部14は、2つの水平軸(X軸およびY軸)を2軸とする2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡RTを設定する。
【0048】
図7は、第2の実施形態による基準軌跡の設定について説明するための図である。図7は、点群データ生成部13により生成された3次元点群データから電線D31の点群を抽出して水平座標平面に投影した状態を模式的に示している。これは、ビューアにおいて電線D31の点群を上空から見た状態に相当する。ここでは、IMU104により検出されるヨー角を補正の対象としているため、X-Y座標の2次元平面上に表される点群Q,Q,・・・,Qの水平位置にはバラツキが生じている。
【0049】
基準軌跡設定部14は、図7に示すX-Y座標の2次元平面における各点Q~Qの位置をもとに基準軌跡RTを設定する。例えば、基準軌跡設定部14は、各点Q~Qの位置の近似直線を基準軌跡RTとして設定する。別の例として、基準軌跡設定部14は、図7に示す2次元平面における電線D31の点群Q~Qのうち両端点Q,Qの間を結ぶ直線を基準軌跡RTとして設定するようにしてもよい。電線D31の長さ方向の両端点は、電線D31が鉄塔T31,T32に接続された両端点である。なお、鉄塔T31,T32に接続された電線D31の両端点の位置情報があらかじめ与えられていて、図7に示す2次元平面において電線D31の両端点の実際の位置に対応する座標を特定可能な場合は、その座標間を結ぶ直線を基準軌跡RTとして設定するようにしてもよい。
【0050】
補正値特定部16は、仮補正値設定部12により設定された複数の異なる仮ヨー角補正値の中から、複数の異なる仮ヨー角補正値ごとに生成された補正3次元点群データにより示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡RTの位置との差が最小となる仮ヨー角補正値をヨー角補正値として特定する。例えば、補正値特定部16は、各点と基準軌跡RTとのX軸方向の距離の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる仮ヨー角補正値をヨー角補正値として特定する。
【0051】
図8は、この補正値特定部16の処理内容を説明するための図である。図8(a)~図8(c)は、3つの異なる仮ヨー角補正値β~βごとに生成された3つの補正3次元点群データにより示される点群Q11~Q1m,Q21~Q2m,Q31~Q3mを示している。異なる仮ヨー角補正値β~βを与えて補正3次元点群データを生成することにより、第1の仮ヨー角補正値βを与えたときに得られる点群Q11~Q1m図8(a))、第2の仮ヨー角補正値βを与えたときに得られる点群Q21~Q2m図8(b))、および、第3の仮ヨー角補正値βを与えたときに得られる点群Q31~Q3m図8(c))は、それぞれ2次元平面上で異なる位置にマッピングされる。
【0052】
補正値特定部16は、図8(a)~図8(c)のそれぞれごとに、各点Q11~Q1n,Q21~Q2m,Q31~Q3mと基準軌跡RTとのX軸方向の距離の標準偏差σ~σを算出し、この中で標準偏差が最小となる仮ヨー角補正値(β~βの何れか)をヨー角補正値βとして特定する。なお、ここでは説明の簡略化のため3つの仮ヨー角補正値β~βを適用する場合を説明しているが、実際にはより多くの仮ヨー角補正値を適用して補正3次元点群データを生成し、標準偏差が最小となるヨー角補正値βを特定する。あるいは、仮ヨー角補正値と標準偏差とを2次元座標系にプロットし、最小二乗法による近似式によって、標準偏差が極小となるヨー角補正値を特定するようにしてもよい。
【0053】
図9は、以上のように構成した本実施形態による姿勢角補正装置1の動作例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、電線D31の周囲におけるドローン100の移動が完了し、その移動中にLiDAR103およびIMU104により検出された距離方向情報および位置姿勢情報が記憶媒体に記憶された後に実行される。
【0054】
まず、検出データ取得部11は、ドローン100の記憶媒体に記憶されている検出データ(距離方向情報および位置姿勢情報)を取得する(ステップS1)。次に、仮補正値設定部12は、位置姿勢情報に対する複数の異なる仮姿勢角補正値を設定する(ステップS2)。なお、この処理はステップS1の前にあらかじめ行っておいてもよい。また、所定の仮姿勢角補正値を用いることにより、ステップS2の処理を省略してもよい。
【0055】
次いで、点群データ生成部13は、検出データ取得部11により取得された検出データに基づいて、直角座標系において電線D31の3次元点群データを生成する(ステップS3)。そして、基準軌跡設定部14は、点群データ生成部13により生成された3次元点群データに基づいて、補正対象とする姿勢角に応じた2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡RTを設定する(ステップS4)。
【0056】
次に、補正点群データ生成部15は、検出データ取得部11により取得された検出データと、仮補正値設定部12により設定された複数の異なる仮姿勢角補正値とに基づいて、複数の異なる仮姿勢角補正値を位置姿勢情報に適用して得られる複数の補正検出データごとに、電線D31について複数の補正3次元点群データを生成する(ステップS5)。
【0057】
次に、補正値特定部16は、仮補正値設定部12により設定された複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、補正点群データ生成部15により生成された補正3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡の位置との差が最小となる仮姿勢角補正値を抽出し、これを姿勢角補正値として特定する(ステップS6)。これにより、図9に示すフローチャートの処理が終了する。
【0058】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、LiDAR103およびIMU104による検出データから生成した電線D31の3次元点群データまたはあらかじめ与えられた電線D31に関する情報に基づいて、補正対象とする姿勢角に応じた2次元平面において電線D31の形状を表す基準軌跡RTを設定する一方、複数の異なる仮姿勢角補正値を検出データの位置姿勢情報に適用して得られる複数の補正検出データごとに、電線D31について複数の補正3次元点群データを生成し、複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、補正3次元点群データで示される2次元平面における点群の位置と基準軌跡RTの位置との差が最小となる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定するようにしている。
【0059】
このように、位置姿勢情報に対して設定される複数の異なる仮姿勢角補正値の中から、当該仮姿勢角補正値を適用して生成される補正3次元点群データで示される2次元平面における点群の位置と基準軌跡RTの位置との差が最小となる仮姿勢角補正値を探索することで、取付角度誤差や定常誤差を抑制するための姿勢角補正値を特定することができる。これにより、本実施形態によれば、LiDARと共に取り付けられるIMU104により検出される姿勢角(ピッチ角またはヨー角)を適切に補正することができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、移動体の例としてドローン100を挙げて説明したが、これに限定されない。また、上記実施形態では、光学式レーダの例としてLiDAR103を挙げ、位置姿勢検出装置の例としてIMU104を挙げて説明したが、これに限定されない。上記実施形態で説明した処理と同様の処理を行うことが可能な移動体や、光学式レーダまたは位置姿勢検出装置であれば、何れも用いることが可能である。
【0061】
また、姿勢角補正値の特定に利用する反射対象物は、電線D31に限定されない。ドローン100の進行方向に沿って延在する形状を有するものであれば、ピッチ角補正値またはヨー角補正値の特定に利用する反射対象物として用いることが可能である。例えば、電線D31以外の例として、道路の路側に設置されたガードワイヤーを用いることが可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、補正3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡RTの位置との差が、3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡RTの位置との差よりも小さくなる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定する処理の一例として、当該差が最小となる仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定する処理を説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、探索される仮姿勢角補正値が、必ずしも基準軌跡RTの位置との差が最小となるものであることを必須とするものではない。
【0063】
例えば、以下のような処理を行うようにしてもよい。すなわち、補正値特定部16は、補正点群データ生成部15が複数の補正3次元点群データを生成する前に、点群データ生成部13により生成された3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡RTの位置との差(以下、仮補正値未適用差分という)を算出する。その後、補正点群データ生成部15は、複数の異なる仮姿勢角補正値を1つずつ順番に位置姿勢情報に適用することにより、複数の補正3次元点群データを1つずつ順番に生成する。
【0064】
補正値特定部16は、補正点群データ生成部15により補正3次元点群データが生成されるたびに、当該補正3次元点群データで示される点群の2次元平面における位置と基準軌跡RTの位置との差(以下、仮補正値適用差分という)を算出し、当該算出した仮補正値適用差分が仮補正値未適用差分より小さいか否かを判定する。ここで、仮補正値適用差分が仮補正値未適用差分より小さくないと判定された場合は、仮姿勢角補正値を変えて次の仮補正値適用差分を算出する。そして、仮補正値適用差分が仮補正値未適用差分より小さいと判定された場合に、当該仮補正値適用差分を算出する際に適用した仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定する。なお、仮補正値適用差分が仮補正値未適用差分より小さいと複数回判定されるまで処理を繰り返し、複数回目の判定の際に適用した仮姿勢角補正値を姿勢角補正値として特定するようにしてもよい。
【0065】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 姿勢角補正装置
11 検出データ取得部
12 仮補正値設定部
13 点群データ生成部
14 基準軌跡設定部
15 補正点群データ生成部
16 補正値特定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9