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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035580
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】継手の製造方法及び継手の製造装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/088 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F16L37/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140142
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】進 一寛
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106EA03
3J106ED14
3J106EE02
(57)【要約】
【課題】継手において、止め輪を適切な位置に配置する。
【解決手段】継手は、外周面に外溝20が設けられた挿入部材12と、挿入部材12が挿入され、内周面に内溝が設けられた受入部材と、外溝20及び内溝に配置された止め輪とを備えている。継手を製造する場合、止め輪を外溝20の位置に配置し、保持部42で止め輪22を外溝20内へ保持させる。受入部材に挿入部材12を挿入する際に、保持部42が挿入部材12の外周面に沿って移動して、止め輪を受入部材の内部に受け渡す。そして、外溝20と内溝との位置を揃えることで、外溝20及び内溝に止め輪を配置させる。
【選択図】図4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に外溝が設けられた挿入部材と、
前記挿入部材が挿入され、内周面に内溝が設けられた受入部材と、
前記外溝及び前記内溝に配置された止め輪と、を備える継手の製造方法であって、
前記止め輪を前記外溝の位置に配置し、
保持部で前記止め輪を前記外溝内へ保持させ、
前記受入部材に前記挿入部材を挿入する際に、前記保持部が前記挿入部材の前記外周面に沿って移動して、前記止め輪を前記受入部材の内部に受け渡し、
前記外溝と前記内溝との位置を揃えることで、前記外溝及び前記内溝に前記止め輪を配置させる
ことを特徴とする継手の製造方法。
【請求項2】
前記止め輪を前記保持部から前記受入部材の内部に受け渡した後、前記保持部の保持状態を解除する請求項1記載の継手の製造方法。
【請求項3】
前記保持部で前記止め輪を前記外溝内へ保持させる前に、前記止め輪を前記外溝の位置に支持する請求項1又は2記載の継手の製造方法。
【請求項4】
外周面に外溝が設けられた挿入部材と、
前記挿入部材が挿入され、内周面に内溝が設けられた受入部材と、
前記外溝及び前記内溝に配置された止め輪と、を備える継手の製造装置であって、
前記止め輪を前記外溝の位置に配置した後に、前記止め輪を前記外溝内へ保持する保持部を備える
ことを特徴とする継手の製造装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記受入部材に前記挿入部材を挿入する際に、前記挿入部材の前記外周面に沿って移動する請求項4記載の継手の製造装置。
【請求項6】
前記止め輪を前記保持部から前記受入部材の内部に受け渡した後、前記保持部の保持状態を解除する解除部を備える請求項4又は5記載の継手の製造装置。
【請求項7】
前記保持部で前記止め輪を前記外溝内へ保持させる前に、前記止め輪を前記外溝の位置に支持する支持部を備える請求項4又は5記載の継手の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、継手の製造方法及び継手の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、ホースに接続する内筒部が、本体(エルボ管)に対して回転可能になっている継手がある。特許文献1の継手は、外筒部の内側に外側環状溝を有する本体と、外側に内側環状溝を有する内筒部とを備え、外筒部の内側に内筒部を挿入した際に互いに対向する外側環状溝と内側環状溝との両方に、C形状の係合リングが嵌まっている。特許文献1の継手は、係合リングが外側環状溝と内側環状溝との両方に引っ掛かることで、本体と内筒部とが抜け止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-229259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、内筒部を本体の外筒部に嵌めるとき、内筒部よりも外径が大きい係合リングを押し縮めて外筒部の内側に嵌め込み、係合リングを外側環状溝に嵌まる位置まで通す必要がある。係合リングを十分に縮径できないと、係合リングが外筒部に引っ掛かったり、係合リングが脱落したりする等の不具合が起こり、係合リングを外側環状溝及び内側環状溝に配置できない。また、係合リングが内筒部の内側環状溝からずれても、係合リングが外側環状溝に嵌まらないことがある。このように、内筒部を本体の外筒部に嵌めるとき、内筒部に取り付けた係合リングを外筒部の内側に入れることができないと、係合リングを適切な箇所に配置できない。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、止め輪を所定箇所に配置できる継手の製造方法及び継手の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る継手の製造方法の第1態様は、
外周面に外溝が設けられた挿入部材と、
前記挿入部材が挿入され、内周面に内溝が設けられた受入部材と、
前記外溝及び前記内溝に配置された止め輪と、を備える継手の製造方法であって、
前記止め輪を前記外溝の位置に配置し、
保持部で前記止め輪を前記外溝内へ保持させ、
前記受入部材に前記挿入部材を挿入する際に、前記保持部が前記挿入部材の前記外周面に沿って移動して、前記止め輪を前記受入部材の内部に受け渡し、
前記外溝と前記内溝との位置を揃えることで、前記外溝及び前記内溝に前記止め輪を配置させることを要旨とする。
【0007】
本発明に係る継手の製造方法の第2態様は、前記継手の製造方法の第1態様において、
前記止め輪を前記保持部から前記受入部材の内部に受け渡した後、前記保持部の保持状態を解除するようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る継手の製造方法の第3態様は、前記継手の製造方法の第1態様又は第2態様において、
前記保持部で前記止め輪を前記外溝内へ保持させる前に、前記止め輪を前記外溝の位置に支持するようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る継手の製造装置の第1態様は、
外周面に外溝が設けられた挿入部材と、
前記挿入部材が挿入され、内周面に内溝が設けられた受入部材と、
前記外溝及び前記内溝に配置された止め輪と、を備える継手の製造装置であって、
前記止め輪を前記外溝の位置に配置した後に、前記止め輪を前記外溝内へ保持する保持部を備えることを要旨とする。
【0010】
本発明に係る継手の製造装置の第2態様は、前記継手の製造装置の第1態様において、
前記保持部は、前記受入部材に前記挿入部材を挿入する際に、前記挿入部材の前記外周面に沿って移動するようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る継手の製造装置の第3態様は、前記継手の製造装置の第1態様又は第2態様において、
前記止め輪を前記保持部から前記受入部材の内部に受け渡した後、前記保持部の保持状態を解除する解除部を備えるようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る継手の製造装置の第4態様は、前記継手の製造装置の第1態様、第2態様及び第3態様の何れかにおいて、
前記保持部で前記止め輪を前記外溝内へ保持させる前に、前記止め輪を前記外溝の位置に支持する支持部を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る継手の製造方法の第1態様によれば、止め輪を所定箇所に配置できる。
本発明に係る継手の製造装置の第1態様によれば、止め輪を所定箇所に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係る製造装置及び製造方法で製造される継手を示す正面図である。なお、左半分は、断面を示している。
図2】実施例の継手の要部を分解して示す正面図である。なお、左半分は、断面を示している。
図3】実施例の止め輪を示す平面図である。
図4】実施例の製造装置を示す正面図である。
図5】実施例の製造装置を示す側断面図である。
図6】実施例の製造装置の要部を示す平面図である。
図7】止め輪を支持部に載せた状態を示す説明図である。(a)は製造装置の要部を示す平面図であり、(b)は製造装置の要部を切断して示す断面図である。
図8】止め輪を保持部で保持した状態を示す説明図である。(a)は製造装置の要部を示す平面図であり、(b)は製造装置の要部を切断して示す断面図である。
図9】(a)は保持部の要部を示す平面図であり、(b)は保持部と止め輪との関係を説明する正面図である。
図10】支持部が退避した状態を示す説明図である。(a)は製造装置の要部を示す平面図であり、(b)は製造装置の要部を切断して示す断面図である。
図11】受入部材を保持部に載せた状態を示す説明図である。(a)は製造装置の要部を示す平面図であり、(b)は製造装置の要部を切断して示す断面図である。
図12】取付部材を本体部材に嵌める過程を示す説明図である。
図13】解除部による保持部の保持状態の解除を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る継手の製造方法及び継手の製造装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例0016】
図1に示すように、実施例に係る継手10は、スプリンクラー設備の中で、給水配管とスプリンクラーヘッドとの間に設けられるヘッダーと呼ばれるものを例示している。継手10は、本体部材12と、本体部材12に取り付けられた取付部材14とを備えている。継手10において、本体部材12の一部が取付部材14に挿入されて、本体部材12と取付部材14とが嵌め合わせられている。以下の説明において、本体部材12及び取付部材14とが分離状態から相対的に嵌まる向きに沿う直線が延びる方向を挿脱方向という。本体部材12と取付部材14とは、互いの嵌合部分の中央を挿脱方向へ通る回転中心線を回転中心として、相対的に回転可能になっている。なお、実施例の本体部材12が、本発明の挿入部材に対応し、実施例の取付部材14が、本発明の受入部材に対応している。
【0017】
図1に示すように、本体部材12は、取付部材14に挿入される挿入部16と、スプリンクラーヘッドに繋がる配管が接続される接続部18とを有している。実施例の挿入部16は、筒形状の本体部材12において挿脱方向の一端部に設けられている。挿入部16の外周面には、止め輪22が配置される外溝20が形成されている(図2参照)。外溝20は、円筒形状の挿入部16の外周面全周に亘って、半径方向内側へ凹むように形成されている。本体部材12における挿入部16の根元側には、挿入部16よりも半径方向外側へ張り出した鍔部24が設けられている。実施例の本体部材12は、本体部材12における挿入部16と反対側の端部に設けられた接続部18と、本体部材12の周面に設けられた接続部18とを有している。実施例において、本体部材12の周面には、回転中心線を挟んで対称な位置関係で配置された接続部18の組が、挿脱方向に離して2組設けられている。このように、継手10は、上流側の給水配管から供給される水を、接続部18で複数の経路に分岐可能である。本体部材12の材質は特に限定されないが、実施例の本体部材12は、合成樹脂の成形品である。
【0018】
図1に示すように、取付部材14は、基本形状が筒状である。取付部材14における挿脱方向の一方には、本体部材12の挿入部16が挿入される受入部26が設けられている。また、取付部材14における挿脱方向の他方には、給水配管が接続される配管取付部28が設けられている。受入部26の内周面には、止め輪22が配置される内溝30が形成されている(図2参照)。内溝30は、円筒形の受入部26の内周面全周に亘って、半径方向外側へ凹むように形成されている。受入部26の内周面には、Oリング34が配置されるシール溝32が設けられている。シール溝32に配置したOリング34が、受入部26に挿入した挿入部16の外周面に当たり、受入部26と挿入部16との間を封止する。なお、実施例のシール溝32は、受入部26における挿入部16の受け入れ口から、内溝30よりも遠くにある。取付部材14の材質は特に限定されないが、実施例の取付部材14は、金属の鋳造品であり、配管取付部28の内周面にネジ溝が形成されている。
【0019】
図1に示すように、止め輪22は、挿入部16の外溝20及び受入部26の内溝30に配置される。継手10において、止め輪22が外溝20及び内溝30の両方に渡って配置されていることで、止め輪22が外溝20及び内溝30に引っ掛かって、本体部材12と取付部材14との挿脱方向(回転中心線が延びる方向)の相対的な移動が規制される。図3に示すように、止め輪22は、円環の一部が切れた形状である。止め輪22は、外力が加わっていない自然な状態から半径方向内側へ外力が加わると、端部間が狭くなるように弾力的に変形する。実施例の止め輪22は、力が加わっていない自然な状態で、挿入部26の外周面より大径である。止め輪22の材質は特に限定されないが、実施例の止め輪22は、断面形状が円形である金属製である。
【0020】
次に、実施例に係る継手10の製造装置40について説明する。図4図6に示すように、実施例の製造装置40は、止め輪22を外溝20に向けて押さえた状態で保持可能な保持部42を備えている。保持部42は、挿入部16の外周面に沿って(挿脱方向へ)移動可能に構成されている。保持部42は、保持部42で止め輪22を保持した保持状態を保つ閉止部44と、閉止部44によって保たれている保持状態を解除する解除部46とを備えている。また、製造装置40は、本体部材12及び取付部材14の少なくとも一方を挿脱方向に押して、挿入部16を受入部26に挿入する押圧部48を備えている。更に、製造装置40は、止め輪22を外溝20の位置で支持する支持部50を備えている。
【0021】
図4及び図5に示すように、実施例の製造装置40は、本体部材12を所定の姿勢で位置決めする位置決め手段54,58を備えている。実施例の位置決め手段は、平板部52に設けられた位置決め凹部54と、平板部52上に設けられた基礎部56に設けられ、U字形状の溝を有する位置決め受部58とを有している。製造装置40は、本体部材12の底部にある接続部18を位置決め凹部54に嵌めると共に、本体部材12の上段にある左右の接続部18を位置決め受部58に嵌めることで、本体部材12を挿脱方向が上下方向になる立てた姿勢で位置決め可能である。
【0022】
図4及び図6に示すように、実施例の製造装置40は、左右対称に配置された一対の保持部42,42を備えている。各保持部42は、スライドブロック64に支持されている。スライドブロック64は、基礎部56の上側に設けられたスライドベース60に設けられた横シャフト62に左右方向へ移動可能に支持されている。各保持部42は、位置決め手段54,58で位置決めされた本体部材12の挿入部16から遠ざけた保持退避位置(図6参照)と、挿入部16に近づけた保持位置(図8参照)との間で移動可能である。
【0023】
図9(a)に示すように、各保持部42の内端面は、挿入部16の外周面に合わせた円弧状に形成されている。また、各保持部42の外縁部には、平面視円弧状に延びる保持壁42aが上方へ突出するように形成されている。左右の保持部42,42が互いに近づいた保持位置にあるとき、左右の保持部42,42の内端面が、挿入部16の外周面を囲むように配置される。実施例において、各保持部42の内端面は、挿入部16の外周面の周長よりも短く設定されている(図9(a)参照)。これにより、図9(b)に示すように、左右の保持部42,42の保持位置であっても、左右の保持部42,42の前端部間があいて、挿入部16の外周面の一部及び止め輪22の一部を正面側から視認可能である。左右の保持部42,42が保持位置にあるとき、保持壁42aの内側に取付部材14を載置可能である(図11参照)。ここで、左右の保持部42,42が保持位置にあるとき、左右の保持壁42aで囲われる空間が、取付部材14の外周に合わせて形成されており、保持壁42aによって保持部42に載置した取付部材14を位置決め可能である。左右の保持部42,42が互いに遠ざかった保持退避位置にあるとき、左右の保持部42,42の間に、本体部材12を通すことができる間隔があく。なお、保持部42の保持退避位置から保持位置への移動を、モータやシリンダなどのアクチュエータを用いて行ってもよい。
【0024】
図12及び図13に示すように、保持部42は、上下方向(挿脱方向)に移動可能である。具体的には、基礎部56の上側に配置されたスライドベース60が、基礎部56に対して縦シャフト66で支持されており、スライドベース60が上下方向へ移動するようになっている。ここで、保持部42は、保持部42の内端面と本体部材12の外溝20との上下位置が揃う通常高さ(図12(a)及び図13(a))と、保持部42の内端面が外溝20の下方へずれる退避高さ(図12(b)、図12(c)及び図13(b))との間で移動する。スライドベース60と基礎部56との間には、スライドベース60を上方へ向けて押すバネ等の付勢部68が設置されている。保持部42は、外力が加わっていない状態(押圧部48によって押されていない状態)において、通常高さに配置される。
【0025】
閉止部44は、左右の保持部42,42を保持位置に保つものであり、実施例では、閉止部44として磁石が用いられている。図6に示すように、具体的には、実施例の閉止部44は、スライドブロック64の内端面近傍に設けられている。スライドブロック64には、閉止部44が前後に離して複数(実施例は3箇所)設けられている。そして、左右のスライドブロック64,64の内端面が互いに近づく保持位置にあると、対向配置された閉止部44,44同士が引き付け合って、左右の保持部42,42の分離が規制された保持状態になる。
【0026】
図4及び図5に示すように、製造装置40は、閉止部44による左右の保持部42の保持状態を解除する解除部46を備えている。実施例の解除部46は、左右のスライドブロック64,64の間に割り込むようになっている。また、左右のスライドブロック64,64の間には、解除補助部47が設けられている。実施例の解除部46は、基礎部56の上面に設けられた正面視山形の突起物である。解除部46は、通常高さにある左右のスライドブロック64,64に干渉しない高さで形成される。また、解除部46は、保持部42(スライドブロック64)が退避高さに下降した際に、スライドブロック64に干渉する高さで形成されている。解除部46は、止め輪22を保持部42から受入部26の内部に受け渡した後のタイミングで、保持部42の保持状態を解除するように設定されている。実施例の解除補助部47は、左右のスライドブロック64,64を保持退避位置へ向けて押すバネ等の付勢部材が用いられている。なお、解除補助部47の付勢力が、閉止部44の引き付け力よりも小さく設定されている。保持状態にある左右のスライドブロック64,64が通常高さから退避高さに下がった際に、解除部46が左右のスライドブロック64,64の間に割り込んで、左右のスライドブロック64,64を左右に切り離す。そして、解除補助部47の付勢により、左右のスライドブロック64,64が保持退避位置に移動する。
【0027】
図4及び図6に示すように、実施例の製造装置40は、左右対称に配置された一対の支持部50,50を備えている。各支持部50は、基礎部56に設けられたアーム70に左右方向に移動可能に支持されている。各支持部50は、位置決め手段54,58で位置決めされた本体部材12の挿入部16から遠ざけた支持退避位置(図6参照)と、挿入部16に近づけた支持位置(図7参照)との間で移動可能である。なお、支持部50の支持退避位置と支持位置との間の移動を、モータやシリンダなどのアクチュエータを用いて行ってもよい。
【0028】
図6及び図7(a)に示すように、各支持部50は、挿入部16の外周面に合わせた円弧状に形成されている。左右の支持部50,50が互いに近づいた支持位置にあるとき、左右の支持部50,50が、挿入部16の外周面を囲むように配置される。実施例では、支持位置にある左右の支持部50,50によって、挿入部16の全周を囲うようになっている。支持部50の上面は、平坦に形成されて、止め輪22を載置可能である。支持部50は、その上面が、挿入部16の外溝20の位置になるように配置されている(図7(b)参照)。実施例では、支持部50の上面が外溝20の下壁と同じ高さにあり、支持部50の上面に載置した止め輪22が外溝20の位置に揃うようになっている。支持部50は、通常高さにある保持部42の下側に配置されている。支持位置の支持部50は、保持位置にある保持部42の下側に重なるように配置される(図8(b)参照)。また、支持退避位置の支持部50は、保持位置にある保持部42の直下から外れた位置に配置され、通常高さから退避高さへ下降する保持部42の移動経路から外れる(図10(b)参照)。
【0029】
図4及び図5に示すように、実施例の押圧部48は、スライドベース60の上側に配置された板状体である。押圧部48は、上下方向(挿脱方向)に移動可能に構成されている。実施例の押圧部48は、保持位置にある左右の保持部42,42に載置された取付部材14の上端に当たり、取付部材14を下方へ押して、取付部材14の受入部26を本体部材12の挿入部16に嵌め合わせる。ここで、押圧部48は、取付部材14の上方に離れた高さから、受入部26の内溝30と挿入部16の外溝20との位置が揃う高さまで移動する。押圧部48の移動を、モータやシリンダなどのアクチュエータを用いて行ってもよい。
【0030】
図4及び図5に示すように、実施例の押圧部48は、スライドベース60を押す押圧補助部72を備えている。実施例の押圧補助部72は、押圧部48から下方へ突出する棒状体である。押圧補助部72は、押圧部48が取付部材14の上端に当たるタイミングに合わせて、スライドベース60に当たるように設定されている。実施例の製造装置40において、押圧部48が取付部材14を押すことに伴って取付部材14を支持する保持部42が通常高さから下降することに合わせて、押圧補助部72に押されたスライドベース60が通常高さから下降する。
【0031】
次に、前述した製造装置40を用いた実施例に係る継手10の製造方法について説明する。
【0032】
まず、本体部材12を製造装置40にセットする(図4図6参照)。本体部材12の底部の接続部18を平板部52の位置決め凹部54に嵌め込むと共に、上段にある左右の接続部18,18を位置決め受部58にそれぞれ引っ掛けることで、本体部材12が挿入部16を上側にした所定姿勢で位置決めされる。このとき、保持部42を保持退避位置で通常高さに配置し、支持部50を支持退避位置に配置しておくことで、保持部42及び支持部50が本体部材12のセットの邪魔にならない。
【0033】
次に、止め輪22を挿入部16の外溝20の位置に配置する。具体的には、左右の支持部50,50を支持退避位置から支持位置に移動する。これにより、支持位置にある左右の支持部50,50が本体部材12の挿入部16を囲んで、挿入部16の周囲に止め輪22を載せるテーブルが形成される(図7参照)。止め輪22を挿入部16の外周に嵌めて、支持位置にある左右の支持部50,50の上面に載せる。ここで、支持部50の上面が挿入部16の外溝20の下壁に揃っているので、支持部50に載せた止め輪22が外溝20の位置に支持される(図7(b)参照)。止め輪22の挿入部16へのセットは、止め輪22を外溝20に嵌め込まなくても、支持部50によって止め輪22を保持できる。これにより、止め輪22を外溝20に入る比較的小径に設定する必要がなくなり、止め輪22を比較的大径に設定することが可能となる。止め輪22を、挿入部16よりも大きい径にするなどの比較的大径に設定すると、止め輪22を挿入部16にセットし易くなる。しかも、止め輪22が元の形状に戻ろうとする反力により、止め輪22を外溝20内及び内溝30内に適切に配置することができ、止め輪22によって本体部材12及び取付部材14の接続を強固にすることができる。また、止め輪22を支持部50に載せるだけで、止め輪22を外溝20に位置合わせすることができ、止め輪22が外溝20位置からずれるなどの不具合の発生を防止できる。
【0034】
次に、保持部42で止め輪22を外溝20内へ保持する。具体的には、左右の保持部42,42を保持退避位置から保持位置に移動する。これにより、保持位置にある左右の保持部42,42の内端面が挿入部16の外溝20を囲み、近接配置された閉止部44同士の引き付け合いにより、解除補助部47の付勢に抗して、左右の保持部42,42が保持位置で保持される(図8(a)参照)。このとき、支持部50に載っている止め輪22が保持部42の内端面によって外溝20の底に向けて押されて、縮径した止め輪22が保持部42により外溝20内に入るように保持される(図8(b)参照)。保持部42で止め輪22を外溝20内へ保持させる前に、支持部50によって止め輪22を外溝20の位置に支持しているので、保持部42で止め輪22を適切に保持することができる。これにより、止め輪22が外溝20から位置ずれしていることに起因する、止め輪22の脱落を防止できる。
【0035】
図9(b)に示すように、実施例において、外溝20の全周を左右の保持部42,42で囲わず、外溝20の一部が露出するので、保持部42で保持された止め輪22が外溝20に配置されているか否かを、外側から確認することができる。これにより、止め輪22が外溝20から位置ずれしていることに起因する、止め輪22の脱落を未然に防止できる。
【0036】
次に、左右の支持部50,50を支持位置から支持退避位置に移動する(図10参照)。これにより、保持位置にある左右の保持部42,42の下側から支持部50が外れて、取付部材14の嵌め込みに伴う保持部42の移動スペースが確保される。
【0037】
次に、取付部材14をセットする。具体的には、取付部材14の受入部26を本体部材12の挿入部16に嵌めて、保持位置にある左右の保持部42,42に取付部材14を載せる(図11参照)。このとき、挿入部16の外溝20と受入部26の内溝30とが上下に位置ずれしており、仮組み状態である。取付部材14のセットの際に、保持部42の外縁部に立ち上がる保持壁42aによって、取付部材14の外周面が案内されて、受入部26と挿入部16とが位置合わせされることから、受入部26を挿入部16に円滑に嵌め合わせることができる。
【0038】
次に、挿入部16の外溝20と受入部26の内溝30との位置を合わせて、本組み状態にする。具体的には、押圧部48で取付部材14を上から押さえて取付部材14を下降させて、受入部26を挿入部16に嵌め合わせる。取付部材14を押圧部48で押さえることで、取付部材14を支持する左右の保持部42,42も挿入部16の外周面に沿って下方へ移動する(図12(a)及び(b)参照)。このとき、止め輪22は、保持部42で外溝20内に保持されているので、外溝20の下壁に引っ掛かって保持部42と一緒に移動しない。そして、受入部26が外溝20まで下降してくると、外溝20に配置された止め輪22が保持部42から受入部26の内部に受け渡される(図12(b)参照)。保持部42に取付部材14が支持されているので、保持部42の内端面から受入部26の内部に止め輪22を円滑に受け渡しできる。このように、取付部材14に本体部材12を挿入する際に、止め輪22を保持している保持部42が本体部材12の外周面に沿って移動して、止め輪22を取付部材14の内部に受け渡す。このようにすることで、止め輪22が取付部材14に引っ掛かって脱落したり、止め輪22が外溝20から位置ずれするなどの不具合の発生を防止できる。
【0039】
図13に示すように、取付部材14に押されて左右の保持部42,42が下降すると、解除部46が左右のスライドブロック64,64の間に割り込んで、閉止部44で保持されていた左右のスライドブロック64,64が左右に切り離される。左右の保持部42,42は、左右のスライドブロック64,64の間に作用する解除補助部47の付勢力により、保持位置から保持退避位置に移動し、取付部材14の下側から外れる(図12(c)参照)。このとき、保持部42が取付部材14の下側から外れても、スライドベース60が押圧補助部72で押さえられているので、保持退避位置にある保持部42が通常高さに戻らない。解除部46によって保持部42の保持状態を解除することで、保持部42の退避を許容して、本体部材12への嵌め込みに必要な取付部材14の移動スペースを確保することができる。そして、止め輪22を保持部42から受入部26の内部に受け渡した後のタイミングで、解除部46によって保持部42の保持状態を解除することで、保持部42から受入部26の内部に止め輪22を適切に受け渡すことができる。
【0040】
図12(c)に示すように、押圧部48で取付部材14を更に押して、受入部26の内溝30を挿入部16の外溝20と位置を揃えることで、外溝20に入っていた止め輪22が弾力的に拡開し、内溝30及び外溝20に止め輪22が配置される。これにより、本体部材12と取付部材14とが、外溝20及び内溝30に配置された止め輪22で接続された継手10が得られる。押圧部48を上昇させて、取付部材14の押圧を解除することで、押圧補助部72によるスライドベース60の押圧も解除され、保持部42が退避高さから通常高さに戻る。
【0041】
このように、製造装置40及び製造方法によれば、止め輪22を受入部26の内部に円滑に入れることができることから、止め輪22を本体部材12の外溝20及び取付部材14の内溝30に適切に配置できる。また、製造装置40及び製造方法によれば、止め輪22を比較的小径に設定する必要がなくなり、止め輪22を挿入部26にセットし易い比較的大径に設定することが可能となる。このように、止め輪22を比較的大径にすると、止め輪22が元の形状に戻ろうとする反力により、止め輪22を外溝20及び内溝30に適切に配置することができ、止め輪22によって本体部材12及び取付部材14の接続を強固にすることができる。
【0042】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)継手は、スプリンクラー設備の配管経路に用いられるものに限らず、給水又は排水などの配管設備や、空気やガスなどの配管設備などに用いてもよい。
(2)保持部の形状は、実施例に限らず、例えば、保持壁を省略してもよい。止め輪を保持する保持部の内端面は、連続する円弧面に限らず、円弧が断続的に配置される構成であってもよい。
(3)支持部を省略してもよい。また、挿入部材と受入部材との組み付け時に、支持部が保持部と一緒に上下方向(挿脱方向)に移動するようにしてもよい。
(4)押圧部によって受入部材を押して、挿入部材と受入部材とを組み付けることに限らず、挿入部材を押して挿入部材を受入部材と組み付けてもよく、挿入部材と受入部材との両方を押して挿入部材を受入部材と組み付けてもよい。
(5)閉止部は、実施例のように磁石に限らず、保持位置で爪が引っ掛かる構成など、その他の構成であってもよい。
(6)解除部は、実施例のように突起に限らず、閉止部の構成に合わせて設定すればよい。
【符号の説明】
【0043】
10 継手,12 本体部材(挿入部材),14 取付部材(受入部材),
20 外溝,22 止め輪,30 内溝,42 保持部,46 解除部,50 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13