IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 鉱研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図1
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図2
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図3
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図4
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図5
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図6
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図7
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図8
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図9
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図10
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図11
  • 特開-湧水圧測定装置および湧水圧測定方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035585
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】湧水圧測定装置および湧水圧測定方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/06 20120101AFI20240307BHJP
   G01V 9/02 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
E21B47/06
G01V9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140152
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平塚 裕介
(72)【発明者】
【氏名】熊本 創
(72)【発明者】
【氏名】久我 俊充
(72)【発明者】
【氏名】森山 和義
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105EE01
2G105LL01
2G105LL08
(57)【要約】
【課題】水圧で圧送してボーリング孔先端部に配置するパッカーの回収に要する時間の短縮を可能とし、ひいては、地下水圧測定に要する時間の短縮を可能とする湧水圧測定装置および湧水圧測定方法を提案する。
【解決手段】湧水圧測定装置1は、ボーリング孔Hに配設された削孔管5の先端部に設けられて、削孔管5の先端部の湧水を削孔管5内に取り込むパッカー装置2と、削孔管5の基端部に取り付けられる分岐管3と、分岐管3に取り付けられた水圧計4とを備えている。分岐管3は、削孔管5と同軸線上に配設される送水管路31と、送水管路31から分岐されたワイヤーライン管路32とに分岐されている。パッカー装置2には、ワイヤーライン管路32を介して削孔管5内に延設されたワイヤー6が接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔に配設された削孔管の先端部の湧水を前記削孔管内に取り込むパッカー装置と、
前記削孔管の基端部に取り付けられる分岐管と、
前記分岐管の基端部に取り付けられるドリフターと、
前記分岐管に取り付けられた水圧計と、を備える湧水圧測定装置であって、
前記分岐管は、前記削孔管と同軸線上に配設される送水管路と、前記送水管路から分岐されたワイヤーライン管路と、に分岐されており、
前記パッカー装置は、水圧で圧送することにより前記削孔管内の先端部に配設されており、
前記パッカー装置には、前記ワイヤーライン管路を介して前記削孔管内に延設されたワイヤーが接続されていることを特徴とする、湧水圧測定装置。
【請求項2】
前記送水管路からさらに排水管路が分岐されており、
前記水圧計は、前記排水管路に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の湧水圧測定装置。
【請求項3】
ボーリング孔を削孔するとともに前記ボーリング孔に前記削孔管を配設する削孔工程と、
前記ボーリング孔に請求項1または請求項2に記載の湧水圧測定装置を配設する装置配設工程と、
前記ボーリング孔先端部の湧水の圧力を測定する測定工程と、
前記パッカー装置を回収する装置回収工程と、を備える湧水圧測定方法であって、
前記装置配設工程では、前記削孔管の基端部に前記分岐管を取り付けるとともに、前記パッカー装置を前記削孔管の先端部に配設し、
前記測定工程では、前記パッカー装置を介して前記削孔管内に取り込まれた湧水の水圧を前記水圧計により測定し、
前記装置回収工程では、前記ワイヤーを巻き取ることで、前記パッカー装置を回収することを特徴とする、湧水圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事において湧水圧の測定に使用する湧水圧測定装置および湧水圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、切羽前方の地質や湧水区間の状況を事前に把握することが、地山の安定性確保や工事の安全管理のうえで重要である。切羽前方の地質や地下水状況(水理特性等)の探査方法として、水平調査ボーリングを行う場合がある。
水平調査ボーリングにより地下水圧を測定する場合には、ボーリング孔先端の湧水区間の近傍においてパッカーを拡張することで他の区間と区切り、パッカーにより区切られた湧水区間において湧水の水圧等を測定する。
このような地下水圧測定方法として、例えば、特許文献1に開示された方法がある。特許文献1の地下水圧測定方法では、先端にパッカーを有する管材を、基端側に継ぎ足されたロッドにより押し込むことで所定の位置に配設した後、パッカーを拡張させている。
ところが、削孔距離が百メートル以上の中長距離の調査ボーリングでは、パッカー挿入時のロッドの継ぎ足し作業や、パッカー回収時のロッドの取り外し作業に手間がかかり、切羽前方の湧水区間の水圧を迅速に測定することができない。
そのため、特許文献2には、パッカーを水圧で圧送してボーリング孔先端部に配置し、地下水圧を測定した後、ワイヤーラインで回収することで、作業の効率化を可能とした湧水圧測定方法が開示されている。特許文献2の湧水圧測定方法におけるパッカーの回収作業は、ワイヤーの先端に取り付けられた回収装置を水圧によりボーリング孔内を圧送してパッカーの後端に嵌合した後、ワイヤーを巻き取ることにより行う。
ところが、回収装置を圧送する流路に比べて、ボーリング孔先端からの排水流路が小さく、回収装置をボーリング孔先端側に圧送する際の送水量が制限されるため、回収装置の圧送に時間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-011622号公報
【特許文献2】特開2022-024800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水圧で圧送するパッカーを用いた湧水圧測定方法に関して、パッカー回収に要する時間の短縮を可能とし、ひいては、地下水圧測定に要する時間の短縮を可能とする湧水圧測定装置および湧水圧測定方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の湧水圧測定装置は、ボーリング孔に配設された削孔管の湧水を前記削孔管内に取り込むパッカー装置と、前記削孔管の基端部に取り付けられる分岐管と、前記分岐管の基端部に取り付けられるドリフターと、前記分岐管に取り付けられた水圧計とを備えている。前記分岐管は、前記削孔管と同軸線上に配設される送水管路と、前記送水管路から分岐されたワイヤーライン管路とに分岐されている。また、前記パッカー装置は、水圧で圧送することにより前記削孔管内の先端部に配設されており、前記パッカー装置には、前記ワイヤーライン管路を介して前記削孔管内に延設されたワイヤーが接続されている。なお、前記水圧計は、前記送水管路から分岐する排水管路に設けられている。
また、本発明の湧水圧測定方法は、ボーリング孔を削孔するとともに前記ボーリング孔に前記削孔管を配設する削孔工程と、前記ボーリング孔に前記湧水圧測定装置を配設する装置配設工程と、前記ボーリング孔先端部の湧水の圧力を測定する測定工程と、前記パッカー装置を回収する装置回収工程とを備えている。前記装置配設工程では、前記削孔管の基端部に前記分岐管を取り付けるとともに、前記パッカー装置を前記削孔管の先端部に配設する。また、前記測定工程では、前記パッカー装置を介して前記削孔管内に取り込まれた湧水の水圧を前記水圧計により測定する。さらに、前記装置回収工程では、前記ワイヤーを巻き取ることで前記パッカー装置を回収する。
【0006】
かかる湧水圧測定装置および湧水圧測定方法によれば、予めパッカー装置にワイヤーが接続されているため、削孔管内にワイヤーを個別に送り込む必要がない。そのため、従来の湧水圧測定方法において必要とされたワイヤーをパッカー装置に接続するために要する時間を省略できる。また、ワイヤーは、分岐管のワイヤーライン管路に挿通されているため、回転機構および打撃機構を有する装置であるドリフターを分岐管(送水管路)に取り付けた状態であっても、パッカー装置に接続されたワイヤーの送り込みおよび巻き取りが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湧水圧測定装置および湧水圧測定方法によれば、パッカー回収に要する時間の短縮を可能とし、ひいては、地下水圧測定に要する時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る湧水圧測定装置を示す断面図である。
図2】パッカー装置を示す断面図であって、(a)は通常時、(b)はパッカー拡張時である。
図3】分岐管を示す断面図である。
図4】(a)~(c)は止水部材の例を示す断面図である。
図5】(a)は湧水圧測定方法の作業手順を示すフローチャート、(b)は湧水圧測定方法の装置配設工程の作業手順を示すフローチャート、(c)は湧水圧測定方法の装置回収工程の作業手順を示すフローチャートである。
図6】削孔工程の概要を示す断面図であって、(a)は削孔状況、(b)はインナービット回収状況である。
図7】装置配設工程を示す断面図であって、(a)は削孔管後退作業から装置配設作業、(b)は(a)に続く装置配設作業である。
図8】装置配設工程を示す断面図であって、(a)は図7(b)に続く装置配設作業、(b)はパッカー拡張作業である。
図9】測定工程の概要を示す断面図である。
図10】装置回収工程の削孔管後退作業の概要を示す断面図である。
図11】装置回収工程のワイヤー巻取作業の概要を示す断面図である。
図12】装置回収工程の装置回収作業の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、湧水が予想されるトンネル工事において、湧水圧測定装置1を利用して、事前に地山Gの湧水状況を把握する場合について説明する。図1に本実施形態の湧水圧測定装置1を示す。湧水圧測定装置1は、図1に示すように、パッカー装置2と、分岐管3と、水圧計4と、ワイヤー6とを備えている。
パッカー装置2は、ボーリング孔Hに配設された削孔管5の先端部に設けられる。パッカー装置2は、先端部が削孔管5の先端から突出しており、削孔管5の先端部の湧水を削孔管5内に取り込む。
パッカー装置2の基端には、削孔管5内に延設されたワイヤー6が接続されている。
図2にパッカー装置2を示す。パッカー装置2は、図2(a)に示すように、前方パッカー21、後方パッカー22および採水管23を備えている。パッカー装置2は、削孔管5の先端部の湧水圧を測定する際に削孔管5内に挿入され、削孔管5の坑口側から削孔管5内に送り込まれた水の圧力によって削孔管5の先端(ボーリング孔Hの先端)に送り込まれる。また、パッカー装置2は、湧水圧の測定後、ワイヤー6(図1参照)を巻き取ることにより、削孔管5の先端部から回収可能である。
【0010】
前方パッカー21は、採水管23に周設された環状部材であって、ゴムなどの収縮性を有した材料により構成されている。前方パッカー21は、採水管23を介して圧送された水(流体)により採水管23の外側に向けて拡張する。通常時の前方パッカー21は、図2(a)に示すように、採水管23の外面からの突出高が最小限になるように、採水管23の外面において収縮されている。一方、前方パッカー21が水により拡張すると、図2(b)に示すように、採水管23の外周面よりも外側に突出する。前方パッカー21は、ボーリング孔Hの先端部において拡張することで、ボーリング孔Hの内壁に密着し、パッカー装置2とボーリング孔Hとの隙間を遮蔽する。
【0011】
後方パッカー22は、前方パッカー21の後方で、採水管23に周設されている。後方パッカー22は、ゴムなどの収縮性を有した材料からなる環状部材である。後方パッカー22は、採水管23を介して圧送された水により採水管23の外側に向けて拡張する。通常時の後方パッカー22は、図2(a)に示すように、採水管23の外面から突出高が最小限になるように、収縮されている。一方、水によって後方パッカー22が拡張すると、図2(b)に示すように、採水管23の外周面よりも外側に突出する。後方パッカー22は、削孔管5内において拡張することで削孔管5の内面に密着し、削孔管5とパッカー装置2との隙間を遮蔽する。
【0012】
採水管23は、図2(a)および(b)に示すように、内管24と、内管24に周設された第一外管25および第二外管26と、基端部材28とを備えている。
内管24は、先端から湧水を集水して後方(孔口側)へ輸送する流路として機能する管材である。内管24は、第一外管25および第二外管26に挿入されている。内管24の先端部には、前方パッカー21が周設されている。
第一外管25は、内管24の先端側かつ前方パッカー21の後側に周設されている。第一外管25の内径は、内管24の外径よりも大きく、内管24と第一外管25との間には、隙間25aが形成されている。この隙間25aは、第一外管25の前端面に隣接する前方パッカー21に連通しており、前方パッカー21に水を送水するためのパッカー流路として機能する。なお、本実施形態の第一外管25の基端部には、外形が縮径された段差部25bが形成されており、この段差部25bの外面に第二外管26の先端部(段差部26c)が重ねられている。
【0013】
第二外管26は、第一外管25の後方(孔口側)において、内管24に周設されている。また、第二外管26の長手方向中央部には、後方パッカー22が周設されている。第二外管26の先端部(後方パッカー22よりも先端側)には、第一外管25の段差部25bと重合するように、内面が拡径された段差部26cが形成されている。第一外管25と第二外管26は、段差部25bと段差部26cとの重合部において、接合ピン23aを介して連結されている。また、第二外管26は、段差部26cと後方パッカー22との間の区間では、第一外管25と同等の内径を有していて、後方パッカー22の基端側では、内管24の外径と同等の内径を有している。さらに、第二外管26の基端部の一部は、内管24の基端よりも孔口側に突出している。
第二外管26の基端部の管壁には、外管通水路26aが形成されている。外管通水路26aの基端は、内管24の基端よりも孔口側において第二外管26の内面に開口している。一方、外管通水路26aの先端は、後方パッカー22に連通している。すなわち、外管通水路26aは、後方パッカー22に水を送水するためのパッカー流路として機能する。また、後方パッカー22と段差部26cとの間の区間における内管24と第二外管26との隙間26bは、後方パッカー22の前面に形成された排水口と連通するとともに、内管24と第二外管26との隙間25aと連続しており、前方パッカー21に水を送水するためのパッカー流路として機能する。
【0014】
基端部材28は、採水管23の基端部に設けられている。基端部材28は、内管24の基端と、第二外管26とにより囲まれた空間(流路切替部27)の基端側(ボーリング孔Hの孔口側)を遮蔽している。基端部材28と第二外管26との境界部には、採水管23の外面に開口する通水路27aが形成されている。通水路27aは、流路切替部27と採水管23の外部とを連通する流路である。流路切替部27には、切替弁27bが設けられている。切替弁27bは、通水路27aへの内管24の内空24aの接続と、通水路27aへのパッカー流路(外管通水路26a)への接続とを切り替える。すなわち、切替弁27bは、内管24を介して湧水を集水可能な状態と、前方パッカー21及び後方パッカー22に水を供給可能な状態とを切り替える手段として機能する。
【0015】
パッカー流路は、流路切替部27から後方パッカー22及び前方パッカー21に至る流路である。パッカー流路は、流路切替部27から後方パッカー22に至る外管通水路26a、並びに、後方パッカー22から前方パッカー21に至る隙間25a,26bにより構成されている。このように、パッカー流路は、通水路27aに取り込まれた水を、後方パッカー22に誘導した後、後方パッカー22内から排出された水を前方パッカー21に誘導する。
【0016】
図1に示すように、分岐管3は、ボーリング孔Hの孔口において、削孔管5の基端部に取り付けられる。図3に分岐管3を示す。分岐管3は、図3に示すように、削孔管5と同軸線上に配設される送水管路31と、送水管路31から分岐されたワイヤーライン管路32と、送水管路31から分岐された排水管路33とを備えている。
送水管路31は、中空の直管からなり、先端が削孔管5に基端に接続されている。送水管路31(分岐管3)の基端には、ドリフター7が接続されている。ドリフター7は、削孔時に分岐管3を介して削孔管に回転力を付与する回転機構と、削孔時に衝撃を加えるための打撃機能を有しているとともに、パッカー装置2等を削孔管5の先端部に送り込む際の水を送水する送水機能を有する装置である。
【0017】
ワイヤーライン管路32は、送水管路31の長手方向中間部において分岐された管路である。ワイヤーライン管路32には、パッカー装置2に接続されるワイヤー6が挿通される(図1参照)。ワイヤーライン管路32の基端部には、ワイヤー6を挿通可能な止水部材34が取り付けられていて、分岐管3内の水の流出が抑制されている。止水部材34は、ワイヤー6を挿通可能で、かつ、止水性を確保可能なものとする。図4に止水部材34の例を示す。止水部材34は、例えば、図4(a)に示すように、ねじ込み式のキャップであってもよい。ワイヤーライン管路32の基端部には、ワイヤー6にパッキン35が周設されており、止水部材34(キャップ)によりパッキン35を押しつぶすことで、パッキン35が止水部材34に密着して、止水性が向上する。また、止水部材34は、図4(b)に示すように、ワイヤーライン管路32の基端部に設けられた中空のゴム材であってもよい。この場合には、止水部材34(ゴム材)内に水等を圧入し膨張した止水部材34の外面をワイヤーライン管路32の内面に密着させることで止水する。また、ワイヤー6を切断して、ワイヤーライン管路32から突出させない場合には、図4(c)に示すように、キャップ状の止水部材34によりワイヤーライン管路32の基端部を遮蔽すればよい。
【0018】
水圧計4は、図3に示すように、分岐管3に取り付けられて、削孔管5内に取り込まれた湧水の水圧を測定する。本実施形態の水圧計4は、排水管路33に設けられている。排水管路33は、送水管路31の長手方向中間部において分岐されている。排水管路33には、バルブ36が設けられている。バルブ36は、排水管路33の開閉を行い、排水管路33からの排水および止水を制御する。水圧計4は、排水管路33から流出する水(湧水)の圧力を測定可能である。
【0019】
次に、図面を参照して、本実施形態の湧水圧測定装置1を利用した湧水圧測定方法について説明する。湧水圧測定方法は、例えば、トンネルの切羽から水平ボーリングを行い、ボーリング孔H内の湧水圧を確認することで、切羽前方での地山状況を確認する場合に使用する。図5に湧水圧測定方法の手順を示す。図5に示すように、湧水圧測定方法は、削孔工程S1と、装置配設工程S2と、測定工程S3と、装置回収工程S4とを備えている。
【0020】
図6に削孔工程S1の概要を示す。図6(a)に示すように、削孔工程S1は、地山Gを削孔してボーリング孔Hを形成するとともに、当該ボーリング孔Hに削孔管5を配設する工程である。本実施形態の削孔管5の先端には、削孔ビット51が固定されている。削孔ビット51は、削孔管5の先端に固定された環状のビットである。削孔ビット51の内径は、削孔管5の内径よりも小さく、削孔ビット51は削孔管5の内側に突出している。削孔工程S1では、削孔ビット51の内空部にインナービット52を取り付けた状態で行う。ボーリング孔Hの削孔では、削孔管5を図示しないボーリングマシンの動力により中心軸を中心に回転させつつ打撃することで、削孔ビット51およびインナービット52により地山Gを全断面切削する。
本実施形態のボーリング孔Hは、略水平(基端側よりも先端側が高い状態も含む)に形成する。尚、ボーリング孔Hの削孔方向は略水平方向に限定されるものではなく、例えば下向き、上向き、縦向き(鉛直方向)に削孔してもよい。所定の長さ(深さ)のボーリング孔Hを形成したら、図6(b)に示すように、インナービット52を回収する。インナービット52の回収は、ワイヤー53の先端に取り付けられた回収装置55を水圧によりボーリング孔H内を圧送してインナービット52の後端に嵌合した後、ワイヤー53を巻き取ることにより行う。
なお、削孔管5の基端部は、ボーリング孔Hの孔口に設置されたプリベンダー54により支持されている。本実施形態では、削孔ビット51にインナービット52を取り付けた状態で全断面切削する場合について説明したが、ボーリングコアを採取する場合には、インナービット52を取り外した状態で削孔を行ってもよい。このとき、削孔ビット51には、インナービット52に代えてコアバレルを取り付けるのが望ましい。
【0021】
装置配設工程S2は、ボーリング孔Hに湧水圧測定装置1を配設する工程である。装置配設工程S2では、削孔管5の基端部に分岐管3を取り付けるとともに、パッカー装置2を削孔管5の先端部に配設する。装置配設工程S2は、削孔管後退作業S21と、装置配設作業S22と、パッカー拡張作業S23とを備えている。図7および図8に装置配設工程S2の作業状況を示す。
削孔管後退作業S21では、削孔管5を後退させて、削孔管5の先端とボーリング孔Hの先端面(底)との間に隙間をあける(図7(a)参照)。すなわち、ボーリング孔Hの先端部は、地山Gが露出した状態となる。
【0022】
装置配設作業S22では、削孔管5の孔口側から圧送した水Wの圧力によりパッカー装置2を圧送して、パッカー装置2をボーリング孔Hの先端部に配設する。具体的には、まず、図7(a)に示すように、パッカー装置2を削孔管5の基端部にセットする。次に、パッカー装置2の基端にワイヤー6を固定する。ワイヤー6は、分岐管3のワイヤーライン管路32に挿通する。次に、図7(b)に示すように、削孔管5の基端に分岐管3を固定する。なお、本実施形態では、分岐管3の基端にドリフター7を予めセットしておく。続いて、図8(a)に示すように、送水管路31に水Wを供給し、パッカー装置2を削孔管5の先端部に水Wの水圧により圧送する。圧送中にパッカー装置2が削孔管5内側の凹凸に引っ掛かり係留する場合は、ドリフター7により打撃振動を与えることで解消する。パッカー装置2の先端部は、削孔管5の先端から突出させる。パッカー装置2は、水圧により削孔管5の先端部に輸送された後、削孔ビット51に係止されることで、先端部が削孔ビット51の先端から突出した状態で留まる。パッカー装置2の圧送に使用した水Wは、パッカー装置2と削孔管5との隙間や、パッカー装置2内(内管24)を介してボーリング孔Hの先端部に流出した後、ボーリング孔Hと削孔管5との隙間からボーリング孔Hの孔口側へ排水される。
【0023】
パッカー拡張作業S23では、図8(b)に示すように、前方パッカー21及び後方パッカー22を拡張させる。図8に削孔管5先端部に配設されたパッカー装置2を示す。図8(a)に示すようにパッカー装置2を削孔管5の先端に係止されたら、削孔管5内に供給する水Wの水圧を増加させる。水Wの圧力を増加させると、図2(b)に示すように、水圧により切替弁27bが前方に移動する(切替弁27bのポジションが切り替わる)。切替弁27bが前方に移動すると、切替弁27bの前部により内管24の後端が遮蔽されるとともに、外管通水路26a(パッカー流路)が流路切替部27に露出するため、流路切替部27内の水Wがパッカー流路に誘導される。これにより、パッカー流路を介して後方パッカー22および前方パッカー21に水Wが圧入される。前方パッカー21は、水圧により拡張して、ボーリング孔Hの内壁に密着する。また、後方パッカー22は水圧により拡張して、削孔管5の内面に密着する。
【0024】
測定工程S3では、ボーリング孔H内に流入するボーリング孔Hの先端部の湧水Wをパッカー装置2(採水管23)の先端から回収して、当該湧水Wの圧力を水圧計4により測定する。図9に測定工程S3の作業状況を示す。測定工程S3では、孔口側から圧送する水Wの圧力を減少させる。水Wの圧力が湧水Wの圧力よりも小さくなると、採水管23(内管24)内に取り込まれた湧水Wの圧力等により切替弁27bが元に戻る。このとき、ボーリング孔H内では、図9に示すように、前方パッカー21がボーリング孔Hの内壁に密着しており、ボーリング孔Hの先端部に発生した湧水Wが前方パッカー21の後方に流出することが防止されているため、内管24へと湧水Wが誘導される。また、切替弁27bが元の状態に戻ると、パッカー流路の基端側(外管通水路26a)が遮蔽されるため、前方パッカー21及び後方パッカー22内の水Wの流出が防止され、前方パッカー21及び後方パッカー22の拡張状態を維持した状態で湧水Wを取り込むことできる。内管24の先端から取り込まれた湧水Wは、内管24から流路切替部27を通って、削孔管5に取り込まれて、分岐管3へと誘導される。分岐管3では、排水管路33から排水しつつ、水圧計4により、湧水圧の測定を行う。
【0025】
装置回収工程S4は、パッカー装置2を回収する工程である。装置回収工程S4は、削孔管後退作業S41と、ワイヤー巻取作業S42と、装置回収作業S43とを備えている。
図10に削孔管後退作業S41を示す。削孔管後退作業S41では、削孔管5を孔口側に引っ張ることで削孔管5を後退させる。このとき、前方パッカー21及び後方パッカー22は、拡張した状態が維持されている。図10に示すように、後方パッカー22が削孔管5に密着しているため、削孔管5を後退させると、第二外管26が削孔管5とともに後退する。一方、第一外管25は、前方パッカー21が拡張してボーリング孔Hの内面に密着しているため、ボーリング孔Hに固定された状態が維持される。その結果、削孔管5を後退させる力(引張力)によって接合ピン23aが破断して、第一外管25と第二外管26とが分離する。第一外管25と第二外管26とが分離すると、パッカー流路が分断される。パッカー流路が分断されると、前方パッカー21内の水W及び後方パッカー22内の水Wがこの部分から流出するため、前方パッカー21及び後方パッカー22が縮んだ状態となる。
【0026】
図11にワイヤー巻取作業S42を示す。ワイヤー巻取作業S42では、図11に示すように、ウィンチ等(図示せず)を利用して、ワイヤー6を巻き取ることで、パッカー装置2を削孔管5の基端部に引き寄せる。
図12に装置回収作業を示す。装置回収作業S43では、図12に示すように、分岐管3を削孔管5から取り外すとともに、パッカー装置2を削孔管5から取り出す。
ボーリング孔Hの削孔を再開する場合には、インナービット52を削孔管5の先端部に設置して、削孔管5による削孔を再開する。
【0027】
以上、本実施形態の湧水圧測定装置1および湧水圧測定方法によれば、予めパッカー装置2にワイヤー6が接続されているため、削孔管5内にワイヤー6を個別に送り込む必要がない。従来の湧水圧測定方法において必要とされたワイヤー6をパッカー装置2に接続するために要する時間を省略できる。そのため、ボーリング孔Hの削孔距離に限定されることなく、簡易にパッカー装置2の設置および回収が可能となり、また、切羽前方の湧水区間の水圧を迅速に測定して、速やかにトンネル施工を再開できるようになる。
また、ワイヤー6は、分岐管3のワイヤーライン管路32に挿通されているため、回転機構を有する装置であるドリフター7を分岐管3(送水管路31)に取り付けた状態であっても、パッカー装置2に接続されたワイヤー6の送り込みおよび巻き取りが可能である。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 湧水圧測定装置
2 パッカー装置
21 前方パッカー
22 後方パッカー
23 採水管
24 内管
25 第一外管
26 第二外管
27 流路切替部
3 分岐管
31 送水管路
32 ワイヤーライン管路
33 排水管路
4 水圧計
5 削孔管
6 ワイヤー
7 ドリフター
H ボーリング孔
G 地山
湧水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12