(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035604
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】樹脂材料、硬化物、絶縁層付き回路基板及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240307BHJP
C08K 5/3417 20060101ALI20240307BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240307BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240307BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20240307BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20240307BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240307BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240307BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240307BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/3417
C08L63/00 C
C08K5/17
C08K5/3445
C08K5/49
C08K3/013
C08K5/10
C08K3/36
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140179
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 さやか
(72)【発明者】
【氏名】北條 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 奨
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸平
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CD001
4J002CD021
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002DE148
4J002DJ018
4J002EA007
4J002EA017
4J002EA057
4J002EF129
4J002EH019
4J002ER009
4J002EU026
4J002EU117
4J002EU239
4J002EW007
4J002EW137
4J002EW177
4J002FD018
4J002FD149
4J002FD157
4J002FD206
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】比較的低い温度でも良好に硬化させることができる樹脂材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂材料は、下記式(1)で表される構造を有するイミド化合物Xと、硬化性化合物と、硬化促進剤とを含む。
前記式(1)中、*は、結合位置を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有するイミド化合物Xと、硬化性化合物と、硬化促進剤とを含む、樹脂材料。
【化1】
前記式(1)中、*は、結合位置を表す。
【請求項2】
前記イミド化合物Xが、下記式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の樹脂材料。
【化2】
前記式(2)中、R
1は、任意の基を表す。
【請求項3】
前記イミド化合物Xが、下記式(21)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【化3】
前記式(21)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、脂肪族ジアミン残基又は芳香族ジアミン残基を表し、R
3は、酸二無水物残基を表し、nは0又は1以上の整数を表す。
【請求項4】
前記硬化性化合物が、エポキシ化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項5】
前記エポキシ化合物が、25℃で液状のエポキシ化合物を含む、請求項4に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記硬化促進剤が、アミン化合物、イミダゾール化合物、又は有機リン化合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項7】
無機充填材をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項8】
前記無機充填材が、シリカである、請求項7に記載の樹脂材料。
【請求項9】
硬化剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項10】
前記硬化剤が、活性エステル化合物を含む、請求項9に記載の樹脂材料。
【請求項11】
示差走査熱量測定を行ったときに、200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項12】
硬化物の、銅箔に対する初期接着力が3N/cm以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項13】
樹脂フィルムである、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項14】
接着材料である、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項15】
層間絶縁材料である、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物。
【請求項17】
回路基板と、
前記回路基板の表面上に配置された絶縁層とを備え、
前記絶縁層が、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、絶縁層付き回路基板。
【請求項18】
回路基板と、
前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、
複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、
複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミド化合物を含む樹脂材料に関する。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物に関する。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた絶縁層付き回路基板及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂材料が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂材料が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、上記絶縁層を形成するために、フィルム状の樹脂材料(樹脂フィルム)が用いられることがある。上記樹脂材料は、ビルドアップフィルムを含む多層プリント配線板用の絶縁材料等として用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、三重結合を有する官能基と特定の繰り返し構造単位とを有するポリイミドが開示されている。また、特許文献1には、上記ポリイミドと硬化剤とを含む印刷用組成物を基材等に印刷した後、該印刷用組成物を乾燥させることにより、絶縁膜を形成可能であることが記載されている。
【0004】
下記の特許文献2には、特定の化学構造式で表される三重結合を有する硬化性イミド化合物が開示されている。また、特許文献2には、上記硬化性イミド化合物とエポキシ化合物とを含む硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/093310A1
【特許文献2】特開2014-080494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
三重結合を有するイミド化合物と硬化性化合物(例えばエポキシ化合物)とを含む樹脂材料を硬化させることにより、耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
【0007】
しかしながら、三重結合を有するイミド化合物と硬化性化合物とを含む従来の樹脂材料は、比較的高い温度で加熱しなければ、良好に硬化させることができない。
【0008】
本発明の目的は、比較的低い温度でも良好に硬化させることができる樹脂材料を提供することである。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物を提供することも目的とする。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた絶縁層付き回路基板及び多層プリント配線板を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、下記式(1)で表される構造を有するイミド化合物Xと、硬化性化合物と、硬化促進剤とを含む、樹脂材料が提供される。
【0010】
【0011】
前記式(1)中、*は、結合位置を表す。
【0012】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記イミド化合物Xが、下記式(2)で表される化合物である。
【0013】
【0014】
前記式(2)中、R1は、任意の基を表す。
【0015】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記イミド化合物Xが、下記式(21)で表される化合物である。
【0016】
【0017】
前記式(21)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、脂肪族ジアミン残基又は芳香族ジアミン残基を表し、R3は、酸二無水物残基を表し、nは0又は1以上の整数を表す。
【0018】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記硬化性化合物が、エポキシ化合物を含む。
【0019】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記エポキシ化合物が、25℃で液状のエポキシ化合物を含む。
【0020】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記硬化促進剤が、アミン化合物、イミダゾール化合物、又は有機リン化合物を含む。
【0021】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、無機充填材をさらに含む。
【0022】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記無機充填材が、シリカである。
【0023】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、硬化剤をさらに含む。
【0024】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記硬化剤が、活性エステル化合物を含む。
【0025】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、示差走査熱量測定を行ったときに、200℃以下に発熱ピークトップ温度を有する。
【0026】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、硬化物の、銅箔に対する初期接着力が3N/cm以上である。
【0027】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、樹脂フィルムである。
【0028】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、接着材料である。
【0029】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、層間絶縁材料である。
【0030】
本発明の広い局面によれば、上述した樹脂材料の硬化物が提供される。
【0031】
本発明の広い局面によれば、回路基板と、前記回路基板の表面上に配置された絶縁層とを備え、前記絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である、絶縁層付き回路基板が提供される。
【0032】
本発明の広い局面によれば、回路基板と、前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る樹脂材料は、式(1)で表される構造を有するイミド化合物Xと、硬化性化合物と、硬化促進剤とを含むので、比較的低い温度でも良好に硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0036】
(樹脂材料)
本発明に係る樹脂材料は、下記式(1)で表される構造を有するイミド化合物Xと、硬化性化合物と、硬化促進剤とを含む。
【0037】
【0038】
上記式(1)中、*は、結合位置を表す。
【0039】
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、比較的低い温度でも良好に硬化させることができる。
【0040】
三重結合を有するイミド化合物と硬化性化合物(例えばエポキシ化合物)とを含む従来の樹脂材料は、比較的高い温度で加熱しなければ、良好に硬化させることができない。なお、三重結合を有するイミド化合物と硬化性化合物とを含む従来の樹脂材料を比較的低い温度で加熱した場合には、硬化反応が十分に進行しないため、所望の性能(例えば耐熱性、接着力等)を発揮する硬化物が得られにくい。
【0041】
これに対して、本発明に係る樹脂材料では、三重結合を有するイミド化合物(イミド化合物X)と硬化性化合物と硬化促進剤とが組み合わせて用いられており、かつ、イミド化合物Xが特定の構造を有するので、比較的低い温度でも良好に硬化させることができる。すなわち、本発明に係る樹脂材料は、低温硬化性に優れる。また、本発明に係る樹脂材料では、該樹脂材料を比較的低い温度で加熱して得られる硬化物において、耐熱性及び接着力を高めることができる。
【0042】
さらに、本発明に係る樹脂材料では、硬化物において、熱寸法安定性及び誘電特性を高めることができるので、樹脂材料をこれらの性能が求められる用途(例えばプリント配線板用途等)に好適に用いることができる。
【0043】
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0044】
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性樹脂材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0045】
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
【0046】
なお、以下の説明において、「樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%」とは、上記樹脂材料が無機充填材と溶剤とを含む場合に、「樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%」を意味する。「樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%」とは、上記樹脂材料が無機充填材を含みかつ溶剤を含まない場合に、「樹脂材料中の無機充填材を除く成分100重量%」を意味する。「樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%」とは、上記樹脂材料が無機充填材を含まずかつ溶剤を含む場合に、「樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%」を意味する。「樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%」とは、上記樹脂材料が無機充填と溶剤とを含まない場合に、「樹脂材料100重量%」を意味する。「樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%」とは、上記樹脂材料が溶剤を含む場合に、「樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%」を意味する。「樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%」とは、上記樹脂材料が溶剤を含まない場合に、「樹脂材料100重量%」を意味する。
【0047】
[イミド化合物X]
上記樹脂材料は、イミド化合物Xを含む。上記イミド化合物Xは、下記式(1)で表される構造を有するイミド化合物である。下記式(1)で表される構造は、例えば、フェニルエチニルトリメリット酸無水物(PETA)に由来する構造である。上記イミド化合物Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
【0049】
上記式(1)中、*は、結合位置を表す。
【0050】
上記イミド化合物Xは、上記式(1)で表される構造を1個有していてもよく、2個有していてもよく、2個以上有していてもよく、10個以下有していてよく、5個以下有していてもよい。
【0051】
上記イミド化合物Xは、上記式(1)で表される構造を2個有することが好ましい。上記イミド化合物Xは、上記式(1)で表される構造を両末端に有することが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性をより一層高めることができる。
【0052】
上記イミド化合物Xは、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性をより一層高めることができる。
【0053】
【0054】
上記式(2)中、R1は、任意の基を表す。
【0055】
上記イミド化合物Xは、下記式(21)で表される化合物であることが好ましい。この場合には、本発明の効果を更により一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性を更により一層高めることができる。
【0056】
【0057】
上記式(21)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、脂肪族ジアミン残基又は芳香族ジアミン残基を表し、R3は、酸二無水物残基を表し、nは0又は1以上の整数を表す。
【0058】
上記式(21)中、R1とR2とは、同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。上記式(21)中のnが2以上の場合、複数のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記式(21)中のnが2以上の場合、複数のR3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0059】
上記式(21)中のR1及びR2における上記脂肪族ジアミン残基の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上、好ましくは60以下、より好ましくは50以下である。上記炭素数が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性をより一層高めることができる。
【0060】
上記脂肪族ジアミン残基は、直鎖状であってもよく、分岐構造を有していてもよい。
【0061】
上記脂肪族ジアミン残基の由来となる脂肪族ジアミン化合物としては、ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミン化合物、直鎖又は分岐鎖脂肪族ジアミン化合物、脂肪族エーテルジアミン化合物、及び脂肪族脂環式ジアミン化合物等が挙げられる。
【0062】
上記ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミン化合物としては、ダイマージアミン、水添型ダイマージアミン等が挙げられる。上記直鎖又は分岐鎖脂肪族ジアミン化合物としては、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,9-ノナンジアミン、及び2,7-ジメチル-1,8-オクタンジアミン等が挙げられる。上記脂肪族エーテルジアミン化合物としては、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、3,3’-オキシビス(プロピルアミン)、及び1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン等が挙げられる。上記脂肪族脂環式ジアミン化合物としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、及びイソホロンジアミン等が挙げられる。
【0063】
上記脂肪族ジアミン残基は、ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基であることが好ましい。
【0064】
上記式(21)中のR1及びR2における上記芳香族ジアミン残基は、下記式(21A)又は下記式(21B)で表される2価の基であることが好ましい。
【0065】
【0066】
上記式(21A)及び上記式(21B)中、*は、結合位置を表す。上記式(21A)中、Zは、結合手、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。
【0067】
上記式(21A)及び上記式(21B)中の芳香環の水素原子は置換されていてもよい。
【0068】
上記式(21A)中のZが、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である場合、これらの基は、置換されていてもよい。この場合の置換基としては、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、脂環式基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0069】
上記式(21)中のR3における上記酸二無水物残基は、芳香環を1個又は2個有する4価の基であることが好ましく、下記式(21C)又は下記式(21D)で表される4価の基であることがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性をより一層高めることができる。
【0070】
【0071】
上記式(21C)及び上記式(21D)中、*は、結合位置を表す。上記式(21C)中、Zは、結合手、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。
【0072】
上記式(21C)及び上記式(21D)中の芳香環の水素原子は置換されていてもよい。
【0073】
上記式(21C)中のZが、結合位置に酸素原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の炭化水素基、又は、結合位置に酸素原子を有していてもよい芳香環を有する2価の基である場合、これらの基は、置換されていてもよい。この場合の置換基としては、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、脂環式基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0074】
上記式(21)中、nは、0であってもよく、1以上であってもよい。上記式(21)中、nは、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である。nが上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性をより一層高めることができる。
【0075】
上記イミド化合物Xの分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下である。上記分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性をより一層高めることができる。
【0076】
上記イミド化合物Xの分子量は、上記イミド化合物Xが重合体ではない場合、及び上記イミド化合物Xの構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記イミド化合物Xが重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0077】
上記イミド化合物Xは、例えば、フェニルエチニルトリメリット酸無水物とアミン化合物とを反応させて得ることができる。
【0078】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記イミド化合物Xの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。上記イミド化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硬化物の耐熱性、接着力、熱寸法安定性及び誘電特性をより一層高めることができる。
【0079】
[硬化性化合物]
上記樹脂材料は、硬化性化合物を含む。上記硬化性化合物は、上記式(1)で表される構造を有するイミド化合物(イミド化合物X)とは異なる硬化性化合物である。上記硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記硬化性化合物は、熱硬化性化合物を含むことが好ましく、熱硬化性化合物であることがより好ましい。
【0081】
上記硬化性化合物としては、エポキシ化合物、ビニル化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、マレイミド化合物、シアネート化合物、ポリアリレート化合物、ジアリルフタレート化合物、エピスルフィド化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0082】
上記硬化性化合物は、エポキシ化合物、マレイミド化合物又はシアネート化合物を含むことが好ましく、エポキシ化合物を含むことがより好ましく、エポキシ化合物であることが更に好ましい。この場合には、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができ、かつ硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0083】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0084】
上記エポキシ化合物は、グリシジルエーテル化合物であってもよい。上記グリシジルエーテル化合物とは、グリシジルエーテル基を少なくとも1個有する化合物である。
【0085】
上記エポキシ化合物は、芳香環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことがより好ましく、芳香環を有するエポキシ化合物であることがさらに好ましい。この場合には、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができ、かつ硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0086】
硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物を含むことが好ましく、25℃で液状のエポキシ化合物と25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことがより好ましい。
【0087】
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
【0088】
上記エポキシ化合物の粘度は、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR-100」)等を用いて測定することができる。
【0089】
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂材料の未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させやすくなる。
【0090】
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0091】
上記硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、50重量%以上であってもよく、60重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよく、80重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよく、100重量%以下であってもよく、100重量%未満であってもよい。
【0092】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0093】
上記樹脂材料において、上記エポキシ化合物の含有量の、上記イミド化合物Xの含有量に対する重量比(エポキシ化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは0.9以上、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは5以下である。上記重量比(エポキシ化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)が上記下限以上であると、硬化物の接着力をより一層高めることができる。上記重量比(エポキシ化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)が上記上限以下であると、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。上記重量比(エポキシ化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0094】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化性化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記硬化性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0095】
上記樹脂材料において、上記硬化性化合物の含有量の、上記イミド化合物Xの含有量に対する重量比(硬化性化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは0.9以上、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは5以下である。上記重量比(硬化性化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)が上記下限以上であると、硬化物の接着力をより一層高めることができる。上記重量比(硬化性化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)が上記上限以下であると、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。上記重量比(硬化性化合物の含有量/イミド化合物Xの含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0096】
[硬化促進剤]
上記樹脂材料は、硬化促進剤を含む。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。また、上記硬化促進剤の使用により、樹脂材料を比較的低い温度でも良好に硬化させることができる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0097】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤;アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤;有機リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤;過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
【0098】
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0099】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、m-キシリレンジ(ジメチルアミン)、N、N’-ジメチルピペラジン、N-メチルピロリジン、N-メチルハイドロオキシピペリジン、m-キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ポリオキシプロピレンポリアミン、及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。また、アミン化合物は、これらのアミン化合物の変性品であってもよい。
【0100】
上記有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、及びアルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン化合物、並びに、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0101】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0102】
上記過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジベンジルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、及びケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0103】
上記硬化促進剤は、アミン化合物、イミダゾール化合物、又は有機リン化合物を含むことが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0104】
上記樹脂材料において、上記イミド化合物Xと上記硬化性化合物との合計含有量100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0105】
[無機充填材]
上記樹脂材料は、無機充填材を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、無機充填材を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂材料は、無機充填材を含むことが好ましい。上記無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、上記無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0106】
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ダイヤモンド、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0107】
上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くすることができる。また、硬化物の表面に微細な配線を形成することができ、硬化物により良好な絶縁信頼性を付与することができる。上記無機充填材がシリカである場合には、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。なお、上記シリカは、中空シリカであってもよい。
【0108】
熱伝導率を高め、かつ絶縁性を高める観点からは、上記無機充填材は、アルミナ又は窒化ホウ素であることが好ましい。特に、窒化ホウ素は異方性を有するため、熱線膨張係数をより一層小さくすることができる。
【0109】
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは500nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
【0110】
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。なお、無機充填材が凝集粒子の場合には、無機充填材の平均粒径は、一次粒子径を意味する。
【0111】
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0112】
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。上記無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
【0113】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0114】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、熱寸法安定性を高め、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
【0115】
[硬化剤]
上記樹脂材料は、硬化剤を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、硬化剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂材料は、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0116】
上記硬化剤としては、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサジン硬化剤)、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、及び酸無水物等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0117】
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、活性エステル化合物、シアネートエステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、カルボジイミド化合物、又は酸無水物を含むことが好ましい。硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、活性エステル化合物、シアネートエステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、又はカルボジイミド化合物を含むことがより好ましく、活性エステル化合物を含むことが更に好ましい。
【0118】
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記硬化性化合物がエポキシ化合物を含み、上記硬化剤が活性エステル化合物を含むことが好ましい。
【0119】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0120】
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA-1356」及び「LA-3018-50P」)等が挙げられる。
【0121】
上記活性エステル化合物とは、エステル結合を少なくとも1個有し、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香環が結合している化合物をいう。上記活性エステル化合物は、例えば、カルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。上記活性エステル化合物としては、下記式(A)で表される化合物等が挙げられる。
【0122】
【0123】
上記式(A)中、X1は、脂肪族鎖を有する基、脂肪族環を有する基又は芳香環を有する基を表し、X2は、芳香環を有する基を表す。上記芳香環を有する基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0124】
上記式(A)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、上記式(A)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
【0125】
上記活性エステル化合物は特に限定されない。硬化物の熱寸法安定性及び難燃性をより一層高める観点からは、上記活性エステル化合物は、2個以上の芳香環を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点から、上記活性エステル化合物は、主鎖骨格中にナフタレン環、又はジシクロペンタジエン骨格を有することがより好ましい。
【0126】
上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」及び「EXB8100-65T」等が挙げられる。
【0127】
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0128】
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、並びにビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
【0129】
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P-d型ベンゾオキサジン、及びF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
【0130】
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P-d型」、JFEケミカル社製「ODA-BOZ」等が挙げられる。
【0131】
上記カルボジイミド化合物は、下記式(C)で表される構造単位を有する化合物である。下記式(C)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0132】
【0133】
上記式(C)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0134】
好適な一つの形態において、上記式(C)中、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
【0135】
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V-02B」、「カルボジライト V-03」、「カルボジライト V-04K」、「カルボジライト V-07」、「カルボジライト V-09」、「カルボジライト 10M-SP」、及び「カルボジライト 10M-SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0136】
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0137】
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA-100」等が挙げられる。
【0138】
上記樹脂材料において、上記イミド化合物Xと上記硬化性化合物との合計含有量100重量部に対して、上記硬化剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、好ましくは120重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。上記硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
【0139】
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0140】
ハンドリング性を高める観点及び硬化物の耐熱性を高める観点から、上記熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂であることが好ましく、ポリイミド樹脂であることがより好ましい。上記樹脂材料は、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂を含むことが好ましく、ポリイミド樹脂を含むことがより好ましい。
【0141】
上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
【0142】
上記熱可塑性樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0143】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0144】
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、溶剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0145】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0146】
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0147】
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0148】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、有機充填材、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、及び揺変性付与剤等を含んでいてもよい。
【0149】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0150】
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
【0151】
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0152】
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
【0153】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0154】
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
【0155】
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は基材フィルムの表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
【0156】
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0157】
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0158】
(樹脂材料の他の詳細)
上記樹脂材料は、示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、200℃以下に発熱ピークトップ温度を有することが好ましく、195℃以下に発熱ピークトップ温度を有することがより好ましく、190℃以下に発熱ピークトップ温度を有することが更に好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。なお、上記樹脂材料が発熱ピークを複数有する場合、「T℃以下に発熱ピークトップ温度を有する」とは、少なくとも1つの発熱ピークのピークトップ温度がT℃以下であることを意味する。
【0159】
上記示差走査熱量測定は、示差走査熱量計を用いて、上記樹脂材料を10℃/分の昇温速度で加熱して、30℃から350℃まで昇温することにより測定される。上記示差走査熱量計としては、例えば、日立ハイテクサイエンス社製「EXTEAR DSC6100」等が挙げられる。
【0160】
上記樹脂材料では、硬化物の、銅箔に対する初期接着力が1N/cm以上であることが好ましく、3N/cm以上であることがより好ましく、3.5N/cm以上であることが更に好ましい。上記初期接着力が上記下限以上であると、上記樹脂材料を接着材料及び層間絶縁材料等として好適に用いることができる。上記初期接着力は、15N/cm以下であってもよく、10N/cm以下であってもよい。
【0161】
上記硬化物の、銅箔に対する初期接着力は、以下のようにして測定される。厚さ40μmの樹脂フィルム(樹脂材料)の両面に、厚さ35μmの銅箔を積層し、積層体(1)を得る。得られた積層体(1)を180℃で30分間加熱して仮硬化させた後、200℃で90分間加熱して、銅箔の間に配置された樹脂フィルムを硬化させ、積層体(2)を得る。積層体(2)を1cm幅に切り出して、測定サンプルを得る。上記積層体(2)を作製してから24時間以内に上記測定サンプルについて、引張試験機を用いて、25℃及び剥離速度20mm/minの条件でT字剥離を行ったときの剥離強度を測定し、得られた剥離強度を初期接着力とする。なお、上記銅箔としては、例えば、福田金属箔粉工業社製「UNシリーズ」等が挙げられる。この市販品では、銅箔の光沢面側を樹脂フィルムと接着される側の表面として用いることができる。上記引張試験機としては、例えば、ORIENTEC社製「UCT-500」等が挙げられる。
【0162】
上記樹脂材料では、硬化物のガラス転移温度が、120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。上記ガラス転移温度が上記下限以上であると、硬化物の機械的強度及び長期耐熱性をより一層高めることができる。上記硬化物のガラス転移温度は、350℃以下であってもよく、300℃以下であってもよく、250℃以下であってもよい。
【0163】
上記硬化物のガラス転移温度は、以下のようにして測定される。厚さ400μmの樹脂フィルム(樹脂材料)を180℃で30分間加熱して仮硬化させた後、200℃で90分間加熱して硬化物を得る。得られた硬化物について、動的粘弾性測定装置を用い、昇温速度10℃/分、周波数10Hz、チャック間距離24mmで0℃から300℃までの昇温条件で測定した際に得られるtanδカーブのピーク温度を、上記ガラス転移温度とする。上記動的粘弾性測定装置としては、例えば、日立ハイテクサイエンス社製「DMS6100」を用いることができる。なお、樹脂フィルムの厚さが400μm未満の場合は、複数枚の樹脂フィルムを積層するなどして、厚さ400μmの樹脂フィルムを得てもよい。
【0164】
上記樹脂材料は、様々な用途に用いることができる。上記樹脂材料は、例えば、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。また、上記樹脂材料は、液晶ポリマー(LCP)の代替用途、ミリ波アンテナ用途、再配線層用途に好適に用いられる。上記樹脂材料は、上記用途に限られず、配線形成用途全般に好適に用いられる。
【0165】
上記樹脂材料は、接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、例えば、パワーオーバーレイパッケージ用接着材料、プリント配線基板用接着材料、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着材料、半導体接合用接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、接着材料であることが好ましい。
【0166】
上記樹脂材料は、絶縁材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられ、多層プリント配線板において絶縁層を形成するためにより好適に用いられる。上記樹脂材料は、絶縁材料であることが好ましく、層間絶縁材料であることがより好ましい。上記絶縁材料は、接着材料としての役割も備え得る。
【0167】
本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料が硬化された樹脂材料の硬化物である。本発明に係る硬化物は、樹脂材料の硬化物であって、該樹脂材料が上述した樹脂材料である。本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料を硬化させることにより得ることができる。本発明に係る硬化物を得る際の、上記樹脂材料の加熱条件は、樹脂材料が硬化する限り、特に限定されない。
【0168】
(積層構造体及び銅張積層板)
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層することにより、積層構造体を得ることができる。上記積層構造体は、金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である。上記樹脂フィルムと上記積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、上記積層対象部材に積層可能である。
【0169】
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
【0170】
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
【0171】
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である、銅張積層板が挙げられる。
【0172】
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0173】
(絶縁層付き回路基板)
上記樹脂材料は、絶縁層付き回路基板を得るために好適に用いられる。上記絶縁層付き回路基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に配置された絶縁層とを備え、上記絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である絶縁層付き回路基板が挙げられる。
【0174】
上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0175】
上記絶縁層付き回路基板は、従来公知の方法により得ることができる。
【0176】
(多層基板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記多層基板の絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である。上記絶縁層は、回路基板の回路(金属層)が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0177】
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
【0178】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0179】
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0180】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0181】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0182】
上記樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0183】
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記多層プリント配線板では、上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である。
【0184】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【0185】
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0186】
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0187】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0188】
以下の材料を用意した。
【0189】
(イミド化合物X)
イミド化合物X1:
以下の合成例X1に従って、下記式(X1)で表されるイミド化合物X1(分子量810)を合成した。
【0190】
<合成例X1>
撹拌機、分水器、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器内で、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン10.0重量部とフェニルエチニルトリメリット酸無水物20.8重量部とをN-メチルピロリドン70重量部に溶解させた。得られた溶液を室温で24時間撹拌したのち、この溶液にピリジン10.8重量部と無水酢酸14.0重量部とを加えてさらに15分撹拌した。得られた溶液をメタノール300mLに加え、析出した固体を回収した。回収した固体を40℃の減圧オーブンで24時間乾燥させ、下記式(X1)で表されるイミド化合物X1を得た。
【0191】
【0192】
イミド化合物X2:
以下の合成例X2に従って、下記式(X2)で表されるイミド化合物X2(分子量820)を合成した。
【0193】
<合成例X2>
撹拌機、分水器、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器内で、ジブロモヘキサン10重量部とヒドロキシアセトアニリド14.8重量部と炭酸カリウム25.5重量部とをアセトン80重量部に溶解させた。得られた溶液を還流下で24時間撹拌した。次いで、溶液を水200mLに加え、析出した固体を回収した。また、水60mLとエタノール60mLとの混合溶媒に水酸化ナトリウム8.2重量部を溶解させた液を作製した。この液を、回収した固体に添加し、還流下で24時間撹拌した。得られた溶液を水200mLに加え、析出した固体を回収した。回収した固体を40℃の減圧オーブンで24時間乾燥させ、下記式(MA)で表されるアミン化合物MAを得た。
【0194】
【0195】
次いで、撹拌機、分水器、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器内で、アミン化合物MA10重量部とフェニルエチニルトリメリット酸無水物20.2重量部とをN-メチルピロリドン70重量部に溶解させた。得られた溶液を室温で24時間撹拌したのち、この溶液にピリジン10.5重量部と無水酢酸13.6重量部とを加えてさらに15分撹拌した。得られた溶液をメタノール300mLに加え、析出した固体を回収した。回収した固体を40℃の減圧オーブンで24時間乾燥させ、下記式(X2)で表されるイミド化合物X2を得た。
【0196】
【0197】
イミド化合物X3:
以下の合成例X3に従って、下記式(X3)で表されるイミド化合物X3(分子量8600)を合成した。
【0198】
<合成例X3>
撹拌機、分水器、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器内で、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物52.0重量部とシクロヘキサノン200重量部とを溶解した。得られた溶液に、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン32.1重量部を加え、150℃で6時間撹拌した。次いで、溶液に、フェニルエチニルトリメリット酸無水物5.5重量部を加え、3時間撹拌した。この反応中に発生した水分を除去し、イミド化反応を行った。得られた溶液をメタノール400mLに加え、析出した固体を回収した。回収した固体を40℃の減圧オーブンで24時間乾燥させ、下記式(X3)で表されるイミド化合物X3を得た。
【0199】
【0200】
上記式(X3)中、Xは下記式(X31)で表される基を表す。
【0201】
【0202】
(硬化性化合物)
イミド化合物Y1:
以下の合成例Y1に従って、下記式(Y1)で表されるイミド化合物Y1(分子量750)を合成した。
【0203】
<合成例Y1>
フェニルエチニルトリメリット酸無水物20.8重量部に変えて、フェニルエチニルフタル酸無水物18.7重量部を用いたこと以外は合成例X1と同様にして、下記式(Y1)で表されるイミド化合物Y1を得た。
【0204】
【0205】
フェニルエチニルトリメリット酸無水物(ネクサム社製「NEXIMID300」)
ビスフェノールF型エポキシ化合物(DIC社製「EXA-830CRP」、25℃で液状)
ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC3000」、25℃で固体)
【0206】
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(2-エチル-4-メチルイミダゾール)
有機リン化合物(トリフェニルホスフィン)
【0207】
(硬化剤)
活性エステル化合物含有液(DIC社製「HPC-8000-65T」、固形分65重量%)
【0208】
(無機充填材)
シリカ含有スラリー(シリカ75重量%:アドマテックス社製「SC4050-HOA」、平均粒径1.0μm、アミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
【0209】
(熱可塑性樹脂)
ポリイミド樹脂含有液(テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとの反応物を含むポリイミド樹脂含有液(不揮発分26.8重量%)、以下の合成例Tに従って合成)
【0210】
<合成例T>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン合同会社製「BisDA-1000」)300.0gと、シクロヘキサノン665.5gとを入れ、反応容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、反応容器中に、ダイマージアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE1075」)89.0gと、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製)54.7gとを滴下した。次いで、反応容器中に、メチルシクロヘキサン121.0gと、エチレングリコールジメチルエーテル423.5gとを添加し、140℃で10時間かけてイミド化反応を行った。このようにして、ポリイミド化合物含有溶液(不揮発分26.8重量%)を得た。得られたポリイミド化合物の分子量(重量平均分子量)は20000であった。なお、酸成分/アミン成分のモル比は1.04であった。
【0211】
上記イミド化合物及び上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、以下のようにして求めた。
【0212】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
島津製作所社製高速液体クロマトグラフシステムを使用し、テトラヒドロフラン(THF)を展開媒として、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定を行った。検出器として「SPD-10A」を用い、カラムはShodex社製「KF-804L」(排除限界分子量400,000)を2本直列につないで使用した。標準ポリスチレンとして、東ソー社製「TSKスタンダードポリスチレン」を用い、重量平均分子量Mw=354,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,050、500の物質を使用して較正曲線を作成し、分子量の計算を行った。
【0213】
(実施例1~12及び比較例1~6)
下記の表1~4に示す成分を下記の表1~4に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で撹拌し、樹脂材料を得た。
【0214】
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
【0215】
(1)樹脂材料の低温硬化性
(1-1)硬化温度(発熱ピークトップ温度)
示差走査熱量測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「EXTEAR DSC6100」)を用いて、得られた厚さ40μmの樹脂フィルムを10mg秤取し、10℃/分の昇温速度で30℃から350℃まで昇温することにより、発熱ピークの測定を行った。硬化温度を以下の基準で評価した。
【0216】
[硬化温度の判定基準]
○:発熱ピークトップ温度が200℃以下
△:発熱ピークトップ温度が200℃を超え300℃以下
×:発熱ピークトップ温度が300℃を超える又は発熱ピークが観察されない
【0217】
(1-2)硬化反応率(加熱条件:190℃及び1時間)
上記「(1-1)硬化温度(発熱ピークトップ温度)」の測定で得られた樹脂フィルムの発熱ピークのピーク面積から発熱量を求めた。また、得られた厚さ40μmの樹脂フィルムを190℃で1時間加熱して、硬化物を得た。この硬化物について、上記「(1-1)硬化温度(発熱ピークトップ温度)」に記載の条件で発熱ピークの測定を行った。得られた硬化物の発熱ピークのピーク面積から発熱量を求めた。硬化反応率を下記式により求め、以下の基準で評価した。
【0218】
硬化反応率(%)=(A-B)/A×100
A:樹脂フィルムの発熱ピークのピーク面積から求めた発熱量
B:硬化物の発熱ピークのピーク面積から求めた発熱量
【0219】
[硬化反応率の判定基準]
○:硬化反応率が95%以上
△:硬化反応率が90%以上95%以下
×:硬化反応率が90%未満
【0220】
(2)硬化物の耐熱性
(2-1)硬化物のガラス転移温度
得られた厚さ40μmの樹脂フィルムを積層して、厚さ400μmの樹脂フィルムを得た。得られた厚さ400μmの樹脂フィルムを180℃で30分間加熱して仮硬化させた後、200℃で90分間加熱して硬化物を得た。得られた硬化物について、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「DMS6100」)を用い、昇温速度10℃/分、周波数10Hz、チャック間距離24mmで0℃から300℃までの昇温条件で測定した。得られたtanδカーブのピーク温度をガラス転移温度とした。ガラス転移温度を以下の基準で評価した。
【0221】
[硬化物のガラス転移温度の判定基準]
○:ガラス転移温度が150℃以上
△:ガラス転移温度が120℃以上150℃未満
×:ガラス転移温度が120℃未満
【0222】
(2-2)硬化物の耐熱分解性(5%重量減少温度)
上記「(2-1)硬化物のガラス転移温度」に記載の方法に従って、樹脂フィルムの硬化物を得た。得られた硬化物について、熱重量測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「TG/DTA6200」)を用いて、30℃~500℃の温度範囲及び10℃/分の昇温条件で5%重量減少温度を測定した。硬化物の耐熱分解性を以下の基準で評価した。
【0223】
[硬化物の耐熱分解性の判定基準]
○○:5%重量減少温度が350℃以上
○:5%重量減少温度が330℃以上350℃未満
△:5%重量減少温度が300℃以上330℃未満
×:5%重量減少温度が300℃未満
【0224】
(3)硬化物の銅箔に対する初期接着力
得られた厚さ40μmの樹脂フィルムの両面に、厚さ35μmの銅箔を積層し、積層体(1)を得た。積層体(1)を180℃で30分間加熱して仮硬化させた後、200℃で90分間加熱して、銅箔の間に配置された樹脂フィルムを硬化させ、積層体(2)を得た。積層体(2)を1cm幅に切り出して、測定サンプルを得た。上記積層体(2)を作製してから24時間以内に上記測定サンプルについて、引張試験機(ORIENTEC社製「UCT-500」)を用いて、25℃及び剥離速度20mm/minの条件でT字剥離を行ったときの剥離強度を測定し、得られた剥離強度を初期接着力とした。なお、上記銅箔として、福田金属箔粉工業社製「UNシリーズ」を用いた。積層体(1)の作製時には、この市販品の光沢面側を樹脂フィルムと接着される側の表面として用いた。硬化物の銅箔に対する初期接着力を以下の基準で評価した。
【0225】
[硬化物の銅箔に対する初期接着力の判定基準]
○:初期接着力が3N/cm以上
△:初期接着力が1N/cm以上3N/cm未満
×:初期接着力が1N/cm未満
【0226】
(4)硬化物の熱寸法安定性
得られた厚さ40μmの樹脂フィルムを180℃で30分間加熱して仮硬化させた後、200℃で90分間加熱して硬化物を得た。得られた硬化物を3mm×25mmの大きさに裁断した。熱機械的分析装置(日立ハイテクサイエンス社製「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、引っ張り荷重33mN及び昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物の25℃~150℃までの平均線膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0227】
[硬化物の熱寸法安定性の判定基準]
○○:平均線膨張係数が23ppm/℃以下
○:平均線膨張係数が23ppm/℃超え30ppm/℃以下
×:平均線膨張係数が30ppm/℃を超える
【0228】
組成及び結果を下記の表1~4に示す。なお、「(3)硬化物の銅箔に対する初期接着力」の評価は、実施例1~6及び比較例1~4で得られた樹脂フィルムで行った。また、「(4)硬化物の熱寸法安定性」の評価は、実施例7~12及び比較例5,6で得られた樹脂フィルムで行った。
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【符号の説明】
【0233】
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層