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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003564
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】穀物収穫システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/02 20060101AFI20240105BHJP
   A01D 41/02 20060101ALI20240105BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A01D69/02
A01D41/02 B
A01D41/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102783
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】増田 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 学
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】有村 浪漫
(72)【発明者】
【氏名】北川 智志
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
【Fターム(参考)】
2B074AB01
2B074AC02
2B074BA16
2B074BA19
2B074DF07
2B074GB01
2B076AA03
2B076DA19
(57)【要約】
【課題】穀物収穫機による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る穀物収穫システムは、穀物収穫機と、収穫コンテナと、運搬車両と、電動機と、バッテリとを備える。穀物収穫機は、走行装置、刈取装置、脱穀装置、グレンタンク、搬送オーガおよび排出オーガを有する。収穫コンテナは、排出オーガから排出される穀粒を収容する。運搬車両は、収穫コンテナが積載された車両である。電動機は、搬送オーガおよび排出オーガを少なくとも駆動する。バッテリは、電動機へ電源供給する。走行装置、刈取装置および脱穀装置は、穀物収穫機に搭載されたエンジンまたは電動機で駆動する。電動機は、穀物収穫機また収穫コンテナに搭載される。バッテリは、収穫コンテナまたは運搬車両に搭載され、排出オーガによる穀粒の排出時に電動機へ電源供給する外部バッテリを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内を走行可能な走行装置と、前記圃場に植立している穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀装置と、脱穀した穀粒を貯留するグレンタンクと、貯留した穀粒を搬送する搬送オーガと、搬送した穀粒を機外へと排出する排出オーガとを有する穀物収穫機と、
前記排出オーガから排出される穀粒を受け、受けた穀粒を収容する収穫コンテナと、
前記収穫コンテナが積載された運搬車両と、
前記搬送オーガおよび前記排出オーガを少なくとも駆動する電動機と、
前記電動機へ電源供給するバッテリと
を備え、
前記走行装置、前記刈取装置および前記脱穀装置は、前記穀物収穫機に搭載されたエンジンまたは前記電動機で駆動し、
前記電動機は、前記穀物収穫機また前記収穫コンテナに搭載され、
前記バッテリは、前記収穫コンテナまたは前記運搬車両に搭載され、前記排出オーガによる穀粒の排出時に前記電動機へ電源供給する外部バッテリを有すること
を特徴とする穀物収穫システム。
【請求項2】
前記走行装置、前記刈取装置および前記脱穀装置は、前記穀物収穫機に搭載された前記エンジンで駆動し、
前記電動機は、前記収穫コンテナに搭載されること
を特徴とする請求項1に記載の穀物収穫システム。
【請求項3】
前記排出オーガは、穀粒をラセン搬送するための回転軸を有し、
前記電動機は、前記回転軸に出力軸が連結されることで前記排出オーガを駆動し、
前記電動機は、外扇をさらに有すること
を特徴とする請求項2に記載の穀物収穫システム。
【請求項4】
前記収穫コンテナに前記電動機を固定する固定部を備え、
前記固定部は、前記収穫コンテナの上方において該収穫コンテナの上縁に沿ってスライド移動可能かつ回転可能に設けられ、前記排出オーガの動きに応じて該排出オーガに連結された前記電動機を追従させること
を特徴とする請求項3に記載の穀物収穫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物収穫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場内を走行しながら圃場に植立している穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した穀粒を貯留し、貯留した穀粒を排出オーガで機外へ排出する穀物収穫機には、たとえば、穀物収穫機に搭載された電動機で排出オーガを駆動するものや、たとえば、排出オーガを駆動するために、排出オーガから排出される穀粒の流れから回生エネルギーを得るための電動機(発電機)が穀物収穫機に搭載されたものがある(たとえば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-154811号公報
【特許文献2】特開2010-273622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の穀物収穫機は、穀物収穫機自体に電動機(発電機)およびバッテリが搭載されているため、バッテリが不足すると、エンジンで排出オーガを駆動することから燃料を消費してしまい、穀物収穫機による連続作業時間が短くなり、たとえば、燃料補給で作業が中断する回数が増えることから、作業効率が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、穀物収穫機による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる穀物収穫システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る穀物収穫システム(1)は、圃場(F)内を走行可能な走行装置(12)と、前記圃場(F)に植立している穀稈を刈り取る刈取装置(13)と、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀装置(14)と、脱穀した穀粒を貯留するグレンタンク(15)と、貯留した穀粒を搬送する搬送オーガ(16)と、搬送した穀粒を機外へと排出する排出オーガ(17)とを有する穀物収穫機(10)と、前記排出オーガ(17)から排出される穀粒を受け、受けた穀粒を収容する収穫コンテナ(20)と、前記収穫コンテナ(20)が積載された運搬車両(30)と、前記搬送オーガ(16)および前記排出オーガ(17)を少なくとも駆動する電動機(40)と、前記電動機(40)へ電源供給するバッテリ(50)とを備え、前記走行装置(12)、前記刈取装置(13)および前記脱穀装置(14)は、前記穀物収穫機(10)に搭載されたエンジン(E)または前記電動機(40)で駆動し、前記電動機(40)は、前記穀物収穫機(10)また前記収穫コンテナ(20)に搭載され、前記バッテリ(50)は、前記収穫コンテナ(20)または前記運搬車両(30)に搭載され、前記排出オーガ(17)による穀粒の排出時に前記電動機(40)へ電源供給する外部バッテリ(52)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る穀物収穫システムによれば、穀物収穫機による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る穀物収穫システムが備える穀物収穫機を示す概略側面図である。
図2図2は、実施形態に係る穀物収穫システムが備える穀物収穫機を示す概略平面図である。
図3図3は、実施形態に係る穀物収穫システムを示す概略側面図である。
図4図4は、実施形態に係る穀物収穫システムを示す概略平面図である。
図5図5は、実施形態に係る穀物収穫システムが備える固定部を示す概略斜視図である。
図6図6は、固定部の回動機構の一例の説明図である。
図7図7は、固定部の回動動作の説明図である。
図8図8は、変形例に係る穀物収穫システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する穀物収穫システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<穀物収穫機(コンバイン)>
図1および2を参照して実施形態に係る穀物収穫システム1が備える穀物収穫機10について説明する。図1は、実施形態に係る穀物収穫システム1が備える穀物収穫機10を示す概略側面図である。図2は、実施形態に係る穀物収穫システム1が備える穀物収穫機10を示す概略平面図である。
【0011】
また、図1および2には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。このため、以下では、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。また、以下では、穀物収穫機10を指して「機体」という場合がある。
【0012】
図1および2に示すように、穀物収穫機10は、圃場F(図3および4参照)内を走行しながら圃場Fに植立している穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した穀粒を貯留し、貯留した穀粒を機体外部へ排出する。以下では、穀物収穫機10を「コンバイン」という。なお、図1および2には、コンバイン10の一例を示している。
【0013】
コンバイン10は、操縦部11と、走行装置12と、刈取装置13と、脱穀装置14と、グレンタンク15と、搬送オーガ16と、排出オーガ17とを備える。
【0014】
操縦部11は、操縦者(「作業者」ともいう)が搭乗して機体操作を行う。操縦部11は、キャビン11aを備える。キャビン11aの内部には、操縦者が着席する操縦席11bが設けられる。また、キャビン11aの内部には、各種操作レバーや計器類、各種情報を表示する表示部などが設けられる。
【0015】
なお、キャビン11aの上部には、自動運転の場合に機体の自己位置を取得するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナなどの受信アンテナが設けられてもよい。
【0016】
走行装置12は、左右一対のクローラベルト12aを備える。左右一対のクローラベルト12aは、駆動ローラ12bと、従動ローラ12cとをそれぞれ備える。走行装置12は、たとえば、キャビン11aの下方にあるエンジンルームに収容されたエンジンEから駆動ローラ12bへ動力伝達されてゴムなどの弾性体で無端状に形成されたクローラベルト12aが周回し、機体を走行させる。
【0017】
刈取装置13は、分草杆13aと、引起装置13bと、刈刃とを備える。分草杆13aは、圃場F内の穀稈を誘導する(分草する)。引起装置13bは、誘導した穀稈を引き起こす。刈刃は、引き起こした穀稈の根元を切断する。刈取装置13は、圃場F内に植立している穀稈を、走行装置12の前方において左右方向に並んだ複数の分草杆13aで所定の刈り幅内へ誘導し、誘導した穀稈を引起装置13bで引き起こし、引き起こした穀稈を刈刃で刈り取る。
【0018】
脱穀装置14は、穀稈から穀粒を外す(脱穀する)脱穀部、脱穀した穀粒を選別する選別部などを備える。脱穀装置14は、刈取装置13から穀稈を引き継ぎ、脱穀した後に選別した穀粒を後述するグレンタンク15へと送り込む。
【0019】
グレンタンク15は、脱穀部で脱穀した穀粒を貯留する。グレンタンク15は、貯留した穀粒を後述する搬送オーガ16へと送り込む。
【0020】
搬送オーガ16は、横オーガ16aと、縦オーガ16bとを備える。横オーガ16aは、グレンタンク15からの穀粒を後方へ向けてラセン搬送し、縦オーガ16bへと送り込む。縦オーガ16bは、横オーガ16aから送り込まれた穀粒を上方へ向けてラセン搬送し、後述する排出オーガ17へと送り込む。なお、横オーガ16aおよび縦オーガ16bは、ラセン同士が連結されており、同一の駆動源で駆動する。
【0021】
排出オーガ17は、搬送部17aと、排出部17bとを備える。搬送部17aは、搬送オーガ16の縦オーガ16bから送り込まれた穀粒をラセン搬送し、排出部17bへと送り込む。排出部17bは、搬送部17aの先端部に設けられ、搬送部17aから送り込まれた穀粒を、排出口17cから機体外部へと排出する。排出オーガ17は、圃場Fの周りに停車している後述する運搬車両30(図2および3参照)に積載された後述する収穫コンテナ20(図2および3参照)へと穀粒を排出する。
【0022】
また、排出オーガ17は、搬送オーガ16の縦オーガ16bとの連結部分を支点として、上下方向への揺動が可能であるとともに、左右方向への揺動(すなわち、水平面内の揺動)が可能である。
【0023】
<穀物収穫システム>
次に、図3および4を参照して実施形態に係る穀物収穫システム1について説明する。図3は、実施形態に係る穀物収穫システム1を示す概略側面図である。図4は、実施形態に係る穀物収穫システム1を示す概略平面図である。
【0024】
図3および4に示すように、穀物収穫システム1は、上記した穀物収穫機(コンバイン)10と、収穫コンテナ20と、運搬車両30と、電動機40と、バッテリ50とを備える。
【0025】
収穫コンテナ20は、排出オーガ17から排出される穀粒を受け、受けた穀粒を貯留(収容)する。コンバイン10は、たとえば、グレンタンク15が満杯になると、収穫コンテナ20の近くまで移動して、グレンタンク15に溜まっている穀粒を排出口17cから収穫コンテナ20へと排出する。収穫コンテナ20は、上面21が開放された略矩形の箱状に形成される。収穫コンテナ20では、開放された上面(以下、「供給口」という)21から穀粒が供給される。
【0026】
また、収穫コンテナ20は、排出オーガ17による穀粒の排出時に、排出オーガ17(排出部17b)を供給口21の上方で固定する固定部22を備える。なお、固定部22の構成については、図5を用いて後述する。
【0027】
運搬車両30は、収穫コンテナ20が積載される、トラックなどの車両である。運搬車両30は、たとえば、収穫コンテナ20が積載された状態で、収穫作業中の圃場Fの周り(畦など)に停車し、収穫コンテナ20が満杯になると、収穫コンテナ20ごと穀粒を目的地へと運搬する。また、運搬車両30は、後述するように、コンバイン10へ電源供給する電源車を兼ねる。
【0028】
電動機40は、搬送オーガ16および排出オーガ17を少なくとも駆動する、いわゆる駆動モータである。以下では、電動機40を「駆動モータ」という。本例において、駆動モータ40は、搬送オーガ16および排出オーガ17を駆動する。また、本例において、駆動モータ40は、収穫コンテナ20に搭載される。本例においては、駆動モータ40は、固定部22に設けられる。
【0029】
バッテリ50は、コンバイン10自体(機体内部)に搭載されている内部バッテリ51と、機体外部に搭載される外部バッテリ52とを備える。外部バッテリ52は、収穫コンテナ20または運搬車両30に搭載される。本例において、外部バッテリ52は、運搬車両30に搭載されている。また、本例において、バッテリ50のうち外部バッテリ52は、駆動モータ40へ電源供給する。外部バッテリ52は、排出オーガ17による穀粒の排出時(すなわち、機体停止時)に駆動モータ40へ電源供給する。
【0030】
また、コンバイン10において、走行装置12、刈取装置13および脱穀装置14(図4参照)は、このコンバイン10に搭載されたエンジンEで駆動する。このように、本例に係るコンバイン10は、走行装置12、刈取装置13および脱穀装置14がエンジンEで駆動し、搬送オーガ16および排出オーガ17の穀粒の排出系が駆動モータ40で駆動する(すなわち、エンジンEで全部が駆動するものではない)、いわゆるハイブリット式である。
【0031】
このような構成によれば、エンジンEで走行装置12、刈取装置13および脱穀装置14を駆動するハイブリッド式のコンバイン10の場合に、電動機40で排出オーガ17を駆動するため、排出オーガ17による穀粒の排出時にはエンジンEを停止することで燃費を抑えることができる。これにより、燃料補給で作業が中断する回数が減り、コンバイン10による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0032】
また、排出オーガ17による穀粒の排出時には、機体外部の電動機40で排出系(搬送オーガ16および排出オーガ17)を駆動することができるため、コンバイン10自体のバッテリ(内部バッテリ)51の充電や交換燃料補給で作業が中断する回数が減り、コンバイン10による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0033】
また、コンバイン10は、走行装置などの走行系や刈取装置13および脱穀装置14などの作業系を含む全部の駆動を、エンジンEではなく、電動機(駆動モータ)40で行う、完全電動式であってもよい。この場合、駆動モータ40は、コンバイン10自体(機体内部)に搭載される。
【0034】
このような構成によれば、電動機40で駆動する完全電動式のコンバイン10の場合に、排出オーガ17による穀粒の排出時に外部バッテリ52から搬送オーガ16および排出オーガ17を駆動する電動機40へ電源供給するため、コンバイン10自体のバッテリ(内部バッテリ)51の消耗を抑えることができる。これにより、内部バッテリ51の充電や交換で作業が中断する回数が減り、コンバイン10による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0035】
<固定部>
次に、図5~7を参照して実施形態に係る穀物収穫システム1が備える固定部22について説明する。図5は、実施形態に係る穀物収穫システム1が備える固定部22を示す概略斜視図である。図6は、固定部22の回動機構の一例の説明図である。図7は、固定部22の回転動作の説明図である。なお、図5には、固定部22の概略構成を示している。また、図6には、図5におけるA部断面を模式的に示している。また、図7には、上方から見た場合の固定部22の回動動作を模式的に示している。
【0036】
上記したように、固定部22は、排出オーガ17による穀粒の排出時に、排出オーガ17の排出部17bを供給口21の上方で固定する。また、固定部22は、収穫コンテナ20の供給口21の上方において駆動モータ40を固定する。
【0037】
図5に示すように、固定部22は、本体部221と、ステー部222と、アーム部223と、ローラ224とを備える。本体部221は、円環状に形成され、円環の孔から収穫コンテナ20の供給口21を臨むことができるように、供給口21の直上に配置される。
【0038】
ステー部222は、本体部221から上方へ延びるように、本体部221に設けられる。ステー部222は、駆動モータ40が上部に取り付けられる。ステー部222は、図中の矢線DR1で示すように、本体部221に対して、水平面内において回動可能に設けられる。このため、本体部221は、ステー部222を回動可能に支持するための回動機構を備える。
【0039】
図6に示すように、本体部221は、回動部221aと、受け部221bとを備える。回動部221aは、円環状に形成された回動体である。回動部221aには、ステー部222が固定される。受け部221bは、円環状に形成される。受け部221bは、図示のように、断面視で円弧状となるように形成される。受け部221bには、回動部22aが挿入されている。回動部221aは、受け部221bの内周面上を摺動することで、矢線DR1方向へ回動することができる。
【0040】
また、ステー部222は、図中の矢線DR2で示すように、水平面内において回動可能となるように駆動モータ40を支持する。また、ステー部222は、上下方向へ揺動可能となるように駆動モータ40を支持する。このようなステー部222の回動、揺動支点として、たとえば、ユニバーサルジョイントが設けられてもよい。
【0041】
アーム部223は、本体部221から側方へ延びるように、本体部221に複数(たとえば、4つ)設けられる。アーム部223は、本体部221を中心として、一方側が一方の上縁部21aへ向けて、他方側が他方の上縁部21aへ向けて延びており、固定部22が収穫コンテナ20の対向する上縁部21aの間を架け渡すように設けられる。
【0042】
ローラ224は、アーム部223の先端部に設けられる。ローラ224は、収穫コンテナ20の上縁部21aに設けられたレール部23に取り付けられており、図中の矢線Dで示すように、レール部23に沿って移動可能である。なお、ローラ224を省略して、アーム部223の先端部がレール部23に沿って摺動する構成としてもよい。
【0043】
以上のような固定部22は、収穫コンテナ20の上方において、アーム部223およびローラ224で収穫コンテナ20の上縁に沿って(矢線D方向に沿って)スライド移動可能である。また、固定部22は、本体部221で矢線DR1方向へ回動可能であるとともに、ステー部222で矢線DR2方向へ回動可能である。そして、図7に示すように、固定部22は、排出オーガ17(排出部17b)が駆動モータ40に連結されている場合に、排出オーガ17の動き(揺動)に応じて駆動モータ40を追従させる。
【0044】
このような構成によれば、駆動モータ40を固定する固定部22がスライド移動可能かつ回転、揺動可能に設けられるため、駆動モータ40に連結された排出オーガ17が動いても、駆動モータ40から排出オーガ17が外れない。また、たとえば、排出オーガ17が穀粒を排出しながらスライド移動する動きに追従して固定部22がスライド移動することで、収穫コンテナ20に溜まって山状になった穀粒のすり切りを行うことができる。
【0045】
また、図5に示すように、固定部22は、駆動モータ40に連結された排出オーガ17の排出口17cから穀粒が排出される場合は、図中の矢印Dで示すように、穀粒が本体部221の円環の孔を通じて収穫コンテナ20の内部へと落下するため、排出オーガ17からの穀粒の排出を妨げない。
【0046】
また、図5に示すように、固定部22に固定された駆動モータ40は、排出オーガ17における穀粒をラセン搬送するための回転軸17dに対して出力軸41が連結される。これにより、駆動モータ40は、排出オーガ17を駆動する。さらに、駆動モータ40は、駆動モータ40の冷却のための外扇(ファン)42を備える。
【0047】
このような構成によれば、排出オーガ17による穀粒の排出時には、収穫コンテナ20に搭載された駆動モータ40で駆動することができるとともに、駆動モータ40から排出オーガ17側への動力伝達が容易となる。また、外扇(ファン)42によって駆動モータ40の冷却とともに駆動モータ40への塵埃対応も可能となる。
【0048】
<変形例>
次に、図8を参照して変形例に係る穀物収穫システム1Aについて説明する。図8は、変形例に係る穀物収穫システム1Aの説明図であり、変形例に係る穀物収穫システム1Aを示す概略側面図である。
【0049】
図8に示すように、変形例に係る穀物収穫システム1Aでは、固定部22が駆動モータ40に対して電源供給のみを行う電源供給部53を固定し、電源供給部60に排出オーガ17の排出部17bが固定された状態で、穀粒の排出時(機体停止時)に駆動モータ40へ電源供給する。
【0050】
電源供給部53は、排出オーガ17の先端側から電源供給し、排出部17b(排出口17c)からの穀粒の排出を妨げることはない。また、電源供給部53は、排出オーガ17の先端側からコンバイン10側の内部バッテリ51へ給電する。なお、運搬車両30には、電源供給部53の他に、バッテリ50(外部バッテリ52)、燃料電池、エンジンなどのパワー源が搭載されてもよい。
【0051】
このように、コンバイン10は、排出オーガ17による穀粒の排出が運搬車両30側からの外部電源で行われるため、コンバイン10の内部バッテリ51の電力を消費しない。なお、外部電源で穀粒を排出する場合、コンバイン10の内部バッテリ51からの電源供給を同時に行ってもよい。
【0052】
また、電源供給部53は、排出オーガ17との間の電力のやりとりを、「Qi(チー)」などのワイヤレス給電方式で行うことも可能である。また、電源供給部53は、たとえば、背面に外扇(ファン)53aを備える。これにより、電源供給部53の電源供給時の発熱を抑えるとともに、排出オーガ17による穀粒の排出時の塵埃対応も可能となる。
【0053】
また、変形例に係る穀物収穫システム1Aでは、固定部22は、太陽光発電が可能な構成であってもよい。この場合、たとえば、収穫コンテナ20のレール部23を通じて電源供給を行うことができる。
【0054】
また、上記したように、固定部22は、スライド移動可能かつ回転可能に設けられるため、排出オーガ17が動いても、電源供給部53から排出オーガ17が外れない。このため、上記したように、固定部22は、排出オーガ17(排出部17b)が駆動モータ40に連結されている場合に、排出オーガ17の動き(揺動)に応じて電源供給部53を追従させる。また、固定部22は、運搬車両30の向きが変更されても、排出オーガ17との連結を維持することができる。
【0055】
また、排出オーガ17による穀粒の排出時に、排出オーガ17の先端側の誘導を固定部22側で行い、コンバイン10側の操作に頼らない構成としてもよい。なお、電源供給部53および排出オーガ17の連結を、排出オーガ17の搬送部17aの伸縮で両者の連結を保持できるように調整することも可能である。
【0056】
また、変形例に係る穀物収穫システム1Aでは、収穫コンテナ20の側面をソーラーパネルで形成し、運搬車両30の待ち時間に運搬車両30側の充電を行うようにしてもよい。また、収穫コンテナ20の側面自体が運搬車両30の予備2次電池を兼ねるようにしてもよい。この場合、薄型の予備2次電池を収穫コンテナ20の四隅付近に配置するが、四隅以外をチェック状や格子状としてメッシュ化してもよい。
【0057】
また、排出オーガ17の穀粒の排出動作で取得した回生エネルギーを用いてコンバイン10の内部バッテリ51の充電を行う構成としてもよい。
【0058】
また、変形例に係る穀物収穫システム1Aでは、駆動モータ40は、たとえば、搬送オーガ16の横オーガ16aの基端部、搬送オーガ16の縦オーガ16bの上端部のうちいずれかに設けられる。
【0059】
このうち、駆動モータ40が縦オーガ16bの上端部に設けられる場合は、搬送オーガ16および排出オーガ17の両方に対して距離的に近く、駆動系の強度を過剰に上げる必要がなく、また、機体外部にあるため、放熱性が良好となる。
【0060】
なお、駆動モータ40が縦オーガ16bの上端部に設けられる場合には、排出オーガ17の上下方向の揺動のための軸部の上方に搭載して、排出オーガ17が収納姿勢の場合に機体から突出しないことが好ましい。すなわち、駆動モータ40がグレンタンク15よりも低くなるようにこの駆動モータ40を設けることが好ましい。これにより、コンバイン10を納屋へ収納する場合に駆動モータ40が邪魔にならない。
【0061】
また、変形例に係る穀物収穫システム1Aにおいても、固定部22は、排出オーガ17の動き(揺動)に電源供給部53を追従させるため、たとえば、排出オーガ17が穀粒を排出しながらスライド移動する動きに追従して固定部22がスライド移動して、収穫コンテナ20に溜まって山状になった穀粒のすり切りを行うことができる。
【0062】
上述してきた実施形態により、以下の穀物収穫システム1が実現される。
【0063】
(1)圃場F内を走行可能な走行装置12と、圃場Fに植立している穀稈を刈り取る刈取装置13と、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀装置14と、脱穀した穀粒を貯留するグレンタンク15と、貯留した穀粒を搬送する搬送オーガ16と、搬送した穀粒を機外へと排出する排出オーガ17とを有する穀物収穫機10と、排出オーガ17から排出される穀粒を受け、受けた穀粒を収容する収穫コンテナ20と、収穫コンテナ20が積載された運搬車両30と、搬送オーガ16および排出オーガ17を少なくとも駆動する電動機40と、電動機40へ電源供給するバッテリ50とを備え、走行装置12、刈取装置13および脱穀装置14は、穀物収穫機10に搭載されたエンジンEまたは電動機40で駆動し、電動機40は、穀物収穫機10また収穫コンテナ20に搭載され、バッテリ50は、収穫コンテナ20または運搬車両30に搭載され、排出オーガ17による穀粒の排出時に電動機40へ電源供給する外部バッテリ52を有する、穀物収穫システム1。
【0064】
このような穀物収穫システム1によれば、たとえば、電動機40で駆動する完全電動式の穀物収穫機10の場合には、排出オーガ17による穀粒の排出時に外部バッテリ52から搬送オーガ16および排出オーガ17を駆動する電動機40へ電源供給するため、穀物収穫機10自体のバッテリ(内部バッテリ)51の消耗を抑えることができる。これにより、内部バッテリ51の充電や交換で作業が中断する回数が減り、穀物収穫機10による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0065】
また、たとえば、エンジンEで走行装置12、刈取装置13および脱穀装置14を駆動するハイブリッド式の穀物収穫機10の場合は、電動機40で排出オーガ17を駆動するため、排出オーガ17による穀粒の排出時にはエンジンEを停止することで燃費を抑えることができる。これにより、燃料補給で作業が中断する回数が減り、穀物収穫機10による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0066】
(2)上記(1)において、走行装置12、刈取装置13および脱穀装置14は、穀物収穫機10に搭載されたエンジンEで駆動し、電動機40は、収穫コンテナ20に搭載される、穀物収穫システム1。
【0067】
このような穀物収穫システム1によれば、上記(1)の効果に加えて、エンジンEで走行装置12、刈取装置13および脱穀装置14を駆動するハイブリッド式の穀物収穫機10の場合、排出オーガ17による穀粒の排出時には、機体外部の電動機40で排出系(搬送オーガ16および排出オーガ17)を駆動することができるため、穀物収穫機10自体のバッテリ(内部バッテリ)51の充電や交換燃料補給で作業が中断する回数が減り、穀物収穫機10による連続作業時間の延長が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0068】
(3)上記(2)において、排出オーガ17は、穀粒をラセン搬送するための回転軸17dを有し、電動機40は、回転軸17dに出力軸41が連結されることで排出オーガ17を駆動し、電動機40は、外扇42をさらに有する、穀物収穫システム1。
【0069】
このような穀物収穫システム1によれば、上記(2)の効果に加えて、排出オーガ17による穀粒の排出時には、収穫コンテナ20に搭載された電動機40で駆動することができるとともに、電動機40から排出オーガ17側への動力伝達が容易となる。また、電動機40が外扇42を有することで、電動機40の冷却とともに電動機40への塵埃対応も可能となる。
【0070】
(4)上記(3)において、収穫コンテナ20に電動機40を固定する固定部22を備え、固定部22は、収穫コンテナ20の上方において収穫コンテナ20の上縁に沿ってスライド移動可能かつ回転可能に設けられ、排出オーガ17の動きに応じて排出オーガ17に連結された電動機40を追従させる、穀物収穫システム1。
【0071】
このような穀物収穫システム1によれば、上記(3)の効果に加えて、電動機40を固定する固定部22がスライド移動可能かつ回転可能に設けられるため、電動機40に連結された排出オーガ17が動いても、電動機40から排出オーガ17が外れない。また、たとえば、排出オーガ17が穀粒を排出しながらスライド移動する動きに追従して固定部22がスライド移動することで、収穫コンテナ20に溜まって山状になった穀粒のすり切りを行うことができる。
【0072】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 穀物収穫システム
10 穀物収穫機(コンバイン)
12 走行装置
13 刈取装置
14 脱穀装置
15 グレンタンク
16 搬送オーガ
17 排出オーガ
17d 回転軸
20 収穫コンテナ
22 固定部
30 運搬車両
40 電動機(駆動モータ)
41 出力軸
42 外扇(ファン)
50 バッテリ
52 外部バッテリ
E エンジン
F 圃場
図1
図2
図3
図4
図5
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図8