(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035641
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】加速度センサシステム
(51)【国際特許分類】
G01P 15/125 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140231
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 明政
(57)【要約】
【課題】温度変化に基づく検出誤差を低減することができる加速度センサシステムを提供する。
【解決手段】加速度センサシステム(SYS1~SYS3)は、加速度検出部(100A)及びオフセット検出部(100B)を含む加速度センサ(100)と、前記加速度検出部及び前記オフセット検出部の各出力を処理する処理部(200)と、を有する。前記加速度検出部は、第1電極(1)と、第2電極(2)と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる第3電極(3)と、を有し、前記第1電極及び前記第2電極と、前記第3電極との一方が固定電極であり、他方が可動電極である。前記オフセット検出部は、第4電極(4)と、第5電極(5)と、前記第4電極と前記第5電極との間に設けられる第6電極(6)と、を有し、前記第4電極、前記第5電極、及び前記第6電極が固定電極である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の加速度を検出するように構成された加速度検出部及び前記加速度検出部に対するオフセット量を検出するように構成されたオフセット検出部を含む加速度センサと、
前記加速度検出部及び前記オフセット検出部の各出力を処理するように構成された処理部と、
を有し、
前記加速度検出部は、
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる第3電極と、
を有し、前記第1電極及び前記第2電極と、前記第3電極との一方が固定電極であり、他方が可動電極であり、前記第1電極と前記第3電極との間に第1可変容量が形成され、前記第2電極と前記第3電極との間に第2可変容量が形成され、
前記オフセット検出部は、
第4電極と、
第5電極と、
前記第4電極と前記第5電極との間に設けられる第6電極と、
を有し、前記第4電極、前記第5電極、及び前記第6電極が固定電極であり、前記第4電極と前記第6電極との間に第1固定容量が形成され、前記第5電極と前記第6電極との間に第2固定容量が形成される、
加速度センサシステム。
【請求項2】
前記第1電極の形状及び大きさが、前記第2電極の形状及び大きさ、前記第4電極の形状及び大きさ、前記第6電極の形状及び大きさとそれぞれ同じであり、
前記第3電極の形状及び大きさが、前記第6電極の形状及び大きさと同じである、請求項1に記載の加速度センサシステム。
【請求項3】
前記加速度センサは、
前記第1電極及び前記第4電極に接続されるように構成された第1端子と、
前記第3電極に接続されるように構成された第2端子と、
前記第2電極及び前記第5電極に接続されるように構成された第3端子と、
前記第6電極に接続されるように構成された第4端子と、
を有する、請求項1又は請求項2に記載の加速度センサシステム。
【請求項4】
前記処理部は、前記第1端子から出力される電荷と前記第3端子から出力される電荷との差に応じた電圧を生成するように構成される、請求項3に記載の加速度センサシステム。
【請求項5】
前記加速度センサは、
前記第1電極及び前記第5電極に接続されるように構成された第1端子と、
前記第3電極及び前記第6電極に接続されるように構成された第2端子と、
前記第2電極および前記第4電極に接続されるように構成された第3端子と、
を有する、請求項1又は請求項2に記載の加速度センサシステム。
【請求項6】
前記処理部は、前記第2端子から出力される電荷に応じた電圧を生成するように構成される、請求項5に記載の加速度センサシステム。
【請求項7】
前記加速度センサは、
前記第1電極に接続されるように構成された第1端子と、
前記第3電極に接続されるように構成された第2端子と、
前記第2電極に接続されるように構成された第3端子と、
前記第4電極に接続されるように構成された第4端子と、
前記第6電極に接続されるように構成された第5端子と、
前記第5電極に接続されるように構成された第6端子と、
を有する、請求項1又は請求項2に記載の加速度センサシステム。
【請求項8】
前記処理部は、前記第2端子から出力される電荷に応じた第1電圧を生成し、前記第5端子から出力される電荷に応じた第2電圧を生成し、前記第1電圧と前記第2電圧とを差分するように構成される、請求項7に記載の加速度センサシステム。
【請求項9】
前記処理部は、前記第1端子から出力される電荷と前記第3端子から出力される電荷との差に応じた第1電圧を生成し、前記第3端子から出力される電荷と前記第4端子から出力される電荷との差に応じた第2電圧を生成し、前記第1電圧と前記第2電圧とを差分するように構成される、請求項7に記載の加速度センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、加速度センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体に作用する加速度を計測するための加速度センサは、たとえば物体の姿勢や動き、振動状態などを把握するために広く用いられている。また、加速度センサには、小型化の要請が強い。このような要請に応えるべく、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術を用いて加速度センサの小型化が図られている。たとえば、特許文献1には、MEMS技術を用いた静電容量型の加速度センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の加速度センサのセンサ部は、半導体基板を加工することによって形成されている。このような加速度センサにおいては、温度変化によってオフセット量が変化する。このため、温度変化によって、検出誤差が発生するおそれがある。温度変化によってオフセット量が変化するのは、温度変化によって半導体基板にストレスがかかることが原因であると推測される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中に開示されている加速度センサシステムは、所定方向の加速度を検出するように構成された加速度検出部及び前記加速度検出部に対するオフセット量を検出するように構成されたオフセット検出部を含む加速度センサと、前記加速度検出部及び前記オフセット検出部の各出力を処理するように構成された処理部と、を有する。前記加速度検出部は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる第3電極と、を有し、前記第1電極及び前記第2電極と、前記第3電極との一方が固定電極であり、他方が可動電極であり、前記第1電極と前記第3電極との間に第1可変容量が形成され、前記第2電極と前記第3電極との間に第2可変容量が形成される。前記オフセット検出部は、第4電極と、第5電極と、前記第4電極と前記第5電極との間に設けられる第6電極と、を有し、前記第4電極、前記第5電極、及び前記第6電極が固定電極であり、前記第4電極と前記第6電極との間に第1固定容量が形成され、前記第5電極と前記第6電極との間に第2固定容量が形成される。
【発明の効果】
【0006】
本明細書中に開示されている発明によれば、温度変化に基づく検出誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、加速度センサの一構造例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、加速度センサの一構造例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、加速度センサの他の構造例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、加速度センサの他の構造例を示す側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<加速度センサの構造例>
後述する各実施形態で用いられる加速度センサ100の構造例について説明する。
【0009】
説明の便宜上、以下では、
図1~
図4に示した+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向、+Z方向および-Z方向を用いることがある。+X方向は、側面視において、平板部11の表面に沿う一方向であり、+Z方向は、側面視において平板部11の表面に沿う方向であって、+X方向に直交する方向である。+Y方向は、平板部11の厚さに沿う方向であって、+X方向および+Y方向に直交する方向である。
【0010】
-X方向は、+X方向と反対の方向である。-Y方向は、+Y方向と反対の方向である。-Z方向は、+Z方向と反対の方向である。+X方向および-X方向を総称するときには「X軸方向」という。+Y方向および-Y方向を総称するときには「Y軸方向」という。+Z方向および-Z方向を総称するときには「Z軸方向」という。
【0011】
図1は、加速度センサ100の一構造例を示す平面図である。
図2は、加速度センサ100の一構造例を示す側面図である。なお、
図1では、加速度センサ100の+Z方向側の一部のみが描写されている。
【0012】
加速度センサ100は、電極1~6と、平板部11~16と、連結部21及び22と、弾性構造部31及び32と、支持部41及び42と、ベース部43と、を有する。
【0013】
平板部11~16と、連結部21及び22と、弾性構造部31及び32と、支持部41及び42と、ベース部43と、を含む構造体は、例えば半導体基板を微細加工することによって形成される。
【0014】
電極1~6はY軸方向から視て矩形である。電極1の形状及び大きさは、電極2~6それぞれの形状及び大きさと同じである。なお、電極1~6の形状は矩形以外であってもよい。
【0015】
電極1は、平板部11の-Y方向側に配置される。電極2は、平板部12の+Y方向側に配置される。一対の電極3は、平板部13の+Y方向側及び-Y方向側それぞれに配置される。平板部13は、Y軸方向において、平板部11と平板部12との間に配置され、平板部11及び12それぞれと対向する。
【0016】
平板部11と平板部12とは、連結部21によって連結される。支持部41は、弾性構造部31及び32を介して、平板部11、平板部12、及び連結部21を支持する。これにより、電極1及び2は、加速度センサ100がY軸方向の加速度を受けたときにY軸方向方向に移動する可動電極となる。
【0017】
支持部42は、弾性構造部を介さずに、平板部13を支持する。これにより、電極3は、加速度センサ100がY軸方向の加速度を受けてもY軸方向方向に移動しない固定電極となる。
【0018】
電極4は、平板部14の-Y方向側に配置される。電極5は、平板部15の+Y方向側に配置される。一対の電極6は、平板部16の+Y方向側及び-Y方向側それぞれに配置される。平板部16は、Y軸方向において、平板部14と平板部15との間に配置され、平板部14及び15それぞれと対向する。
【0019】
平板部14と平板部15とは、連結部22によって連結される。支持部41は、弾性構造部を介さずに、平板部14、平板部15、及び連結部22を支持する。これにより、電極4及び5は、加速度センサ100がY軸方向の加速度を受けてもY軸方向方向に移動しない固定電極となる。
【0020】
支持部42は、弾性構造部を介さずに、平板部16を支持する。これにより、電極6は、加速度センサ100がY軸方向の加速度を受けてもY軸方向方向に移動しない固定電極となる。
【0021】
ベース部43は、支持部41及び42を支持する。
【0022】
加速度センサ100は、例えば接着剤101によってパッケージフレーム102に固定される。加速度センサ100と接着剤101とは熱膨張係数が異なっているため、温度変化によって加速度センサ100に不均一な応力が発生する。この不均一な応力によって歪が生じ、理想的には平行配置である電極1~3の配置に温度に応じて位置ずれが生じる(
図1参照)。また、電極4~6の配置にも電極1~3の配置と同様に温度に応じて位置ずれが生じる(
図1参照)。
【0023】
図3は、加速度センサ100の他の構造例を示す平面図である。
図4は、加速度センサ100の他の構造例を示す側面図である。なお、
図3では、加速度センサ100の+Z方向側の一部のみが描写されている。
【0024】
図1及び
図2に示す構造例では連結部21及び22がY軸方向に沿って配置されたのに対して、
図3及び
図4に示す構造例では連結部21及び22がX軸方向に沿って配置される。
【0025】
また、
図3及び
図4に示す構造例では、支持部41Aが、弾性構造部31及び32を介して、平板部11、平板部12、及び連結部21を支持し、支持部41Bが、弾性構造部を介さずに、平板部14、平板部15、及び連結部22を支持する。そして、
図3及び
図4に示す構造例では、ベース部43は、支持部41A、41B及び42を支持する。
【0026】
図1及び
図2に示す構造例、
図3及び
図4に示す構造例では、電極1及び2が可動電極であり、電極1と電極2との間に設けられる電極3が固定電極であるが、加速度センサ100の構造はこれらの構造例に限定されない。加速度センサ100は、電極1及び2が固定電極であり、電極1と電極2との間に設けられる電極3が可動電極である構造であってもよい。
【0027】
<第1実施形態>
図5は、第1実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
図5に示す加速度センサシステムSYS1は、加速度センサ100と、処理部200と、を有する。
【0028】
加速度センサ100は、加速度検出部100Aと、オフセット検出部100Bと、を含む。加速度センサ100は、静電容量型加速度センサである。加速度検出部100Aは、所定方向(
図1及び
図3に示すY軸方向)の加速度を検出する。オフセット検出部100Bは、加速度検出部100Aに対するオフセット量を検出する。
【0029】
加速度検出部100Aは、固定電極である電極1及び2と、電極1と電極2との間に設けられる可動電極である電極3と、を有する。電極1と電極3との間に可変容量(静電容量値が可変する容量)C1が形成され、電極2と電極3との間に可変容量C2が形成される。
【0030】
オフセット検出部100Bは、固定電極である電極4及び5と、電極4と電極5との間に設けられる固定電極である電極6と、を有する。電極4と電極6との間に固定容量(静電容量値が固定である容量)C3が形成され、電極5と電極6との間に固定容量C4が形成される。
【0031】
処理部200は、加速度検出部100A及びオフセット検出部100Bの各出力を処理する。処理部200は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成される。本実施形態の処理部200は、差動電荷電圧変換器200Aを含む。
【0032】
本実施形態の加速度センサ100は、端子T1~T4をさらに有する。端子T1は、電極1及び4に接続される。端子T2は、電極3に接続される。端子T3は、電極2及び5に接続される。端子T3は、電極6に接続される。
【0033】
端子T1及びT4には、互いに逆相のパルス電圧が印加される。これにより、電荷Q1が電極1に発生し、電荷Q1と同じ極性の電荷Q2が電極2に発生する。電荷Q1及びQ2は以下の式で表される。なお、ベース容量Cо[fF]は、可変容量C1及びC2それぞれにおいて構造上発生する容量である。加速度可変容量感度Cs[fF/g]は、Y軸方向の加速度に応じて変化する容量である。加速度gは、Y軸方向の加速度である。容量変化係数Ct[fF/Δ℃]は、基準温度からの温度変化に関する係数である。なお、ここではCtをΔTの一次線形成分として表しているが、実際の関係は不明である。ただし、下記の式と同様に、温度変化による容量変化は、可変容量C1と可変容量C2とで逆方向に重畳していると考えられる。温度変化ΔTは、基準温度からの温度変化である。
Q1=(Cо+Cs×g+Ct×ΔT)×V
Q2=(Cо-Cs×g-Ct×ΔT)×V
【0034】
また、電荷Q1’が電極4に発生し、電荷Q1’と同じ極性の電荷Q2’が電極5に発生する。電荷Q1’及びQ2’は以下の式で表される。
Q1’=-(Cо+Ct×ΔT)×V
Q2’=(Cо-Ct×ΔT)×V
【0035】
したがって、端子T1から出力される電荷Qout1及び端子T3から出力される電荷Qout2は、以下の式で表される。
Qout1=Q1+Q1’=Cs×g×V
Qout2=Q2+Q2’=-Cs×g×V
【0036】
差動電荷電圧変換器200Aは、端子T1から電荷Qout1を受け取り、端子T3から電荷Qout2を受け取る。差動電荷電圧変換器200Aは、電荷Qout1と電荷Qout2との差分ΔQを求め、差分ΔQを電圧に変換して外部に出力する。差分ΔQは、以下の式で表される。
ΔQ=Qout1-Qout2=2×Cs×g×V
【0037】
差動電荷電圧変換器200Aから外部に出力される電圧は、加速度に応じた電圧となる。差動電荷電圧変換器200Aから外部に出力される電圧は、温度依存性が低い(理想的には零である)。したがって、加速度センサシステムSYS1は、温度変化に基づく検出誤差を低減することができる。
【0038】
また、端子T1及びT3にコモンモードノイズが重畳した場合でも、差動電荷電圧変換器200Aによる差分によってコモンモードノイズが除去される。
【0039】
また、ベース容量Cоの成分が加速度センサ100側で除去できるため、差動電荷電圧変換器200Aの回路構成を簡便化することができる。
【0040】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
図6に示す加速度センサシステムSYS2は、加速度センサ100と、処理部200と、を有する。なお、
図6において、
図5と同様の部分については説明を適宜省略する。
【0041】
本実施形態の処理部200は、電荷電圧変換器200Bを含む。
【0042】
本実施形態の加速度センサ100は、端子T11~T13をさらに有する。端子T11は、電極1及び5に接続される。端子T12は、電極3及び6に接続される。端子T13は、電極2に接続される。端子T3は、電極2及び4に接続される。
【0043】
端子T11及びT13には、互いに逆相のパルス電圧が印加される。これにより、電荷Q1が電極1に発生し、電荷Q1と同じ極性の電荷Q2が電極2に発生する。電荷Q1及びQ2は以下の式で表される。
Q1=(Cо+Cs×g+Ct×ΔT)×V
Q2=(Cо-Cs×g-Ct×ΔT)×V
【0044】
また、電荷Q1’が電極4に発生し、電荷Q1’と同じ極性の電荷Q2’が電極5に発生する。電荷Q1’及びQ2’は以下の式で表される。
Q1’=-(Cо+Ct×ΔT)×V
Q2’=(Cо-Ct×ΔT)×V
【0045】
したがって、端子T12から出力される電荷Qoutは、以下の式で表される。
Qout=Q1+Q2+Q1’+Q2’=2×Cs×g×V
【0046】
電荷電圧変換器200Bは、端子T12から電荷Qoutを受け取る。電荷電圧変換器200Bは、電荷Qoutを電圧に変換して外部に出力する。差分ΔQは、以下の式で表される。
【0047】
電荷電圧変換器200Bから外部に出力される電圧は、加速度に応じた電圧となる。電荷電圧変換器200Bから外部に出力される電圧は、温度依存性が低い(理想的には零である)。したがって、加速度センサシステムSYS2は、温度変化に基づく検出誤差を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態の加速度センサ100の端子仕様は、オフセット検出部100Bを有さない従来の加速度センサの端子仕様と共通にすることができる。したがって、加速度センサシステムSYS2で用いられる処理部200は、オフセット検出部100Bを有さない従来の加速度センサの出力を処理する処理部と同一の仕様にすることができる。
【0049】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
図7に示す加速度センサシステムSYS3は、加速度センサ100と、処理部200と、を有する。なお、
図7において、
図5及び
図6と同様の部分については説明を適宜省略する。
【0050】
本実施形態の処理部200は、電荷電圧変換器200C及び200Dと、差分演算器200Eと、を含む。
【0051】
本実施形態の加速度センサ100は、端子T21~T26をさらに有する。端子T21は、電極1に接続される。端子T22は、電極3に接続される。端子T23は、電極2に接続される。端子T24は、電極4に接続される。端子T25は、電極6に接続される。端子T26は、電極5に接続される。
【0052】
端子T21及びT23には、互いに逆相のパルス電圧が印加される。これにより、電荷Q1が可変容量C1の電極3に発生し、電荷Q1と逆極性の電荷Q2が可変容量C2の電極3に発生する。電荷Q1及びQ2は以下の式で表される。
Q1=(Cо+Cs×g+Ct×ΔT)×V
Q2=(Cо-Cs×g-Ct×ΔT)×(-V)
【0053】
また、端子T24及びT26には、互いに逆相のパルス電圧が印加される。これにより、電荷Q1’が固定容量C3の電極6に発生し、電荷Q1’と逆極性の電荷Q2’が固定容量C4の電極6に発生する。電荷Q1’及びQ2’は以下の式で表される。
Q1’=-(Cо+Ct×ΔT)×V
Q2’=(Cо-Ct×ΔT)×(-V)
【0054】
したがって、端子T22から出力される電荷Qout1及び端子T24から出力される電荷Qout2は、以下の式で表される。
Qout1=Q1+Q2=2×(Cs×g+Ct×ΔT)×V
Qout2=Q1’+Q2’=2×Ct×ΔT×V
【0055】
電荷電圧変換器200Cは、端子T22から電荷Qout1を受け取り、端子T24から電荷Qout2を受け取る。電荷電圧変換器200Cは、電荷Qout1を第1電圧V1に変換して差分演算器200Eに供給する。電荷電圧変換器200Dは、電荷Qout2を第2電圧V2に変換して差分演算器200Eに供給する。差分演算器200Eは、第1電圧V1と第2電圧V2との差を演算して、その演算結果である電圧を外部に出力する。
【0056】
差分演算器200Eから外部に出力される電圧は、加速度に応じた電圧となる。差分演算器200Eから外部に出力される電圧は、温度依存性が低い(理想的には零である)。したがって、加速度センサシステムSYS3は、温度変化に基づく検出誤差を低減することができる。
【0057】
また、端子T22及びT24にコモンモードノイズが重畳した場合でも、差分演算器200Eによる差分によってコモンモードノイズが除去される。
【0058】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係る加速度センサシステムの概略構成を示す図である。
図8に示す加速度センサシステムSYS4は、加速度センサ100と、処理部200と、を有する。なお、
図8において、
図7と同様の部分については説明を適宜省略する。
【0059】
本実施形態の処理部200は、差動電荷電圧変換器200F及び200Gと、差分演算器200Hと、を含む。
【0060】
端子T22及びT25には、互いに逆相のパルス電圧が印加される。これにより、電荷Q1が電極1に発生し、電荷Q1と同じ極性の電荷Q2が電極2に発生する。電荷Q1及びQ2は以下の式で表される。
Q1=(Cо+Cs×g+Ct×ΔT)×V
Q2=(Cо-Cs×g-Ct×ΔT)×V
【0061】
また、電荷Q1’が電極4に発生し、電荷Q1’と同じ極性の電荷Q2’が電極5に発生する。電荷Q1’及びQ2’は以下の式で表される。
Q1’=-(Cо+Ct×ΔT)×V
Q2’=(Cо-Ct×ΔT)×V
【0062】
電荷Q1は端子T21から出力され、電荷Q2は端子T23から出力される。電荷Q1’は端子T24から出力され、電荷Q2’は端子T26から出力される。
【0063】
差動電荷電圧変換器200Fは、端子T21から電荷Q1を受け取り、端子T23から電荷Q2を受け取る。差動電荷電圧変換器200Fは、電荷Q1と電荷Q2との差分ΔQを求め、差分ΔQを第1電圧V1に変換して差分演算器200Hに出力する。
【0064】
差動電荷電圧変換器200Gは、端子T24から電荷Q1’を受け取り、端子T26から電荷Q2’を受け取る。差動電荷電圧変換器200Gは、電荷Q1’と電荷Q2’との差分ΔQ’を求め、差分ΔQ’を第2電圧V2に変換して差分演算器200Hに出力する。
【0065】
差分演算器200Hは、第1電圧V1と第2電圧V2との差を演算して、その演算結果である電圧を外部に出力する。
【0066】
差分演算器200Hから外部に出力される電圧は、加速度に応じた電圧となる。差分演算器200Hから外部に出力される電圧は、温度依存性が低い(理想的には零である)。したがって、加速度センサシステムSYS4は、温度変化に基づく検出誤差を低減することができる。
【0067】
また、端子T21及びT23にコモンモードノイズが重畳した場合でも、差動電荷電圧変換器200Fによる差分によってコモンモードノイズが除去される。また、端子T24及びT26にコモンモードノイズが重畳した場合でも、差動電荷電圧変換器200Gによる差分によってコモンモードノイズが除去される。
【0068】
<処理部でのトリミング工程>
第3実施形態及び第4実施形態では、検出精度を高めるために以下のトリミング工程を実施する必要がある。
【0069】
まず、第1トリミング工程では、加速度が零の状態で、ベース容量Cоの成分を粗くキャンセルする設定が処理部200の前段において探索される。処理部200の前段においてキャンセルできなかった電荷は、次段の回路に流れる。
【0070】
第1トリミング工程に続く第2トリミング工程において、加速度が零の状態で、ベース容量Cоの成分の残りを処理部200に設けるフィードバック制御部による自動調整でキャンセルする。
【0071】
第2トリミング工程に続く第3トリミング工程において、加速度が零の状態で、可変容量C1の静電容量と可変容量C2の静電容量との差をキャンセルする設定が処理部200のフィードバック制御部の次段において探索される。
【0072】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、加速度センサ100側で、ベース容量Cоの成分のキャンセル及び可変容量C1の静電容量と可変容量C2の静電容量との差のキャンセルが行われることになる。したがって、上述した第1実施形態に係る加速度センサシステムSYS1及び第1実施形態に係る加速度センサシステムSYS2は、第1トリミング工程~第3トリミング工程の実施に必要な回路を削減又は低減しても、検出誤差を低減することができる。
【0073】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0074】
例えば、上述した各実施形態では、1軸の加速度センサが用いられたが、多軸の加速度センサが用いられてもよい。
【0075】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0076】
本開示の加速度センサシステム(SYS1~SYS3)は、所定方向の加速度を検出するように構成された加速度検出部(100A)及び前記加速度検出部に対するオフセット量を検出するように構成されたオフセット検出部(100B)を含む加速度センサ(100)と、前記加速度検出部及び前記オフセット検出部の各出力を処理するように構成された処理部(200)と、を有し、前記加速度検出部は、第1電極(1)と、第2電極(2)と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる第3電極(3)と、を有し、前記第1電極及び前記第2電極と、前記第3電極との一方が固定電極であり、他方が可動電極であり、前記第1電極と前記第3電極との間に第1可変容量(C1)が形成され、前記第2電極と前記第3電極との間に第2可変容量(C2)が形成され、前記オフセット検出部は、第4電極(4)と、第5電極(5)と、前記第4電極と前記第5電極との間に設けられる第6電極(6)と、を有し、前記第4電極、前記第5電極、及び前記第6電極が固定電極であり、前記第4電極と前記第6電極との間に第1固定容量(C3)が形成され、前記第5電極と前記第6電極との間に第2固定容量(C4)が形成される構成(第1の構成)である。
【0077】
上記第1の構成の加速度センサシステムにおいて、前記第1電極の形状及び大きさが、前記第2電極の形状及び大きさ、前記第4電極の形状及び大きさ、前記第6電極の形状及び大きさとそれぞれ同じであり、前記第3電極の形状及び大きさが、前記第6電極の形状及び大きさと同じである構成(第2の構成)であってもよい。
【0078】
上記第1又は第2の構成の加速度センサシステムにおいて、前記加速度センサは、前記第1電極及び前記第4電極に接続されるように構成された第1端子(T1)と、前記第3電極に接続されるように構成された第2端子(T2)と、前記第2電極及び前記第5電極に接続されるように構成された第3端子(T3)と、前記第6電極に接続されるように構成された第4端子(T4)と、を有する構成(第3の構成)であってもよい。
【0079】
上記第3の構成の加速度センサシステムにおいて、前記処理部は、前記第1端子から出力される電荷と前記第3端子から出力される電荷との差に応じた電圧を生成するように構成される構成(第4の構成)であってもよい。
【0080】
上記第1又は第2の構成の加速度センサシステムにおいて、前記加速度センサは、前記第1電極及び前記第5電極に接続されるように構成された第1端子(T11)と、前記第3電極及び前記第6電極に接続されるように構成された第2端子(T12)と、前記第2電極および前記第4電極に接続されるように構成された第3端子(T13)と、を有する構成(第5の構成)であってもよい。
【0081】
上記第5の構成の加速度センサシステムにおいて、前記処理部は、前記第2端子から出力される電荷に応じた電圧を生成するように構成される構成(第6の構成)であってもよい。
【0082】
上記第1又は第2の構成の加速度センサシステムにおいて、前記加速度センサは、前記第1電極に接続されるように構成された第1端子(T21)と、前記第3電極に接続されるように構成された第2端子(T22)と、前記第2電極に接続されるように構成された第3端子(T23)と、前記第4電極に接続されるように構成された第4端子(T24)と、前記第6電極に接続されるように構成された第5端子(T25)と、前記第5電極に接続されるように構成された第6端子(T26)と、を有する構成(第7の構成)であってもよい。
【0083】
上記第7の構成の加速度センサシステムにおいて、前記処理部は、前記第2端子から出力される電荷に応じた第1電圧を生成し、前記第5端子から出力される電荷に応じた第2電圧を生成し、前記第1電圧と前記第2電圧とを差分するように構成される構成(第8の構成)であってもよい。
【0084】
上記第7の構成の加速度センサシステムにおいて、前記処理部は、前記第1端子から出力される電荷と前記第3端子から出力される電荷との差に応じた第1電圧を生成し、前記第3端子から出力される電荷と前記第4端子から出力される電荷との差に応じた第2電圧を生成し、前記第1電圧と前記第2電圧とを差分するように構成される構成(第9の構成)であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1~6 電極
11~16 平板部
21、22 連結部
31、32 弾性構造部
41、41A、41B、42 支持部
43 ベース部
100 加速度センサ
100A 加速度検出部
100B オフセット検出部
101 接着剤
102 パッケージフレーム
200 処理部
200A、200F、200G 差動電荷電圧変換器
200B、200C、200D 電荷電圧変換器
200E、200H 差分演算器
C1、C2 可変容量
C3、C4 固定容量
SYS1~SYS3 加速度センサシステム
T1~T4、T11~T13、T21~T26 端子