IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイチコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-軌陸車用転車装置 図1
  • 特開-軌陸車用転車装置 図2
  • 特開-軌陸車用転車装置 図3
  • 特開-軌陸車用転車装置 図4
  • 特開-軌陸車用転車装置 図5
  • 特開-軌陸車用転車装置 図6
  • 特開-軌陸車用転車装置 図7
  • 特開-軌陸車用転車装置 図8
  • 特開-軌陸車用転車装置 図9
  • 特開-軌陸車用転車装置 図10
  • 特開-軌陸車用転車装置 図11
  • 特開-軌陸車用転車装置 図12
  • 特開-軌陸車用転車装置 図13
  • 特開-軌陸車用転車装置 図14
  • 特開-軌陸車用転車装置 図15
  • 特開-軌陸車用転車装置 図16
  • 特開-軌陸車用転車装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035647
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】軌陸車用転車装置
(51)【国際特許分類】
   B60F 1/04 20060101AFI20240307BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60F1/04
B61D15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140237
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明夫
(57)【要約】
【課題】格納された接地用回転板を容易に回転ロックすることが可能な軌陸車用転車装置を提供する。
【解決手段】転車装置110は、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル130を有し、回転支持テーブル130は、左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121Rの各下端部を繋ぐように水平に設けられた上板131と、上板131の下部に回転自在に設けられた下板135とを有している。転車用ジャッキ120により下板135を上方に移動させて格納させた状態において、上板131に対し下板135を基準回転角度位置まで回転させたときに、下板135の回転を規制するように作動する回転ロック機構140を設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路および軌道を走行可能な軌陸車の車体に設けられ前記車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、前記転車用ジャッキの下端部に設けられた回転板支持部材と、前記回転板支持部材の下部に上下軸回りに回転自在に設けられた接地用回転板と、を有して構成され、前記転車用ジャッキを下方に伸長させて前記接地用回転板を接地させて前記車体を地面から持ち上げ、前記接地用回転板に対して前記回転支持部材および前記転車用ジャッキを回転させて前記車体の方向転換を行うことを可能とする軌陸車用転車装置であって、
前記転車用ジャッキの縮小により前記接地用回転板を上方に移動させて前記接地用回転板を格納させた状態において、前記回転板支持部材に対して前記接地用回転板が所定の回転角度位置に位置した状態で前記接地用回転板の回転を規制する回転ロック機構を有し、
前記接地用回転板を格納させた状態において、前記回転板支持部材に対して前記接地用回転板を前記所定の回転角度位置まで回転させたときに、前記回転ロック機構が作動して前記接地用回転板の回転を規制するように構成されていることを特徴とする軌陸車用転車装置。
【請求項2】
前記回転ロック機構は、
前記車体に固定されたロックピン支持部材と、
上下方向に延び前記ロックピン支持部材に所定距離範囲内上下動自在に支持されたロックピン部材と、
前記ロックピン支持部材により支持された前記ロックピン部材を下方に向けて付勢する付勢部材と、を有し、
前記転車用ジャッキの縮小により前記接地用回転板を上方に移動させて前記接地用回転板を格納させた状態において、前記接地用回転板の上面部に、前記付勢部材の付勢力により前記ロックピン部材の下端部が押し当てられ、
前記接地用回転板を格納させた状態において、前記回転板支持部材に対して前記上下軸回りに回転される前記接地用回転板の上面部において、前記ロックピン部材の下端部が前記上面部に押し当てられながら前記上下軸を中心とする円状経路を通り、
前記接地用回転板を前記所定の回転角度位置まで回転させたときに、前記円状経路上に形成された被嵌入部内に前記ロックピン部材の下端部が嵌入することで、前記接地用回転板の回転を規制する構成であることを特徴とする請求項1に記載の軌陸車用転車装置。
【請求項3】
前記接地用回転板が非接地の状態において、前記回転支持部材に対して前記接地用回転板を回転作動させることが可能な回転駆動装置を備えていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の軌陸車用転車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路および軌道を走行可能な軌陸車の方向転換を行うための軌陸車用転車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軌陸車は、道路走行用車輪(以下、タイヤ車輪とも称する)によって道路走行自在に構成された車体の前後左右に、各々張出/格納自在な軌道走行用車輪(以下、鉄輪とも称する)を設け、この軌道走行用車輪を張り出した状態で鉄道の軌道(レール)上を走行可能な軌道走行装置を有し、軌道上でトロリ線などの鉄道設備の工事・点検を行う際に広く用いられている。また軌陸車は、通常、道路上(例えば踏切)から軌道上へ車体を載せる際や車体を軌道上から道路上(例えば踏切)へ降ろす際に、車体の方向転換を行うための転車装置を備えている。ここで、車体を軌道上へ載せることを「載線」といい、車体を軌道上から降ろすことを「退線」という。
【0003】
転車台とも称される転車装置は、軌陸車の車体に設けられ車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、転車用ジャッキの下端部に設けられた回転板支持部材と、回転板支持部材の下部に上下軸回りに回転自在に設けられた接地用回転板とを有して構成される。そして、転車装置では、転車用ジャッキを下方に伸長させて接地用回転板を接地させて車体を地面から持ち上げ、接地用回転板に対して回転支持部材および転車用ジャッキを回転させることによって、車体の方向転換を行うことを可能とする。
【0004】
軌陸車の走行時など転車装置を使用しないとき、接地用回転板は転車用ジャッキにより上方に移動されて所定の高さ位置(「格納高さ位置」とも称する)において格納される。格納されるとき接地用回転板は、回転板支持部材に対して上下軸回り所定の回転角度位置(「基準回転角度位置」とも称する)に位置するように回転される。一方、載線する際や退線する際など転車装置を使用するとき接地用回転板は、回転板支持部材に対して、接地される地面の状況(例えば傾き方向)に適した回転角度位置に回転された状態で使用される。このように接地用回転板は、格納される過程や接地される過程において回転板支持部材に対して回転されることが多い。
【0005】
従来、格納された接地用回転板が軌陸車の走行時の振動等により不意に回転してしまうことを防止するために、接地用回転板の回転を規制する回転ロック機構を備えた転車台も知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5635817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような回転ロック機構を備えることで、接地用回転板を安定して格納保持することが可能となる。しかし、従来の回転ロック機構は、手動操作によりロック作動する構成のため、回転ロック機構を作動させて接地用回転板を回転ロック(回転規制)するのに手間がかかり、作業効率が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、格納された接地用回転板を容易に回転ロックすることが可能な軌陸車用転車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る軌陸車用転車装置は、道路および軌道を走行可能な軌陸車の車体に設けられ前記車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、前記転車用ジャッキの下端部に設けられた回転板支持部材(例えば、実施形態における回転支持テーブル130を構成する上板131)と、前記回転板支持部材の下部に上下軸回りに回転自在に設けられた接地用回転板(例えば、実施形態における回転支持テーブル130を構成する下板135)と、を有して構成され、前記転車用ジャッキを下方に伸長させて前記接地用回転板を接地させて前記車体を地面から持ち上げ、前記接地用回転板に対して前記回転支持部材および前記転車用ジャッキを回転させて前記車体の方向転換を行うことを可能とする軌陸車用転車装置であって、前記転車用ジャッキの縮小により前記接地用回転板を上方に移動させて前記接地用回転板を格納させた状態において、前記回転板支持部材に対して前記接地用回転板が所定の回転角度位置に位置した状態で前記接地用回転板の回転を規制する回転ロック機構を有し、前記接地用回転板を格納させた状態において、前記回転板支持部材に対して前記接地用回転板を前記所定の回転角度位置まで回転させたときに、前記回転ロック機構が作動して前記接地用回転板の回転を規制するように構成される。
【0010】
上記構成の軌陸車用転車装置において、前記回転ロック機構は、前記車体に固定されたロックピン支持部材と、上下方向に延び前記ロックピン支持部材に所定距離範囲内上下動自在に支持されたロックピン部材と、前記ロックピン支持部材により支持された前記ロックピン部材を下方に向けて付勢する付勢部材(例えば、実施形態における付勢バネ144)と、を有し、前記転車用ジャッキの縮小により前記接地用回転板を上方に移動させて前記接地用回転板を格納させた状態において、前記接地用回転板の上面部に、前記付勢部材の付勢力により前記ロックピン部材の下端部が押し当てられ、前記接地用回転板を格納させた状態において、前記回転板支持部材に対して前記上下軸回りに回転される前記接地用回転板の上面部において、前記ロックピン部材の下端部が前記上面部に押し当てられながら前記上下軸を中心とする円状経路を通り、前記接地用回転板を前記所定の回転角度位置まで回転させたときに、前記円状経路上に形成された被嵌入部(例えば、実施形態におけるロックピン嵌入孔135a)内に前記ロックピン部材の下端部が嵌入することで、前記接地用回転板の回転を規制する構成とすることが好ましい。
【0011】
上記構成の軌陸車用転車装置において、前記接地用回転板が非接地の状態において、前記回転支持部材に対して前記接地用回転板を回転作動させることが可能な回転駆動装置を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る軌陸車用転車装置によれば、格納された接地用回転板を回転板支持部材に対して所定の回転角度位置まで回転させたときに、回転ロック機構が作動して接地用回転板の回転を規制するように構成されているので、回転ロック機構を作動させるために手動操作する必要がなく、接地用回転板を容易に回転ロックすることが可能となる。
【0013】
また、上記構成の軌陸車用転車装置において、回転ロック機構を、車体に固定されたロックピン支持部材と、ロックピン支持部材に所定距離範囲内上下動自在に支持されたロックピン部材と、ロックピン支持部材により支持されたロックピン部材を下方に向けて付勢する付勢部材とを有する構成とすることで、回転ロック機構を安定して作動可能な堅牢な構成とすることが可能となる。
【0014】
また、上記構成の軌陸車用転車装置において、接地用回転板が非接地の状態において、回転支持部材に対して回転板を回転作動させることが可能な回転駆動装置を備えることで
、回転駆動装置の動力により接地用回転板を所定の回転角度位置まで容易に回転させて回転ロック機構により回転ロックすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る軌陸車用転車装置が設けられた軌陸作業車の外観を示す側面図である。
図2】上記軌陸車用転車装置の概要構成を示す車体後方からの斜視図である。
図3】上記軌陸車用転車装置の下部の概要構成を示す車体後方からの正面図である。
図4】上記軌陸車用転車装置の回転支持テーブルにおける上板に対する下板の回転角度位置の一態様を示す平面図である。
図5】上記回転支持テーブルにおける上板に対する下板の回転角度位置の別態様を示す平面図である。
図6】上記軌陸車用転車装置における回転ロック機構の概要構成を示す車体前方からの正面断面図である。
図7】上記回転ロック機構がロックピン上方移動検出状態にあるときの概要構成を示す車体前方からの正面断面図である。
図8】上記軌陸車用転車装置における転車台高さ位置検出器の概要構成を示す概略図である。
図9】上記転車台高さ位置検出器を構成するリミットスイッチの概要構成を示す概略図である。
図10】上記回転支持テーブルにおける下板が第1中間高さ位置に位置するときの状態を示す概略図である。
図11】上記回転支持テーブルにおける下板が第2中間高さ位置に位置するときの状態を示す概略図である。
図12】上記回転支持テーブルにおける下板の回転中心位置と鉄輪との位置関係を示す概略図である。
図13】上記軌陸車用転車装置の制御構成を示すブロック図である。
図14】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第1段階を示す概略図である。
図15】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第2段階を示す概略図である。
図16】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第3段階を示す概略図である。
図17】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第4段階を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明に係る軌陸車用転車装置が設けられた軌陸作業車1の側面図を図1に示す。図1において軌陸作業車1は、前部に運転キャビン4を設けた車体2を有し、車体2の前部に配設された左右一対のタイヤ車輪である操舵輪3Sと、車体2の後部に配設された左右一対のタイヤ車輪である駆動輪3Dとからなる道路走行用車輪によって道路上を走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、シャシフレーム5とシャシフレーム5上に取り付けられたサブフレーム6とからなる車体フレームを有して構成されている。ここで、図1では車体2の左側の操舵輪3S及び駆動輪3Dのみを図示しているが、車体2の右側にも同様の操舵輪3S及び駆動輪3Dが設けられている。
【0017】
車体2における操舵輪3Sの後方および駆動輪3Dの後方には、作業用ジャッキ15が設けられている。作業用ジャッキ15は、車体フレームに固定保持される上部ジャッキ体15aと、上部ジャッキ体15a内に下方に移動自在に配設された下部ジャッキ体15bと、その内部に上部ジャッキ体15aと下部ジャッキ体15bを繋いで設けられたジャッキシリンダ16を有して構成される。このジャッキシリンダ16が伸縮駆動することによって、上部ジャッキ体15aに対して下部ジャッキ体15bが下方に向けて伸縮作動する
ようになっている。作業用ジャッキ15は、主に軌陸作業車1が作業する際に使用されるものであり、ジャッキシリンダ16の伸縮駆動により下部ジャッキ体15bが下方に向けて伸縮作動することで車体2を持ち上げ支持し、それにより車体2全体を安定支持させた状態とする。操舵輪3Sの後方の作業用ジャッキ15の後部側には、車体フレームに対して上下揺動自在に支持された前鉄輪12Fと、前鉄輪12Fを格納位置(図中、二点鎖線で示す位置)と張出位置(図中、実線で示す位置)との間で上下揺動作動させるための前鉄輪揺動シリンダ13Fとが設けられている。また、駆動輪3Dの後方の作業用ジャッキ15の後部側には、車体フレームに対して上下揺動自在に支持された後鉄輪12Rと、後鉄輪12Rを格納位置(図中、二点鎖線で示す位置)と張出位置(図中、実線で示す位置)との間で上下揺動作動させるための後鉄輪揺動シリンダ13Rとが設けられている。
【0018】
ここで、上述した格納位置とは、軌陸作業車1が操舵輪3S及び駆動輪3Dによって道路などを走行する際に、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを、走行路面より上側となる所定の高さまで上昇させた位置(図1で二点鎖線で示す前鉄輪12F及び後鉄輪12Rの位置)をいう。また、上述した張出位置とは、図1において実線で示すように、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rが軌道上に位置し、操舵輪3Sおよび駆動輪3Dが軌道50から離れて上方に位置し、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rにより軌道50の上を走行可能となる位置まで、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを張り出した位置をいう。
【0019】
なお、図1では車体2の左側の前鉄輪12F及び後鉄輪12Rのみを図示しているが、車体2の右側にも同様の前鉄輪12F及び後鉄輪12Rが設けられている。また、作業用ジャッキ15、前鉄輪揺動シリンダ13F及び後鉄輪揺動シリンダ13Rについては、車体2の左側に設けられたもののみを図示しているが、車体2の右側にも同様の作業用ジャッキ15、前鉄輪揺動シリンダ13F及び後鉄輪揺動シリンダ13Rが設けられている。
【0020】
車体2の中央下部には転車装置110が設けられている。転車装置110は、車体2の下部に設けられ下方に向かって伸縮可能な転車用ジャッキ120と、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル130とを有して構成されている。転車用ジャッキ120は、前後方向に互いにずれて左右方向(車幅方向)に互いに離間して並んで配置された2個の伸縮ポスト(左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121R)を有している。左伸縮ポスト121Lは、その内部に設けられた転車台伸縮シリンダ122Lの伸縮駆動により、下方に向けて上下方向に伸縮作動可能に構成されている。同様に、右伸縮ポスト121Rは、その内部に設けられた転車台伸縮シリンダ122Rの伸縮駆動により、下方に向けて上下方向に伸縮作動可能に構成されている。なお、左伸縮ポスト121Lの伸縮作動量と右伸縮ポスト121Rの伸縮作動量は、互いに同じとなるように調整することも可能であり互いに異なるように調整することも可能である。転車用ジャッキ120は、2個の伸縮ポスト121L,121Rが上下方向に伸縮作動することにより下方に向けて上下方向に伸縮作動可能に構成されている。
【0021】
回転支持テーブル130は、転車用ジャッキ120の下端部において2個の伸縮ポスト121L,121Rの各下端部を繋ぐように水平に設けられた上板131と、上板131の下部に上下軸回りに回転自在に水平に設けられた下板135とを有して構成されている。転車台110は、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130の下板135を接地させて車体2を地面から持ち上げ、下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120を回転させることによって、車体2の方向転換を行うことを可能とする。なお、転車装置110については詳細後述する。
【0022】
サブフレーム6の車体前後方向の中間における左側端部には操作ボックス70が設けられている。この操作ボックス70は、上述した転車装置110の作動を操作するための操作装置などを有しており、その詳細については後述する。
【0023】
運転キャビン4の後方にある架装領域の前部(サブフレーム6の前部)には、旋回モータ21により駆動されて水平旋回可能に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱22には、フートピン23を軸としてブーム30が上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。ブーム30は、フートピン23により支柱22に起伏自在に取り付けられた基端ブーム30aと、中間ブーム30bと、先端ブーム30cとが入れ子式に組み合わされて構成されている。ブーム30の内部にはブーム伸縮シリンダ31が設けられており、このブーム伸縮シリンダ31の伸縮駆動によりブーム30を長手方向に伸縮作動させることができるように構成されている。基端ブーム30aと支柱22の間にはブーム起伏シリンダ32が跨設されており、このブーム起伏シリンダ32の伸縮駆動によりブーム30を上下面内において起伏作動させることができるように構成されている。
【0024】
先端ブーム30cの先端部には、作業台支持ブラケット35がブーム30の起伏面内において揺動可能に取り付けられている。作業台支持ブラケット35は、内部に設けられたレベリングシリンダ36の伸縮作動によりブーム30の起伏角度によらず作業台支持ブラケット35の上面が常時水平に保持されるように構成されている。なお、レベリングシリンダ36の伸縮駆動は、作業台40の傾斜角度を検出する傾斜角センサ(図示略)の検出値に応じて制御される。そして、この作業台支持ブラケット35の上面に作業台40が水平旋回自在に取り付けられている。作業台支持ブラケット35の内部には首振りモータ41が設けられており、この首振りモータ41を駆動させることにより作業台40を作業台支持ブラケット35に対して水平旋回(首振り作動)させることができるように構成されている。上記のように作業台支持ブラケット35の上面は常時水平に保持されるため、作業台40の床面もブーム30の起伏角度によらず水平に保持されるようになっている。作業台40には、旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41などの各種油圧アクチュエータの駆動を操作するための操作装置などを有する作業台操作ボックス42が設けられている。
【0025】
以上のように構成した軌陸作業車1は、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを格納し、操舵輪3S及び駆動輪3Dによって道路などを走行することが可能であるとともに、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを軌道上に張り出し、軌道上を走行することも可能である。このように、道路走行と軌道走行とを切り替えるために、上述の転車装置110を備えている。
【0026】
前述したように転車装置110は、図2にも示すように、左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121Rから構成される転車用ジャッキ120と、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル130とを有して構成されている。回転支持テーブル130は、転車用ジャッキ120の下端部において左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121Rの各下端部を繋ぐように水平に設けられた上板131と、上板131の下部に上下に延びる回転中心軸Oの回りに、転車ベアリング134を介して回転自在に水平に設けられた下板135とを有して構成されている。転車ベアリング134の外輪は下板135の上面に固定されており、この外輪には大径の回転ギヤ136が固定されている。上板131の側部には回転駆動モータ132が設けられており、この回転駆動モータ132から下方に突出する駆動軸にピニオンギヤ133が取り付けられている。このピニオンギヤ133は回転ギヤ136と噛合している。このため、回転駆動モータ132によりピニオンギヤ133を回転駆動するとこれと噛合する回転ギヤ136に回転駆動力を伝えて、回転ギヤ136が取り付けられた下板135を上板131に対して回転させることができる。
【0027】
左伸縮ポスト121Lと右伸縮ポスト121Rは同様の構成を有しており、ここでは左伸縮ポスト121Lを例にとって説明する。左伸縮ポスト121Lは、車体フレームに固
定されたアウタポスト123と、アウタポスト123内に上下動可能に配置されるインナポスト124と、左伸縮ポスト121L内に配置される転車台伸縮シリンダ122L(図3を参照)と、回転支持テーブル130の上板131の上面に固定されたベースプレート125とを有して構成されている。転車台伸縮シリンダ122Lの下端部は、ベースプレート125とピン結合されており、このピン結合部を介してインナポスト124はベースプレート125に対し若干揺動可能に結合されている。これにより、回転支持テーブル130は、左伸縮ポスト121Lに対して若干傾動できる構成となっている。右伸縮ポスト121Rの構成および右伸縮ポスト121Rと回転支持テーブル130との関係は、上述した内容と同様であるので、説明は省略する。
【0028】
上述したように回転支持テーブル130においては、上板131に対し下板135が回転中心軸O回りに回転可能となっている。具体的には下板135は、図4に示すように、その短手方向が前後方向(回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1の方向)に延び、長手方向が左右方向(回転中心軸Oを通って車体幅方向に延びる左右軸A2の方向)に延びる状態となる回転角度位置を基準回転角度位置として、回転中心軸Oの回りに360°、任意の回転角度位置に回転移動させることができる。下板135は、平面視において180°回転対称の形状を有しており、基準回転角度位置にある下板135を回転中心軸Oを中心に右回りまたは左回りに90°回転移動させると、図5に示すように下板135は、その長手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延び、短手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延びる状態となる回転角度位置(「直角回転角度位置」とも称する)に移動する。
【0029】
転車装置110は、図2に示すように、基準回転角度位置にある下板135の回転を規制する回転ロック機構140を備えている。この回転ロック機構140は、図6に示すように、右伸縮ポスト121Rのアウタポスト123の側面部に取付ブラケット141を介して固定された、上下方向に延びる円筒状のロックピン支持体142と、ロックピン支持体142内に挿入保持された、上下方向に延びる円柱状のロックピン143とを備えている。ロックピン支持体142の上端側の側面部の2位置には、上下方向に延びたガイド孔142aが形成されており、ロックピン143の側面部の2位置には、ロックピン支持体142の側面部に形成されたガイド孔142aを通って外方に突出するガイドピン143aが設けられている。また、ロックピン支持体142の下端側の側面部の2位置には、外方に延びるバネ掛けピン142bが形成されており、このバネ掛けピン142bとロックピン143のガイドピン143aとの間には、ロックピン143を下方に向けて付勢する付勢バネ144が架け渡されている。ロックピン143の下端部には回転ローラ145が回転自在に取り付けられており、ロックピン143の上端部には側方へ突出する2本のストッパピン143cが設けられている。取付ブラケット141には、ロックピン143のストッパピン143cに下側から当接してロックピン143を支持可能なストッパ台座141aが設けられている。また、取付ブラケット141には、ロック作動検出器146が設けられている。このロック作動検出器146は、回転レバー式のリミットスイッチにより構成され、回転レバー146aの先端部がロックピン143の上方に位置するように配置されている。
【0030】
回転支持テーブル130の上板131にはロックピン挿通孔131aが形成されており、回転ロック機構140のロックピン143は、このロックピン挿通孔131aから下方に突出することが可能になっている。一方、回転支持テーブル130の下板135には、下板135が基準回転角度位置にあるときに、上板131のロックピン挿通孔131aと対向する位置に配置された、ロックピン挿通孔131aよりも小径のロックピン嵌入孔135aが形成されている。このロックピン嵌入孔135aは、図4および図5に示すように、平面視において下板135の上面に仮想的に設定される、回転中心軸Oを中心とする円状経路CP上の2位置(回転中心軸Oに対し互いに対称な位置)に形成されている。こ
の円状経路CPは、平面視において回転中心軸Oからロックピン挿通孔131aの中心までの距離と等しい長さの半径を有している。
【0031】
上記のように構成された回転ロック機構140においては、付勢バネ144により下方に付勢されストッパ台座141aにより支持されたロックピン143が、図6に示すように、上板131のロックピン挿通孔131aから下方に突出し、さらにロックピン143の下端部(回転ローラ145)が下板135のロックピン嵌入孔135a内に嵌入することにより、下板135の回転ロックが可能となる。このような回転ロック状態となるのは、例えば、下板135が基準回転角度位置にある状態の回転支持テーブル130が、転車用ジャッキ120の上方への縮小により上昇した場合がある。この回転支持テーブル130の上昇により、ロックピン143の下端部が下板135のロックピン嵌入孔135a内に嵌入することになる高さ位置(「格納高さ位置」とも称する)まで下板135が上昇することにより、回転ロック状態となる。
【0032】
一方、下板135が基準回転角度位置にない状態の回転支持テーブル130が上昇した場合には、格納高さ位置まで移動する途中の下板135の上面がロックピン143の回転ローラ145に下から当接し、ロックピン143を付勢バネ144の付勢力に抗して上方に移動させる。この状態で、下板135を回転中心軸O回りに回転させると、付勢バネ144により下方に付勢されたロックピン143の回転ローラ145が下板135の上面に押し当てられながら円状経路CP上を転動する。そして、下板135が基準回転角度位置まで回転移動されると、円状経路CP上に形成された下板135のロックピン嵌入孔135a内に、ロックピン143の回転ローラ145が自動的に嵌入し、これにより回転ロック状態となる。なお、ロックピン143が上方に所定距離に移動すると、ロックピン143の上端部が、ロック作動検出器146の回転レバー146aの先端部に下から当接し、回転レバー146aを上方に揺動させる。これにより、ロック作動検出器146からオン信号(「ロック作動検出信号」とも称する)が出力される。図7に、下板135に押し上げられてロックピン143が上方に移動し、ロックピン143の上端部が回転レバー146aの先端部に当接して回転レバー146aを上方に揺動させたときの状態(「ロックピン上方移動検出状態」とも称する)を示す。なお、図7では、回転ロック機構140を大幅に簡略化して図示している。この点は、後述する図10図11でも同様である。ロック作動検出器146の回転レバー146aが上方に揺動していないときは、ロック作動検出器146からオフ信号が出力される。
【0033】
回転ロック機構140による下板135の回転ロックは、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130を降下させることで自動的に解除することができる。すなわち、回転支持テーブル130の降下により下板135が下方に移動し、これにより下板135のロックピン嵌入孔135aからロックピン143の回転ローラ145が抜け出ることによって、下板135の回転ロックが自動的に解除される。
【0034】
転車装置110は、図8に示すように、3個の回転レバー式のリミットスイッチ112A,112B,112Cを有して構成された転車台高さ位置検出器111を備えている。この転車台高さ位置検出器111は、転車用ジャッキ120の伸縮作動量に応じて上下方向に移動する回転支持テーブル130(下板135)の高さ位置を検出するものである。3個のリミットスイッチ112A,112B,112Cは、左伸縮ポスト121Lまたは右伸縮ポスト121Rのアウタポスト123の側面部に取り付けられているが、図8ではアウタポスト123の図示は省略し、インナポスト124と3個のリミットスイッチ112A,112B,112Cとの位置関係を示している。
【0035】
3個のリミットスイッチ112A,112B,112Cの構成は共通しているので、ここでは、リミットスイッチ112Aを例にとって説明する。アウタポスト123の側面部
には、リミットスイッチ112Aの回転レバー113が挿通可能なレバー挿通孔123aが形成されており、回転レバー113は、その先端部(ローラ部)がレバー挿通孔123aからインナポスト124の側面部に向けて突出するように配置されている。インナポスト124の側面部には、アウタポスト123に対するインナポスト124の上下移動に応じて回転レバー113の先端部と係合可能となるレバー係合孔124aが形成されており、回転レバー113は、その先端部がレバー係合孔124aからインナポスト124の内部に突出した状態(図9に示す状態)となる位置(「基準位置」とも称する)と、その先端部がレバー係合孔124aから出てインナポスト124の側面部に乗り上げた状態となる位置との間を揺動可能に構成されている。そして、リミットスイッチ112Aは、回転レバー113が基準位置にあるときはオン信号を出力し、回転レバー113が基準位置から所定角度揺動するとオフ信号を出力するようになっている。
【0036】
図8に示すように、リミットスイッチ112Bは、その回転レバー113の先端部(ローラ部)が、インナポスト124の上下移動に応じて、レバー係合孔124aとは別にインナポスト124の側面部に形成されているレバー係合孔124bと係合可能となる位置に配置されている。また、リミットスイッチ112Cは、その回転レバー113の先端部(ローラ部)が、インナポスト124の上下移動に応じて、リミットスイッチ112Bとは異なるタイミングでレバー係合孔124bと係合可能となる位置に配置されている。転車台高さ位置検出器111では、3個のリミットスイッチ112A,112B,112Cからの出力信号の状態によって、回転支持テーブル130の下板135の高さ位置が検出できるようになっている。具体的には、リミットスイッチ112A,112Bからの出力信号が共にオン信号であり、リミットスイッチ112Cからの出力信号がオフ信号である場合は、回転支持テーブル130の下板135が格納高さ位置に位置している状態(図6に示す状態)であることを示す。また、リミットスイッチ112Bからの出力信号がオン信号であり、リミットスイッチ112A,112Cからの出力信号が共にオフ信号である場合は、回転支持テーブル130の下板135が格納高さ位置から第1中間高さ位置までの間の高さ位置に位置している状態であることを示す。第1中間高さ位置は、当該第1中間高さ位置か当該第1中間高さ位置より低い位置に下板135が位置していれば、回転ロック機構140による下板135の回転ロックが作動することはないという境界位置として設定される高さ位置で、例えば図10に示す状態の下板135の高さ位置である。
【0037】
また、リミットスイッチ112A,112Bからの出力信号が共にオフ信号であり、リミットスイッチ112Cからの出力信号がオン信号である場合は、回転支持テーブル130の下板135が第1中間格納高さ位置から第2中間格納高さ位置までの間の高さ位置に位置している状態であることを示す。第2中間格納高さ位置は、当該第2中間高さ位置より低い位置に下板135が位置してるときに下板135を回転させると下板135が地面に接触する可能性が生じるという境界位置として設定される高さ位置で、例えば図11に示す状態の下板135の高さ位置である。また、リミットスイッチ112A,112B,112Cからの出力信号がいずれもオフ信号である場合は、回転支持テーブル130の下板135が第2中間格納高さ位置よりも低い高さ位置に位置している状態(下板135が接地している状態も含む)であることを示す。
【0038】
転車装置110において、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130の下板135を接地させて車体2を地面から持ち上げ支持することが可能である。そして、このように持ち上げ支持した状態で、下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120を回転させることによって、車体2の方向転換を行い、載線作業・退線作業を行うことが可能である。この方向転換は、転車装置110により車体2を持ち上げ支持した状態で、作業者が車体を押して下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120を回転させ回転させて行う。
【0039】
転車装置110は、車体2の中央下部に位置して設けられているが、上板131に対する下板135の回転中心となる上下に延びる回転中心軸Oが軌陸作業車1の重心位置に位置するようになっている。さらに、左右一対の前鉄輪12F、12Fは車体幅方向において左右対称に位置して設けられており、左右一対の後鉄輪12R、12Rも車体幅方向において左右対称に位置して設けられている。すなわち、図12に示すように、回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1に対して、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがそれぞれ左右対称に位置して設けられている。また、左右一対の前鉄輪12F、12Fを繋ぐ前鉄輪軸A3および左右一対の後鉄輪12R、12Rを繋ぐ後鉄輪軸A4は、回転中心軸Oを通って幅方向に延びる左右軸A2と平行である。なお、図12においては、軌陸作業車1をその外形形状で簡略化して示しており、そこに説明に必要な構成要素のみを位置関係が分かるように概略的に図示している。例えば、転車装置110については下板135のみを示し、その下板135の形状も簡略化して長方形として示している。
【0040】
なお、転車装置110においては、上述のように、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130を下方に張り出して車体支持を行って載線作業、退線作業を行うが、道路走行時および軌道走行時には転車用ジャッキ120を上方に縮小して回転支持テーブル130を上方に移動させて格納保持する。回転支持テーブル130を下方に張り出す際や回転支持テーブル130を上方に移動させて格納保持する際に、回転支持テーブル130の下板135を回転中心軸O回りに回転させ、下板135を所定の回転角度位置に回転移動させる。例えば、載線作業・退線作業を行う際には、下板135の長手方向が軌道の延びる方向に直交し、短手方向が軌道の延びる方向に平行となる回転角度位置まで下板135を回転させる。また、回転支持テーブル130を格納保持する際には、下板135の長手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延び、短手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延びる状態となる基準回転角度位置まで下板135を回転させて保持する。
【0041】
次に、転車装置110における転車用ジャッキ120の伸縮作動および回転支持テーブル130の下板135の回転作動の作動制御について、図13を追加参照して説明する。図1に示した操作ボックス70には、転車台回転操作装置71および転車台昇降操作装置72が設けられている。これらの操作装置は、操作レバーや操作ダイヤル等の操作具を備えており、この操作具が操作されると、その操作方向および操作量に応じた操作信号をコントロールユニットCUに出力するようになっている。コントロールユニットCUは、転車台回転操作装置71から出力された操作信号に応じて回転駆動モータ132の駆動を制御して回転支持テーブル130の下板135の回転作動を制御する。また、コントロールユニットCUは、転車台昇降操作装置72から出力された操作信号に応じて転車台伸縮シリンダ122L,122Rの駆動を制御して転車用ジャッキ120の伸縮作動を制御する。
【0042】
転車台伸縮シリンダ122L,122Rは油圧で駆動しており、油圧バルブユニットVU内には、転車台伸縮シリンダ122L,122Rに対応した電磁比例制御弁が配設されている。油圧バルブユニットVUには、車体走行用のエンジンEからパワーテイクオフ機構PTOを介して伝達される駆動力によって駆動する油圧ポンプPによって作動油タンクT内の作動油が供給されている。コントロールユニットCUは、転車台伸縮シリンダ122L,122Rに対応した電磁比例制御弁の駆動を制御して転車台伸縮シリンダ122L,122Rの駆動を制御する。
【0043】
また、コントロールユニットCUには、転車台高さ位置検出器111(リミットスイッチ112A,112B,112C)からの出力信号と、ロック作動検出器146からの出力信号が随時入力されている。コントロールユニットCUは、転車台高さ位置検出器11
1からの出力信号が、下板135が第1中間高さ位置から第2中間高さ位置までの間の高さ位置に位置していることを示す場合(リミットスイッチ112A,112Bからの出力信号が共にオフ信号であり、リミットスイッチ112Cからの出力信号がオン信号である場合)は回転駆動モータ132の駆動を許容する。すなわち、コントロールユニットCUは、転車台回転操作装置71から出力された操作信号に応じて回転駆動モータ132を駆動させて下板135を回転させる。一方、コントロールユニットCUは、転車台高さ位置検出器111からの出力信号が、下板135が第1中間高さ位置から第2中間高さ位置までの間の高さ位置とは異なる高さ位置に位置していることを示す場合は回転駆動モータ132の駆動を規制する。すなわち、コントロールユニットCUは、転車台回転操作装置71から操作信号が出力されてもそれには応じずに回転駆動モータ132を駆動させず下板135を回転させない。
【0044】
但し、コントロールユニットCUは、転車台高さ位置検出器111からの出力信号が、下板135が格納高さ位置から第1中間高さ位置までの間の高さ位置に位置していることを示す場合(リミットスイッチ112Bからの出力信号がオン信号であり、リミットスイッチ112A,112Cからの出力信号が共にオフ信号である場合)であって、かつロック作動検出器146からの出力信号がオン信号(ロック作動検出信号)である場合は回転駆動モータ132の駆動を許容する。すなわち、この場合、コントロールユニットCUは、転車台回転操作装置71から出力された操作信号に応じて回転駆動モータ132を駆動させて下板135を回転させる。なお、このような場合となるのは、下板135が基準回転角度位置にない状態の回転支持テーブル130が上昇し、下板135の上面がロックピン143の回転ローラ145に下から当接し、ロックピン143を付勢バネ144の付勢力に抗して上方に移動させ、ロックピン143の上端部が、ロック作動検出器146の回転レバー146aの先端部に下から当接し、回転レバー146aを上方に揺動させたときである。この場合に、回転駆動モータ132を駆動させて下板135を回転させると、下板135が基準回転角度位置まで回転移動した際に、回転ロック機構140により下板135が回転ロックされることは前述した通りである。
【0045】
次に、転車装置110を用いて道路走行と軌道走行とを切り替える作業(載線作業および退線作業)について、図14図17を追加参照して説明する。これらの図においては、軌陸作業車1をその外形形状で簡略化して示し、そこに説明に必要な構成要素のみを位置関係が分かるように概略的に図示している。転車装置110については下板135のみを示し、その下板135の形状も簡略化して長方形として示している。
【0046】
載線作業を行う場合は、まず、図14に示すように、踏切内に軌陸作業車1を進入させて停車させる。このとき、転車装置110における下板135の回転中心軸Oが、レールR,Rの中央位置に位置するように軌陸用作業車1を移動させる必要がある。これは、前述したように、回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1に対して、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがそれぞれ左右対称に位置して設けられているからである(図12を参照)。図14は、下板135の回転中心軸Oが、レールR,Rの中央位置に位置した状態を示している。なお、このとき下板135は、格納高さ位置において、その長手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延び、短手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延びた状態となる基準回転角度位置に位置しており、回転ロック機構140により回転ロックされた状態で格納保持されている。
【0047】
次に載線作業の作業者は、操作ボックス70の転車台昇降操作装置72を操作して、転車用ジャッキ120を下方に伸長作動させ、下板135が第1中間高さ位置と第2中間高さ位置との間の高さ位置に位置するように回転支持テーブル130を下方に移動させて停止させる。なお、下板135が第1中間高さ位置と第2中間高さ位置との間の高さ位置に位置したことを、音や光等によって作業者に報知するようにしてもよい。そして、作業者
は、操作ボックス70の転車台回転操作装置71を操作して、回転駆動モータ132を作動させ、下板135の長手方向がレールR,Rの延びる方向と直交する状態となる回転角度位置まで回転移動させる。この状態から作業者は、転車台昇降操作装置72を操作して転車用ジャッキ120をさらに下方に伸長作動させて回転支持テーブル130を下方に移動させ、下板135を接地させて転車装置110により車体2を持ち上げ支持する。
【0048】
次いで作業者は、転車装置110により持ち上げ支持された車体2を押して、下板135に対して上板131およびこれに繋がる軌陸用作業車1の車体2を回転させる。この車体2の回転作業により、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12RをレールR,Rの真上に位置させる。下板135の回転中心軸Oが、レールR,Rの中央位置に位置していれば、転車装置110により車体2を持ち上げ支持し、下板135に対して軌陸用作業車1の車体2を回転中心軸O回りに回転させることにより、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12RをレールR,Rの真上に位置させることができる。
【0049】
次に載線作業の作業者は鉄輪を張り出した後、転車台昇降操作装置72を操作して、転車用ジャッキ120を上方に縮小作動させ、回転支持テーブル130(上板131および下板135)を引き上げる。これにより、転車装置110による車体2の持ち上げ支持が解放され、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12RがレールR,Rの上に載り、図1に示す状態となる。なお、このとき下板135が基準回転角度位置に位置している場合(車体2を回転させたことで下板135が基準回転角度位置に戻った場合)は、回転支持テーブル130を引き上げていく過程で、回転ロック機構140におけるロックピン143の先端部(回転ローラ145)が下板135のロックピン嵌入孔135a内に嵌入して回転ロック状態となるので、下板135を回転させる必要はなく載線作業が終了する。
【0050】
一方、下板135が基準回転角度位置に位置していない場合は、回転支持テーブル130を引き上げていく過程で、下板135の上面がロックピン143の回転ローラ145に下から当接し、ロックピン143を付勢バネ144の付勢力に抗して上方に移動させる。このときのロックピン143の上方への移動により、ロックピン143の上端部がロック作動検出器146の回転レバー146aの先端部に下から当接して回転レバー146aを上方に揺動させると、ロック作動検出器146からロック作動検出信号が出力される。この場合、作業者は転車台回転操作装置71を操作して、回転駆動モータ132を作動させ、下板135を基準回転角度位置まで回転移動させる。下板135を基準回転角度位置まで回転移動させると、下板135のロックピン嵌入孔135a内に、ロックピン143の先端部(回転ローラ145)が自動的に嵌入して下板135が回転ロックされ、これにより載線作業が終了する。なお、ロック作動検出器146からロック作動検出信号が出力された場合に、音や光等によって作業者に、下板135を回転操作するように促すようにしてもよい。
【0051】
以上においては、踏切まで道路走行してきた軌陸作業車1を、踏切内でレールR,Rに移し替える載線作業を説明したが、踏切内で上記と逆の作動を行わせれば、軌陸作業車1をレールR,R上から道路に移し替える退線作業を行うことができる。
【0052】
上述の実施形態では、下板135を回転作動させる回転駆動モータ132を備えているが、このような回転駆動モータ132を備えず、下板135を手動で回転させる構成としてもよい。その場合は、下板135が格納高さ位置から第2中間高さ位置までの間の高さ位置に位置しないときに、作業者が手動で下板135を回転させようとすると、音や光等によって作業者に注意を喚起するように構成することが好ましい。
【0053】
上述の実施形態では、本発明を適用する軌陸車として、高所作業用の作業装置を備えた軌陸作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、例えばクレーン装置やそれ以外の各種作業装置を備えた軌陸作業車に対しても適用可能であり、作業装置を備えていない資材運搬用の軌陸車に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 軌陸作業車
2 車体
3S 操舵輪
3D 駆動輪
12F 前鉄輪
12R 後鉄輪
70 操作ボックス
110 転車装置
120 転車用ジャッキ
121L 左伸縮ポスト
121R 右伸縮ポスト
130 回転支持テーブル
131 上板
132 回転駆動モータ
135 下板
140 回転ロック機構
142 ロックピン支持体
143 ロックピン
144 付勢バネ
146 ロック作動検出器
CU コントロールユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17