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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035648
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】軌陸車用転車装置
(51)【国際特許分類】
   B60F 1/04 20060101AFI20240307BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60F1/04
B61D15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140238
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明夫
(57)【要約】
【課題】載線作業時や退線作業時における車体の方向転換をアシストして作業者の負担軽減を図ることができる軌陸車用転車装置を提供する。
【解決手段】回転支持テーブルを有する転車装置により車体2を持ち上げ支持した状態において、回転支持テーブルの下板135に対し上板および車体2を回転駆動モータにより回転させて方向転換する。その方向転換において、車体2の左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rの位置とレールR,Rの位置とが一致したことが検出されたときに、回転駆動モータの駆動を規制して車体2の回転を停止する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路走行用車輪および軌道走行用車輪を有し道路および軌道を走行可能な軌陸車の車体に設けられ前記車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、前記転車用ジャッキの下端部に設けられた回転板支持部材と、前記回転板支持部材の下部に上下軸回りに回転自在に設けられた接地用回転板と、を有して構成され、前記転車用ジャッキを下方に伸長させて前記接地用回転板を接地させて前記車体を地面から持ち上げ、前記接地用回転板に対して前記回転支持部材および前記転車用ジャッキを回転させて前記車体の方向転換を行うことを可能とする軌陸車用転車装置であって、
前記接地用回転板を接地させて前記車体を地面から持ち上げた状態において、前記接地用回転板に対して前記回転支持部材を回転作動させて前記車体を方向転換させることが可能な回転駆動装置と、
前記回転駆動装置により前記車体を方向転換させている状況において、前記軌道走行用車輪と軌道との位置が一致したか否かを検出可能な軌道位置検出器と、
前記回転駆動装置により前記車体を方向転換させている状況において、前記軌道位置検出器により前記軌道走行用車輪と軌道との位置の一致が検出された場合に、前記回転駆動装置による前記回転支持部材の回転作動を規制する回転作動制御装置と、を備えることを特徴とする軌陸車用転車装置。
【請求項2】
前記回転駆動装置により方向転換される前記車体の回転移動方向の障害物を検出する障害物検出器を備え、
前記障害物検出器により前記車体の回転移動方向に障害物があることが検出された場合に、前記回転作動制御装置が前記回転駆動装置による前記回転支持部材の回転作動を規制することを特徴とする請求項1に記載の軌陸車用転車装置。
【請求項3】
前記回転駆動装置により方向転換される前記車体の傾斜角度を検出する車体傾斜角度検出器を備え、
前記車体傾斜角度検出器により検出された前記車体の傾斜角度が予め定められた閾値を逸脱する場合に、前記回転作動制御装置が前記回転駆動装置による前記回転支持部材の回転作動を規制することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の軌陸車用転車装置。
【請求項4】
前記転車用ジャッキは、互いに離間して並んで配置され別個独立に上下方向に伸縮可能な2個の伸縮ポスト部を有し、当該2個の伸縮ポスト部の伸縮により上下方向に伸縮可能に構成され、
前記回転板支持部材は前記2個の伸縮ポスト部の各下端部を繋ぐように取り付けられており、
前記接地用回転板に対する前記回転板支持部材の回転角度位置を検出可能な回転角度検出器と、
前記車体傾斜角度検出器により検出された前記車体の傾斜角度が前記閾値を逸脱する場合に、前記回転角度検出器により検出された前記回転板支持部材の回転角度位置に基づき前記2個の伸縮ポスト部の各伸長量を調整して前記車体の傾斜角度を補正する車体傾斜角度補正制御装置と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の軌陸車用転車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路および軌道を走行可能な軌陸車の方向転換を行うための軌陸車用転車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軌陸車は、道路走行用車輪(以下、タイヤ車輪とも称する)によって道路走行自在に構成された車体の前後左右に、各々張出/格納自在な軌道走行用車輪(以下、鉄輪とも称する)を設け、この軌道走行用車輪を張り出した状態で鉄道の軌道(レール)上を走行可能な軌道走行装置を有し、軌道上でトロリ線などの鉄道設備の工事・点検を行う際に広く用いられている。また軌陸車は、通常、道路上(例えば踏切)から軌道上へ車体を載せる際や車体を軌道上から道路上(例えば踏切)へ降ろす際に、車体の方向転換を行うための転車装置を備えている。ここで、車体を軌道上へ載せることを「載線」といい、車体を軌道上から降ろすことを「退線」という。
【0003】
転車台とも称される転車装置は、軌陸車の車体に設けられ車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、転車用ジャッキの下端部に設けられた回転板支持部材と、回転板支持部材の下部に上下軸回りに回転自在に設けられた接地用回転板とを有して構成される。そして、転車装置では、転車用ジャッキを下方に伸長させて接地用回転板を接地させて車体を地面から持ち上げ、接地用回転板に対して回転支持部材および転車用ジャッキを回転させることによって、車体の方向転換を行うことを可能とする。
【0004】
軌陸車の載線作業又は退線作業を行う際は、例えば踏切において転車用ジャッキを下方に伸長させて接地用回転板を接地させて車体を地上から浮上させ、車体を水平方向へ旋回可能に支持する。この状態から、載線作業を行う場合は、作業者が車体を押して車体の向きを軌道の敷設方向へ回転させ、鉄輪を張り出した後に転車用ジャッキを収縮させて車体を軌道上に載せる。退線作業を行う場合は、作業者が車体を押して車体の向きを道路の方向へ回転させ、鉄輪を格納した後に転車用ジャッキを収縮させて車体を軌道上から道路(踏切)へ降ろす(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5635817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
載線作業時や退線作業時において車体の方向転換を行う場合、作業者は様々な点に気を配りながら作業を行う必要がある。例えば、車体の向きを転換する際に、車体の回転移動方向に障害物があるかどうかを常時監視し、障害物がある場合は障害物を排除したり車体の方向転換を中断したりする必要がある。また、載線作業を行う場合には、車体を押して回転させながら、張り出した鉄輪が軌道上に位置するかどうかを目視により確認し、両者の位置が一致した時点で車体の方向転換を停止する必要がある。また、車体の方向転換は、作業者の人力によって行われており、重い車体を回転移動(旋回)させるのに作業者に負担がかかる。このように載線作業時や退線作業時における車体の方向転換は、作業者にとって大きな負担となっている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、載線作業時や退線作業時における車体の方向転換をアシストして作業者の負担軽減を図ることができる軌陸車用転車装
置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る軌陸車用転車装置は、道路走行用車輪(例えば、実施形態における左右一対の操舵輪3Sおよび左右一対の駆動輪3D)および軌道走行用車輪(例えば、実施形態における左右一対の前鉄輪12Fおよび左右一対の後鉄輪12R)を有し道路および軌道を走行可能な軌陸車の車体に設けられ前記車体の下方に向かって上下方向に伸縮可能な転車用ジャッキと、前記転車用ジャッキの下端部に設けられた回転板支持部材(例えば、実施形態における回転支持テーブル130を構成する上板131)と、前記回転板支持部材の下部に上下軸回りに回転自在に設けられた接地用回転板(例えば、実施形態における回転支持テーブル130を構成する下板135)と、を有して構成され、前記転車用ジャッキを下方に伸長させて前記接地用回転板を接地させて前記車体を地面から持ち上げ、前記接地用回転板に対して前記回転支持部材および前記転車用ジャッキを回転させて前記車体の方向転換を行うことを可能とする軌陸車用転車装置であって、前記接地用回転板を接地させて前記車体を地面から持ち上げた状態において、前記接地用回転板に対して前記回転支持部材を回転作動させて前記車体を方向転換させることが可能な回転駆動装置(例えば、実施形態における回転駆動モータ132)と、前記回転駆動装置により前記車体を方向転換させている状況において、前記軌道走行用車輪と軌道との位置が一致したか否かを検出可能な軌道位置検出器(例えば、実施形態におけるレール検出器86,87,88,89)と、前記回転駆動装置により前記車体を方向転換させている状況において、前記軌道位置検出器により前記軌道走行用車輪と軌道との位置の一致が検出された場合に、前記回転駆動装置による前記回転支持部材の回転作動を規制する回転作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニットCU)と、を備えて構成される。
【0009】
上記構成の軌陸車用転車装置において、前記回転駆動装置により方向転換される前記車体の回転移動方向の障害物を検出する障害物検出器を備え、前記障害物検出器により前記車体の回転移動方向に障害物があることが検出された場合に、前記回転作動制御装置が前記回転駆動装置による前記回転支持部材の回転作動を規制するように構成することが好ましい。
【0010】
上記構成の軌陸車用転車装置において、前記回転駆動装置により方向転換される前記車体の傾斜角度を検出する車体傾斜角度検出器を備え、前記車体傾斜角度検出器により検出された前記車体の傾斜角度が予め定められた閾値を逸脱する場合に、前記回転作動制御装置が前記回転駆動装置による前記回転支持部材の回転作動を規制するように構成することが好ましい。
【0011】
上記構成の軌陸車用転車装置において、前記転車用ジャッキは、互いに離間して並んで配置され別個独立に上下方向に伸縮可能な2個の伸縮ポスト部(例えば、実施形態における左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121R)を有し、当該2個の伸縮ポスト部の伸縮により上下方向に伸縮可能に構成され、前記回転板支持部材は前記2個の伸縮ポスト部の各下端部を繋ぐように取り付けられており、前記接地用回転板に対する前記回転板支持部材の回転角度位置を検出可能な回転角度検出器と、前記車体傾斜角度検出器により検出された前記車体の傾斜角度が前記閾値を逸脱する場合に、前記回転角度検出器により検出された前記回転板支持部材の回転角度位置に基づき前記2個の伸縮ポスト部の各伸長量を調整して前記車体の傾斜角度を補正する車体傾斜角度補正制御装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニットCU)と、を備える構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る軌陸車用転車装置によれば、接地用回転板を接地させて車体を地面から持
ち上げた状態において、回転駆動装置により接地用回転板に対して回転支持部材を回転作動させて車体を方向転換させ、車体を方向転換させている状況において、軌道位置検出器により軌道走行用車輪と軌道との位置の一致が検出された場合に、回転作動制御装置が回転駆動装置による回転支持部材の回転作動を規制するので、載線する際の車体の方向転換および軌道走行用車輪と軌道との位置合せを容易に行うことが可能となり、作業者の負担を軽減することができる。
【0013】
また、上記構成の軌陸車用転車装置において、回転駆動装置により方向転換される車体の回転移動方向の障害物を検出する障害物検出器を備え、障害物検出器により車体の回転移動方向に障害物があることが検出された場合に、回転作動制御装置が回転駆動装置による回転支持部材の回転作動を規制する構成とすることで、障害物に車体が接触することを防止することが可能となり、安全性を高めることができる。
【0014】
また、上記構成の軌陸車用転車装置において、回転駆動装置により方向転換される車体の傾斜角度を検出する車体傾斜角度検出器を備え、車体傾斜角度検出器により検出された車体の傾斜角度が予め定められた閾値を逸脱する場合に、回転作動制御装置が回転駆動装置による回転支持部材の回転作動を規制する構成とすることで、車体が過度に傾斜した状態で方向転換されることを防止することが可能となり、安全性を高めることができる。
【0015】
この場合、転車用ジャッキは、互いに離間して並んで配置され別個独立に上下方向に伸縮可能な2個の伸縮ポスト部を有し、当該2個の伸縮ポスト部の伸縮により上下方向に伸縮可能に構成され、回転板支持部材は2個の伸縮ポスト部の各下端部を繋ぐように取り付けられており、接地用回転板に対する回転板支持部材の回転角度位置を検出可能な回転角度検出器と、車体傾斜角度検出器により検出された車体の傾斜角度が前記閾値を逸脱する場合に、回転角度検出器により検出された回転板支持部材の回転角度位置に基づき2個の伸縮ポスト部の各伸長量を調整して車体の傾斜角度を補正する車体傾斜角度補正制御装置と、を備えることが好ましい。このように構成することで、車体の傾斜角度を補正しながら、車体の方向転換を継続して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る軌陸車用転車装置が設けられた軌陸作業車の外観を示す側面図である。
図2】上記軌陸車用転車装置の概要構成を示す車体後方からの斜視図である。
図3】上記軌陸車用転車装置の下部の概要構成を示す車体後方からの正面図である。
図4】上記軌陸車用転車装置の回転支持テーブルにおける上板に対する下板の回転角度位置の一態様を示す平面図である。
図5】上記回転支持テーブルにおける上板に対する下板の回転角度位置の別態様を示す平面図である。
図6】上記回転支持テーブルにおける下板の回転中心位置と鉄輪と各種検出器との位置関係を示す概略図である。
図7】上記軌陸車用転車装置の制御構成を示すブロック図である。
図8】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第1段階を示す概略図である。
図9】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第2段階を示す概略図である。
図10】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第3段階を示す概略図である。
図11】上記軌陸作業車の載線作業の手順の第4段階を示す概略図である。
図12】上記軌陸車用転車装置による車体回転時の作動制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明に係る軌陸車用転車装置が設けられた軌陸作業車1の側面図を図1に示す。図1において軌陸作業車1は、前部に運転キャビン4を設けた車体2を有し、車体2の前部に配設された左右一対のタイヤ車輪である操舵輪3Sと、車体2の後部に配設された左右一対のタイヤ車輪である駆動輪3Dとからなる道路走行用車輪によって道路上を走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、シャシフレーム5とシャシフレーム5上に取り付けられたサブフレーム6とからなる車体フレームを有して構成されている。ここで、図1では車体2の左側の操舵輪3S及び駆動輪3Dのみを図示しているが、車体2の右側にも同様の操舵輪3S及び駆動輪3Dが設けられている。
【0018】
車体2における操舵輪3Sの後方および駆動輪3Dの後方には、作業用ジャッキ15が設けられている。作業用ジャッキ15は、車体フレームに固定保持される上部ジャッキ体15aと、上部ジャッキ体15a内に下方に移動自在に配設された下部ジャッキ体15bと、その内部に上部ジャッキ体15aと下部ジャッキ体15bを繋いで設けられたジャッキシリンダ16を有して構成される。このジャッキシリンダ16が伸縮駆動することによって、上部ジャッキ体15aに対して下部ジャッキ体15bが下方に向けて伸縮作動するようになっている。作業用ジャッキ15は、主に軌陸作業車1が作業する際に使用されるものであり、ジャッキシリンダ16の伸縮駆動により下部ジャッキ体15bが下方に向けて伸縮作動することで車体2を持ち上げ支持し、それにより車体2全体を安定支持させた状態とする。操舵輪3Sの後方の作業用ジャッキ15の後部側には、車体フレームに対して上下揺動自在に支持された前鉄輪12Fと、前鉄輪12Fを格納位置(図中、二点鎖線で示す位置)と張出位置(図中、実線で示す位置)との間で上下揺動作動させるための前鉄輪揺動シリンダ13Fとが設けられている。また、駆動輪3Dの後方の作業用ジャッキ15の後部側には、車体フレームに対して上下揺動自在に支持された後鉄輪12Rと、後鉄輪12Rを格納位置(図中、二点鎖線で示す位置)と張出位置(図中、実線で示す位置)との間で上下揺動作動させるための後鉄輪揺動シリンダ13Rとが設けられている。
【0019】
ここで、上述した格納位置とは、軌陸作業車1が操舵輪3S及び駆動輪3Dによって道路などを走行する際に、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを、走行路面より上側となる所定の高さまで上昇させた位置(図1で二点鎖線で示す前鉄輪12F及び後鉄輪12Rの位置)をいう。また、上述した張出位置とは、図1において実線で示すように、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rが軌道上に位置し、操舵輪3Sおよび駆動輪3Dが軌道50から離れて上方に位置し、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rにより軌道50の上を走行可能となる位置まで、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを張り出した位置をいう。
【0020】
なお、図1では車体2の左側の前鉄輪12F及び後鉄輪12Rのみを図示しているが、車体2の右側にも同様の前鉄輪12F及び後鉄輪12Rが設けられている。また、作業用ジャッキ15、前鉄輪揺動シリンダ13F及び後鉄輪揺動シリンダ13Rについては、車体2の左側に設けられたもののみを図示しているが、車体2の右側にも同様の作業用ジャッキ15、前鉄輪揺動シリンダ13F及び後鉄輪揺動シリンダ13Rが設けられている。
【0021】
車体2の中央下部には転車装置110が設けられている。転車装置110は、車体2の下部に設けられ下方に向かって伸縮可能な転車用ジャッキ120と、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル130とを有して構成されている。転車用ジャッキ120は、前後方向に互いにずれて左右方向(車幅方向)に互いに離間して並んで配置された2個の伸縮ポスト(左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121R)を有している。左伸縮ポスト121Lは、その内部に設けられた転車台伸縮シリンダ122Lの伸縮駆動により、下方に向けて上下方向に伸縮作動可能に構成されている。同様に、右伸縮ポスト121Rは、その内部に設けられた転車台伸縮シリンダ122Rの伸縮駆動により、下方に向けて上下方向に伸縮作動可能に構成されている。なお、左伸縮ポスト121
Lの伸縮作動量と右伸縮ポスト121Rの伸縮作動量は、互いに同じとなるように調整することも可能であり互いに異なるように調整することも可能である。転車用ジャッキ120は、2個の伸縮ポスト121L,121Rが上下方向に伸縮作動することにより下方に向けて上下方向に伸縮作動可能に構成されている。
【0022】
回転支持テーブル130は、転車用ジャッキ120の下端部において2個の伸縮ポスト121L,121Rの各下端部を繋ぐように水平に設けられた上板131と、上板131の下部に上下軸回りに回転自在に水平に設けられた下板135とを有して構成されている。転車台110は、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130の下板135を接地させて車体2を地面から持ち上げ、下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120を回転させることによって、車体2の方向転換を行うことを可能とする。なお、転車装置110については詳細後述する。
【0023】
サブフレーム6の車体前後方向の中間における左側端部には操作ボックス70が設けられている。この操作ボックス70は、上述した転車装置110の作動を操作するための操作装置などを有しており、その詳細については後述する。
【0024】
運転キャビン4の後方にある架装領域の前部(サブフレーム6の前部)には、旋回モータ21により駆動されて水平旋回可能に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱22には、フートピン23を軸としてブーム30が上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。ブーム30は、フートピン23により支柱22に起伏自在に取り付けられた基端ブーム30aと、中間ブーム30bと、先端ブーム30cとが入れ子式に組み合わされて構成されている。ブーム30の内部にはブーム伸縮シリンダ31が設けられており、このブーム伸縮シリンダ31の伸縮駆動によりブーム30を長手方向に伸縮作動させることができるように構成されている。基端ブーム30aと支柱22の間にはブーム起伏シリンダ32が跨設されており、このブーム起伏シリンダ32の伸縮駆動によりブーム30を上下面内において起伏作動させることができるように構成されている。
【0025】
先端ブーム30cの先端部には、作業台支持ブラケット35がブーム30の起伏面内において揺動可能に取り付けられている。作業台支持ブラケット35は、内部に設けられたレベリングシリンダ36の伸縮駆動によりブーム30の起伏角度によらず作業台支持ブラケット35の上面が常時水平に保持されるように構成されている。なお、レベリングシリンダ36の伸縮作動は、作業台40の傾斜角度を検出する傾斜角センサ(図示略)の検出値に応じて制御される。そして、この作業台支持ブラケット35の上面に作業台40が水平旋回自在に取り付けられている。作業台支持ブラケット35の内部には首振りモータ41が設けられており、この首振りモータ41を駆動させることにより作業台40を作業台支持ブラケット35に対して水平旋回(首振り作動)させることができるように構成されている。上記のように作業台支持ブラケット35の上面は常時水平に保持されるため、作業台40の床面もブーム30の起伏角度によらず水平に保持されるようになっている。作業台40には、旋回モータ21、ブーム伸縮シリンダ31、ブーム起伏シリンダ32、首振りモータ41などの各種油圧アクチュエータの駆動を操作するための操作装置などを有する作業台操作ボックス42が設けられている。
【0026】
以上のように構成した軌陸作業車1は、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを格納し、操舵輪3S及び駆動輪3Dによって道路などを走行することが可能であるとともに、前鉄輪12F及び後鉄輪12Rを軌道上に張り出し、軌道上を走行することも可能である。このように、道路走行と軌道走行とを切り替えるために、上述の転車装置110を備えている。
【0027】
前述したように転車装置110は、図2にも示すように、左伸縮ポスト121Lおよび
右伸縮ポスト121Rから構成される転車用ジャッキ120と、転車用ジャッキ120の下端部に設けられた回転支持テーブル130とを有して構成されている。回転支持テーブル130は、転車用ジャッキ120の下端部において左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121Rの各下端部を繋ぐように水平に設けられた上板131と、上板131の下部に上下に延びる回転中心軸Oの回りに、転車ベアリング134を介して回転自在に水平に設けられた下板135とを有して構成されている。転車ベアリング134の外輪は下板135の上面に固定されており、この外輪には大径の回転ギヤ136が固定されている。上板131の側部には回転駆動モータ132が設けられており、この回転駆動モータ132から下方に突出する駆動軸にピニオンギヤ133が取り付けられている。このピニオンギヤ133は回転ギヤ136と噛合している。このため、回転駆動モータ132によりピニオンギヤ133を回転駆動するとこれと噛合する回転ギヤ136に回転駆動力を伝えて、回転ギヤ136が取り付けられた下板135を上板131に対して回転させることができる。
【0028】
左伸縮ポスト121Lと右伸縮ポスト121Rは同様の構成を有しており、ここでは左伸縮ポスト121Lを例にとって説明する。左伸縮ポスト121Lは、車体フレームに固定されたアウタポスト123と、アウタポスト123内に上下動可能に配置されるインナポスト124と、左伸縮ポスト121L内に配置される転車台伸縮シリンダ122L(図3を参照)と、回転支持テーブル130の上板131の上面に固定されたベースプレート125とを有して構成されている。転車台伸縮シリンダ122Lの下端部は、ベースプレート125とピン結合されており、このピン結合部を介してインナポスト124はベースプレート125に対し若干揺動可能に結合されている。これにより、回転支持テーブル130は、左伸縮ポスト121Lに対して若干傾動できる構成となっている。右伸縮ポスト121Rの構成および右伸縮ポスト121Rと回転支持テーブル130との関係は、上述した内容と同様であるので、説明は省略する。
【0029】
上述したように回転支持テーブル130においては、上板131に対し下板135が回転中心軸O回りに回転可能となっている。具体的には下板135は、図4に示すように、その短手方向が前後方向(回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1の方向)に延び、長手方向が左右方向(回転中心軸Oを通って車体幅方向に延びる左右軸A2の方向)に延びる状態となる回転角度位置を基準回転角度位置として、回転中心軸Oの回りに360°、任意の回転角度位置に回転移動させることができる。下板135は、平面視において180°回転対称の形状を有しており、基準回転角度位置にある下板135を回転中心軸Oを中心に右回りまたは左回りに90°回転移動させると、図5に示すように下板135は、その長手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延び、短手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延びる状態となる回転角度位置(「直角回転角度位置」とも称する)に移動する。
【0030】
転車装置110において、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130の下板135を接地させて車体2を地面から持ち上げ支持することが可能である。そして、このように持ち上げ支持した状態で、下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120を回転させることによって、車体2の方向転換を行い、載線作業・退線作業を行うことが可能である。この方向転換は、転車装置110により車体2を持ち上げ支持した状態で、回転駆動モータ132により下板135に対して上板131および転車用ジャッキ120、さらにそれに繋がる車体2を回転させて行う。このように回転駆動モータ132は、転車装置110により持ち上げ支持された車体2を回転させることが可能な大きな回転駆動力を出力できるようになっている。
【0031】
転車装置110は、車体2の中央下部に位置して設けられているが、上板131に対する下板135の回転中心となる上下に延びる回転中心軸Oが軌陸作業車1の重心位置に位
置するようになっている。さらに、左右一対の前鉄輪12F、12Fは車体幅方向において左右対称に位置して設けられており、左右一対の後鉄輪12R、12Rも車体幅方向において左右対称に位置して設けられている。すなわち、図6に示すように、回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1に対して、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがそれぞれ左右対称に位置して設けられている。また、左右一対の前鉄輪12F、12Fを繋ぐ前鉄輪軸A3および左右一対の後鉄輪12R、12Rを繋ぐ後鉄輪軸A4は、回転中心軸Oを通って幅方向に延びる左右軸A2と平行である。なお、図6においては、軌陸作業車1をその外形形状で簡略化して示しており、そこに説明に必要な構成要素のみを位置関係が分かるように概略的に図示している。例えば、転車装置110については下板135のみを示し、その下板135の形状も簡略化して長方形として示している。
【0032】
図6に示すように軌陸作業車1(車体2)には、4個の障害物検出器81,82,83,84と、4個のレール検出器86,87,88,89と、車体傾斜角度検出器91と、転車台回転角度検出器93とが設けられている。障害物検出器81,82,83,84は、転車装置110により持ち上げ支持された車体2が方向転換される際に、その回転移動方向に障害物があるか否かを検出する検出器である。例えば、障害物の有無や障害物までの距離によって出力値が変化する検出信号を出力する。障害物検出器81,82,83,84は、車体2の前端左側部、前端右側部、後端左側部および後端右側部にそれぞれ設けられている。
【0033】
レール検出器86,87,88,89は、載線作業において方向転換される車体2の鉄輪の位置と軌道の位置が合致したか否か(鉄輪が軌道の真上に位置したか否か)を検出する検出器であり、例えば、軌道までの距離によって出力値が変化する検出信号を出力する。レール検出器86,87,88,89は、左側の前鉄輪12Fの近傍、右側の前鉄輪12Fの近傍、左側の後鉄輪12Rの近傍、および右側の後鉄輪12Rの近傍にそれぞれ設けられている。
【0034】
車体傾斜角度検出器91は、車体2の傾きを検出する検出器であり、例えば、車体2の傾斜角度に応じて出力値が変化する検出信号を出力する。車体傾斜角度検出器91は、車体2の中央部に設けられている。転車台回転角度検出器93は、転車装置110により車体2が持ち上げ支持されて方向転換される場合に、回転支持テーブル130の下板135に対する上板131および車体2の回転角度を検出する検出器であり、例えば、回転角度に応じて出力値が変化する検出信号を出力する。転車台回転角度検出器93は、回転支持テーブル130に設けられる。
【0035】
転車装置110においては、上述のように、転車用ジャッキ120を下方に伸長させて回転支持テーブル130を下方に張り出して車体支持を行って載線作業、退線作業を行うが、道路走行時および軌道走行時には転車用ジャッキ120を上方に縮小して回転支持テーブル130を上方に移動させて格納保持する。回転支持テーブル130を下方に張り出す際や回転支持テーブル130を上方に移動させて格納保持する際に、回転支持テーブル130の下板135を回転中心軸O回りに回転させ、下板135を所定の回転角度位置に回転移動させる。例えば、載線作業・退線作業を行う際には、下板135の長手方向が軌道の延びる方向に直交し、短手方向が軌道の延びる方向に平行となる回転角度位置まで下板135を回転させる。また、回転支持テーブル130を格納保持する際には、下板135の長手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延び、短手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延びる状態となる基準回転角度位置まで下板135を回転させて保持する。
【0036】
次に、転車装置110における転車用ジャッキ120の伸縮作動および回転支持テーブル130の回転作動の作動制御について、図7を追加参照して説明する。図1に示した操
作ボックス70には、転車台回転操作装置71および転車台昇降操作装置72が設けられている。これらの操作装置は、操作レバーや操作ダイヤル等の操作具を備えており、この操作具が操作されると、その操作方向および操作量に応じた操作信号をコントロールユニットCUに出力するようになっている。コントロールユニットCUは、転車台回転操作装置71から出力された操作信号に応じて回転駆動モータ132の駆動を制御して回転支持テーブル130の回転作動を制御する。また、コントロールユニットCUは、転車台昇降操作装置72から出力された操作信号に応じて転車台伸縮シリンダ122L,122Rの駆動を制御して転車用ジャッキ120の伸縮作動を制御する。
【0037】
転車台伸縮シリンダ122L,122Rは油圧で駆動しており、油圧バルブユニットVU内には、転車台伸縮シリンダ122L,122Rに対応した電磁比例制御弁が配設されている。油圧バルブユニットVUには、車体走行用のエンジンEからパワーテイクオフ機構PTOを介して伝達される駆動力によって駆動する油圧ポンプPによって作動油タンクT内の作動油が供給されている。コントロールユニットCUは、転車台伸縮シリンダ122L,122Rに対応した電磁比例制御弁の駆動を制御して転車台伸縮シリンダ122L,122Rの駆動を制御する。
【0038】
また、コントロールユニットCUには、載線作業・退線作業において車体2の方向転換が行われる場合に、障害物検出器81,82,83,84、レール検出器86,87,88,89、車体傾斜角度検出器91および転車台回転角度検出器93からの検出信号が随時入力されている。コントロールユニットCUは、障害物検出器81,82,83,84からの検出信号に基づき障害物の有無を判別し、障害物ありと判別したときは回転駆動モータ132の駆動を規制する。すなわち、このときコントロールユニットCUは、転車台回転操作装置71から操作信号が出力されてもそれには応じずに回転駆動モータ132の駆動を規制して車体2の回転を停止させる。これにより、車体2が障害物に接触してしまうことを防止できる。なお、検出された障害物が排除されれば、障害物なしと判別して車体2の回転を許容する。
【0039】
また、コントロールユニットCUは、レール検出器86,87,88,89からの検出信号に基づき、載線作業において方向転換される車体2の鉄輪の位置と軌道の位置が合致したか否かを判別し、合致したと判別したときは回転駆動モータ132の駆動を規制する。すなわち、このときコントロールユニットCUは、転車台回転操作装置71から操作信号が出力されてもそれには応じずに回転駆動モータ132の駆動を規制して車体2の回転を停止させる。これにより、車体2の鉄輪の位置と軌道の位置が合致した状態で、車体2を停止させることができる。
【0040】
また、コントロールユニットCUは、車体傾斜角度検出器91からの検出信号に基づき車体2の傾斜角度を随時確認しており、車体2の傾斜角度が予め定めた閾値を逸脱したときは回転駆動モータ132の駆動を規制して車体2の回転を停止させる。そして、転車台回転角度検出器93からの検出信号に基づき車体2の回転角度を判別し、その車体2の回転角度に応じて車体2の傾斜を補正する。具体的には、転車台伸縮シリンダ122L,122Rの各作動量を調整して、左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121Rの各伸長作動量を調整し、これにより車体2の傾斜を補正する。なお、この傾斜補正により、車体2の傾斜角度が閾値以下となれば、車体2の回転を許容する。これにより、車体2が過度に傾いたまま回転されて不安定になることを防止できる。
【0041】
次に、転車装置110を用いて道路走行と軌道走行とを切り替える作業(載線作業および退線作業)について、図8図11を追加参照して説明する。これらの図においては、軌陸作業車1をその外形形状で簡略化して示し、そこに説明に必要な構成要素のみを位置関係が分かるように概略的に図示している。転車装置110については下板135のみを
示し、その下板135の形状も簡略化して長方形として示している。
【0042】
載線作業を行う場合は、まず、図8に示すように、踏切内に軌陸作業車1を進入させて停車させる。このとき、転車装置110における下板135の回転中心軸Oが、レールR,Rの中央位置に位置するように軌陸用作業車1を移動させる必要がある。これは、前述したように、回転中心軸Oを通って前後に延びる前後軸A1に対して、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rがそれぞれ左右対称に位置して設けられているからである(図6を参照)。図8は、下板135の回転中心軸Oが、レールR,Rの中央位置に位置した状態を示している。なお、このとき下板135は、その長手方向が左右方向(左右軸A2の方向)に延び、短手方向が前後方向(前後軸A1の方向)に延びた状態となる基準回転角度位置において格納保持されている。
【0043】
そこで、載線作業の作業者は、操作ボックス70の転車台回転操作装置71を操作して、回転駆動モータ132を駆動させ、下板135の長手方向がレールR,Rの延びる方向と直交する状態となる回転角度位置まで回転移動させる。次に作業者は、操作ボックス70の転車台昇降操作装置72を操作して、転車用ジャッキ120を下方に伸長作動させて回転支持テーブル130を下方に移動させ、下板135を接地させて転車装置110により車体2を持ち上げ支持する。
【0044】
次いで作業者は、転車台回転操作装置71を操作して回転駆動モータ132を駆動させ、転車装置110により持ち上げ支持された車体2を回転させる。この回転駆動モータ132による車体2の回転作動中、障害物検出器81,82,83,84からの検出信号に基づき、コントロールユニットCUにより車体2の回転移動方向の障害物の有無が判別される。なお、車体2を右回転させるときは、障害物検出器82,83からの検出信号に基づきコントロールユニットCUにより障害物の有無を判別し、車体2を左回転させるときは、障害物検出器81,84からの検出信号に基づき障害物の有無を判別するようにしてもよい。そして、障害物がある場合は、コントロールユニットCUにより回転駆動モータ132による車体2の回転が規制されて車体2が停止される。一方、障害物が無いかあってもそれが排除されれば、回転駆動モータ132による車体2の回転が続行される。
【0045】
また、回転駆動モータ132による車体2の回転作動中、レール検出器86,87,88,89からの検出信号に基づき、方向転換される車体2の左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rの位置とレールR,Rの位置が合致したか否かがコントロールユニットCUにより判別され、合致したときにコントロールユニットCUにより回転駆動モータ132の駆動が規制されて車体2が停止される。これにより、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12RをレールR,Rの真上に位置させることができる。
【0046】
次に載線作業の作業者は鉄輪を張り出した後、転車台昇降操作装置72を操作して、転車用ジャッキ120を上方に縮小作動させ、回転支持テーブル130(上板131および下板135)を引き上げる。これにより、転車装置110による車体2の持ち上げ支持が解放され、左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12RがレールR,Rの上に載り、図1に示す状態となる。なお、このとき下板135が基準回転角度位置に位置している場合(車体2を回転させたことで下板135が基準回転角度位置に戻った場合)は、下板135を回転させる必要はなく載線作業が終了する。一方、下板135が基準回転角度位置に位置していない場合は、作業者は転車台回転操作装置71を操作して回転駆動モータ132を駆動させ、下板135を基準回転角度位置まで回転移動させて格納保持し、これにより載線作業が終了する。
【0047】
なお、回転駆動モータ132による車体2の回転作動中、車体傾斜角度検出器91から
の検出信号に基づきコントロールユニットCUにより車体2の傾斜角度が確認され、その傾斜角度が予め定めた閾値を逸脱したとコントロールユニットCUが判別したときは回転駆動モータ132の駆動が規制されて車体2の回転が停止される。そして、転車台回転角度検出器93からの検出信号に基づき判別される車体2の回転角度に応じて、コントロールユニットCUが左伸縮ポスト121Lおよび右伸縮ポスト121Rの各伸長作動量を調整し、車体2の傾斜が補正される。
【0048】
以上においては、踏切まで道路走行してきた軌陸作業車1を、踏切内でレールR,Rに移し替える載線作業を説明したが、踏切内で上記と逆の作動を行わせれば、軌陸作業車1をレールR,R上から道路に移し替える退線作業を行うことができる。なお、退線作業においては、レール検出器86,87,88,89からの検出信号に基づく、車体2の左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12RとレールR,Rとの位置合せは行わない。
【0049】
次に、載線作業において車体2の方向転換が行われる場合におけるコントロールユニットCUによる作動制御の流れについて、図12を追加参照して説明する。まず、車体2の方向転換(転車)が開始されると、コントロールユニットCUは、車体2の傾斜角度が予め定めた閾値を逸脱したか否かを判別し(S1)、逸脱していないと判別した場合は車体2の回転を許容し(S2)、ステップS3に進む。一方、逸脱していると判別した場合は車体2の回転を規制し(S7)、車体2の傾斜補正を行い(S8)、ステップS1に戻る。ステップS3では、障害物が検出されたか否かを判別し、検出されていないと判別した場合は車体2の回転を許容し(S4)、ステップS5に進む。一方、障害物が検出されたと判別した場合は車体2の回転を規制し(S9)、ステップS3に戻る。障害物が検出された場合、その障害物が排除されなければ、ステップS3→S9→S3を巡回し、障害物が排除されれば、ステップS3からステップS4に進んで車体2の回転を許容し、ステップS5に進む。ステップS5では、車体2の左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rの位置とレールR,Rの位置が合致したか否かを判別する。ここで、合致していないと判別した場合はステップS1に戻り、合致したと判別した場合は車体2の回転を規制し(S6)、車体2の方向転換を終了する。
【0050】
なお、上述の実施形態において、回転駆動モータ132による車体2の回転作動中に、障害物が検出された場合や車体2の閾値を逸脱する傾斜が検出された場合には、音や光等により作業者に注意を喚起するようにしてもよい。また、載線作業における車体2の回転作動中に、車体2の左右一対の前鉄輪12F、12Fおよび左右一対の後鉄輪12R、12Rの位置がレールR,Rの位置に近づいたことを音や光等により作業者に報知するようにしてもよい。
【0051】
上述の実施形態では、本発明を適用する軌陸車として、高所作業用の作業装置を備えた軌陸作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、例えばクレーン装置やそれ以外の各種作業装置を備えた軌陸作業車に対しても適用可能であり、作業装置を備えていない資材運搬用の軌陸車に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 軌陸作業車
2 車体
3S 操舵輪
3D 駆動輪
12F 前鉄輪
12R 後鉄輪
70 操作ボックス
81,82,83,84 障害物検出器
86,87,88,89 レール検出器
91 車体傾斜角度検出器
93 転車台回転角度検出器
110 転車装置
120 転車用ジャッキ
121L 左伸縮ポスト
121R 右伸縮ポスト
130 回転支持テーブル
131 上板
132 回転駆動モータ
135 下板
CU コントロールユニット
図1
図2
図3
図4
図5
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図12