(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035674
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 21/16 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
H02K21/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140277
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】西出 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】兼重 宙
(72)【発明者】
【氏名】角振 正浩
(72)【発明者】
【氏名】咲山 隆
(72)【発明者】
【氏名】長浦 正樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 大明
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621BB10
5H621GA04
5H621JK08
5H621PP03
(57)【要約】
【課題】ステータをロータの回転軸方向に対して平行に移動させる場合であっても、回転電機全体の大きさをコンパクトにすることができ、かつ、ステータの移動をスムーズに行うことができる回転電機を提供する。
【解決手段】電機子コイルを巻回したステータコアを有するステータと、前記ステータに対して径方向に所定のギャップを介して回転自在に配置されると共に、複数の永久磁石を環状に配置したロータコアを有するロータと、前記ステータを固定するテーブルとを備え、前記テーブルは、前記テーブルを前記ロータの回転軸方向に沿って変位させる移動機構によって、移動可能に取り付けられることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子コイルを巻回したステータコアを有するステータと、
前記ステータに対して径方向に所定のギャップを介して回転自在に配置されると共に、複数の永久磁石を環状に配置したロータコアを有するロータと、
前記ステータを固定するテーブルとを備え、
前記テーブルは、前記テーブルを前記ロータの回転軸方向に沿って変位させる移動機構によって、移動可能に取り付けられることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ステータは、底面が前記テーブルの上面と当接し、
前記移動機構は、前記テーブルに取り付けられると共に、同一平面上に取付けられる複数の直動案内装置と、駆動装置とからなることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ステータは、前記ロータの回転軸方向と直交する断面形状が多角形であることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項2に記載の回転電機において、
前記ステータは、互いに平行な一対の側面が前記テーブルの上面から垂直方向に延設するブラケットと当接し、
前記ブラケットは、前記テーブルの下面に取付けられる前記直動案内装置の移動体の上方に立設することを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の低速及び高速での出力を調整することで、回転速度に応じた出力特性を得ることができる回転電機が知られている。このような回転電機は種々の構造が知られているが、例えば、特許文献1に記載されているように、円筒状のフレームと、中心付近に軸受を備え該フレームの端部に設けられたブラケットと、巻線を施されて該フレームの内側に設置されたステータと、該ステータと細隙を介して端部を該軸受により回転可能に支持された、永久磁石を備えたロータと、ステータとロータ間のエアギャップを変化させる手段とで構成されたインバータ駆動する永久磁石形回転電機が知られている。
【0003】
このような回転電機によれば、低速回転時には、ステータとロータとの対向面積が大きくなるようにステータを回転軸方向に移動させて、有効磁束が大きくなるようにして高トルク化を図り、高速回転時には、ステータとロータとの対向面積を少なくするようにステータを回転軸方向に移動させて、有効磁束が小さくなるようにして高速回転を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の
図1に記載されている従来の回転電機によれば、ステータをロータの回転軸方向に対して平行に移動させる構造として、円筒状のフレームの内径側とステータの外径側の間に、旋盤の刃物台に用いられる送り機構を一例とする図示しない案内機構を設けると共に、ステータに雌ねじ部を設け、ステータの雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有する複数の軸と、軸を回転させるための複数の電動機とを設ける必要がある。
【0006】
また、円筒状のフレームを有しない従来の回転電機においては、ステータをロータの回転軸方向に対して平行に移動させる構造として、ボールねじと、ボールねじのねじ軸を回転させるための駆動モータ及び複数のボールスプラインを用いる構造が知られている。
【0007】
これら従来の回転電機のような構造を有する場合、ステータの自重を支え、且つ、ステータをスムーズに移動させるには、案内機構の構成部品を大きくしたり、ボールスプラインのスプライン軸を太くするなど、各部品の剛性を高める必要がある。そのため、回転電機全体の大型化や、重量の増大といった課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、ステータをロータの回転軸方向に対して平行に移動させる場合であっても、回転電機全体の大きさをコンパクトにすることができ、かつ、ステータの移動をスムーズに行うことができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明に係る回転電機は、電機子コイルを巻回したステータコアを有するステータと、前記ステータに対して径方向に所定のギャップを介して回転自在に配置されると共に、複数の永久磁石を環状に配置したロータコアを有するロータと、前記ステータを固定するテーブルとを備え、前記テーブルは、前記テーブルを前記ロータの回転軸方向に沿って変位させる移動機構によって、移動可能に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転電機によれば、ステータをテーブルに固定し、テーブルに移動機構を備えることで、回転電機全体の大きさをコンパクトにすることができ、かつ、ステータの移動をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る回転電機の軸方向断面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る回転電機のステータを引き抜いた状態を示す軸方向断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る回転電機を示す斜視図。
【
図6】本発明の実施形態に係るボールねじ装置を示す参考斜視図。
【
図7】本発明の実施形態に係る直動案内装置を示す参考斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機の軸方向断面図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る回転電機のステータを引き抜いた状態を示す軸方向断面図であり、
図3は、
図1におけるA-A断面図であり、
図4は、
図1におけるB-B断面図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る回転電機を示す斜視図であり、
図6は、本発明の実施形態に係るボールねじ装置を示す参考斜視図であり、
図7は、本発明の実施形態に係る直動案内装置を示す参考斜視図であり、
図8は、従来の実施形態に係る回転電機100の軸方向断面図であり、
図9は、従来の実施形態に係る回転電機200を示す斜視図である。また、本明細書において、ロータの回転軸方向及びステータの引き抜き方向とは、
図2に示す矢印の方向と定義する。また、本明細書において、上下方向及び左右方向とは、
図3に示す矢印の方向と定義する。
【0014】
本実施形態に係る回転電機1は、
図1に示すように、後述するロータ5の内部に永久磁石52を埋め込んだ構造をもつ、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)モータである。また、本実施形態に係る回転電機1は、自動車等の駆動用のモータとして用いられると好適である。
【0015】
本実施形態に係る回転電機1は、
図1に示すように、ケース2に対して回転可能に取り付けられたシャフト4及びロータ5と、ロータ5を周方向に取り囲むと共にロータ5の回転軸方向に沿って移動可能に取り付けられたステータ6を備える。なお、本明細書において、ケース2は、
図5に示すように、鋼板を組み合わせた筐体であるとして説明を行うが、ケース2は、回転電機1の構成要素を自動車等の駆動用モータとして車体本体に取り付けることができればよく、材質や形状等は適宜設定して構わない。
【0016】
シャフト4は、
図1に示すように、ケース2のケース側面21a、21bに取り付けられた一対の軸受3a、3bを介して回転自在に軸支される。シャフト4のいずれか一方の端部には、図示しない駆動機構に連結され、シャフト4の回転は、自動車等の動力として伝達される。シャフト4には、ロータ5がシャフト4の回転軸と同軸に固定されている。
【0017】
ロータ5は、
図4に示すように、ロータコア51と、ロータコア51の内部に埋め込まれる複数の永久磁石52を有する。
【0018】
永久磁石52は、
図4に示すように、断面形状が直線形であってロータ5の回転軸方向に長手をもつ板状の磁石である。永久磁石52は、N極の磁石52NとS極の磁石52Sとがあり、ロータ5の回転軸方向と直交する断面において、それぞれが略V字形となるようにロータコア51の外周に沿って配置される。N極の磁石52Nで構成された略V字形の組み合わせと、S極の磁石52Sで構成された略V字形の組み合わせは、略V字形の頂点がロータ5の回転中心に向き、ロータコア51の周方向に交互に配置されている。なお、本実施例では、略V字形に組み合わされた永久磁石52が、ロータコア51の外周に沿って配置されるものとして説明したが、永久磁石52の配置方法はこれに限定されず、永久磁石52の直線形の断面がロータコア51の外周に沿って環状に配置されても構わない。また、永久磁石52は、断面形状が直線形の板状の磁石であるとして説明したが、磁石の形状はこれに限定されず、ロータコア51の外周に沿った断面形状が円弧形をなす磁石であっても構わない。
【0019】
ロータコア51は、電磁鋼板を積層、または軟磁性粉末材料を圧粉成形若しくは射出成形して形成されると好適である。ロータコア51には、
図4に示すように、N極の磁石52NとS極の磁石52Sの間に対応する位置に、ロータ5の回転軸方向に延びる溝53が形成されている。この溝53によりN極の磁石52NとS極の磁石52Sとの間に空気層を形成することで、磁束の短絡を防止している。溝53は、
図4に示すように、断面形状が略矩形であり、ロータコア51の内部に形成されると好適である。なお、溝53の位置及び形状はこれに限定されず、例えば、ロータコア51の外周表面に形成される断面形状が略U字形の溝であっても構わない。
【0020】
ステータ6は、
図1及び
図3に示すように、ステータコア61と、ステータコア61に巻回された複数の電機子コイル62を有する。ステータ6は、
図3に示すように、ロータ5の回転軸方向と直交する断面の形状が多角形、例えば、正八角形に形成される。ステータ6は、
図3視において正八角形の底面となる一つの側面が後述するテーブル71と接するように配置される。
【0021】
ステータコア61は、電磁鋼板を積層、または軟磁性粉末材料を圧粉成形若しくは射出成形して形成されると好適である。ステータコア61は、
図4に示すように、径方向に放射状に延びると共に、電機子コイル62が巻回される複数のステータコア基部61aと、各ステータコア基部61aの径方向内側の端部から周方向に延設する鍔部61bとを備えている。鍔部61bの径方向内周面は、ロータコア51の外周面との間に所定のギャップが形成されるように配置される。
【0022】
電機子コイル62は、ロータ5の回転軸と同軸に、周方向に沿って配置されている。なお、電機子コイルの巻回方法は、従来周知の種々の巻き方を採用することが可能である。
【0023】
テーブル71は、非磁性の材料であって、例えばアルミニウム合金やステンレス合金等からなる。テーブル71は、
図4に示すように、板状の部材であって、テーブル71の下面から左右両端部を後述するブロック部(移動体)92によって支持した状態で、ステータ6をテーブル71の上面に載置しても変形することのない厚みを有する。テーブル71は、上面の左右両端部にブラケット72を備える。テーブル71は、
図3に示すように、下面に移動機構10を備え、ロータ5の回転軸方向に沿って移動可能に支持されている。なお、テーブル71は、板状の部材であるとして説明を行ったが、テーブル71の形状はこれに限定されず、例えばブラケット72と一体となった断面略コ字状の部材であってもよく、形状は問わない。また、所望の強度を得るために各種のリブ等を形成しても構わない。
【0024】
ブラケット72は、非磁性の材料であって、例えばアルミニウム合金やステンレス合金等からなる。ブラケット72は、略L字形の部材であって、テーブル71の上面から垂直方向に延びる平面72aを有する。ブラケット72の
図3視における奥行方向の両端面には、押え板73がそれぞれ取り付けられる。ブラケット72の上端面には、ステータ6の外形に対応する形状のステータカバー74が、左右に位置するブラケット72を架け渡すように取り付けられる。
【0025】
このようなブラケット72によれば、平面72aによって、ステータ6の
図3視における正八角形の左右側面を押えることができる。また、このようなステータカバー74によれば、ステータ6の
図3視における正八角形の上面、左上側面及び右上側面を押えることができる。また、このような押え板73によれば、
図3視におけるステータ6の奥行方向の両端面を押えることができる。このようにして、ステータ6は、テーブル71の上面、ブラケット72の平面72a、押え板73及びステータカバー74によって、全方向に対する移動が規制され、テーブル71に対して移動不能に固定される。なお、テーブル71の上面には、
図1に示すように、ステータ6の取り付け位置を決めるためのピン75を取り付けても構わない。
【0026】
移動機構10は、駆動装置として例えば、ボールねじ装置8と、複数の直動案内装置9によって構成されている。本実施形態において、ボールねじ装置8は、一例としてテーブル71の下面の略中央部に取り付けられる。また、直動案内装置9は、一例としてテーブル71の下面の左右両端部のそれぞれに取付けられる。
【0027】
ボールねじ装置8は、
図6に示すように、螺旋状のボール転走溝81aが形成された長手方向に延びる軸部材としてのねじ軸81と、ボール転走溝81aに対応する負荷転走溝82aが形成された移動部材としてのナット部材82とを有する。
【0028】
ナット部材82は、ボール転走溝81aと負荷転走溝82aの間を転走する複数のボール83を介してねじ軸81に対して軸方向に移動可能に取り付けられている。ナット部材82は、軸方向端面に径方向に延設されたフランジ84を有し、フランジ84には複数の締結孔84aが形成されている。また、ナット部材82は、例えば、図示しないリターンピースを有している。
【0029】
リターンピースは、ねじ軸81のボール転走溝81aを数巻分だけ飛び越えるようにナット部材82に固定されており、係るリターンピースの端部によってねじ軸81のボール転走溝81aから掬い上げられたボール83が、リターンピース内を転走して数巻分前のボール転走溝81aに送りこまれ、これによってボール83がナット部材82内を無限循環するように構成されている。なお、無限循環の方式として、リターンピースを用いる方式について説明を行ったが、無限循環の方式はリターンピースに限らず、種々の循環方式を採用することが可能であり、例えば、ナット部材82の軸方向端部に取り付けるエンドプレートに循環構造を持たせても構わないし、デフレクタを用いて、ボール83を所定の巻き数分戻す方式を採用しても構わない。
【0030】
本実施形態において、ねじ軸81の両端部は、
図1に示すように、ケース2のケース側面21bに取り付けられた軸受86と、ケース2のケース底面22に取り付けられた軸受87を介して回転自在に軸支されている。また、ねじ軸81は、ロータ5の回転軸と平行に配置されている。ねじ軸81のいずれか一方の端部は、
図1に示すように、駆動モータ85によって回転力が付与されるように連結されている。また、ナット部材82は、締結孔84aを用いてテーブル71の下面に取り付けられている。なお、本実施形態において、ボールねじ装置8は、テーブル71の下面の略中央部に取り付けられる場合について説明を行ったが、ボールねじ装置8の取り付け位置はこれに限定されず、回転電機1の車体への取り付け状況に合わせて適宜設定して構わない。
【0031】
直動案内装置9は、
図7に示すように、断面形状が略矩形に形成され、左右両側に転動体転走面91aが形成された長尺部材であるレール(移動台)91と、転動体転走面91aに対応する負荷転動体転走面93aが形成された移動部材としてのブロック部92とを有する。
【0032】
レール91には、複数のボルト孔が天面91bから底面91cに向かって穿孔されている。本実施形態において、直動案内装置9は、レール91に形成されたこれら複数のボルト孔にボルトを挿通し、ケース2のケース底面22に締結されている。レール91は、断面略矩形状の左右両側面に、2条ずつの転動体転走面91aが対称的に合計4条形成されている。
【0033】
ブロック部92は、レール91の天面91b及び左右両側面に跨るように、断面略コ字状をしており、ブロック部本体93と、このブロック部本体93の往復運動方向である両端面に取り付けられた一対の側蓋94とを備えている。
【0034】
ブロック部本体93及び側蓋94は、レール91の天面91bに対向する中央部と、レール91の左右両側面に対向する一対の脚部とを有している。ブロック部本体93には、レール91の転動体転走面91aと対向するようにレール91の長手方向に延びる例えば合計4条の負荷転動体転走面93aが形成されている。
【0035】
また、ブロック部本体93には、負荷転動体転走面93aと平行に延びる転動体戻し通路93bが合計4条形成されている。
【0036】
また、側蓋94には、負荷転動体転走面93aの一端と転動体戻し通路93bの一端とを繋ぐU字形状の方向転換路94aが形成されている。転動体転走面91aと負荷転動体転走面93aからなる負荷転動体転走路,一対の方向転換路94a及び転動体戻し通路93bとからなる無限循環路を形成している。
【0037】
本実施形態に係る直動案内装置9は、転動体転走面91aと負荷転動体転走面93aとの間に転動体95が介在されているので、ブロック部92をレール91の長手方向に沿って移動させると、転動体95に転がり運動を行わせることができる。負荷転動体転走路の一端まで転走した転動体95は、一方の方向転換路94aに導かれる。方向転換路94aで進行方向を転換させた転動体95は、転動体戻し通路93bを転走して、他方の方向転換路94aを経由した後、再び負荷転動体転走路に戻される。このように転動体95が転走することで無限循環を実現している。
【0038】
また、複数の転動体95は、球状に形成されたボールが好適に用いられる。さらに、複数の転動体95は、隣り合う転動体95間に配置された間座部と、その長手方向に沿って配列された間座部を繋ぐ帯状の連結帯とからなる帯状リテーナ96により保持されている。このように、転動体95間に配置された間座部により転動体95同士の衝突を防止することができる。また、転動体95は、帯状リテーナ96によって一連に連結保持されているので、転動体95を整列させたまま転走させることができる。
【0039】
なお、レール91の長手方向と交差する面における断面において、転動体転走面91a及び負荷転動体転走面93aは転動体95の曲率半径よりも大きな単一の曲率半径で形成されたサーキュラアーク形状に形成されている。これにより、転動体95は、転動体転走面91aと負荷転動体転走面93aからなる負荷転動体転走路と2点で接触するため、異常な転がり抵抗の増加を示さず、荷重が加わった状態でも良好に動作する。また、転動体転走面91a及び負荷転動体転走面93aはこれに限らず、転動体95の曲率半径よりも若干大きな曲率半径の2つの円弧からなる所謂ゴシックアーチ形状に形成しても構わない。
【0040】
本実施形態において、直動案内装置9は、
図3に示すように、テーブル71の左右両端部に取付けられる。また、ブロック部92は、ブラケット72の真下となる位置に取り付けられる。このように、ブラケット72の真下にブロック部92を取り付けることで、回転電機1全体の寸法を抑え、尚且つモーメントにも強い構造が得られる。例えば、左右のブラケット72の取り付け幅が複数のブロック部92の取り付け幅よりも大きな場合には、回転電機1が幅方向に大きくなり、スペースの問題や重量増加が懸念される。また、反対に、左右のブラケット72の取り付け幅が複数のブロック部92の取り付け幅よりも小さい場合には、モーメントに対して弱くなり、剛性不足が懸念される。
【0041】
左右に位置するレール91は、同一平面であるケース底面22の上面に取り付けられ、ロータ5の回転軸と平行に配置されている。また、ブロック部92は、テーブル71の下面に取り付けられるが、
図5に示すように、テーブル71の大きさに合わせて一本のレール91に対して複数のブロック部92を取り付けても構わない。なお、直動案内装置9の取り付け位置は、上記に限定されず、ブラケット72の側面等、回転電機1の車体への取り付け状況に合わせて適宜設定して構わない。また、複数のレール91は、同一平面に取り付けられる場合について説明を行ったが、複数のレール91は、それぞれ異なる平面に取り付けても構わない。
【0042】
このようなボールねじ装置8と直動案内装置9を有する回転電機1によれば、駆動モータ85によってねじ軸81を回転させることで、ナット部材82が取り付けられたテーブル71を移動させ、テーブル71に固定されるステータ6をロータ5の回転軸方向に沿ってスムーズに移動させることができる。また、移動機構10は、テーブル71の下面のみに取付けられるため、ステータ6をロータ5の回転軸方向に沿って移動させる構造がコンパクトにまとまり、回転電機1全体の大きさを小さくすることができる。
【0043】
このように、本実施形態に係る回転電機1は、
図2に示すように、ステータ6をロータ5に対して抜き差しするように移動させ、ステータ6のロータ5に対する相対位置を変更することで、出力特性を変化させることができる。ステータ6をロータ5に対して最も挿入した状態においては、ステータ6とロータ5の対向面積が最も大きく、回転電機1の出力特性は、高トルク・低回転となる。このような状態では、自動車の発進時など速度は遅いが高トルクが必要な場合に最も出力特性が適した状態となる。また、この状態では、逆起電力が上昇することから、効率的に発電を行うことができ、高効率の回生ブレーキとして作用させることが可能となる。ステータ6をロータ5に対して引き抜き方向に移動させると、ステータ6とロータ5の対向面積は小さくなり、回転電機1の出力特性は、低トルク・高回転となる。このような状態では、トルクを必要としない高速走行時に出力特性が適した状態となる。
【0044】
なお、上述した本実施形態に係る回転電機1においては、本実施形態に係る回転電機1を自動車等の駆動用モータとして適用する場合について説明を行ったが、その用途は自動車に限られず、各種のモータに適用しても構わない。また、本実施形態に係る回転電機1を風力発電機として使用しても構わない。この場合、変化する風速に合わせてステータ6とロータ5の対向面積を適切に変化させることで、発電効率を上げることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0045】
1 回転電機、 5 ロータ、 10 移動機構、 51 ロータコア、 52 永久磁石、 6 ステータ、 61 ステータコア、 71 テーブル、 72 ブラケット、 8 ボールねじ装置、 81 ねじ軸、 82 ナット部材、 9 直動案内装置、 91 レール(移動台)、 92 ブロック部(移動体)。