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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035682
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2055 20180101AFI20240307BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01N23/2055 320
B65D1/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140296
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅文
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 博
(72)【発明者】
【氏名】山脇 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G001
3E033
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001KA08
2G001LA05
3E033AA02
3E033BA18
3E033BA30
3E033CA03
3E033CA11
3E033DA03
3E033DB03
(57)【要約】
【課題】
従来の化石燃料資源に由来するポリエチレンテレフタレートに対して機械的特性等の物性面で遜色のない、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む包装容器を提供すること。
【解決手段】
バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された包装容器であって、前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算による半価値が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークの半価幅の0.94~1.06である、包装容器。
【選択図】図2-1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された包装容器であって、
前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算による半価値が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークの半価幅に対して0.94~1.06である、包装容器。
【請求項2】
前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算による半価値が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークの半価幅に対して0.96~1.04である、請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された包装容器であって、
前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークのピークトップと半値幅の中心値の差に対して0.24~5.08である、包装容器。
【請求項4】
前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークのピークトップと半値幅の中心値の差に対して0.33~4.31である、請求項3に記載の包装容器。
【請求項5】
前記樹脂組成物について測定された半価値が11.50°以上であり、ピークトップと半価幅の中心値の差が0.40°以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装容器。
【請求項6】
バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された包装容器であって、
前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算による半価値が11.00~12.00°であり、ピークトップと半価幅の中心値の差が1.00°以下である、包装容器。
【請求項7】
前記半価値が11.36~11.51°であり、ピークトップと半価幅の中心値の差が0.76°以下である、請求項6に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂製の包装容器が一般に知られている。樹脂製の包装容器は、軽量であり、内容物に対する化学耐性等に優れるため、飲料、液体調味料、洗剤など様々な内容物を収容するために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-199524号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】武田理香、津留崎恭一、「PETボトルの残留歪評価」、神奈川県産業技術センター研究報告、No.16、P84-P86、(2010)
【非特許文献2】X線ハンドブック、株式会社リガク、(2006年五版発行)
【非特許文献3】NIST公開データベース「X-Ray Attenuation Coefficients」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、環境負荷に対する配慮から、近年、樹脂製品の一部をバイオマス資源に由来する樹脂に置き換えることが行われている。しかしながら、本発明者が鋭意検討したところによれば、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて包装容器を形成すると、座屈強度が低い場合が多かった。
【0006】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであり、従来の化石燃料資源に由来するポリエチレンテレフタレートに対して機械的特性等の物性面で遜色のない、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の包装容器は、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成され、当該樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算による半価値が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークの半価幅に対して0.94~1.06である。
【0008】
本発明の包装容器は、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成され、樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークのピークトップと半値幅との中心値の差に対して0.24~5.08である。
【0009】
本発明の包装容器は、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成され、樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおけるハローピークの積分強度計算による半価値が11.00~12.00°であり、ピークトップと半価幅の中心値の差が1.00°以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の化石燃料資源に由来するポリエチレンテレフタレートに対して機械的特性等の物性面で遜色のない、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1-1は、比較例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについてのピークトップ法による積分強度計算結果である。
図1-2】図1-2は、比較例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについての半価幅法による積分強度計算結果である。
図2-1】図2-1は、実施例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについてのピークトップ法による積分強度計算結果である。
図2-2】図2-2は、実施例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについての半価幅法による積分強度計算結果である。
図3-1】図3-1は、実施例2のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについてのピークトップ法による積分強度計算結果である。
図3-2】図3-2は、実施例2のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについての半価幅法による積分強度計算結果である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る蓋付き容器の一実施形態を、部分的に切断面の端面で示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の包装容器は、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された包装容器であり、当該樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおいて、以下の(1)~(3)の少なくとも一つを満たすものである。
(1)ハローピークの積分強度計算による半価値が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークの半価幅に対して0.94~1.06である。
(2)ハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差が、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークのピークトップと半値幅の中心値との差に対して0.24~5.08である。
(3)ハローピークの積分強度計算による半価値が11.00~12.00°であり、ピークトップと半価幅の中心値の差が1.00°以下である。
このような包装容器は優れた座屈強度を有する。
【0013】
ハローピークの積分強度計算による半価値は、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークの半価幅に対して0.96~1.04であってよい。
【0014】
ハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差は、25℃でCuKα線を用いて測定された化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂に由来するハローピークのピークトップと半値幅の中心値との差に対して0.33~4.31であってよい。
【0015】
ハローピークの積分強度計算による半価値は、11.00°以上であってよく、11.20°以上であってよく、11.30°以上であってよく、11.36°以上であってよく、11.40°以上であってよく、11.45°以上であってよく、11.50°以上であってよい。ハローピークの積分強度計算による半価値は、12.00°以下であってよく、11.90°以下であってよく、11.80°以下であってよく、11.70°以下であってよく、11.51°以下であってよい。ハローピークの積分強度計算による半価値は、11.20~12.00°であってよく、11.30~11.90°であってよく、11.40~11.80°であってよく、11.45~11.70°であってよく、11.50~11.60°であってよい。ハローピークの積分強度計算による半価値は、11.36~11.51°であってよい。
【0016】
ハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差は1.00°以下であってよく、0.90°以下であってよく、0.80°以下であってよく、0.76°以下であってよく、0.75°以下であってよく、0.65°以下であってよく、0.60°以下であってよく、0.50°以下であってよく、0.45°以下であってよく、0.40°以下であってよい。ハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差は0.05°以上であってよく、0.10°以上であってよく、0.20°以上であってよい。ハローピークの積分強度計算によるピークトップと半価幅の中心値の差は1.00~0.05°であってよく、0.90~0.05°であってよく、0.80~0.05°であってよく、0.75~0.10°であってよく、0.65~0.10°であってよく、0.60~0.10°であってよく、0.50~0.20°であってよく、0.45~0.20°であってよい。
【0017】
ポリエチレンテレフタレートのバイオ度(バイオマス度)は、20%以上であってよく、25%以上であってよく、ポリエチレンテレフタレートに含まれるほぼすべてのポリエチレングリコール単位がバイオマス資源に由来するものであってよい。なお、バイオ度は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリマー)の全量に対するバイオマス資源由来の構造単位の質量割合である。バイオマス資源由来の構造単位は、エチレングリコール単位(-O-CHCH-O-)であってよい。
【0018】
バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、LOTTE CHAMICAL PET BIO(LOTTE CHEMICAL社製)、RAMAPET N1B(インドラマ社製)等が挙げられる。
【0019】
PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルは成型後の冷却過程により、口部周辺、肩部周辺、胴体部分の順に内部の延伸方向への配向性が低下すると共に非晶質化が増加することが知られている(非特許文献1)。
【0020】
また、X線回析(XRD)は、測定試料にX線を照射した際にX線が原子周辺の電子によって散乱し生じる回析を測定・解析することにより、物質の状態や物性を調べることができる。
【0021】
XRDによりボトル内部の延伸方向に依存した配向性について測定する場合、in―plane法が有用であるが、ボトルの結晶性や結晶化度について測定する場合、ボトル内部の延伸方向の配向性に依らないout-of-plane法が有用と考えられる。
【0022】
すなわち、試料表面に対して垂直な格子面を測定するin―plane法は成形よる延伸方向に依存した配向性評価には有用であるが、out-of-plane法によるXRD測定では、試料表面に対して平行な格子面について深さ方向(厚さ方向)の測定ができるため、延伸方向に拘らず配向性に起因した結晶性も加味された深さ方向の結晶性を測定することができる。
【0023】
XRD試験は、包装容器を形成後に、当該包装容器を構成する樹脂組成物に行ってもよい。包装容器の口部や肩部周辺は配向性の影響が比較的大きい上、成型後の冷却過程による非晶質化が十分では無い可能性があるため、本発明者らが着目した非晶質ピーク(ハローピーク)が得られにくい場合がある。
【0024】
そのため、XRD試験における測定箇所としては、非晶質ピーク(ハローピーク)が得られやすい包装容器の胴部分を測定箇所とすることが望ましい。
【0025】
XRD分析では通常、試料面が平面状であることが望ましく、包装容器の胴部分は湾曲しているが、手である程度平面化することにより、多少凹凸があっても、XRD分析の光学系条件を平行ビーム法(平行ビーム法とは、放物面多層膜ミラーによりX線発生源から生じる発散ビームを圧縮・平行・単色化した光学系である。)にすることにより、平行なX線成分を抽出しているため、試料面の凹凸の影響を受けず、ハローピークを検出することができる。近年のXRD分析装置では、通常、この放物面多層膜ミラー(放物面多層膜ミラーとは、異なる入射角で入射するX線が多層膜で反射する時、いずれの反射X線も平行に出射するように設定されたX線光学素子である。)が付属しているため、平行なX線を抽出している分、ピーク強度や角度分解能が低くなっても改善がなされている。
【0026】
包装容器の胴部分の肉厚は0.5mm程度であるのに対して、PET(ポリエチレンテレフタレート)のX線(CuKα:発生エネルギー=8keV)の検出深さ(垂直:θ=90°、回析線利用率99%利用率)は約2.47mmであり(非特許文献2及び3)、PET由来のハローピークのほぼ終端である2θ=35°の位置では深さ0.74mm(回析線利用率99%利用率)となるが、試料を測定試料台に固定する粘土基材は装置メーカー専用の回析ピークが出ない材質であるため基材の影響は受けること無く、試験片の厚さ方向の結晶構造情報を得ることできる。
【0027】
また、XRD分析のスキャン方法を2θ‐θ法にすることにより、測定の回析角度2θ(2θは入射X線方向と回析X線方向のなす角度である)に対する試料の深さ方向の測定領域の大きさに変化は無く、Braggの回折条件(2d×sinθ=λ:dはX線を回析した試料の格子面の間隔である格子面間隔である)に従った回析線が得られることから、非晶質であってもPETの様な固体の場合、ハローピーク(ハローピークとは、原子構造配列がランダムに並んでいるアモルファス(非晶質)の場合にXRD測定で検出される非常にハロー(連続的)なX線回析パターンである。)のプロファイルはその原子配列に基づきピークトップ(ピークトップとは、X線回析パターンの頂点部分である。)を中心に左右対称なブロード状になり、そのハローピークの半価幅(半価幅とはX線回折プロファイル(回折強度曲線)のピーク強度の半分の強度値におけるプロファイルの幅である。)は試料の元々有する結晶構造(格子の周期性等)の影響を受ける。
【0028】
しかし、化学構造的(原子の配置や配列)に乱れ(不均一さ)があると格子定数が母構造に対して変化して、高角側へピークトップの位置がシフトし歪んだ形状になる。
【0029】
ここで、化学構造的な均一さが高ければ安定した機械的特性も有すると考えられるが、化学的な合成過程や成形時の加熱・冷却により原子の配置や配列に僅かな乱れが生じる。
【0030】
すなわち、本実施形態の包装容器中の原子の配置や配列が、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を実質的に含まない、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート樹脂から形成された包装容器中の原子の配置や配列に対して、機械的特性に遜色の無い範囲の均一さがあることが望ましい。
【0031】
そこで、本発明者らが検討した結果、その範囲を規定する手段として、包装容器の胴部分について、XRD分析により検出されたハローピークの半価幅、及びピークトップ位置と半価幅の中心値の差を調べることにより、ハローピークの幅や形状の歪みを規定することにより、座屈強度との相関があることが判明した。
【0032】
図4は、本発明のキャップ付き容器の一実施形態を、部分的に切断面の端面で示す概略正面図である。図4においては、内キャップ及び外キャップについてのみ切断面の端面で示されている。
【0033】
図4に示すように、本開示の蓋付き容器100は、内容物(図示せず)を収容するボトル(包装容器)10と、ボトル10の口部11に装着され、開口20aを有する内キャップ20と、内キャップ20に着脱可能に装着され、内キャップ20の開口20aを塞ぐ外キャップ30とを備える。容器に収容される内容物としては、ドレッシング等の液状の調味料、飲料等が挙げられる。
ボトル10は、例えば筒状の胴部12と、胴部12の一端側に設けられる筒状の口部11と、胴部12の他端に設けられる底部13とを備える。
胴部12の一端と口部11とは肩部14によって連結されている。口部11は、内容物を胴部12に収容し且つ胴部12から内容物を注出する流通経路を形成している。また口部11の外周面には、内キャップ20を受け止める受止めフランジ15が設けられてもよい。
内キャップ20は、ボトル10の口部11に装着されるものである。内キャップ20は、例えばボトル10の口部11に対して打栓式で装着されていてよい。
内キャップ20は、例えば、ボトル10の口部11に固定される筒状の基部21と、内容物を注出する開口20aが形成された筒状の注出部22と、基部21と注出部22との間に設けられ、外キャップ30を固定する中間部23とを備える。
中間部23の外周面には、例えば外キャップ30と噛み合うねじ構造(図示せず)が形成されていてもよい。ねじ構造は、例えば筒状の中間部の延び方向に沿って突出部を螺旋状に形成したものである。
そして、外キャップ30は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む樹脂を含有する樹脂組成物から形成されてよい。樹脂組成物は、バイオマス資源に由来する樹脂を含んでいてよく、バイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂を含んでいてもよい。
内キャップは、内キャップ形成用樹脂組成物から形成されてよい。内キャップ形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含むものが好ましく、ポリエチレン樹脂を含むものが好ましい。ポリエチレン樹脂としては、バイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂であってよい。
外キャップ30は、内キャップ20に着脱可能に装着され、内キャップ20の開口20aを塞ぐものである。外キャップ30は、筒状の側壁部31と、側壁部31の一端に設けられるドーム状の天井部32と、天井部32の内壁面から延びる筒状の突出部33と、突出部33の内側で天井部32の内壁面から延びる筒状の封止部34とを有している。
ここで、封止部34は、内キャップ20の注出部22の開口20a内に嵌合している。このため、天井部32の内壁面から延びる封止部34が注出部22の開口20aに収容されることで、内容物が注出部22から漏れ出ることが抑制される。
【0034】
X線回析試験は、包装容器から切り出した試験片に行ってよい。試験片のサイズは測定が可能なサイズであれば特に制限はないが、例えば、20mm×20mmとすることができる。上記(1)~(3)における半価値、ピークトップの位置及び半価幅の中心値は同一の包装容器から切り出した複数の試験片について行ったX線回析試験から得られた値の平均値であってよく、n数は例えば、3であってよい。
【0035】
本実施形態の包装容器について、X線回析チャートを分析することにより機械的強度を直接測定しなくても機械的強度を見積もることができる。そのため、包装容器の製造工程にX線回析分析を行う工程を導入することにより、簡便に不良品を取り除くことができる。
【実施例0036】
次に本発明を、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<ボトル用樹脂組成物の作製>
下記のPET100質量部に対して下記緑色着色材マスターバッチ(MB)を5質量部配合して混合物を押出成形機で押し出した後、この混合物を除湿乾燥機(カワタ製、機種名「AKPD-80N」を用いて160℃で4時間乾燥し、ボトル用樹脂組成物を調製した。押出成形機内の温度は260℃であった。表1に実施例1及び2で使用した材料及び使用した延伸ブロー成形機(共に日精エー・エス・ビー機械株式会社製)を、表2に比較例1で使用した材料を示す。なお、表1及び表2において、配合比の単位は質量部である。
【表1】

【表2】
【0038】
上記のようにして得られたボトル用樹脂組成物を、延伸ブロー成形装置(日精エーエスビー機械株式会社製、機種名「PF8-4B機」)に投入し、ボトル用の金型を用いて、270℃、30秒の条件で射出成形を行い、図4に示すボトルを得た。なお、ボトルは、筒状の胴部(内径63mm、外径64mm、長さ134mm)と、胴部の一端側に設けられる筒状の口部(内径28mm、外径30mm、長さ18mm)と、胴部の他端に設けられる底部と、胴部の一端と口部とを連結する肩部が形成されるように成形した。
こうしてボトルを作製した。
【0039】
以下に、実施例に係る座屈強度の試験方法、及びX線回析装置とその測定条件、測定して得られたハローピークの半値幅、ピークトップ位置、及び半価幅の中心位置を求めた積分強度計算条件(装置付属ソフトによる)を示す。
【0040】
実施例に係る座屈強度の試験方法を以下に示す。
<座屈強度の測定>
座屈強度の測定には、市販の圧縮試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフ AGS-X 5kN)を用いた。ボトルは口部の開口が上向きになるよう正立させ、上から固定板で、降下スピード10mm/分、圧縮方向歪量3mmにて押え、測定された力の最大値(N)を座屈強度とした。
【0041】
また、前記座屈強度試験後の各PETボトルについて、実施例に係る各PETボトル胴部分の切り出しに使用した超音波カッターを示す。
超音波カッター:SUW-30CT(スズキ株式会社性)
・最大出力:35W(連続可変)
・発振方式:自励発振、周波数自動追尾
上記の仕様で付属ハンドピースを用いて各PETボトル胴部分を切り出した。
【0042】
次に、前記で切り出した各試料について、実施例に係るX線回析装置とその測定条件、及び積分強度計算条件(装置付属ソフトによる)を示す。
X線回析装置(XRD装置):RINT ULTIMA III(株式会社リガク製)
<測定条件>
out-of-planeによるXRD測定
・X線源:CuKα、
・電圧、電流値:40kV、40mA
・光学系:平行ビーム法
・走査軸:2θ-θ法
・走査速度:1°/min、・サンプリング速度:0.010°/min
・測定範囲:5°<2θ<45°
・試料台制御モード:回転
<積分強度計算条件>
・ピーク切り出し範囲:6°~38°
・ハローピークのプロファイルを重視するため、LPA補正等の誤差補正はせず、平滑化とバックグラウンド処理を行い、半価幅やピークトップ位置、半価幅中心位置を算出した。
【0043】
以上の計算条件の他、下記2種類のピーク計算方法で半価幅及び、ピークトップ位置と半価幅の中心位置を求めたが、何れのピーク計算方法でも半価幅の値は同一結果となる。・ハローピークのピークトップ位置はピーク計算方法をピークトップ法で求めた。
・ハローピークの半値幅の中心位置はピーク計算方法を半価幅法で求めた。
【0044】
次に、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を実質的に含まない化石燃料由来のPET(一般PET)ボトルとバイオマス由来PETを含むPET(バイオPET)ボトルの比較例及び実施例を記載する。
【0045】
<比較例1>
座屈強度試験後、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を実質的に含まないPETを材料とするボトルの胴部分を上記超音波カッターで切り出し、さらに切り出した胴部分から20mm×20mmの測定用試料をハサミで3枚切り取った。この方法により3本(それぞれ、ボトル試料1~3とする)のPETボトルから各3枚(それぞれn1~n3サンプルとする。)の短冊状の試験片を切り取り計9枚の測定用試料を得た。これら測定用試料についてX線回析測定を行い、得られたハローピークについて積分強度計算の解析により、半価幅及びピークトップ位置と半価幅の中心位置を求め、ピークトップ位置と半値幅の中心位置の差を算出した。
【0046】
図1-1は、比較例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについてのピークトップ法による積分強度計算結果である。また、図1-2は、比較例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについての半価幅法による積分強度計算結果である。図1-1及び図1-2においてグラフ内の縦線はピーク位置を示す。
【0047】
図1-1及び1-2より、比較例1のボトル試料2(n3サンプル)の解析結果は、以下のとおりである。
・半価幅:11.37°
・ピークトップ位置:22.57°(ピーク計算方法:ピークトップ法)
・半価幅の中心位置:21.77°(ピーク計算方法:半価幅法)
・ピークトップ位置と半値幅の中心位置の差:22.57-21.77=0.80°
【0048】
<実施例1>
座屈強度試験後、バイオマス由来PET(バイオ度30%)(ロッテケミカル社製)から形成された液体用ボトルについて、前記比較例1と同様な手順により、半価幅及びピークトップ位置と半価幅の中心位置を求め、ピークトップ位置と半値幅の中心位置の差を算出した。
【0049】
図2-1は、実施例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについてのピークトップ法による積分強度計算結果である。また、図2-2は、実施例1のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについての半価幅法による積分強度計算結果である。図2-1及び図2-2においてグラフ内の縦線はピーク位置を示す。
【0050】
図2-1及び2-2より、実施例1のボトル試料2(n3サンプル)の解析結果は、以下のとおりである。
・半価幅:11.44°
・ピークトップ位置:22.83°(ピーク計算方法:ピークトップ法)
・半価幅の中心位置:21.99°(ピーク計算方法:半価幅法)
・ピークトップ位置と半値幅の中心位置の差:22.83-21.99=0.84°
【0051】
<実施例2>
座屈強度試験後、バイオマス資源由来のPET(バイオ度30%)(インドラマ社製)から形成された液体用ボトルについて、前記比較例1と同様な手順により、半価幅及びピークトップ位置と半価幅の中心位置を求め、ピークトップ位置と半値幅の中心位置の差を算出した。
【0052】
図3-1は、実施例2のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについてのピークトップ法による積分強度計算結果である。また、図3-2は、実施例2のボトル試料2(n3サンプル)のハローピークについての半価幅法による積分強度計算結果である。図3-1及び図3-2においてグラフ内の縦線はピーク位置を示す。
【0053】
図3-1及び3-2より、実施例2のボトル試料2(n3サンプル)の解析結果は、以下の様になった。
・半価幅:11.12°
・ピークトップ位置:22.71°(ピーク計算方法:ピークトップ法)
・半価幅の中心位置:21.91°(ピーク計算方法:半価幅法)
・ピークトップ位置と半値幅の中心位置の差:22.71-21.91=0.80°
【0054】
次に、表3に各ボトル試料(比較例1及び実施例1、2)のXRD分析の半価幅及びピークトップ位置と半価幅の中心位置、そしてピークトップ位置と半値幅の中心位置の差(=ピーク差)の結果(ピーク差の昇順で記載)、そして座屈強度試験結果を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
上記表3の結果より、先ずピーク差について比較例1のボトル試料1は0.24(°)~0.26(°)であったが、実施例1及び2でそこまで小さいピーク差は無かった。これは、実施例1及び2がバイオマス資源由来のため化石燃料由来(=バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を実質的に含まないもの)に比べて化学構造的(原子の配置や配列)な乱れ(不均一さ)が僅かであるが部分的にある可能性が考えられる。
【0057】
しかしながら、座屈強度について比較例1が277N・m~299N・m(平均値:287N・m)、実施例1が277N・m~296N・m(平均値:286N・m)、実施例2が283N・m~296N・m(平均値:289N・m)となり、比較例1に対して実施例1及び2の座屈強度は、遜色無い結果が得られた。また、比較例1及び実施例1、2共にピーク差が大きくなるに従い座屈強度が低下する傾向が見られた。さらに、ピーク差と半価幅の関係を見ると、ピーク差が大きくなるに従い、半価幅は小さくなる傾向がほぼ見られた。
【0058】
そこで、半価幅について比較例1の最大値(11.60)に対する実施例1及び2の最小値(10.91)の比率を求めた所、
10.91/11.60=0.94となった。
【0059】
また、同じく半価幅について比較例1の最小値(10.89)に対する実施例1及び2の最大値(11.59)の比率を求めた所、
11.59/10.89=1.06となった。
【0060】
さらに、同じく試料毎の半価幅の平均値について比較例1の最大値(11.56)に対する実施例1及び2の最小値(11.04)の比率を求めた所、
11.04/11.56=0.96となった。
【0061】
また、同じく試料毎の半価幅の平均値について比較例1の最小値(11.10)に対する実施例1及び2の最大値(11.51)の比率を求めた所、
11.51/11.10=1.04となった。
【0062】
よって、X線回折法(XRD)におけるハローピークの積分強度計算による半価値が、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を実質的に含まない包装容器に対して0.94~1.06、さらに好ましくは0.96~1.04のバイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む包装容器となった。
【0063】
次に、表3の結果より、ピークトップ位置と半値幅の中心位置の差について、比較例1の最大値(1.36)に対する実施例1及び2の最小値(0.36)の比率を求めた所、
0.36/1.36=0.24となった。
【0064】
また、同じくピークトップ位置と半値幅の中心位置の差について、比較例1の最小値(0.24)に対する実施例1及び2の最大値(1.22)の比率を求めた所、
1.22/0.24=5.08となった。
【0065】
さらに、同じく試料毎のピークトップ位置と半値幅の中心位置の差の平均値について、比較例1の最大値(1.20)に対する実施例1及び2の最小値(0.40)の比率を求めた所、
0.40/1.20=0.33となった。
【0066】
また、同じく試料毎のピークトップ位置と半値幅の中心位置の差の平均値について、比較例1の最小値(0.26)に対する実施例1及び2の最大値(1.12)の比率を求めた所、
1.12/0.26=4.31となった。
【0067】
よって、本発明に係るX線回折法(XRD)におけるハローピークの積分強度計算によるピークトップと半値幅の中心値の差が、バイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を実質的に含まない包装容器に対して0.24~5.08、さらに好ましくは0.33~4.31のバイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む包装容器となった。
【0068】
また、比較例1の座屈強度平均値287N・mを上回る基準で実施例1、2の結果を見ると、実施例1の座屈強度平均値296N・mのボトル試料1の半価幅の平均値は11.46(°)、ピーク差の平均値は0.40(°)、実施例2の座屈強度平均値296N・mのボトル試料1の半価幅の平均値は11.50(°)、ピーク差の平均値は0.61(°)であることから、本発明に係るX線回折法(XRD)におけるハローピークの積分強度計算による半価値が11.50(°)以上、ピークトップと半値幅の中心値の差が0.40(°)以下のバイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む包装容器となった。
【符号の説明】
【0069】
10…ボトル、11…口部、20…内キャップ、20a…開口、30…外キャップ、100…蓋付き容器。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4