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特開2024-35684樹脂組成物、キャップ、及びキャップ付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035684
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、キャップ、及びキャップ付き容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240307BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240307BHJP
   B65D 65/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/04
B65D65/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140298
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅文
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 博
(72)【発明者】
【氏名】山脇 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E086
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD23
3E086BA15
3E086BA29
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB55
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA11
4J002BB022
4J002BB032
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
4J002BP021
4J002GG00
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】
機械的強度の高いキャップを形成できる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリプロピレン樹脂の(140)面及び前記ポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値が46~60である、樹脂組成物。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリプロピレン樹脂の(140)面及び前記ポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値が46~60である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリエチレン樹脂の(200)面の回析ピークの強度が25~27である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、バイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、バイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂を5~40質量%含む、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂を60~95質量%含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリプロピレン樹脂の(140)面及び前記ポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値が48~52である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物から形成されたキャップ。
【請求項8】
請求項7に記載のキャップと、当該キャップが取り付けられた樹脂製の容器と、を含むキャップ付き容器。
【請求項9】
前記容器がバイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項8に記載のキャップ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、キャップ、及びキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
調味料などの内容物を収容するプラスチック容器として、従来、ボトルと、ボトルの口部に装着されるキャップとを備えるものが知られている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、容器本体と、容器本体の口部に装着される中栓と、中栓に開閉可能に装着される外キャップとを備え、外キャップが直鎖状低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂からなる容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-160729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、容器のキャップは内容物の漏れを防止すべく、衝撃、圧力等に対する耐性が求められるところ、従来のキャップを形成するための樹脂組成物は、機械強度に未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、機械的強度に優れる樹脂製品、特にキャップを形成することが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の実施形態[1]~[9]を含む。
[1]ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリプロピレン樹脂の(140)面及び前記ポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値が46~60である、樹脂組成物。
[2]前記回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリエチレン樹脂の(200)面の回析ピークの強度が25~27である、[1]の樹脂組成物。
[3]前記樹脂組成物は、バイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂を含む、[1]又は[2]の樹脂組成物。
[4]前記樹脂組成物は、バイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂を5~40質量%含む、[3]の樹脂組成物。
[5]前記樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂を60~95質量%含む、[1]~[4]のいずれか一つの樹脂組成物。
[6]前記回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリプロピレン樹脂の(140)面及び前記ポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値が48~52である、[1]~[5]のいずれか一つの樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれか一つの樹脂組成物から形成されたキャップ。
[8][7]のキャップと、当該キャップが取り付けられた樹脂製の容器と、を含むキャップ付容器。
[9]前記容器がバイオマス資源に由来するポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、[8]のキャップ付き容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機械的強度に優れる樹脂製品、特にキャップを形成することが可能な樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、比較例1のX線回析チャート及びピークサーチ結果を示す図である。
図2図2は、比較例2のX線回析チャート及びピークサーチ結果を示す図である。
図3図3は、実施例1のX線回析チャート及びピークサーチ結果を示す図である。
図4図4は、本発明のキャップ付き容器の一実施形態を、部分的に切断面の端面で示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含み、前記樹脂組成物に対して25℃でCuKα線を用いてX線回析試験を行って得られた回析チャートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリプロピレン樹脂の(140)面及び前記ポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値が46~60である。このような樹脂組成物は、機械的強度に優れる。
樹脂組成物であるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂を比べると、一般的にポリプロピレンの方がポリエチレンよりも硬く耐衝撃性が高いことは周知であり、寸法精度や寸法安定性、そして細かいデザインを要する部材はポリエチレンではなくポリプロピレンが使用されている。プラスチック容器に使用されるキャップもまた、内容物の漏洩を防止や開け閉めの構造的工夫、及び外観に特徴を持たせる部材に相当するため、通常はポリエチレンでは無くポリプロピレンが使用されている。
しかし、近年の環境に負荷を与えない材料が注目される中、植物等のバイオマス資源を由来とするポリエチレン樹脂が開発され、様々な用途への展開が図られており、従来の化石燃料由来の樹脂とのブレンドも検討されている。
そこで、本発明者らは、プラスチック容器に使用されるキャップについて、従来のポリプロピレン樹脂だけでなくバイオマス由来とは限定せずポリエチレン樹脂をブレンドさせても機械的強度が劣らないキャップ材料の検討を行った結果、X線回析試験を行って得られた回析チャートにおいて、ポリエチレン樹脂由来の(110)面の回析ピークが大きい程、機械的強度が高いことを見出し、ブレンドしたポリプロピレン樹脂由来の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、前記ポリプロピレン樹脂の(140)面及び前記ポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値が46~60の範囲に入ると機械的強度が優れることが分かった。
また、ポリエチレン樹脂由来の(110)面の回析ピークが大きい程、機械的強度が高い理由は、(110)面を有する単位胞(結晶の周期性の最小単位)がX線回析試験での試料面に対して斜めに配向しているため、せん断力強度が発現していることを見出した。以下、その他実施形態を含めて詳しく説明する。
【0011】
XRD(X線回析)分析は、測定試料にX線を照射した際にX線が原子周辺の電子によって散乱し生じる回析を測定・解析することにより、物質の状態や物性を調べることができる。
本実施形態のXRD分析では、out-of-planeによる測定を採用してよい。これにより、試料表面に対して平行な格子面について深さ方向(厚さ方向)の測定できる。そのため、試料表面に対して垂直な格子面を評価するin-planeは成形による延伸方向に依存した配向性が影響するが、out-of-planeでは延伸方向に拘らず深さ方向の結晶性を測定することが出来る。
【0012】
XRD分析では通常、試料面が平面状であることが望ましく、測定試料がキャップから切り出した試験片である場合、頂点部分は多少湾曲しているが、XRD分析の光学系条件を平行ビーム法(平行ビーム法とは、放物面多層膜ミラーによりX線発生源から生じる発散ビームを圧縮・平行・単色化した光学系である。)にすることにより、平行なX線成分を抽出しているため、試料面の凹凸の影響を受けず、回析ピークを検出することができる。近年のXRD分析装置では、通常、放物面多層膜ミラー(放物面多層膜ミラーとは、異なる入射角で入射するX線が多層膜で反射する時、いずれの反射X線も平行に出射するように設定されたX線光学素子である。)が付属しているため、平行なX線を抽出している分、ピーク強度や角度分解能が低くなっても改善がなされている。
【0013】
キャップの肉厚は1mm程度であるのに対して、PE(ポリエチレン)樹脂のX線(CuKα:発生エネルギー=8keV)の検出深さ(PE樹脂のX線回析ピークの終了位置:2θ=約25°、99%利用率)は約1.3mmであり(参照文献:X線ハンドブック,株式会社リガク,(2006年五版発行)、及びNIST公開データベース「X-Ray Attenuation Coefficients」)、PP(ポリプロピレン)樹脂も同程度と考えられるが、試料を測定試料台に固定する粘土基材は装置メーカー専用の回析ピークが出ない材質であるため基材の影響は受けること無く、キャップの厚さ方向の結晶構造情報を得ることできる。
【0014】
また、XRD分析のスキャン方法を2θ‐θ法にすることにより、測定の回析角度(2θ角度:2θは入射X線方向と回析X線方向のなす角度である)において試料の深さ方向の測定領域の大きさに変化は無く、Braggの回析条件(2d×sinθ=λ:dはX線を回析した試料の格子面の間隔である格子面間隔である)に従った回析線が得られる。
【0015】
ポリプロピレン(PP)樹脂の結晶系は単斜晶、斜方晶(直方晶)、及び六方晶の主に三つあり、本実施形態の樹脂組成物に含まれるPP樹脂は何れでも、また混合していても構わないが、実施例のX線回析チャートの帰属では単斜晶と考えられる(参照:ICDD PDF-2/PDF-4(2002)粉末回析データベース)。
【0016】
ポリエチレン(PE)樹脂の結晶系は通常、斜方晶であるが、延伸や圧縮などの応力が加わると単斜晶が生成されることが知られている(参照:https://www.nmrj.jp/meeting/nmr47/pdf/P063.pdf)。本実施形態の樹脂組成物に含まれるPE樹脂は何れでも、また混合していても構わないが、実施例のX線回析チャートの帰属では斜方晶(直方晶)であってよく、主に(110)面と(200)面の回析線が得られる(参照:ICDD PDF-2/PDF-4(2002)粉末回析データベース)。
【0017】
ここで、PE樹脂の構造に由来する(200)面の格子面((200)面とは、3個の結晶軸の長さがa=1/2、b=0、c=0であり、b軸とc軸に平行な結晶面を有する単位胞(単位胞とは、結晶構造の周期パターンの単位となる平行6面体であり、結晶構造は単位胞の敷き詰めで表現される))は、out-of-planeのXRD分析で検出される場合、試料面に平行・垂直に位置する。これに対して、PE樹脂の構造に由来する(110)面の格子面((110)面とは、3個の結晶軸の長さがa=1、b=1、c=0であり、c軸に平行な結晶面である。)を有する単位胞は、out-of-planeのXRD分析で検出される場合、試料面に対して斜めに位置している。
【0018】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、PE樹脂に由来する(200)面強度(面強度とは、その結晶面から散乱されるX線の強度である)が高い程、試料面へのせん断力に対する機械的強度は低い、すなわち、PE樹脂に由来する(200)面強度が低い程、試料面へのせん断力に対する機械的強度は高いと考えた。また、PEに由来する(110)面強度は逆に高い程、試料面へのせん断力に対する機械的強度が高い可能性があると考えられる。なお、本明細書において、特に断らない限り、面強度は、当該面に由来する回析ピークのピーク高さである。
【0019】
ポリプロピレン樹脂の(040)面強度は、2θで15~17°の位置に観測されてよく、16~17°の位置に観測されてもよい。なお、ポリプロピレンの(040)面強度は、2θで15~17°(16~17°であってよい)の位置に観測される最も強度の大きい(ピーク高さの大きい)ピークで代替してもよい。
【0020】
樹脂組成物について測定したX線回析チャートにおいて、ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、ポリプロピレン樹脂の(140)面及びポリエチレン樹脂の(110)面の回析ピークの強度の合計値は、47~57であってよく、48~52であってよい。
【0021】
樹脂組成物について測定した回析チャートにおいて、ポリプロピレン樹脂の(040)面の回析ピークの強度を100とした場合に、ポリエチレン樹脂の(200)面の回析ピークの強度は、25~27であってよく、26~27であってよい。
【0022】
本実施形態の樹脂組成物に含まれるPE樹脂の構造は特に限定なく、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖上低密度ポリエチレン(LLDPE)、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)等のいずれであってもよく、それらの混合物でも良い。平均分子量やその指標となるMFR(メルトフロレート)、固有粘度、そして分子量分布などのポリマー性状も特に限定は無いが、実用上、適したものが良い。
【0023】
樹脂組成物は、HDPE樹脂を含んでいてもよい。本明細書において、HDPE樹脂とは、JIS K6748:1995において定義される密度が0.942g/cm以上のポリエチレン樹脂を意味する。HDPE樹脂は、エチレンの単独重合体及びエチレンとオレフィン化合物との共重合体のいずれであってもよい。HDPE樹脂の密度は、0.948~0.970g/cmであってよく、0.952~0.965g/cmであってよい。HDPE樹脂の密度は、ASTM D 792若しくはJIS K6922-1若しくは2の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0024】
190℃、2.16kgにおけるPE樹脂のメルトフローレート(MRF)は、25g/10min以下であってよく、15g/10min以下であってよく、10g/10min以下であってよい。また、190℃、2.16kgにおけるPE樹脂のメルトフローレート(MRF)は、1~15g/10minであってよく、2~10g/10minであってよく、3~10g/10minであってよい。PE樹脂のMRFは、ASTM D1238若しくはJIS K6922-2の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0025】
PE樹脂の曲げ弾性率は1000Mpa以上であってよく、1100Mpa以上であってよく、1200MPa以上であってよい。PE樹脂の曲げ弾性率は1000~1800Mpaであってよく、1200~1500Mpaであってよく、1300~1500MPaであってよい。PE樹脂の曲げ弾性率は、ASTM D2240若しくはJIS K6922-2の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0026】
PE樹脂の降伏点伸びは、20%以下であってよく、3~15%であってよく、5~10%であってよい。PE樹脂の降伏点強度は、5~50MPaであってよく、15~35MPaであってよい。PE樹脂の降伏点伸び及び降伏点強度は、ASTM D638の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0027】
PE樹脂のショアD硬度は、50以上であってよく、55~80であってよく、58~75であってよい。PE樹脂のショアD硬度は、ASTM D2240若しくはJIS K 7215の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0028】
PE樹脂のアイゾッド衝撃強さは、10J/m以上であってよく、10~60J/mであってよく、15~50J/mであってよく、25~40J/mであってよい。PE樹脂のアイゾッド衝撃強さは、ASTM D256の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0029】
PE樹脂の0.455MPaでの荷重たわみ温度は、55℃以上、60~80℃、又は65~75℃であってよい。PE樹脂の0.455MPaでの荷重たわみ温度は、ASTM D648の試験法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0030】
PE樹脂のビカット軟化温度は、110℃以上、115~130℃、又は120~128℃であってよい。PE樹脂のビカット軟化温度は、ASTM D1525若しくはJIS K7206の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0031】
樹脂組成物に含まれるPE樹脂は、バイオマス資源に由来するPE樹脂(バイオマスポリエチレン樹脂)を含んでいてもよい。バイオマス由来のPE樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂及び低密度ポリエチレン樹脂のいずれであってもよく、高密度ポリエチレン樹脂であってよい。PE樹脂がバイオマス由来のPE樹脂を含む場合、化石燃料由来のPE樹脂の使用量が減少するため、環境負荷を低減することができる。
【0032】
バイオマスポリエチレン樹脂としては、植物由来のバイオマスポリエチレン樹脂が挙げられる。植物由来とは、植物を発酵させて得られたアルコールを原料として合成されたエチレンを重合して得られたポリエチレン樹脂を意味する。すなわち、植物由来のバイオマスポリエチレン樹脂は、植物由来の炭素を含むことを意味する。原材料の植物としては、特に限定するものではないがトウモロコシ、サトウキビ、ビート、マニオク、キャッサバなどが例示できる。
【0033】
バイオマスポリエチレン樹脂である高密度ポリエチレン樹脂としては、SHA7260(Braskem社製、バイオマスプラスチック度:94.5%、密度:0.955g/cm、MFR:20g/10分、曲げ弾性率:1250MPa、アイゾッド衝撃強さ:20J/m)、SHC7260(Braskem社製、バイオマス度:94%、密度:0.959g/cm、MFR:7.2g/10分、曲げ弾性率:1365MPa、アイゾッド衝撃強さ:35J/m)等が挙げられる。バイオマスポリエチレン樹脂である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂としては、SLL318(Braskem社製、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)等が挙げられる。バイオマスポリエチレン樹脂である低密度ポリエチレン樹脂としては、SBC818(Braskem社製、バイオマス度:95%、密度:0.918g/cm、MFR:8.3g/10分)等が挙げられる。なお、樹脂のバイオマス度は、ASTM D6866の方法により測定することができる。
【0034】
樹脂組成物におけるPE樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量に対して5~40質量%であってよく、10~30質量%であってよく、15~25質量%であってよい。
【0035】
樹脂組成物におけるバイオマスポリエチレン樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量に対して5~40質量%であってよく、10~30質量%であってよく、15~25質量%であってよい。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物に含まれるPP樹脂としては、特に限定なく、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等のいずれであってもよく、それらの混合物でも構わない。立体規則構造もアイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックであり、それらの混合物でも良い。平均分子量やその指標となるMFR(メルトフロレート)、固有粘度、そして分子量分布などのポリマー性状も特に限定は無いが、実用上、適したものが良い。本実施形態のポリプロピレン樹脂は、2種以上のポリプロピレン樹脂を含んでいてよく、ブロックポリプロピレン及びホモポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0037】
(ブロックポリプロピレン)
ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレン中にゴム成分であるエチレンプロピレンゴム(EPR)を分散させてなるものが好ましく用いられる。この場合、樹脂組成物から形成される樹脂製品の耐衝撃性を向上させることができる。
ブロックポリプロピレンは化石燃料由来のブロックポリプロピレン、植物由来のブロックポリプロピレン、又はこれらの混合物であってもよい。
【0038】
樹脂組成物に含まれる樹脂中のブロックポリプロピレンの含有率は45質量%より大きければ特に制限されるものではないが、48質量%以上であることがより好ましい。この場合、樹脂組成物に含まれる樹脂中のブロックポリプロピレンの含有率が45質量%以下である場合に比べて、低温での落下による外キャップの割れをより抑制できる。
【0039】
樹脂組成物に含まれる樹脂中のブロックポリプロピレンの含有率は70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。この場合、樹脂組成物に含まれる樹脂中のブロックポリプロピレンの含有率が70質量%を超える場合に比べて、樹脂組成物から形成される樹脂製品の保管時の変形をより抑制することができる傾向がある。
【0040】
(ホモポリプロピレン)
上記樹脂は、さらにホモポリプロピレンを含んでもよい。ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。ホモポリプロピレンは化石燃料由来のホモポリプロピレン、植物由来のホモポリプロピレン、又はこれらの混合物であってもよい。
樹脂組成物に含まれる樹脂中のホモポリプロピレンの含有率は特に制限されるものではないが、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。この場合、樹脂組成物に含まれる樹脂中のホモポリプロピレンの含有率が25質量%未満である場合に比べて、当該樹脂組成物から形成された樹脂製品の保管時の変形をより抑制することができる傾向がある。
【0041】
樹脂組成物におけるポリプロピレン樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量に対して60~95質量%であってよく、65~90質量%であってよく、70~85質量%であってよく、75~80質量%であってよい。
【0042】
樹脂組成物は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
樹脂組成物の用途としては特に限定されないが、キャップ等のプラスチック製品を形成するために使用することができる。キャップは、容器(包装容器等)の口部に取り付け可能なキャップであってよく、打栓式キャップ、及びスクリュー式キャップのいずれであってもよい。また、本実施形態の樹脂組成物から形成されたキャップは、機械的強度に優れるため、外キャップを形成するために使用してもよい。
【0044】
本実施形態のキャップを装着する容器としては、特に限定されないが、樹脂製、ガラス製等であってよく、樹脂製の容器であってよい。つまり、本実施形態のキャップ付き容器は、容器と、当該容器の口部に打栓されたキャップを有していてよい。容器に含まれる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。樹脂は、機械強度などの点から、PETを含むことが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレート樹脂であってよく、バイオマス由来のものと石油由来のものを併用してもよい。
PETとしては、化石燃料由来のPET、及び、植物由来のPETが挙げられる。PETが植物由来のPETを含む場合、ボトルの機械的強度の低下及び外観の劣化を抑制することができる。PETが植物由来のPETを含む場合、化石燃料由来のPETの使用量が減少するため、環境負荷を低減することができる。
【0045】
図4は、本発明のキャップ付き容器の一実施形態を、部分的に切断面の端面で示す概略正面図である。図4においては、内キャップ及び外キャップについてのみ切断面の端面で示されている。
【0046】
図4に示すように、本開示のプラスチック容器100は、内容物(図示せず)を収容するボトル10と、ボトル10の口部11に装着され、開口20aを有する内キャップ20と、内キャップ20に着脱可能に装着され、内キャップ20の開口20aを塞ぐ外キャップ30とを備える。容器に収容される内容物としては、ドレッシング等の液状の調味料、飲料等が挙げられる。
ボトル10は、例えば筒状の胴部12と、胴部12の一端側に設けられる筒状の口部11と、胴部12の他端に設けられる底部13とを備える。
胴部12の一端と口部11とは肩部14によって連結されている。口部11は、内容物を胴部12に収容し且つ胴部12から内容物を注出する流通経路を形成している。また口部11の外周面には、内キャップ20を受け止める受止めフランジ15が設けられてもよい。
内キャップ20は、ボトル10の口部11に装着されるものである。内キャップ20は、例えばボトル10の口部11に対して打栓式で装着される。
内キャップ20は、例えば、ボトル10の口部11に固定される筒状の基部21と、内容物を注出する開口20aが形成された筒状の注出部22と、基部21と注出部22との間に設けられ、外キャップ30を固定する中間部23とを備える。
中間部23の外周面には、例えば外キャップ30と噛み合うねじ構造(図示せず)が形成されていてもよい。ねじ構造は、例えば筒状の中間部の延び方向に沿って突出部を螺旋状に形成したものである。
そして、外キャップ30は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む樹脂を含有する本実施形態の樹脂組成物形成される。
内キャップは、内キャップ形成用樹脂組成物から形成されてよい。内キャップ形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含むものが好ましく、ポリエチレン樹脂を含むものが好ましい。ポリエチレン樹脂としては、上述の樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂として例示したものが挙げられる。
外キャップ30は、内キャップ20に着脱可能に装着され、内キャップ20の開口20aを塞ぐものである。外キャップ30は、筒状の側壁部31と、側壁部31の一端に設けられるドーム状の天井部32と、天井部32の内壁面から延びる筒状の突出部33と、突出部33の内側で天井部32の内壁面から延びる筒状の封止部34とを有している。
ここで、封止部34は、内キャップ20の注出部22の開口20a内に嵌合している。このため、天井部32の内壁面から延びる封止部34が注出部22の開口20aに収容されることで、内容物が注出部22から漏れ出ることが抑制される。
【0047】
本実施形態のキャップについて、X線回析チャートを分析することにより機械的強度を直接測定しなくても機械的強度を見積もることができる。そのため、キャップの製造工程にX線回析分析を行う工程を導入することにより、簡便に不良品を取り除くことができる。
【実施例0048】
次に本発明を、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0049】
以下に、実施例で使用したX線回析装置とその測定条件、測定して得られた回析線のピークサーチ解析条件(装置付属ソフトによる)を示す。なお、試験はすべて室温(25℃)で行った。
X線回析装置(XRD装置):RINT ULTIMA III(株式会リガク製)
(測定条件)out-of-planeによるXRD測定
・X線源:CuKα
・電圧,電流値:40kV、40mA
・光学系:平行ビーム法
・走査軸:2θ-θ法
・走査速度:4°/min
・サンプリング速度:0.020°/min
・測定範囲:5°<2θ<55°
・試料台制御モード:回転
【0050】
(ピークサーチ解析条件)
平滑化とバッググラウンド処理を行いピークサーチの解析を行った。
【0051】
また、実施例において各外キャップから測定用試料の切り出しに使用した超音波カッターは以下のものである。
超音波カッター:SUW-30CT(スズキ株式会社性)
・最大出力:35W(連続可変)
・発振方式:自励発振、周波数自動追尾
上記の仕様で付属ハンドピースを用いて各外キャップから測定用試料を切り出した。
【0052】
次に、石油資源由来のPP樹脂製外キャップと、バイオマス資源由来PE(ポリエチレン)を混合した外キャップの比較例及び実施例とを記載する。
【0053】
<比較例1>
化石燃料資源由来のPPのみを原材料とする外キャップを射出成型により作製した。作製された外キャップの頂点部分を超音波カッターで切り出し、18mm×18mmの測定用試料を作製した。この方法により、3個のキャップから計3枚の測定用試料(n=3)を得た。これら測定用試料についてX線回析測定を行い、得られた回析線についてピークサーチを行った。そして、各回析線の2θ位置(°)から面指数(h、k、l)を帰属し、各結晶面の強度(cps)と相対強度(各結晶面の強度(cps)のうち最大の強度(cps)である最強線強度を100とした場合の各結晶面の強度比)を求めた。
【0054】
図1は、比較例1(n=3中、n1試料)のX線回析チャート及びピークサーチ結果を示す図である。図1に示すように観測されたピークのうち、PPの(040)面に由来する回析ピークの強度が最も大きかった。
【0055】
<比較例2>
化石燃料資源に由来するポリプロピレン樹脂78質量%((A)ホモポリプロピレン(ロッテケミカル株式会社製、商品名「J160H」)を30質量%、(B)ブロックポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、商品名「PM970A」)を48質量%使用した)及びバイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂22質量%(Braskem社製、商品名「SHA7260」)を混合して原材料である樹脂組成物を調製し、射出成型により外キャップを作製した。作製された外キャップの頂点部分を超音波カッターで切り出し、18mm×18mmの測定用試料を作製した。この方法により、3個のキャップから計3枚の測定用試料(n=3)を得た。これら測定用試料についてX線回析測定を行い、得られた回析線についてピークサーチを行った。そして、各回析線の2θ位置(°)からミラー指数(h、k、l)を帰属し、各結晶面の強度(cps)と相対強度(最強線強度を100とした場合の各結晶面の強度比)を求めた。
【0056】
図2は、比較例2(n=3中、n1試料)のX線回析チャート及びピークサーチ結果を示す図である。図2に示すように観測されたピークのうち、PPの(040)面に由来する回析ピークの強度が最も大きかった。
【0057】
図2を見ると、図1のPP由来の回析線にPE由来の回析線が加わっている。また、2θ=21.3°付近では、PP由来の(140)面とPE由来の(110)面が重なっていた。
【0058】
<実施例1>
化石燃料資源に由来するポリプロピレン樹脂78質量%((A)ホモポリプロピレン(ロッテケミカル株式会社製、商品名「J160H」)を30質量%、(B)ブロックポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、商品名「PM970A」)を48質量%使用した)及びバイオマス資源に由来するポリエチレン樹脂22質量%(Braskem社製、商品名「SHC7260」)を混合して原材料である樹脂組成物を調製し、射出成型により外キャップを作製した。作製された外キャップの頂点部分を超音波カッターで切り出し、18mm×18mmの測定用試料を作製した。この方法により、3個のキャップから計3枚の測定用試料(n=3)を得た。これら測定用試料についてX線回析測定を行い、得られた回析線についてピークサーチを行った。そして、各回析線の2θ位置(°)からミラー指数(h、k、l)を帰属し、各結晶面の強度(cps)と相対強度(最強線強度を100とした場合の各結晶面の強度比)を求めた。
【0059】
図3は、実施例1(n=3中、n1試料)のX線回析チャート及びピークサーチ結果を示す図である。図3に示すように観測されたピークのうち、PPの(040)面に由来する回析ピークの強度が最も大きかった。
【0060】
図3を見ると図2と同様に、図1のPP由来の回析線にPE由来の回析線が加わっている。また、2θ=21.2°付近では、PP由来の(140)面とPE由来の(110)面が重なっていた。
【0061】
次に、各外キャップ測定試料(比較例1、2及び実施例1)のXRD分析のサーチ結果による結晶面指数(h、k、l)と結晶面強度結果(cps)を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
上記表1の結果より、比較例1は、比較例2や実施例1よりPP由来の(040)面の最強線ピークやその他PP由来の結晶面ピークがやや高くなっている。これは、PPの含有量が比較例2や実施例1は78重量%なのに対して、比較例1は100質量%とPPの含有量が多いためと考えられる。それを考慮の上、全体的なピーク強度で結晶性を比較すると、比較例1、2及び実施例1は殆ど差が無いため、キャップ全体の結晶性(結晶化度)に大きな差は無いと考えられる。
【0064】
次に、各外キャップ測定試料(比較例1、2及び実施例1)のXRD分析のサーチ結果による結晶面指数(h、k、l)とPP由来の(040)面の最強線強度を100とする結晶面強度比の結果を表2に示す。なお、表中の灰色部分は本発明に係る数値である。
【0065】
【表2】
【0066】
上記表2の結果より、同じ組成(化石燃料資源由来PP:78%、バイオマス資源由来PE:22%)である比較例2と実施例1を比較すると、実施例1の方が比較例2よりもPPにより構成される(140)面とPEにより構成される(110)面との相対強度の合計(以下、PP(140)/PE(110)面の強度とも言う)が大きく、PEにより構成される(200)面の回析線相対強度は明らかに低い傾向が認められた。ここで、PPにより構成される(140)及びPEにより構成される(110)面の強度の内、PP(140)面の強度については同じPP成分含有量であることと、他のPP(110)面やPP(130)面について、比較例2と実施例1の差よりも若干高い傾向(PP(110)面は強度差3、PP(130)面は強度差2に対してPP(140)/PE(110)面の強度差は4)であることから、比較例2と実施例1のPP(140)/PE(110)の強度比の差は、PE(110)面の強度比の差も含まれていると考えられる。
【0067】
次に、機械的物性の評価結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
<内キャップの作製>
下記の直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対して下記クリーム色の着色材マスターバッチ(MB)を4質量部配合して混合物を得た後、この混合物を、射出成形機を用いて200℃で20秒溶融混練し、内キャップ用樹脂組成物を調製した。
・直鎖状低密度ポリエチレン
ロッテケミカル株式会社製、商品名「UL814」
・クリーム色の着色材MB
東洋インキ株式会社製、品番「TET29780」、ベース材(直鎖状低密度ポリエチレン):顔料(酸化チタン他)=95:5
【0070】
上記のようにして得られた内キャップ用樹脂組成物を、上記と同様の射出成形装置に投入し、内キャップ用の金型を用いて、200℃、20秒の条件で射出成形を行い、図4に示す内キャップを得た。なお、内キャップは、筒状の基部(内径32mm、外径35mm、長さ9mm)と、筒状の注出部(内径7mm、外径10mm、長さ10mm)と、基部21と注出部22との間に設けられる筒状の中間部(内径24mm、外径27mm、長さ7mm)とを有し、中間部の外周面には、中間部の延び方向に沿って螺旋状に突出部を形成した。こうして内キャップを作製した。
【0071】
<ボトルの作製>
下記のPET100質量部に対して下記緑色着色材マスターバッチ(MB)を5質量部配合して混合物を得た後、この混合物を、延伸ブロー成形機を用いて270℃で30秒間溶融混練し、ボトル用樹脂組成物を調製した。
・PET
南亜プラスチック社製、商品名「3802」
・緑着色材MB
大日精化工業株式会社製、商品名「PT-RM-SAB 16C2125 TGN」
【0072】
上記のようにして得られたボトル用樹脂組成物を、延伸ブロー成形装置(日精エーエスビー機械株式会社製、機種名「PF8-4B機」)に投入し、ボトル用の金型を用いて、270℃、30秒の条件で射出成形を行い、図1に示すボトルを得た。なお、ボトルは、筒状の胴部(内径63mm、外径64mm、長さ134mm)と、胴部の一端側に設けられる筒状の口部(内径28mm、外径30mm、長さ18mm)と、胴部の他端に設けられる底部と、胴部の一端と口部とを連結する肩部14が形成されるように成形した。
こうしてボトルを作製した。
【0073】
<プラスチック容器の作製>
以上のようにして得られた実施例1~3及び比較例1~2の外キャップ、上記内キャップ及び上記ボトルを用いてプラスチック容器を作製した。具体的には、ボトルに対し、口部から内容物としてドレッシングを注入した。次に、ボトルの口部に内キャップを打栓して装着した後、外キャップを内キャップに被せ、ボトルの胴部の延び方向に沿って外キャップを回転させて外キャップを内キャップに装着した。こうして、内容物入りのプラスチック容器を得た。
【0074】
(1)低温での落下による割れ
上記のようにして得られた内容物入りのプラスチック容器16本用意し、これらを、5℃に設定した冷蔵庫に24時間入れた後に取り出して、コンクリートからなる床材の表面から1mの高さより、外キャップを床材の表面に向けて落下させた。
そして、外キャップにおける割れの有無を目視にて検査した。結果を表1に示す。なお、表1において、結果は、検査を行ったプラスチック容器の全本数を「検査数」とし、外キャップに割れが見られたプラスチック容器の本数を「異常数」とした場合に、「異常数/検査数」で表示した。
【0075】
(2)ゲート残り評価方法
キャップ天面中央のゲート部(金型の樹脂注入口)において、樹脂残り(ゲート残り)があるかどうかを目視確認した。各サンプルについて750個目視検査し樹脂残り(ゲート残り)の発生件数を確認した。
【0076】
(3)変形強度(横圧縮強度(常温))
試験機 島津製作所製オートグラフAGS-X 5KNを用い、キャップを横にした状態で、25℃での圧縮スピード10mm/分、歪量1mmの条件で、横圧縮強度の測定を行った。
各サンプルn=4評価を行い、表には平均値(単位:N)を記載している。
【符号の説明】
【0077】
10…ボトル、11…口部、20…内キャップ、20a…開口、30…外キャップ、100…プラスチック容器。
図1
図2
図3
図4